説明

導電複合材料のための長繊維熱可塑性樹脂の製法及びそれにより形成される複合材料

本発明は、電気的な電磁妨害(EMI)シールドを提供するために導電繊維を含むポリマー製品及びそれらの製造方法に関する。本発明は、押出法への導電繊維の直接射出を介してポリマー材料に導電繊維を含浸することによりシールド材料を形成する方法を含む。本発明は、また、EMIシールドポリマー及びシールドポリマーで形成された部品により電磁シールドされ及び無線周波数である製品を含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の技術分野及び産業上の利用性
本発明は、電気的な電磁妨害(EMI)シールドを提供するために導電繊維を含むポリマー製品及びそれらの製造方法に関する。より具体的には、本発明は、押出法への導電繊維の直接射出を介してポリマー材料に導電繊維を含浸することによりシールド材料を形成する方法に関する。本発明のEMIシールドされたポリマーは、幅広い種々の製品、例えば、無線周波数及び電磁シールドされたプラスチック製品に形成され得る。
発明の背景
電子装置、例えば、コンピュータ及び他のデジタルデバイスの使用が増すにつれ、電磁放射線、特には、レーダー波、マイクロ波及び電磁放射線(電子回路により生じる)に関連する危険についての関心が高まる。電子産業が急速に成長し続けるので、電子製品へ導入され得る、改良された電磁波シールド材料を作り出す必要がある。
多くの導電材料が、電磁シールド、静電気消失及び他の電気的に強化された特性のために、複合材料製品、例えば、プラスチック製品を製造するように開発されている。導電材料から形成されるプラスチック製品は、従来の金属材料と比較して、特に都合がよく、なぜなら、それらが、軽く、射出成形技術を用いて容易に製造され及び低コストであるからである。典型的には、これらの導電材料は、プラスチック及び導電粉末及びチョップトファイバーの複合材料である。
【0002】
導電粉末及びチョップトファイバーを複合材料製品に導入する際、種々の技術が使用されている。図1は、一般に使用されている従来の熱可塑性物質の押出配合技術を説明する。熱可塑性樹脂112は、配合機110に供給される。樹脂112は、溶融温度に加熱され及び次いで、繊維又は粉末(まとめて114と称される)が配合機110に供給されて、導電粉末又はチョップトファイバーにおいて混合される。樹脂/破断繊維混合物は、118で押出され、水浴120において冷却され、次いで、ストランドカッター122により切断されて、ペレット124となる。ペレット124は、次いで、典型的には、射出成形機の溶融セクションに供給される(示されていない)。
図1に示された方法でのペレットは、スクリュー116による及び樹脂を溶融するために施される剪断力によるカット作用のために破断される繊維を含む。繊維は、得られる複合材料製品が、比較的短い破断繊維のみを含むように、配合工程の間に破断される。短くされた繊維は、低減された電磁シールド特性を複合材料に付与するが、これは、複合材料製品中に電気を導き及び導電繊維ネットワークを形成するそれらの能力が低減されていることによる。あるいはまた、導電粉末を溶融熱可塑性物質と混合する際、典型的には、非常に多量の導電粉末を使用する必要がある。そのような多量の粉末により、最終製品の粉末分散が乏しくなり又は機械的強度が低減され得る。従って、破断繊維及び粉末で形成された複合材料製品は、高い荷重(loading)又は充填濃度(filler concentration)を必要とし、それにより、形成される複合材料製品の機械的強度が低減され及び材料コストが高くなる。
【0003】
“導電繊維及び繊維ペレットを形成する方法”というタイトルの、発行された米国特許出願US 2002/0108699(参考文献としてその全てが本件明細書に導入される)は、以下の工程(1)〜(8)により形成される電磁波シールドペレットを開示する:(1)サイズ剤をNi被覆された繊維に施して、熱可塑性マトリックス材料と適合性の繊維を製造する工程;(2)サイズ剤を熱乾燥する工程;(3)熱可塑性マトリックス材料で繊維を電線被覆する工程;(4)熱可塑性マトリックス材料を急冷する工程;(5)被覆繊維を乾燥する工程;(6)被覆繊維を切断又はペレット化する工程;(7)ペレットを射出成形機に供給する工程;及び(8)ペレットを溶融し及びその部分を射出成形する工程。
ペレット化繊維アプローチの各工程により、物質的損失及び非効率が生じ、サイクルタイムが遅くなり及び欠陥の機会が生じる。いくつかの付加的欠点がある。電線被覆工程の間及び再度の射出成形工程の間に熱可塑性ポリマーを加熱することにより、ポリマーの性能が劣化する。劣化が重度であると、ポリマーが分解され及びボイド及びシールド及び機械的特性のその後の損失を生じるガスが形成され得る。また、良好な金型充填を達成するためには、ポリマーの溶融流れが、部分のリブ(rib)又は他の小さな特徴を満たすのに十分なものでなければならない。溶融流れは、熱可塑性材料、温度、滞留時間及びスクリューによる剪断の選択により達成される。スクリューによる高剪断により、溶融流れが十分に高くなるが、導電繊維が分解されて、小さく及び短いものとなり及び繊維の連続ネットワークを形成する繊維の能力が低減される。
【0004】
シールド効果は、遠視野シールド効果を測定するASTM-D4935又は近視野シールド効果を測定するASTM ES7-83により測定することができる。
US 2002/0108699では、15質量%の繊維荷重及び30〜1500MHzの周波数で80〜90dB(遠視野)及び80dB未満(近視野)のシールド効果を有する電磁シールド化製品が製造されている。
シールド化製品を形成する代替ドライブレンド法では、切断された導電繊維を、射出成形作業時に直接的に樹脂と混合することが必要とされる。これにより、典型的には、繊維分散が極めて乏しくなり及び部分的に(from part to part)電気性能が一貫性のないものとなる。US 2002/0108699には、ドライブレンド法により、15質量%の繊維荷重及び30〜1500MHzの周波数で60〜70dBのシールド効果を有する電磁シールド製品が製造されることが開示されている。
図1は、US 2002/0108699に従ったインライン処理を示し、その中において、繊維トウ103が、パッケージ又はスプール105から解かれ及び水性シラン浴106中に引き込まれて、導電層がトウ103に施される。トウ103は、次いで、水性シラン浴104及びオーブン108に引き込まれる。トウ103は、次いで、非水性サイズ浴107に通される。トウ103は、次いで、パッケージ(又はスプール)113に巻かれる。被覆繊維は、その後、ペレット化され及び射出成形機の押出機中に入れられる。
【0005】
EMIシールド複合材料製品を形成する先の方法は、シールドを劣化させ及び繊維の付加的な荷重を必要とする完成部品において繊維の長さが短いために、完全に満足いくものとはいえない。電線被覆し、ペレット化し及びその後、ペレットを射出成形することによる平均繊維長は、約0.5mmであった。導電繊維は、互いに接触して、連続ネットワークを形成し及びシールドを提供しなければならないので、10〜20質量%の炭素繊維又はニッケル被覆炭素繊維が、EMIシールドを十分なものとするために必要とされる。この高いレベルの繊維荷重は、繊維のコストが高いために複合材料のコストを高くし、及び金型におけるポリマーの流れを抑制する。繊維荷重が高いと、また、有意に、製品のモジュラスが高くなるが、耐衝撃性が低くなる。EMIシールド樹脂は、物品、例えば、破壊することなしに、1mまで又はそれより高くからの落下の衝撃に抵抗することが期待される携帯電話及びラップトップコンピュータにおいて使用される。10〜20質量%の繊維に充填された熱可塑性樹脂は、脆弱となり及び破壊されやすくなる。
EMIシールド複合材料製品を形成する先の方法の他の欠点は、繊維分散が乏しいことである。ペレット化材料は、繊維が十分に分散されるように加工するのが困難であり及び複合材料において導電繊維の十分なネットワークを形成しない。良好な繊維分散が時には達成されるが、ペレット及び繊維は、平均繊維長が約0.5mmであるほどまでに粉砕され得、結果として、短い繊維は、複合材料において導電繊維の十分なネットワークを形成しない。いずれにしても、複合材料における導電繊維の非効率的なネットワークを補うために導電繊維を複合材料に過剰に入れることが必要である。
“成形作業のための樹脂及び繊維配合方法”というタイトルの米国特許第6,676,864号明細書(参考文献としてその全体が本件明細書に組み込まれる)には、繊維強化樹脂を製造し及びその樹脂を成形するための装置及び方法が記載されている。米国特許第6,676,864号明細書には、最初の工程で、剪断力を付与して、ポリマーを溶融し及び第2の工程で、溶融された熱可塑性物質を金型に供給する2段式押出機を含む射出成形装置が示されている。強化用繊維、例えば、ガラス繊維、炭素黒鉛繊維又はケブラー繊維は、押出機での2つの段階の間に供給される。米国特許第6,676,864号明細書の成形デバイスは、電磁シールドを考慮していない。
【0006】
発明の概要
本発明は、EMIシールド化ポリマーを形成する先の方法に関連する課題を解決するものである。長繊維熱可塑性樹脂技術により、導電繊維が、低繊維荷重でEMIシールドを提供するのに十分な長さを維持することが可能になる。EMIシールド複合材料製品を形成するための、長繊維熱可塑性樹脂の製造方法により、また、耐衝撃性が高くなり、表面がより美しくなり及び低材料コストで及び低減された廃棄物及びスクラップで押出及び射出成形処理が改良される。
本発明の導電複合材料のための、長繊維熱可塑性樹脂の製造方法及びそれにより形成される複合材料は、従来の方法より、単純なものであり、効率の高いものであり及び特性が改良されている。
【0007】
本発明の詳細な説明及び好ましい実施態様
好ましくはペレットの形態にある熱可塑性樹脂が、樹脂供給14から樹脂第1押出機12に提供される。樹脂は、意図される生産目的のための、種々の許容可能な熱可塑性樹脂のいずれか、例えば、ポリプロピレン、ナイロン、ポリウレタン及びポリエステルであってもよい。溶融スクリュー16は、押出機10の溶融バレル18内で回転する。溶融スクリュー16の剪断力により、ポリマーを溶融し及び調節(condition)するのに十分な加熱が提供され得るが、溶融バレル18は、当該技術分野において知られているように追加熱源が備わっていてもよい。
流れ調節プレート20は、バレル40の下流末端で使用されて、樹脂15の流れを、押出機バレル18から外へ及びコーティングダイ22の中へ調節することができる。プレート20は、典型的には、樹脂15の流れを制限するが、これは、直径の低減によるもの又は他の方法でバレル18内の流れを制限することによるものである。樹脂15と接触するコーティングダイ22及び装置は、樹脂の所望温度を維持するための適切な加熱要素を含んでいてもよい。コーティングダイ内の圧力は、溶融スクリュー16の駆動モーター17へ制御信号を提供する圧力トランスデューサによりモニターすることができる。
繊維スプール24により、シールド繊維26のトウが直接供給される。シールド繊維は、適切な組成、例えば、ニッケル、銅及び/又は導電材料(炭素、アラミド、ガラス又は他の適切な支持体に被覆される)を有していてもよく、あるいはまた、ステンレス鋼、銅又は同様の金属繊維を使用してもよい。繊維は、噴射ノズル28を通して、コーティングダイ22のコーティングチャンバー32へ引っ張られる。シールド繊維26は、次いで、均質にブレンドされ及び溶融ポリマー材料15で被覆される。被覆されたシールド繊維26は、次いで、可変インサート30のダイオリフィス36を通してコーティングダイ22を出る。ダイオリフィス36の直径は、インサート30を変更することにより調節して、シールド繊維26の樹脂15に対する比を制御することができる。
【0008】
樹脂15と繊維26の混合物は、コーティングダイ22を出て及びシールド繊維26は、ハウジング54、56における切断室50においてブレード52により切断され得る。樹脂15と繊維26の混合物は、切断室50を出て、オリフィス58を介して、押出機60へと運ばれる。押出機60は、典型的には、樹脂15と繊維26の混合物を押出ダイ64へ供給するバレル62を含む。供給スクリュー66は、バレル62内で回転し及び場合により、軸72に沿って往復して、成形材料の充填物を、オリフィス63を通して、ダイ64の成形用キャビティ68に供給し得る。供給スクリュー66は、電源装置70により駆動させる。
バレル18、コーティングチャンバー32、切断室50及び押出機60内の温度は、マイクロプロセッサー(示されていない)で制御される1以上の加熱要素及び温度プローブにより制御することができる。適切なポリマーとしては、熱可塑性ポリマー、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン(PA)及び他の熱可塑性材料(適切な機械的、熱的及び溶融流れ特性を有する)が挙げられる。
他の繊維としては、金属、例えば、アルミナ、銅、ニッケル及び鉛の被覆を含む、金属被覆ガラス及び炭素繊維が挙げられる。金属のプラズマ蒸着、溶融液相成長及び電着が、好ましい繊維被覆法である。
成形キャビティ68内で成形された製品は、各繊維が、ブレード52の作用により確立されるように、所定の長さを有する、多くの個々のシールド繊維26を含む。成形された製品は、図1に示した電線被覆及びペレット化法での長さのおよそ3倍の繊維を含む。電線被覆、ペレット化及びペレットの射出成形による平均長さは、約0.5mmであった。Ni−C繊維の期待平均長さは、1.5mm以上であろう。
成形材料のシールド特性は、導電ネットワークをもたらすように接触している繊維の数により定められる。長い熱可塑性繊維は、同一の接続性を達成するために必要とされる繊維の数を、元の量の1/4〜1/3に低減することが可能であるべきである。
従って、15〜20質量%の繊維荷重を必要とするよりむしろ、LFTPは、必要とされる繊維を、複合材料の4〜5質量%という低さに低減することができる。
炭素繊維の量を荷重およそ5%に低減することにより、衝撃強度が高度に改良される。衝撃強度の損失により、導電複合材料の適用(例えば、携帯電話の外装)の数が非常に制限される。50%までの衝撃改良又は5質量%までの繊維量の一層の低減が期待され得る。
5%の繊維荷重により、また、表面の美しさ、消費者製品の外部ハウジングについての他の問題が改良される。繊維が表面にあると、外観が乏しくなる。
5%の繊維荷重は、繊維コストを75%に節約でき、それには30ドル/lb以上の費用がかかり得る。
【0009】
実施例
以下の実施例は予言的なものであり及び全ての機械的及びシールド特性が推定される。実施例1においては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)ポリマーを溶融し及び10質量%のニッケル被覆炭素(NCC)繊維をABSに添加する。繊維を適切な長さに切断し及びABS/繊維溶融物を押出して、複合材料部分を形成する。
実施例2においては、ABSポリマーを溶融し及び7.5質量%のNCC繊維をABSに添加する。繊維を適切な長さに切断し及びABS/繊維溶融物を押出して、複合材料部分を形成する。
実施例3においては、ABSポリマーを溶融し及び5.0質量%のNCC繊維をABSに添加する。繊維を適切な長さに切断し及びABS/繊維溶融物を押出して、複合材料部分を形成する。実施例での特性は、以下で推定される。
【0010】

【0011】
本件出願の発明を、一般的に及び特定の実施態様についての双方で上に記載してきた。本発明を好ましい実施態様であるとされるもので記載してきたが、当該技術分野における当業者に知られる幅広い種々の代案を、一般的開示内から選択することができる。以下の特許請求の範囲の記載を除いて、本発明は、他の方法で制限されない。
図面の簡単な説明
本発明を更に理解し及び本件明細書に導入され及びその一部を構成するために含まれる添付図面は、本発明の実施態様を説明し及びその記載と一緒に本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】EMIシールド熱可塑性押出材料を配合するための従来の電線被覆法の略図である。
【図2】本発明を行う際に有用なある押出機の、部分的に断面図である平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁シールド特性が改良された繊維強化ポリマー製品であって、熱可塑性ポリマー及び10質量%未満の導電繊維を含み、複合材料製品の電磁シールド効率が少なくとも70dBであることを特徴とする製品。
【請求項2】
電磁シールド効率が少なくとも90dBである請求項1に記載の繊維強化ポリマー製品。
【請求項3】
前記導電繊維が5質量%未満の量で存在する請求項1に記載の繊維強化ポリマー製品。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリマーが、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリエチレン(PA)からなる群より選ばれる請求項1に記載の繊維強化ポリマー製品。
【請求項5】
溶融過程による前記熱可塑性ポリマーの特性劣化が実質的に低減されている請求項1に記載の繊維強化ポリマー製品。
【請求項6】
複合材料製品を製造する方法であって、
熱可塑性材料を溶融する工程、
導電繊維を該溶融熱可塑性材料に添加する工程、
該導電繊維を所定の長さに切断する工程及び
熱可塑性材料を射出成形して、電磁シールド効率が少なくとも70dBである複合材料製品を形成する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
電磁シールドを有するデジタルデバイスであって、該シールドが、熱可塑性ポリマー及び10質量%未満の導電繊維を含み、複合材料製品の電磁シールド効率が少なくとも70dBであることを特徴とするデバイス。
【請求項8】
電磁シールド効率が少なくとも90dBである請求項7に記載の繊維強化ポリマー製品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−512774(P2009−512774A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537816(P2008−537816)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/041120
【国際公開番号】WO2007/050467
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(508076428)オーシーヴィー インテレクチュアル キャピタル リミテッド ライアビリティ カンパニー (43)
【Fターム(参考)】