説明

形状測定装置

【課題】本発明の目的は、構成の簡略化を図ることのできる形状測定装置を提供することにある。
【解決手段】上下方向に振動しながら被測定面24上を走査する探針12と、該探針12を上下方向に振動させる微小振動発生手段16と、該被測定面24と探針12間の距離ないし接触力が一定となるように該探針12を上下動する上下動制御手段17と、該探針12を該被測定面24上で走査する走査手段18と、該探針12の上下方向変位を測定し探針変位信号を出力する変位センサ20と、該信号26中の高周波成分より該被測定面24と探針12間の距離情報ないし接触力情報を取得し、該距離ないし接触力を一定に保つように該被測定面24を走査した際の該信号26中の低周波成分より該被測定面24の凹凸情報を取得する信号処理機構22と、を備えたことを特徴とする形状測定装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は形状測定装置、特にその接触力検出機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被測定面の形状を測定するため、形状測定装置が用いられている。形状測定装置により、被測定面を探針でなぞり、探針が上下する量を観測する。例えば被測定面と探針との間に作用する原子間力によってそれらの間の距離または接触力を一定に保ち、走査測定する原子間力顕微鏡がある(例えば特許文献1参照)。その例を図5に示す。同図においては、レーザLと、カンチレバーCと、探針Pと、分割フォトディテクタDと、を備える。そして、被測定面Sを移動させて、カンチレバーCの探針Pで被測定面S上を走査する。このとき、被測定面Sの凹凸に応じて探針Pが上下すると、カンチレバーCが撓むため、探針Pを押し付ける力、すなわち接触力は変化する。接触力が変化すると、探針Pと被測定面S間の距離が変化するだけでなく、探針Pで被測定面Sに傷をつけることがある。このため、形状測定装置においては、接触力の制御が重要である。
【0003】
接触力を制御するための代表的なものとして、光てこ式を使ったものがある。すなわち、同図において、探針Pの背面にレーザLからのレーザ光を照射し、そこからの反射光を4分割のフォトディテクタDで受光する。被測定面Sの凹凸に応じて探針Pが上下すると、レーザ光軸に対するカンチレバーC背面の傾斜角度が変わるので、反射光の角度が変わる。この角度変化に伴って変化する4分割フォトディテクタDの光強度信号からカンチレバーCの接触力を検出する。そして、探針Pで変位を観察する軸方向にカンチレバーCまたは被測定面Sを上下変位させることにより、接触力を一定に保つことができる。このときのカンチレバーCまたは被測定面Sの上下方向変位量を別の変位センサで測定することにより、探針Pが指している被測定面S上での高さ情報を得ることができるので、被測定面Sの形状を把握することができる。
【特許文献1】特開2002−181687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記形状測定装置にあっても、構成の簡略化は改善の余地が残されていたものの、従来は、これを解決することのできる適切な技術が存在しなかった。
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、構成の簡略化を図ることのできる形状測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが、構成の簡略化について鋭意検討を重ねた結果、形状測定装置の数ある構成部材の中から変位センサに着目した。すなわち、従来方式では、探針の接触力を検出するための変位センサと、被測定面の凹凸情報を得るための変位センサとが別々に必要であった。これに対し、本発明者らは、変位センサからの探針変位出力信号中の高周波成分を被測定面と探針間の距離ないし接触力の一定制御に用い、探針変位出力信号中の低周波成分を被測定面形状の算出に用いることにより、一つの変位センサにより、探針の接触力及び変位の双方を検出することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、前記目的を達成するために本発明にかかる形状測定装置は、探針と、微小振動発生手段と、上下動制御手段と、走査手段と、変位センサと、信号処理機構と、を備えることを特徴とする。
ここで、前記探針は、上下方向に振動しながら、被測定面上を走査する。
また、前記微小振動発生手段は、前記探針を上下方向に振動させる。
前記上下動制御手段は、前記被測定面と探針間の距離ないし接触力が一定となるように、該探針を上下動する。
前記走査手段は、前記探針を前記被測定面上で走査する。
前記変位センサは、前記探針の上下方向変位を測定し、探針変位信号を出力する。
前記信号処理機構は、前記探針を、上下方向に振動させながら、前記被測定面に近づけた際の、前記変位センサからの探針変位出力信号中の探針振動に対応する高周波成分より、該被測定面と該探針間の距離情報ないし接触力情報を取得する。また、該信号処理機構は、該距離ないし接触力を一定に保つように、該被測定面を走査した際の、該変位センサからの探針変位出力信号中の被測定面凹凸に対応する低周波成分より、該被測定面の凹凸情報を取得する。
【0007】
<微小振動発生手段>
なお、本発明においては、前記微小振動発生手段が、前記探針を、前記被測定面の形状を検出(抽出)する際のサンプリング周波数よりも高い周波数で、振動させることが好適である。
【0008】
<信号処理機構>
また、本発明においては、前記信号処理機構が、分離手段と、振動成分抽出手段と、凹凸成分抽出手段と、振動情報取得手段と、凹凸情報取得手段と、を備えることが好適である。
ここで、前記分離手段は、前記変位センサからの探針変位出力信号を分割する。
また、前記振動成分抽出手段は、前記分離手段で分割された探針変位出力信号から、前記探針の振動に対応する高周波成分を抽出する。
前記凹凸成分抽出手段は、前記分離手段で分割された他方の探針変位出力信号から、前記被測定面の凹凸に対応する低周波成分を抽出する。
前記振動情報取得手段は、前記振動成分抽出手段により得られた高周波成分より、前記探針の振動振幅情報を取得する。
前記形状情報取得手段は、前記凹凸成分抽出手段により得られた低周波成分より、前記被測定面の凹凸情報を取得する。
【0009】
<抽出手段>
本発明においては、前記振動成分抽出手段がハイパスフィルター又はバンドパスフィルターを含み、前記凹凸成分抽出手段がローパスフィルターを含むことが好適である。
ここで、前記ハイパスフィルター又はバンドパスフィルターは、前記探針変位信号中の、前記探針の振動に対応する高周波成分のみを通す。
また、前記ローパスフィルターは、前記探針変位信号中の、前記被測定面の凹凸に対応する低周波成分のみを通す。
【0010】
<フィルター>
本発明においては、ハイパスフィルターを用いた場合、その遮断周波数は、前記探針の振動周波数(通常は共振周波数)よりも低く設定し、ハイパスフィルターが前記探針の振動成分に影響を与えないようにすることが好ましい。本発明においては、ハイパスフィルターを用いた場合、その遮断周波数を、探針の振動周波数の1/5〜1/10程度に設定することが特に好適である。
バンドパスフィルターを用いた場合、その通過する中心周波数を、前記探針の振動周波数付近に設定することが好ましい。これにより、前記探針の振動周波数よりも高い周波数のノイズ成分をカットすることができるので、ハイパスフィルターよりもバンドパスフィルターを用いるほうが、より好ましい。
一方、ローパスフィルターは、その遮断周波数を、前記探針の振動成分が十分に減衰されて被測定面の形状成分検出時の誤差とならないように、該探針の振動周波数よりも低く設定することが好ましい。本発明においては、ローパスフィルターを用いた場合、その遮断周波数を、探針の振動周波数の1/10程度の周波数に設定することが特に好適である。
【0011】
<変位センサ>
本発明においては、前記変位センサが、前記走査によっても、前記被測定面に対する位置及び姿勢が変化しないように保持された基準部材を含み、
前記変位センサにより、前記基準部材の位置及び姿勢を基準に、前記探針の特定部位における上下方向変位を測定することが好適である。
【0012】
本発明において、前記変位センサは、光波干渉式変位センサであり、
前記基準部材に前記光波干渉式変位センサの参照鏡を参照面として設け、
前記参照面に入射して得られた該参照面での反射光と、該参照面を透過し該探針特定部位に入射して得られた該探針特定部位での反射光とを、該参照面で干渉させた際の干渉信号を前記探針変位信号として出力することが好適である。
【0013】
本発明においては、前記変位センサが静電容量式変位センサであり、
前記基準部材及び前記探針特定部位に平面電極が対向配置され、
該基準部材と探針の特定部位間の静電容量変化に基づく前記探針変位信号を出力することが好適である。
【0014】
<カンチレバー>
本発明においては、前記探針が可撓性を有するカンチレバーの自由端に設けられており、該探針が前記被測定面に接触した状態で該被測定面の凹凸に応じて上下方向に変位することが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる形状測定装置によれば、変位センサからの探針変位出力信号中の高周波成分より探針の接触力情報を取得し、該接触力を一定に保つように被測定面上を走査した際の該探針変位出力信号中の低周波成分より被測定面の凹凸情報を取得する信号処理機構を備えることとした。
この結果、本発明においては、一つの変位センサで探針の接触力及び被測定面の凹凸の双方を検出することができるので、従来方式、つまり探針の接触力の検出と被測定面の凹凸の検出とに別々の変位センサを用いたものに比較し、装置の構成が簡略化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の好適な一実施形態について説明する。
図1には本発明の一実施形態にかかる形状測定装置の概略構成が示されている。
同図に示す形状測定装置10は、探針12と、カンチレバー14と、微小振動発生手段16と、Z軸制御手段(上下動制御手段)17と、走査手段18と、変位センサ20と、信号処理機構22と、を備える。
ここで、探針12は、可撓性を有するカンチレバー14の自由端に設けられている。探針12は、上下方向に微小振動しながら、被測定面24を走査するためのものとする。探針12は、被測定面24に接触した状態で、被測定面24の凹凸に応じて上下方向に変位する。
また、微小振動発生手段16は、カンチレバー14を保持し、探針12を、被測定面24の形状測定をするサンプリング周波数よりも高い周波数で、上下方向に微小振動させる。
Z軸制御手段17は、被測定面24に対する探針12の接触力(下記の高周波成分の振動振幅)が許容範囲内で一定となるように、微小振動発生手段16を上下動する。
走査手段18は、探針12を被測定面24上で走査する。
変位センサ20は、探針12の上下方向変位を測定し、探針変位信号26を出力する。
【0017】
信号処理機構22は、探針12を上下方向に振動させながら被測定面24に近づけた際の、変位センサ20からの探針変位出力信号26中の探針振動に対応する高周波成分より、被測定面24と探針12間の距離情報ないし接触力情報を取得する。
また、信号処理機構22は、前記高周波成分の振動振幅を許容範囲内で一定に保つように、被測定面24を走査した際の、変位センサ20からの探針変位出力信号26中の被測定面凹凸に対応する低周波成分より、被測定面24の凹凸情報を取得する。
【0018】
なお、本実施形態においては、XYステージ30と、支柱32と、を備える。XYステージ30上に被測定面24が載置される。走査手段18は、参照面38と一体になったXYステージ30をXY方向に移動することにより、探針12を被測定面24上で走査する。微小振動発生手段16及び変位センサ20は、XYステージ30とは独立にベースに設置されている。そのため、被測定面24を走査すると、参照面38も一緒に走査されるため、被測定面24と参照面38は相対的に固定された位置関係となる。そこで、被測定面24に応じた探針12の上下変位を干渉測定すると、参照面38に対する被測定面24の形状を探針12を介して、測定していることになる仕組みである。
【0019】
すなわち、本実施形態においては、変位センサ20として、光波干渉式を用いる。
光波干渉式の変位センサ20は、レーザ34と、ビームスプリッタ36と、参照面(基準部材)38と、レンズ40と、探針変位信号出力回路42と、を備える。
参照面38は、走査によっても、被測定面24に対する位置及び姿勢が変化しないように保持される。参照面38として光波干渉計の参照鏡を設けている。
光波干渉式変位センサ20は、レーザ光(可干渉光)50を参照面38に入射して得られた参照面38での反射光52と、該参照面38に入射したレーザ光50のうち該参照面38を透過したレーザ光50を探針12背面に入射して得られた該探針12背面での反射光54とを、該参照面38で干渉させた際の干渉信号56を探針変位信号26として出力する。
【0020】
本実施形態にかかる形状測定装置10は概略以上のように構成され、以下にその作用について説明する。
本実施形態においては、変位センサ20が、走査によっても、被測定面24に対する位置及び姿勢が変化しないように保持された参照面38の位置及び姿勢を基準に、探針12の特定部位における上下方向変位を測定しているので、被測定面24の高さ情報を正確に測定することができる。
すなわち、レーザ34からのレーザ光50を、ビームスプリッタ36を透過させて参照面38を照射する。参照面38を透過した光をレンズ40で絞ってカンチレバー14の背面を照射し、探針12の背面での反射光54を再びレンズ40を透過させる。この反射光54を参照面38で反射された参照光52と重ね合わせ、ビームスプリッタ36で反射させて干渉信号56を得る。探針12を被測定面24上で走査して得られる干渉信号56を解析し、探針12の上下変位情報を得ることにより、参照面38と被測定面24間の相対的な高さ情報を、探針12の背面を介して正確に得ることができる。
【0021】
ところで、形状測定装置においては、被測定面に対する探針の接触力を制御するため、通常は2つの変位センサ、つまり接触力を検出するための変位センサと被測定面の凹凸情報を得るための変位センサとを別々に用いることが考えられる。
これに対し、本実施形態は、変位センサ20の探針変位出力信号26から高周波成分と低周波成分とを抽出し、高周波成分より探針の接触力情報を取得し、低周波成分より被測定面の凹凸情報を得ることにより、一つの変位センサにより、探針の接触力及び変位の双方を検出することができる。
すなわち、本発明においては、探針を、高い周波数で微小振動させながら、被測定面に近づけ、このときに得られる干渉信号を処理した探針変位信号中の高周波成分の振幅(又は微小振動発生手段への加振信号と探針変位信号との位相の変化)より、探針の被測定面への接触を検出し、振動振幅(又は位相差)が一定になるように、Z軸制御手段で接触力を制御しながら、走査測定し、同時に得られる低周波成分より、被測定面の凹凸を算出している。
この結果、本実施形態においては、一つの変位センサより、探針の振動情報と、試料表面の各測定点における成分情報試料表面の高さ情報を同時に得ることができる。したがって、従来、二つ必要であった変位センサを、一つの変位センサにすることができるので、従来極めて困難であった構成の簡略化が図られるので、従来極めて困難であった、装置の低価格化も容易に図られる。
【0022】
次に前記接触力の制御方法について、具体的に説明する。ここでは一例としてカンチレバー14を共振周波数付近の一定周波数で加振し、振動の振幅変化によって接触力を検出する場合について述べる。
微小振動発生手段16に設置したカンチレバー14の探針12を微小な量、上下振動させながら被測定面24に近づけると、被測定面24に接触するか、または原子間に働く相互作用力を探針12が受け、振動の中心周波数が変化することにより、振動の振幅が変化する。そこで、探針12の振動の状態変化を検出し、それらがある一定の値となるように、Z軸制御手段17でカンチレバー14を上下動させることで、接触力を一定に保つことができる。
【0023】
次に、本実施形態にかかる形状測定装置10で得られた干渉信号56を解析して得られる探針変位信号26を図2に模式的に示す。同図では、正弦波状の凹凸形状を測定した場合の様子を示している。
同図(a)に示されるような探針変位信号26には、探針を振動させたことによって発生する微小な変位量を示す情報に、被測定面の凹凸に応じて探針が上下に変位した情報が含まれている。本実施形態においては、形状による変位に対して十分に高い周波数で探針を振動させ、探針変位信号26を高周波に変動する高周波成分66と低周波に変動する低周波成分68とに分離する。同図(b)では、探針変位信号26を高周波成分66と低周波成分68とに分離したデータを示している。
【0024】
このとき、同図(c)に示した高周波成分66の振幅Laは、接触力検出のために振動させる探針の変位量に対応する。ここで、接触力が増すと、高周波成分66の振幅LaがLa´に変化する。そこで、高周波成分66の振幅Laが一定になるように、つまり接触力に変化をもたらすカンチレバーのたわみ量が一定になるように、Z軸制御手段で、カンチレバーを上下動させて制御する。この結果、高周波成分66の振幅Laが一定になったときの低周波成分68に対応する変位データを抽出することで、接触力を一定に保ち、かつ、被測定面の凹凸によってもたらされる探針の変位量を得ることができる。
【0025】
図3には本実施形態において特徴的な信号処理機構22の具体的な構成を示すブロック図が示されている。
同図において、信号処理機構22は、分割手段70と、振動成分抽出手段72と、凹凸成分抽出手段74と、振幅検出回路(振動情報取得手段)76と、形状算出手段(凹凸情報取得手段)80と、を備える。
ここで、分割手段70は、探針変位信号出力回路42からの探針変位出力信号26を、二つに分割する。
【0026】
振動成分抽出手段72は、ハイパスフィルター(遮断周波数が探針の振動周波数の1/5〜1/10程度に設定)又はバンドパスフィルター(通過させる中心周波数が探針12の振動周波数付近に設定)よりなる。そして、振動成分抽出手段72は、分割手段70からの探針変位出力信号26中の高周波成分66のみを通す。すなわち、探針の振動は、被測定面の凹凸よりも高い周波数をもつので、探針の振動情報を得るため、振動成分抽出手段72で、探針変位信号26中の高周波成分66だけを通し、低い周波数成分をカットしている。
【0027】
凹凸成分抽出手段74は、ローパスフィルター(遮断周波数が探針の振動周波数の1/10に設定)よりなる。そして、凹凸成分抽出手段74は、分割手段70から探針変位出力信号26中の低周波成分68のみを通す。すなわち、被測定面の凹凸は、探針の振動よりも低い周波数をもつので、被測定面の凹凸情報を取得するため、凹凸成分抽出手段74で、探針変位信号26中の低周波成分68だけを通し、高い周波数成分をカットしている。
【0028】
振幅検出回路76は、振動成分抽出手段72を通して得られた高周波成分66の振幅を検出する。本実施形態においては、振幅検出回路76で検出された振幅に基づき、Z軸制御手段18が、微小振動発生手段16の上下動を行い、探針と被測定面間の距離ないし接触力の一定制御が行われる。
また、本実施形態においては、凹凸成分抽出手段74を通して得られた低周波成分68に基づき、形状算出手段80による、被測定面の凹凸算出が行われる。
【0029】
以上、本実施形態にかかる形状測定装置10によれば、一つの変位センサ20で、探針12の接触力と変位の双方を検出することができるので、従来方式、つまり探針12の接触力の検出と変位の検出とを別々の変位センサで検出していたものに比較し、構成が簡略化される。その結果、装置の低価格化も期待できる。
【0030】
本発明は前記実施形態に限定されるものでなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。例えば下記の接触力の検出方法、変位センサを用いることも可能である。
<接触力の検出方法>
すなわち、前記実施形態では、カンチレバーを共振周波数付近の一定周波数で加振し、振動の振幅変化によって接触力を検出した例について説明したが、接触力を検出する方法は、これに限られるものでなく、光てこを利用した、AFMで用いられる接触力の検出方法を用いても良い。具体的には、カンチレバーを一定周波数で加振し、加振信号とカンチレバーの振動との位相差を検出する方法や、カンチレバーを自励振動させ、共振周波数からの周波数シフト量を検出する方法がある。
【0031】
<変位センサ>
また、前記実施形態では、本発明の変位センサとして、光波干渉式の変位センサを用いた例について説明したが、図4に示されるような静電容量式のものを用いることも好ましい。前記図1と対応する部分には符号100を加えて示し説明を省略する。
同図において、静電容量式の変位センサ120は、二つの平面電極182a,182bを備える。参照面138に一方の平面電極182aを設け、探針114の特定部位に他方の平面電極182bを設けている。そして、静電容量式の変位センサ120により、平面電極182a,182b間の静電容量変化を測定し、静電容量信号156を出力する。探針変位信号出力回路142は、静電容量信号156に基づき、探針変位信号126を出力する。
同図においても、一つの静電容量式の変位センサ120で、探針114の接触力及び変位の双方を検出することができるので、構成が簡略化され、装置の低価格化も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態にかかる形状測定装置の概略構成の説明図である。
【図2】前記図1に示した形状測定装置で得られる探針変位信号の模式図である。
【図3】前記図1に示した信号処理機構の具体的な構成を示すブロック図である。
【図4】前記図1に示した変位センサの変形例である。
【図5】形状測定装置の一例である原子間力顕微鏡の原理図である。
【符号の説明】
【0033】
10,110 形状測定装置
12,112 探針
14,114 カンチレバー
16,116 微小振動発生手段
17,117 Z軸制御手段(上下動制御手段)
18,118 走査手段
20,120 変位センサ
22,122 信号処理機構
38,138 参照面(基準部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に振動しながら、被測定面上を走査するための探針と、
前記探針を上下方向に振動させる微小振動発生手段と、
前記被測定面と探針間の距離ないし接触力が一定となるように、該探針を上下動する上下動制御手段と、
前記探針を前記被測定面上で走査する走査手段と、
前記探針の上下方向変位を測定し、探針変位信号を出力する変位センサと、
前記探針を振動させながら被測定面に近づけた際の、前記変位センサからの探針変位出力信号中の探針振動に対応する高周波成分より、該被測定面と探針間の距離情報ないし接触力情報を取得し、該距離ないし接触力を一定に保つように、該被測定面上を走査した際の、該探針変位出力信号中の被測定面凹凸に対応する低周波成分より、該被測定面の凹凸情報を取得する信号処理機構と、
を備えたことを特徴とする形状測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の形状測定装置において、
前記微小振動発生手段は、前記探針を、前記被測定面の形状検出のためのサンプリング周波数よりも高い周波数で、振動させることを特徴とする形状測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の形状測定装置において、
前記信号処理機構は、前記変位センサからの探針変位出力信号を分割する分離手段と、
前記分離手段で分割された探針変位出力信号から、前記探針の振動に対応する高周波成分を抽出する振動成分抽出手段と、
前記分離手段で分割された探針変位出力信号から、前記被測定面の凹凸に対応する低周波成分を抽出する凹凸成分抽出手段と、
前記振動成分抽出手段により得られた高周波成分より、前記探針の振動情報を取得する振動情報取得手段と、
前記凹凸成分抽出手段により得られた低周波成分より、前記被測定面の凹凸情報を取得する凹凸情報取得手段と、
を備えたことを特徴とする形状測定装置。
【請求項4】
請求項3記載の形状測定装置において、
前記振動成分抽出手段は、前記探針変位信号中の、前記探針の振動に対応する高周波成分のみを通すハイパスフィルター又はバンドパスフィルターを含み、
前記凹凸成分抽出手段は、前記探針変位信号中の、前記被測定面の凹凸に対応する低周波成分のみを通すローパスパスフィルターを含むことを特徴とする形状測定装置。
【請求項5】
請求項4記載の形状測定装置において、
前記ハイパスフィルターは、その遮断周波数がおおむね前記探針の振動周波数の1/5〜1/10に設定されたものであり、
前記バンドパスフィルターは、その通過させる中心周波数がおおむね前記探針の振動周波数に設定されたものであり、
前記ローパスフィルターは、その遮断周波数がおおむね前記探針の振動周波数の1/10に設定されたものであることを特徴とする形状測定装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の形状測定装置において、
前記変位センサは、前記走査によっても、前記被測定面に対する位置及び姿勢が変化しないように保持された基準部材を含み、
前記変位センサにより、前記基準部材の位置及び姿勢を基準に、前記探針の特定部位における上下方向変位を測定することを特徴とする形状測定装置。
【請求項7】
請求項6記載の形状測定装置において、
前記変位センサは、光波干渉式変位センサであり、
前記基準部材に前記光波干渉計の参照鏡を参照面として設け、
前記参照面に入射して得られた該参照面での反射光と、該参照面を透過し該探針特定部位に入射して得られた該探針特定部位での反射光とを、該参照面で干渉させた際の干渉信号を前記探針変位信号として出力することを特徴とする形状測定装置。
【請求項8】
請求項6記載の形状測定装置において、
前記変位センサは、静電容量式変位センサであり、
前記基準部材及び前記探針の特定部位に平面電極が対向配置され、該基準部材と探針特定部位間の静電容量変化に基づく前記探針変位信号を出力することを特徴とする形状測定装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の形状測定装置において、
前記探針は可撓性を有するカンチレバーの自由端に設けられており、該探針が前記被測定面に接触した状態で該被測定面の凹凸に応じて上下方向に変位することを特徴とする形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−25126(P2009−25126A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188070(P2007−188070)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】