説明

形状測定装置とその測定圧制御方法

【課題】 形状測定装置におけるスタイラスの測定圧を任意の値に容易かつ正確に設定でき、さらに測定速度や傾斜角によるフォーカスサーボの追従遅れを小さくし、測定圧の変化の小さい測定を実現する。
【解決手段】 測定圧目標値設定手段45と、フォーカス誤差目標値生成手段46とを備え、フォーカス制御OFF時のフォーカス誤差信号と測定圧の目標値からフォーカス誤差信号の目標値を設定した後、フォーカス制御をONすることにより、フォーカス制御OFF時の対物レンズと基準ミラー面の距離を変えずに測定圧を変更できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンズなどの形状を高精度に測定する形状測定装置とその測定圧制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の三次元測定用の形状測定装置における測定圧制御装置としては、一端にスタイラス、他端にミラー面を設けた可動部Aと、エアー軸受けにより可動部Aと移動可能な状態で連結された可動部Bと、光源からの光をミラー面に向けて照射し、ミラー面による反射光から可動部Aと可動部Bの相対位置を測定する相対位置測定手段と、スタイラスが被測定面を走査し、被測定面の移動方向の変化に伴って移動方向に動く時、相対位置測定手段から得られた可動部Aと可動部Bの相対位置が一定になるように可動部Bを移動方向に駆動する手段を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記特許文献1に記載されたフォーカスサーボ系の機構を、図2を参照して詳しく説明する。Z方向に移動可能なフォーカス制御機構15において半導体レーザ1から発したレーザ光Gはコリメートレンズ2、偏光ビームスプリッタ3、λ/4波長板4を透過した後、ダイクロイックミラー5を反射し、対物レンズ6によってスタイラス7の上面に取り付けられたミラー面23上に集光する。対物レンズ6に戻ったレーザ光Gの反射光はダイクロイックミラー5及び偏光ビームスプリッタ3を全反射し、レンズ8で集光されてハーフミラー9で2つに分離され、ピンホール10a、10bを通過し、2つの光検出器11a、11bで受光される。2つの光検出器11a、11bの出力はフォーカス誤差信号発生部12によりフォーカス誤差信号となり、サーボ回路13によってこのフォーカス誤差信号がゼロとなるようにリニアモータ14を制御し、スタイラス7とフォーカス制御機構15の相対位置を一定にするように構成されている。なお、フォーカス制御機構15を含むZ移動部の自重分は渦巻きバネ16により支持されている。
【0004】
スタイラス7の上部には円筒状のスライド部22が設けられ、スライド部22はエアー供給部18から供給されるエアーの吹き出し穴を有するガイド19の内壁をエアースライドとしてZ方向に可動である。スライド部22の上部にはミラー面23が固定され、スライド部22、スタイラス7、ミラー面23からなる可動部の重量はバネ20によって支えられている。
【0005】
スタイラス7の下端には各種の曲率半径を持つ針がついており、被測定面21上を10〜100mgという弱い測定圧で走査され、被測定面21の形状に沿って上下するが、スタイラス7が上下するとフォーカス制御が働いてフォーカス制御機構15全体が上下するのでミラー面23上に常に対物レンズ6の焦点が合っている。Fzは、発振周波数安定化ヘリウムネオンゼーマンレーザの光で、ミラー面23に当たって反射し、レーザ測長器によってZ座標を測定するためのものである。
【0006】
図4は、対物レンズ6とミラー面23との距離Lと各光検出器11a、11bで検出される信号との関係を示す図である。図4(a)は光検出器11aで検出される電流から変換された電圧V1に関するグラフで、図4(b)は光検出器11b で検出される電流から変換された電圧V2に関するグラフで、図4(c)は電圧V1と電圧V2の差電圧Veに関するグラフである。図4(c)の曲線を、以下S字曲線と呼ぶ。このS字曲線の真中のVe=0の点がフォーカス位置であり、この位置にくるようにフォーカス制御がかけられる。フォーカスOFF時のVeが図4(c)に示すV0 にある状態で、スタイラス7を被測定面21に接触させるようにし、その状態でフォーカス制御をかけると、図4(c)に示す押し込み量だけスタイラス7が押し込まれた状態になる。したがって、フォーカスOFF時の対物レンズ6とミラー面23の距離を調整することにより、フォーカス制御時のスタイラス7の押し込み量、すなわち測定圧を自由に設定することができる。
【0007】
S字曲線のリニアな領域は、フォーカス引き込み範囲と呼ばれるが、この範囲は数十μm程度であるのに対し、様々な形状の被測定物に対応するためには、対物レンズ6の可動範囲としては数十mm程度は必要なため、フォーカス引き込み範囲外では、フォーカス制御機構15の位置を制御する必要がある。
【0008】
そのため、フォーカス誤差信号発生部12とサーボ回路13を含めた従来の制御装置は、図8に示すように構成されている。フォーカス制御機構15の位置制御を行うために、位置指令信号を出力するZ位置指令出力手段40と、フォーカス制御機構15の位置を検出し実位置信号として出力する位置検出器42と、位置指令信号と実位置信号との誤差を検出する減算器37と、減算器37から出力される位置誤差信号に基づき、リニアモータ14に流す電流指令信号を出力するZ位置制御回路35と、Z位置制御回路35から出力される電流指令信号に基づき、リニアモータ14に流れる電流を制御するZ駆動回路33が設けられている。
【0009】
また、フォーカス制御を行うために、光検出器11a、11bで検出された光量に比例した電気信号を発生させるフォーカス信号1発生器25及びフォーカス信号2発生器26と、フォーカス信号1発生器25から出力される信号とフォーカス信号2発生器26から出力される信号との差をフォーカス誤差信号として出力するフォーカス誤差信号発生器27と、フォーカス誤差信号の目標値をゼロとし、目標値とフォーカス誤差信号との誤差を検出する減算器43と、減算器43から出力される誤差信号がゼロになるようにリニアモータ14に流す電流指令信号を出力するフォーカス制御回路36とが設けられ、フォーカス制御回路36から出力される電流指令信号は位置制御時と同じZ駆動回路33に入力される。なお、位置制御とフォーカス制御とを切り換えるために、Z位置制御回路35及びフォーカス制御回路36とZ駆動回路33との間に切換スイッチ34が設けられており、フォーカス制御ON/OFF設定手段41により切り換えられる。
【0010】
スタイラス7を被測定面21に沿って走査させるために、フォーカス制御機構15はX−Y駆動機構28により、X方向及びY方向に駆動される。X方向については、X位置指令出力手段38から出力されるX位置指令に基づき、X駆動回路31によりXパルスモータ29が駆動される。Y方向についても同様に、Y位置指令出力手段39から出力されるY位置指令に基づき、Y駆動回路32によりYパルスモータ30が駆動される。
【特許文献1】特許第3000819号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記のような従来の三次元測定用の形状測定装置においては、測定圧を一定にするために、被測定面21にスタイラス7を接触させるとともにその状態で対物レンズ6とミラー面23の距離をフォーカス位置よりも一定量だけずらせておくことにより、フォーカスサーボ時にスタイラス7をフォーカス位置まで押し込むように制御するので、最初に対物レンズ6とミラー面23の距離を一定の値に合わせこむための調整が難しいという課題を有していた。また、測定圧を変えるためには、対物レンズ6とミラー面23の距離を変えなければならないという課題を有していた。また、押し込み量が一定になるようにフィードバック制御を行うため、高速で下りの傾斜のきつい面を走査する時には、追従遅れにより、プローブが測定面から離れてしまい、高速で上りの傾斜のきつい面を走査する時には、追従遅れにより、押し込み量が設定値よりも大きくなってしまうという課題を有していた。
【0012】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、測定圧を任意の値に容易かつ正確に設定でき、さらに測定速度や傾斜角によるフォーカスサーボの追従遅れを小さくし、測定圧の変化の小さい測定を実現できる形状測定装置とその測定圧制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1に記載の形状測定装置は、一端にスタイラス、他端にミラー面を設けた上下方向に動作可能な可動部Aと、可動部Aと同方向に移動可能な状態で連結された可動部Bと、スタイラスを被測定物の面上を水平方向に走査させる時にレーザ光をミラー面に照射し、レーザ光の焦点が常にミラー面に合うように可動部Bを駆動することにより、可動部Aと可動部Bとの相対位置を一定に制御する相対位置制御手段とを有する形状測定装置において、レーザ光のミラー面での反射光を2つの光検出器に導き、2つの光検出器で検出する光量の差からフォーカス誤差信号が得られるように構成されたフォーカス誤差信号検出手段と、測定圧の目標値を設定する手段と、設定された測定圧の目標値に対してフォーカス誤差信号の目標値を設定する手段と、可動部Bを駆動するフォーカス制御機構駆動手段と、フォーカス誤差信号が目標値となるようにフォーカス制御機構駆動手段により可動部Bの位置を制御するフォーカス制御回路部と、可動部Bの絶対的な位置を検出する位置検出器と、可動部Bの目標位置を指令するための位置指令信号を生成する位置指令生成器と、位置検出器からの実位置信号と位置指令生成器からの位置指令信号とが等しくなるように、フォーカス制御機構駆動手段により可動部Bの位置を制御する位置制御回路部と、フォーカス制御機構駆動手段に位置制御回路部とフォーカス制御回路部とを切り換え接続する切換スイッチとを備えたものである。
【0014】
また、請求項4に記載の形状測定装置の測定圧制御方法は、上記形状測定装置において、切換スイッチを位置制御回路部に接続した状態でのフォーカス誤差信号と測定圧の目標値とからフォーカス誤差信号の目標値を計算して設定した後、切換スイッチをフォーカス制御回路部に接続するものである。
【0015】
以上の構成によれば、対物レンズとミラーの距離を変えずに、測定圧を任意の値に容易かつ正確に設定することができる。
【0016】
本発明の請求項2に記載の形状測定装置は、一端にスタイラス、他端にミラー面を設けた上下方向に動作可能な可動部Aと、可動部Aと同方向に移動可能な状態で連結された可動部Bと、スタイラスを被測定物の面上を水平方向に走査させる時にレーザ光を前記ミラー面に照射し、レーザ光の焦点が常にミラー面に合うように可動部Bを駆動することにより、可動部Aと可動部Bとの相対位置を一定に制御する相対位置制御手段とを有する形状測定装置において、レーザ光のミラー面での反射光を2つの光検出器に導き、2つの光検出器で検出する光量の差からフォーカス誤差信号が得られるように構成されたフォーカス誤差信号検出手段と、測定圧の目標値を設定する手段と、設定された測定圧の目標値に対してフォーカス誤差信号の目標値を設定する手段と、可動部Bの上下方向の速度を検出する速度検出器と、速度検出器で検出された速度に応じてフォーカス誤差信号の目標値を変更する手段と、可動部Bを駆動するフォーカス制御機構駆動手段と、フォーカス誤差信号が前記目標値となるようにフォーカス制御機構駆動手段により可動部Bの位置を制御するフォーカス制御回路部と、可動部Bの絶対的な位置を検出する位置検出器と、可動部Bの目標位置を指令するための位置指令信号を生成する位置指令生成器と、位置検出器からの実位置信号と位置指令生成器からの位置指令信号とが等しくなるように、フォーカス制御機構駆動手段により可動部Bの位置を制御する位置制御回路部と、フォーカス制御機構駆動手段に位置制御回路部とフォーカス制御回路部とを切り換え接続する切換スイッチとを備えたものである。
【0017】
また、請求項5に記載の形状測定装置の測定圧制御方法は、上記形状測定装置において、切換スイッチを位置制御回路部に接続した状態でのフォーカス誤差信号と測定圧の目標値とからフォーカス誤差信号の目標値を計算して設定した後、切換スイッチをフォーカス制御回路部に接続し、可動部Bの上下方向の速度が変化した時、フォーカス誤差信号の目標値を変更するものである。
【0018】
以上の構成によれば、測定速度や傾斜角によるフォーカスサーボの追従遅れを小さくし、測定圧の変化の小さい測定を行うことができる。
【0019】
本発明の請求項3に記載の形状測定装置は、一端にスタイラス、他端にミラー面を設けた上下方向に動作可能な可動部Aと、可動部Aと同方向に移動可能な状態で連結された可動部Bと、スタイラスを被測定物の面上を水平方向に走査させる時にレーザ光を前記ミラー面に照射し、レーザ光の焦点が常にミラー面に合うように可動部Bを駆動することにより、可動部Aと可動部Bとの相対位置を一定に制御する相対位置制御手段とを有する形状測定装置において、レーザ光のミラー面での反射光を2つの光検出器に導き、2つの光検出器で検出する光量の差からフォーカス誤差信号が得られるように構成されたフォーカス誤差信号検出手段と、レーザ光をミラー面に集光させるための対物レンズを上下方向に移動させるレンズ上下機構と、可動部Bを駆動するフォーカス制御機構駆動手段と、フォーカス誤差信号がゼロとなるようにフォーカス制御機構駆動手段により可動部Bの位置を制御するフォーカス制御回路部と、可動部Bの絶対的な位置を検出する位置検出器と、可動部Bの目標位置を指令するための位置指令信号を生成する位置指令生成器と、位置検出器からの実位置信号と位置指令生成器からの位置指令信号とが等しくなるように、フォーカス制御機構駆動手段により可動部Bの位置を制御する位置制御回路部と、フォーカス制御機構駆動手段に位置制御回路部とフォーカス制御回路部とを切り換え接続する切換スイッチとを備えたものである。
【0020】
また、請求項6に記載の形状測定装置の測定圧制御方法は、上記形状測定装置において、切換スイッチを位置制御回路部に接続した状態で対物レンズを上下させることによりフォーカス誤差信号を任意の値に設定した後、切換スイッチをフォーカス制御回路部に接続するものである。
【0021】
以上の構成によれば、スタイラスを付け替えた時に、対物レンズとミラー面の距離を容易に調整することができ、測定圧を正確に設定することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の形状測定装置とその測定圧制御方法によれば、対物レンズとミラー面の距離の調整を容易に行うことができる。また、対物レンズとミラー面の距離を変更しなくても、測定圧を任意の値に設定することができる。また、速い測定速度で高傾斜のところを走査した場合にも、測定圧の変動を小さくすることができ、高精度な測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図7を参照しながら説明する。図1は、本実施形態における三次元測定用の形状測定装置の制御構成を示すブロック図である。図1において、図8と同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略し、主として本実施形態における相違点について説明する。また、図2は本実施形態におけるフォーカス制御系の構造図であり、また図4も本実施形態における2つの光検出器で検出される信号を示す波形図であり、先の従来例と共通であるのでその説明を援用する。
【0024】
図1において、測定圧目標値設定手段45により測定圧の目標値が設定され、フォーカス誤差目標値生成手段46に与えられる。測定前は、スタイラス7が被測定面21から離れており、切換スイッチ34が実線の位置にあり、位置制御が行われており、フォーカスOFFの状態であるが、この状態でのフォーカス誤差信号発生器27から出力されるフォーカス誤差信号がフォーカス誤差目標値生成手段46に入力される。フォーカス誤差目標値生成手段46は上記測定圧の目標値とフォーカス誤差信号からフォーカス誤差の目標値を計算して減算器43へ出力する。
【0025】
その計算方法を図5を用いて説明する。フォーカスOFF時のフォーカス誤差電圧VeがV0 であったとする。まず、設定された測定圧の目標値から、その測定圧になる押し込み量を計算する。測定圧と押し込み量はほぼ比例関係にあるので、あらかじめその比例式を求めておき、設定された測定圧に対する押し込み量を計算する。もし、測定圧をより正確に設定するためには、単純な比例式ではなく、高次の近似式で表してもよい。このようにして計算された押し込み量の目標値が押し込み量Aであったとすると、図5より、フォーカス位置Aになるようにフォーカス制御をかければよいので、フォーカス誤差信号Veの目標値はVaとなる。また、押し込み量の目標値が押し込み量Bであったとすると、図5より、フォーカス位置Bになるようにフォーカス制御をかければよいので、フォーカス誤差信号Veの目標値はVbとなる。以上のように、測定圧の目標値に応じて、フォーカス誤差目標値生成手段46からの出力が決定される。
【0026】
ただし、測定圧目標値設定手段45とフォーカス誤差目標値生成手段46により、測定圧を任意の値に設定するためには、図5におけるフォーカスOFF時の位置がS字曲線の最小値と最大値の間に入っている必要がある。したがって、フォーカスOFF時の対物レンズ6とミラー面23の距離をある程度調整する必要がある。
【0027】
図3は、本実施形態における対物レンズ6の上下機構の構造図である。図3は、図2における対物レンズ6とミラー面23の部分を拡大した図であり、従来の構造に対し、対物レンズ上下機構17とハンドル24が追加されている。ハンドル24を回すと、対物レンズ上下機構17により、対物レンズ6が上方向または下方向に移動する。測定前は、スタイラス7が被測定面21から離れており、切換スイッチ34が実線の位置にあり、位置制御が行われており、フォーカスOFFの状態であるが、この状態でのフォーカス誤差信号発生器27から出力されるフォーカス誤差電圧を観察しながら、ハンドル24を回して、対物レンズ6の位置を調整する。なお、図8の従来の制御構成に、この対物レンズ上下機構17を適用することもできる。すなわち、従来の制御構成ではフォーカス誤差の目標値がゼロであるので、フォーカスOFF時のフォーカス誤差信号をハンドル24を回して調整することにより、測定圧を設定することができる。
【0028】
図6は、従来の測定圧制御方法で、高速に高傾斜のものを測定した場合の実際の測定圧の変化の一例を示す波形図である。下り方向では、フォーカス制御の追従遅れのため、実際の測定圧は設定値よりも小さくなり、上り方向では、フォーカス制御の追従遅れのため、実際の測定圧は設定値よりも大きくなる。そこで、本実施形態では、実際の測定圧をできる限り設定値に近づけるために、図1において、位置検出器42で検出されるフォーカス制御機構15の位置を速度検出器44に入力し、一定時間における位置変化より速度を計算し、フォーカス誤差目標値生成手段46に入力する。また、フォーカス誤差目標値生成手段46には、あらかじめ、速度に対するフォーカス誤差目標値の補正量を設定しておく。フォーカス誤差目標値生成手段46は、速度検出器44で検出された速度に応じて、フォーカス誤差目標値を補正して出力する。図7は、この動作の効果を図で表したものであり、フォーカス誤差電圧の目標値と測定圧の変化の一例を示す波形図である。このように、フォーカス制御の追従遅れを補正するようにフォーカス誤差電圧の目標値を変化させるため、実際の測定圧と設定値との差を小さくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の形状測定装置とその測定圧制御方法は、対物レンズとミラー面の距離の調整を容易に行うことができ、また、対物レンズとミラー面の距離を変更しなくても、測定圧を任意の値に設定することができ、また、速い測定速度で高傾斜のところを走査した場合にも、測定圧の変動を小さくすることができ、高精度な測定を行うことができるという効果を有し、レンズなどの形状を高精度に測定する三次元形状測定装置の測定圧の制御に有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態における制御構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態におけるフォーカス制御系の構造図である。
【図3】同実施形態における対物レンズの上下機構の構造図である。
【図4】同実施形態における2つの光検出器で検出される信号を示す波形図である。
【図5】同実施形態におけるフォーカス誤差電圧と測定圧の関係を示す波形図である。
【図6】従来例での測定圧制御方法での測定圧の変化の一例を示す波形図である。
【図7】同実施形態におけるフォーカス誤差電圧の目標値と測定圧の変化の一例を示す波形図である。
【図8】従来例の制御構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0031】
G レーザ光
6 対物レンズ
7 スタイラス
8 レンズ
9 ハーフミラー
11a、11b 光検出器
15 フォーカス制御機構(可動部B)
16 渦巻きバネ
17 対物レンズ上下機構
21 被測定面
22 スライド部(可動部A)
23 ミラー面
27 フォーカス誤差信号発生器
33 Z駆動回路
34 切換スイッチ
35 Z位置制御回路
36 フォーカス制御回路
40 Z位置指令出力手段
42 位置検出器
45 測定圧目標値設定手段
46 フォーカス誤差目標値生成手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端にスタイラス、他端にミラー面を設けた上下方向に動作可能な可動部Aと、可動部Aと同方向に移動可能な状態で連結された可動部Bと、スタイラスを被測定物の面上を水平方向に走査させる時にレーザ光をミラー面に照射し、レーザ光の焦点が常にミラー面に合うように可動部Bを駆動することにより、可動部Aと可動部Bの相対位置を一定に制御する相対位置制御手段とを有する形状測定装置において、レーザ光のミラー面での反射光を2つの光検出器に導き、2つの光検出器で検出する光量の差からフォーカス誤差信号が得られるように構成されたフォーカス誤差信号検出手段と、測定圧の目標値を設定する手段と、設定された測定圧の目標値に対してフォーカス誤差信号の目標値を設定する手段と、可動部Bを駆動するフォーカス制御機構駆動手段と、フォーカス誤差信号が目標値となるようにフォーカス制御機構駆動手段により可動部Bの位置を制御するフォーカス制御回路部と、可動部Bの絶対的な位置を検出する位置検出器と、可動部Bの目標位置を指令するための位置指令信号を生成する位置指令生成器と、位置検出器からの実位置信号と位置指令生成器からの位置指令信号とが等しくなるように、フォーカス制御機構駆動手段により可動部Bの位置を制御する位置制御回路部と、フォーカス制御機構駆動手段に位置制御回路部とフォーカス制御回路部とを切り換え接続する切換スイッチとを備えたことを特徴とする形状測定装置。
【請求項2】
一端にスタイラス、他端にミラー面を設けた上下方向に動作可能な可動部Aと、可動部Aと同方向に移動可能な状態で連結された可動部Bと、スタイラスを被測定物の面上を水平方向に走査させる時にレーザ光をミラー面に照射し、レーザ光の焦点が常にミラー面に合うように可動部Bを駆動することにより、可動部Aと可動部Bの相対位置を一定に制御する相対位置制御手段とを有する形状測定装置において、レーザ光のミラー面での反射光を2つの光検出器に導き、2つの光検出器で検出する光量の差からフォーカス誤差信号が得られるように構成されたフォーカス誤差信号検出手段と、測定圧の目標値を設定する手段と、設定された測定圧の目標値に対してフォーカス誤差信号の目標値を設定する手段と、可動部Bの上下方向の速度を検出する速度検出器と、速度検出器で検出された速度に応じてフォーカス誤差信号の目標値を変更する手段と、可動部Bを駆動するフォーカス制御機構駆動手段と、フォーカス誤差信号が目標値となるようにフォーカス制御機構駆動手段により可動部Bの位置を制御するフォーカス制御回路部と、可動部Bの絶対的な位置を検出する位置検出器と、可動部Bの目標位置を指令するための位置指令信号を生成する位置指令生成器と、位置検出器からの実位置信号と位置指令生成器からの位置指令信号とが等しくなるように、フォーカス制御機構駆動手段により可動部Bの位置を制御する位置制御回路部と、フォーカス制御機構駆動手段に位置制御回路部とフォーカス制御回路部とを切り換え接続する切換スイッチとを備えたことを特徴とする形状測定装置。
【請求項3】
一端にスタイラス、他端にミラー面を設けた上下方向に動作可能な可動部Aと、可動部Aと同方向に移動可能な状態で連結された可動部Bと、スタイラスを被測定物の面上を水平方向に走査させる時にレーザ光をミラー面に照射し、レーザ光の焦点が常にミラー面に合うように可動部Bを駆動することにより、可動部Aと可動部Bの相対位置を一定に制御する相対位置制御手段とを有する形状測定装置において、レーザ光のミラー面での反射光を2つの光検出器に導き、2つの光検出器で検出する光量の差からフォーカス誤差信号が得られるように構成されたフォーカス誤差信号検出手段と、レーザ光をミラー面に集光させるための対物レンズを上下方向に移動させるレンズ上下機構と、可動部Bを駆動するフォーカス制御機構駆動手段と、フォーカス誤差信号がゼロとなるようにフォーカス制御機構駆動手段により可動部Bの位置を制御するフォーカス制御回路部と、可動部Bの絶対的な位置を検出する位置検出器と、可動部Bの目標位置を指令するための位置指令信号を生成する位置指令生成器と、位置検出器からの実位置信号と位置指令生成器からの位置指令信号とが等しくなるように、フォーカス制御機構駆動手段により可動部Bの位置を制御する位置制御回路部と、フォーカス制御機構駆動手段に位置制御回路部とフォーカス制御回路部とを切り換え接続する切換スイッチとを備えたことを特徴とする形状測定装置。
【請求項4】
請求項1記載の形状測定装置において、切換スイッチを位置制御回路部に接続した状態でのフォーカス誤差信号と測定圧の目標値とからフォーカス誤差信号の目標値を計算して設定した後、切換スイッチをフォーカス制御回路部に接続することを特徴とする形状測定装置の測定圧制御方法。
【請求項5】
請求項2記載の形状測定装置において、切換スイッチを位置制御回路部に接続した状態でのフォーカス誤差信号と測定圧の目標値とからフォーカス誤差信号の目標値を計算して設定した後、切換スイッチをフォーカス制御回路部に接続し、可動部Bの上下方向の速度が変化した時、フォーカス誤差信号の目標値を変更することを特徴とする形状測定装置の測定圧制御方法。
【請求項6】
請求項3記載の形状測定装置において、切換スイッチを位置制御回路部に接続した状態で対物レンズを上下させることによりフォーカス誤差信号を任意の値に設定した後、切換スイッチをフォーカス制御回路部に接続することを特徴とする形状測定装置の測定圧制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−23125(P2006−23125A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199543(P2004−199543)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】