説明

居眠り防止装置

【課題】運転者の慣れを防止して、眠気を覚ますことが可能な居眠り防止装置を提供すること。
【解決手段】運転者の覚醒度低下(居眠り状態)を検出した場合に、運転者の周囲の湿度を低下させて、運転者を乾き目状態とする。これにより、運転者の瞬き回数が増えるため、閉眼状態が長くなることがなくなる。その結果、運転者が居眠り警報に慣れてしまうことを防止し、効果的に運転者の眠気を覚ますことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を操縦する運転者の居眠りを防止する居眠り防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者の居眠りを防止する技術として、運転者の覚醒度の低下を検出した場合に、運転者に振動を与えることで、警報を行う覚醒度低下警告装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−268287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来技術では、運転者が一度、振動による警報に慣れてしまうと、効果を発揮し辛くなり、振動による眠気防止効果が持続しないという問題があり、そのまま運転者が居眠りをしてしまう虞がある。
【0004】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、運転者の慣れを防止して、眠気を覚ますことが可能な居眠り防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による居眠り防止装置は、車両を操縦する運転者の居眠りを防止する居眠り防止装置であって、運転者の覚醒度が低下しているか否かを判定する覚醒度判定手段と、覚醒度判定手段によって、運転者の覚醒度が低下していると判定された場合に、運転者の周囲の湿度を低下させる湿度低下手段とを備えることを特徴としている。
【0006】
このような居眠り防止装置によれば、運転者の覚醒度低下(居眠り状態)を検出した場合に、運転者の周囲の湿度を低下させることができる。これにより、運転者は、乾き目状態となり瞬き回数が増えるため、閉眼状態が長くなることがなくなる。その結果、運転者が居眠り警報に慣れてしまうことを防止し、効果的に運転者の眠気を覚ますことができる。
【0007】
また、湿度低下手段は、除湿された乾燥空気を運転者の顔に吹き付ける乾燥空気噴出器であることが好ましい。このように、除湿された乾燥空気を運転者の顔に吹き付けることで、効果的に、運転者を乾き目状態とすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の居眠り防止装置によれば、運転者が居眠り警報に慣れてしまうことを防止し、効果的に運転者の眠気を覚ますことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明に係る居眠り防止装置の好適な実施形態について説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図1は、本発明の実施形態に係る居眠り防止装置を示すブロック構成図である。
【0010】
図1に示す居眠り防止装置10は、車両に搭載され、運転者の居眠りを防止するものであり、顔画像撮像カメラ12、顔画像処理ECU14、居眠り防止ECU16、及び乾燥空気噴出器18を備えている。顔画像処理ECU14及び居眠り防止ECU16は、例えばCAN(Controll Area Network)等の通信回路によって接続され、相互にデータ交換が可能な構成とされている。また、これらの顔画像処理ECU14、及び居眠り防止ECU16は、演算処理を行うCPU、記憶部となるROM及びRAM、入力信号回路、出力信号回路、電源回路などにより構成されている。
【0011】
顔画像撮像カメラ12は、例えばコラムカバー上に設置され、運転者の顔画像を取得するものである。顔画像撮像カメラ12は、例えば、近赤外線カメラであり、近赤外線投射装置(不図示)から照射した近赤外線が運転者Dの顔に反射した反射光を受光することによって、運転者Dの顔を撮像する。顔画像撮像カメラ12では、例えば、毎秒30フレームの画像を取得することができる。
【0012】
顔画像処理ECU14は、顔画像撮像カメラ12と電気的に接続されている。顔画像処理ECU14では、顔画像撮像カメラ12から入力された画像信号について、画像処理を行い、運転者の顔画像を認識する。顔画像処理ECU14では、例えば、運転者の顔の輪郭を検出する顔輪郭エッジ抽出処理、運転者の顔向き角度を判定する顔向き角度判定処理、顔部品(目、鼻、口)等の特徴点を抽出する顔特徴点抽出処理、運転者の開眼度を判定する開眼度判定処理が実行される。
【0013】
居眠り防止ECU16のCPUでは、記憶部に記憶されているプログラムを実行することで、眠気推定部20、制御部22が構成される。
【0014】
眠気推定部20は、運転者の覚醒度が低下しているか否かを判定する本発明の覚醒度判定手段として機能するものであり、覚醒度が閾値以下である場合に、意識低下状態であると推定する。眠気推定部20では、顔画像処理ECU14からの情報に基づいて、運転者が意識低下状態(居眠り状態)であるか否かを判定する。例えば、運転者の開眼度が低い場合に、運転者が意識低下状態であると推定してもよく、運転者の顔向き角度に基づいて、運転者が意識低下状態であると推定してもよい。なお、例えば、運転者のその他の生体情報に基づいて、運転者の意識低下状態を推定してもよい。また、居眠り防止ECU16の記憶部には、運転者が意識状態低下状態であると推定するための閾値が記憶されている。この閾値は、実験等によって決定することができる。
【0015】
また、眠気推定部20では、顔画像処理ECU14からの情報に基づいて、運転者のまばたき回数を計数する。また、眠気推定部20では、顔画像処理ECU14からの情報に基づいて、運転者の閉眼時間を計測する。
【0016】
乾燥空気噴出器18は、居眠り防止ECU16の制御部22からの信号に基づいて駆動され、除湿された乾燥空気を運転者の顔に吹き付けるものである。乾燥空気噴出器18は、乾燥空気を運転者の目近傍に向けて送風する。なお、乾燥空気に代えて、その他の気体を送風してもよい。要は、運転者の近傍の雰囲気湿度を低下させて、運転者を乾き目状態とすればよい。
【0017】
制御部22は、乾燥空気噴出器18の駆動を制御するものである。制御部22では、運転者の覚醒度が低下している場合に、乾燥空気噴出器18を駆動させる。また、制御部22は、まばたき回数が基準値を上回った場合には、乾燥空気吹き付け効果が有ったとして、乾燥空気の吹き付けを停止させる。また、制御部22は、閉眼時間が基準値下回った場合には、乾燥空気吹き付け効果が有ったとして、乾燥空気の吹き付けを停止させる。
【0018】
次に、このように構成された居眠り防止装置10の動作について説明する。図2は、本発明の実施形態に係る居眠り防止装置で実行される制御処理の動作手順を示すフローチャートである。
【0019】
まず、顔画像撮像カメラ12によって、運転者の顔画像の撮影を行う(S1)。撮影された顔画像に関する信号は、顔画像処理ECU14に送信される。続いて、顔画像処理ECU14は、顔画像撮像カメラ12から信号を入力して画像処理を行い、運転者の顔画像を認識する(S2)。顔画像処理ECU14では、顔画像に基づいて、顔向き角度判定、開眼度判定等を行う。これらの判定結果に関する情報は、居眠り防止ECU16に送信される。
【0020】
次に、居眠り防止ECU16は、顔画像処理ECU14からの情報に基づいて、運転者の意識低下状態を推定する。例えば、開眼度判定によって、運転者の意識低下状態を推定する(S3)。
【0021】
次に、居眠り防止ECU16は、運転者が意識低下状態であるか否かの判定を行う(S4)。運転者が意識低下状態であると判定された場合には、ステップ5に進み、運転者が意識低下状態であると判定されなかった場合には、処理を終了する。
【0022】
ステップ5では、乾燥空気の吹き付けを行う。居眠り防止ECU16は、乾燥空気噴出器18に信号を送信し、乾燥空気を運転者の目に吹き付ける。次に、居眠り防止ECU16は、運転者のまばたき回数を計数し、まばたき回数が基準値以上であるか否かの判定を行うまばたき回数判定処理を実行する(S6)。
【0023】
次に、居眠り防止ECU16は、運転者の閉眼時間を計測し、閉眼時間が基準値以下でなるか否かであるかの判定を行う閉眼時間判定処理を実行する(S7)。次に、居眠り防止ECU16は、乾燥空気吹き付けの効果が有るか否かの判定を行う(S8)。まばたき回数が基準値以上である場合、又は、閉眼時間が基準値以下である場合に、乾燥空気吹き付けの効果有りと判定する。乾燥空気吹き付けの効果有りと判定された場合には、ステップ9に進み、効果有りと判定されなかった場合には、ステップ5〜8の処理を繰り返す。ステップ9では、居眠り防止ECU16は、乾燥空気吹き付けを終了する。
【0024】
このような居眠り防止装置10では、運転者の意識低下を検出した場合に、乾燥空気を運転者の目の周囲に吹き付けることで、運転者の周囲の湿度を低下させて、運転者を乾き目状態とすることができる。これにより、運転者は、乾き目状態となり瞬き回数が増えるため、閉眼状態が長くなることがなくなる。その結果、運転者が居眠り警報に慣れてしまうことを防止し、効果的に運転者の眠気を覚ますことができる。
【0025】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、乾燥空気噴出器によって、乾燥空気を運転者の目の周囲に吹き付けることで、運転者の周囲の湿度を低下させているが、その他の方法により、運転者の周囲の湿度を低下させてもよい。
【0026】
また、上記実施形態では、運転者の顔画像に基づいて、運転者の意識低下状態を検出しているが、運転者の生体情報(心拍数、血圧、体温等)に基づいて、運転者の意識低下状態を検出してもよく、運転者の動作等に基づいて、運転者の意識低下状態を検出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る居眠り防止装置を示すブロック構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る居眠り防止装置で実行される制御処理の動作手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0028】
10…居眠り防止装置、12…顔画像撮像カメラ、14…顔画像処理ECU、16…居眠り防止ECU、18…乾燥空気噴出器、20…眠気推定部、22…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を操縦する運転者の居眠りを防止する居眠り防止装置であって、
運転者の覚醒度が低下しているか否かを判定する覚醒度判定手段と、
前記覚醒度判定手段によって、運転者の覚醒度が低下していると判定された場合に、運転者の周囲の湿度を低下させる湿度低下手段とを備えることを特徴とする居眠り防止装置。
【請求項2】
前記湿度低下手段は、除湿された乾燥空気を前記運転者の顔に吹き付ける乾燥空気噴出器であることを特徴とする請求項1記載の居眠り防止装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−90876(P2009−90876A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264806(P2007−264806)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】