説明

形状測定装置の校正方法、形状測定装置、校正用ターゲット

【課題】光断面式により形状を測定する形状測定装置の校正を、校正用ターゲットを頻繁に移動させることなく行うことのできる形状測定装置の校正方法、形状測定装置及び校正用ターゲットを提供する。
【解決手段】底面形状及び寸法が既知である柱体の校正用ターゲット20に、校正用ターゲット20の底面形状における複数の特徴点に対応し、該底面と平行に配置された複数の発光点を含む少なくとも3組の発光体群21〜23を、校正用ターゲット20の柱体高さ方向の位置が異なり、且つそれぞれの前記特徴点と該特徴点に対応する前記発光点各々とが同一直線上に位置するように並設し、発光体各々及びラインレーザの撮像画像と射影変換で複比が不変であることとに基づいて校正用ターゲット20の特徴点の位置座標を同定し、装置校正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光切断法により測定対象の形状を測定する形状測定装置の校正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、非接触で光学的に物体の形状を測定する手法の一つとして光切断法が知られている。光切断法では、光源から測定対象に照射したラインレーザを該光源の光軸とは異なる角度から撮像装置で撮影し、その撮像画像に基づいて測定対象の形状を測定する。
但し、例えば測定環境に激しい振動が生じる場合には、光源及び撮像装置を含む光切断式センサの位置関係を一定に維持することができない。そのため、測定精度を維持するべく光切断式センサの位置関係を頻繁に校正する必要がある。
例えば、特許文献1には、校正用ターゲットを三次元空間で垂直方向に移動させ、その移動前後に撮像した校正用ターゲットの撮像画像に基づいて三次元空間上の座標系と撮像画像上の座標系との変換係数を算出することが開示されている。
また、特許文献2には、校正用ターゲットを基準位置に設置してその校正用ターゲットを撮像し、その撮像画像上の模様に基づいてひずみを補正することが開示されており、また、レーザ平面上に校正用ターゲットを設置することで歪み補正と同時に光切断法の校正を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−35828号公報
【特許文献2】特開2007−292619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光切断式センサを使用する環境によっては、上記特許文献1、2に係る構成では対応が難しい場合がある。
具体的に、光切断式センサを工場設備の一部として常設する場合であり、その工場設備における振動が激しい場合が考えられる。この場合、振動による光切断式センサの位置関係の変動が生じるため、頻繁に装置校正を行う必要がある。しかし、光切断式センサを動かすことができないため、校正用ターゲットを頻繁に移動させる必要がある。ところが、例えば数mにも及ぶ大型対象物を測定対象とする場合には、広くなった測定範囲に合わせて巨大化させた校正用ターゲットが必要になる。しかしながら、巨大化させた校正用ターゲットは運搬が困難であり、頻繁に動かすことはできない。
そのため、このような状況では、校正作業のために校正用ターゲットを何度か移動させることが必要となる上記特許文献1に係る構成は適用が難しい。もちろん、校正用ターゲットを平行移動させるための機構を用意することも考えられるが、その機器構成が煩雑となり、機器の操作も煩雑となる。
また、上記特許文献2に係る構成では、校正用ターゲットを設置する基準位置を定める必要があるが、その基準位置に大型の校正用ターゲットを正確に配置することは困難である。
従って、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、光断面式により形状を測定する形状測定装置の校正を、校正用ターゲットを頻繁に移動させることなく行うことのできる形状測定装置の校正方法、形状測定装置及び校正用ターゲットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明は、所定の光源から測定対象に照射されたラインレーザを該所定の光源の光軸とは異なる角度から所定の撮像手段で撮像した撮像画像と、前記ラインレーザで形成されたラインレーザ平面及び前記所定の撮像手段の位置関係とに基づいて光切断法により前記測定対象の形状を測定する形状測定装置の校正方法に適用されるものであって、底面形状及び寸法が既知である柱体の校正用ターゲットに、前記校正用ターゲットの底面形状における複数の特徴点に対応し、該底面と平行に配置された複数の発光点を含む少なくとも3組の発光手段を、前記校正用ターゲットの柱体高さ方向の位置が異なり、且つそれぞれの前記特徴点と該特徴点に対応する前記発光点各々とが同一直線上に位置するように並設し、以下の各工程を実行する。
(1)前記発光手段各々を個別に発光させたときに前記所定の撮像手段で撮像される個別撮像画像に基づいて該発光手段各々の発光点の三次元空間における位置座標を同定する第1の同定工程。
(2)全ての前記発光手段及び前記所定の光源を同時に発光させたときに前記所定の撮像手段で撮像される同時撮像画像における前記ラインレーザの特徴点各々の位置座標と前記第1の同定工程において同定された少なくとも3組の前記発光手段の発光点各々の三次元空間における位置座標と該3組の前記発光手段の発光点各々の撮像画像上における位置座標とに基づいて、射影変換で複比が変化しないことを利用して前記ラインレーザの特徴点各々の三次元空間における位置座標を同定する第2の同定工程。
(3)前記第2の同定工程で同定された前記ラインレーザの特徴点各々の三次元空間における位置座標に基づいて前記ラインレーザ平面及び前記所定の撮像手段の位置関係を校正する校正工程。
本発明によれば、校正用ターゲットを移動させる必要がないため、校正用ターゲットが大型である場合など、校正用ターゲットを基準位置に正確に設置しづらい状況でも装置校正を容易に行うことが可能である。
【0006】
ここで、前記発光手段が、前記所定の光源と同一波長の光を発するものであることが望ましい。これにより、前記所定の撮像手段に、前記所定の光源から照射される特定波長の光のみを透過させる干渉フィルタが設けられる場合でも、前記所定の撮像手段で前記発光体の光を撮像することができる。
前記発光手段が、前記発光点各々に配置された複数の発光体であることが考えられる。また、前記発光手段は、前記発光点各々を通過する連続した一つの発光体であってもよい。
【0007】
また、本発明は、形状測定装置の発明として捉えてもよい。即ち、所定の光源から測定対象に照射されたラインレーザを該所定の光源の光軸とは異なる角度から所定の撮像手段で撮像した撮像画像と、前記ラインレーザで形成されたラインレーザ平面及び前記所定の撮像手段の位置関係とに基づいて光切断法により前記測定対象の形状を測定する形状測定装置であって、底面形状及び寸法が既知である柱体であり、前記校正用ターゲットの底面形状における複数の特徴点に対応し、該底面と平行に配置された複数の発光点を含む少なくとも3組の発光手段が、前記校正用ターゲットの柱体高さ方向の位置が異なり、且つそれぞれの前記特徴点と該特徴点に対応する前記発光点各々とが同一直線上に位置するように並設された校正用ターゲットと、前記発光手段各々を個別に発光させたときに前記所定の撮像手段で撮像される個別撮像画像に基づいて該発光手段各々の発光点の三次元空間における位置座標を同定する第1の同定手段と、全ての前記発光手段及び前記所定の光源を同時に発光させたときに前記所定の撮像手段で撮像される同時撮像画像における前記ラインレーザの特徴点各々の位置座標と前記第1の同定手段において同定された少なくとも3組の前記発光手段の発光点各々の三次元空間における位置座標と該3組の前記発光手段の発光点各々の撮像画像上における位置座標とに基づいて、射影変換で複比が変化しないことを利用して前記ラインレーザの特徴点各々の三次元空間における位置座標を同定する第2の同定手段と、前記第2の同定手段で同定された前記ラインレーザの特徴点各々の三次元空間における位置座標に基づいて前記ラインレーザ平面及び前記所定の撮像手段の位置関係を校正する校正手段とを備えてなることを特徴とする形状測定装置として構成される。
【0008】
さらに、本発明は、所定の光源から測定対象に照射されたラインレーザを該所定の光源の光軸とは異なる角度から所定の撮像手段で撮像した撮像画像と、前記ラインレーザで形成されたラインレーザ平面及び前記所定の撮像手段の位置関係とに基づいて光切断法により前記測定対象の形状を測定する形状測定装置の校正方法に用いられる柱体の校正用ターゲットであって、底面形状及び寸法が既知である柱体であり、前記校正用ターゲットの底面形状における複数の特徴点に対応し、該底面と平行に配置された複数の発光点を含む少なくとも3組の発光手段が、前記校正用ターゲットの柱体高さ方向の位置が異なり、且つそれぞれの前記特徴点と該特徴点に対応する前記発光点各々とが同一直線上に位置するように並設されてなることを特徴とする校正用ターゲットとして捉えてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、校正用ターゲットを移動させる必要がないため、校正用ターゲットが大型である場合など、校正用ターゲットを基準位置に正確に設置しづらい状況でも装置校正を容易に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る形状測定装置の概略構成を示す模式図。
【図2】射影変換の複比を説明するための図。
【図3】射影変化の内分比を説明するための図。
【図4】本発明の実施の形態に係る形状測定装置の校正方法を説明するためのフロー図。
【図5】本発明の実施の形態に係る形状測定装置の校正方法を説明するための図。
【図6】本発明の実施の形態に係る形状測定装置の校正方法に用いられる校正用ターゲットの他の例を示す図。
【図7】撮像装置とラインレーザ平面との位置関係を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
本発明の実施の形態に係る形状測定装置Xは、光切断法により測定対象の形状を測定するものである。形状測定装置Xは、図1に示すように、光切断式センサ10、校正用ターゲット20、及び制御装置30等を有している。
光切断式センサ10は、画像を撮影するCCDカメラなどの撮像装置11(所定の撮像手段に相当)と、ラインレーザを照射するラインレーザ光源12(所定の光源に相当)とを備えている。ここに、撮像装置11及びラインレーザ光源12は光軸の角度が異なる位置関係で配置されている。また、撮像装置11には、ラインレーザ光源12から照射されるラインレーザの波長の光のみを通過させる干渉フィルタが設けられている。即ち、撮像装置11は、ラインレーザ光源12と同波長の光のみを撮像することとなる。
【0012】
校正用ターゲット20は、階段形状を成す底面20aを有する柱体である。即ち、校正用ターゲット20の天面も底面20aと同形状である。なお、校正用ターゲット20の底面20aの形状及び寸法は既知であるものとする。
また、校正用ターゲット20には、柱体高さ方向の位置が異なる複数組の発光体群21〜23が設けられている。発光体群21、22、23は、底面20aの階段状部における各特徴点に対応するLED等の発光体21a〜21e、22a〜22e、23a〜23eを有している。以下、発光体21a〜21e、22a〜22e、23a〜23eを総称するときは単に発光体と称する。
発光体群21〜23の発光体は、不図示の電源に接続されており、発光の有無が個別に制御可能である。ここに、発光体群21〜23各々の発光体は、ラインレーザ光源12と同波長の光を発光する。そのため、撮像装置11は、ラインレーザ光源12のラインレーザと同様に発光体群21〜23の発光体の光を撮像することが可能である。
また、発光体群21の発光体21a〜21e各々を通過する平面は底面20aと平行であり、発光体群22、23についても同様である。さらに、発光体群21〜23における同一の特徴点に対応する発光体は同一直線上に存在する。なお、図1に示す例では、発光体群21、22、23が、校正用ターゲット20の高さ方向の下端部、中央部、上端部の3箇所に等間隔で配置されているが、これらの間隔は任意の間隔であってよい。
【0013】
制御装置30は、パーソナルコンピュータなどの演算装置であって、光切断式センサ10の撮像装置11及びラインレーザ光源12や、発光体群21〜23の発光体などを制御する。具体的に、制御装置30は、ラインレーザ光源12から測定対象に照射したラインレーザを該ラインレーザ光源12の光軸とは異なる角度から撮像装置11で撮像し、その撮像画像と、前記ラインレーザで形成されたラインレーザ平面及び撮像装置11の位置関係とに基づいて測定対象の形状を測定する。なお、このような光切断法による形状測定手法は従来周知であるため、その詳細な説明を省略する。
【0014】
ところで、本発明に係る形状測定装置の校正方法では、射影変換で複比が不変であることを利用する。そのため、まず図2及び図3を参照しつつ、射影変換の複比と内分比について説明する。
ここでは、図2に示すように、中心Oを通過する放射状の4本の直線L1〜L4が存在する場合を考える。そして、4本の直線L1〜L4に交差する2本の直線l1、l2を引いたとき、直線L1〜L4と直線l1との交点をA、B、C、Dとし、直線L1〜L4と直線l2との交点をA’、B’、C’、D’とする。
この場合、A、B、C、Dの複比(|AC|/|CB|):(|AD|/|DB|)と、A’、B’、C’、D’の複比(|A’C’|/|C’B’|):(|A’D’|/|D’B’|)とは等しいことが知られている。そして、複比(ADCB)=(|AC|・|DB|)/(|AB|・|DC|)であり、複比(A’D’C’B’)=(|A’C’|・|D’B’|)/(|A’B’|・|D’C’|)である。これにより、例えば交点A、B、D、A’B’C’D’の座標が既知であれば、未知の交点Cの座標を導出することが可能である。
【0015】
これに対し、図3(a)に示すように、中心Oを通過する放射状の3本の直線L11〜L13が存在する場合を考える。ここで、3本の直線L11〜L13に交差する2本の直線l11、l12を引いたとき、直線L11〜L13と直線l11との交点をA、B、Cとし、直線L11〜L13と直線l12との交点をA’、B’、C’とする。但し、直線l11と直線l12とは平行でないものとする。この場合、AB:BC≠A’B’:B’C’である。
例えば、図3(a)において、AB=BC=500mm、OB=10m、OB’=35mmである場合に、点Bを中心に直線l11を角度θ[°]だけ回転させたときのA’B’、B’C’の比率(A’B’/B’C’)は、図3(b)に示すように最大で約10%変動してしまうことになる。そのため、本発明に係る形状測定装置の校正方法では複比を利用する。
【0016】
以下、図4のフローチャートに従って、本発明に係る形状測定装置の校正方法について説明する。なお、図中のS1、S2、…は各工程(ステップ)の番号を表している。また、制御装置30が当該ステップS1〜S8の一連の処理手順を自動実行することにより校正処理が行われることも考えられる。
本発明に係る形状測定装置の校正方法は、校正用ターゲット20を、撮像装置11の撮像可能範囲内であってラインレーザ光源12のラインレーザの照射範囲内に載置させた状態で開始する。
【0017】
(ステップS1)
まず、ステップS1では、校正用ターゲット20に設置された3組の発光体群21〜23のうち一組の発光体群21のみを発光させ(図5(a)参照)、その状態を撮像装置11で撮像する。これは、3組の発光体群21〜23を区別して撮像するためである。このとき撮像される画像が個別撮像画像に相当する。
【0018】
(ステップS2)
そして、ステップS2では、ステップS1で撮像された撮像画像から発光体各々の設置位置を特徴点として抽出する。ここで抽出される特徴点の数は、校正用ターゲット20の底面20aにおける特徴点の数と同じである。
なお、本実施の形態では、校正用ターゲットの特徴点に対応する箇所のみに発光体を設ける構成について説明するが、これに限らない。例えば、図6に示すように、校正用ターゲット200の底面200aにおける特徴点に対応する箇所を通過して該校正用ターゲット200の階段状部を縁取るように配置され、それぞれが連続する3組の発光体211〜213を用いることも考えられる。発光体211〜213は、校正用ターゲット200の柱体高さ方向の位置が異なり、該校正用ターゲット200の底面200aに平行である。このように構成された校正用ターゲット200を用いる場合には、当該ステップS2において、ステップS1で撮像された撮像画像に基づいて、発光体211〜213の頂点部位(曲折部)各々を特徴点として抽出する。
【0019】
(ステップS3)
そして、ステップS3では、ステップS2で抽出される特徴点に基づいて仮校正を行う。
具体的には、発光体がかたどる形状を仮想的なラインレーザ(以下「仮レーザ」と称する)の軌跡とみなし、その仮レーザと撮像装置11との位置関係を求める。なお、仮レーザと撮像装置11との位置関係を求める手法は特に限定されない。
光切断法の形状測定装置Xの装置校正は、撮像装置11のレンズの焦点距離fと、基線長g’(撮像装置11から仮レーザ平面に対する垂線の長さ)と、撮像装置11の仮レーザ平面に対する姿勢角成分α’、β’、γ’との各パラメータを導出することによって可能となる(後述の図7参照)。
なお、本発明に係る手法では校正用ターゲット20の特徴点の絶対座標ではなく相対座標から各パラメータを導出するため、姿勢各成文β’によって相対座標値に変化はない。そのため、β’=0とする。
このとき、既に仮レーザの軌跡の三次元座標は既知であるため、その仮レーザの軌跡の特徴点i、j間の距離Dijと計測結果Fij(f,g’,α’,β’,γ’)との二乗誤差をEij(f,g’,α’,β’,γ’)とすると、以下の(1)式で表される誤差Eij(f,g’,α’,β’,γ’)を最小化することにより仮校正を行うことができる。
【数1】

ここで、形状測定装置Xの設計上、上記各パラメータが取り得る範囲は、ある程度限定される。そのため、パラメータ各々の最小値と最大値、探索用の一定ステップを定義し、全てのパラメータの組み合わせを探索して、誤差Eij(f,g’,α’,β’,γ’)が最小となるパラメータの組み合わせを求めればよい。もちろん、このような全探索を行うことなく、例えば、最急降下法やニュートン法、レベンバーグ・マーカート法などの非線形の数値計算手法によって誤差Eij(f,g’,α’,β’,γ’)が最小となるパラメータの組み合わせを求めてもよい。
このように、ステップS3では、発光中の発光体群21〜23のいずれかについて、発光体が配置された特徴点各々の三次元座標を同定することができる。
【0020】
(ステップS4)
そして、ステップS4では、上記ステップS1〜S3と同様の処理を、3組の発光体群21〜23各々について実行したか否かを判定し、実行していなければ(S4のNo側)、別の発光体群だけを発光させて(S41)、前記ステップS2、S3と同様の処理を実行する(図5(b)、(c)参照)。このように発光体群21〜23各々を個別に発光させたときに撮像装置11で撮像される個別撮像画像に基づいて該発光体群21〜23各々の発光体の三次元空間における位置座標を同定する上記ステップS1〜S3が第1の同定工程に相当する。また、係る処理を制御装置30が実行する場合には該制御装置が第1の同定手段に相当する。
その後、3組の発光体群21〜23各々の発光体の三次元座標が特定されると(S4のYes側)、続いてステップS5を実行する。
なお、本実施の形態では、3組の発光体群21〜23が設けられている場合を例に挙げて説明するが、4組以上の発光体群を備える構成も考えられる。この場合には、その4組以上の発光体群のうち少なくとも3組の発光体群を用いればよい。
【0021】
(ステップS5)
ステップS5では、3組の発光体群21〜23とラインレーザ光源12とを同時に発光させて撮像装置11で撮像する(図5(d)参照)。このとき撮像される画像が同時撮像画像に相当する、なお、全組の発光体群21〜23の発光体各々の三次元座標は既に特定されているため、該発光体群21〜23の発光体の対応関係は認識可能である。また、発光体群21〜23とラインレーザ光源12との区別も可能である。
【0022】
(ステップS6)
そして、ステップS5で撮像された撮像画像からラインレーザの軌跡における特徴点を抽出する。ラインレーザの軌跡の角部(曲折部)をラインレーザの特徴点として抽出することが考えられる。また、発光体群21〜23の同一の特徴点に対応する発光体を結ぶ直線と、ラインレーザとの交点を特徴点として抽出することも考えられる。
ここで、このラインレーザの特徴点は、発光体群21〜23各々における発光体の数と同じである。また、ラインレーザの特徴点各々は、底面20aにおける同一の特徴点に対応する発光体群21〜23各々の発光体を結ぶ直線上に存在する。
【0023】
(ステップS7)
ステップS6でラインレーザの特徴点が抽出されると、続くステップS7では、三次元空間上及び撮像画像上のラインレーザの発光体群21〜23各々の発光体の位置座標と射影変換で複比が変化しない点とに基づいて、ラインレーザの特徴点の三次元座標を導出する。
ここで、発光体群21、22、23において一つの特徴点に対応して直線上に存在する3つの発光体の三次元座標をP0、P1、P2とし、撮像画像上の座標をp0、p1、p2とする。また、その発光体各々と同一直線上に存在するラインレーザの特徴点の三次元座標をQ、撮像画像上の座標をqとする。このとき、4点P0、P1、P2、Qは一直線上に並んでおり、4点p0、p1、p2、qも一直線上に並んでいる。
前述したように、撮像画像上の4点p0、p1、p2、qが成す複比と、実空間上の4点P0、P1、P2、Qが成す複比とは等しい。そのため、撮像画像上の4点p0、p1、p2、qの座標と、実空間上の3点P0、P1、P2の三次元座標とに基づいて、ラインレーザの特徴点の三次元座標Qを導出することができる。
例えば、撮像画像上において、4点p0、p1、p2、qが左側からp0、p1、q、p2の順に並んでいたとすると、三次元空間上でも同じ順番で並んでいるので、複比の値をRとすると、下記(2)式が成立する。
【数2】

そして、撮像画像上における4点p0、p1、p2、qの座標と、三次元空間上の3点P0、P1、P2の三次元座標とは既知である。そのため、上記(2)式に基づいて、ラインレーザの特徴点の三次元座標Qを同定することができる。そして、ラインレーザの全ての特徴点の三次元座標を同定すれば、該ラインレーザの軌跡を同定することができる。このように射影変換で複比が変化しないことを利用してラインレーザの特徴点各々の三次元空間における位置座標を同定するために実行される上記ステップS5〜S7が第2の同定工程に相当する。また、係る処理を制御装置30が実行する場合には該制御装置が第2の同定手段に相当する。
【0024】
(ステップS8)
その後、ステップS8では、ラインレーザと撮像装置11との位置関係を求め、光切断式センサ10についてラインレーザで形成される平面と撮像装置11との位置関係を示すパラメータ等の校正を行う。ここに、係る工程が校正工程に相当し、係る処理を制御装置30が実行する場合には該制御装置が校正手段に相当する。具体的に、光切断法の形状測定装置Xの装置校正は、撮像装置11のレンズの焦点距離f、基線長g(撮像装置11からラインレーザ平面12aに対する垂線の長さ)、撮像装置11のラインレーザ平面12aに対する姿勢角成分α、β、γとの各パラメータ(図7参照)を導出することによって可能となる。
なお、本発明に係る手法では校正用ターゲット20の特徴点の絶対座標ではなく相対座標から各パラメータを導出するため、姿勢角成分βによって相対座標値に変化はない。そのため、β=0とする。
このとき、既にラインレーザの軌跡の三次元座標は既知であるため、そのラインレーザの軌跡の特徴点i、j間の距離Dijと計測結果Fij(f,g,α,β,γ)との二乗誤差をEij(f,g,α,β,γ)とすると、以下の(3)式で表される誤差Eij(f,g,α,β,γ)を最小化することにより校正を行うことができる。例えば、図5(d)に示す測定結果R1が測定結果R2となるように校正すればよい。
【数3】

ここで、形状測定装置Xの設計上、上記各パラメータが取り得る範囲は、ある程度限定される。そのため、上記パラメータ各々の最小値と最大値、探索用の一定ステップを定義し、全てのパラメータの組み合わせを探索して、誤差Eij(f,g,α,β,γ)が最小となるパラメータの組み合わせを求めればよい。もちろん、このような全探索を行うことなく、例えば、最急降下法やニュートン法、レベンバーグ・マーカート法などの非線形の数値計算手法によって誤差Eij(f,g,α,β,γ)が最小となるパラメータの組み合わせを求めてもよい。
【0025】
以上、説明したように、本発明の校正方法によれば、たとえ校正用ターゲット20の設置精度が悪くても、少なくとも3組の発光体群各々の発光体の座標から三次元空間上のラインレーザの軌跡を同定し、形状測定装置Xにおける測定誤差が最小となる各パラメータf、g、α、β、γを求めて装置校正を実現することができる。また、本発明の校正方法によれば、校正用ターゲット20を頻繁に動かす必要がないため操業現場への導入が容易である。特に、校正用ターゲット20のサイズが大きい場合などに好適である。
【符号の説明】
【0026】
10:光切断式センサ
11:撮像装置(所定の撮像手段に相当)
12:ラインレーザ光源(所定の光源に相当)
12a:ラインレーザ平面
20、200:校正用ターゲット
20a:底面
21〜23:発光体群
21a〜21e:発光体
22a〜22e:発光体
23a〜23e:発光体
30:制御装置
X:形状測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の光源から測定対象に照射されたラインレーザを該所定の光源の光軸とは異なる角度から所定の撮像手段で撮像した撮像画像と、前記ラインレーザで形成されたラインレーザ平面及び前記所定の撮像手段の位置関係とに基づいて光切断法により前記測定対象の形状を測定する形状測定装置の校正方法であって、
底面形状及び寸法が既知である柱体の校正用ターゲットに、前記校正用ターゲットの底面形状における複数の特徴点に対応し、該底面と平行に配置された複数の発光点を含む少なくとも3組の発光手段を、前記校正用ターゲットの柱体高さ方向の位置が異なり、且つそれぞれの前記特徴点と該特徴点に対応する前記発光点各々とが同一直線上に位置するように並設し、
前記発光手段各々を個別に発光させたときに前記所定の撮像手段で撮像される個別撮像画像に基づいて該発光手段各々の発光点の三次元空間における位置座標を同定する第1の同定工程と、
全ての前記発光手段及び前記所定の光源を同時に発光させたときに前記所定の撮像手段で撮像される同時撮像画像における前記ラインレーザの特徴点各々の位置座標と前記第1の同定工程において同定された少なくとも3組の前記発光手段の発光点各々の三次元空間における位置座標と該3組の前記発光手段の発光点各々の撮像画像上における位置座標とに基づいて、射影変換で複比が変化しないことを利用して前記ラインレーザの特徴点各々の三次元空間における位置座標を同定する第2の同定工程と、
前記第2の同定工程で同定された前記ラインレーザの特徴点各々の三次元空間における位置座標に基づいて前記ラインレーザ平面及び前記所定の撮像手段の位置関係を校正する校正工程と、
を実行することを特徴とする形状測定装置の校正方法。
【請求項2】
前記発光手段が、前記所定の光源と同一波長の光を発するものである請求項1に記載の形状測定装置の校正方法。
【請求項3】
前記発光手段が、前記発光点各々に配置された複数の発光体である請求項1又は2のいずれかに記載の形状測定装置の校正方法。
【請求項4】
前記発光手段が、前記発光点各々を通過する連続した一つの発光体である請求項1又は2のいずれかに記載の形状測定装置の校正方法。
【請求項5】
所定の光源から測定対象に照射されたラインレーザを該所定の光源の光軸とは異なる角度から所定の撮像手段で撮像した撮像画像と、前記ラインレーザで形成されたラインレーザ平面及び前記所定の撮像手段の位置関係とに基づいて光切断法により前記測定対象の形状を測定する形状測定装置であって、
底面形状及び寸法が既知である柱体であり、前記校正用ターゲットの底面形状における複数の特徴点に対応し、該底面と平行に配置された複数の発光点を含む少なくとも3組の発光手段が、前記校正用ターゲットの柱体高さ方向の位置が異なり、且つそれぞれの前記特徴点と該特徴点に対応する前記発光点各々とが同一直線上に位置するように並設された校正用ターゲットと、
前記発光手段各々を個別に発光させたときに前記所定の撮像手段で撮像される個別撮像画像に基づいて該発光手段各々の発光点の三次元空間における位置座標を同定する第1の同定手段と、
全ての前記発光手段及び前記所定の光源を同時に発光させたときに前記所定の撮像手段で撮像される同時撮像画像における前記ラインレーザの特徴点各々の位置座標と前記第1の同定手段において同定された少なくとも3組の前記発光手段の発光点各々の三次元空間における位置座標と該3組の前記発光手段の発光点各々の撮像画像上における位置座標とに基づいて、射影変換で複比が変化しないことを利用して前記ラインレーザの特徴点各々の三次元空間における位置座標を同定する第2の同定手段と、
前記第2の同定手段で同定された前記ラインレーザの特徴点各々の三次元空間における位置座標に基づいて前記ラインレーザ平面及び前記所定の撮像手段の位置関係を校正する校正手段と、
を備えてなることを特徴とする形状測定装置。
【請求項6】
所定の光源から測定対象に照射されたラインレーザを該所定の光源の光軸とは異なる角度から所定の撮像手段で撮像した撮像画像と、前記ラインレーザで形成されたラインレーザ平面及び前記所定の撮像手段の位置関係とに基づいて光切断法により前記測定対象の形状を測定する形状測定装置の校正方法に用いられる柱体の校正用ターゲットであって、
底面形状及び寸法が既知である柱体であり、前記校正用ターゲットの底面形状における複数の特徴点に対応し、該底面と平行に配置された複数の発光点を含む少なくとも3組の発光手段が、前記校正用ターゲットの柱体高さ方向の位置が異なり、且つそれぞれの前記特徴点と該特徴点に対応する前記発光点各々とが同一直線上に位置するように並設されてなることを特徴とする校正用ターゲット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−189372(P2012−189372A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51519(P2011−51519)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】