説明

屈折率勾配型フィルムを製造するためのナノ複合材料

【課題】電位差、電子照射、ホログラフィー、リソグラフィの適用により、または照明により十分に大きな屈折率勾配を作製することができる材料を提供する。
【解決手段】a)可溶性重合体を4.9〜95.9重量%、b)33〜100%の間の無機縮合度、および0〜95%の間の有機変換度を有し、エポキシアルコキシシラン、アルコキシシランおよびアルキルアルコキシシランの群から選択した、部分的にまたは完全に縮合したシランを4〜95重量%、c)アクリレートを0〜60重量%、d)表面を改質したナノ規模粒子を0.1〜50重量%、e)可塑剤を0〜50重量%、f)熱または光化学架橋開始剤、増感剤、湿潤助剤、接着剤、抗酸化剤、安定剤、着色剤、光互変性および熱変色性物質0〜5重量%を、ナノ複合材料の合計重量(乾燥重量)に対して含む、重合が可能な固体またはゲルタイプのナノ複合材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ規模の粒子により引き起こされる物質勾配を有する、屈折率勾配を有する材料を製造するためのナノ複合材料、ならびに特にホログラフィーやマスク照明の用途および画像光学系の屈折率分布型レンズ用の、屈折率勾配を有するフィルムを製造するための、こうした屈折率勾配を有する材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
屈折率勾配を作製するために、周囲の液体マトリックスより高いか、または低い屈折率を有する単量体の拡散を使用できることが知られている(米国特許US5,552,261号、米国特許US5,529,473号)。感光性樹脂が定方向に拡散し、次に加熱または照明した領域で重合することが知られている、「Colbum−Haines効果」により、密度が増加し、したがって屈折率が増加または低下する。しかし有機単量体では、生じた密度の変化はモル屈折にわずかしか寄与しないのでこの変化は小さい。次いで、たとえば光重合によって続いて架橋結合することにより、屈折率勾配プロファイルを固定する。これらの材料の欠点は、屈折率の改変の幅が比較的小さく、工程時間が長く、散乱損失が高いことである。
【0003】
国際公開公報WO97/38333号から、屈折率勾配はまた、液体(ゾル)光重合性マトリックス中において、より高いか、またはより低い屈折率を有するナノ粒子の移動によっても作製することができ、それに続いて架橋結合(重合、縮合)により固定することができることが知られている。この方法の決定的な欠点は、液体マトリックス相に限定されることであり、ホログラフィーおよびマスク照明技法を適用する場合に操作性の問題が伴う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、電位差、電子照射、ホログラフィー、リソグラフィの適用により、または照明により十分に大きな屈折率勾配を作製することができ、上記の欠点を克服する材料を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
驚くべきことには、この目的は、以下に規定する固体またはゲルの形態のマトリックスにより達成できることを発見した。
【0006】
本発明は、
a)可溶性重合体を、4.9〜95.9重量%、好ましくは10〜80重量%、特に20〜40重量%、
b)33〜100%の無機縮合率、および0〜95%、好ましくは5〜60%の有機変換率を有し、アクリロシラン、エポキシシラン、アクリロアルコキシシラン、アクリロエポキシシラン、エポキシアルコキシシラン、アルコキシシランおよびアルキルアルコキシシランの群からの、部分的にまたは完全に縮合した少なくとも1種のシランを、4〜95重量%、好ましくは10〜80重量%、特に20〜60重量%、
c)アクリレートを、0〜60重量%、好ましくは0.1〜40重量%、たとえば0.1〜4.9重量%、特に0.5〜4重量%、
d)酸化物、ハロゲン化物、ケイ酸塩、チタン酸塩、ジルコニウム酸塩、アルミン酸塩、スズ酸塩、鉛酸塩およびこれらの混合酸化物の群からの、表面を改質したナノ規模粒子を、0.1〜50重量%、好ましくは1〜40重量%、特に5〜30重量%、
e)柔軟剤を、0〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%、特に1〜20重量%、
f)熱もしくは光化学架橋開始剤、増感剤、湿潤剤、接着促進剤、抗酸化剤、レオロジー性添加剤、安定剤、着色剤、光互変性および熱変色性物質、またはその組合せを0〜5重量%、好ましくは0.01〜1重量%、それぞれの場合ナノ複合材料の合計重量(乾燥重量)に対して表わして含む、重合性ナノ複合材料に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明によるナノ複合材料の動粘度は、回転粘度計で測定して、(25℃で)2〜1000Pas、好ましくは5〜500Pas、特に10〜100Pasである。
【0008】
可溶性重合体a)は、有機溶媒中に可溶性の、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエポキシド、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルまたはポリビニルブチラールが好ましい。好ましい有機溶媒は、エタノール、イソプロパノールまたはブタノールなどのアルコール、アセトンなどのケトン、酢酸エチルなどのエステル、テトラヒドロフランなどのエーテルならびにびヘキサン、ベンゼン、トルエン、クロロホルムなどの脂肪族、芳香族およびハロゲン化炭化水素である。
【0009】
適したシランb)は、1、2、3または4個の、好ましくは2または3個の加水分解性基を有するもの、およびこれらの混合物である。加水分解性基の例は、水素またはF、Cl、BrもしくはIなどのハロゲン、アルコキシ、好ましくはたとえばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシおよびブトキシなどのC1〜6アルコキシ;アリールオキシ、好ましくはたとえばフェノキシなどのC6〜10アリールオキシ;たとえばアセトキシまたはプロピオニルオキシなどのアシルオキシ;アルキルカルボニル、好ましくはたとえばアセチルなどのC2〜7アルキルカルボニル;アミノ、好ましくはアルキル基中に1〜12個、特に1〜6個の炭素原子を有するモノアルキルアミノまたはジアルキルアミノである。
【0010】
特に好ましいシランは、たとえばメタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、3−グリシジルオキシ−プロピルトリメトキシシラン、グリシジルオキシ−プロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシランである。
【0011】
シランの部分的縮合は、たとえば水、HCI水溶液、HNO水溶液またはアンモニア水などの加水分解剤を、不足当量、たとえば化学量論量の0.3〜0.9倍を用いて実施することができる。加水分解剤の量は、この場合33〜100%の無機縮合比が得られるように割り当てられている。平均33%の無機縮合率とは、たとえばシランの加水分解性残基の概して3個のうち1個が縮合して、−Si−O−Si−架橋結合を形成することを意味する。縮合比100%では、当該シラン分子のすべての加水分解性残基が縮合される。
【0012】
有機変換率は、側鎖中に存在するC=C二重結合またはエポキシ基の付加重合反応の程度を示す。95%の有機変換とは、たとえばすべてのC=C二重結合またはエポキシ基の95%が反応したことを意味する。C=C二重結合、たとえばアクリレート残基の場合は、有機変換率は赤外スペクトルのC=C振動帯の減少により測定することができる。付加重合は、エポキシ基の場合は酸または塩基加水分解、またはC=C二重結合の場合はUV照射などの通常の方法により誘導される。
【0013】
アクリレートc)は、好ましくはメタクリル酸メチルまたはたとえばヘキサンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ドデカンジオールジアクリレート、ドデカンジオールジメタクリレートなどのジオールジアクリレートもしくはジオールジメタクリレートである。
【0014】
表面を改質したナノ規模粒子d)は、好ましくは酸化物、ZnO、CdO、SiO、TiO、ZrO、CeO、SnO、Al、In、La、Fe、Ta、CuO、V、MoOおよびWOならびにハロゲン化物、AgCl、AgBr、AgI、CuI、CuBr、CdIおよびPbIを含む。表面基は、ラジカル、カチオンもしくはアニオン、熱もしくは光化学重合、または熱または光化学縮合重合に感受性がある、有機重合性および/または縮合重合性の基であり得る。本発明によれば、(メタ)アクリル、アリル、ビニルまたはエポキシ基を有する表面基が好ましく、(メタ)アクリルおよびエポキシ基が特に好ましい。主な関連する縮合重合性の基は、ナノ規模粒子およびシランの間にそれを用いてエーテル、エステルおよびアミド結合を得ることが可能な、ヒドロキシル、カルボキシルおよびアミノ基である。
【0015】
ナノ規模粒子の表面上に存在し、重合性および/または縮合重合性の基を含む有機基は、好ましくは300未満、特に200未満の分子量を有する。
【0016】
たとえば独国特許DE−A−19719948号に記載されたように、すべての通例の製造方法は、表面改質ナノ粒子の製造に適している。
【0017】
ナノ粒子は、好ましくは100nm以下、特に50nm以下の直径を有する。下限に関しては特定の制限は無いが、実用的な理由でこの下限は一般に0.5nm、特に1nm、しばしば4nmである。
【0018】
柔軟剤e)としては、DIN 55945(1988年12月)に従って弾性または軟化特性を有するすべての化合物が原則として適しているが、主としてエステルタイプのものが適する。以下の群からの可塑剤が好ましい:非環式脂肪族ジカルボン酸エステル、たとえばアジピン酸ジ−n−オクチル、アジピン酸ビス−(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソデシルなどのアジピン酸のエステル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチルおよびセバシン酸ビス−(2−エチルヘキシル);C〜C12ジカルボン酸とポリアルキレングリコールとのエステル、たとえばトリエチレングリコールビス−(n−ヘプタノアート)、トリエチレングリコールビス−(2−エチルヘキサノアート)、トリエチレングリコールビス−(イソナノアート);C〜C12ジカルボン酸とポリアルキレングリコールとのエステル、たとえばトリエチレングリコールビス−(2−エチルブチラート);ポリプロピレングリコールジアクリレートまたはジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートまたはジメタクリレートなどの、(メタ)アクリル酸とポリアルキレングリコールのジエステル、たとえばテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート。
【0019】
ナノ複合材料は、重合、付加重合および/または縮合重合触媒f)を含んでいることが好都合であり、熱的におよび/または光化学的に架橋および硬化を引き起こす(総称して「架橋開始剤」と呼ばれる)。
【0020】
市販されている開始剤は、たとえば光開始剤として使用し得る。これらの例は、Irgacure(登録商標)184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、Irgacure(登録商標)500(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン)、およびその他のIrgacure(登録商標)タイプの光開始剤、Darocure(登録商標)1173、1116、1398、1174および1020、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンゾイン、4,4’−ジメトキシ−ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1,1,1−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノンおよびジベンゾスベロンである。
【0021】
適した熱開始剤は、過酸化ジアシル、パーオキシジカーボネート、アルキルパーエステル、過酸化ジアルキル、パーケタール、過酸化ケトンおよびアルキルヒドロパーオキシドの形態の有機過酸化物が好ましい。こうした熱開始剤の例は、過酸化ジベンゾイル、過安息香酸t−ブチルおよびアゾビスイソブチロニトリルである。カチオン熱開始剤の例は、1−メチルイミダゾールである。
【0022】
レオロジー性添加剤の例は、たとえばByk(登録商標)306などの、ポリエーテルで改質したジメチルポリシロキサンである。増感剤の例は、たとえばCrodamer(登録商標)などの、アミンで改質したオリゴエーテルアクリレートである。
【0023】
本発明はまた、加水分解剤を加えることによりシランb)を部分的にまたは完全に縮合し、場合によってはUV照射により重合し、かつ成分a)、c)からf)の1つまたは複数と混合するか、あるいはシランb)を最初に成分a)、c)からf)の1つまたは複数と混合し、次いで縮合し、場合によっては重合し、次に有機溶媒を場合によっては除去する、記載したナノ複合材料を製造する方法に関する。加水分解剤による縮合は、好ましくは5〜40℃の間の温度で実施される。
【0024】
屈折率の変化を必要とするナノ粒子を、様々な方法により系の中に導入することができる。一方では、市販されているナノ粒子を、溶媒(重合体の溶媒と相容性)中の懸濁液として使用し得る。ナノ粒子表面を先ず、重合性の基を含んだ化合物、たとえば不飽和カルボン酸、特にメタクリル酸、アクリル酸、およびアクリロシランおよび/または不飽和βジケトンと反応させることにより改質する。次いで、この懸濁液をシラン重合体溶液と混合する。
【0025】
他方では、部分的にかつ前もって縮合した有機シランのマトリックス成分中、または前もって縮合した有機シランおよび溶解した重合体の混合物中で、in situで対応する前駆物質(好ましくはアルコキシド)の加水分解および縮合によりナノ粒子が生成される。
【0026】
本発明はさらに、屈折率勾配を有する平面の材料、特にフィルムを製造するための記載したナノ複合材料の使用に関する。
【0027】
屈折率勾配を有する材料を作製するために、本発明による光重合性ナノ複合材料を、たとえばガラス、セラミック、ケイ素、金属、半導体材料または(好ましくは透明な)プラスチックフィルム、特にPET、PE、PPなどの適当な基板に塗布する。光重合性ナノ複合材料のコーティングは、通常の方法、たとえば浸せき塗装、流し塗り、ドクターブレード、流延、スピンコーティング、注入、スプレッディング、スロットコーティング、メニスカスコーティング、フィルムの流延、スピニングまたはスプレーにより実施し得る。それぞれの場合に必要とする粘度は、使用する溶媒を加えるか除去することにより調整し得る。好ましい層厚(硬化状態で)は0.2〜100μmである。
【0028】
本発明はさらに、本発明によるナノ複合材料をコーティングした、基本的に1つまたは2つの透明なプラスチックフィルムからなる、電位差、電子照射、ホログラフィー、リソグラフィを適用することにより、または局所的照明により作製された屈折率勾配を有するフィルムに関する。
【0029】
本発明はさらに、本発明によるナノ複合材料が透明なプラスチックフィルムに塗布され、適切な場合は、有機溶媒が屈折率勾配を有するフィルムの合計重量に対して表して、0〜15重量%、特に2〜12重量%の残留量になるまで蒸発させることが好都合であり、ナノ複合材層を保護するために透明なカバーフィルムで場合によっては積層する、屈折率勾配を有するフィルムを製造する方法に関する。この形態でフィルム材料を巻取り、制御した環境(15〜30℃)中で光から保護しながら一時的に貯蔵し得る。電位差、電子照射、ホログラフィー、リソグラフィを適用することにより、または局所的照明により屈折率勾配をナノ複合材層中に作製し、ナノ複合材料の熱および/または光により誘導される完全な架橋結合により固定する。
【0030】
UV光の照射が好ましい。
【0031】
比較的強い局所的照明により、ナノ粒子とゲル化したマトリックスの部分的に縮合したシラン成分との相互の間でおよび/または相互に架橋結合して、C=Cをその表面上に有するナノ粒子に対して、非照明の隣接領域に対する化学ポテンシャルの勾配が生成される。さらにナノ粒子が、この隣接領域から照明領域中に拡散する。このプロセスは、照明中およびその後に起きることができ、照明条件および温度に応じて通常数秒から数分持続させる。ナノ粒子とマトリックスの間の屈折率の違いのために、このようにして局所的な屈折率勾配が生成される。この方法に続いて光重合および/または熱誘導重合によりマトリックスの完全な架橋結合が行なわれる。(本明細書では、「重合」という表現は、厳密な意味の重合だけでなく、付加重合反応および縮合重合反応も含むものとする。)この場合、残留する溶媒を適当なら除去する。
【0032】
驚くべきことには、本発明によるマトリックス中では、たとえそれが固体またはゲルの形態であっても、粒子の移動が起こる。
【0033】
本発明による屈折率勾配を有する材料は、たとえばディスプレイおよび照明素子用の受動ライトガイド素子、情報記憶用の防犯ホログラム、画像ホログラム、デジタルホログラム、光波面を処理する構成要素を有するシステムの製造に、平面導波管としての用途に、光を偏光させる用途に、ビームスプリッタおよびレンズとしての用途に使用し得る。
【0034】
以下の実施例及び参考例では、得られた屈折率の変調の尺度として、画角を測定する。この場合、基板に塗布したナノ複合材料の発光を、粒子の移動およびマトリックスの完全な硬化(屈折率勾配が止まった)後に、発光線量計により1°ステップで60°まで( )(中心軸に対して60°)分析する。画角は、強度I[%]対角度(−30〜+30℃)のプロットの半値幅(I/2)に一致する。画角がより高いことは、材料の散乱能が大きいことを意味する。10°を超える値が望ましい。
【0035】
(参考例1)
ホログラフィー用光ナノ複合材の製造
a)Zr(OPr)/MAA(1:1)の製造
Zr(OPr)65.4g(0.20モル)を250ml三口フラスコ中に入れ、氷浴中で冷却する。これにメタクリル酸(MAA)17.2g(0.20モル)を攪拌しながら徐々に(15分)滴下する。完全に添加した後、10分後に反応混合物を氷浴から取り出し、次いで25℃で攪拌する。
【0036】
b)シラン/PVB混合物の製造
ジメチルジメトキシシラン(DMDS)24g(0.20モル)を、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPTS)49.6g(0.20モル)に加え、25℃で5分間攪拌する。0.1N HCl 9.05gを添加した後、反応混合物が透明になるまで、攪拌を25℃でさらに10分間続ける。次いでこれにポリビニルブチラール(濃度30重量%2−PrOH溶液)49.92gを加え、25℃で5分間攪拌する。
【0037】
c)マトリックスの製造
a)で生成したZr(OPr)/MAAナノ粒子22.27gを、攪拌しながら混合物b)に徐々に加える。完全に添加した後、25℃で4時間静置し、水1.08g(0.06モル)を滴下する。25℃で一晩攪拌後、ドデカンジオールジメタクリレート(DDDMA)6.2gおよび光開始剤lrgacure(登録商標)184 1.6gを加える。
【0038】
(参考例2から4)
比率1:1のZr(OPr)/MAAの調製を、参考例1の通り実施する。
【0039】
MPTSを第2の容器に入れ、これにDMDES、PVB溶液(濃度30重量%エタノール溶液)およびTEGジ(2−エチルヘキサノアート)の必要量を表1に従って加え、25℃で15分間攪拌する。次いで0.1N HClを加え、元は濁っていた反応混合物が透明になるまで、室温で約10分間攪拌する。次いでZr(OPr)/MAAを、攪拌しながら滴下漏斗を用いて徐々に加える。完全に添加した後、室温で4時間攪拌する。次いで必要量の水を滴下し、室温で一晩攪拌する。
【0040】
次いでCrodamer(登録商標)UVA 421を加える。さらに15分後、lrgacure(登録商標)819を加える。次いで、このバッチをイソプロパノールで希釈し、Byk(登録商標)306を加える。完全に均質化されるまで攪拌する。
【0041】
【表1】

【0042】
(参考例5から14)
Zr(OPr)/MAAの調製を、参考例1に記載の通り行う。
【0043】
MPTSを第2の容器に入れ、これにDMDES、PVB溶液(濃度30重量%エタノール溶液)およびイソプロパノールの必要量を加え、25℃で15分間攪拌する。次いで0.1N HClを加え、元は濁っていた反応混合物が透明になるまで、室温で約10分間攪拌する。次いでZr(OPr)/MAAの必要量を、攪拌しながら滴下漏斗を用いて徐々に加える。完全に添加した後、室温で4時間攪拌する。次いで水の必要量を滴下し、室温で一晩攪拌する。
【0044】
次いでlrgacure(登録商標)819およびByk(登録商標)306を加える。完全に均質化するまで攪拌する(基本コーティング)。次いで、表2に従って柔軟剤および増感剤を加える。
【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
(実施例1)
リソグラフィ用光ナノ複合材の製造
Zr(OPr)4 592.2g(1.81モル)を2l三口フラスコ中に入れ、氷浴中で10℃に冷却する。これを攪拌しながら、MAA155.7g(1.81モル)を徐々に滴下する。完全に添加した後、10分後に反応混合物を氷浴から取り出し、次いで25℃で攪拌する。
【0048】
PVB(濃度30重量%2−プロパノール溶液)2312.1gを10l反応器中に入れる。これに最初にMPTS2241.9g(9.04モル)、次いでジメチルジエトキシシラン(DMDES)1338g(9.04モル)を徐々に加え、25℃で45分間均質化する。次いで、0.1N HCl407gを加える。サーモスタットを使って反応器の温度を40℃に一定に保つ。反応混合物が透明化した後、40℃で激しく攪拌しながら上記で作製したZr(OPr)/MAA748gを滴下する。完全に添加した後、反応混合物を25℃で4時間攪拌する。次いで、水48.78g(2.71モル)を加え、25℃でさらに16時間攪拌する。次いで、ヘキサンジオールジメタクリレート(HDDMA)260gを加え、続いて25℃で30分間攪拌し、最後に、Crodamer(登録商標)UVA 421 99gを加える。25℃でさらに30分間攪拌した後、Irgacure 819 99.5gを加える。
【0049】
ホログラフィーの実験
2つの波をミキシングすることによって、位相変調体積ホログラム、ならびに透過および反射ホログラムが作製される。本明細書では、干渉性光源としてアルゴンイオンレーザーを使用する。レーザービーム(20mW/cm)をほぼ0.5mmの直径に焦点を合わせ、ビーム分割器により強度の等しい2系列のビームに分割する。この2つのビームの干渉により、光の強度に空間的に周期的な変化がもたらされる。ホログラフィー材料として、参考例1からの材料を使用する。層を作成するために、光ナノ複合材料をガラス基板(10cm×10cm×0.25cm)上に積層し、ポリエステルフィルムでカバーし、これら強度の変調を用いて照明する。強度変調と同じ周期性を持つ格子構造が形成される。実験に使用した書き込みビームの1つを遮断し屈折率プロファイルを凍結する。これは、残りのビームを次の重合に使用するためである。このようにして、90%の回折効率(波長:633nm)の体積ホログラムを作製する。
【0050】
リソグラフィの実験
実施例1で作製したナノ複合材料を、スロットコーティング法によりポリエステル(好ましくはPET)上に積層し、65℃のオーブン内で5分間硬化させる。コーティングを保護するために、ピールオフフィルムで積層する。このようにして作製したフィルムは、長さ200mで幅36cmであり、乾燥フィルム厚さは20〜80μm、好ましくは40〜60μmである。
【0051】
拡散体を作製するために、保護フィルムを除去し、感光面にリソグラフィマスクをあてる。連続的工程で(ウェブ速度:315mm/分)、光ナノ複合材層を、光学的濃度が0.8〜1.8好ましくは1.0〜1.3のマスクを通してUV光(高圧Hgランプ、出力:1200W)で照射する。100℃のオーブン内で5分間熱処理することにより、反射率勾配を固定させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)可溶性重合体を4.9〜95.9重量%、
b)33〜100%の無機縮合率、および0〜95%の有機変換率を有し、アクリロシラン、エポキシシラン、アクリロアルコキシシラン、アクリロエポキシシラン、エポキシアルコキシシラン、アルコキシシランおよびアルキルアルコキシシラン群からの、部分的にまたは完全に縮合したシランを4〜95重量%、
c)アクリレートを0〜60重量%、
d)酸化物、硫化物、セレン化物、テルル化物、ハロゲン化物、炭化物、ヒ化物、アンチモン化物、窒化物、リン化物、炭酸塩、カルボキシラート、リン酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、チタン酸塩、ジルコニウム酸塩、アルミン酸塩、スズ酸塩、鉛酸塩およびこれらの混合酸化物の群からの、表面を改質したナノ規模粒子を、0.1〜50重量%、
e)柔軟剤を0〜50重量%、
f)熱もしくは光化学架橋開始剤、増感剤、湿潤剤、接着促進剤、レオロジー性添加剤、抗酸化剤、安定剤、着色剤、光互変性および熱変色性物質、またはこれらの組合せを0〜5重量%、それぞれの場合ナノ複合材料の合計重量(乾燥重量)に対して表わして含む、固体またはゲルの形態の重合性ナノ複合材料。
【請求項2】
可溶性重合体a)が、有機溶媒中に可溶性の、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエポキシド、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルまたはポリビニルブチラールであることを特徴とする請求項1に記載のナノ複合材料。
【請求項3】
シランb)が、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、3−グリシジルオキシ−プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシランまたはこれらの組合せであることを特徴とする請求項1または2に記載のナノ複合材料。
【請求項4】
アクリレートc)が、メタクリル酸メチルまたはジオールジアクリレートもしくはジオールジメタクリレートであることを特徴とする請求項1から3の少なくとも一項に記載のナノ複合材料。
【請求項5】
ナノ規模粒子d)が、(メタ)アクリル、アリル、ビニル、エポキシ、ヒドロキシル、カルボキシルまたはアミノ基、あるいはこれらの組合せを含む化合物で表面が改質されることを特徴とする請求項1から4の少なくとも一項に記載のナノ複合材料。
【請求項6】
ナノ規模粒子が、表面を改質したSiO、TiO、ZrOまたはTa粒子であることを特徴とする請求項1から5の少なくとも一項に記載のナノ複合材料。
【請求項7】
柔軟剤を0.1〜30重量%含んでいることを特徴とする請求項1から6の少なくとも一項に記載のナノ複合材料。
【請求項8】
加水分解剤を加えることによりシランb)を部分的にまたは完全に縮合させ、場合によってはUV照射により重合させ、かつ成分a)、c)からf)の1つまたは複数と混合する、あるいはシランb)を最初に成分a)、c)からf)の1つまたは複数と混合し、次いで縮合させ、場合によっては重合させ、次に有機溶媒を場合によっては除去することを特徴とする請求項1から7の一項または複数に記載のナノ複合材料を製造する方法。
【請求項9】
屈折率勾配を有する平面の材料を製造するための、請求項1から7の一項または複数に記載のナノ複合材料の使用。
【請求項10】
請求項1から7の一項または複数に記載のナノ複合材料をコーティングした、基本的に1つまたは2つの透明なプラスチックフィルムからなる、電位差、電子照射、ホログラフィー、リソグラフィを適用することにより、または局所的照明により作製された屈折率勾配を有するフィルム。
【請求項11】
請求項1から7の一項または複数に記載のナノ複合材料を透明なプラスチックフィルムに塗布し、有機溶媒を蒸発させ、ナノ複合材層を透明なカバーフィルムで場合によっては積層し、屈折率勾配が、電位差、電子照射、ホログラフィー、リソグラフィを適用することにより、または局所的照明によりナノ複合材層中に作製され、次いでナノ複合材料の熱および/または光により誘導される完全な架橋結合により固定されることを特徴とする請求項10に記載の屈折率勾配を有するフィルムを製造する方法。

【公開番号】特開2007−291395(P2007−291395A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−116709(P2007−116709)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【分割の表示】特願2003−558081(P2003−558081)の分割
【原出願日】平成15年1月3日(2003.1.3)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】