説明

射出成形機

【課題】成形品1個あたりのエネルギー消費量と放熱量の削減と、装置の価格の低減または装置の価格の増加をなるべく抑えた射出成形機を提供する。
【解決手段】射出装置16の加熱筒22内で材料を溶融し、溶融した材料を成形金型13A,13B,13Cのキャビティ内で固化させて成形品を成形する射出成形機11において、誘導加熱装置29を備えた加熱筒22と、加熱筒22の数よりも多い成形金型13A,13B,13Cまたは加熱筒22の数よりも多い注入孔14A,14B,14Cを配設することにより成形品1個あたりのエネルギー消費量と放熱量の削減と、装置価格の低減または装置価格の増加抑制を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形に用いられる射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機の分野においては、ランニングコストの削減と地球温暖化防止のための省エネルギー化がより一層重要な課題となっている。一般に射出成形機によって消費される電力消費量のうち半分以上(ハイサイクル成形で樹脂供給量の多いものでは70%以上)は、加熱筒内で樹脂を溶融する際の加熱に使用されている。射出成形機の加熱筒の加熱手段としては特許文献1に記載のように抵抗加熱による電気ヒータを用いるものが一般的である。電気ヒータは、ヒータの価格が安いのが最大の利点であるが電力消費量が大きく、また加熱筒から外部へ放熱によるエネルギーロスが大きい点で問題があった。
【0003】
前記問題を解決するための手段として特許文献2、特許文献3に記載されたものが知られている。特許文献2は、加熱筒の電気ヒータから放出された熱を回収し樹脂の乾燥機に使用するものである。しかし特許文献2の装置は、加熱筒の周囲に熱の回収用の管路を設ける必要があり、ブロアや管路のヒータが更に必要となり、それらが電力を消費する上に、装置が複雑になるという問題点があった。また特許文献3は、電気ヒータよりも電力消費量が少なくエネルギー効率に優れた加熱手段として誘導加熱を用いたものも知られている。しかし誘導加熱を用いるものは昇温方向への応答性とエネルギー効率に優れるものの、それぞれのゾーン毎に制御装置が必要となり、1ゾーン当たりのコストも高い点が問題であった。そのため前記コストが高い点がネックになりそれほど普及していないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−58481号公報(請求項1、図1)
【特許文献2】特開2007−313664号公報(請求項1、図1)
【特許文献3】特開2004−314400号公報(請求項1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では上記の問題を鑑みて、成形品1個あたりのエネルギー消費量と放熱量の削減と、装置価格の低減または装置価格の増加抑制を図ることができる射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の射出成形機は、射出装置の加熱筒内で材料を溶融し、溶融した材料を成形金型のキャビティ内で固化させて成形品を成形する射出成形機において、誘導加熱装置を備えた加熱筒と、前記加熱筒の数よりも多い成形金型または注入孔が配設されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に記載の射出成形機は、請求項1において、誘導加熱装置を備えた加熱筒を有する射出装置が、加熱筒の数よりも多い成形金型のうちのある成形金型から別の成形金型、または前記加熱筒の数よりも多い注入孔のうちのある注入孔から別の注入孔へ移動することを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3に記載の射出成形機は、請求項1または請求項2において、加熱筒の数よりも多い成形金型または加熱筒の数よりも多い注入孔が、誘導加熱装置を備えた加熱筒を有する射出装置の前方へそれぞれ移動することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4に記載の射出成形機は、請求項3において、成形金型は、型締装置に設けられた回転盤に取付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の射出成形機は、射出装置の加熱筒内で材料を溶融し、溶融した材料を成形金型のキャビティ内で固化させて成形品を成形する射出成形機において、誘導加熱装置を備えた加熱筒と、前記加熱筒の数よりも多い成形金型とが配設されているので、成形品1個あたりのエネルギー消費量と放熱量の削減を図ることができ、同じ生産能力の装置同士の比較において装置価格の低減または増加抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施例1の射出成形機の作動を示す平面図である。
【図2】図2は、実施例1の射出成形機の射出装置の要部の断面図である。
【図3】図3は、実施例1の射出成形機の誘導加熱装置の要部の断面図である。
【図4】図4は、実施例1の射出成形機の作動を示す作動図である。
【図5】図5は、実施例2の射出成形機の作動を示す平面図である。
【図6】図6は、実施例3の射出成形機の作動を示す平面図である。
【図7】図7は、実施例4の射出成形機の作動を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、射出装置の加熱筒内で材料を溶融し、そのまま加熱筒からの溶融した材料をスクリュにより成形金型のキャビティ内へ射出して固化させて成形品を成形するインライン式の射出成形機、または射出装置の加熱筒内で材料を溶融し、別の射出プランジャ装置を介して溶融した材料を成形金型のキャビティ内へ射出して固化させて成形品を成形するプリプラ(登録商標)式の射出成形機に用いられる。そして本発明では加熱筒の数は、成形金型の数よりも少なくなっているので、一般的な射出成形機を2台以上用いた場合と比較すると、成形品1個あたりのエネルギー消費量と放熱量の削減を図ることができる。また本発明では、射出装置の加熱筒に誘導加熱装置を備えているので、更に成形品1個あたりのエネルギー消費量と放熱量の削減を図ることができる。また誘導加熱装置は、電気ヒータと比較してコストが高い点が問題であったが、成形金型の数に対して加熱筒の数を減らすことができるので、装置価格の低減または増加抑制を図ることができる。
【実施例1】
【0013】
図1に示されるように射出成形機11の一方には型締装置12A,12B,12Cが一定の間隔を隔てて3基並んで固定的に配置されている。本実施形態の型締装置12A,12B,12Cは、縦型のものであって上盤と下盤のいずれか一方が固定盤、いずれか他方が可動盤となっている。型締装置12A,12B,12Cは、サーボモータによって作動するトグル装置か油圧型締シリンダで作動される。そして前記固定盤と可動盤には固定金型と可動金型からなる1個の成形金型13A,13B,13Cがそれぞれ取付けられている。そして成形金型13A,13B,13Cの側面には、パーティング射出用のノズルタッチ面と注入孔14A,14B,14Cが形成されている。なお型締装置12については水平方向に可動盤が移動する一般的な横型型締装置でもよい。
【0014】
射出成形機11の他方には、前記3基の型締装置12A,12B,12Cの設置方向と平行にレール10が敷設されている。そして前記レール10の上には架台15が移動可能に設けられている。そして前記架台15の上には1基のインライン式の射出装置16が前記架台15の移動方向と直交する方向に移動可能に設けられている。射出装置16には、ハウジングプレート17と、図示しないプッシャプレート、バックプレートと、図示しない射出用サーボモータおよび計量用サーボモータ等が配置されている。また架台15と射出装置16の間にはリニアガイド等が配設されるとともに、射出装置16を型締装置12A,12B,12Cに向けて前進または後進させるサーボモータまたは油圧シリンダからなる図示しないシフト装置(進退装置)が設けられている。なおシフト装置を射出装置16に設け、型締装置12A,12B,12Cと係脱するようにしてもよい。また型締装置12A,12B,12Cと射出装置16の駆動手段の全部、またはシフト装置等の一部駆動手段を除く駆動手段をサーボモータにより電動化することにより一層の消費電力の削減が可能である。
【0015】
本発明の射出成形機11については、型締装置12の数は限定されず、射出装置16についても3基の型締装置12A,12B,12Cに対して2基の射出装置が配設されているものでもよい。すなわち本発明の射出成形機11は、射出装置16の加熱筒22の数よりも型締装置12A,12B,12Cおよび成形金型13A,13B,13Cの数の方が多いことが特徴となっている。そして射出成形機11は、1基の射出装置に対して1基の型締装置が配置された一般的な射出成形機と比較すると、射出装置16の数を減らすことができる。そして射出装置16の数を減らすことができた結果、成形品1個あたりのエネルギー消費量と放熱量の削減を図ることができ、同じ生産能力の射出成形機同士の比較(比較対象は複数台の場合を含む)において射出成形機11の価格の低減または増加抑制を図ることができる。
【0016】
なお前記比較において一般的な射出成形機に多数個取り可能な大型成形金型を取付けることにより射出装置を1基にし、生産性を向上させることも考えられる。しかし大型成形金型は特殊仕様となり価格が急激に高くなる上に、大型成形金型を取付ける際には対応する型締装置も大型化するので射出成形機側の装置価格も高くなる。その結果、総生産個数が一定以上見込めない場合には、大型成形金型は減価償却の点で採用できない場合がある。また多数個取りを行う金型の場合、全てのキャビティで優れた成形品を成形するための調整が困難であり、薄物等で成形条件の厳しいものではその傾向は更に顕著になる。更にまたコア等を移動させるキャビティの多数個取り金型の場合、取り数に制限を受けたり、金型構造が複雑化しすぎるという問題もある。従って成形金型は余り大型化させず、成形金型の数を増加させるほうが好ましいことが多いのである。一方本発明では射出装置16の射出工程の成形条件を成形金型13A,13B,13C毎に設定できるので、成形金型13A,13B,13C毎に異なる成形品を成形することも可能であり、多品種少量生産にも対応することができる。
【0017】
図2に示されるように射出装置16のハウジングプレート17には、成形材料の落下口18が設けられるとともに、ハウジングプレート17を冷却する冷却媒体流路19が設けられている。そして冷却媒体流路19は、外部のホースを介して温調装置20に接続されている。そして温調装置20は、射出成形機11の制御装置21からか、または単独で制御されている。またハウジングプレート17には、加熱筒22が固定され、加熱筒22の内部の内孔23にはスクリュ24が回転自在かつ前後進可能に設けられている。スクリュ24は前部にスクリュヘッドと逆流防止弁が設けられ、前部からメタリングゾーン、コンプレッションゾーン、フィードゾーンの順にフライトが形成されている。
【0018】
加熱筒22の前部には、加熱筒の一部を構成するシリンダヘッド25が固定され、シリンダヘッド25の前部には、ノズル26が固定されている。実施例1ではノズル26は、図示はしないがシャットオフバルブ等が設けられ、閉塞可能なものが望ましい。そして加熱筒22は、前方から順に前部ゾーン27a、第1中部ゾーン27b、第2中部ゾーン27c、後部ゾーン27dの4つの温度制御ゾーンに区分されている。またノズル26については一つの温度制御ゾーンとなっている。なお加熱筒22およびノズル26の温度制御ゾーンの数は前記の数に限定されない。そして加熱筒22の各温度制御ゾーン27a,27b,27c,27dにはそれぞれ熱電対28が挿入固定され、熱電対28により検出された温度は、射出成形機11の制御装置21へ信号として送られるようになっている。
【0019】
実施例1で、各温度制御ゾーン27a,27b,27c,27dとノズル26には、それぞれ誘導加熱装置29が取付けられている。図3に拡大して示されるように誘導加熱装置29は、加熱筒22の外周に一定間隔隔てて円筒状の非導電体からなる外殻体30が形成されている。そして加熱筒22と前記外殻体30の間には一定幅の空間が形成されている。また外殻体30の回りに厚さ3〜10mmの非導電体の断熱材31が巻かれている。そして前記断熱材31の外周部にはウレタン等の絶縁層32により絶縁されたコイル線33が螺旋状に巻かれている。実施例1ではコイル線33には、リッツ線が用いられている。また前記コイル線33の両端は、それぞれコントローラ34に接続されている。コントローラ34は、各温度制御ゾーン27a,27b,27c,27dおよびノズル26毎に設けられ、インバータ制御により前記コイル線33に流される高周波電流(交流)の周波数または電流値の制御、またはON、OFF等を行っている。従ってコントローラ34は、射出成形機11の制御装置21に接続され、射出成形機11の図示しない設定画面から入力された設定値や熱電対28によって検出された温度が制御装置21を介してコントローラ34へ送られるようになっている。またコントローラ34は、三相交流電流を整流および変換して各コントローラ34へ供給する電源部38と接続されている。
【0020】
また図3に示されるように、誘導加熱装置29の前記外殻体30の両端には、断熱材31の間または断熱材31を貫通して管35a,35bが設けられている。そして前記管35aは高圧エアを送るブロアやコンプレッサ等の圧空供給源36に接続されている。そして圧空供給源36から管35a、外殻体30と加熱筒22の間の空間、管35bを経由するように空気流が送られるようになっている。また前記誘導加熱装置29と他の誘導加熱装置29の間には、互いの磁気による影響を避けるための緩衝材37を設けても良い。なお前記外殻体30によって形成された空間や圧空供給源36等から形成される加熱筒22の冷却促進装置は、加熱筒22の温度を強制的に下げたい場合に使用されるが、必須ではなく、直接加熱筒22に断熱材31を巻いてもよい。特に後部ゾーン27dは、ハウジングプレート17によって冷却されるので必要がない場合も多い。また冷却促進装置を設ける場合、外殻体30により空間を形成するのではなく、連通孔が多数設けられた断熱材やパイプを設けて圧空を流通させるようにしてもよい。また冷却促進装置へ送られるのは圧空に限定されず、他のガスや水等の液体であってもよい。また本発明に使用される誘導加熱装置は、誘導加熱により加熱筒を加熱するものであれば、他の構造および制御方式のものであってもよい。
【0021】
「背景技術」の欄に記載したように誘導加熱装置29は、電気ヒータと比較において消費電力(エネルギー消費量)が40〜70%と非常に少ない。これは誘導加熱装置29のコイル線33に高周波電流(交流)を流すことにより、導電体である加熱筒22の内部に渦電流を発生させ、加熱筒22自体をジュール熱により直接発熱させることができる点と、加熱筒22の外側に比較的厚い断熱材31を巻くことができる点による。そして誘導加熱装置29は、断熱材31により大気中への放熱が少ないので、より一層温暖化防止に寄与する。ただし価格の点では各温度制御ゾーン27a,27b,27c,27dおよびノズル26毎に比較的高価なコントローラ34を設ける必要があり不利である。従って実施例1では全ての各温度制御ゾーン27a,27b,27c,27dおよびノズル26を誘導加熱装置29により加熱する例を示したが、加熱筒22等の一部を誘導加熱としてもよい。その場合、後部ゾーン27d(ハウジングプレート隣接ゾーン)は、ハウジングプレート17の冷却により熱を奪われることと温度が低い材料が最初に供給されるために、加熱装置をONにする時間が長いので、誘導加熱装置29を設けることが特に望ましい。またノズル26は、高温に保つ必要があるにもかかわらず成形金型13に当接した際に成形金型13によって熱を奪われるので誘導加熱装置29を設けることが望ましい。前記以外では加熱筒22の前部ゾーン27aは高温に保つ必要があるので、加熱筒22の中部ゾーン27b,27cよりも誘導加熱装置29を設ける優先順位が高い。
【0022】
なお実施例1の射出成形機11では、3基の型締装置12A,12B,12Cに対して1基の射出装置16が対応しているので、可塑化能力が比較的大きい射出装置16(一例として型締装置12Aの型締力3000KNに対して、可塑化能力200kg/h以上)を用いることがより好ましい。しかし可塑化能力が比較的大きい射出装置16であっても、一般的な射出成形機の射出装置と比較して温度制御ゾーンの数は同じゾーン数か1ゾーン〜2ゾーン程度多い程度である。また加熱筒22の直径差による誘導加熱装置29の価格差はそれほど大きくない。そして可塑化能力が比較的大きい射出装置16にあっても、誘導加熱装置29による後部ゾーン27dの加熱が急速に行えるので後部ゾーン27dの温度を安定化させることができる。
【0023】
次に実施例1の射出成形機11を用いた成形方法について説明する。図1に示されるように射出成形機11の射出装置16は、制御装置21に記憶されたシーケンスに従い、それぞれ固定的に配設された型締装置12A,12B,12Cの各成形金型13A,13B,13Cの各注入孔14A,14B,14Cに対して1基の射出装置16が移動して順次射出を行う。具体的には、図4に示されるように射出装置16は、型締装置12Aのある成形金型である成形金型13Aに射出後、別の型締装置12Bの成形金型13Bへ向けて移動中(後退・横移動・前進を含む)に別の成形金型13B用の溶融樹脂の計量工程が行われる。その間に型締装置12Bでは前回の成形品の冷却が完了し、型開閉および取出と、再型締が行われる。そして射出装置16が型締装置12Bによって型締された成形金型13Bにノズルタッチされると、ノズル26のシャットオフバルブを開放し、成形金型13Bのキャビティ内に射出が行われる。そして充填工程の後の保圧工程が完了すると、射出装置16は再びノズル26のシャットオフバルブを閉鎖した後に後退し、次の型締装置12Cに向けて移動する。この移動の際にも同時に成形金型13C用の溶融樹脂の計量工程が行なわれる。また型締装置12Bのキャビティ内では次に射出装置16がノズルタッチされるまでの間に冷却、型開後の取出し、型閉(型締を含む)が行われる。従って比較的冷却時間が長い成形品であっても余裕を持って成形することができる。なお射出装置16の側からの保圧を加える時間が不足する場合は、型締装置12A,12B,12Cまたは成形金型13A,13B,13Cの側に保圧機能、キャビティ圧縮機能、およびガス供給機能の少なくとも一つを設けるようにしてもよい。
【0024】
前記の実施例1の射出成形機11を用いた成形方法では、射出装置16を効率的に用いることができる。すなわち1基の射出装置に対して1基の型締装置が配置された一般的な射出成形機では、成形金型で成形品を冷却している間に計量工程が完了すると、射出装置の方は待ち状態となり、その待ち状態の間、加熱筒の温度を保つために電力を消費するし、加熱筒からも放熱が発生する。しかし本発明では前記待ち時間が少ないので電力消費量を節約することができ、放熱も減少させることができる。そして射出装置の加熱筒を誘導加熱装置により加熱することにより、更に電力消費量を削減と放熱量を削減することができる。また放熱量が減少することから、射出成形機11が置かれているクリーンルーム等において作業環境を一定温度に保つ目的や夏場における温度上昇を抑える目的のためのエアコンの電力消費量もかなり節約することができる。
【実施例2】
【0025】
次に図5に示される実施例2の射出成形機41について説明する。射出成形機41は、縦型の型締装置42を有し、上盤または下盤のいずれか一方が固定盤、いずれか他方が可動盤となっている。そして下盤には4個の成形金型43A,43B,43C,43Dが取付けられる回転盤44が回転可能に取付けられている。実施例2での成形金型43A,43B,43C,43Dは、上金型と下金型との組からなり、側面に注入孔50A,50B,50C,50Dが設けられている。そして上金型は、上盤に対して第4ステージ45dにおいて型開閉される際だけ図示しないチャック装置により保持されるようになっている。また前記型締装置42の側方には、第1の射出装置46が型締装置42の第1ステージ45aへ向けて配置されている。また前記型締装置42の別位置の側方には、第2の射出装置47が第1の射出装置46とは直交する角度に型締装置42の第2ステージ45bへ向けて配置されている。そしてこれらの第1の射出装置46および第2の射出装置47の加熱筒48は、一部または全部が誘導加熱装置49により加熱されるようになっている。
【0026】
図5に示される実施例2の射出成形機41による成形は、回転盤44と成形金型43Aが第1の射出装置46の前方の第1ステージ45aで型締されているときに、第1の射出装置46が前進して注入孔50Aおよびノズルタッチ面にノズルタッチし、成形金型43Aのキャビティに誘導加熱装置49を用いて加熱された第1の樹脂を射出する。そして回転盤44を90°回転させて、回転盤44と成形金型43Aを第2の射出装置47の前方の第2ステージ45bへ移動させ再度型締を行う。次に第2の射出装置47が前進して注入孔50A等にノズルタッチし、誘導加熱装置49を用いて加熱された第2の樹脂を成形金型43Aのキャビティに射出する。一般的に第1の樹脂と第2の樹脂は異なる色のものや、一方が発泡樹脂等が用いられる。そして回転盤44は90°づつ第3ステージ45c、第4ステージ45dへ間欠回転され、第4ステージ45dで型開きされ成形品の取出しが行われる。なお前記成形金型43Aに続き、成形金型43D,43C,43Bについても続いて第1の射出装置46および第2の射出装置47から順次それぞれの溶融樹脂の射出が行われる(第2の射出装置47から成形金型43Aへの射出と並行して、第1の射出装置46から成形金型43Dへの射出が行われる)。従って射出装置46,47の数を成形金型43A,43B,43C,43Dおよび注入孔50A,50B,50C,50Dの数よりも減らすことが出来、射出装置46,47の作動効率がよい。
【0027】
なお前記実施例2においても射出装置46,47の数は、成形金型43A,43B,43C,43Dの数よりも少なければ限定されない。また成形金型の上型は、上盤に固定されたものでもよく、上型と下型の組合わせは、形状が異なるものでもよく、射出装置に対応していないステージでは上型がないものでもよい。また実施例2の射出成形機は、型締装置の可動盤が水平方向に移動し、回転盤の面が縦方向となるものでもよく、射出装置が縦方向に取付けられたものでもよい。
【実施例3】
【0028】
次に図6に示される実施例3の射出成形機51について説明する。実施例3の射出成形機51は、ノズルタッチ用に前後進のみを行う1基の射出装置52と、ベッド53上の射出装置52の前方の射出位置53aと取出位置53bの間で往復移動可能な2基の縦型の型締装置54A,54Bが設けられている。射出装置52の加熱筒55については、誘導加熱装置56が一部または全部に用いられている。前記型締装置54A,54Bについては、それぞれ1個の成形金型57A,57Bが取付けられ縦方向に型締が行われる。成形金型57A,57Bの側面にはキャビティへ溶融樹脂を注入する注入孔58A,58Bが形成されている。なお縦型締装置54A,54Bの数は限定されず、射出装置52も成形金型57A,57Bおよび注入孔58A,58Bよりも数が少なければよい。また実施例3については、射出装置52の前方の位置のみにメインの型締装置を固定的に設け、メインの型締装置に対して、比較的型締力が弱いサブの型締装置と成形金型の複数の組、または複数の成形金型のみが移動するようにしてもよい。また実施例3の射出成形機についても、型締装置の可動盤が水平方向に移動するものや、射出装置が縦方向に取付けられたものでもよい。
【実施例4】
【0029】
次に図7に示される実施例4の射出成形機61について説明する。実施例4の射出成形機61は、型締装置62の固定盤63と可動盤64の間に1個の成形金型65が取付けられている。成形金型65は、複数の注入孔66A,66Bを有しており、前記複数の注入孔66A,66Bからスプルブッシュやランナ等を介して溶融樹脂が注入されるキャビティ67a,67bが形成される。なお注入孔66A,66Bの数は2以上であれば限定されない。またキャビティ67a,67bについては、1個以上であれば限定されず、1個のキャビティに複数の注入孔を有するものでもよい。一方射出装置68については、実施例1と同様に一基が、前後進および横方向に移動可能に設けられている。そして射出装置68の加熱筒69には誘導加熱装置70が設けられている。
【0030】
そして射出成形機61の成形時には、射出装置68は、加熱筒69の数よりも多い注入孔66A,66Bのある注入孔である一方の注入孔66Aから射出した後、移動中に計量され、次に別の注入孔である注入孔66Bに向けて移動してノズルタッチし射出を行う。なお実施例4については、射出装置、または射出装置の可塑化装置または射出プランジャ装置のみが複数設けられたものでもよい。また射出装置を固定または前後進のみするようにし、成形金型と複数の注入孔の側を移動させては、射出装置のノズルに当接させ、順次射出を行うものでもよい。
【実施例5】
【0031】
第5の実施例については図示を省略するが、射出成形機の射出装置は、可塑化を行う可塑化装置と射出を行う射出プランジャ装置が別に設けられたプリプラ式のものまたはそれが応用されたものが使用されている。なお可塑化装置の数と射出プランジャ装置の数は対応しておらずにいずれか一方が1本で、いずれか他方が複数本でもよい。そして前記射出装置における可塑化装置または射出プランジャ装置の少なくとも一方には、誘導加熱装置が用いられている。なお実施例5についても、成形金型または注入孔の数に対して、射出装置の可塑化装置または射出プランジャ装置のいずれか一方の数を減らすことができる。従って従来の1基のプリプラ式の射出装置と1基の型締装置を設けた場合と比較して熱効率およびエネルギー効率がよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の射出成形機について、使用される樹脂材料は限定されないが、一例としてポリカーボネート(PC)やポリフェニレン・サルファルド(PPS)のような加熱筒温度が高温(一例として300℃以上)の樹脂材料を用いた場合の方が省エネルギー効果が大きい。また成形品については比較的大型の成形品やレンズ等の長時間の冷却(熱硬化樹脂の場合は加熱)を行うものの方が省エネルギー効果が大きい。また成形材料については、樹脂材料以外に金属、セラミック等の各種の材料を使用した射出成形機であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
11,41,51,61 射出成形機
12A,12B,12C,42,54A,54B,62 型締装置
13A,13B,13C ,43A,43B,43C,43D,57A,57B,65 成形金型
14A,14B,14C,50A,50B,50C,50D,58A,58B,66A,66B 注入孔
16,46,47,52,68 射出装置
22,48,55,69 加熱筒
27a,27b,27c,27d 温度制御ゾーン
29,49,56,70 誘導加熱装置
31 断熱材
33 コイル線
34 コントローラ
44 回転盤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出装置の加熱筒内で材料を溶融し、溶融した材料を成形金型のキャビティ内で固化させて成形品を成形する射出成形機において、
誘導加熱装置を備えた加熱筒と、前記加熱筒の数よりも多い成形金型または前記加熱筒の数よりも多い注入孔が配設されていることを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記誘導加熱装置を備えた加熱筒を有する射出装置が、前記加熱筒の数よりも多い成形金型のうちのある成形金型から別の成形金型、または前記加熱筒の数よりも多い注入孔のうちのある注入孔から別の注入孔へ移動することを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記加熱筒の数よりも多い成形金型または加熱筒の数よりも多い注入孔が、誘導加熱装置を備えた加熱筒を有する射出装置の前方へそれぞれ移動することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記成形金型は、型締装置に設けられた回転盤に取付けられていることを特徴とする請求項3に記載の射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−179574(P2010−179574A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25480(P2009−25480)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000155159)株式会社名機製作所 (255)
【Fターム(参考)】