説明

導電薄膜及びその製造方法

【課題】電極として用いることが可能な金属を含む導電薄膜を、表面の凹凸が少ない状態で形成できるようにする。
【解決手段】導電薄膜103は、例えば単結晶シリコンからなる基板101の上に、例えば、アモルファス状態のシリコン酸化膜よりなる下部絶縁膜102を介して形成されたものである。導電薄膜103は、ルテニウムと窒素から構成されたものである。導電薄膜103は、ルテニウムよりなるターゲットを、アルゴンガス(Ar)、キセノン(Xe)ガス、窒素ガスからなるECRプラズマを用いてスパッタリングして形成すればよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発メモリ素子の電極などに用いられる導電薄膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチメディア情報化社会の拡大、さらには、ユビキタスサービスの実現に向けた研究開発が盛んに行われている。特に、ネットワーク機器,情報端末に搭載される情報を記録する装置(以下、メモリという)は、重要なキーデバイスである。ユビキタス端末に搭載されるメモリに求められる機能として、高速動作,長期保持期間,耐環境性,低消費電力、さらに、電源を切っても蓄積された情報が消去されない機能、つまり、不揮発性が必須とされている。
【0003】
従来、メモリには、半導体装置が多く用いられてきた。その中の1つとして、DRAM(Dynamic Random Access Memory)が広く使用されている。DRAMの単位記憶素子(以下、メモリセルという)では、1個の蓄積容量と1個のMOSFET(Metal-oxide-semiconductor field effect transistor)からなり、選択されたメモリセルの蓄積容量に蓄えられた電荷の状態に対応する電圧を、ビット線から電気的なデジタル信号の「on」あるいは「off」として取り出すことで、記憶されているデータを読み出す(非特許文献1参照)。
【0004】
しかし、DRAMでは、電源を切ると蓄積容量の状態を維持することが不可能となり、蓄積された情報が消去されてしまう。言い換えると、DRAMは揮発性のメモリ素子である。また、よく知られているように、DRAMでは、データを再び書き込むリフレッシュ動作が必要となり、動作速度が低下するという欠点もある。
【0005】
電源を切ってもデータが揮発しない不揮発性のメモリとしては、ROM(Read only Memory)がよく知られているが、記録されているデータの消去や変更が不可能である。また、書き換え可能な不揮発性のメモリとして、EEPROM(Electrically erasable programmable read only memory)を用いたフラッシュメモリ(Flash memory)が開発されている(特許文献1,非特許文献1,2参照)。フラッシュメモリは、実用的な不揮発性メモリとして、多くの分野で使用されている。
【0006】
代表的なフラッシュメモリのメモリセルは、MOSFETのゲート電極部が、制御ゲート電極と浮遊ゲート電極を有した複数の層からなるスタックゲート(Stack gate)構造となっている。フラッシュメモリでは、浮遊ゲートに蓄積された電荷の量により、MOSFETの閾値が変化することを利用して、データの記録を可能としている。
【0007】
フラッシュメモリのデータの書き込みは、ドレイン領域に高電圧を印加して発生したホットキャリアがゲート絶縁膜のエネルギー障壁を乗り越えることで行う。また、ゲート絶縁膜に高電界を印加してF−N(Fowler-Nordheim)トンネル電流を流すことで、半導体基板から浮遊ゲートに電荷(一般的には電子)を注入することで、データの書き込みが行われる。データの消去は、ゲート絶縁膜に逆方向の高電界を印加することで、浮遊ゲートから電荷を引き抜くことにより行われる。
【0008】
フラッシュメモリは、DRAMのようなリフレッシュ動作が不要な反面、F−Nトンネル現象を用いるために、DRAMに比べてデータの書き込み及び消去に要する時間が桁違いに長くなってしまうという問題がある。さらに、データの書き込み・消去を繰り返すと、ゲート絶縁膜が劣化するので、書き換え回数がある程度制限されているという問題もある。
【0009】
上述したフラッシュメモリに対し、新たな不揮発性メモリとして、強誘電体の分極を用いた強誘電体メモリ(以下、FeRAM(Ferroelectric RAM)や、強磁性体の磁気抵抗を用いた強磁性体メモリ(以下、MRAM(Magnetoresist RAM)という)などが注目されており、盛んに研究されている。この中で、FeRAMは、既に実用化されていることもあり、諸処の課題を解決できれば、可搬型メモリだけでなくロジックのDRAMも置き換えできると期待されている。
【0010】
このようにフラッシュメモリの代わりとして期待されるFeRAMには、主に、スタック型とFET型に分類される。スタック型は、1トランジスタ1キャパシタ型FeRAMとも呼ばれ、この構造からスタック型キャパシタを持つものと、プレーナ型キャパシタを持つもの、立体型キャパシタを持つものがある。また、スタック型には、1トランジスタ1キャパシタ型FeRAMやこれを2つ重ねて安定動作化させた2トランジスタ2キャパシタ型FeRAMがある。実用的には、スタック型FeRAMが主流である。
【0011】
スタック型FeRAMは、例えば図13に示すように、半導体基板1301の上に、ソース1302,ドレイン1303,ゲート絶縁膜1304を介して設けられたゲート電極1305よりなるMOSトランジスタを備え、MOSトランジスタのソース1302に、下部電極1311,強誘電体からなる誘電体層1312,上部電極1313からなるキャパシタが接続している。図13に示すFeRAMの例では、ソース電極1306により上記キャパシタがソース1302に接続している。また、ドレイン1303にはドレイン電極1307が接続し、電流計が接続している。このFeRAMでは、強誘電体からなる誘電体層1312の分極の向きをソース−ドレイン間(チャネル1321)に流れる電流として検出することで、「on」あるいは「off」のデータとして取り出す機能を持っている。
【0012】
このFeRAMの構造で重要なのは、下部電極−誘電体−上部電極のキャパシタ構造の部分であり、特に強誘電体の絶縁性を保ち長期にわたりデータを保持するというメモリ安定性という意味では、下部電極と強誘電体の界面状態は大変重要である。例えば、下部電極の表面凹凸が大きい場合、強誘電体の結晶性に影響を与え、また、下部電極の表面凹凸がリークの原因となり、素子の電気耐圧が低下して長期間のメモリ保持が不可能となる。このため、キャパシタ構造においては、下部電極の材料や形成方法は大変重要な要素技術となっている。
【0013】
一方、Si半導体やディスプレイ素子分野において、SiO2よりも誘電率の高い誘電体(以下、High−k材料と呼ぶ)に対する要求が高まってきている。従来のSi−LSIでは、Si基板との相性やプロセス上のコンタミネーション抑制の観点から、Siの酸化物であるSiO2が誘電体材料として用いられてきた。しかし、SiO2膜厚を薄膜化することで、デバイスを高性能化してきた傾向が、SiO2膜厚が1.5nm以下では困難となってきた。これは、1.5nm以下のSiO2では、原理的にリーク電流を抑制することと所望の電気容量を得ることが両立できなくなったためである。
【0014】
このためSiO2の代わりにhigh−k材料を用い、SiO2換算膜厚(Equivalent oxide thickness:EOT)を1.5 nm以下にすることで、リーク電流を抑制できる実効的な膜厚にした上で、素子動作として十分な電気容量を得る検討が進められている(非特許文献3参照)。
【0015】
しかし、高誘電率を得られるhigh−k材料の禁制帯幅(Band gap、Eg)は、原理的にSiO2の禁制帯幅よりも小さく、同じ膜厚でもリーク電流が多く流れてしまう傾向にある。さらに、固体コンデンサの分野では、下部電極上に形成するhigh−k材料のリーク電流が理想的な値よりも大きく、信頼性の観点から低リーク電流化が検討課題となっている。リーク電流を低減するためには、high−k材料の成膜手法の最適化も重要であるが、下部電極の表面凹凸状態をより平坦化することも大変重要な課題とされている。実際に、下部電極の表面凹凸が大きい場合、リーク電流がより多いことも知られている。このため、下部電極の材料やその形成方法は大変重要な要素技術となっている。
【0016】
さらに、前述したMRAMにおいても、電極となる金属薄膜の形成は、重要な要素技術となっている。MRAMは、トンネル接合における強磁性トンネル抵抗(Tunnel magnetoresistance:TMR)効果を用いた不揮発性メモリであり、不揮発を備え、高速な読みだし/書き込みが可能である。また、MRAMは、無限に書き換えが可能であるなどの高い可能性を有している。
【0017】
一般的なMRAMは、熱酸化膜などで絶縁された基板の上に、下部磁性層(フリー層とも呼ばれる)、トンネル絶縁層、上部磁性層(ピンド層、ピニング層、カバー層)が形成された構造となっている。しかし、一般的なMRAM構造では、スイッチングするための磁界が大きくなることが問題である。このため、下部磁性層のフリー層に反平行結合膜としてルテニウム(Ru)を積層した、多層交換結合構造(Co90Fe10/Ru/Co90Fe10)にすることによって、スイッチング電界を低減する検討が進められている。この多層交換結合構造を形成するCo90Fe10膜の膜厚は3nmであり、Ru膜の膜厚は1nmであり、極めて薄い膜である(非特許文献4参照)。
【0018】
上記の多層交換結合構造において、金属薄膜は、1nmと極めて薄い膜であるために表面凹凸を十分小さくすることが重要であり、この金属薄膜の形成方法は大変重要な要素技術となっている。
【0019】
上記に挙げたように金属薄膜の形成(成膜)においては、現在までに様々な形成装置及び種々の薄膜形成方法が試みられている。例えば、真空蒸着法(Evaporation),電子ビーム蒸着法(Electron beam deposition,EB蒸着法)、PLD法(Pulse laser deposition)、DCスパッタ法やRFスパッタ法やマグネトロンスパッタ法などのスパッタリング法(sputtering,)、また、ECRスパッタ法(Electron cyclotron resonance sputtering)などが挙げられる。
【0020】
上述した成膜方法のうち、EB蒸着法は、高融点材料の成膜に適している。EB蒸着法では、原料を電子ビームで融解して基板の上に原料の膜を形成する方法であり、原料が高融点材料であっても、簡便に成膜できるのが特徴である。しかし、成膜された膜の結晶性や、原料状態により表面凹凸の小さい薄膜を基板上に形成することは難しいという問題を抱えている。
【0021】
また、エキシマレーザなどの強力なレーザ光源で原料のターゲットをスパッタすることで、良好な膜質で金属薄膜を形成できるPLD法が注目されている。しかし、この方法では、ターゲット面内においてレーザが照射される部分の面積が非常に小さく、レーザ照射部からスパッタされて供給される原料に大きな分布が生じる。このために、基板に形成される金属薄膜の膜厚や膜質などに大きな面内分布を生じ、また、同一条件で形成しても全く異なった特性になるなど再現性について大きな問題がある。
【0022】
上述した種々の膜形成方法に対し、強誘電体膜の形成方法としてプラズマを用いたスパッタリング法(単にスパッタ法ともいう)が注目されている。スパッタ法は、原料に危険度の高いガスや有毒ガスなどを用いることなく、堆積(成膜)する膜の表面凹凸(表面モフォロジ)が比較的良いなどの理由により、有望な成膜装置・方法の一つになっている。スパッタ法において、化学量論的組成の膜を得るための優れた装置・方法として反応性スパッタ装置・方法が有望である。
【0023】
スパッタ法の中でも、従来から使用されているDCスパッタ法やRFスパッタ法(従来スパッタ法という)においても、前述した金属薄膜の形成は検討されている。従来よりあるスパッタ法において、金属薄膜を堆積するときには、対象となる金属ターゲットを用い、スパッタガスとして不活性ガスのアルゴンを用いる。しかし、従来のスパツタ法においては、一般的にスパッタ現象を起こすために入力する高周波バイアスが500W程度と大きく、成膜すべき基板及び成膜した薄膜をスパッタしてしまう現象が見られるなど基板及び薄膜にダメージを与え、十分小さな膜特性と表面凹凸を得ることが難しかった。
【0024】
これに対し、良好な膜質の成膜が可能な方法として、電子サイクロトロン共鳴(ECR)によりプラズマを発生させ、発生させたプラズマの発散磁界を利用して作られたプラズマ流を基板に照射し、同時に、ターゲットと接地との間に高周波または負の直流電圧を印加し、上記ECRで発生させたプラズマ流中のイオンをターゲットに引き込み衝突させてスパッタリングし、膜を基板に堆積させるECRスパッタ法がある。
【0025】
従来スパッタ法では、0.1Pa程度以上のガス圧力でないと安定なプラズマが得られないが、ECRスパッタ法では、安定なECRプラズマが0.01 Pa台の圧力で得られる特徴を持つ。また、ECRスパッタ法は、高周波または負の直流高電圧により、ECRにより生成した粒子をターゲットに衝突させてスパッタリングを行うため、低い圧力でスパッタリングができる。
【0026】
ここで、ECRプラズマ流中のイオンは、発散磁界により10eVから数10eVのエネルギーを持っている。また、気体が分子流として振る舞う程度の低い圧力でプラズマを生成・輸送しているため、基板に到達するイオンのイオン電流密度も大きく取れる。従って、ECRプラズマ流中のイオンは、スパッタされて基板の上に飛来した原料粒子にエネルギーを与えるとともに、酸化物を成膜する場合に、原料粒子と酸素との結合反応を促進することとなり、堆積した膜の膜質が改善される。
【0027】
上述したように、ECRスパッタ法では、低い基板温度で高品質の膜が形成できることが特徴となっている。ECRスパッタ法でいかに高品質な薄膜を堆積し得るかは、例えば、特許文献2、特許文献3、及び非特許文献5を参照されたい。
【0028】
さらに、ECRスパッタ法は、膜の堆積速度が比較的安定しているため、ゲート絶縁膜などの極めて薄い膜を膜厚の制御よく形成するのに適している。また、ECRスパッタ法で堆積した膜の表面モフォロジは、原子スケールのオーダーで平坦である。従って、ECRスパッタ法は、金属より構成される電極膜の形成にとって有望な方法であるといえる。
【0029】
しかしながら、技術的な進展を維持するためには、ECRスパッタ法を用いても、十分な表面凹凸性を得ることが困難となってきた。具体的には、前述したようなメモリを取り巻く状況に対し、強誘電体の分極量により半導体の状態を変化させる(チャネルを形成する)などの効果によりメモリを実現させるのではなく、図14に示すように半導体1401の上部に直接形成した強誘電体層1403の抵抗値を変化させ、結果としてメモリ機能を実現する技術が提案されている。図14に示す素子の強誘電体層1403の抵抗値の制御は、上部電極1404と下部電極1402との間に電圧を印加することで行う。
【0030】
【特許文献1】特開平8−031960号公報
【特許文献2】特許第2814416号公報
【特許文献3】特許第2779997号公報
【特許文献4】特開平10−152397号公報
【特許文献5】特開平10−152398号公報
【非特許文献1】サイモン・ジー著、「フィジクス・オブ・セミコンダクター・デバイス」、1981年、(S.M.Sze,"Physics of Semiconductor Devices",John Wiley and Sons,Inc.)
【非特許文献2】舛岡富士雄著、応用物理、73巻、第9号、頁1166、2004年。
【非特許文献3】ウィルクらのジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス、第87号、484頁、2000年、(Wilk et a1., J.Appl.Phys., 87, 484(2000).)
【非特許文献4】斎藤良招、「MRAMの現状と将来展望」、FEDレビュー第1号、No.25、2001年。
【非特許文献5】天沢他のジャーナル・オブ・バキューム・サイエンス・アンド・テクノロジー、第B17巻、第5号、2222頁、1999年(J.Vac.Sci.Technol.,B17,no.5,2222(1999).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
ところで、図14で示した構造は、下部電極1402である金属薄膜の上に、抵抗スイッチ現象を起こす強誘電体層1403が形成され、さらに上部電極1404として金属薄膜が形成されている。図14に示す素子構造において、上部電極1404と下部電極1402に電圧を印加することにより、強誘電体層1403の抵抗値が高抵抗状態から低抵抗状態へ、また、低抵抗状態から高抵抗状態へスイッチングする現象が可逆的に安定に現れる。この現象は、巨大電界抵抗変化(Colossal electro-resonance:CER)効果とも呼ばれ、この現象を応用したRRAM(Resistance RAM、ReRAMとも呼ばれる)が、フラッシュメモリに替わる新たな不揮発性メモリとして注目されている。抵抗スイッチ現象は、上記の強誘電体層だけでなく、強磁性体材料のPrCaMnOやTiO、NiO等で観察されている。以下では、抵抗スイッチ現象を起こす膜を、CER膜と呼ぶ。
【0032】
図15に、抵抗スイッチ現象の電圧電流特性の一例を示す。100nm膜厚のSiO2が形成されたSi基板上に、下部電極としてPtとTiからなる多層膜金属層を形成し、CER膜としてチタン酸ビスマス層を形成し、上部電極として金電極を形成したものの特性である。PtとTi、チタン酸ビスマス層は、各々ECRスパッタ法を用いて形成した。また、金は真空蒸着法を用いて形成した。図15の横軸は、上部電極と下部電極との間に印加する電圧値であり、縦軸は、電圧を印加したときに観測される電流値の絶対値であり、対数表示としてある。ただし、ここで説明する電圧値や電流値は、実際の素子で観測されたものを例として使用している。従って、本現象は、以下に示す数値に限るものではない。実際に素子に用いる膜の材料や膜厚、その他の条件により、他の数値が観測されることがある。
【0033】
まず、上部電極に正の電圧を印加すると、図15中の(1)に示すように、0〜+2.0Vでは、10-8〜10-5Aと流れる電流は非常に少ない。しかし、(2)に示すように、+2.0Vを超えると急に正の電流が流れる。実際には、1×10-3A以上の電流が流れているが、測定器を保護するためにこれ電流を流さないようにしているので、観測されていない。続いて、上部電極に正の電圧を印加すると、(3)に示すように、0.1V程度で1×10-3A以上の正電流が流れる抵抗が低い状態である。さらに続いて、上部電極に−1.5V迄の負電圧を印加しても、(4)で示すように、10-3〜10-2Aの電流が流れる抵抗が低い状態となっている。
【0034】
この後、−1.5V以上の負電圧を印加すると、(5)に示すように、流れる電流値が急激に減少して(6)に示すように抵抗値が大きくなる。この後、負電圧を印加しても(6)の高抵抗状態が維持される。この状態で、上部電極に正の電圧を印加すると、(1)に示すように0〜2.0V程度まで高抵抗の状態であるが、+2.0V以上の電圧を印加して(2)のように電流が流れると(3)の低抵抗状態となる。以上に説明するように、図14で示す素子では、「高抵抗状態」と「低抵抗状態」とを可逆的にスイッチする現象が見られる。
【0035】
しかし、図15に示すように、低抵抗状態の電流値(以下、On電流と呼ぶ)は、10-2A程度であり、On電流が多く流れ回路上で問題となっているPRAMと同じ程度である。回路設計上安定した素子を得るために必要な電流値としては、フラッシュメモリで達成されている10-6A以下が望ましいが、せめてMRAM程度の10-4A以下に低減することが望ましい。このOn電流の低減がなされなければ、RRAMの実用化に大きな障壁となることが予想され、重要な検討課題である。
【0036】
上記のOn電流の低減について様々な検討が行われている。特に重要と思われる技術がCER膜の成膜技術である。しかしながら、このことに加え、下地となる下部電極となる金属薄膜の表面凹凸性が、抵抗スイッチ現象を起こす素子の特性を左右することが判明され、下地となる下部電極の成膜技術も、CER膜の形成に対して非常に重要であることが判明されてきた。
【0037】
図15の例に示したPt/Ti下部電極の表面凹凸は、原子力電子顕微鏡(AFM)や断面電子顕微鏡(TEM)等の観察により、約2nm程度あることが判明している。このようにわずかではあるが表面凹凸がある金属薄膜にCER膜を形成すると、On電流が多く流れてしまうことがわかった。このように、従来では、キャパシタを構成する電極膜の表面の凹凸を小さくすることが容易ではなく、安定した動作が得られるメモリ素子が得にくいなどの問題があった。
【0038】
本発明は、以上で説明した問題点を解決するために成されたものであり、電極として用いることが可能な金属を含む導電薄膜を、表面の凹凸が少ない状態で形成できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0039】
本発明に係る導電薄膜は、基板の上に形成された導電薄膜であって、この導電薄膜は、ルテニウムと窒素とから構成され、A軸配向の構造がC軸配向の構造より多い状態とされているものである。窒素の存在により結晶面内配向性が変化するとともにルテニウムのグレインサイズが小さくなる。
【0040】
また、本発明に係る導電薄膜の製造方法は、所定の組成比で供給された不活性ガスと窒素ガスとからなるプラズマを生成し、ルテニウムから構成されたターゲットに負のバイアスを印加してプラズマより発生した粒子をターゲットに衝突させてスパッタ現象を起こし、ターゲットを構成するルテニウムを基板の上に堆積することで、ルテニウム及び窒素から構成された導電薄膜を基板の上に形成する工程を備えるようにしたものである。また、プラズマは、電子サイクロトロン共鳴により生成されて発散磁界により運動エネルギーが与えられた電子サイクロトロン共鳴プラズマであるとよい。また、基板は所定温度に加熱された状態としてもよい。
【発明の効果】
【0041】
以上説明したように、本発明によれば、導電膜をルテニウムと窒素とから構成し、A軸配向の構造がC軸配向の構造より多い状態としたので、電極として用いることが可能な金属を含む導電薄膜を、表面の凹凸が少ない状態で形成できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る導電薄膜103の構成を示す構成図であり、断面を模式的に示している。図1に示す導電薄膜103は、例えば単結晶シリコンからなる基板101の上に、例えば、アモルファス状態のシリコン酸化膜よりなる下部絶縁膜102を介して形成されたものである。導電薄膜103は、ルテニウムと窒素から構成されたものである。なお、以降では、ルテニウムと窒素とから構成された導電物質について、便宜上、窒化ルテニウムと称する。また、ルテニウムに窒素が導入される状態を窒化されると表現する。ただし、これらの状態が、必ずしも、窒素とルテニウムとが化合物を形成していることを示すものとは限らない。
【0043】
なお、下部絶縁膜102は、シリコン酸化物(二酸化シリコン)に限らず、シリコン酸窒化膜、アルミナなどをはじめ、リチウム,ベリリウム,マグネシウム,カルシウムなどの軽金属の例えばLiNbO3などの形態の酸化物であってもよい。また、下部絶縁膜102は、LiCaAlF6,LiSrAlF6,LiYF4,LiLuF4,KMgF3などのフッ化物、あるいは、スカンジウム,チタン,ストロンチウム,イットリウム,ジルコニウム,ハフニウム,タンタル,及びランタン系列を含む遷移金属の酸化物及び窒化物で合ってもよい。また、下部絶縁膜102は、以上の元素を含むシリケート(金属、シリコン、酸素の三元化合物)、及びこれらの元素を含むアルミネート(金属、アルミニウム、酸素の三元化合物)、さらに、以上の元素を2以上含む酸化物及び窒化物などであってもよい。さらにまた、これらの絶縁膜からなる多層構造の絶縁層であってよい。
【0044】
以上で説明した、導電薄膜103についての具体的な製法は、後述するが、図2に示すようなECRスパッタ装置により、ルテニウムよりなるターゲットを、アルゴンガス(Ar)、キセノン(Xe)ガス、窒素ガスからなるECRプラズマを用いてスパッタリングして形成すればよい。
【0045】
ここで、ECRスパッタ装置について、図2の概略的な断面図を用いて説明する。図2に示すECRスパッタ装置は、まず、処理室201とこれに連通するプラズマ生成室202とを備えている。処理室201は、図示していない真空排気装置に連通し、真空排気装置によりプラズマ生成室202とともに内部が真空排気される。
【0046】
処理室201には、膜形成対象の基板101が固定される基板ホルダ204が設けられている。基板ホルダ204は、図示しない回転機構により所望の角度に傾斜し、かつ回転可能とされている。基板ホルダ204を傾斜して回転させることで、堆積させる材料による膜の面内均一性と段差被覆性とを向上させることが可能となる。また、処理室201内のプラズマ生成室202からのプラズマが導入される開口領域において、開口領域を取り巻くようにリング状のターゲット205が備えられている。
【0047】
ターゲット205は、絶縁体からなる容器205a内に載置され、内側の面が処理室201内に露出している。また、ターゲット205には、マッチングユニット221を介して高周波電源222が接続され、例えば、13.56MHzの高周波が印加可能とされている。ターゲット205が導電性材料の場合、直流を印加するようにしても良い。なお、ターゲット205は、上面から見た状態で、円形状だけでなく、多角形状態であっても良い。
【0048】
プラズマ生成室202は、真空導波管206に連通し、真空導波管206は、石英窓207を介して導波管208に接続されている。導波管208は、図示していないマイクロ波発生部に連通している。また、プラズマ生成室202の周囲及びプラズマ生成室202の上部には、磁気コイル(磁場形成手段)210が備えられている。これら、マイクロ波発生部、導波管208,石英窓207,真空導波管206により、マイクロ波供給手段が構成されている。なお、導波管208の途中に、モード変換器を設けるようにする構成もある。
【0049】
図2のECRスパッタ装置の動作例について説明すると、まず、処理室201及びプラズマ生成室202内を真空排気した後、不活性ガス導入部211より不活性ガスであるArガス又はXeガスを導入し、また、反応性ガス導入部212より反応性ガス(窒素ガス)を導入し、プラズマ生成室202内を例えば10-5〜10-4Pa程度の圧力にする。この状態で、磁気コイル210よりプラズマ生成室202内に0.0875T(テスラ)の磁場を発生させた後、導波管208,石英窓207,及び真空導波管206を介してプラズマ生成室202内に2.45GHzのマイクロ波を導入し、電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマを発生させる。なお、1T=10000ガウスである。
【0050】
ECRプラズマは、磁気コイル210からの発散磁場により、基板ホルダ204の方向にプラズマ流を形成する。生成されたECRプラズマのうち、電子は磁気コイル210で形成される発散磁場によりターゲット205の中を貫通して基板101の側に引き出され、基板101の表面に照射される。このとき同時に、ECRプラズマ中のプラスイオンが、電子による負電荷を中和するように、すなわち、電界を弱めるように基板101側に引き出され、成膜している層の表面に照射される。このように各粒子が照射される間に、プラスイオンの一部は電子と結合して中性粒子となる。
【0051】
なお、図2の薄膜形成装置では、図示していないマイクロ波発生部より供給されたマイクロ波電力を、導波管208において一旦分岐し、プラズマ生成室202上部の真空導波管206に、プラズマ生成室202の側方から石英窓207を介して結合させている。このようにすることで、石英窓207に対するターゲット205からの飛散粒子の付着が、防げるようになり、ランニングタイムを大幅に改善できるようになる。また、処理対象の基板とターゲット205との間にシャッターなどを設け、基板に対する原料の到達を制御するようにしてもよい。
【0052】
次に、図1に示した導電薄膜103の製造方法例について、図3を用いて説明する。まず、図3(a)に示すように、主表面が面方位(100)で抵抗率が1〜2Ω−cmのp型の単結晶シリコンからなる基板101を用意し、基板101の表面を硫酸と過酸化水素水の混合液、並びに、純水と希フッ化水素水の混合液により洗浄し、この後で乾燥させる。
【0053】
次いで、洗浄・乾燥した基板の上に、下部絶縁膜102が形成された状態とする。下部絶縁膜102の形成では、図2に示したECRスパッタ装置を用い、処理室201内の基板ホルダ204に基板を固定し、ターゲット205として純シリコン(Si)を用い、プラズマガスとしてアルゴン(Ar)と酸素ガスを用いたECRスパッタ法により、基板101の上に、表面を覆う程度にSi−O分子によるメタルモード膜を形成する。
【0054】
図2に示すECRスパッタ法において、まず、プラズマ生成室202の内部を10-4〜10-5Pa台の高真空状態に真空排気した後、プラズマ生成室202の内部に、不活性ガス導入部211より、例えば希ガスであるArガスを流量20sccm程度導入し、例えば反応性ガスである酸素ガスを5sccm程度導入し、プラズマ生成室202内の圧力を例えば10-2〜10-3Pa台に設定する。なお、sccmは流量の単位であり、0℃で1気圧の流体が1分間に1cm3流れることを示す。また、プラズマ生成室202内には、磁気コイル210にコイル電流を例えば28Aで供給することで電子サイクロトロン共鳴条件の磁場を与える。プラズマ生成室202内の磁束密度を87.5mT程度の磁場状態とする。
【0055】
加えて、図示していないマイクロ波発生部より、例えば2.45GHzのマイクロ波(例えば500W)を供給し、これを導波管208,石英窓207,真空導波管206を介してプラズマ生成室202内に導入し、このマイクロ波の導入により、プラズマ生成室202内にアルゴンのプラズマが生成された状態とする。
【0056】
上述したことにより生成されたプラズマは、磁気コイル210の発散磁場によりプラズマ生成室202より処理室201の側に放出される。また、プラズマ生成室202の出口に配置されたターゲット205に、高周波電源222より高周波電力(例えば500W)を供給する。このことにより、ターゲット205にAr粒子が衝突してスパッタリング現象が起こり、Si粒子がターゲット205より飛び出す。
【0057】
この状態とされた後、ターゲット205と基板101との間の図示しないシャッターを開放すると、ターゲット205より飛び出したSi粒子は、プラズマ生成室202より放出されたプラズマ、及び、反応性ガス導入部212より導入されてプラズマにより活性化された酸素ガスとともに基板101の表面に到達し、活性化された酸素により酸化され二酸化シリコンとなる。
【0058】
以上のことにより、基板101の上に二酸化シリコンからなる例えば100nm程度の膜厚の下部絶縁膜102が形成された状態とすることができる(図3(a))。所定の膜厚まで形成した後、前述したシャッターを閉じた状態としてスパッタされた原料が基板101に到達しないようにすることで、成膜を停止する。この後、マイクロ波電力の供給を停止するなどによりプラズマ照射を停止し、各ガスの供給を停止し、基板温度が所定の値にまで低下しまた処理室201の内部圧力を上昇させて大気圧程度とした後、処理室201の内部より下部絶縁膜102が形成された基板101を搬出する。
【0059】
なお、下部絶縁膜102は、この上に形成されて電極として用いられる導電薄膜103に電圧を印加した時に、基板101に電圧が洩れて所望の電気的特性に影響することがないように絶縁を図るものである。絶縁性が持てれば酸化シリコン以外の他の絶縁材料から構成しても良く、また、下部絶縁膜102の膜厚は100nmに限らず、これより薄くても良く厚くても良い。下部絶縁膜102は、上述したECRスパッタによる膜形成において、基板101に対して加熱をしていないが、基板101を加熱しながら膜の形成を行っても良い。さらに、シリコンよりなる基板101の表面を熱酸化法により酸化することで形成した酸化シリコン膜を下部絶縁膜102として用いるようにしても良い。
【0060】
以上のようにして下部絶縁膜102を形成した後、基板101を装置内より大気中に搬出し、次いで、ターゲット205として純ルテニウム(Ru)を用いて導電薄膜103を形成する。導電薄膜103の形成について説明すると、図2同様のECRスパッタ装置の基板ホルダ204に、基板101を固定する。引き続いて、プラズマガスとしてXe、反応性ガスとして窒素(N2)を用いたECRスパッタ法により、図3(b)に示すように、下部絶縁膜102の上に、表面を覆う程度に窒化ルテニウムからなる導電薄膜103が形成された状態とする。
【0061】
導電薄膜103の形成について詳述すると、純ルテニウムからなるターゲット205を用いた図2に示すECRスパッタ法において、まず、プラズマ生成室202内を10-4〜10-5Pa台の高真空状態に真空排気した後、基板101を例えば400℃程度に加熱し、プラズマ生成室202内に、不活性ガス導入部211より、例えばXeを26sccmで導入し、例えば反応性ガスである窒素ガスを8sccm程度導入し、プラズマ生成室202内の圧力を例えば10-1〜10-2Pa台に設定する。また、プラズマ生成室202内には、磁気コイル210にコイル電流を例えば26Aで供給することで電子サイクロトロン共鳴条件の磁場を与える。
【0062】
加えて、図示していないマイクロ波発生部より、例えば2.45GHzのマイクロ波(例えば800W)を供給し、これを導波管208,石英窓207,及び真空導波管206を介してプラズマ生成室202内に導入し、このマイクロ波の導入により、プラズマ生成室202にXeと反応性ガスの窒素からなるプラズマが生成した状態とする。
【0063】
この生成されたプラズマは、磁気コイル210の発散磁場によりプラズマ生成室202より処理室201の側に放出される。また、プラズマ生成室202の出口に配置されたRuよりなるターゲット205に、高周波電源222より高周波電力(例えば500W)を供給する。このことにより、ターゲット205にXe粒子が衝突してスパッタリング現象を起こし、Ru粒子がターゲット205より飛び出す。ターゲット205より飛び出したRu粒子は、プラズマにより活性化された窒素ガスとともに下部絶縁膜102の表面に到達し、活性化された窒素により、窒化ルテニウムとから構成された導電薄膜103が堆積する。
【0064】
以上のことにより、下部絶縁膜102の上に例えば10nm程度の膜厚の導電薄膜103が形成された状態が得られる(図3(b))。なお、導電薄膜103の膜厚は、10nmに限るものではなく、これより厚くても薄くてもよい。
【0065】
ところで、上述したようにECRスパッタ法により窒化ルテニウムからなる導電薄膜103を形成するときに、基板101を400℃に加熱したが、この加熱は必ずしも必要なものではない。ただし、加熱を行わない場合、ルテニウムの二酸化シリコンへの密着性が低下するため、導電薄膜103の剥がれが生じる恐れがあり、これを防ぐために、基板101を加熱して膜を形成する方が望ましい。以上のようにして所望の膜厚に導電薄膜103を堆積した後、シャッターを閉じることなどにより成膜を停止し、マイクロ波電力の供給を停止してプラズマ照射を停止することなどの終了処理をすれば、基板101が搬出可能となる。
【0066】
次に、ECRスパッタ法により形成される窒化ルテニウムからなる導電薄膜103の特性について、より詳細に説明する。発明者らは、注意深く観察を繰り返すことで、スパッタガスと反応性ガスの窒素ガスからなるECRプラズマを用いたスパッタ時に、成膜される導電薄膜103の表面凹凸性,成膜速度,抵抗率,及び結晶性などの膜特性が、供給する窒素ガスの量(流量)によって制御できることを見出した。
【0067】
図4は、ECRスパッタ法において、ルテニウムターゲットを用いて導電薄膜103を成膜した場合の、導入したXeガスと窒素ガスの割合に対する成膜速度の変化を示した特性図である。図4は、単結晶シリコンよりなる基板101に熱酸化により膜厚100nmの下部絶縁膜102を形成したものを用いた場合で、横軸に導入した全ガス流量に対してのXeガスの流量比(Xe/(Xe+N2))を示し、縦軸に成膜速度を示したものである。つまり、横軸が1の場合は、供給したガスがXeガスのみであり、0の場合は、供給したガスが窒素ガスのみの場合である。なお、Xeガスの供給量は26sccmと一定の値とした。
【0068】
図4より、窒素を導入しない場合、5nm/minであった成膜速度は窒素ガスの割合が増えるに従って緩やかに低下する傾向にあることがわかる。窒素流量比0.2の場合、成膜速度は、約3nm/minとなる。
【0069】
また、図5に、同様にECRスパッタ法において、ルテニウムターゲットを用いて導電薄膜103を成膜した場合の、導入したXeガスと窒素ガスの割合に対する導電薄膜103の抵抗率の変化を示す。図5に示すように、窒素を導入しない(Xe流量比1)場合、30μΩ−cmであった導電薄膜103の抵抗率は、窒素ガスの割合が増えるに従って緩やかに上昇する傾向にあることがわかる。導電薄膜103の抵抗率は、Xe流量比0.6以下(窒素流量比0.4)以上で一定の値となり、約50μΩ−cmとなる。以上のことより、スパッタ時の窒素流量により、導電薄膜103の成膜速度及び抵抗率を精度良く制御することが可能であることがわかる。
【0070】
次に、図6に、ECRスパッタ法において、ルテニウムターゲットを用いて導電薄膜103を成膜した場合の、導入したXeガスと窒素ガスの割合に対するX線回折(XRD)で観測された導電薄膜103におけるRuの(002),(100),及び(101)方向のピーク強度の変化を示す。図6において、(002)方向は白丸で示し、(100)方向は黒丸で示し、(101)方向は黒四角で示している。図6の結果(特性)は、単結晶シリコンよりなる基板101に熱酸化により膜厚100nmの下部絶縁膜102を形成したものを用いた場合である。
【0071】
また、図6では、横軸に導入した全ガス流量に対してのXeガスの流量比「Xe/(Xe+N2)」を示し、縦軸にXRDで観測された(002),(100),及び(101)面のピークの強度を任意単位で示したものである。(002)面の格子間隔は0.2142nmであり、(100)面の格子間隔は0.2343nmであり、(101)面の格子間隔は0.2056nmある。横軸が0の場合は窒素ガスのみであり、1の場合はXeガスのみの場合である。Xeガスは26sccmと一定の値とした。
【0072】
図6より、窒素を導入しない場合、言い換えると、窒素を含まないルテニウム膜は(002)面に配向しており、よく知られたC軸配向であった。これに対し、窒素ガスを流量比0.2(図6では、0.8に相当)程度導入して形成した導電薄膜103では、(002)のピークよりも(101)と(100)のピークが大きくなり、膜の結晶構造が大きく変化することがわかる。この現象については知られておらず、ECRスパッタ法を用いた窒素導入により初めて可能となったものである。また、さらに窒素導入量を増加してゆくと、(101)と(100)のピークは小さくなるが、(002)面のピークは大きくなる。窒素流量比0.4(図6では、0.6に相当)では、ほぼ同じ程度のピーク強度となる。これらの結果より、スパッタ時の窒素流量により、導電薄膜103の結晶性を制御することが可能であることがわかる。
【0073】
同様に、基板温度を100℃と加熱した場合の、導入したXeガスと窒素ガスの割合に対するX線回折(XRD)で観測された導電薄膜におけるRu(002),(100),及び(101)方向のピークの強度の変化を図7に示す。図7では、横軸に導入した全ガス流量に対してのXeガスの流量比「Xe/(Xe+N2)」を示し、縦軸にXRDで観測された(002),(100),及び(101)方向のピークの強度を(002)のピーク強度で規格かした値を任意単位で示したものである。Xeガスは10sccmと一定の値とした。
【0074】
図7に示すように、窒素を導入しない場合、言い換えると、窒素を含まないルテニウム膜は(002)面に配向しており、よく知られたC軸配向であった。これに対し、窒素を流量比0.2(図7では0.8に相当)程度導入して形成した導電薄膜では、(002)のピークが、(100)及び(101)のピーク強度と同程度となり、導電薄膜の結晶構造が変化することが判る。
【0075】
さらに、窒素を流量比0.4(図7では、0.6に相当)程度以上導入して形成した導電薄膜では、(002)のピークよりも(100)面に配向しており、A軸配向となり、導電薄膜の結晶構造が大きく変化することがわかる。また、さらに窒素の導入量を増加させていくと、(101)及び(100)のピークは、窒素流量比0.5程度で最大となり、以後徐々に小さくなる。窒素流量比0.6(図7では0.4に相当)程度以上を導入すると、(002)ピークよりも小さくなる。
【0076】
導入するXeガス流量や、基板温度のスパッタ条件で若干の変化はするものの、導入する窒素流量により(002)のC軸配向を示すピークよりも(100)のA軸配向を示すピークの強度が大きくなる現象は現れ、スパッタ時の窒素流量により、導電薄膜の結晶性を制御することが可能であることがわかる。
【0077】
図8に、導入した窒素ガスの流量に対する表面凹凸性を示す原子力顕微鏡(AFM)像を示した俯瞰図を示す。図8(a)は、窒素を導入せずに形成したルテニウム膜の状態を示し、図8(b)は、窒素ガスを8sccm導入して形成した導電薄膜103の状態を示し、図8(c)は、窒素ガスを20sccm導入して形成した導電薄膜103の状態を示している。なお、窒素ガス8sccm導入の条件は、図6における窒素ガスの流量比「N2/(Xe+N2)」が0.82に相当し、窒素ガス20sccm導入の条件は、図6における窒素ガスの流量比「N2/(Xe+N2)」が0.58に相当する。いずれの条件でも、表面凹凸が少なく平滑な状態が得られているが、窒素ガスの導入量が多いほど、より平坦な膜が得られていることが判る。
【0078】
さらに、詳細に調べるために、導入した窒素ガスの流量に対する表面凹凸性の変化を示した特性図を図9に示す。図9は、単結晶シリコンよりなる基板101に熱酸化により膜厚100nmの下部絶縁膜102を形成したものを用いた場合で、横軸に導入した窒素ガスの流量を示し、縦軸に表面凹凸性を示す指針として原子力顕微鏡で観察された自乗平均面粗さ(RMS)と、平均粒子径を示したものである。なお、原子間力顕微鏡による表面凹凸像(トポロジー像)の凹凸から平均的な粒子の高さを求め、求めた平均粒子高さの半分の値をしきい値として2値化処理を行い、観察される粒子を横から輪切りしたときの面を円と見なしてこの直径の値を求め、観察される個々の粒子毎に求めた上記直径の値を平均して平均粒子径としている。
【0079】
図9より、窒化されていないルテニウム膜のRMSは0.14nm程度であり、表面凹凸はかなり小さいことがわかる。しかし、窒素を導入してゆくと、形成される導電薄膜103のRMSの値は、さらに小さくなる傾向となる。窒素導入量20sccmでは、0.13nmとなり、導電薄膜103の表面は、非常に平滑な状態となることがわかった。これは、図9からわかる通り、窒素を導入すると、ある導入量より平均粒子径が小さくなることから、窒化により結晶面内配向性が変化するとともにルテニウムのグレインサイズが小さくなることに起因すると考えられる。
【0080】
ここで、図6に示す結果と、図5及び図8に示す結果とを参照すると、(002)のピークよりも(100)のピークが高くなる範囲であれば、導電薄膜103は、抵抗率があまり高くない範囲で、ルテニウムのみの場合よりも高い平坦性が得られることが判る。言い換えると、ルテニウムと窒素とから構成された導電薄膜103は、A軸配向の構造がC軸配向の構造より多い状態とされていれば、ルテニウムのみの場合よりも高い平坦性が得られるものと考えられる。
【0081】
さらに、断面電子顕微鏡(TEM)の観察図を、図10に示す。図10は、単結晶シリコンよりなる基板101に熱酸化により膜厚100nmの下部絶縁膜102を形成したものを用い、また、Xeガス流量は26sccmとし、窒素ガス流量は8sccmとして前述したECRスパッタ法により形成した導電薄膜103の場合を示している。図10では、下部絶縁膜と導電薄膜と、この上に保護のために形成した保護膜とが観察された状態を示している。図10より、導電薄膜103中の結晶は、C軸方向のみならず横方向の配向性が見られることがわかる。また、表面凹凸もグレインサイズが小さくなったために、平滑な面であることがわかる。
【0082】
ECRスパッタ成膜により形成した窒化ルテニウムからなる導電薄膜103の表面が、非常に平滑に形成されることが判明したので、このように形成された薄膜の上にCER膜としてチタン酸ビスマス膜を形成し、図11に示すような素子を作製し、抵抗スイッチ特性を確認した。図11に示す素子について説明すると、例えば、単結晶シリコンよりなる基板1101の上に、二酸化シリコンよりなる下部絶縁膜1102を備え、この上に、窒化ルテニウムとから構成された膜厚10nmの下部電極層1103を備える。下部電極層1103が、前述した導電薄膜103に相当する。
【0083】
また、図11に示す素子は、下部電極層1103の上に、Bi4Ti312を含む金属酸化物よりなる膜厚30nmのCER層1104を備え、この上に、Auより構成された膜厚80nmの上部電極1105を備える。なお、前述したように、基板及び絶縁膜の構成は、これに限るものでなく、電気特性に影響を及ぼさなければ、他の材料も適当に選択できる。
【0084】
図11に示す素子の製造について簡単に説明すると、前述したようにすることで、基板1101の上に下部絶縁膜1102を形成した基板を、ECRスパッタ装置より大気中に搬出し、次いで、純ルテニウムよりなるターゲットを用いた前述同様のECRスパッタ法により、下部絶縁膜1102の上に導電薄膜を堆積することで、下部電極層1103が形成された状態とする。例えば、図2に示すECRスパッタ装置の基板ホルダ204に、基板1101を固定する。引き続いて、プラズマガスとしてXeを用い、反応性ガスとして窒素を用いたECRスパッタ法により、下部絶縁膜1102の上に、表面を覆う程度に窒化ルテニウムからなる導電薄膜を堆積することで、下部電極層1103が形成された状態とする。
【0085】
以上のようにして本発明の導電薄膜よりなる下部電極層1103を形成した基板1101を装置内より大気中に搬出し、次いで、ターゲット205としてBiとTiの割合が4:3の焼結体(Bi−Ti−O)を用いた図2のECRスパッタ装置の基板ホルダ204に、基板1101を固定する。引き続いて、プラズマガスとしてArと酸素を用いたECRスパッタ法により、表面を覆う程度にBiとTiとOとからなる金属酸化物より構成されたCER層1104が形成された状態とする。
【0086】
この金属酸化物(強誘電体)よりなるCER層1104の形成について詳述すると、Bi−Ti−Oからなるターゲット205を用いた図2に示すECRスパッタ装置において、まず、プラズマ生成室202内を10-4〜10-5Pa台の高真空状態に真空排気した後、基板1101が30℃〜700℃に加熱された状態とし、プラズマ生成室202内に、不活性ガス導入部211より、例えばArガスを流量20sccm導入し、プラズマ生成室202内の圧力を例えば10-2〜10-3Pa台に設定する。また、プラズマ生成室202内には、磁気コイル210にコイル電流を例えば27Aで供給することで電子サイクロトロン共鳴条件の磁場を与える。
【0087】
加えて、図示していないマイクロ波発生部より、例えば2.45GHzのマイクロ波(例えば500W)を供給し、これを導波管208,石英窓207,真空導波管206を介してプラズマ生成室202内に導入し、このマイクロ波の導入により、プラズマ生成室202にプラズマが生成された状態とする。
【0088】
生成されたプラズマは、磁気コイル210の発散磁場によりプラズマ生成室202より処理室201の側に放出される。また、プラズマ生成室202の出口に配置されたターゲット205に、高周波電源222より高周波電力(例えば500W)を供給する。このことにより、ターゲット205にAr粒子が衝突してスパッタリング現象を起こし、Bi粒子とTi粒子がターゲット205より飛び出す。
【0089】
ターゲット205より飛び出したBi粒子とTi粒子は、プラズマ生成室202より放出されたプラズマ、及び、反応性ガス導入部212より導入されてプラズマにより活性化した酸素ガスとともに、下部電極層1103の表面に到達し、活性化された酸素により酸化される。酸素ガスは、反応性ガス導入部212より、例えば1sccm程度で導入されていればよい。本例ではターゲット205は焼結体であり、酸素が含まれるが、酸素を供給することにより膜中の酸素不足を防ぐことができる。
【0090】
以上に説明したECRスパッタ法による膜の形成で、例えば、膜厚30nm程度のCER層1104が形成された状態が得られる。この後、前述と同様にすることで終了処理をし、基板1101が搬出可能な状態とする。
【0091】
ここで、図11に示す素子では、窒化ルテニウムからなる下部電極層1103の上にCER層1104を形成するようにした。この結果、上述したECRスパッタ法により形成された下部電極層1103の表面の平滑性が劣化されることがなく、この上にCER層1104が形成可能となる。例えば、下層の電極が金属材料から構成されて酸化されやすい状態であると、上述した金属酸化膜の形成時に下層の表面が部分的に酸化され、モフォロジが劣化する場合がある。これに対して、図11に示す素子によれば、窒化ルテニウムから構成された下部電極層1103を下地としたので、この表面の酸化が抑制され、表面のモフォロジがよい状態で形成可能となり、品質の高いCER層1104が得られる。
【0092】
以上のように形成したCER層1104の表面に、ルテニウムからなる上部電極1105が形成された状態とする。例えば、よく知られたフォトリソグラフィ技術とエッチング技術とによりルテニウム膜を加工することで、上部電極1105が形成可能である。
【0093】
次に、このように作製された図11に示す素子(抵抗スイッチ素子)の、電気的特性について図12を用いて説明する。この電気的特性の調査は、下部電極層1103と上部電極1105との間に電圧を印加することで行った。下部電極層1103と上部電極1105との間に電源により電圧を印加し、電圧を印加したときの電流値を電流計により観測する。図12では、横軸に上部電極1105に印加した電圧値を取り、縦軸に電流値の絶対値を対数表示してある。
【0094】
以下、図12に示す特性を説明するが、ここで説明する電圧値や電流値は、実際の素子で観測されたものを例として使用している。従って、本現象は、以下に示す数値に限るものではなく、実際に素子に用いる膜の材料や膜厚、その他の条件により、他の数値が観測されることがある。
【0095】
まず、上部電極1105に正の電圧を印加すると、図12の(1)に示すように、0〜0.8Vでは、+0.5Vに対し10-6A以下と電流は少なく高抵抗状態である。しかし、(2)に示すように、0.8Vを超えると急に正電流が流れ低抵抗状態となる。(2)に示すように急に正電流が流れないように、0〜0.8Vの電圧を印加している場合は、(1)に示すように高抵抗状態を維持する。
【0096】
(2)のように低抵抗状態となった後に、再び上部電極1105に正電圧を印加すると、(3)に示すように0.5V程度で1×10-5A程度の正電流が流れる。さらに続いて、上部電極1105に負電圧を印加すると、やはり(4)で示すように−0.5V程度で3×10-5A程度の電流が流れ、低抵抗状態であることがわかる。しかし、上部電極1105に−0.8Vを超える負電圧を印加すると、(5)に示すように急激に電流が流れなくなり、高抵抗状態と遷移する。
【0097】
この後、(6)に示すように、上部電極1105に負電圧を印加しても−0.5Vで10-6A以下の高抵抗状態を維持する。さらに続いて、上部電極1105に正電圧を印加すると、(1)のように+0.8V程度までは高抵抗状態であるが、+0.8Vを超える正電流によって、低抵抗状態と遷移する。以下、高抵抗状態と低抵抗状態が可逆的にスイッチする現象が安定に観測される。
【0098】
ここで、注目すべきは、低抵抗状態の電流値、すなわち、On電流の電流値である。図15で示した従来技術では、On電流の値は10-2A程度であった。これに対し、図11に示す素子では、図12に示すように、On電流値は10-4〜10-5A程度と2〜3桁も低減できていることがわかる。これは、窒化ルテニウムからなる導電薄膜(下部電極層1103)の表面が、非常に平滑な状態とされているためと推測される。
【0099】
さらに、抵抗スイッチさせるための電圧値も、従来技術では土1.5V程度であったが、図11に示す素子によれば、±0.8Vと低減され、消費電力が小さいものとなっている。消費電力が小さいということは、デバイスに取って非常に有利になり、例えば、移動体通信機器、デジタル汎用機器、デジタル撮像機器を始め、ノートタイプのパーソナルコンピュータ、パーソナル・デジタル・アプライアンス(PDA)のみならず、全ての電子計算機、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、オフィスコンピュータ、大型計算機や、通信ユニット、複合機等のメモリを用いている機器の消費電力を下げられる。
【0100】
ところで、上述した図11に示す素子では、CER膜としてチタン酸ビスマス膜を用いたが、他の材料から構成されたCER膜を用いてもよい。また、上述した本発明の例では、シリコンからなる基板上の下地絶縁層、金属薄膜、CER膜層の各々をECRスパッタ法で形成するようにした。しかしながら、これらの各層を形成する方法は、ECRスパッタ法に限定するものではない。例えば、シリコン基板上の下地絶縁層は、熱酸化法や化学気相法(CVD法)、ALD法、従来のスパッタ法、MOCVD法などで形成しても良い。また、上部電極は、CVD法、MBE法、IBD法、従来スパッタ法、PDL法などの他の方法で形成しても良い。
【0101】
また、CER特性を示す金属酸化膜層も、上記でMOD法や従来スパッタ法、PLD法等の他の方法で形成しても良い。ただし、ECRスパッタ法を用いることで、平坦で良好な絶縁膜、金属膜、強誘電体膜が容易に得られる。
【0102】
また、上記の実施の形態では、各層を形成した後、一旦大気に取り出していたが、各々のECRスパッタを実現する処理室を、連続的な処理により真空搬送室でつなげてもよい。これらのことにより、処理対象の基板を真空中で搬送できるようになり、水分などの外乱の影響を受けづらくなり、膜質と界面の特性の向上につながる。
【0103】
また、特許3571679号公報に示しているように、各層を形成した後、形成した層の表面にECRプラズマを照射し、膜の特性を改善するようにしても良い。また、各層を形成した後に、特開2004−273730号公報に示しているように、適当なガス雰囲気中でアニールし、特性を改善するようにしても良い。
【0104】
また、導電薄膜の厚さは、適便最適な厚さとした方がよい。例えば、膜応力による剥離等を考慮すれば、導電薄膜は100nm以下の厚さが望ましい。また、配線としての抵抗値を考慮すれば、10nmより厚くした方がよい。発明者らの実験の結果、強誘電体の厚さが10〜100nmであれば、メモリの動作が確認され、最も良好な状態は、強誘電体層の厚さを20nmとした時に得られた。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の実施の形態に係る導電薄膜103の構成を示す構成図である。
【図2】ECRスパッタ装置の構成例を示す構成図である。
【図3】導電薄膜103の製造方法例について説明するための工程図である。
【図4】ECRスパッタ法において、ルテニウムターゲットを用いて導電薄膜103を成膜した場合の、導入したXeガスと窒素ガスの割合に対する成膜速度の変化を示した特性図である。
【図5】ECRスパッタ法において、ルテニウムターゲットを用いて導電薄膜103を成膜した場合の、導入したXeガスと窒素ガスの割合に対する導電薄膜103の抵抗率の変化を示す特性図である。
【図6】ECRスパッタ法において、ルテニウムターゲットを用いて導電薄膜103を成膜した場合の、導入したXeガスと窒素ガスの割合に対するX線回折で観測された導電薄膜103におけるRuの(002),(100),及び(101)方向のピーク強度の変化を示す特性図である。
【図7】ECRスパッタ法において、ルテニウムターゲットを用いて導電薄膜103を成膜した場合の、導入したXeガスと窒素ガスの割合に対するX線回折で観測された導電薄膜103におけるRuの(002),(100),及び(101)方向のピーク強度の変化を示す特性図である。
【図8】導入した窒素ガスの流量に対する表面凹凸性を示す原子力顕微鏡(AFM)像である。
【図9】導入した窒素ガスの流量に対する表面凹凸性の変化を示す特性図である。
【図10】導電薄膜の断面電子顕微鏡写真である。
【図11】導電薄膜を用いて作製された素子の構成例を示す構成図である。
【図12】図11に示す素子の電気的特性について説明する説明図である。
【図13】スタック型FeRAMの構成例を示す構成図である。
【図14】強誘電体層の抵抗値の変化によりメモリ機能を実現する素子の構成例を示す構成図である。
【図15】図14に示す素子における抵抗スイッチ現象の電圧電流特性の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0106】
101…基板、102…下部絶縁膜、103…導電薄膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に形成された導電薄膜であって、
前記導電薄膜は、ルテニウムと窒素とから構成され、A軸配向の構造がC軸配向の構造より多い状態とされている
ことを特徴とする導電薄膜。
【請求項2】
所定の組成比で供給された不活性ガスと窒素ガスとからなるプラズマを生成し、ルテニウムから構成されたターゲットに負のバイアスを印加して前記プラズマより発生した粒子を前記ターゲットに衝突させてスパッタ現象を起こし、前記ターゲットを構成するルテニウムを基板の上に堆積することで、ルテニウム及び窒素から構成された導電薄膜を前記基板の上に形成する工程を備える
ことを特徴とする導電薄膜の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の導電薄膜の製造方法において、
前記プラズマは、電子サイクロトロン共鳴により生成されて発散磁界により運動エネルギーが与えられた電子サイクロトロン共鳴プラズマである
ことを特徴とする導電薄膜の製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3記載の記載の導電薄膜の製造方法において、
前記基板は所定温度に加熱された状態とする
ことを特徴とする導電薄膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図8】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−332397(P2007−332397A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162707(P2006−162707)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】