説明

工作機械の直線案内装置

【課題】転がり案内の高速性・運動精度を有すると共に、優れた振動減衰性をも兼ね備えながらも無給油化も図れる画期的な工作機械の直線案内装置を提供すること。
【解決手段】ハイブリッド式の工作機械の直線案内装置であって、前記すべり案内部4の前記ガイド面8と前記すべり面9との隙間10を調整自在に構成し、このガイド面8とすべり面9との隙間10を、加工時の負荷により生じた前記転がり案内部3の弾性変形により接触面圧が生じ、非加工時はこの隙間10が0(ゼロ)以上になるように設定し、このガイド面8とすべり面9との少なくともいずれか一方面に摩擦抵抗を下げる硬質炭素膜11を形成した工作機械の直線案内装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッドに対するテーブルやコラム,水平レールに対する刃物台やサドル,あるいはサドルに対する刃物台など工作機械における直線移動時の案内機構となる直線案内装置に関するものであり、例えば旋盤・研磨盤など切削・研削時に振動抑制が必要とされ、且つ高精度な位置決め精度も要求されると共に、潤滑性・耐消耗性も要求される工作機械の直線案内装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械において、例えば前述のようにコラム,刃物台,テーブル等は直線移動するが、相対固定部とこれに対するそれら相対移動部との間には案内機構としての直線案内装置が設けられる。
【0003】
この直線案内装置の案内機構としては、転がり案内とすべり案内とがあるが、例えば相対固定部と相対移動部との間に設ける転がり案内部は、その一方側にガイド部としてのガイドレールを設け、他方側にこのガイドレールにスライド自在に係合するスライド部を設け、例えばこのスライド部に多数の転動体を転がり自在にしてスライド方向に移動自在にして組み込んでスライド部自体を転がりユニットとして構成したりし、ガイドレールとスライド部との間に多数の転動体を多数介在させてこの各転動体が転がり自在にして移動自在に摺動接触するように構成するなどして、いわゆる転がり接触とするもので、振動に対する減衰性は低いが、摩擦抵抗は小さく高速性や運動精度に優れる案内機構である。
【0004】
しかし、逆にすべり案内部は、一方側にガイド面を設け、他方側にはこれに摺動自在に接触するすべり面を設けて構成し、いわゆる面と面とによるすべり接触とするもので、摩擦抵抗が大きく給油は必須となる。
【0005】
即ち、このすべり案内部は、転がり案内部とは異なり静剛性が高く加工時の振動に対する減衰性に優れるが、面と面とによるすべり接触であるため、たとえ表面の平滑性を上げても単に材質を選定するなどしてもそのままでは摩擦抵抗は大きく十分な給油が必要であり無給油化(給油をゼロにはできないものの給油の量を大幅に減じ得ること)はできない。
【0006】
また、従来この転がり案内とすべり案内の夫々の長所を生かすべくこれを組み合わせ併用して直線案内機構を構成したハイブリッド式の直線案内装置も、例えば特許第3958132号,特開平9−131634号,特開平6−226573号,特開平6−106433号などのように開発されているが、いずれのすべり案内部でもその摩擦抵抗を転がり案内部程度まで下げることはできず、やはり十分な給油を要し無給油化は図れていない。
【0007】
【特許文献1】特許第3958132号公報
【特許文献2】特開平9−131634号公報
【特許文献3】特開平6−226573号公報
【特許文献4】特開平6−106433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題点を見出し、これを解決するもので、ハイブリッド式の直線案内機構とすることで、転がり案内の高速性・運動精度を有すると共に、すべり案内の振動減衰性をも兼ね備え、すべり案内部でのすべり接触面にはDLCなどの硬質炭素膜を形成することで、転がり案内部と同程度の摩擦抵抗となり、そのため転がり案内の高速性・運動精度をそこなわずに振動減衰性も得られ、更に無給油化も図られ、しかも切削時などの加工時にすべり接触面に必要な面圧がかかるようにすべり接触面の隙間を設定することで、非加工時の無負荷時では一層高速性や運動精度に優れ、また加工時には振動減衰性を発揮するから前述のようにハイブリッド式の利点を有しつつ無給油化も図れ、耐久性にも優れた画期的な工作機械の直線案内装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0010】
相対的に直線移動する相対固定部1と相対移動部2との間に、転がり案内部3とすべり案内部4との双方を設けたハイブリッド式の工作機械の直線案内装置であって、前記相対固定部1と前記相対移動部2との一方側に前記直線移動方向に長さを有するガイド部5を設け、他方側にこのガイド部5にスライド自在に係合するスライド部6を設け、このガイド部5とスライド部6との間に転動自在に転動体7を設けて前記転がり案内部3を構成し、前記一方側に前記直線移動方向に長さを有するガイド面8を設け、前記他方側にこのガイド面8と摺動自在に接触するすべり面9を設けて前記すべり案内部4を構成し、前記ガイド面8と前記すべり面9との隙間10を調整自在に構成し、このガイド面8とすべり面9との隙間10を、加工時の負荷により生じた前記転がり案内部3の弾性変形により接触面圧が生じ、非加工時はこの接触面圧がこれにより小さくなりこの隙間10が0(ゼロ)以上になるように設定し、このガイド面8と前記すべり面9との少なくともいずれか一方面に摩擦抵抗を下げる硬質炭素膜11を形成したことを特徴とする工作機械の直線案内装置に係るものである。
【0011】
また、前記硬質炭素膜11を非晶質硬質炭素膜11として、加工時の前記すべり案内部4での摩擦抵抗を前記転がり案内部3での抵抗に一層近づけたことを特徴とする請求項1記載の工作機械の直線案内装置に係るものである。
【0012】
また、前記硬質炭素膜11を表面に形成したすべり案内部形成部材12を付設して前記ガイド面8若しくは前記すべり面9を形成し前記すべり案内部4を構成したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の工作機械の直線案内装置に係るものである。
【0013】
また、前記硬質炭素膜11を表面に形成した弾性を有する弾性板で前記すべり案内部形成部材12を形成し、このすべり案内部形成部材12を張付けることで前記ガイド面8若しくは前記すべり面9を形成し前記すべり案内部4を構成したことを特徴とする請求項3記載の工作機械の直線案内装置に係るものである。
【0014】
また、前記ガイド面8と前記すべり面9との隙間10を調整する隙間調整機構13を前記すべり案内部4に設け、前記ガイド面8若しくは前記すべり面9を形成する形成板材14を取付面15に沿って移動自在に設けると共に、この取付面15若しくはこの取付面15に当接する前記形成板材14の当接面16をテーパ面としてこの形成板材14を移動することで前記隙間10が広狭するように構成し、この形成板材14を移動調整する調整ネジ部24を回動操作することで形成板材14が移動して前記隙間10を広狭するように前記隙間調整機構13を構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の工作機械の直線案内装置に係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述のように構成したから、転がり案内の高速性・運動精度を有すると共に、すべり案内の振動減衰性をも兼ね備え、すべり案内部でのすべり接触面にはDLCなどの硬質炭素膜を形成したから、転がり案内部と同程度の摩擦抵抗となり、そのため転がり案内の高速性・運動精度をそこなわずに振動減衰性も得られ、更に無給油化も図られ、しかも切削時などの加工時にすべり接触面に必要な面圧がかかるようにすべり接触面の隙間を設定することで、非加工時の無負荷時では一層高速性や運動精度に優れ、また加工時には振動減衰性を発揮するから前述のようにハイブリッド式の利点を有しつつ無給油化も図れ、耐久性にも優れた画期的な工作機械の直線案内装置となる。
【0016】
また、請求項2記載の発明においては、加工時の前記すべり案内部での摩擦抵抗を前記転がり案内部での抵抗に一層近づけることができるため、前記作用・効果が一層良好に発揮される工作機械の直線案内装置となる。
【0017】
また、請求項3記載の発明においては、硬質炭素膜をすべり接触面に形成することが容易に実現でき、一層実用性に優れた工作機械の直線案内装置となる。
【0018】
特に、請求項4記載の発明においては、隙間の調整や負荷時の面圧調整が容易となり、一層実用性に優れた工作機械の直線案内装置となる。
【0019】
また、請求項5記載の発明においては、隙間を調整する隙間調整機構を簡易な構成で容易に実現でき、一層実用性に優れた工作機械の直線案内装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0021】
転がり案内部3とすべり案内部4とに案内されて直線移動するが、加工時でない無負荷時は、振動減衰性の要請は少なく面圧は小さくても0(ゼロ)でも良いので、すべり案内部4のガイド面8とすべり面9とに隙間10があるか若しくは0(ゼロ)又はたとえ面圧が生じてもわずかとなるように隙間10を調整設定する。従って、非加工時は、面圧が0(ゼロ)か小さくなるように設定することでそもそも摩擦抵抗を小さくできる。
【0022】
一方、加工時は振動減衰性が要求されこれを発揮するだけの面圧がこのすべり案内部4のガイド面8とすべり面9と(すべり接触面)に生じさせるように隙間10を設定する。即ち、隙間10を調整設定して、加工時の負荷がかかると転がり案内部3の弾性変形によって面圧が生じるように構成するが、この際、このすべり接触面(ガイド面8とすべり面9のいずれか一方若しくは双方の面)には、硬質炭素膜11が形成されているため摩擦抵抗は小さく、特に硬質炭素膜11を非晶質硬質炭素膜11(DLC)とすることで一層摩擦抵抗を小さくでき、このすべり案内部4での摩擦抵抗を転がり案内部3と同程度にでき、それ故これまで実現できなかった無給油化も実現でき、省資源化が図られ環境に良い装置となる。
【0023】
言い換えると、転がり案内部3は転がり接触であるから摩擦抵抗が小さく、またすべり案内部4でもこのガイド面8とすべり面9との隙間10の調整設定によって非加工時は摩擦抵抗が生じないか、あるいはたとえ面圧が生じ摩擦抵抗が生じてもわずかとなるように設定している。例えば、非加工時での直線移動において振動減衰性は不要である場合が多いのでこの隙間10をゼロ(面圧0)か少し隙間10を生じさせてすべり案内部4では摩擦抵抗が極力0(ゼロ)となるようにする。
【0024】
また、一方本発明では切削時などの加工時に負荷がかかると、転がり案内部3の弾性変形によってすべり案内部4のすべり接触面に面圧が生じる。即ち、ガイド面8とすべり面9とが面接触して摩擦抵抗が生じる。
【0025】
しかし、本発明は、このガイド面8とすべり面9との少なくとも一方の面には、硬質炭素膜11が形成されているため、すべり案内部4では振動減衰性を発揮しつつも転がり案内部3程度の小さな摩擦抵抗しか生じない。
【0026】
そのため、転がり案内部3に加えてすべり案内部4による案内機構を発揮しつつもすべり案内部4での摩擦抵抗も小さく、給油もほとんど必要がなく無給油化が実現でき、しかも切削時などの加工時には、前述のようにすべり案内部4のすべり接触面での面圧によってすべり案内部4による振動減衰性も発揮されることとなる。
【0027】
また、しかもこのように無負荷時には面圧がこれより小さいか0(ゼロ)となるように隙間10を設定しつつも、負荷時にはこのように面圧が生じて振動減衰性を発揮するように隙間10を設定したから、一層給油量を0(ゼロ)に近づけられ無給油化が図れる。
【0028】
即ち、切削時などの加工時において負荷がかかった時に転がり案内部3が弾性変形して面圧が生じることで加工時には転がり案内部3だけでなく、すべり案内部4によっても案内されるハイブリッド式となることで、高速性・運動精度に優れると共に、静剛性が発揮され、振動減衰性をも兼ね備えた工作機械の直線案内装置となり、しかも本発明は、すべり案内部4のすべり接触面(ガイド面8,すべり面9のいずれか一方又は双方)に硬質炭素膜11を形成することで、摩擦抵抗を転がり案内部3の抵抗程度にまで下げることができ、しかもこれを加工時における負荷時に初めて振動減衰性を発揮する程度の面圧が生じるように隙間10を調整設定したから、ハイブリッド式の利点である高速性・運動精度に優れると共に、振動減衰性を兼ね備え、無給油化を実現でき耐久性にも優れた画期的な工作機械の直線案内装置となるものである。
【実施例】
【0029】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0030】
相対的に直線移動する相対固定部1と相対移動部2との間に、転がり案内部3とすべり案内部4との双方を設けたハイブリッド式の工作機械の直線案内装置であるが、本実施例は、研削盤の砥石ヘッド(刃物台)をサドルに対して上下動させる直線案内装置に適用した実施例である。
【0031】
即ち、クロスレール22に左右スライド自在に設けたサドル1(相対固定部1)に対して、上下方向に(回転砥石23を垂設した)刃物台2(相対移動部2)を直線移動するように構成した実施例で、前記サドル1と前記刃物台2との一方側に上下方向に長さを有するレール状のガイド部5を設け、他方側にこのガイド部5にスライド自在に係合する上下方向に長さを有する凹状のスライド部6を設け、このガイド部5とスライド部6との間に(スライド部6を転がりユニットで構成して)多数の転動体7を転動自在にして移動自在に介在させて前記転がり案内部3を構成し、この転がり案内部3だけでは加工時の振動を抑制できないことからこの振動が生じる方向を対向方向として、前記一方側に上下方向に長さを有するガイド面8を設け、前記他方側にこのガイド面8と摺動自在に接触するすべり面9を設けて前記すべり案内部4を構成している。
【0032】
具体的には、本実施例では、前記固定側となるサドル1に設けたボールネジ17を回転駆動源18で回転することでこのボールネジ17に螺着一体化している前記刃物台2(本実施例では砥石ヘッド2)がサドル1に対して上下動する構成で、このサドル1と刃物台2との間の左右に転がり案内部3とすべり案内部4とを一組づつ設けてハイブリッド式の直線案内装置としている。
【0033】
本実施例のこのすべり案内部4は、前記ガイド面8と前記すべり面9との隙間10を調整自在に構成し、このガイド面8とすべり面9との隙間10を、非加工時(無負荷時)にはこの接触面圧が生じないように0(ゼロ)かわずかに隙間10が生じるように設定し、加工時には負荷により生じた前記転がり案内部3の弾性変形により接触面圧が生じるように設定している。
【0034】
即ち、本実施例では非加工時(無負荷時)には隙間調整機構13により例えばガイド面8とすべり面9との隙間10が丁度0(ゼロ)となって決して面圧が生じることのないように設定することで、切削時や研磨時などの加工時には転がり案内部3での弾性変形によって初めて十分な振動減衰性が得られる面圧が生じるように構成している。
【0035】
また本実施例では、前記ガイド面8と前記すべり面9との少なくともいずれか一方面に摩擦抵抗を下げる硬質炭素膜11を形成している。
【0036】
本実施例では、前記硬質炭素膜11を非晶質硬質炭素膜11(DLC)として、加工時の前記すべり案内部4での摩擦抵抗を前記転がり案内部3での抵抗に一層近づけている。
【0037】
DLCはアモルファスカーボン膜で、硬く耐摩耗性に優れ、表面は極めて滑らかでこれまでの摺動材に比べて摩擦係数が1/10〜1/100と極めて小さく、転がり案内と同程度といえるほど面接触させても極めて摩擦抵抗が小さい。
【0038】
また、イオン化蒸着法による成膜装置などによって容易にコーティングできる。
【0039】
また、前記硬質炭素膜11を表面に形成したすべり案内部形成部材12を付設して前記ガイド面8若しくは前記すべり面9(本実施例では固定側のサドル1に設けたガイド面8)を形成し前記すべり案内部4を構成している。従って、単に硬質炭素膜11をコーティングしたすべり案内部形成部材12を付設することですべり接触面に硬質炭素膜11を形成することができるため、製作し易く大掛かりな設計変更や加工作業等を要せず、既存の工作機械にも適用が容易で、コーティング費も下げることができる。
【0040】
更に前記硬質炭素膜11を表面に形成した弾性を有する弾性板で前記すべり案内部形成部材12を形成し、このすべり案内部形成部材12を張付ける構成としているので、本実施例では隙間10の微調整、即ち加工時の面圧調整も精度良く容易に調整設定できることとなる。
【0041】
次に本実施例の前記ガイド面8と前記すべり面9との隙間10を調整する隙間調整機構13について説明する。
【0042】
本実施例では、前記ガイド面8若しくは前記すべり面9の一方の面だけを形成板材14で形成しているが、本実施例では固定側のサドル1に形成板材14を付設してガイド面8を形成し、更に本実施例ではこの形成板材14の表面に前記硬質炭素膜11をコーティングしたすべり案内部形成部材12を付設してガイド面8を形成している。このすべり案内部形成部材12を付設した形成板材14を取付面15に沿って移動自在に設けると共に、この取付面15及びこの取付面15に当接する前記形成板材14の当接面16の双方をテーパ面としてこの形成板材14を移動することで前記隙間10が広狭するように構成している。
【0043】
本実施例では、このように形成板材14に前記硬質炭素膜11を表面に形成したすべり案内部形成部材12を付設し、この形成板材14を移動させることでテーパ面作用によって隙間10が広狭するように構成している。
【0044】
また、このような実施例に限らず、双方の面を形成板材14で形成しても良いし、すべり案内部形成部材12自体を形成板材14とし、形成板材14(すべり案内部形成部材12)の表面に硬質炭素膜11をコーティングしても良い。
【0045】
また、本実施例では、この形成板材14(すべり案内部形成部材12)を移動調整する調整ネジ部24を回動操作することで形成板材14が移動して隙間10を広狭するように前記隙間調整機構13を構成している。具体的には、ガイド面8を形成する形成板材14を上下スライド自在に取り付ける取付面15の近くに調整ネジ孔19を形成し、この調整ネジ孔19に前記調整ネジ部24を上下進退自在に螺着し、この調整ネジ部24の上下進退操作によって前記形成板材14(その表面に付設したすべり案内部形成部材12)がテーパ面の取付面15に沿って移動することで形成板材14の表面のガイド面8と対向面となるすべり面9との隙間10が調整されるように構成している。
【0046】
更に説明すると、本実施例では、調整ネジ孔19に調整ネジ部24(第一調整ネジ部24)と第二調整ネジ部26とを順次螺着し、この下側の調整ネジ部24を螺動させて上昇させることによって形成板材14を上昇させ、上側の第二調整ネジ部26を螺動させて下降させることによって形成板材14を下降させることで隙間10を調整できるように構成している。
【0047】
更に説明すると、各調整ネジ部24,26間に配設する作用部25をこの形成板材14に設け、この作用部25を取付面15に設けたガイド孔20を介して調整ネジ部24と第二調整ネジ部26間に突設し、この調整ネジ部24を螺動して下降させ形成板材14が自重によって下降するか、若しくは下降しない場合はこの第二調整ネジ部26を螺動して作用部25を下方に追い込んで形成板材14を下降させ、その後下側の調整ネジ部24を螺動上昇させて固定するように構成している。
【0048】
従って、例えば形成板材14を下降させて形成板材14の表面のガイド面8と対向面となるすべり面9との隙間10を0(ゼロ)に調整する場合は、先ず下側の調整ネジ部24を螺動して作用部25を下降させるスペースを作った後、上側の第二調整ネジ部26を螺動下降させて作用部25を下方へ追い込み形成板材14を下降させて隙間10を狭め、調整後下側の調整ネジ部24を螺動上昇させてこの位置を固定する。
【0049】
逆に隙間10を広げる場合は、第二調整ネジ部26及び調整ネジ部24を順次螺動上昇させて作用部25を介して形成板材14を上昇させる。
【0050】
このように本実施例では調整ネジ孔19にこの調整ネジ部24,第二調整ネジ部26を螺入してこれを操作具で回動して形成板材14を上下動調整して隙間10を調整できるようにし、この調整ネジ部24,第二調整ネジ部26は操作具を挿入できる貫通孔を形成し、これを回動用係合孔としているが、上側の第二調整ネジ部26の方が大きな係合孔としている。
【0051】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施例の概略構成斜視図である。
【図2】本実施例の要部の平断面図である。
【図3】本実施例の要部の拡大平断面図である。
【図4】本実施例の要部の拡大側断面図である。
【図5】本実施例の要部の隙間調整によって隙間を0(ゼロ)とした調整後の拡大側断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 相対固定部(サドル)
2 相対移動部(刃物台,砥石ヘッド)
3 転がり案内部
4 すべり案内部
5 ガイド部
6 スライド部
7 転動体
8 ガイド面
9 すべり面
10 隙間
11 硬質炭素膜
12 すべり案内部形成部材
13 隙間調整機構
14 形成板材
15 取付面
16 当接面
24 調整ネジ部(第一調整ネジ部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に直線移動する相対固定部と相対移動部との間に、転がり案内部とすべり案内部との双方を設けたハイブリッド式の工作機械の直線案内装置であって、前記相対固定部と前記相対移動部との一方側に前記直線移動方向に長さを有するガイド部を設け、他方側にこのガイド部にスライド自在に係合するスライド部を設け、このガイド部とスライド部との間に転動自在に転動体を設けて前記転がり案内部を構成し、前記一方側に前記直線移動方向に長さを有するガイド面を設け、前記他方側にこのガイド面と摺動自在に接触するすべり面を設けて前記すべり案内部を構成し、前記ガイド面と前記すべり面との隙間を調整自在に構成し、このガイド面とすべり面との隙間を、加工時の負荷により生じた前記転がり案内部の弾性変形により接触面圧が生じ、非加工時はこの接触面圧がこれにより小さくなりこの隙間が0(ゼロ)以上になるように設定し、このガイド面と前記すべり面との少なくともいずれか一方面に摩擦抵抗を下げる硬質炭素膜を形成したことを特徴とする工作機械の直線案内装置。
【請求項2】
前記硬質炭素膜を非晶質硬質炭素膜として、加工時の前記すべり案内部での摩擦抵抗を前記転がり案内部での抵抗に一層近づけたことを特徴とする請求項1記載の工作機械の直線案内装置。
【請求項3】
前記硬質炭素膜を表面に形成したすべり案内部形成部材を付設して前記ガイド面若しくは前記すべり面を形成し前記すべり案内部を構成したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の工作機械の直線案内装置。
【請求項4】
前記硬質炭素膜を表面に形成した弾性を有する弾性板で前記すべり案内部形成部材を形成し、このすべり案内部形成部材を張付けることで前記ガイド面若しくは前記すべり面を形成し前記すべり案内部を構成したことを特徴とする請求項3記載の工作機械の直線案内装置。
【請求項5】
前記ガイド面と前記すべり面との隙間を調整する隙間調整機構を前記すべり案内部に設け、前記ガイド面若しくは前記すべり面を形成する形成板材を取付面に沿って移動自在に設けると共に、この取付面若しくはこの取付面に当接する前記形成板材の当接面をテーパ面としてこの形成板材を移動することで前記隙間が広狭するように構成し、この形成板材を移動調整する調整ネジ部を回動操作することで形成板材が移動して前記隙間を広狭するように前記隙間調整機構を構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の工作機械の直線案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−228877(P2009−228877A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78294(P2008−78294)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(391029819)株式会社オーエム製作所 (34)
【Fターム(参考)】