説明

平面導波路素子

【課題】平面導波路素子中に入力される波長多重化された信号波の波長間隔が狭くなっても、単一波長の信号波として、固有の出力ポートから信号波を出力することが可能な平面導波路素子を提供する。
【解決手段】OBO平面導波路素子1は、SOI基板10と、SOI基板10上に並べて配置され、信号波99が伝播可能な3つ以上の光導波路30と、SOI基板10を加熱するヒータ40とを備えている。そして、少なくとも1つの光導波路30は、入力用端部31に信号波99が入力可能となっており、これよりもヒータ40に近い側に配置された少なくとも2つの光導波路30は、出力用端部32から信号波99が出力可能となっている。そして、入力用端部31の側とは反対側の端部には、信号波99をヒータ40に近づく側に伝播するように反射する第1HRコーティング60Aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面導波路素子に関し、より特定的には、光学的ブロッホ振動を利用して、波長多重化された信号波を分波し、分波された信号波のそれぞれを所望の出力ポートから出力する平面導波路素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
波長多重(Wavelength Division Multiplexing;以下、「WDM」という)光通信においては、波長1.55μm帯の信号波や波長1.3μm帯の信号波からなる多重化された信号波が1本の光ファイバで伝送される。そのため、WDM光通信によれば、大容量かつ高速の光通信を実現することができる。
【0003】
WDM光通信においては、個々の信号波が指定されたポートから出力されるように、多重化された信号波を分波する素子が必要である。そして、このような機能を果たす分波素子としては、光学的ブロッホ振動(Optical Bloch Oscillations;以下、「OBO」という)を利用した平面導波路素子(以下、「OBO平面導波路素子」という)が提案されている(たとえば非特許文献1〜3参照)。
【0004】
以下、従来技術の一例として、非特許文献2に開示されたOBO平面導波路素子について説明する。図23は、非特許文献2において開示された従来のOBO平面導波路素子を示す概略斜視図である。図23を参照して、従来のOBO平面導波路素子100は、SiO(二酸化珪素)およびガラスからなる基板110と、基板110上に並べて配置され、高分子材料からなり、光(信号波)が伝播する複数の光導波路130と、伝播する信号波が光導波路から漏れ出すことを防止する高分子クラッド層120とを備えている。複数の光導波路130の一方端には、信号波が入射する入力ポート131が設けられ、入力ポート131とは反対側の他方端には、信号波が出射する出力ポート132が設けられている。さらに、従来のOBO平面導波路素子100は、光導波路130が並べられる方向における基板110の一方端に配置されたヒータ140と、ヒータ140とは反対側の他方端に配置されたヒートシンク150とをさらに備えている。このヒータ140およびヒートシンク150により、基板110の温度分布(温度勾配)を制御することが可能となっている。
【0005】
ここで、図23を参照して、点線の矢印は、OBO平面導波路素子100における複数の光導波路130中をX軸方向に振動しながら伝播する信号波の道筋190を示している。なお、図23においては、複数の光導波路130が並ぶ方向をX軸方向、各光導波路130の延びる方向をY軸方向、X軸方向およびY軸方向に垂直な方向をZ軸方向とする。
【0006】
次に、OBO平面導波路素子100の製造方法を説明する。まず、図23を参照して、SiOおよびガラスからなる基板110を準備し、当該基板110上に光導波路130となる高分子材料を堆積させる。そして、当該高分子材料上にレジストを塗布してレジスト膜を形成した後、電子線描画またはフォトリソグラフィによって、レジスト膜に光導波路130のパターンを形成する。さらに、このパターンが形成されたレジスト膜をマスクとして、前述の高分子材料をエッチングする。これにより、基板110上に光導波路130が形成される。その後、基板110上に、基板110における光導波路130が形成された面および光導波路130を覆うように、高分子クラッド層120を堆積させる。さらに、基板110のX軸方向における一方の側端部にヒータ140を装着するとともに、他方の側端部にヒートシンク150を装着する。以上の工程により、OBO平面導波路素子100を製造することができる。なお、非特許文献2には、光導波路130の端部の加工等に関する記載はない。
【0007】
次に、OBO平面導波路素子100の動作について説明する。図23を参照して、OBO平面導波路素子100においては、ヒータ140およびヒートシンク150のはたらきにより、基板110のX軸方向における単位長さあたりの温度差を制御することができる。そして、この温度差に応じて光導波路130のX軸方向における単位長さあたりの屈折率の差が変化する。この屈折率の差に起因してOBOが発現し、OBO平面導波路素子100を可変分波器として利用することができる。
【0008】
以下、これについて具体的に説明する。高分子材料からなる光導波路130を有するOBO平面導波路素子100においては、基板110が高温である位置における光導波路130の屈折率は、基板110が低温である位置における光導波路130の屈折率よりも相対的に低くなる。
【0009】
OBO平面導波路素子100の使用時には、ヒータ140およびヒートシンク150の機能によって、基板110のX軸方向の温度分布に勾配(単位長さあたりの温度差)が形成される。そして、信号波の強度のピークが所定の1つの入力ポート131に位置するように、異なる波長を有する複数の信号波がOBO平面導波路素子100中へ入力される。このとき、複数の信号波のそれぞれは、進行している光導波路130から漏れ出し、隣接する光導波路130に結合する。その結果、複数の信号波は、Y軸方向へ伝播しながら、X軸方向においてOBOを起こす。
【0010】
多重化された信号波は、異なる波長を有する複数の信号波が重ね合わされたものである。一般に、信号波の波長が大きくなるにつれて、OBOの振幅が大きくなる。つまり、OBOの性質によれば、信号波の波長毎にOBOの振幅が異なる。また、OBOは、光導波路130のX軸方向における単位長さあたりの屈折率の差、すなわち光導波路130のX軸方向における屈折率の分布の勾配が大きくなるにつれて、その振幅が小さくなる性質を有する。そのため、OBO平面導波路素子100に入力された多重化された信号波は、OBO平面導波路素子100内を伝播する道筋190が波長によって異なっている。つまり、多重化された信号波はOBO平面導波路素子100内で分波されることになる。また、分波された信号波それぞれは、単一波長の信号波として、固有の出力ポート132から出力される。
【0011】
また、ヒータ140およびヒートシンク150を用いて、基板110のX軸方向における温度分布の勾配を調整することで、光導波路130のX軸方向における単位長さあたりの屈折率の差が制御される。この屈折率の差の制御によって、分波された信号波のOBOの振幅を調整して、個々の信号波の出力ポート132を自在に指定することができる。以上のように、OBO平面導波路素子100は可変分波器として利用することができる。
【非特許文献1】R.Morandotti, U.Peschel, J.S.Aitchison、゛Experimental Observation of Linear and Nonlinear Optical Bloch Oscillations"、Physical Review Letters、Vol.83,No.23,4756−4759(1999)
【非特許文献2】T.Pertsch, P.Dannberg, W.Elflein, A.Brauer、゛Optical Bloch Oscillations in Temperature Tuned Waveguide Arrays"、Physical Review letters、Vol.83、No.23、4752−4755(1999)
【非特許文献3】U.Peschel, T.Pertsch, F.Lederer、゛Optical Bloch oscillations in waveguide arrays"、Optics Letters、Vol.23、No.21、1701−1703(1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
WDM光通信において、大容量化かつ高速化を狙う場合には、波長1.55μm帯や波長1.3μm帯の帯域内で、波長が異なるより多くの信号波を多重化する方策が採用され得る。ここで、多重化された信号波の全帯域幅は一定であるため、上記対策を実施するためには、多重化された信号波の波長間隔を狭くする必要がある。そうすると、非特許文献2に記載されたOBO平面導波路素子100の構成では、OBOの性質により、多重化された信号波それぞれのOBOの振幅の差が小さくなる。その結果、OBO平面導波路素子100内を伝播する複数の信号波の道筋190において、OBOの振動方向(図23のX軸方向)の間隔が狭くなる。そして、多重化された信号波のOBOの振幅の差が光導波路130の中心間距離より短くなると、複数の信号波が同じ出力ポート132から出力される。この場合、分波された信号波それぞれが、単一波長の信号波として固有の出力ポート132から出力されず、OBO平面導波路素子100が分波器として十分機能しないという問題が生じる。
【0013】
本発明は上記課題を解決するものであり、平面導波路素子中に入力される波長多重化された信号波の波長間隔が狭くなっても、単一波長の信号波として、固有の出力ポートから信号波を出力することが可能な平面導波路素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に従った平面導波路素子は、低屈折率層と、当該低屈折率層上に配置され、低屈折率層よりも屈折率の大きい高屈折率層とを有する基板と、基板上に並べて配置され、信号波が伝播可能な3つ以上の光導波路と、基板の、光導波路が並ぶ方向における一方の端部に配置され、基板を加熱する加熱部材とを備えている。そして、当該3つ以上の光導波路のうちの少なくとも1つの光導波路は、光導波路の延在方向における端部に信号波が入力可能となっている。さらに、信号波が入力可能な端部を有する光導波路よりも加熱部材に近い側に配置された当該3つ以上の光導波路のうちの少なくとも2つの光導波路は、光導波路の延在方向における端部から信号波が出力可能となっている。そして、当該3つ以上の光導波路において信号波が入力可能な端部の側とは反対側の光導波路の延在方向における端部には、信号波を加熱部材に近づく側に伝播するように反射する第1反射部が形成されている。
【0015】
本発明の平面導波路素子においては、多重化された波長の異なる複数の信号波が光導波路に入力された場合、当該信号波は光導波路の延在方向に伝播した後、光導波路素子の端部に形成された第1反射部において反射され、加熱部材に近づくようにさらに伝播する。このとき、OBOの性質に基づき、多重化された信号波が第1反射部で反射されると、信号波が進行する向きにおいて、多重化された信号波それぞれの伝播する道筋の間隔が広がる。その結果、本発明の平面導波路素子によれば、入力される波長多重化された信号波の波長間隔が狭くなっても、単一波長の信号波として、固有の出力ポートから信号波を出力することが可能となる。
【0016】
上記平面導波路素子において好ましくは、第1反射部は、第1反射部において信号波が反射する際に、反射後の信号波のOBOの位相が反射前の信号波のOBOの位相に対してπ変化するように配置される。さらに、光導波路の延在方向において、信号波が入力可能な端部から第1反射部までの距離は、信号波が起こすOBO(Optical Bloch Oscillations;光学的ブロッホ振動)の1/2周期長となっている。なお、1/2周期長とは、信号が起こすOBOの1/2周期の間に、光導波路の延在方向において信号波が伝播する距離を示す。
【0017】
これにより、光導波路に入力された信号波が光導波路の延在方向に伝播し、第1反射部に到達した時点でOBOの位相がπ変化しており、かつ第1反射部にて反射される際に信号波のOBOの位相がπ変化する。その結果、第1反射部において反射する信号波が、加熱部材に近づく側に伝播する。
【0018】
上記平面導波路素子において好ましくは、信号波が入力可能な端部を有する光導波路が延在する方向に、信号波が入力可能な端部から離れる向きを正とする座標軸をおいた場合に、上記3つ以上の光導波路のうち一の光導波路の延在方向に延びる直線と第1反射部との交点の当該座標軸における座標である第1反射位置は、その一の光導波路の加熱部材側とは反対側に隣接する光導波路における第1反射位置に比べて(2m+1)×λ/4nずつ単調増加または単調減少する。ここで、mは0以上の整数、λは信号波の波長、nは光導波路の等価屈折率である。
【0019】
これにより、第1反射部において信号波が反射する際に、反射後の信号波のOBOの位相が反射前の信号波のOBOの位相に対してπ変化する。なお、単調増加または単調減少する第1反射位置の誤差は、(2m+1)×λ/4nの値に対して±10%以内であることが好ましい。
【0020】
上記平面導波路素子において好ましくは、信号波が入力可能な端部を有する光導波路よりも加熱部材に近い側に配置された光導波路の、光導波路の延在方向における第1反射部とは反対側の端部には、信号波を加熱部材に近づく側に伝播するように反射する第2反射部がさらに形成されている。
【0021】
これにより、多重化された波長の異なる複数の信号波が光導波路に入力された場合、当該信号波は光導波路の延在方向に伝播し、第1反射部において反射された後、さらに第2反射部において反射され、加熱部材に近づくように伝播する。そのため、信号波が進行する向きにおいて、多重化された信号波それぞれの伝播する道筋の間隔がさらに広がる。その結果、入力される波長多重化された信号波の波長間隔が狭くなっても、単一波長の信号波として固有の出力ポートから信号波を出力することが、一層容易となる。
【0022】
上記平面導波路素子において好ましくは、第1反射部および第2反射部は、第1反射部および第2反射部において信号波が反射する際に、反射後の信号波のOBOの位相が反射前の信号波のOBOの位相に対してπ変化するように配置される。さらに、光導波路の延在方向において、信号波が入力可能な端部から第1反射部までの距離、および第1反射部から第2反射部までの距離は、いずれも信号波が起こすOBO(Optical Bloch Oscillations;光学的ブロッホ振動)の1/2周期長となっている。
【0023】
これにより、光導波路に入力された信号波が光導波路の延在方向に伝播し、第1反射部に到達した時点でOBOの位相がπ変化しており、かつ第1反射部にて反射される際に信号波のOBOの位相がπ変化する。さらに、第1反射部にて反射された信号波が光導波路の延在方向に伝播し、第2反射部に到達した時点でOBOの位相がπ変化しており、かつ第2反射部にて反射される際に信号波のOBOの位相がπ変化する。その結果、第1反射部および第2反射部において反射する信号波がいずれも、加熱部材に近づく側に伝播する。
【0024】
上記平面導波路素子において好ましくは、信号波が入力可能な端部を有する光導波路が延在する方向に、信号波が入力可能な端部から離れる向きを正とする座標軸をおいた場合に、上記3つ以上の光導波路のうち一の光導波路の延在方向に延びる直線と第1反射部との交点の当該座標軸における座標である第1反射位置は、その一の光導波路の加熱部材側とは反対側に隣接する光導波路における第1反射位置に比べて、(2m+1)×λ/4nずつ単調増加または単調減少する。さらに、上記3つ以上の光導波路のうち一の光導波路の延在方向に延びる直線と第2反射部との交点の当該座標軸における座標である第2反射位置は、その一の光導波路の加熱部材側とは反対側に隣接する光導波路における第2反射位置に比べて、(2m+1)×λ/4nずつ単調増加または単調減少する。ここで、mは0以上の整数、λは信号波の波長、nは光導波路の等価屈折率である。
【0025】
これにより、第1反射部において信号波が反射する際、および第2反射部において信号波が反射する際にはいずれも、反射後の信号波のOBOの位相が反射前の信号波のOBOの位相に対してπ変化する。なお、単調増加または単調減少する第1反射位置および第2反射位置の誤差は、(2m+1)×λ/4nの値に対して±10%以内であることが好ましい。
【0026】
上記平面導波路素子において好ましくは、第1反射部は、第1反射部において信号波が反射する際に、反射後の信号波のOBOの位相が反射前の信号波のOBOの位相に対して変化しないように配置される。さらに、第2反射部は、第2反射部において信号波が反射する際に、反射後の信号波のOBOの位相が反射前の信号波のOBOの位相に対してπ変化するように配置される。そして、光導波路の延在方向において、信号波が入力可能な端部から第1反射部までの距離、および第1反射部から第2反射部までの距離は、いずれも信号波が起こすOBOの1/4周期長となっている。なお、1/4周期長とは、信号が起こすOBOの1/4周期の間に、光導波路の延在方向において信号波が伝播する距離を示す。
【0027】
これにより、光導波路に入力された信号波が光導波路の延在方向に伝播し、第1反射部に到達した時点でOBOの位相がπ/2変化しており、かつ第1反射部にて反射される際に信号波のOBOの位相が変化しない。そのため、第1反射部において反射する信号波が、加熱部材に近づく側に伝播する。また、第1反射部にて反射された信号波は光導波路の延在方向に伝播し、第2反射部に到達した時点では、OBOの位相が光導波路に入力された時点からπ変化しており、かつ第2反射部にて反射される際に信号波のOBOの位相がπ変化する。そのため、第2反射部において反射する信号波が、加熱部材に近づく側に伝播する。その結果、第1反射部および第2反射部において反射する信号波がいずれも、加熱部材に近づく側に伝播する。さらに、光導波路の延在方向において、信号波が入力可能な端部から第1反射部までの距離、および第1反射部から第2反射部までの距離が、信号波の起こすOBOの1/2周期長とされる場合に比べて、光導波路の延在方向において光導波路素子の長さを短くすることが可能となり、光導波路が並ぶ方向において基板の熱抵抗率を高くすることができる。その結果、光導波路が並ぶ方向において光導波路素子に温度勾配をつけることが容易となり、加熱部材において消費されるエネルギー(たとえば電力など)を低減することができる。
【0028】
上記平面導波路素子において好ましくは、信号波が入力可能な端部を有する光導波路が延在する方向に、信号波が入力可能な端部から離れる向きを正とする座標軸をおいた場合に、上記3つ以上の光導波路の各々の延在方向に延びる直線と第1反射部との交点の当該座標軸における座標である第1反射位置は一定である。さらに、上記3つ以上の光導波路のうち一の光導波路の延在方向に延びる直線と第2反射部との交点の当該座標軸における座標である第2反射位置は、その一の光導波路の加熱部材側とは反対側に隣接する光導波路における第2反射位置に比べて、(2m+1)×λ/4nずつ単調増加または単調減少する。ここで、mは0以上の整数、λは信号波の波長、nは光導波路の等価屈折率である。
【0029】
これにより、第1反射部において信号波が反射する際には反射後の信号波のOBOの位相が反射前の信号波のOBOの位相に対して変化せず、第2反射部において信号波が反射する際には反射後の信号波のOBOの位相が反射前の信号波のOBOの位相に対してπ変化する。なお、一定である第1反射位置、および単調増加または単調減少する第2反射位置の誤差は、(2m+1)×λ/4nの値に対して±10%以内であることが好ましい。
【0030】
上記平面導波路素子において好ましくは、第1反射部は、第1反射部において信号波が反射する際に、反射後の信号波のOBOの位相が反射前の信号波のOBOの位相に対して変化しないように配置される。さらに、光導波路の延在方向において、信号波が入力可能な端部から第1反射部までの距離は、信号波が起こすOBOの1/4周期長となっている。
【0031】
これにより、光導波路に入力された信号波が光導波路の延在方向に伝播し、第1反射部に到達した時点でOBOの位相がπ/2変化しており、かつ第1反射部にて反射される際に信号波のOBOの位相が変化しない。そのため、第1反射部において反射する信号波が、加熱部材に近づく側に伝播する。その結果、第1反射部において反射する信号波が、加熱部材に近づく側に伝播する。さらに、光導波路の延在方向において、信号波が入力可能な端部から第1反射部までの距離が、信号波の起こすOBOの1/2周期長とされる場合に比べて、光導波路の延在方向において光導波路素子の長さを短くすることが可能となり、光導波路が並ぶ方向において基板の熱抵抗率を高くすることができる。その結果、光導波路が並ぶ方向において光導波路素子に温度勾配をつけることが容易となり、加熱部材において消費されるエネルギー(たとえば電力など)を低減することができる。
【0032】
上記平面導波路素子において好ましくは、信号波が入力可能な端部を有する光導波路が延在する方向に、信号波が入力可能な端部から離れる向きを正とする座標軸をおいた場合に、上記3つ以上の光導波路の各々の延在方向に延びる直線と第1反射部との交点の座標軸における座標である第1反射位置は一定である。
【0033】
これにより、第1反射部において信号波が反射する際には反射後の信号波のOBOの位相が反射前の信号波のOBOの位相に対して変化しない。なお、一定である第1反射位置の誤差は、(2m+1)×λ/4nの±10%以内であることが好ましい。
【0034】
上記平面導波路素子において好ましくは、第1反射部および第2反射部は、HR(High Reflection)コーティングである。これにより、第1反射部および第2反射部において、高い反射率、たとえば反射率90%以上で信号波を反射させることができる。なお、HRコーティングとは、信号波に対して高反射率または全反射となる多層膜のコーティングをいう。
【0035】
上記平面導波路素子において好ましくは、第1反射部および第2反射部は、フォトニック結晶である。そして、信号波の周波数帯域は、フォトニック結晶のフォトニックバンドギャップ内に位置する。これにより、第1反射部および第2反射部が容易に形成でき、平面導波路素子の製造が容易になる。ここで、信号波の周波数帯域がフォトニックバンドギャップ内に位置するためには、光導波路を伝播する信号波がフォトニック結晶中でブラッグ反射を起こすような条件が必要となる。つまり、光導波路中の信号波の半波長程度で周期的な屈折率分布をもつ構造体が必要となる。
【発明の効果】
【0036】
以上の説明から明らかなように、平面導波路素子中に入力される波長多重化された信号波の波長間隔が狭くなっても、単一波長の信号波として、固有の出力ポートから信号波を出力することが可能な平面導波路素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0038】
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施の形態である実施の形態1における平面導波路素子の構成を示す概略平面図である。また、図2は、本発明の一実施の形態である実施の形態1における平面導波路素子の構成を示す概略側面図である。また、図3は、図1のHRコーティング付近を拡大して示す概略部分平面図である。図1〜図3を参照して、実施の形態1における平面導波路素子の構成を説明する。
【0039】
図1および図2を参照して、実施の形態1における平面導波路素子であるOBO平面導波路素子1は、基板としてのSOI(silicon on insulator)基板10と、SOI基板10上に並べて配置され、信号波99が伝播可能な3つ以上の光導波路30と、SOI基板10の、光導波路30が並ぶ方向における一方の端部に配置され、SOI基板10を加熱する加熱部材としてのヒータ40と、光導波路30が並ぶ方向においてヒータ40とは反対側の端部である他方の端部に配置され、SOI基板10の熱を外部に放出することによりSOI基板10を冷却するヒートシンク50とを備えている。SOI基板10は、Si(珪素)からなるSi基板11と、SiO(二酸化珪素)からなる低屈折率層としてのSiO層12と、SiO層12上に配置され、SiO層12よりも屈折率の大きい高屈折率層としてのSi(珪素)からなるSi層13とを有している。
【0040】
Si基板11は、600μmの厚さを有している。ただし、素子を分割することができ、かつ、分割した素子の機械的強度が十分に保たれるのであれば、Si基板11の厚さは600μmに限定されるものではなく、50μm以上800μm以下であればよい。また、SiO層12は、1μmの厚さを有している。ただし、光導波路を伝播する信号波がSi基板に漏れださないのであれば、SiO層12の厚さは1μmに限定されるものではなく、0.3μm以上であればよい。さらに、Si層13は、0.19μmの厚さを有している。ただし、ある光導波路を伝播する信号波が隣接する光導波路と結合しOBOを発現できるのであれば、Si層13の厚さは0.19μmに限定されるものではなく、0.1μm以上0.25μm以下であればよい。
【0041】
さらに、上記3つ以上の光導波路30のうち、入力用光導波路30Aは、光導波路30の延在方向における端部である入力用端部31に波長λ〜λの信号波が多重化された信号波99が入力可能となっている。この入力用端部31は、OBO平面導波路素子1の入力ポートとして機能することができる。また、入力用光導波路30Aよりもヒータ40に近い側に配置された上記3つ以上の光導波路30のうち、出力用光導波路30Bは、光導波路30の延在方向における端部である出力用端部32から分波された信号波99が出力可能となっている。この出力用端部32は、OBO平面導波路素子1の出力ポートとして機能することができる。
【0042】
そして、上記3つ以上の光導波路30において、入力用端部31の側とは反対側の光導波路30の延在方向における端部には、信号波99をヒータ40に近づく側に伝播するように反射する第1反射部としての第1HR(High Reflection)コーティング60Aが形成されている。
【0043】
さらに入力用光導波路30Aよりもヒータ40に近い側に配置された光導波路30の、光導波路30の延在方向における第1HRコーティング60Aとは反対側の端部には、信号波99をヒータ40に近づく側に伝播するように反射する第2反射部としての第2HRコーティング60Bが形成されている。
【0044】
より具体的には、Si層13上には、複数の光導波路30が設けられている。複数の光導波路30が並ぶ方向をX軸方向、光導波路30が延びる方向をY軸方向、X軸方向とY軸方向とのそれぞれに垂直な方向をZ軸方向とすると、複数の光導波路30は、それぞれ直線状であり、互いに平行にX軸方向に並んでいる。複数の光導波路30のそれぞれには、信号波99としての光が伝播することができる。
【0045】
そして、SOI基板10のX軸方向に生じる温度分布の勾配を制御するために、基板10の一方の側端面に接触するようにヒータ40が設けられるとともに、SOI基板10の他方の側端面に接触するように、ヒートシンク50が設けられている。ヒータ40は、導線82を介して電源装置81に接続されている。また、入力ポートとして機能する入力用端部31および出力ポートとして機能する出力用端部32以外の光導波路30の端部である反射用端部33には、HRコーティング60が施されている。
【0046】
さらに、第1HRコーティング60Aおよび第2HRコーティング60Bは、第1HRコーティング60Aおよび第2HRコーティング60Bにおいて信号波99が反射する際に、反射後の信号波99のOBOの位相が反射前の信号波99のOBOの位相に対してπ変化するように配置されている。また、Y軸方向において、入力用端部31から第1HRコーティング60Aまでの距離、および第1HRコーティング60Aから第2HRコーティング60Bまでの距離は、いずれも信号波99が起こすOBO(Optical Bloch Oscillations;光学的ブロッホ振動)の1/2周期長となっている。なお、1/2周期長とは、信号が起こすOBOの1/2周期の間に、光導波路の延在方向において信号波が伝播する距離を示す。
【0047】
より具体的には、図1および図3を参照して、入力用端部31を有する入力用光導波路30Aが延在する方向に、入力用端部31から離れる向きを正とするY座標軸をおいた場合に、上記3つ以上の光導波路30のうち、一の光導波路30を通ってその延在方向に延びる直線と第2HRコーティング60Bとの交点の上記Y座標軸における座標である第2反射位置は、その一の光導波路30のヒータ40側とは反対側に隣接する光導波路30における第2反射位置に比べて、(2m+1)×λ/4nずつ単調減少している。ここで、mは0以上の整数、λは信号波99の波長、nは光導波路30の等価屈折率である。
【0048】
また、上記3つ以上の光導波路30のうち一の光導波路30を通ってその延在方向に延びる直線と第1HRコーティング60Aとの交点のY座標軸における座標である第1反射位置は、その一の光導波路30のヒータ40側とは反対側に隣接する光導波路30における第1反射位置に比べて、(2m+1)×λ/4nずつ単調増加している。
【0049】
なお、本実施の形態においては、第2反射位置が単調減少し、第1反射位置が単調増加する場合について説明するが、本発明の光導波路素子はこれに限られず、第1反射位置および第2反射位置はそれぞれ単調増加していてもよいし、単調減少していてもよい。
【0050】
より詳細に説明すると、本実施の形態では、λ=1.55μm、n=3.5、かつm=0という条件でOBO平面導波路素子1が構成され、入力用端部31の側にある光導波路30の端部(端面)のY座標(第2反射位置)は、ヒータ40側に向かって111nmずつ単調減少するように調整されている。一方、入力用端部31の反対側にある光導波路30の端部のY座標(第1反射位置)は、ヒータ40側に向かって111nmずつ単調増加するように調整されている。
【0051】
さらに、Y軸方向において信号波99が光導波路30の一方の端部(端面)から他方の端部(端面)へ伝播する間に、OBOの1/2周期長だけ進行するように、光導波路30の長さが調整されている。つまり、本実施の形態では、光導波路30の長さが1.5mmという条件でOBO平面導波路素子1が構成されている。
【0052】
なお、上述のように、各光導波路30の第1反射位置および第2反射位置は、111nmずつ変位しているため、光導波路30の長さは厳密にはすべて1.5mmとはいえない。しかし、変位量は、111nm(0.000111mm)であって、光導波路30の長さである1.5mmに対して極めて微小である。そのため、実質的に上述の構成により、光導波路30に関して、上述の端部のY座標に関する条件と、長さに関する条件とを両立することができる。なお、第1反射位置、および第2反射位置の誤差は、111nmに対して±10%以内であることが好ましい。また、光導波路30の長さの誤差は、1.5mmに対して±10%以内であることが好ましい。
【0053】
以上のように、本実施の形態のOBO平面導波路素子1は、入力用端部31および出力用端部32以外の光導波路30の端面である反射用端部33にHRコーティング60が施され、さらに、Y軸方向において光導波路30の端面(端部)の位置および光導波路30の長さが、前述のように調整されている点において、図23に基づいて説明した従来のOBO平面導波路素子100とは異なっている。
【0054】
次に、本実施の形態における平面導波路素子の製造方法について説明する。図4、図5、図7および図8は、実施の形態1におけるOBO平面導波路素子の製造方法を説明するための概略断面図である。また、図6、図9および図10は、実施の形態1におけるOBO平面導波路素子の製造方法を説明するための概略平面図である。
【0055】
まず、基板が準備される基板準備工程が実施される。具体的には、図4を参照して、Si基板11、SiO層12、および厚さ0.3μmのSi層13がこの順番で積層されたSOI基板10が準備される。
【0056】
次に、SOI基板10上に光導波路が形成される光導波路形成工程が実施される。具体的には、まず、図4に示すように、SOI基板10のSi層13上にレジストが塗布されてレジスト膜91が形成される。その後、図5および図6に示すように、電子線直接描画、あるいはフォトリソグラフィによってレジスト膜91が加工されて、Y軸方向において端面の位置および長さが調整された光導波路30を形成するためのレジストパターンが形成される。レジスト膜91の加工は、たとえば電子線直接描画では、電子線の照射電流が0.1nA、かつ1ドットあたりの電子線のドーズ時間が4.5μsecである条件で行なうことができる。また、フォトリソグラフィでは、転写時間が10sec程度の条件の下で、レジストパターンを形成することができる。
【0057】
その後、レジストパターンに加工された上記レジスト膜91をマスクとして、図7に示すように、ICP(Inductively Coupled Plasma)エッチング、反応性イオンエッチング、または反応性イオンビームエッチングなどのエッチング方法が採用されて、Si層13の途中までがエッチングされる。より具体的には、たとえばエッチングの条件としてエッチングガスが塩素ガス25sccmと窒素ガス10sccmとの混合ガス、エッチング圧力が0.1Pa、RF(Radio Frequency)パワーが200Wの条件を採用した反応性イオンエッチングが行なわれる。そして、レジスト膜91が除去されることにより、光導波路30が得られる。
【0058】
次に、光導波路30が形成されたSOI基板10に、ヒータおよびヒートシンクを形成する温度調節部材形成工程が実施される。具体的には、図8に示すように、スパッタリング法または蒸着法を用いて、SOI基板10におけるX軸方向の一方の側端部に、たとえば窒化タンタル膜からなるヒータ40が形成される。さらに、スパッタリング法または蒸着法を用いて、SOI基板10におけるX軸方向の他方の側端部に、窒化アルミ膜からなるヒートシンク50が形成される。
【0059】
次に、SOI基板10上に形成された光導波路30のうち、入力用端部31および出力用端部32以外の端部である反射用端部33に反射部を形成する反射部形成工程が実施される。具体的には、まず、図9に示すように、光導波路30が形成されたSOI基板10上にレジストが再度塗布されてレジスト膜91が形成される。その後、図9に示すように、電子線直接描画、あるいはフォトリソグラフィによってレジスト膜91が加工される。これにより、反射部としての第1HRコーティング60Aおよび第2HRコーティング60Bの形状に対応する、すなわち光導波路30の端部のうち反射用端部33となるべき端部が露出する開口91Aを有するレジストパターンが形成される。
【0060】
その後、図10を参照して、レジストパターンに加工された上記レジスト膜91を覆うように、スパッタリング法または蒸着法を用いて、Al(アルミニウム)膜92が形成される。そして、リフトオフ法を用いて、レジスト膜91上に形成されたAl膜92が、レジスト膜91と共にSOI基板10から除去される。これにより、図1および図2を参照して、光導波路30の反射用端部33に、AlからなるHRコーティング60が施される。
【0061】
次に、ヒータ40に電力を供給することにより、ヒータ40によるSOI基板10の加熱を可能にする電源装置をヒータに接続する電源装置接続工程が実施される。具体的には、図1および図2を参照して、電源装置81が配置されるとともに、電源装置81とヒータ40とが、導線82により接続される。
【0062】
以上の工程により、本実施の形態におけるOBO平面導波路素子1を製造することができる。
【0063】
次に、本実施の形態におけるOBO平面導波路素子1の動作について説明する。図1および図2を参照して、電源装置81から電力が供給されたヒータ40により、SOI基板10のX軸方向における一方の端部が加熱される。一方、ヒートシンク50の機能により、SOI基板10のX軸方向における他方の端部からSOI基板10中の熱が放出されることにより、当該他方の端部は上記一方の端部に対して相対的に冷却される。その結果、SOI基板10のX軸方向の温度分布に勾配が生じる。すなわち、SOI基板10は、X軸方向において、ヒータ40に近づくにつれて徐々に温度が高くなる。ここで一般に、Siなどの半導体材料は、高温になるにつれて屈折率が高くなる。したがって、SOI基板10のヒータ40側にある光導波路30の屈折率は、SOI基板10のヒートシンク50側にある光導波路30の屈折率よりも相対的に高くなる。
【0064】
この状態で、信号波99の強度ピークが所定の一つの入力ポートである入力用端部31に位置するように、波長が異なる複数の信号波(波長:λ〜λ)がOBO平面導波路素子1中へ入力される。それにより、信号波99に含まれる複数の信号波は、進行している光導波路30から漏れ出し、隣接する光導波路30に結合する。その結果、信号波99に含まれる複数の信号波は、Y軸方向に伝播しながら、X軸方向にOBOを起こす。OBOは、信号波の波長が長くなるにつれて、その振幅が大きくなる。したがって、図1に示すように、複数の信号波がOBO平面導波路素子1内を伝播する場合には、伝播の道筋が波長によって異なる。つまり、信号波99は、OBO平面導波路素子1内で分波されることとなる。
【0065】
ここで、OBOは、光導波路30のX軸方向における単位長さあたりの屈折率の差、すなわち光導波路30のX軸方向における屈折率の勾配が大きくなるにつれて、その振幅が小さくなる性質を有している。したがって、SOI基板10のX軸方向における温度の勾配を変化させることによって、所望の出力ポートである出力用端部32に信号波を出力することができる。
【0066】
次に、本実施の形態における反射部であるHRコーティング60での信号波99の反射について説明する。図11は、X軸方向における信号波の伝播定数κとY軸方向における信号波の伝播定数βとの関係を説明するための図である。また、図12は、図11に対応する信号波の道筋を示す図である。
【0067】
一般に、X軸方向における信号波の伝播定数κとY軸方向における信号波の伝播定数βとの関係は図11のようになり、X軸方向における信号波の群速度(v)は、以下の式(1)で表される。
【0068】
【数1】

【0069】
つまり、OBO平面導波路素子1を伝播する信号波99のvの値は、図11のグラフの傾きと一致する。このため、OBO平面導波路素子1内のvでは、X軸方向においてヒートシンク50側からヒータ40側への向きを正とする。
【0070】
ここで、図12を参照して、図12のa点にあるようなOBO平面導波路素子1の入力用端部31に入った信号波99は、κが0である。したがって、図12のa点における信号波99の状態は、図11のA点に対応し、入力用端部31にある信号波99のvは0となる。次に、ヒータ40の発熱により、SOI基板10の温度がヒートシンク50からヒータ40に向けて上昇する勾配を有している場合、OBO平面導波路素子1を伝播する信号波99は、Y軸方向に伝播しながら、X軸方向においてOBOを起こす。このため、信号波99は図12におけるa点を出発してb点に到達するように、ヒータ40側へ進行していく。a点からb点への進行は、図11において信号波の状態がA点からB点に変化することに対応する。さらに、図12のc点へ伝播した信号波99では、図11における信号波の状態はC点に対応し、伝播の際に信号波99のOBOの位相が0からπへと変化する。このため、反射用端部33においては、vが0となる。
【0071】
次に、信号波99は、第1HRコーティング60Aで反射される。このとき、上述のように、反射後の信号波99のOBOの位相がπ変化する。その結果、図11に示すように、信号波の状態がC点からA点へ変化する。そのため、信号波のvが0となり、その後vの値が正となる。したがって、第1HRコーティング60Aで反射した信号波99は、再びヒータ40側へと進行する。
【0072】
その後、図1に示すように、OBO平面導波路素子1を伝播する信号波99はHRコーティング60で反射を繰り返し、出力ポートである出力用端部32から出力される。ここで、信号波99がOBO平面導波路素子1を伝播する間、図11に示すように、信号波99の状態は、A点からC点への移動と、HRコーティング60でのC点からA点への変化とが繰り返される。したがって、OBO平面導波路素子1内を伝播する信号波99は、X軸方向においてv≧0の範囲でOBOを繰り返す。
【0073】
そして、OBOの性質に基づけば、多重化された信号波99における波長の異なる複数の信号波の道筋は、HRコーティング60で反射を繰り返すたびに、X軸方向における間隔が広がっていく。
【0074】
このように、多重化された信号波99がHRコーティング60で反射する回数を増加させると、OBO平面導波路素子1中に入力される多重化された信号波99の各波長の間隔が狭くなっても、単一波長の信号波として、固有の出力ポートとしての出力用端部32から信号波を出力することができる。
【0075】
また、ヒータ40およびヒートシンク50を用いて、SOI基板10のX軸方向における温度の勾配を調整すると、X軸方向における単位長さあたりの屈折率差が制御される。したがって、ヒータ40およびヒートシンク50を用いて、分波された信号波99のOBOの振幅を調整して、出力ポートである出力用端部32から出力される信号波99の波長を自在に指定することができる。
【0076】
なお、本実施の形態においては、HRコーティングの材料としてAlが用いられているが、波長1.3μm帯や波長1.55μm帯の多重化された信号波の反射率が90%以上であれば、Ag(銀)、Rh(ロジウム)、Au(金)、Cu(銅)がHRコーティングの材料として用いられても、前述の効果と同様の効果が得られる。
【0077】
また、本実施の形態においては、信号波を反射させるため反射部としてHRコーティングが採用される場合について説明したが、波長1.3μm帯や波長1.55μm帯の多重化された信号波の反射率が90%以上であれば、後述のように、信号波を進入させないようなフォトニック結晶(Photonic Cristal;以下「PhC」という。)を反射部として採用することもできる。
【0078】
(実施の形態2)
次に、本発明の平面導波路素子の他の実施の形態である実施の形態2について説明する。図13は、実施の形態2における平面導波路素子の構成を示す概略平面図である。また、図14は、実施の形態2おける平面導波路素子の構成を示す概略側面図である。また、図15は、図13のPhC付近を拡大して示す概略部分平面図である。図13〜図15を参照して、実施の形態2における平面導波路素子の構成を説明する。
【0079】
図13および図14を参照して、実施の形態2におけるOBO平面導波路素子1は、基本的には実施の形態1におけるOBO平面導波路素子1と同様の構成を有している。しかし、実施の形態2におけるOBO平面導波路素子1は、光導波路30の端部に形成された反射部の構成において、実施の形態1とは異なっている。
【0080】
すなわち、実施の形態2におけるOBO平面導波路素子1の光導波路30では、図13に示すように、入力ポートである入力用端部31および出力ポートである出力用端部32以外の端部である反射用端部33には、PhC70が設けられている。このPhC70の構造は、多重化された信号波99の周波数帯域がフォトニックバンドギャップ内に位置するように決定される。たとえば、1.55μm帯の信号波99をOBO平面導波路素子1に入力する場合、直径175nmの孔(円孔)を、格子定数400nmとなるように配置したPhC70が形成される。このため、PhC70を有する光導波路30末端部へは、信号波99が進行できない。したがって、図13に示すように、OBO平面導波路素子1内を伝播する信号波99が、光導波路30の端部のPhC70がない領域からある領域へ進もうとすると、光導波路30端部のPhC130がある領域とない領域の境界面(PhC境界面34)において反射する。
【0081】
すなわち、光導波路30において入力用端部31の側とは反対側の光導波路30の延在方向における端部には、信号波99をヒータ40に近づく側に伝播するように反射する第1反射部としての第1PhC70Aが形成されている。さらに入力用光導波路30Aよりもヒータ40に近い側に配置された光導波路30の、光導波路30の延在方向における第1PhC70Aとは反対側の端部には、信号波99をヒータ40に近づく側に伝播するように反射する第2反射部としての第2PhC70Bが形成されている。ここで、信号波99の周波数帯域は、PhC70のフォトニックバンドギャップ内に位置する。
【0082】
そして、第1PhC70Aは、第1PhC70Aにおいて信号波99が反射する際に、反射後の信号波99のOBOの位相が反射前の信号波99のOBOの位相に対して変化しないように配置され、第2PhC70Bは、第2PhC70Bにおいて信号波99が反射する際に、反射後の信号波99のOBOの位相が反射前の信号波99のOBOの位相に対してπ変化するように配置されている。また、Y軸方向において、入力用端部31から第1PhC70Aまでの距離、および第1PhC70Aから第2PhC70Bまでの距離は、いずれも信号波99が起こすOBOの1/4周期長となっている。なお、1/4周期長とは、信号が起こすOBOの1/4周期の間に、光導波路の延在方向において信号波が伝播する距離を示す。
【0083】
より具体的には、図13および図15を参照して、入力用端部31を有する入力用光導波路30Aがm延在する方向に、入力用端部31から離れる向きを正とするY座標軸をおいた場合に、上記光導波路30のうち、一の光導波路30を通ってその延在方向に延びる直線と第2PhC70B(PhC境界面34)との交点の上記Y座標軸における座標である第2反射位置は、その一の光導波路30のヒータ40側とは反対側に隣接する光導波路30における第2反射位置に比べて、(2m+1)×λ/4nずつ単調増加している。ここで、mは0以上の整数、λは信号波99の波長、nは光導波路30の等価屈折率である。また、光導波路30の各々を通ってその延在方向に延びる直線と第1PhC70A(PhC境界面34)との交点のY座標軸における座標である第1反射位置は一定である。
【0084】
なお、本実施の形態においては、第2反射位置が単調増加する場合について説明するが、本発明の光導波路素子はこれに限られず、第2反射位置は単調減少していてもよい。
【0085】
より詳細に説明すると、本実施の形態では、λ=1.55μm、n=3.5、かつm=0という条件でOBO平面導波路素子1が構成され、入力用端部31の側にある光導波路30の端部に形成された第2PhC70BのPhC境界面34のY座標(第2反射位置)は、ヒータ40側に向かって111nmずつ単調増加するように調整されている。一方、入力用端部31の反対側にある光導波路30の端部に形成された第1PhC70AのPhC境界面34のY座標(第1反射位置)は、一定である。
【0086】
さらに、Y軸方向において信号波99が光導波路30の一方の端部(PhC境界面34)から他方の端部(PhC境界面34)へ伝播する間に、OBOの1/4周期長だけ進行するように、光導波路30の長さが調整されている。つまり、本実施の形態では、光導波路30の長さが0.75mmという条件でOBO平面導波路素子1が構成されている。
【0087】
なお、上述のように、各光導波路30の第2反射位置は、111nmずつ変位しているが、上記実施の形態1の場合と同様に、変位量が光導波路30の長さに対して極めて微小であるため、実質的に上述の構成により、光導波路30に関して、上述のPhC境界面のY座標に関する条件と、光導波路の長さに関する条件とを両立することができる。
【0088】
実施の形態2におけるOBO平面導波路素子1によれば、反射部において反射された信号波が次に反射されるまでにOBO平面導波路素子1中を伝播する距離は、実施の形態1の場合に比べて短くなる。これより、実施の形態2のOBO平面導波路素子1は、実施の形態1のOBO平面導波路素子1に比べて小型化することができる。また、実施の形態2におけるOBO平面導波路素子1ではY軸方向の素子の長さが短くなるため、SOI基板10のX軸方向における熱抵抗率が高くなる。このため、SOI基板10のX軸方向の温度分布に勾配をつけ易くなる。その結果、OBO平面導波路素子1のヒータ40での消費電力が低減される。
【0089】
次に、実施の形態2における平面導波路素子の製造方法について説明する。図16、図17、図19および図20は、実施の形態2におけるOBO平面導波路素子の製造方法を説明するための概略断面図である。また、図18は、実施の形態2におけるOBO平面導波路素子の製造方法を説明するための概略平面図である。
【0090】
図16〜図20を参照して、実施の形態2における平面導波路素子の製造方法は、基本的には、実施の形態1における平面導波路素子の製造方法と同様である。しかし、反射部の構成が異なることに起因して、実施の形態2における平面導波路素子の製造方法は、実施の形態1とは異なっている。
【0091】
すなわち、まず、基板準備工程においてSOI基板10が準備された後、SOI基板10上に光導波路が形成される光導波路形成工程が実施される。具体的には、まず、図16に示すように、基板準備工程において準備されたSOI基板10のSi層13上に、レジストが塗布されてレジスト膜91が形成される。その後、図17および図18に示すように、電子線直接描画、あるいはフォトリソグラフィによってレジスト膜91が加工されて、Y軸方向において端面の位置および長さが調整された光導波路30を形成するためのレジストパターンが形成される。ここで、本実施の形態においては、図18に示すように、レジスト膜91には、PhCを構成する孔(円孔)に対応する開口部91Bが形成される。
【0092】
その後、レジストパターンに加工された上記レジスト膜91をマスクとして、図19に示すように、ICPエッチング、反応性イオンエッチング、または反応性イオンビームエッチングなどのエッチング方法が採用されて、Si層13の途中までがエッチングされる。これにより、反射用端部33にPhC70を有する光導波路30が形成される。
【0093】
次に、実施の形態1の場合と同様に、光導波路30が形成されたSOI基板10に、ヒータおよびヒートシンクを形成する温度調節部材形成工程および電源装置接続工程が実施される。以上の工程により、本実施の形態におけるOBO平面導波路素子1を製造することができる。
【0094】
実施の形態2においては、実施の形態1の場合とは異なり、HRコーティングを形成するためのレジストパターンの作製、スパッタリング、リフトオフなどの工程を省略することができる。その結果、実施の形態2のOBO平面導波路素子1は、実施の形態1のOBO平面導波路素子1に比べて、製造プロセスが簡略化可能であるという利点を有している。
【0095】
次に、実施の形態2におけるOBO平面導波路素子1の動作について説明する。図13および図14を参照して、まず、実施の形態1の場合と同様に、ヒータ40およびヒートシンク50の機能により、SOI基板10のX軸方向の温度分布に勾配が形成される。この状態で、信号波99の強度ピークが所定の一つの入力ポートである入力用端部31に位置するように、波長が異なる複数の信号波(波長:λ〜λ)がOBO平面導波路素子1中へ入力される。そして、信号波99に含まれる複数の信号波は、Y軸方向に伝播しながら、X軸方向にOBOを起こすことにより、OBO平面導波路素子1内で分波される。また、SOI基板10のX軸方向における温度の勾配を変化させることによって、所望の出力ポートである出力用端部32から信号波を出力することができる。
【0096】
ここで、本実施の形態における反射部であるPhC70での信号波99の反射について説明する。図21は、X軸方向における信号波の伝播定数κとY軸方向における信号波の伝播定数βとの関係を説明するための図である。また、図22は、図21に対応する信号波の道筋を示す図である。
【0097】
実施の形態1の場合と同様に、OBO平面導波路素子1を伝播する信号波99のvの値は、図21のグラフの傾きと一致する。ここで、図22を参照して、図22のa点にあるようなOBO平面導波路素子1の入力用端部31に入った信号波99は、κが0である。したがって、図22のa点における信号波99の状態は、図21のA点に対応し、入力用端部31にある信号波99のvは0となる。次に、ヒータ40の発熱により、SOI基板10の温度がヒートシンク50からヒータ40に向けて上昇する勾配を有している場合、OBO平面導波路素子1を伝播する信号波99は、Y軸方向に伝播しながら、X軸方向においてOBOを起こす。このため、信号波99は図12におけるa点を出発してb点に到達するように、ヒータ40側へ進行していく。a点からb点への進行は、図21において信号波の状態がA点からB点に変化することに対応し、伝播の際に信号波99のOBOの位相が0からπ/2へと変化する。
【0098】
次に、第1PhC70AのPhC境界面34に到達した信号波は、PhC境界面34で反射する。このとき、反射後の信号波99のOBOの位相は変化しない。このため、図21の信号波の状態はB点から変化しない。
【0099】
次に、信号波は図22のb点からc点に、ヒータ40側に向かいながら、第2PhC70BのPhC境界面34へ進行していく。図22のc点は、図21のC点に対応し、伝播の際に信号波のOBOの位相がπ/2からπへと変化する。このため、第2PhC70BのPhC境界面34での信号波99のvは0となる。
【0100】
次に、第2PhC70BのPhC境界面34に到達した信号波は、PhC境界面34で反射する。このとき、反射後の信号波99のOBOの位相はπ変化する。これにより、図21に示すように、信号波の状態がC点からA点へと変化する。そのため、信号波99のvが0となり、その後vの値が正となる。したがって、第2PhC70Bで反射した信号波99は、再びヒータ40側へと進行する。
【0101】
この後、図13に示すように、OBO平面導波路素子1を伝播する信号波99はPhC70のPhC境界面34での反射を繰り返し、出力ポートである出力用端部32から出力される。ここで、信号波99がOBO平面導波路素子1を伝播する間、図21に示すように、信号波の状態は、A点からB点を経由してC点への移動と、PhC境界面34でのC点からA点への変化とが繰り返される。したがって、OBO平面導波路素子1内を伝播する信号波99は、X軸方向においてv≧0の範囲でOBOを繰り返す。
【0102】
そして、OBOの性質に基づけば、多重化された信号波99における波長の異なる複数の信号波の道筋は、PhC境界面34で反射を繰り返すたびに、X軸方向における間隔が広がっていく。
【0103】
このように、多重化された信号波99がPhC境界面34で反射する回数を増加させると、OBO平面導波路素子1中に入力される多重化された信号波99の各波長の間隔が狭くなっても、単一波長の信号波として、固有の出力ポートとしての出力用端部32から信号波を出力することができる。
【0104】
なお、本実施の形態においては、信号波を反射させるため反射部としてフォトニック結晶(PhC)が採用される場合について説明したが、波長1.3μm帯や波長1.55μm帯の多重化された信号波の反射率が90%以上であれば、実施の形態1と同様に、HRコーティングを反射部として採用することもできる。
【0105】
また、上記実施の形態1および実施の形態2においては、第1反射部としての第1HRコーティング60Aまたは第1PhC70Aだけでなく、第2反射部としての第2HRコーティング60Bまたは第2PhC70Bが形成される場合について説明したが、平面導波路素子の用途等を考慮して、第1反射部としての第1HRコーティング60Aまたは第1PhC70Aのみが形成されてもよい。
【0106】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の平面導波路素子は、光学的ブロッホ振動を利用して、波長多重化された信号波を分波し、分波された信号波のそれぞれを所望の出力ポートから出力する平面導波路素子に特に有利に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】実施の形態1における平面導波路素子の構成を示す概略平面図である。
【図2】実施の形態1における平面導波路素子の構成を示す概略側面図である。
【図3】図1のHRコーティング付近を拡大して示す概略部分平面図である。
【図4】実施の形態1におけるOBO平面導波路素子の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図5】実施の形態1におけるOBO平面導波路素子の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図6】実施の形態1におけるOBO平面導波路素子の製造方法を説明するための概略平面図である。
【図7】実施の形態1におけるOBO平面導波路素子の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図8】実施の形態1におけるOBO平面導波路素子の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図9】実施の形態1におけるOBO平面導波路素子の製造方法を説明するための概略平面図である。
【図10】実施の形態1におけるOBO平面導波路素子の製造方法を説明するための概略平面図である。
【図11】X軸方向における信号波の伝播定数κとY軸方向における信号波の伝播定数βとの関係を説明するための図である。
【図12】図11に対応する信号波の道筋を示す図である。
【図13】実施の形態2における平面導波路素子の構成を示す概略平面図である。
【図14】実施の形態2おける平面導波路素子の構成を示す概略側面図である。
【図15】図13のPhC付近を拡大して示す概略部分平面図である。
【図16】実施の形態2におけるOBO平面導波路素子の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図17】実施の形態2におけるOBO平面導波路素子の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図18】実施の形態2におけるOBO平面導波路素子の製造方法を説明するための概略平面図である。
【図19】実施の形態2におけるOBO平面導波路素子の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図20】実施の形態2におけるOBO平面導波路素子の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図21】X軸方向における信号波の伝播定数κとY軸方向における信号波の伝播定数βとの関係を説明するための図である。
【図22】図21に対応する信号波の道筋を示す図である。
【図23】従来のOBO平面導波路素子を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0109】
1 OBO平面導波路素子、10 SOI基板、11 Si基板、12 SiO層、13 Si層、30 光導波路、30A 入力用光導波路、30B 出力用光導波路、31 入力用端部、32 出力用端部、33 反射用端部、34 PhC境界面、40 ヒータ、50 ヒートシンク、60 HRコーティング、60A 第1HRコーティング、60B 第2HRコーティング、70 PhC、70A 第1PhC、70B 第2PhC、81 電源装置、82 導線、91 レジスト膜、91A 開口、91B 開口部、92 Al膜、99 信号波。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低屈折率層と、前記低屈折率層上に配置され、前記低屈折率層よりも屈折率の大きい高屈折率層とを有する基板と、
前記基板上に並べて配置され、信号波が伝播可能な3つ以上の光導波路と、
前記基板の、前記光導波路が並ぶ方向における一方の端部に配置され、前記基板を加熱する加熱部材とを備え、
前記3つ以上の光導波路のうちの少なくとも1つの光導波路は、前記光導波路の延在方向における端部に前記信号波が入力可能となっており、
前記信号波が入力可能な端部を有する前記光導波路よりも前記加熱部材に近い側に配置された前記3つ以上の光導波路のうちの少なくとも2つの光導波路は、前記光導波路の延在方向における端部から前記信号波が出力可能となっており、
前記3つ以上の光導波路において前記信号波が入力可能な端部の側とは反対側の前記光導波路の延在方向における端部には、前記信号波を前記加熱部材に近づく側に伝播するように反射する第1反射部が形成されている、平面導波路素子。
【請求項2】
前記第1反射部は、前記第1反射部において前記信号波が反射する際に、反射後の前記信号波の位相が反射前の前記信号波の位相に対してπ変化するように配置され、
前記光導波路の延在方向において、前記信号波が入力可能な端部から前記第1反射部までの距離は、前記信号波が起こすOBO(Optical Bloch Oscillations;光学的ブロッホ振動)の1/2周期長となっている、請求項1に記載の平面導波路素子。
【請求項3】
前記信号波が入力可能な端部を有する前記光導波路が延在する方向に、前記信号波が入力可能な端部から離れる向きを正とする座標軸をおいた場合に、前記3つ以上の光導波路のうち一の光導波路の延在方向に延びる直線と前記第1反射部との交点の前記座標軸における座標である第1反射位置は、前記一の光導波路の前記加熱部材側とは反対側に隣接する光導波路における第1反射位置に比べて(2m+1)×λ/4nずつ単調増加または単調減少する、請求項2に記載の平面導波路素子。
ここで、mは0以上の整数、λは前記信号波の波長、nは光導波路の等価屈折率である。
【請求項4】
前記信号波が入力可能な端部を有する前記光導波路よりも前記加熱部材に近い側に配置された前記光導波路の、前記光導波路の延在方向における前記第1反射部とは反対側の端部には、前記信号波を前記加熱部材に近づく側に伝播するように反射する第2反射部がさらに形成されている、請求項1に記載の平面導波路素子。
【請求項5】
前記第1反射部および前記第2反射部は、前記第1反射部および前記第2反射部において前記信号波が反射する際に、反射後の前記信号波の位相が反射前の前記信号波の位相に対してπ変化するように配置され、
前記光導波路の延在方向において、前記信号波が入力可能な端部から前記第1反射部までの距離、および前記第1反射部から前記第2反射部までの距離は、いずれも前記信号波が起こすOBO(Optical Bloch Oscillations;光学的ブロッホ振動)の1/2周期長となっている、請求項4に記載の平面導波路素子。
【請求項6】
前記信号波が入力可能な端部を有する前記光導波路が延在する方向に、前記信号波が入力可能な端部から離れる向きを正とする座標軸をおいた場合に、前記3つ以上の光導波路のうち一の光導波路の延在方向に延びる直線と前記第1反射部との交点の前記座標軸における座標である第1反射位置は、前記一の光導波路の前記加熱部材側とは反対側に隣接する光導波路における第1反射位置に比べて、(2m+1)×λ/4nずつ単調増加または単調減少し、
前記3つ以上の光導波路のうち一の光導波路の延在方向に延びる直線と前記第2反射部との交点の前記座標軸における座標である第2反射位置は、前記一の光導波路の前記加熱部材側とは反対側に隣接する光導波路における第2反射位置に比べて、(2m+1)×λ/4nずつ単調増加または単調減少する、請求項5に記載の平面導波路素子。
ここで、mは0以上の整数、λは前記信号波の波長、nは光導波路の等価屈折率である。
【請求項7】
前記第1反射部は、前記第1反射部において前記信号波が反射する際に、反射後の前記信号波の位相が反射前の前記信号波の位相に対して変化しないように配置され、
前記第2反射部は、前記第2反射部において前記信号波が反射する際に、反射後の前記信号波の位相が反射前の前記信号波の位相に対してπ変化するように配置され、
前記光導波路の延在方向において、前記信号波が入力可能な端部から前記第1反射部までの距離、および前記第1反射部から前記第2反射部までの距離は、いずれも前記信号波が起こすOBO(Optical Bloch Oscillations;光学的ブロッホ振動)の1/4周期長となっている、請求項4に記載の平面導波路素子。
【請求項8】
前記信号波が入力可能な端部を有する前記光導波路が延在する方向に、前記信号波が入力可能な端部から離れる向きを正とする座標軸をおいた場合に、前記3つ以上の光導波路の各々の延在方向に延びる直線と前記第1反射部との交点の前記座標軸における座標である第1反射位置は一定であり、
前記3つ以上の光導波路のうち一の光導波路の延在方向に延びる直線と前記第2反射部との交点の前記座標軸における座標である第2反射位置は、前記一の光導波路の前記加熱部材側とは反対側に隣接する光導波路における第2反射位置に比べて、(2m+1)×λ/4nずつ単調増加または単調減少する、請求項7に記載の平面導波路素子。
ここで、mは0以上の整数、λは前記信号波の波長、nは光導波路の等価屈折率である。
【請求項9】
前記第1反射部は、前記第1反射部において前記信号波が反射する際に、反射後の前記信号波の位相が反射前の前記信号波の位相に対して変化しないように配置され、
前記光導波路の延在方向において、前記信号波が入力可能な端部から前記第1反射部までの距離は、前記信号波が起こすOBO(Optical Bloch Oscillations;光学的ブロッホ振動)の1/4周期長となっている、請求項1に記載の平面導波路素子。
【請求項10】
前記信号波が入力可能な端部を有する前記光導波路が延在する方向に、前記信号波が入力可能な端部から離れる向きを正とする座標軸をおいた場合に、前記3つ以上の光導波路の各々の延在方向に延びる直線と前記第1反射部との交点の前記座標軸における座標である第1反射位置は一定である、請求項9に記載の平面導波路素子。
【請求項11】
前記第1反射部は、HRコーティングである、請求項1〜3、9および10のいずれか1項に記載の平面導波路素子。
【請求項12】
前記第1反射部および前記第2反射部は、HRコーティングである、請求項4〜8のいずれか1項に記載の平面導波路素子。
【請求項13】
前記第1反射部は、フォトニック結晶であり、
前記信号波の周波数帯域は、前記フォトニック結晶のフォトニックバンドギャップ内に位置する、請求項1〜3、9および10のいずれか1項に記載の平面導波路素子。
【請求項14】
前記第1反射部および前記第2反射部は、フォトニック結晶であり、
前記信号波の周波数帯域は、前記フォトニック結晶のフォトニックバンドギャップ内に位置する、請求項4〜8のいずれか1項に記載の平面導波路素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2008−180943(P2008−180943A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14844(P2007−14844)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】