説明

射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる射出発泡成形体

【課題】薄肉射出充填が可能で高発泡倍率であるがために、軽量性に優れ、表面外観良好な射出発泡成形体を得ることが出来る、射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物および該樹脂組成物からなる射出発泡成形体を提供する。
【解決手段】下記の(A)〜(C)を含んでなる射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。(A)歪硬化性を示し、かつメルトテンションが1cN以上5cN以下であるポリプロピレン系樹脂、(B)膨張開始温度が190℃以下、最大膨張温度が210℃以上である熱膨張性マイクロカプセル、(C)化学発泡剤および/または物理発泡剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物およびそれを用いた射出発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン樹脂は、良好な物性及び成形性を有しており、また、環境にやさしい材料として急速にその使用範囲が拡大している。特に、自動車部品等では、軽量で剛性に優れたポリプロピレン樹脂製品が提供されており、そのような製品の一つに、ポリプロピレン系樹脂の射出発泡成形体がある。
【0003】
高発泡化させたポリプロピレン系樹脂射出発泡成形体を得る技術としては、型開き可能に保持された金型の空間内に発泡剤を含む樹脂を射出した後、金型を開くことにより前記空間を拡大して樹脂を発泡させるいわゆるコアバック法(Moving Cavity法)がある(例えば、特許文献1、2)。
【0004】
一般に、射出発泡成形に用いるポリプロピレン系樹脂の特性としては、金型内の隅々まで樹脂が充填されるための流動性と、その後発泡するための発泡性が必要とされる。
【0005】
しかしながら、通常使用される線状ポリプロピレン系樹脂は結晶性でメルトテンション(溶融張力)が低いため、気泡が破壊されやすく高発泡化が困難であった。また、射出発泡成形体表面に発泡剤由来ガスによるシルバーストリークと呼ばれる外観不良が発生しやすい傾向があった。
【0006】
ポリプロピレン系樹脂のメルトテンションを高める方法として、例えば、無架橋のポリプロピレン系樹脂に放射線照射することで長鎖分岐を導入する方法(特許文献3)、ポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体とラジカル重合開始剤とを溶融混練して改質ポリプロピレン系樹脂を製造する方法(特許文献4)などが提案されている。確かに、この方法により高発泡倍率の射出発泡成形体が得られるものの、樹脂溶融時の粘度が上がりすぎ、射出が困難となるとともに、発泡性を付与することに起因すると考えられる成形不良であるフローマークが発生し、表面外観が悪くなる場合があった。
【0007】
一方、射出発泡成形に使用する発泡剤としては、化学発泡剤、物理発泡剤、熱膨張性マイクロカプセルなどがある。
【0008】
化学発泡剤は、樹脂と予め混合してから射出成形機に供給され、シリンダ内で分解して炭酸ガス等の気体を発生するものである。取り扱いやすく安全であり、また、高倍の射出発泡成形体を得られやすい長所がある反面、前記するシルバーストリークが射出発泡成形体表面に発生する為、シルバーストリークを解消する為の対策として、予め金型内を不活性ガス等で圧力をかけながら樹脂を金型内に導入するいわゆるカウンタープレッシャー法を併用することが必須となる。カウンタープレッシャーは高圧ガスを使用することから、周辺設備が高価となる。
【0009】
物理発泡剤は、成形機のシリンダ内の溶融樹脂にガス状または超臨界流体として注入され、分散または溶解されるもので、金型内に射出後、圧力開放されることによって発泡剤として機能するものである。化学発泡剤同様、高倍の射出発泡成形体が得られやすい反面、射出発泡成形体外観対策を講じる必要がある。
【0010】
熱膨張性マイクロカプセルは、揮発性の液体発泡剤をガスバリア性有する重合体によりマイクロカプセル化したものである。樹脂と予め混合してから射出成形機に供給され、シリンダ内でカプセルに内包した液体発泡剤が気化し膨らむことで射出発泡成形体が得られる。化学発泡剤や物理発泡剤由来ガスによる不良が発生しない為、射出発泡成形体外観が良好なものが得られるものの、カプセルの構造上、発泡倍率には制限があり、高倍の射出発泡成形体が得られない。
【0011】
以上のように、これまでは射出発泡成形に必要な樹脂特性としての流動性と発泡性を両立し、高発泡倍率で、良好な表面外観を有する射出発泡成形体を安価に得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO2005/026255号公報
【特許文献2】特開2004−082547号公報
【特許文献3】特開昭2001−226510号公報
【特許文献4】特開平9−188774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、薄肉射出充填が可能で高発泡倍率であるがために、軽量性に優れ、表面外観良好な射出発泡成形体を得ることが出来る、射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物および該樹脂組成物からなる射出発泡成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、射出発泡に適する特定の溶融粘度や溶融張力を保持したポリプロピレン系樹脂、特定の熱膨張性マイクロカプセル、および化学発泡剤および/または物理発泡剤を添加することで、高発泡倍率で軽量化が可能であり、かつ良好な表面外観を有する射出発泡成形体が安価に得られることを見出し、本発明の完成に至った。
【0015】
すなわち本発明は、以下の構成よりなる。
〔1〕 下記の(A)〜(C)を含んでなる射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
(A)歪硬化性を示し、かつメルトテンションが1cN以上5cN以下であるポリプロピレン系樹脂、
(B)膨張開始温度が190℃以下、最大膨張温度が210℃以上である熱膨張性マイクロカプセル、
(C)化学発泡剤および/または物理発泡剤。
〔2〕 前記(A)ポリプロピレン系樹脂が、歪硬化性を示し、メルトテンションが1cN以上5cN以下、かつ、メルトフローレートが10g/10分以上100g/10分未満である改質ポリプロピレン樹脂(A−1)である〔1〕記載の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
〔3〕 前記(A)ポリプロピレン系樹脂が、歪硬化性を示し、メルトテンションが5cN以上、かつ、メルトフローレートが0.1g/10分以上10g/10分未満である改質ポリプロピレン樹脂(A−2)、メルトフローレートが10g/10分以上100g/10分以下、メルトテンションが1cN未満である線状ポリプロピレン樹脂(A−3)を含んでなる〔1〕記載の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
〔4〕 前記改質ポリプロピレン樹脂(A−1)、あるいは(A−2)が、線状ポリプロピレン樹脂、共役ジエン化合物、ラジカル重合開始剤を溶融混合して得られたものである〔2〕または〔3〕に記載の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
〔5〕 〔1〕〜〔4〕何れかに記載の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物からなる射出発泡成形体。
【発明の効果】
【0016】
本発明の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物は、射出発泡に適した溶融粘度や溶融張力を有している。また、膨張開始温度が190℃以下、最大膨張温度が210℃以上である熱膨張性マイクロカプセルと化学発泡剤および/または物理発泡剤を併用することにより、射出発泡成形体を作製した場合に、高発泡倍率であり、カウンタープレッシャー法を併用せずとも、シルバーストリークを低減させることが出来る。そのため、本発明の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物からなる射出発泡成形体は、高発泡倍率であるがために軽量性に優れており、かつ、表面外観が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
本発明の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物は、(A)歪硬化性を示し、かつメルトテンションが1cN以上5cN以下であるポリプロピレン系樹脂、(B)特定の熱膨張性マイクロカプセル、および(C)化学発泡剤および/または物理発泡剤を含んでなる。
【0019】
本発明で使用する(A)ポリプロピレン系樹脂は、歪硬化性を示し、かつメルトテンションが1cN以上5cN以下である。
【0020】
歪硬化性とは、溶融物の延伸歪みの増加に伴い粘度が上昇することとして定義され、通常は特開昭62−121704号公報に記載の方法、すなわち市販のレオメーターにより測定した伸長粘度と時間の関係をプロットすることで判定することができる。また、例えばメルトテンション測定時の溶融ストランドの破断挙動からも歪硬化性を判定できる。すなわち、引き取り速度を増加させたときに急激にメルトテンションが増加し、切断に至るときは歪硬化性を示す場合である。ポリプロピレン系樹脂(A)が、歪硬化性を示し、メルトテンションが前記範囲内である場合に、発泡倍率が2倍以上の高発泡倍率であり、また、射出成形時の溶融樹脂流動先端部で破泡しやすくなることによっておこるシルバーストリークが出にくくなる等の理由から表面平滑性に優れた射出発泡成形体が得られる。
【0021】
メルトテンションとは、メルトテンション測定用アタッチメントを付けたキャピログラフ(東洋精機製作所製)を使用して、200℃でφ1mm、長さ10mmの孔を有するダイスから、ピストン降下速度10mm/分で降下させたストランドを1m/分で引き取り、安定後に40m/分2で引き取り速度を増加させたとき、破断したときのロードセル付きプーリーの引き取り荷重を言う。
【0022】
ポリプロピレン系樹脂(A)は、歪硬化性を示し、かつメルトテンションが1cN以上5cN以下であれば良いが、一つの好ましい態様として、
(1)歪硬化性を示し、メルトテンションが1cN以上5cN以下、かつ、メルトフローレートが10g/10分以上100g/10分未満である改質ポリプロピレン樹脂(A−1)、が挙げられる。
【0023】
本発明で使用する改質ポリプロピレン樹脂(A−1)は、メルトフローレートが10g/10分以上100g/10分未満であることが好ましく、より好ましくは15g/10分以上60g/10分以下である。また、メルトテンションが1cN以上5cN以下であり、好ましくは1.5cN以上4cN以下で、かつ歪硬化性を示すものである。
【0024】
メルトフローレートが10g/10分以上100g/10分未満であると、高発泡倍率であり気泡が均一である射出発泡成形体が得られる傾向がある。また、メルトテンションが1cN以上5cN以下の場合には、発泡倍率が2倍以上あり、均一微細な気泡の射出発泡成形体が得られる。メルトフローレートとは、ASTM D−1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重下で測定したものを言う。
【0025】
ポリプロピレン系樹脂(A)の別の好ましい態様としては、
(2)歪硬化性を示し、メルトテンションが5cN以上、かつ、メルトフローレートが0.1g/10分以上10g/10分未満の改質ポリプロピレン樹脂(A−2)と、メルトフローレートが10g/10分以上100g/10分以下、メルトテンションが1cN未満である線状ポリプロピレン樹脂(A−3)を含んでなるもの、が挙げられる。 本発明で使用する改質ポリプロピレン樹脂(A−2)は、メルトフローレートが0.1g/10分以上10g/10分未満であることが好ましく、より好ましくは0.3g/10分以上9g/10分以下である。また、メルトテンションが5cN以上であることが好ましく、より好ましくは8cN以上で、かつ歪硬化性を示すものである。メルトフローレートが0.1g/10分以上10g/10分未満であると、後述する線状ポリプロピレン系樹脂(A−3)との相溶性が良好であり、高発泡倍率であり気泡が均一の、表面性が良い射出発泡成形体が得られる傾向がある。また、金型面への転写性が良好で、美麗な表面外観が得られる。また、メルトテンションが5cN以上であると、2倍以上の均一微細な気泡の射出発泡成形体が得やすい。
【0026】
このような改質ポリプロピレン樹脂(A−1)、および(A−2)の製法としては、例えば、線状ポリプロピレン系樹脂に放射線を照射する、または、線状ポリプロピレン系樹脂、共役ジエン化合物、ラジカル重合開始剤を溶融混合する、などの方法が挙げられる。これらの方法によって得られた改質ポリプロピレン樹脂(A−1)、および(A−2)は、分岐構造あるいは高分子量成分を含有する。これらの中で、本発明においては、改質ポリプロピレン樹脂(A−1)、および(A−2)が、線状ポリプロピレン樹脂、共役ジエン化合物、ラジカル重合開始剤を溶融混合して得られる改質ポリプロピレン樹脂であることが、高価な設備を必要せず、安価に製造できる点から好ましい。
【0027】
この改質ポリプロピレン樹脂(A−1)、および(A−2)の製造に用いられる原料のポリプロピレン系樹脂は、線状の分子構造を有している線状ポリプロピレン系樹脂であり、通常の重合方法、例えば担体に担持させた遷移金属化合物と有機金属化合物から得られる触媒系(例えばチーグラー・ナッタ触媒)の存在下の重合で得られる。具体的には、プロピレンの単独重合体、ブロック共重合体およびランダム共重合体であって、結晶性の重合体があげられる。プロピレンの共重合体としては、プロピレンを75重量%以上含有しているものが、ポリプロピレン系樹脂の特徴である結晶性、剛性、耐薬品性などが保持されている点で好ましい。共重合可能なα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどの炭素数2または4〜12のα−オレフィン、シクロペンテン、ノルボルネン、テトラシクロ[6,2,11,8,13,6]−4−ドデセンなどの環状オレフィン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンなどのジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどのビニル単量体などが挙げられる。これらのうち、エチレン、1−ブテンが耐寒脆性向上、安価等という点で好ましい。
【0028】
なお、改質ポリプロピレン樹脂(A−1)の製造に使用する線状ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートは、30g/10分以上100g/10分以下であることが好ましい。当該範囲であると、メルトフローレートが10g/10分以上100g/10分未満の改質ポリプロピレン樹脂(A−1)を得やすい。
【0029】
また、改質ポリプロピレン樹脂(A−2)の製造に使用する線状ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートは5g/10分以上60g/10分以下であることが好ましい。当該範囲であると、メルトフローレートが0.1g/10分以上10g/10分未満の改質ポリプロピレン樹脂(A−2)を得やすい。
【0030】
前記共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘプタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエンなどがあげられるが、これらを単独または組み合わせ使用してもよい。これらの中では、ブタジエン、イソプレンが安価で取り扱いやすく、反応が均一に進みやすい点からとくに好ましい。
【0031】
前記共役ジエン化合物の添加量としては、線状ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上20重量部以下が好ましく、0.05重量部以上5重量部以下がさらに好ましい。0.01重量部未満では改質の効果が得られにくい場合があり、また20重量部を越える添加量においては効果が飽和してしまい、経済的でない場合がある。
【0032】
前記共役ジエン化合物と共重合可能な単量体、たとえば塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸金属塩、メタクリル酸金属塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリルなどのメタクリル酸エステルなどを併用してもよい。
【0033】
ラジカル重合開始剤としては、一般に過酸化物、アゾ化合物などが挙げられるが、ポリプロピレン系樹脂や前記共役ジエン化合物からの水素引き抜き能を有するものが好ましく、一般にケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステルなどの有機過酸化物が挙げられる。
【0034】
これらのうち、とくに水素引き抜き能が高いものが好ましく、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシンなどのジアルキルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどが挙げられる。これらは、1種または2種以上を用いることが出来る。
【0035】
ラジカル重合開始剤の添加量としては、線状ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上10重量部以下が好ましく、0.05重量部以上2重量部以下がさらに好ましい。0.01重量部未満では改質の効果が得られにくい場合があり、また10重量部を越える添加量では、改質の効果が飽和してしまい経済的でない場合がある。
【0036】
線状ポリプロピレン系樹脂、共役ジエン化合物、ラジカル重合開始剤を反応させるための装置としては、ロール、コニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダー、単軸押出機、2軸押出機などの混練機、2軸表面更新機、2軸多円板装置などの横型撹拌機、ダブルヘリカルリボン撹拌機などの縦型撹拌機、などが挙げられる。これらのうち、混練機を使用することが好ましく、とくに押出機が生産性の点から好ましい。
【0037】
線状ポリプロピレン系樹脂、共役ジエン化合物、ラジカル重合開始剤を混合、混練(撹拌)する順序、方法にはとくに制限はない。線状ポリプロピレン系樹脂、共役ジエン化合物、ラジカル重合開始剤を混合したのち溶融混練(撹拌)してもよいし、線状ポリプロピレン系樹脂を溶融混練(撹拌)したのち、共役ジエン化合物あるいはラジカル開始剤を同時に、あるいは、別々に、一括してあるいは分割して混合してもよい。混練(撹拌)機の温度は130〜300℃が、線状ポリプロピレン系樹脂が溶融し、かつ熱分解しないという点で好ましい。またその時間は一般に1〜60分が好ましい。
【0038】
このようにして、本発明に用いる改質ポリプロピレン樹脂(A−1)および(A−2)を製造することができる。改質ポリプロピレン樹脂(A−1)および(A−2)の形状、大きさに制限はなく、ペレット状でもよい。
【0039】
線状ポリプロピレン樹脂(A−3)としては、メルトフローレートが好ましくは10g/10分以上100g/10分以下、さらに好ましくは15g/10分以上50g/10分以下であり、メルトテンションが好ましくは1cN未満である。メルトフローレートが10g/10分以上100g/10分以下の範囲であると、射出発泡成形体を製造する際に、金型キャビティのクリアランスが1〜2mm程度の薄肉部分を有する成形においても比較的低圧力で溶融樹脂を金型内に充填することが可能であり、連続して安定した射出発泡成形が行える傾向にある。また、メルトテンションが1cN未満であれば、金型面への転写性が良好であり、表面外観美麗な射出発泡成形体が得られる傾向がある。
【0040】
ここでいう線状ポリプロピレン樹脂としては、前記改質ポリプロピレン樹脂の製造に用いられる原料の線状ポリプロピレン系樹脂として取り上げたものと同じものが例示できる。これら単量体を重合させた線状プロピレン樹脂としては、具体的には、プロピレンホモポリマー、プロピレン−エチレンランダムコポリマー、プロピレン−エチレンブロックコポリマー等挙げられるが、中でも、射出発泡成形体に耐衝撃性を付与しやすいという点から、プロピレン−エチレンブロックコポリマーを使用することが好ましい。
【0041】
改質ポリプロピレン樹脂(A−2)と線状ポリプロピレン樹脂(A−3)の混合比率は、両者の合計100重量部中、改質ポリプロピレン樹脂(A−2)は、好ましくは5重量部以上50重量部以下であり、さらに好ましくは10重量部以上45重量部以下である。線状ポリプロピレン樹脂(A−3)は、好ましくは50重量部以上95重量部以下であり、さらに好ましくは55重量部以上90重量部以下である。上記配合量であると、均一微細な気泡を有する発泡倍率2倍以上の射出発泡成形体を安価に提供することが出来る傾向がある。
【0042】
本発明で用いられる、熱膨張性マイクロカプセル(B)は、膨張開始温度が190℃以下、最大膨張温度が210℃以上である。
【0043】
本発明で用いられる熱膨張性マイクロカプセル(B)とは、揮発性の液体膨張剤を重合体によりマイクロカプセル化したものである。一般に、水系媒体中で、少なくとも膨張剤と重合性単量体とを含有する重合性混合物を懸濁重合する方法により製造することができる。重合反応が進むにつれて、生成する重合体により外殻が形成され、その外殻内に膨張剤が包み込まれるようにして封入された構造をもつ熱膨張性マイクロカプセルが得られる。
【0044】
外殻を形成する重合体としては、一般に、ガスバリア性が良好な熱可塑性樹脂が用いられていればよい。外殻を形成する重合体は、加熱すると軟化する。外殻樹脂に内包される液体膨張剤としては、重合体の軟化点以下の温度でガス状になるものが選択されていればよい。
【0045】
膨張開始温度とは、熱膨張性マイクロカプセルに内包された液体発泡剤が気化して膨脹し、外殻を形成する重合体の弾性率が急激に減少し、カプセルが膨脹を開始する温度のことである。
【0046】
膨張開始温度が当該範囲であると、本発明の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物を金型内に充填後、十分に発泡させることが可能である。
【0047】
また、最大膨張温度とは、熱膨張性マイクロカプセルを常温から加熱しながらその径を測定したときに、その径が最大となる時の温度である。
【0048】
最大膨張温度が当該範囲であると、熱膨張性マイクロカプセルの「へたり」を発現することなく、射出発泡成形性にも影響が出ないため、高倍率かつ良好な表面外観有する射出発泡成形体が得られる。
【0049】
ここで、「へたり」とは、加熱溶融混練の過程において外殻樹脂の弾性率が急激に減少し、内包されている気化した膨張剤がマイクロカプセルを透過することで、マイクロカプセルの内圧が不足して潰れてしまい、射出発泡成形体の倍率を低下させる現象のことである。特に、最大膨張温度以上で成形を行った場合、カプセルの「へたり」が進行し、結果として所望する倍率を有する射出発泡成形体が得られなくなる傾向がある。
【0050】
本発明で使用する熱膨張性マイクロカプセル(B)の使用割合は、前記ポリプロピレン系樹脂(A)100重量部に対して、0.5重量部以上30重量部以下であることが好ましく、さらに好ましくは2重量部以上20重量部以下である。前記使用量であれば、共存する化学発泡剤および/または物理発泡剤の発泡性を阻害せず、表面外観が良好な、発泡倍率が2倍以上の射出発泡成形体が得られる傾向にある。また、薄肉部分を有する射出成形でショートショットが起こらず、連続して安定した生産が行える。
【0051】
本発明で用いる化学発泡剤および/または物理発泡剤(C)は、一般的な射出発泡成形に使用できるものであればとくに制限はない。
【0052】
化学発泡剤は、前記樹脂と予め混合してから射出成形機に供給され、シリンダ内で分解して炭酸ガス等の気体を発生するものである。化学発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の無機系化学発泡剤や、アゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等の有機系化学発泡剤があげられる。
【0053】
物理発泡剤は、成形機のシリンダ内の溶融樹脂にガス状または超臨界流体として注入され、分散または溶解されるもので、金型内に射出後、圧力開放されることによって発泡剤として機能するものである。物理発泡剤としては、プロパン、ブタン等の脂肪族炭化水素類、シクロブタン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素類、クロロジフルオロメタン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類、窒素、炭酸ガス、空気等の無機ガスがあげられる。これらは単独または2種以上混合して使用してよい。
【0054】
これらの発泡剤の中では、通常の射出成形機が安全に使用でき、均一微細な気泡が得られやすい点から、化学発泡剤が好ましい。化学発泡剤の中でも、無機系化学発泡剤が好ましい。これら化学発泡剤および/または物理発泡剤を使用する場合には、射出発泡成形体の気泡を安定的に均一微細にするために必要に応じて、例えばクエン酸のような有機酸等の発泡助剤やタルク、炭酸リチウムのような無機微粒子等の造核剤を添加してもよい。通常、前記化学発泡剤は取扱性、貯蔵安定性、ポリプロピレン系樹脂への分散性の点から、10〜50重量%濃度のポリオレフィン系樹脂のマスターバッチを作製し、使用することが好ましい。
【0055】
前記化学発泡剤および/または物理発泡剤の使用量は、得られる射出発泡成形体の発泡倍率と発泡剤の種類や成形時の樹脂温度によって適宜設定すればよい。例えば、無機系化学発泡剤の場合は、前記ポリプロピレン系樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは、0.5重量部以上20重量部以下、さらに好ましくは1重量部以上10重量部以下の範囲で使用される。この範囲で使用することにより、共存する熱膨張性マイクロカプセルの発泡性を阻害することなく、発泡倍率が2倍以上である射出発泡成形体が得られる。また、表面外観改良策であるカウンタープレッシャー設備を使用せずとも、表面外観が良好な射出発泡成形体が得られる。
【0056】
本発明で使用する射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物は、前記ポリプロピレン系樹脂(A)、熱膨張性マイクロカプセル(B)、および化学発泡剤および/または物理発泡剤(C)を含んでなる射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物の調整方法は特に限定はなく、公知の方法で行うことが出来、例えば、ペレット状の樹脂をブレンダー、ミキサー等を用いてドライブレンドする、溶融混合する、溶剤に溶解して混合する等の方法が挙げられる。本発明においてはポリプロピレン系樹脂(A)、熱膨張性マイクロカプセル(B)、および化学発泡剤および/または物理発泡剤(C)をドライブレンドした上で射出発泡成形に供する方法が、熱履歴が少なくて済み、メルトテンションの低下が少なくなる為好ましい。
【0057】
化学発泡剤および/または物理発泡剤の添加方法については特に制限はなく、予め、原料となるポリプロピレン系樹脂(A)、熱膨張性マイクロカプセル(B)、化学発泡剤および/または物理発泡剤(C)をドライブレンドして、射出成形機に供給してもよいし、ポリプロピレン系樹脂(A)、熱膨張性マイクロカプセル(B)を射出成形機に供給した後、化学発泡剤および/または物理発泡剤(C)を添加してもよい。
【0058】
さらに必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、熱可塑性エラストマー、ゴムなどの耐衝撃性改良剤、金属不活性剤、蛍光増白剤、金属石鹸、制酸吸着剤などの安定剤、架橋剤、連鎖移動剤、核剤、可塑剤、充填材、強化材、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤、を併用してもよい。必要に応じて用いられるこれらの添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲で使用されるのはもちろんであるが、本発明の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上40重量部以下使用される。
【0059】
射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物は、射出成形機へ供給され、金型に射出して発泡成形に供され、射出発泡成形体となる。次に射出発泡成形体の製造方法について具体的に説明する。製造方法自体は公知の方法が適用でき、ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート、発泡剤の種類、成形機の種類あるいは金型の形状によって適宜成形条件を調整すればよい。通常、ポリプロピレン系樹脂の場合は樹脂温度170〜250℃、金型温度10〜100℃、成形サイクル1〜60分、射出速度10〜300mm/秒、射出圧10〜200MPa等の条件で行われる。
【0060】
また、金型内で発泡させる方法としては種々有るが、なかでも固定型と任意の位置に前進および後退が可能な可動型とから構成される金型を使用し、射出完了後、可動型を後退させて発泡させる、いわゆるコアバック法(Moving Cavity法)が、表面に非発泡層が形成され、内部の発泡層が均一微細気泡になりやすく、軽量性に優れ、表面外観の良好な射出発泡成形体が得られやすいことから好ましい。可動型を後退させる方法としては、一段階で行ってもよいし、二段階以上の多段階で行ってもよく、後退させる速度も適宜調整してもよい。
【0061】
本発明の射出発泡成形体の発泡倍率は、好ましくは2倍以上5倍以下、さらに好ましくは2.5倍以上3倍以下である。発泡倍率が2倍未満では軽量性が得られ難く、3倍を越える場合には剛性の低下が著しくなる傾向がある。発泡倍率は、射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物から熱膨張性マイクロカプセル、化学発泡剤および/または物理発泡剤を除いたポリプロピレン系樹脂組成物を、射出発泡成形体と同条件で射出成形した非発泡成形体との比重の比から得られた値である。
【実施例】
【0062】
以下に実施例によって本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。実施例および比較例において、各種の評価方法に用いられた試験法および判定基準は次の通りである。
【0063】
(1)メルトフローレート(MFR):ASTM1238に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgで測定した。
【0064】
(2)メルトテンション:メルトテンション測定用アタッチメントを付けたキャピログラフ(東洋精機製作所製)を使用した。200℃でφ1mm、長さ10mmの孔を有するダイスから、ピストン降下速度10mm/分で降下させたストランドを1m/分で引き取り、安定後に40m/分2で引き取り速度を増加させたとき、破断したときのロードセル付きプーリーの引き取り荷重をメルトテンションとした。
【0065】
(3)歪硬化性:上記メルトテンション測定時、引き取り速度を増加させたときに急激に引き取り荷重が増加し、破断に至った場合を「歪硬化性を示す:○」、そうでない場合を「歪硬化性を示さない:×」とした。
【0066】
(4)射出発泡成形性:連続して20ショット成形したときにショートショット、発泡不良(発泡層のセル不均一化)、流動性低下(射出圧増加による)によるやけ、等の不良成形品となった個数を求めて、次の3段階で評価した。
不良個数が0個・・・・・・・○
不良個数が1〜2個・・・・・△
不良個数が3個以上・・・・・×
【0067】
(5)発泡倍率:射出発泡成形体の底面部から表面の非発泡層も含めた試片を切り出し、別途作製した肉厚3mmの非発泡成形体(参考例1)の底面部との比重の比から求めた。
【0068】
(6)シルバーストリーク:射出発泡成形体の底面部の表面を目視で観察し、シルバーストリークの発生状況をしらべた。
シルバーストリークが目立たない・・・○
シルバーストリークが目立つ・・・・・×
次に、実施例、比較例で使用したポリプロピレン系樹脂、熱膨張性マイクロカプセル、発泡剤を以下に示す。尚、熱膨張性マイクロカプセルについては、ポリプロピレン系樹脂組成物への分散性向上目的の為、マスターバッチ化したものを使用した。
【0069】
(ポリプロピレン系樹脂)
A−1:線状ポリプロピレン系樹脂として、メルトフローレート45g/10分のポリプロピレン・ホモポリマー100重量部と、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート1.0重量部の混合物を、ホッパーから70kg/時で45mmφ二軸押出機(L/D=40)に供給してシリンダ温度200℃で溶融混練し、途中に設けた圧入部よりイソプレンモノマーを定量ポンプを用いて0.3kg/時の速度で供給し、ストランドを水冷、細断することにより得た改質ポリプロピレン樹脂(メルトフローレート56g/10分、メルトテンション2cN、歪硬化性を示す)
A−2:線状ポリプロピレン系樹脂としてメルトフローレート45g/10分のポリプロピレン・ホモポリマー100重量部と、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.7重量部の混合物、イソプレンモノマーの供給量を0.7kg/時とした以外は、MP−1と同様にして得た改質ポリプロピレン樹脂(メルトフローレート7g/10分、メルトテンション12cN、歪硬化性を示す)
A−3:線状ポリプロピレン系樹脂、プロピレン−エチレンブロックコポリマー、メルトフローレート45g/10分、メルトテンション1cN未満
【0070】
(熱膨張性マイクロカプセルマスターバッチ)
B−1:ファインセルマスターMS405K(大日精化工業、キャリアレジン:LDPE、マイクロカプセル濃度40wt%、使用マイクロカプセル:クレハマイクロスフェアーS2320(クレハ、発泡開始温度180℃、最大発泡温度225℃))
【0071】
(発泡剤)
C−1:発泡剤マスターバッチ(永和化成製ポリスレンEE275F、分解ガス量40ml/g)
【0072】
(実施例1〜4)
射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物を表1に示す組成比(重量部)で混合し、ドライブレンドした。
【0073】
宇部興産機械(株)製「MD350S−IIIDP型」(シャットオフノズル仕様)の射出成形機で、樹脂温度220℃、背圧15MPaで前記熱膨張性マイクロカプセルマスターバッチおよび化学発泡剤および/または物理発泡剤を含むポリプロピレン系樹脂組成物を溶融混練した後、45℃に設定された、φ2mmのピンゲートを有し、固定型と前進および後退が可能な可動型とから構成される、縦330mm×横230mm×高さ100mmの箱形状のキャビティ(立壁部:傾斜10度、クリアランス3mm、底面部:クリアランスt0=1.3mm)を有する金型中に、射出速度100mm/秒で射出充填した。射出充填完了後に、底面部の発泡倍率が3倍になるように可動型を後退させて、キャビティ内の樹脂を発泡させた。発泡完了後40秒間冷却してから射出発泡成形体を取り出した。射出発泡成形性、得られた射出発泡成形体の特性を表2に示す。
【0074】
本発明の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物は、歪硬化性を示し、かつメルトテンションが1cN以上5cN以下であるポリプロピレン系樹脂であるため、連続成形時のショートショットが起こりにくく、射出発泡成形性が良好である。また、このような成形方法によって得られた箱形状の射出発泡成形体は、表面外観が良好で、高発泡倍率(3倍)である。
【0075】
(参考例)
実施例の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物から発泡剤を除いたポリプロピレン系樹脂組成物を射出充填し、60秒間冷却した後に非発泡成形体を取り出した。このとき、初期の金型底面部のクリアランスを変えることにより、底面部の肉厚の異なる成形体が得られた。
【0076】
(比較例1)
熱膨張性マイクロカプセルを使用せず、発泡剤を増量した以外は、実施例1と同様にして実施した。結果を表2に示す。3倍発泡成形体が得られるものの、シルバーストリークが発生し、表面外観が悪化した。
【0077】
(比較例2)
発泡剤を使用しなかった以外は、実施例2と同様にして実施した。結果を表2に示す。実施例と比較して、所望とする射出発泡成形体の厚みが得られにくく、発泡倍率が劣る。射出発泡成形体の面張りが悪化する。
【0078】
(比較例3)
発泡剤を使用しなかった以外は、実施例4と同様にして実施した。結果を表2に示す。実施例と比較して、所望とする射出発泡成形体の厚みが得られにくく、発泡倍率が劣る。射出発泡成形体の面張りが悪化する。
【0079】
(比較例4)
改質ポリプロピレン系樹脂を使用せずに線状ポリプロピレン樹脂を使用し、実施例1と同様にして実施した。結果を表2に示す。実施例と比較して、射出発泡成形性が悪く、射出発泡成形体内部に大きな空隙が多数発生する。発泡倍率が劣る。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の射出発泡成形体は、射出発泡に適した溶融粘度および溶融張力をもつ改質ポリプロピレン系樹脂、熱膨張性マイクロカプセル、および発泡剤を使用することにより、軽量化に必要な薄肉射出充填が可能であり、高発泡倍率であるがために軽量性に優れる。また、高価な設備を要することなく、表面外観が良好な成形体が得られる。本発明は、コンソールボックス、ラゲージボックス、ドアトリム、デッキサイドトリム、インスツルメントパネル等の自動車用内装材をはじめ、食品包装用容器、家電ハウジング、日用雑貨品のボックス類等に広く使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜(C)を含んでなる射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
(A)歪硬化性を示し、かつメルトテンションが1cN以上5cN以下であるポリプロピレン系樹脂、
(B)膨張開始温度が190℃以下、最大膨張温度が210℃以上である熱膨張性マイクロカプセル、
(C)化学発泡剤および/または物理発泡剤。
【請求項2】
前記(A)ポリプロピレン系樹脂が、歪硬化性を示し、メルトテンションが1cN以上5cN以下、かつ、メルトフローレートが10g/10分以上100g/10分未満である改質ポリプロピレン樹脂(A−1)である請求項1記載の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)ポリプロピレン系樹脂が、歪硬化性を示し、メルトテンションが5cN以上、かつ、メルトフローレートが0.1g/10分以上10g/10分未満である改質ポリプロピレン樹脂(A−2)、メルトフローレートが10g/10分以上100g/10分以下、メルトテンションが1cN未満である線状ポリプロピレン樹脂(A−3)を含んでなる請求項1記載の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
前記改質ポリプロピレン樹脂(A−1)、あるいは(A−2)が、線状ポリプロピレン樹脂、共役ジエン化合物、ラジカル重合開始剤を溶融混合して得られたものである請求項2または3に記載の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4何れか一項に記載の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物からなる射出発泡成形体。

【公開番号】特開2011−94068(P2011−94068A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250981(P2009−250981)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】