説明

広帯域フェーズドアレイ放射器

放射器素子は、遷移セクション及び給電表面をそれぞれ有する一対の基板を含み、基板はそれぞれ、互いに離間する。放射器素子は、一対の遷移セクションの対応する一方の1つの遷移セクションの給電表面に近接して配設され、且つ、電磁的に結合する一対の無線周波数(RF)給電線を有する平衡対称フィードをさらに含み、一対の無線周波数給電線は、遷移セクションに近接して信号ヌル点を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概括的には通信及びレーダアンテナに関し、より詳細には、ノッチ放射器素子に関する。
【背景技術】
【0002】
制限されたアパーチャ(開口)空間を有する、通信システム、レーダ、方向検出(direction finding)、及び他の広帯域多機能システムでは、無線周波数送信機及び受信機を、広帯域放射器素子のアレイを有するアンテナに効率的に結合させることが望ましいことが多い。
【0003】
従来の知られている広帯域フェーズドアレイ放射器は、一般に、対角スキャン(走査)平面(diagonal scan plane)における大きなスキャン角度においてかなりの偏波劣化を受ける。この制限は、偏波重み付けネットワークが、単一偏波に重い重みをつけるように強制することができる。この重み付けによって、重み付けされない偏波信号が、送信信号の実効等方放射電力(EIRP)をアンテナのほとんどに供給しなければならないため、送信アレイはアンテナ放射効率が低くなることになる。
【0004】
従来の広帯域フェーズドアレイ放射器は、一般に、単純であるが非対称のフィード(給電)又は同様な機構を使用する。従来の広帯域放射器は、高次伝搬モードの比較的大きなセットをサポートすることが可能であるため、給電領域は、これらの高次伝搬モード信号のための発射装置の役目を果たす。フィードは、実質的に、モード選択器又はフィルタである。フィードが、発射されるフィールド(場/界)の向きの非対称性を組み込むか、又は、給電領域の物理的対称性を組み込む時、高次モードが励起される。これらのモードは、その後、開口に伝搬される。高次モードは、放射器性能における問題を引き起こす。高次モードは異なる位相速度で伝搬するため、開口におけるフィールドは、複数の励起モードの重ね合わせである。結果として、ユニットセルのフィールドにおいて、均一なマグニチュード及び位相からの急激な偏移が起こる。基本モードの開口励起は、比較的単純であり、通常、E平面に余弦分布を、また、H平面に均一フィールドを有するTE01モードから生じる。基本モードからのかなりの偏移は、励起された高次モードから生じ、高次モードは、放射素子の共振及びスキャンブラインドネスの原因となる。非対称に給電される広帯域放射器における高次モード伝搬の存在によって生じる別の作用は、交差偏波(cross-polarization)である。特に対角平面において、高次モードの多くは、交差偏波フィールドを励起する非対称性を含む。交差偏波フィールドは、さらに、アンテナの偏波重み付けネットワークにおける不平衡重み付けの原因となり、不平衡重み付けは、アレイ送信電力効率の低下の原因となる可能性がある。
【0005】
複数の用途に対して必要とされる開口数を減少させた、通信、レーダ、及び電子戦システム用のフェーズドアレイアンテナで使用する広帯域放射素子に対する必要性が存在する。これらの用途では、3:1の最小帯域幅が必要とされるが、10:1以上の帯域幅が望ましい。放射素子は、用途及び必要とされる放射ビーム数に応じて、垂直及び/又は水平の線形偏波、右旋及び/又は左旋の円偏波、又は、それぞれの合成を送受信することが可能でなければならない。放射器の外形、重量、及びコストを低減するために、放射器の占有面積が、できる限り小さく、アレイのユニットセル内に嵌合することが望ましい。
【0006】
広帯域放射器を提供しようとする従来の試みは、放射パターン位相中心を同じ位置に配置する(一致させる)ことなく、大きな放射器及びフィード構造を使用してきた。従来の放射器はまた、通常、対角平面における交差偏波分離特性が比較的低い。これらの問題を解決しようとする試みにおいて、フルサイズノッチ放射器の典型的なサイズのほぼ半分の形状を有する従来のクワッド(4)ノッチタイプ放射器(0.4λに対して0.2λ、ここで、λは低周波数についての波長である)は、ユニットセル内に4つの別個の放射器を含むようになされてきた。この機構は、各ユニットセルについて、位相中心を実質上、ごく近接して配置することを可能にするが、複雑なフィード構造を必要とする。典型的な4ノッチ放射器は、それぞれの偏波に使用される一対の放射器を組み合わせるために、ユニットセルとフィードネットワークの別のセットとを加えたものの中に、4つの放射器のそれぞれに別個のフィード/バランを必要とする。従来作製されたノッチ放射器は、放射素子のRF信号の入出力のためのスロットラインに給電するマイクロストリップ又はストリップライン回路を使用した。残念ながら、これらの従来タイプのフィード構造は、複数の信号伝搬モードが、各ユニットセルエリア内で生成されることを可能にし、特に対角平面における交差偏波分離レベルの低下を引き起こす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、高い偏波純度及び低い不整合損失を有する広帯域フェーズドアレイ放射器を提供することが望ましいであろう。外形が小さく、且つ、広い帯域幅を有する放射器素子を提供することがさらに望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、放射器素子は、遷移(移行)セクション及び給電表面をそれぞれ有する一対の基板を含み、基板はそれぞれ、互いに離間する。放射器素子は、対応する一対の遷移セクションの一方の遷移セクションの給電表面に近接して配設され、且つ、電磁的に結合する一対の無線周波数(RF)給電線を有する平衡対称フィード(給電)をさらに含み、一対の無線周波数給電線は、遷移セクションに近接して信号ヌル点を形成する。
【0009】
このような構成によって、広帯域フェーズドアレイ放射器は、高い偏波純度及び低い不整合損失を実現する。放射器素子のアレイは、軽量で、低コスト製造による、60°を超える円錐スキャン容積と10:1広帯域性能帯域幅を有する、偏波純度が高く損失の低いフェーズドアレイアンテナを提供する。
【0010】
本発明のさらなる態様によれば、平衡対称フィードは、キャビティ(空胴)を形成する複数の側壁を有するハウジングをさらに含む。一対の給電線はそれぞれ、一対の対向する側壁上に配設され、マイクロストリップ伝送線路を含む。このような構成によって、平衡対称放射器フィードは、2重直交給電式放射器のために、比較的良好な交差偏波分離を有する比較的よく整合した広帯域放射信号を生成する。平衡対称フィードは、物理的に対称でもあり、対称横電界モード(TEM)フィールドも供給される。フィードの重要な特徴は、フレアノッチ幾何形状のためのカットオフ未満の導波管終端、対称2重偏波TEMフィールド給電領域、及び対称フィールドを生成する広帯域バランである。
【0011】
さらなる実施の形態では、4つのフィンのセットは、各ユニットセル用の基板を提供し、中心フィードを中心に対称である。この機構は、アレイ開口によって送受信される任意の偏波について、位相中心が変化しないように、放射パターン位相中心をごく近接して配置する(一致させる)ことを可能にする。
【0012】
本発明のさらなる態様によれば、放射器素子は、約0.25λ未満の高さを有する基板を含み、λは、動作波長範囲の下端の波長を表す。このような構成によって、放射器素子用の電気的に短い交差ノッチ放射フィンは、開いた空胴の上で隆起した平衡対称フィードネットワークと組み合わされることにより、広帯域動作及び低い外形を提供する。交差ノッチ放射フィンに給電する平衡対称フィードネットワークは、放射パターン位相中心をごく近接して配置する(一致させる)ことを可能にし、同時2重線形偏波出力は、受信又は送信時に複数の偏波モードを提供する。電気的に短い交差ノッチ放射フィンは、主要な、中間方位平面及び対角平面における低交差偏波を可能にし、短いフィンは、低い外形を有する、リアクティブ結合したアンテナを形成する。
【0013】
本発明の先の特徴、並びに、本発明自体を、図面の以下の説明からより完全に理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のアンテナシステムについて説明する前に、本明細書において、特定のアレイ形状(たとえば、平面アレイ)を有するアレイアンテナに言及する場合があることを留意すべきである。本明細書で述べる技法が、種々のサイズ及び形状のアレイアンテナに適用可能であることを、当業者は、もちろん理解するであろう。そのため、以下の本明細書における説明は、矩形アレイアンテナにおける発明の概念を述べることに留意すべきであり、その概念は、任意の形状の平面アレイアンテナ、並びに、円柱、円錐、球、及び任意の形状のコンフォーマルアレイアンテナを含む他のサイズ及び形状のアレイアンテナに同様に適用可能であるが、それらに限定されないことを当業者は理解すべきである。
【0015】
本明細書において、特定のサイズ及び形状の放射素子を含むアレイアンテナに言及することがある。たとえば、1つのタイプの放射素子は、テーパ付き形状及び特定の周波数範囲(たとえば、2〜18GHz)にわたる動作に適合するサイズを有する、いわゆる、ノッチ素子である。他の形状のアンテナ素子が使用可能であること、及び、1つ又は複数の放射素子のサイズは、RF周波数範囲内の任意の周波数範囲(たとえば、1GHz未満から50GHzを超える範囲の任意の周波数)にわたる動作のために選択可能であることを、当業者は、もちろん認識するであろう。
【0016】
同様に、本明細書において、特定の形状又はビーム幅を有するアンテナビームの生成に言及することがある。他の形状及び幅を有するアンテナビームも使用可能であり、また、振幅及び位相調整回路のアンテナフィード(給電)回路の適切な位置への組み入れによるなど、知られている技法を使用して提供可能であることを、当業者は、もちろん理解するであろう。
【0017】
ここで図1を参照すると、本発明による例示的な広帯域アンテナ10は、キャビティ(空胴)板12及び全体を14で示すノッチアンテナ素子のアレイを含む。ノッチアンテナ素子14はそれぞれ、空胴板12上に配設された、いわゆる、「ユニットセル」から提供される。換言すると、各ユニットセルはノッチアンテナ素子14を形成する。明確にするために、ノッチアンテナ素子14(又はユニットセル14)の2×16の線形アレイに対応するアンテナ10の一部のみが、図1に示されることを理解すべきである。
【0018】
ユニットセル14のそれぞれの代表としてユニットセル14aを考えると、ユニットセル14aは、4つのフィン状部材16a、16b、18a、18bから提供され、フィン状部材はそれぞれ、見やすいように、図1で陰影がつけられる。フィン状部材16a、16b、18a、18bは、空胴板12内の空胴(図1では見えない)の上のフィード構造19上に配設され、ノッチアンテナ素子14aを形成する。フィード構造19は、図4及び図4Aに関連して以下で述べられるであろう。しかしながら、種々の異なるタイプのフィード構造を使用することができ、いくつかの可能なフィード構造が、図2〜図4Aに関連して以下に述べることを理解すべきである。
【0019】
図1から理解できるように、部材16a、16bは、第1軸20に沿って配設され、部材18a、18bは、第1軸20に直交する第2軸21に沿って配設される。そのため、部材16a、16bは、部材18a、18bにほぼ直交する。
【0020】
各ユニットセル内で、部材16a、16bを部材18a、18bに直交して配設することによって、各ユニットセルは、直交方向の電界偏波に応答する。すなわち、1つのセットの部材(たとえば、16a、16b)を1つの偏波方向に配設し、第2のセットの部材(たとえば、18a、18b)を直交偏波方向に配設することによって、任意の偏波を有する信号に応答するアンテナが提供される。
【0021】
この特定の例では、ユニットセル14は、本明細書では矩形グリッドパターンに対応する規則的なパターンで配設される。ユニットセル14は、全てが、規則的なパターンで配設される必要がないことを、当業者は、もちろん理解するであろう。一部の用途では、それぞれの個々のユニットセルの直交素子16a、16b、18a、18bは、全てのユニットセル14の間で整列するわけではないようにユニットセル14を配設することが望ましいか、又は、必要である場合がある。そのため、ユニットセル14の矩形格子として示されるが、アンテナ10は、四角形又は三角形格子のユニットセル14を含むが、それに限定されないこと、及び、ユニットセルがそれぞれ、格子パターンに対して異なる角度で回転することができることを、当業者には理解されるであろう。
【0022】
一実施形態では、製造プロセスを容易にするために、フィン状部材16a及び16bの少なくとも一部は、部材22で示す「背中合わせ式(back-to-back:バックツーバック)」フィン状部材として製造することができる。同様に、フィン状部材18a及び18bもまた、部材23で示す「バックツーバック」フィン状部材として製造することができる。そのため、ユニットセル14k及び14k’に見られるように、バックツーバック式フィン状部材の各半分は、2つの異なるノッチ素子の部分を形成する。
【0023】
複数のフィン16a及び16b(全体をフィン16と呼ぶ)は、第1グリッドパターンを形成し、複数のフィン18a及び18b(全体をフィン18と呼ぶ)は、第2グリッドパターンを形成する。上述したように、図1の実施形態では、フィン16のそれぞれの向きは、フィン18のそれぞれの向きにほぼ直交する。
【0024】
各放射器素子14のフィン16a、16b、及びフィン18a、18bは、テーパー付きスロット(tapered slot:テーパースロット)を形成し、(以下の図2〜図4Aに関連して詳細に述べる)平衡対称フィード回路によって給電されると、テーパースロットから、各ユニットセル14に対してRF信号が発射される。
【0025】
対称バックツーバック式フィン状部材16、18及び平衡フィードを利用することによって、各ユニットセル14は対称である。各偏波についての位相中心は、各ユニットセル内で同心状となる。このことによって、アンテナ10が、対称アンテナとして提供されることが可能になる。
【0026】
これは、各偏波についての位相中心がわずかに偏移する従来技術のノッチアンテナと対照的である。
本明細書において、信号を送信するアンテナ10に言及することに留意すべきである。しかしながら、アンテナ10は、同様に信号を受信するように適応可能であることを当業者は理解するであろう。従来のアンテナと同様に、種々の信号間の位相関係は、アンテナが使用されるシステムによって維持される。
【0027】
一実施形態では、フィン16、18は、導電性材料から提供される。一実施形態では、フィン16、18は、固体材料から提供される。一部の実施形態では、複数のめっき金属フィンを設けるために、金属をめっきすることができる。代替の実施形態では、フィン16、18は、導電性材料を上に配設されている非導電性材料から提供される。そのため、フィン構造16、18は、プラスチック材料か、金属化層が上に配設されている誘電体材料のいずれかから提供されることができる。
【0028】
動作時、RF信号は、平行対称フィード19によって各ユニットセル14に供給される。RF信号は、ユニットセル14から放射され、ビームを形成し、ビームのボアサイトは、空胴板12から離れる方向に空胴板12に直交する。一対のフィン16、18は、2つの半分がダイポールを構成するものと考えることができる。そのため、各基板に供給される信号は、通常、180°位相がずれる。アンテナ10からの放射信号は、高いレベルの偏波純度を示し、アンテナ利得の理論的限界に近づくより大きな信号電力レベルを有する。
【0029】
一実施形態では、フィン16a、16bによって形成されるテーパースロットの各遷移セクションのノッチ素子テーパは、表1に示す2次元平面における一連の点として記述される。
【0030】
【表1】

【0031】
フィン状素子16、18のサイズ及び形状(又は、逆に、フィン状素子16、18によって形成されるスロットのサイズ)は、所望の動作周波数範囲を含む種々の因子に従って選択することができるが、それに限定されない。しかしながら、一般に、比較的短く、開度レート(opening rate)が比較的速いフィン状部材は、比較的長いフィン状部材から提供される交差偏波分離の程度と比較して、比較的広いスキャン角度において程度の高い交差偏波分離を提供する。しかしながら、フィン状部材が短か過ぎる場合、低周波数H平面性能が低下する可能性があることを理解すべきである。
【0032】
同様に、比較的長いフィン状素子(任意の開度レートを有する)によって、VSWRリップル及び比較的低い交差偏波性能を有するアンテナ特性がもたらされる可能性がある。
アンテナ10はまた、素子14の上に配設された整合シート30を含む。図1において、整合シート30の部分は、素子14を見えるように取り除かれた。実際に、整合シート30は、全ての素子14の上に配設され、アンテナ10と一体にされることになる。
【0033】
整合シート30は、第1表面30a及び第2表面30bを有し、表面30bは、好ましくは、フィン状素子16、18と必ずしも接しないが、フィン状素子16、18に接近して配設される。構造上の観点から、整合シート30をフィン状部材に物理的に接するようにさせることが好ましい場合がある。そのため、所望のアンテナ性能特性を提供するために、又は、所望の構造的特性を有するアンテナを提供するために選択される設計パラメータとして、フィン状部材からの第2表面30bの的確な間隔を使用することができる。
【0034】
所望の電気特性を有するアンテナ10を提供するために、整合シートの厚み、比誘電率、及び損失特性を選択することができる。一実施形態では、整合シート30は、約50ミルの厚みを有する市販のPPFT(すなわち、テフロン)シートとして提供される。
【0035】
本明細書では、整合シート30は、単一層構造として示されるが、代替の実施形態では、整合シート30を複数層構造として提供することが望ましい場合がある。構造的理由又は電気的理由で、複数層を使用することが望ましい場合がある。たとえば、比較的剛性の或る層を、構造的支持のために付加することができる。又は、特定の電気インピーダンス特性を有する整合シート30を提供するために、異なる比誘電率を有する層を組み合わせることができる。
【0036】
1つの用途では、整合シート30を一体化したレドーム/整合構造30として提供するために複数層を利用することが望ましい場合がある。
そのため、フィンを短く作成することは、アンテナの交差偏波分離特性が改善されることを理解すべきである。レドーム又は広角整合(wide angle matching)(WAIM)シート(たとえば、整合シート30)を使用することは、さらに短いフィンの使用を可能にし、それによって、レドーム/整合シートが、フィンが電気的に長くなるようにさせるため、交差偏波分離がさらに改善される。
【0037】
ここで図2を参照すると、図1のフィン状部材16a、16bによって形成される放射器素子と同様である放射器素子100は、本発明によるアンテナアレイを形成する複数の放射器素子100のうちの1つである。ユニットセル14(図1)と同様のユニットセルの半分を形成する放射器素子100は、それぞれ、別個のフィン102b及び102cによって提供される一対の基板104c及び104d(全体が基板104と呼ばれる)を含む。基板104c、104dは、図1のフィン状部材16a、16b(又は、18a、18b)に対応し、一方、フィン102a、102bは、図1に関連して先に説明したバックツーバック式フィン状素子に対応することを留意すべきである。フィン102b及び102cは、空胴板12(図1)上に配設される。フィン102bはまた、フィン102aの基板104aと共に別の放射器素子を形成する基板104bを含む。各基板104c及び104dは、それぞれ、給電表面106c及び106d並びに遷移セクション105c及び105d(全体が遷移セクション105と呼ばれる)を含む平面フィードを有する。放射器素子100は、遷移セクション105に電磁的に結合する平衡対称フィード回路108(平衡対称フィード108とも呼ばれる)をさらに含む。
【0038】
平衡対称フィード108は、空胴116を有する誘電体110を含み、誘電体は、内部表面118a及び外部表面118bを有する。金属化層114cは内部表面118a上に配設され、金属化層120cは外部表面118b上に配設される。同様の方法で、金属化層114dは内部表面118a上に配設され、金属化層120dは外部表面118b上に配設される。金属化層114c(給電線又はRF給電線114cとも呼ばれる)と金属化層120c(グラウンドプレーン120cとも呼ばれる)は、マイクロストリップ回路要素(circuitry)140aとして相互作用し、グラウンドプレーン(接地面)120cは、グラウンド回路要素を提供し、給電線114cは、マイクロストリップ回路要素140a用の信号回路要素を提供することが、当業者によって理解されるべきである。さらに、金属化層114d(給電線又はRF給電線114dとも呼ばれる)と金属化層120d(グラウンドプレーン120dとも呼ばれる)は、マイクロストリップ回路要素140bとして相互作用し、グラウンドプレーン120dは、グラウンド回路要素を提供し、給電線114dは、マイクロストリップ回路要素140b用の信号回路要素を提供する。
【0039】
平衡対称フィード108は、RF信号線138及び第1RF信号出力線132及び第2RF信号出力線134を有する平衡−不平衡(バラン)フィード136をさらに含む。第1RF信号出力線132は給電線114cに結合し、第2RF信号出力線134は給電線114dに結合する。ユニットセル14と同様のユニットセルについて、2つの180°バラン136が必要とされることを理解すべきであり、1つのバランが、各偏波のために放射器素子に給電する。明確にするために、1つのバラン136のみが示される。バラン136は、放射器素子100の適切な動作のために必要とされ、比較的良好な分離を持って、出力ポートにおいて同時2重偏波信号を提供する。バラン136は、電力ハンドリング及びミッション要件に応じて、平衡対称フィード108の一部として、又は、別個の部品として設けることができる。バラン136の第1信号出力は、給電線114cに接続され、バラン136の第2信号出力は、給電線114dに接続され、信号は、それぞれ、マイクロストリップ回路要素140a及び140bに沿って伝搬し、さらに以下に述べるように、180°位相がずれた位相関係を持って、信号ヌル点154において遭遇する。基板104cは給電表面106cを含み、基板104dは、給電表面106dを含み、給電表面106c及び給電表面106dは、それぞれ、金属化層120c及び120dに沿って配設されることを留意すべきである。
【0040】
放射器素子100は、各偏波信号が送受信されるために、放射パターン位相中心をごく近接して配置する(一致させる)ことを可能にする。放射器素子100は、主平面及び対角平面における交差偏波分離レベルを提供することにより、走査ビームが60°ずれることを可能にする。
【0041】
動作時、RF信号は、本明細書では、180°の位相差で、バラン136から信号出力線132及び信号出力線134に差動的に供給される。RF信号は、それぞれ、マイクロストリップ回路要素140a及び140bに結合され、マイクロストリップ回路要素に沿って伝搬し、180°の位相差で信号ヌル点154において遭遇し、信号は、給電点において、破壊的に合成されてゼロにされる。マイクロストリップ回路要素140a及び140bに沿って伝搬するRF信号は、スロット141に結合し、遷移セクション105c及び105dから放射される、又は、「発射される」。これらの信号は、ビームを形成し、ビームのボアサイトは、空胴116から離れる方向に空胴板12に直交する。RF信号線138は、サ−キュレータ(図示せず)又は送信/受信スイッチ(図示せす)を使用して、当該技術分野で既知のように、受信回路及び送信回路に結合する。
【0042】
フィールド線142、144、146は、放射器素子100のための電界幾何形状を示す。金属化層120cの周りの領域において、電界線150は、金属化層120cから給電線114cに延びる。金属化層120dの周りの領域において、電界線152は、給電線114dから金属化層120dに延びる。給電表面106cの周りの領域において、電界線148は、金属化層120cから給電線114cに延びる。給電表面106dの周りの領域において、電界線149は、給電線114dから金属化層120dに延びる。フィールド点154(信号ヌル点154とも呼ばれる)において、給電線114c及び114dからの電界線148及び電界線149は、互いに実質的に相殺し合い、信号ヌル点154を形成する。給電線114c及び114d並びに遷移セクション105c及び遷移セクション105dの配置構成は、不整合損失及び交差偏波を増加させる非対称モードの励起を減少させる。そのため、電界線142として示す発射されたTEMモードは、中間電界線144を通してフィールド線146として示されるFloquet(フロケ)モードに変換される。最初にFloquetモードを有する受信信号は、崩壊して、平衡TEMモードになる。
【0043】
一対の基板104c及び104d並びに対応する遷移セクション105c及び105dは、ダイポールを構成する2つの半分として考えることができる。そのため、給電線114c及び114d上の信号は、通常、位相が180°ずれる。同様に、ユニットセル14(図1)と同様のユニットセルを形成する直交遷移部(図示せず)の給電線のそれぞれの上の信号は、位相が180°ずれる。従来のダイポールアレイと同様に、遷移セクション105c及び105dにおける信号の相対位相は、放射器素子100によって送信される信号の偏波を決定するであろう。
【0044】
代替の実施形態では、それぞれ、給電表面106c及び106dに沿う金属化層120c及び120dは、金属化層120cが給電表面106cに交差するところで接続され、金属化層120dが給電表面106dに交差するところで接続されることによって省略することができる。この代替の実施形態では、給電表面106c及び106dは、それぞれ、基板104c及び104dの底面に沿って、それぞれ、マイクロストリップ回路要素140a及び140b用のグラウンド層を提供する。
【0045】
別の代替の実施形態では、増幅器(図示せず)は、それぞれ、バラン136の信号出力線132及び信号出力線134と、伝送フィード114c及び114dとの間で結合する。この代替の実施形態では、バラン136に関連する損失のほとんどは、増幅器の後である。
【0046】
ここで図3及び図3A(図2、図3、及び図3Aの同じ要素は同じ参照名称を有するように提供される)を参照すると、放射器素子100’(電気的に短い交差ノッチ放射器素子100’とも呼ばれる)は、一対の基板104c’及び104d’(全体が基板104’と呼ばれる)を含む。基板104c’及び104d’は、図1のフィン状部材16a、16b(又は、18a、18b)に対応することを留意すべきである。各基板104c’及び104d’は、それぞれ、給電表面106c’及び106d’並びに遷移セクション105c’及び105d’(全体が遷移セクション105’と呼ばれる)を含むピラミッドフィードを有する。遷移セクション105’及び給電表面106’が、アーチを形成するノッチ付き端部107を含む点で、遷移セクション105’及び給電表面106’は、図2の対応する遷移セクション105及び給電表面106と異なる。給電表面106c’及び106d’は、同様の形状の平衡対称フィード108’(隆起した平衡対称フィードとも呼ばれる)と結合する。
【0047】
遷移セクション105’は、空間内への改善されたインピーダンス伝達を有する。よりよいインピーダンス整合を可能にするように伝達インピーダンスに影響を与えるために、遷移セクション105’は任意の形状を有することができ、たとえば、ノッチ付き端部107によって形成されたアーチを異なった形にすることができることは、当業者には理解されるであろう。50オームのインピーダンスフィードを自由空間に整合させるために、知られている方法を使用して、遷移セクション105’のテーパを調整することができる。
【0048】
より具体的には、平衡対称フィード108’は、空胴116を有する誘電体110を含み、誘電体は、内部表面118a及び外部表面118bを有する。金属化層114cは内部表面118a上に配設され、金属化層120cは外部表面118b上に配設される。同様な方法で、金属化層114dは内部表面118a上に配設され、金属化層120dは外部表面118b上に配設される。RF給電線114cと金属化層120c(グラウンドプレーン120cとも呼ばれる)は、マイクロストリップ回路要素140aとして相互作用し、グラウンドプレーン120cは、グラウンド回路要素を提供し、給電線114cは、マイクロストリップ回路要素140a用の信号回路要素を提供することが、当業者には理解されるべきである。さらに、RF給電線114dと金属化層120d(グラウンドプレーン120dとも呼ばれる)は、マイクロストリップ回路要素140bとして相互作用し、グラウンドプレーン120dは、グラウンド回路要素を提供し、給電線114dは、マイクロストリップ回路要素140b用の信号回路要素を提供する。
【0049】
平衡対称フィード108’は、図2のバラン136と同様のバラン136をさらに含む。バラン136の第1信号出力線は給電線114cに接続され、バラン136の第2RF信号出力線は給電線114dに接続され、信号は、それぞれ、マイクロストリップ回路要素140a及び140bに沿って伝搬し、位相が180°ずれる位相関係を持って、信号ヌル点154’において遭遇する。やはり、基板104cは給電表面106cを含み、基板104dは給電表面106dを含み、給電表面106c及び給電表面106dは、それぞれ、金属化層120c及び120dに沿って配設されることを留意すべきである。放射器素子100’は、送受信される各偏波信号について、放射パターン位相中心を同じ位置に配置する(一致させる)ことを可能にする。放射器素子100’は、主平面及び対角平面における交差偏波分離レベルを提供することにより、走査ビームが約60°ずれることを可能にする。
【0050】
動作時、RF信号は、本明細書では、180°の位相差で、バラン136から信号出力線132及び信号出力134に差動的に供給される。信号は、それぞれ、マイクロストリップ回路要素140a及び140bに結合され、マイクロストリップ回路要素に沿って伝搬し、180°の位相差で信号ヌル点154’において遭遇し、信号は、給電点において、破壊的(相殺的)に合成されてゼロにされる。マイクロストリップ回路要素140a及び140bに沿って伝搬するRF信号は、スロット141に結合し、遷移セクション105c’及び105d’から放射、即ち、「発射される」。これらの信号は、ビームを形成し、ビームのボアサイトは、空胴116から離れる方向に空胴板12に直交する。RF信号線138は、サ−キュレータ(図示せず)又は送信/受信スイッチ(図示せす)を使用して、当該技術分野で知られるように、受信及び送信回路に結合する。
【0051】
フィールド線142、144、146は、放射器素子100’のための電界幾何形状を示す。金属化層120cの周りの領域において、電界線150は、金属化層120cから給電線114cに延びる。金属化層120dの周りの領域において、電界線152は、給電線114dから金属化層120dに延びる。給電表面106c’の周りの領域において、電界線148は、金属化層120cから給電線114cに延びる。給電表面106d’の周りの領域において、電界線149は、給電線114dから金属化層120dに延びる。信号ヌル点154’において、RF給電線114c及び114dからのRFフィールド線は、互いに実質的に相殺し合い、信号ヌル点154’を形成する。RF給電線114c及び114d並びに遷移セクション105c’及び105d’ の配置構成は、不整合損失及び交差偏波を増加させる非対称モードの励起を減少させる。そのため、電界線142として示す発射されたTEMモードは、中間電界線144を通してフィールド線146として示されるFloquetモードに変換される。最初にFloquetモードを有する受信信号は、崩壊(衰弱)して、平衡TEMモードになる。
【0052】
一実施形態では、放射器素子100’は、0.25λ未満の高さを有するフィン102b’及び102c’(全体がフィン102’と呼ばれる)を含み、λは、動作波長範囲の下端の波長を表す。理論的には、この短い放射器素子は、放射を停止するか、又は、性能を低下させてしまうはずであるが、より短い素子は、実際には、よりよい性能を提供することがわかった。フィン102b’及び102c’は、自由空間に対して、平衡対称フィード108’回路のインピーダンスを整合させる形状が与えられる。形状は、実験的に、又は、当該技術分野で知られている数学的技法によって決定することができる。電気的に短い交差ノッチ放射器素子100’は、平衡対称フィード108’によって提供される開いた空胴116の上に配設された金属フィン102b’及び102c’の2つの対の部分を含む。金属フィン102’の各対は、金属フィン(図示せず)の他の対に直交して配設される。
【0053】
一実施形態では、空胴116の壁厚は0.030インチである。この壁厚は、アレイ構造に十分な強度を提供し、開口内で使用される放射器フィン102’と同じ幅である。交差フィン102’のスロート(throat)部の、給電点からフィンの上部までの測定された放射器フィン102’の長さは、レドーム(図示せず)無しで、且つ、7〜21GHzの周波数で動作して、0.250インチである。長さは、レドーム/整合構造(たとえば、図1の整合シート30)がある状態では、おそらくさらに短い可能性がある。レドームのインピーダンス特性は、自由空間への信号の移行に影響を与え、より短いフィン102’を可能にする可能性があることが理解されるべきである。空胴116の壁寸法及びフィン102’の寸法は、異なる動作周波数範囲について調整することができることが、当業者には理解されるであろう。
【0054】
電気的に短い交差ノッチ放射器素子100’の背後にある動作理論は、マーチャンドジャンクション(Marchand junction)原理に基づく。オリジナルのマーチャンドバランは、平衡伝送線路変換器に対する同軸ケーブルとして設計された。マーチャンドバランは、同軸線の第1端部上の不平衡TEMモードから第2端部上の平衡モードへ信号を変換する。変換は、仮想ジャンクションにおいて起こり、1つのモード(TEM)のフィールドが崩壊し、ゼロになり、エネルギー保存によって損失が非常に小さい状態の平衡モードとして、他の側で再構成される。伝送線路上のRFフィールドが、互いに位相が180°ずれた2つの信号に分割され、その後、仮想ジャンクションにおいて合成される時に、モードフィールド相殺が起こる。これは、開回路及び短絡などの、2つの反対の境界状態から等距離のジャンクションにおいて信号を分割することによって達成される。電気的に短い交差ノッチ放射器素子100’の場合、1つの偏波についての入力は、一方の側を0°信号で、他方の側を位相が180°ずれた信号で給電する、給電表面106’及びノッチ端部107(TEMモードで動作する)によって提供される一対のマイクロストリップ線である。これらの信号は、電気的に短い交差ノッチ放射器素子100’のスロート部とも呼ばれる仮想ジャンクション信号ヌル点154’で一緒になる。
【0055】
信号ヌル点154’において、フィールドは崩壊し、ゼロになり、電気的に短い交差ノッチ放射器素子100’の平衡スロットラインの他方の側で再構成され、外部の自由空間に伝搬する。電気的に短い交差ノッチ放射器素子100’についての2つの反対の境界状態は、素子100’の下の短絡された空胴並びに放射器素子102b’及び102c’の各対の先端(電界線146の近くに配設される)において形成される開回路である。仮想ジャンクションの動作は、送信と受信の両方について可逆的(reciprocal)である。
【0056】
一実施形態では、短い放射フィン及び空胴は、単一ユニットとして成形されて、4つの交差フィン102’が遭遇する間隙において厳密な交差を実現する。平衡対称フィード回路108’はまた、フィン102’の下の空胴エリアに嵌合するように成形することができ、さらに組み立てを簡略化する。受信用途の場合、バラン回路136は、平衡対称フィード回路108’に含まれ、さらに、アレイのための外形を低減する。短い交差ノッチ放射器素子100’は、プリント回路板技術及び比較的短い放射器素子100’を使用して比較的低い外形で広い帯域幅を提供することによって、従来の帯域幅のノッチ放射器に比べてかなりの進展を示す。放射器素子100’は、一定の用途及び物理的に比較的低い外形にとって有利である、ごく近接して配置した(一致した)放射パターン位相中心を使用する。より複雑な4ノッチ放射器を含む、他の広帯域ノッチ放射器は、電気的に短い交差ノッチ放射器素子100’の広角対角平面交差偏波分離特性を有さない。平衡対称フィード回路108’と短いフィン102’の組み合わせは、リアクティブ結合したノッチアンテナを提供する。リアクティブ結合したノッチは、短いフィンの長さの使用を可能にし、それによって、交差偏波分離を改善する。フィン102’の長さは、広帯域性能及び達成される交差偏波分離レベルに直接影響を及ぼす。
【0057】
別の実施形態では、フィン102’は、約0.25λよりずっと小さく(前の説明15ページ6行目には、…未満があった。これは、ずっと小さいはずであると考えられたい)、λは、動作波長範囲の下端の波長を指し、広帯域2重偏波式の電気的に短い交差ノッチアンテナ放射器素子100’は、ごく近接して配置した(一致した)放射パターン位相中心が主平面及び対角平面における優れた交差偏波分離及び軸比を持った状態で、選択的な偏波を有する信号を送受信する。本発明の平衡対称フィード機構と結合すると、放射器素子100’は、低い外形及び広い帯域幅を提供する。この実施形態では、短いフィン102’はまた、リアクティブ結合したノッチアンテナを提供する。従来技術のフィンの長さは、対角平面における低い交差偏波分離性能の主要な原因であると判定された。対角平面共偏波(co-polarization)と対角平面交差偏波は共に、フィンの電気的長さの関数としてレベルが異なると判定された。アレイ環境で使用される電気的に短い交差ノッチ放射器フィンのさらなる利点は、わずか±20°までスキャンアウト(scan out)できる現在のノッチ放射器設計と比較して、高い交差偏波分離レベルが、±50°を過ぎるスキャンアウトを対角平面で達成したことである。
【0058】
ここで図4を参照すると、ユニットセル202は、平衡対称ピラミッドフィード回路220の上に配設された複数のフィン状素子204a、204bを含む。放射器素子204a及び204bの各対は、空胴板12(図1)内に形成された開口(図4では見えない)内に配設される平衡対称フィード220の上に中心がある。放射器素子204aの対の第1の放射器素子は、放射器素子204bの対の第2の放射器素子にほぼ直交する。平衡対称フィード回路220に対して信号を結合するのに、RFコネクタが必要とされないことを理解すべきである。ユニットセル202は、単一のオープン空胴を提供する平衡対称フィード220の上に配設される。空胴壁の内部は228で示される。
【0059】
図4Aを参照すると、ユニットセル202の例示的な平衡対称フィード220は、中心給電点234と、ユニットセルの1つの偏波に対応する給電部分232a及び232bと、ユニットセルの直交偏波(orthogonal polarization)に対応する給電部分236a及び236bとを有するハウジング226を含む。ハウジング226はさらに、4つの側壁228を含む。給電部分232a及び232b並びに給電部分236a及び236bはそれぞれ、内部表面を有し、各内部表面上に配設されるマイクロストリップ給電線(RF給電線とも呼ばれる)240及びマイクロストリップ給電線238を含む。各マイクロストリップ給電線240及びマイクロストリップ給電線238はさらに、各側壁228の内部表面上に配設される。マイクロストリップ給電線240及びマイクロストリップ給電線238は、それぞれの対応するフィン状基板204a、204bの下で交差し、中心給電点234において一緒に接合する。ユニットセルの中心給電点234は、ハウジング226の側壁228の上側部分の上に隆起する。ハウジング226、側壁228、及び空胴板212は空胴242を提供する。マイクロストリップ給電線240及びマイクロストリップ給電線238は、中心給電点234において交差し、空胴242の各壁に沿って底面において出る。示すように、側壁228上の金属化層が除去されるところに形成されるマイクロストリップフィード244bは、RF信号を空胴板212の開口222に結合する。ユニットセル202では、ジャンクションが中心給電点234において形成され、キルヒホッフのノード理論に従って、中心給電点234における電圧はゼロになるであろう。
【0060】
1つの特定の実施形態では、平衡対称フィード220は、フィン204a及び204bの基板の給電表面に一致する成形アセンブリである。この特定の実施形態では、マイクロストリップ給電線240及びマイクロストリップ給電線238は、アセンブリの内部表面をエッチングすることによって形成される。この特定の実施形態では、ハウジング226並びに給電部分232及び給電部分236は、誘電体を成形した。この実施形態では、放射器の高さは0.250インチであり、平衡対称フィード220は、各辺が0.285インチであり、0.15インチの高さを有する四角形状である。対応する格子間隔は、7〜21GHzの周波数で使用するために0.285インチである。中心給電点234において、0.074平方インチのグラウンドプレーン材料のパッチが除去されて、マイクロストリップ給電線240及びマイクロストリップ給電線238上のRFフィールドが、放射器素子204を上に伝搬し、開口から放射することが可能になる。適切に放射するために、各偏波について、マイクロストリップ給電線240及びマイクロストリップ給電線238は、位相が180°ずれるように給電されるため、2つの反対の信号が、中心給電点234において遭遇すると、信号は、マイクロストリップ給電線240及びマイクロストリップ給電線238上で相殺するが、マイクロストリップ給電線240及びマイクロストリップ給電線238上のエネルギーは、放射器素子204a及び204bに伝達され、外部に放射される。受信信号の場合、逆のことが起こり、信号は、放射器素子204a及び204bを下へ誘導され、マイクロストリップ給電線240及びマイクロストリップ給電線238上に与えられ、位相が180°ずれた2つの信号に分割される。別の実施形態では、バラン(図示せず)は、平衡対称フィード220に組み入れられる。
【0061】
ここで図5を参照すると、曲線272は、0°ボアサイト角度対周波数における従来技術の中心放射器素子の掃引利得を表す。曲線270は、放射器素子についての最大の理論的利得を表し、曲線274は、利得曲線270より6db以上低い曲線を表す。従来技術の放射器において存在する共振によって、曲線272に示すようにアンテナ利得の低下がもたらされる。
【0062】
ここで図5Aを参照すると、曲線282は、0°ボアサイト角度対周波数における図3の同心上に給電された電気的に短い交差ノッチ放射器素子100’の測定された掃引利得を表す。曲線280は、放射器素子についての最大の理論的利得を表し、曲線284は、利得曲線280より約1〜3db低い曲線を表す。曲線は、点286における測定アーチファクト及びグレーティングローブによる点288におけるスパイクを有する。曲線272と曲線282を比較すると、従来技術の放射器素子の利得と比べて、電気的に短い交差ノッチ放射器素子100’の利得との間に約6dB(電力が4倍)の差が存在することがわかる。したがって、9:1帯域幅範囲にわたって、図3の電気的に短い交差ノッチ放射器素子100’のうち1つの性能を提供するのに、従来技術の放射器素子の約4倍の量(又は、従来技術の放射器アレイの開口サイズの等価的に4倍)が必要とされるであろう。電気的に短い交差ノッチ放射器素子100’の性能により、素子100’は全通過デバイスとして動作することができる。
【0063】
理想的な性能に近づくバランによって給電されると、電気的に短い交差ノッチ放射器素子100’は、4ポートデバイスとして考えることができ、1つの偏波は、均一マグニチュードで、且つ、180°位相関係で給電されるポート1及び2によって生成される。同様に励起されるポート3及び4は、直交偏波を生成するであろう。2〜18GHzにおいて、不整合損失は、例示した周波数範囲及び60°円錐スキャン容積にわたって約0.5dB以下である。インピーダンス整合もまた、H平面スキャン容積のほとんどにわたって十分に制御されたままになる。
【0064】
ここで図6を参照すると、曲線292〜310のセットは、電気的に短い交差ノッチ放射器素子100’(図3)の偏波純度を示す。曲線は、全ての他の放射器を終端した状態で、アレイの中心に埋め込んだ図1のアレイで示すタイプの単一アンテナ素子について生成される。
【0065】
埋め込み式素子パターンは、相互結合作用を含むアレイ環境における素子パターンである。相互結合アレイ(mutual coupling array)(MCA)上で取得される(taken)埋め込み式素子パターンが測定された。示すデータは、中間帯域の近くで、このアレイの中心素子上で取得された。
【0066】
種々の平面(E、H、及び対角(D))についての、共偏波(co-polarized)性能及び交差偏波性能用のパターンが与えられる。曲線292〜310からわかるように、60°円錐スキャン容積にわたって10dBより優れた交差偏波分離を有するアンテナが提供される。曲線292、310は、それぞれ、電気平面(E)における中心素子の共偏波パターン及び交差偏波パターンを示す。曲線249及び曲線300は、それぞれ、磁気平面(H)における中心素子の共偏波パターン及び交差偏波パターンを示す。曲線290及び曲線296は、それぞれ、対角平面における中心素子の共偏波パターン及び交差偏波パターンを示す。曲線292、310、249、300、290、及び曲線296は、電気的に短い交差ノッチ放射器素子100’が良好な交差偏波分離性能を発揮することを示す。
【0067】
代替の実施形態では、2つのサブ部品、それぞれ、図1及び図3のフィン102及び102’並びに平衡対称フィード回路108及び108’の組み立ては、一体構造部品として提供されることにより、フィン同士の正確なアライメント及び給電点における等しい間隙間隔を保証する。最小の公差及びユニットごとの均一性を維持することによって、スキャン角度及び周波数にわたって一貫した性能を達成することができる。
【0068】
さらなる実施形態では、放射器素子100及び100’のフィン部品は、単一アセンブリを形成するために、機械加工、鋳造、又は、射出成形することができる。たとえば、AlSiCなどの金属マトリクス複合物は、熱膨張係数が低く、熱伝導度が高い、非常に軽量で、強度の高い素子を提供することができる。
【0069】
別の代替の実施形態では、放射器素子100及び100’は、アレイ内の放射素子の上に配設されるレドーム(図示せず)によって周囲環境から保護される。レドームは、アンテナの一体部品であり、単一広角インピーダンス整合シートとして、広帯域インピーダンス整合プロセスの一部として使用することができるか、又は、サンドイッチタイプレドームが、当該技術分野で知られているように使用することができる。
【0070】
本明細書に記載した全ての出版物及び参考文献は、参照によりその全体が本明細書に特に援用される。
本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明の概念を組み入れた他の実施形態が使用可能であることが、ここで、当業者には明らかであろう。したがって、これらの実施形態は、開示した実施形態に限定されるべきではなく、特許請求の範囲の精神及びその範囲によってのみ制限されるべきであると考える。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】複数のフィン素子から提供されるノッチ放射器のアレイの等角図である。
【図2】平衡対称フィード回路を含む、図1の放射器アレイの代替の実施形態のユニットセルの部分の断面図である。
【図3】隆起した平衡対称フィード回路を含む図1の放射器アレイのユニットセルの部分の断面図である。
【図3A】ユニットセルの部分の隆起した平衡対称フィード回路への結合を示す図3の分解断面図である。
【図4】ユニットセルの等角図である。
【図4A】図4の平衡対称フィードの等角図である。
【図5】従来技術の放射器アレイの周波数応答曲線である。
【図5A】図1の放射器アレイの周波数応答曲線である。
【図6】全ての他の放射器を終端した状態で、アレイの中心に埋め込んだ図1のアレイで示すタイプの単一アンテナ素子についての、フィールド電力の放射パターンである。種々の平面(E、H、及び対角(D))についての、共偏波性能及び交差偏波性能用のパターンが与えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離間した一対のフィン状基板であって、各フィン状基板が遷移セクション及び給電表面を有する、一対のフィン状基板と、
前記給電表面の対応する1つの表面に近接して配設されるとともに、電磁的に結合される一対の無線周波数(RF)給電線を有する平衡対称フィードとを備え、
前記一対の無線周波数給電線は、前記遷移セクションに近接して信号ヌル点を形成する、放射器素子。
【請求項2】
請求項1に記載の放射器素子において、前記平衡対称フィードは、空胴を形成する複数の側壁を有するハウジングをさらに備え、
前記一対の給電線の各々は、前記側壁の対応する1つの側壁上に配設され、マイクロストリップ伝送線路を備える、放射器素子。
【請求項3】
請求項1に記載の放射器素子において、前記一対のフィン状基板は、テーパースロットを形成するように配設される、放射器素子。
【請求項4】
請求項1に記載の放射器素子において、前記平衡対称フィードは隆起した平衡対称フィードである、放射器素子。
【請求項5】
請求項1に記載の放射器素子において、前記一対の無線周波数給電線の第1給電線は無線周波数信号を受信するように適応され、前記一対の無線周波数給電線の第2給電線は、約180°位相シフトした無線周波数信号を受信するように適応される、放射器素子。
【請求項6】
請求項1に記載の放射器素子において、前記一対の基板は導電性材料から提供される、放射器素子。
【請求項7】
請求項6に記載の放射器素子において、前記一対の基板は銅メッキ金属を含む、放射器素子。
【請求項8】
請求項1に記載の放射器素子において、前記一対の基板は金属化基板を備える、放射器素子。
【請求項9】
請求項1に記載の放射器素子において、前記基板の各々は、約0.25λ未満の高さを有し、λは動作波長範囲の下端の波長を表す、放射器素子。
【請求項10】
請求項1に記載の放射器素子において、
互いに離間した第2対の基板であって、各基板が、第2テーパースロットを形成する遷移セクションを有するとともに、第2給電表面を有し、前記第2対の基板は、前記第1対の基板によって形成される平面に実質上直交する平面を形成する、第2対の基板をさらに備え、
前記平衡対称フィードは、第2対の無線周波数給電線を含み、各無線周波数給電線が、前記第2対の遷移の一方の前記給電表面に近接して配設されるとともに、電磁的に結合され、
前記第2対の無線周波数給電線は、前記信号ヌル点に近接して前記第2給電表面に電磁的に結合する、放射器素子。
【請求項11】
請求項1に記載の放射器素子において、前記給電表面の各々は、第1平面に第1部分及び第2平面に第2部分を有し、前記第1平面は、前記第2平面と約91°〜約180°の角度を形成する、放射器素子。
【請求項12】
請求項1に記載の放射器素子において、前記平衡対称フィードは、
複数の側壁表面及び前記一対の無線周波数給電線に近接して配設された上部表面を有する空胴と、
一対の伝送給電線であって、各伝送給電線が、前記空胴の対向する対応する側壁表面に近接して配設され、前記一対の無線周波数給電線の対応する一方の無線周波数給電線に電磁的に結合する第1給電端を有する、一対の伝送給電線と、
をさらに備える放射器素子。
【請求項13】
請求項12に記載の放射器素子において、前記一対の伝送給電線の各々は、第2給電端をさらに備え、
前記放射器素子は、一対の出力を有するバランをさらに備え、その出力の各々が、前記一対の伝送給電線の前記第2給電端の対応する1つに結合される、放射器素子。
【請求項14】
請求項13に記載の放射器素子において、一対の増幅器をさらに備え、各増幅器が、対応するバラン出力と、前記一対の伝送給電線の一方の第2給電端との間に結合される、放射器素子。
【請求項15】
第1表面及び第2対向表面を有する空胴板と、
前記空胴板の前記第1表面上に配設され、互いに離間し、給電表面を有する第1の複数のテーパースロットを形成する第1の複数のフィンと、
前記空胴板の前記第1表面上に配設され、互いに離間し、第2の複数のテーパースロットを形成する第2の複数のフィンであって、前記第2の複数のテーパースロットの各々が、前記第1の複数のテーパースロットの対応する1つに実質上直交するとともに、給電表面を有する、第2の複数のフィンと、
前記第1表面上に配設された複数の平衡対称フィード回路であって、各平衡対称フィード回路が、前記給電表面の対応する1つの給電表面に電磁的に結合される一対の無線周波数(RF)給電線を有する、複数の平衡対称フィード回路と、
を備えた広帯域アンテナ。
【請求項16】
請求項15に記載の広帯域アンテナにおいて、
前記空胴板は、複数の開口をさらに備え、
前記複数の平衡対称フィード回路はそれぞれ、前記複数の開口の対応する1つに配設される、広帯域アンテナ。
【請求項17】
請求項17に記載の広帯域アンテナにおいて、
前記空胴板の前記第2表面に近接して配設され、複数の接続部を有するコネクタ板をさらに備え、
前記複数の平衡対称フィード回路の各々は、複数の給電接続部を有し、該給電接続部の各々は、前記複数のコネクタ板接続部の対応する1つに結合される、広帯域アンテナ。
【請求項18】
請求項15に記載の広帯域アンテナにおいて、前記フィンの各々は、約0.25λ未満の高さを有し、λは動作波長範囲の下端の波長を表す、広帯域アンテナ。
【請求項19】
請求項15に記載の広帯域アンテナにおいて、前記複数の平衡対称フィード回路の各々は、前記複数のフィンの対応する1つのフィンの前記給電表面に一致する形状を有する隆起したフィード回路である、広帯域アンテナ。
【請求項20】
請求項15に記載の広帯域アンテナにおいて、複数のバランをさらに備え、各バランは対応するRF給電線に結合される、広帯域アンテナ。
【請求項21】
請求項20に記載の広帯域アンテナにおいて、複数のRFコネクタをさらに備え、各RFコネクタが、前記複数のバランの対応する1つに結合される、広帯域アンテナ。
【請求項22】
ノッチ付き放射器素子において波形の伝搬モードをTEMモードからFloquetモードへ変換する方法であって、
一対の素子を設け、
一対の無線周波数給電線を有する平衡対称フィード回路を設け、
前記一対の無線周波数給電線を前記素子に結合し、
前記一対の無線周波数給電線の各々に結合される差動RF信号を前記素子に供給する、
ことを含む方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、前記一対の素子の各々は一対の基板を備え、各基板は遷移セクション及び給電表面を有し、前記遷移セクションはテーパ付きノッチを形成する、方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法において、前記基板の各々は、約0.25λ未満の高さを有し、λは動作波長範囲の下端の波長に対応する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図4A】
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【図5】
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【図5A】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−531346(P2007−531346A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520159(P2006−520159)
【出願日】平成16年5月25日(2004.5.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/016336
【国際公開番号】WO2005/015687
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(390039147)レイセオン・カンパニー (149)
【氏名又は名称原語表記】Raytheon Company
【Fターム(参考)】