説明

導電性ゴムローラ、導電性ゴムローラの製造方法及び転写ローラ

【課題】転写ローラや帯電ローラあるいは現像ローラ等の電子写真装置用導電性ゴムローラに関して、その形成が効率的に行われ、長時間にわたって安定したローラ抵抗値を有して、高画質で良好な画像を得ることのできる導電性ゴムローラの製造方法を提供する。
【解決手段】発泡体ゴム層のゴム材料が、ゴム成分が成分NBR、エピクロルヒドリンゴム及びEO−PO−AGE三元共重合体から選ばれ、ゴム成分中の塩素量が21質量%以下であり、発泡剤がOBSHのみで、尿素系発泡助剤を含まず、該ゴム材料の加硫発泡をマイクロ波加硫により行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真複写装置、プリンター、静電記録装置等の画像形成装置において使用される導電性ゴムローラ、特に転写ローラ及び導電性ゴムローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンターなどの電子写真方式の画像形成装置(電子写真装置、電子写真画像形成装置ともいう)の多くに、帯電ローラ、転写ローラ、現像ローラ等の導電性ゴムローラが用いられている。これらのゴムローラは、装置の高速化、良画質化に応えるために、感光体との当接により一様なニップ幅を保つことが要求され、ゴム層が発泡体である時は該発泡体の発泡セルが緻密かつ均一であることが望まれている。
【0003】
従来これらのゴムローラの製造方法では、ゴム層の形成において、高圧蒸気による加硫缶加硫(特許文献1)、金型を用いた加硫(特許文献2)、マイクロ波照射によるマイクロ波加硫(特許文献3)などが行われている。
【0004】
これらの方法では、以下のような不具合があった。
【0005】
すなわち、加硫缶加硫では、比較的微細なセルを得ることは容易であるが、加硫チューブの径方向で発泡体の発泡セルが不均一であり、ゴムローラとして必要なセルを表面に出すために多量の研磨が必要になってしまうという問題があった。
【0006】
金型加硫においては、通常金型はいくつかのパーツの組合せになっており、円筒状の本体部分が少なくとも二つに割られた形態が普通である。すなわち、発泡ゴムローラを型内(割型)発泡で作製する場合、本体部分に合わせ目が存在する。このような割型を使用して加硫発泡を行った場合、この合わせ目から該ゴム組成物の漏れ(パーティングライン)が生じ、発泡ゴムにこの影響が現れる。これにより、発泡体ゴム層には、電気抵抗、硬度、セル形状等において、この割型合わせ面で異常が発生しやすい。したがって、これらの特性が均質であることが望まれる導電性ゴムローラにおいては、該特性の不均質化は大きな問題となる。さらに段取りに時間がかかり、かつ金型洗浄を行う必要があるため、導電性ゴムローラを数多く作るのには不向きであった。
【0007】
マイクロ波加硫は、押し出し直後に連続してマイクロ波を用いて加硫発泡を行うので、非常に効率の良い生産が可能である。さらにマイクロ波を用いて連続的に押し出し後の未加硫チューブを均質に加熱するため、均一な抵抗値、硬度、セル径を有する加硫チューブを得ることができる。特許文献3に記載の方法で製造される導電性ローラは電気抵抗値のばらつき抑制に優れるとされている。この特許文献3においては、具体例では、エピクロルヒドリンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のイオン導電性ポリマーを用い、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(ADCA)を使用し、発泡助剤として尿素系発泡助剤を使用している。しかし、これらの発泡剤、発泡助剤は、イオン導電性ポリマーを主成分とするゴム材料に使用した場合、製造された導電性ゴムローラの抵抗値が経時で著しく上昇してしまうという問題がある。
【0008】
電子写真用の導電性ゴムローラにおいては、ローラ抵抗値が均一であり、かつ経時で変化しないことが要求されており、ローラ抵抗値が均一で長時間にわたって変化しない導電性発泡ゴムローラの製造方法を確立することが望まれている。
【特許文献1】特開平11−114978号公報
【特許文献2】特開2002−115714号公報
【特許文献3】特開2002−221859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、マイクロ波照射で加硫発泡しても、成形が効率的に行われ、ローラ抵抗値が均一で長時間にわたり安定しており、高画質で良好な画像の得られる導電性ゴムローラの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため、発泡体ゴム層用のゴム成分、発泡剤等について検討し、さらに配合割合等についても検討した結果、ついに本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記の通りである。
【0012】
(1)導電性芯材上に発泡体ゴム層を有する導電性ゴムローラの製造方法であって、
発泡体ゴム層のゴム材料が、ゴム成分としてアクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム及びエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体から選ばれる少なくとも一種を含み、該ゴム成分中の塩素量が該ゴム成分100質量部に対して21質量%以下であり、
発泡体形成のために配される発泡剤がp,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)のみであり、尿素系発泡助剤が配されず、
かつ、該ゴム材料の加硫発泡が、マイクロ波照射及び加熱空気によって行われる
ことを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法である。
【0013】
(2)p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)の配合量が、ゴム成分100質量部に対して1質量部以上10質量部以下である上記(1)の導電性ゴムローラの製造方法である。
【0014】
(3)電子写真画像形成装置に用いる導電性ゴムローラが、上記の導電性ゴムローラの製造方法で形成されたものであることを特徴とする導電性ゴムローラである。
【0015】
(4)電子写真画像形成装置に用いる転写ローラが、上記(3)の導電性ゴムローラであることを特徴とする転写ローラである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法で製造された導電性ゴムローラは、ローラ抵抗値が均一で長期にわたり安定しているので、転写ローラ、帯電ローラ、現像ローラ等の電子写真装置用導電性ゴムローラとして有用である。また、本発明の製造方法は、発泡ゴム層用のゴム材料がマイクロ波加硫に適しているので、マイクロ波照射による加硫発泡が短時間でかつ効率よく行われ、得られる導電性ゴムローラも品質が安定したものである。さらに、この導電性ゴムローラは、電子写真装置に帯電ローラ、現像ローラあるいは転写ローラとして、特に転写ローラとして組み込んだ時に、高画質で良好な、優れた画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、
導電性芯材上に発泡体ゴム層を有する導電性ゴムローラの製造方法であって、
発泡体ゴム層のゴム材料が、ゴム成分として、アクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム及びエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体から選ばれル少なくとも一種を含み、該ゴム成分中の塩素量が該ゴム成分100質量部に対して21質量%以下であり、
発泡体形成のために配される発泡剤がp,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)のみであり、尿素系発泡助剤が配されず、
かつ、該ゴム材料の加硫発泡が、マイクロ波照射及び加熱空気によって行われる
ことを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法である。
【0018】
以下、図を用いながら詳細に説明する。
【0019】
まず、本発明で製造される導電性ゴムローラの一例の斜視図を図1に示す。
【0020】
図1において、1は導電性芯材であり、該導電性芯材1の上に導電性の加硫発泡ゴム層2が形成されている。
【0021】
導電性芯材1は、通常、鉄、鋼、真鍮、不錆鋼等の中実棒あるいは中空棒であり、その表面にはニッケル等のメッキがされたものが使用される。そして、本発明では、外径が4mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0022】
加硫発泡ゴム2層は、ゴム材料が特定のゴム成分を含み、発泡剤がp,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)のみであり、尿素系発泡助剤が配されず、かつ、発泡加硫がマイクロ波加硫により行われたものである。なお、ゴム材料としては、これに酸化亜鉛、ステアリン酸やカーボンブラック、炭酸カルシウム等の充填剤、硫黄等の加硫剤、チウラム系、チアゾール系、グアニジン系、スルフェンアミド系、ジチオカルバミン酸塩系、チオウレア系、その数種の混合物等の加硫促進剤が配されている。
【0023】
本発明では、ゴム成分が、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBS)、エピクロルヒドリンゴム及びエチレンオキサイド(EO)−プロピレンオキサイド(PO)−アリルグリシジルエーテル(AGE)三元共重合体から選ばれル少なくとも一種である。そして、該ゴム成分の塩素量が、総ゴム成分の21質量%以下であるが必須である。塩素含有量が21質量%よりも多くなると、ゴム成分から遊離する塩素が同時に配合された成分と塩素化合物を生じやすくなる。この塩素化合物が発泡ゴム層中でイオン導電剤として作用したり、ゴム層の極性を変化させたりして、経時でローラ抵抗値を大きく変化させてしまう。高温高湿環境(例えば、32.5℃/80%RH)におけるローラ抵抗値の上昇が大きい。
【0024】
本発明では、発泡体形成のため、発泡剤として、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)のみを使用する。ここで、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)を用いると、ADCAの分解生成物としてアンモニアやシアン酸等の物質が生成し、経時でローラ抵抗値が上昇してしまうという問題が生じる。
【0025】
また、尿素系発泡助剤を用いた場合もアンモニア等が生成し、ADCAを用いた場合と同様に経時でローラ抵抗値が大きく上昇してしまい実用には適さないという問題が生じてしまう。
【0026】
その他の発泡剤としては、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)や炭酸水素ナトリウムがある。しかし、DPTは分解時に有害なホルムアルデヒドが発生すること、そのもの自体が変異原性を疑われており、人体への安全性に劣るという欠点を持っていることがあり、好ましくない。また、炭酸水素ナトリウムでは均一な発泡を得難く、ローラ抵抗値の環境変動が大きいという欠点がある。
【0027】
OBSHの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下が適当である。なお、OBSHの配合量が1質量部より少ないと発泡ガス量が少なすぎるため良好な発泡状態を得ることができず、10質量部より多いとOBSHによる加硫阻害により、汚染性等の問題が生じる。さらに、OBSHは高価な発泡剤であるため、材料コストが上昇してしまうという問題が生じる。
【0028】
本発明では、導電性発泡ゴム層に導電性を安定して発揮させるために、カーボンブラック、金属粉等の等の電子導電性導電剤やLiCIO4、NaSCN等のイオン導電剤などを適宜選択して添加することも可能である。なお、電子導電性導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(商標)等の導電性カーボンブラック、TiO2、SnO2、ZnO、SnO2/SbO3固溶体等の金属酸化物、Cu、Ag等の金属粉末を上げることができる、導電剤として導電性カーボンブラックを使用する時は、ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下が適当である。
【0029】
また、本発明では、発泡ゴム層の柔軟性、機械強度等を調整するために、カーボンブラック、炭酸カルシウム、SiO2等の充填剤を使用することもできる。なお、充填剤の使用量は、ゴム成分100質量部に対し100質量部以下とするのが適当である。
【0030】
本発明に用いられる加硫剤は、硫黄である。加硫剤は、通常、加硫促進剤と共に使用される。なお、加硫剤として硫黄を使用したときは、ゴム成分・組成、発泡剤量、発泡ゴム層の硬度等により異なるが、通常、ゴム成分100質量部に対し、0.3質量部以上4質量部以下が適当である。
【0031】
加硫促進剤としては、上記したように、従来公知のものから適宜選択して使用可能である。なお、チアゾール系促進剤として、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)等がある。また、チウラム系加硫促進剤として、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)等がある。加硫促進剤の使用量は、原料ゴム100質量部に対し、1質量部以上10質量部以下が適当である。
【0032】
本発明では、上記したようなゴム層原料が、発泡剤、加硫剤、加硫促進剤、安定剤、導電剤等の必要な副資材とともに混合混練されて、原料ゴム組成物とされる。次いで押出機より円筒状に押し出され、マイクロ波加硫(UHF)炉中で加硫発泡され、さらに熱風加熱(HAV)炉で加硫されて、発泡ゴムチューブとされる。この発泡ゴムチューブが所定の長さに切断され、導電性芯材が圧入されて、導電性ゴムローラが形成される。なお、芯材には予め接着剤が塗布されていても構わない。
【0033】
以下、加硫発泡ゴム層用の発泡ゴムチューブの製造について説明する。
【0034】
図2は、マイクロ波を用いた連続加硫による発泡ゴムチューブの製造装置を示す。
【0035】
図2において、11は押出機、12はマイクロ波加硫(UHF)炉、13は熱風加硫(HAV)炉、14は引取機、15は定尺切断機である。
【0036】
上記した加硫発泡ゴム層用の原料ゴム組成物は、バンバリーミキサーまたはニーダー等の密閉式混練機を用い混練した後、オープンロールとリボン成形分出し機によりリボン状に成形して、押出機11に投入される。次いで、押出機より原料ゴム組成物は、通常、内径2mm以上8mm以下、外径8mm以上15mm以下で円筒状に押し出される。該円筒状成形体は、UHF炉12内の、テフロンでコーティングされたメッシュのベルト、またはテフロン樹脂を被服したコロ上に載置され、UHF炉12内へ搬送される。
【0037】
UFH炉12内に搬入された円筒状成形体に0.5kW/m2以上3.0kW/m2以下の照射強度のマイクロ波が照射され、UFH炉12内温度160℃以上230℃以下で加熱されて加硫発泡する。なお、このときの円筒状成形体の搬送速度は0.5m/minから4.0m/minに設定するのが適当である。この加硫発泡した円筒状成形体はさらにテフロン樹脂を被覆したコロで160℃から230℃に設定したHAV炉13に搬送され、さらに加硫発泡が完結される。
【0038】
加硫発泡後に引取機14より排出された直後に、定尺切断機15により所定の寸法に切断し、チューブ状の導電性ゴム成形物を作成する。次いで、ホットメルト接着剤、又は加硫接着剤を所望の領域に塗布した4mmから10mmの導電性芯材を切断した記チューブ状の導電性ゴム成形物の内径部に圧入し、ローラ状の成形体を得る。この成形体を、研磨砥石GC80を取り付けた研磨機(不図示)にセットし、研磨条件として回転速度2000rpm、送り速度500mm/分で外径が12mmから18mmになるように研磨し、導電性発泡ゴムローラを作成する。
【0039】
なお、上記装置では、UHF炉12、HAV炉13および引取機14の長さは、特に限定されないが、本発明では、それぞれ4m、6m、1mとすることができる。また、各装置の間は0.1m以上1.0m以下とする。こうすると、押出機を除く加硫発泡装置の全長がおよそ13mとなり、大幅に短いものである。
【0040】
上記により製造された導電性ゴムローラは、必要により表面層が形成されて、電子写真装置の各種導電性ゴムローラ、特に転写ローラとして有用である。
【0041】
図3に、本発明に係る導電性ゴムローラを画像形成装置に利用した例の説明図を示す。
【0042】
図3に示す画像形成装置は、電子写真方式のプロセスカートリッジを使用したレーザプリンタであり、その概略構成を示す。
【0043】
この画像形成装置は、像担持体としてドラム型の電子写真感光体(以下「感光ドラム」という)21を備えている。感光ドラム21は、接地された円筒アルミニウム基体の外周面に、有機光導電体(OPC)からなる感光層を設けたものである。この感光ドラム21は、駆動手段(不図示)により、矢印R1方向に所定のプロセススピード(周速度)、例えば50mm/secで回転駆動される。
【0044】
感光ドラム21表面は、帯電ローラ22によって均一に帯電される。帯電ローラ22は感光ドラム21表面に接触配置されており、感光ドラム21の矢印R1方向の回転に伴って矢印R2方向に従動回転する。帯電ローラ22には、帯電バイアス印加電源(高圧電源)により振動電圧(交流電圧VAC+直流電圧VDC)が印加され、これにより感光ドラム21表面は、−600V(暗部電位Vd)に一様に帯電処理される。帯電後の感光ドラム21表面は、レーザスキャナから出力されてミラーによって反射されたレーザ光23、すなわち、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して変調されたレーザ光により走査露光を受ける。これにより、感光ドラム21表面には、目的の画像情報に対応した静電潜像(明電部位Vl=−150V)が形成される。
【0045】
その静電潜像は、現像装置24の現像ローラ24aに印加された現像バイアスによって、負に帯電されたトナーが付着され、トナー像として反転現像される。
【0046】
一方、給紙部から給搬送された紙等の転写材27が、転写ガイドにガイドされて、感光ドラム21と転写ローラ26との間の転写部(転写ニップ部)Tに、感光ドラム21上のトナー像とタイミングを合わせるようにして供給される。転写部Tに供給された転写材27の表面に、転写バイアス印加電源により転写ローラ26に印加された転写バイアスによって、感光ドラム21上のトナー像が転写される。このとき、転写材27に転写されないで感光ドラム21表面に残ったトナー(残留トナー)は、クリーニングブレード28によって除去され、廃トナー容器29内へ収容される。
【0047】
一方、転写部Tを通った転写材27は、感光ドラム21から分離されて定着装置30へ搬送され、ここでトナー像の定着処理を受け、画像形成物(プリント)として画像形成装置本体の外部に排出される。
【0048】
上記画像形成装置において、本発明の導電性ゴムローラは、帯電ローラ、現像スリーブおよび転写ローラとして使用可能であり、特に転写ローラとして好ましい。
【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0050】
なお、以下の実施例及び比較例で使用した資材は以下の通りである。
【0051】
1)ゴム成分
NBR:アクリロニトリルブタジエンゴム「ニポールDN401LL」(商品名、日本ゼオン株式会社製)
ECO1:エピクロルヒドリンゴム「エピクロマーCG102」(商品名、ダイソー株式会社製)
ECO2:エピクロルヒドリンゴム「エピクロマーCG」(商品名、ダイソー株式会社製)
ECO3:エピクロルヒドリンゴム「エピクロマーCG104」(商品名、ダイソー株式会社製)
ECO4:エピクロルヒドリンゴム「エピオンON301」(商品名、ダイソー株式会社製)
ECO5:エピクロルヒドリンゴム「ゼクロン1100」(商品名、日本ゼオン株式会社製)
ゼオスパン:EO−PO−AGE三元共重合体「ゼオスパン8010」(商品名、日本ゼオン株式会社製)
【0052】
2)発泡剤、発泡助剤
OBSH:p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)「ネオセルボンN#1000S」(商品名、永和化成工業株式会社製)、発泡剤
ADCA:アゾジカルボンアミド「ビニホールAC」(商品名、永和化成工業株式会社製)、発泡剤
尿素:「セルペーストK5」(商品名、永和化成工業株式会社製)、発泡助剤
【0053】
3)加硫剤、加硫促進剤
硫黄(S):「サルファックスPMC」(商品名、鶴見化学工業株式会社製)、加硫剤
DM:ジベンゾチアジルジスルフィド「ノクセラーDM−P」(商品名、大内新興化学工業株式会社製)、加硫促進剤
TOT:テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド「ノクセラーTOT−N」(商品名、大内新興化学工業株式会社製)、加硫促進剤
【0054】
4)その他
酸化亜鉛:酸化亜鉛2種(ハクスイテック株式会社製)
ステアリン酸:ステアリン酸「ルナックS−20」(商品名、花王株式会社製)
カーボンブラック:カーボンブラック「旭#15」(商品名、旭カーボン株式会社製)
【0055】
以下の実施例、比較例で作製した導電性ゴムローラのローラ抵抗値を下記により測定し、次いで、40℃/95%RHに350時間置いた後に再びローラ抵抗値を測定し、その抵抗値の変化量(抵抗値変動量(桁))を評価した。
【0056】
(ローラ抵抗値の測定)
23℃/55%RHの環境で、導電性ゴムローラの軸体に、片側4.9Nの荷重を両方に掛けて、外径30mmのステンレス製のドラムに圧着し、回転させた状態で軸体とステンレスドラムとの間に2kVの電圧を印加して、ローラ抵抗値を測定した。なお、この測定値を初期値R0とする。
【0057】
さらに、この測定が終わった導電性ゴムローラを、40℃/95%RHの環境に350時間置いた後、23℃/55%RHの環境で再び抵抗値を測定した。この測定値を環境変化値RTとする。初期値R0と環境変化値RTの桁差(log(R0/RT)の絶対値)を経時による抵抗値変動量とした。これが小さいほど、導電性ゴムローラの抵抗の経時安定性が良い。なお、この変動量は0.15桁以下であることが好ましい。
【0058】
実施例1〜7、比較例1〜6
表1に示すゴム成分100質量部に対して、酸化亜鉛5.0質量部、ステアリン酸1.0質量部、カーボンブラック30.0質量部、硫黄1.5質量部、DM1.5質量部、TOT2.0質量部及びOBSH6.0質量部を用い、ニーダーで混練して原料ゴム組成物を得た。得た原料ゴム組成物を押出し機で円筒状に押し出し、マイクロ波出力を1.5kWに調整したUHF炉に送り、マイクロ波発泡加硫した。その後、加熱空気で200℃に調整したHAV炉に送り、加硫を完結した。加硫が完了した発泡ゴムチューブを引き取り機で引き取り、定尺切断機によりゴム長220mmに切断した。なお、発泡ゴムチューブの引き取り速度は2.6m/minであった。また、発泡後のチューブの内径は約5mmであり、外径は約16mmであった。
【0059】
次いで、発泡ゴムチューブに、ホットメルト接着剤を塗布したφ6mmのSUS製の芯材を圧入し、表面をGC80の研磨砥石を付けた研磨機で研削して、外径14mmの導電性ゴムローラを得た。
【0060】
得られた導電性ゴムローラのローラ抵抗値の変動量を上記により測定した。結果を表1に示す。
【0061】
比較例7
OBSHに換えて、ADCA4.0質量部と尿素2.0質量部を用いる以外は実施例7と同様にして導電性ゴムローラを得た。得られた導電性ゴムローラのローラ抵抗値の変動量を実施例7と同様に測定した。結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
実施例1は、ゴム成分が塩素を含まないNBRであり、また、発泡剤系がOBSH6質量部のみのであるので、ローラ抵抗値変動量が0.02桁と良好な結果であった。同様に実施例2も、塩素を含んでおらず、ADCA、尿素を含んでいないためローラ抵抗値変動量が0.04桁と良好な結果であった。
【0064】
実施例3及び同5は、塩素含有量がそれぞれ21.0質量%、14.0質量%のエピクロルヒドリンゴムを単独で用いた場合であるが、いずれも塩素含有量が21.0質量%以下であり、ローラ抵抗値変動量はそれぞれ0.12桁、0.10桁と良好であった。実施例4及び同6はNBR50質量部とエピクロルヒドリンゴム50質量部を使用した場合であり、ポリマー中の塩素含有量がそれぞれ12.5質量%、7.0質量%で、ローラ抵抗値変動量もそれぞれ0.11桁、0.10桁と良好であった。
【0065】
実施例7では、NBR50質量部、エピクロルヒドリンゴム40質量部、EO−PO−AGE三元共重合体10質量部を用いた場合で、塩素含有量が5.6質量%であり、ADCA、尿素を含んでいないため、ローラ抵抗値変動量が0.08桁と良好であった。
【0066】
一方、比較例1〜3は、塩素含有量がそれぞれ24.0質量%、29.0質量%、35.0質量%のエピクロルヒドリンゴムを単独で用いた場合であり、塩素含有量がいずれも21質量%を大きく超える。そのために、ローラ抵抗値変動量がそれぞれ0.21桁、0.30、0.72桁と大きくなってしまった。
【0067】
比較例4、5は,NBRとエピクロルヒドリンゴムを混合して使用したが、塩素含有量がそれぞれ21.8質量%、22.8質量%であるため、ローラ抵抗値変動量もそれぞれ0.16桁、0.22桁で、電子写真用導電性ゴムローラとして不適当であった。
【0068】
比較例6は、NBR20質量部、エピクロルヒドリンゴム70質量部、EO−PO−AGE三元共重合体10質量部を用いた場合で、塩素含有量が24.5質量%であったので、ローラ抵抗値変動量が0.25桁と大きくなった。
【0069】
比較例7は、実施例7で良好な結果を得たゴム組成としたが、発泡剤系がADCA−尿素であるため、塩素含有量が5.6質量%であるにかかわらず、ローラ抵抗値変動量が0.78桁と大きすぎる値であった。
【0070】
以上の結果から、導電性芯材上に発泡体ゴム層を有する導電性ゴムローラの製造方法において、以下のようにすることが望ましいとわかる。
(1)ゴム成分をNBR、エピクロルヒドリンゴム及びEO−PO−AGE三元共重合体から選び、かつ、その塩素含有量を21質量%以下とすること。
(2)発泡剤として、OBSHのみを使用し、尿素系発泡助剤を使用しないこと。
(3)ゴム材料の加硫発泡を、マイクロ波照射及び加熱空気による、マイクロ波加硫によって行うこと。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る導電性ゴムローラの一例の斜視図である。
【図2】本発明に係る加硫成形装置を説明する構成図である。
【図3】本発明に係る画像形成装置の模式的説明図である。
【符号の説明】
【0072】
1 軸芯体
2 発泡体ゴム層
11 押出機
12 マイクロ波加硫(UHF)炉
13 熱風加硫(HAV)炉
14 引取機
15 定尺切断機
21 感光ドラム
22 帯電ローラ
23 露光手段
24 現像装置
24a 現像ローラ
25 トナー
26 転写ローラ
27 転写材
28 クリーニングブレード
29 廃トナー容器
30 定着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性芯材上に発泡体ゴム層を有する導電性ゴムローラの製造方法であって、
発泡体ゴム層のゴム材料が、ゴム成分としてアクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム及びエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体から選ばれる少なくとも一種を含み、該ゴム成分中の塩素量が該ゴム成分100質量部に対して21質量%以下であり、
発泡体形成のために配される発泡剤がp,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)のみであり、尿素系発泡助剤が配されず、
かつ、該ゴム材料の加硫発泡が、マイクロ波照射及び加熱空気によって行われる
ことを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項2】
p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)の配合量が、ゴム成分100質量部に対して1質量部以上10質量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項3】
電子写真画像形成装置に用いる導電性ゴムローラが、請求項1又は2に記載の導電性ゴムローラの製造方法で形成されたものであることを特徴とする導電性ゴムローラ。
【請求項4】
電子写真画像形成装置に用いる転写ローラが、請求項3に記載の導電性ゴムローラであることを特徴とする転写ローラ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−216449(P2008−216449A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51400(P2007−51400)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】