説明

形状記憶性樹脂製雄型締結体およびその製造方法

【課題】十分な締結力を保持し、かつ、形状回復温度以上への加温による締結機能の消失が確実である形状記憶性樹脂製雄型締結体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】形状記憶性樹脂製雄型締結体1は、外面に形成された雄ねじ部23を有する柱状シャフト部2を備える。締結体1は、シャフト部2の中心軸に対して平行に延び、かつシャフト部2の中心軸から外面までの距離が長い複数の長径部21と、長径部21間に位置し、長径部21より中心軸からの距離が短い複数の短径部22と、長径部21の外面に形成された雄ねじ部23とを備える締結用形態と、所定温度以上に加温されることにより発現する締結機能消失形態とを有する。締結機能消失形態では、シャフト部2は、短径部22の半径a2より大きく、長径部21の半径a1より小さい半径a3を有するほぼ円柱状であり、外面に雄ねじ部を持たない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外面に形成された雄ねじ部を有する形状記憶性樹脂製雄型締結体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの製品において、多くの締結体が利用されている。締結体としては、雄ねじ部を有する雄型締結体であるねじ、ボルトなどがある。部品などを本体に締結する場合には、ねじを締め付ける方向に回して部品などが固定される。また、修理、解体時には、ねじを弛める方向に回して部品などを本体より離脱させる。
近年では、資源および環境問題などより、製品のリサイクル化が促進されており、製品として、解体の容易さが求められるようになってきている。製品のリサイクルを容易なものとするためには、締結体の離脱の容易さが必要である。
そして、形状記憶素材によって製造されたねじが提案されている。形状記憶素材とは、熱を加えることによって形状回復温度に達すると、予め形状記憶された状態に戻る性質を有する素材であって、形状記憶性樹脂、形状記憶合金と呼ばれるものがある。
そして、本件出願人は、特開2003−145564(特許文献1)において、形状記憶性樹脂を用いた締結体を提案している。この締結体は、形状記憶ポリマーからなる締結体であり、ポリウレタン系形状記憶ポリマー部分に、締結機能を発揮する、凸部、凹部、凹凸部、ねじ部、および、傾斜部からなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の形状を設けたものである。さらに、締結体として、ポリウレタン系形状記憶ポリマーからなる締結機能部を有し、該締結機能部における外径をd1、二次賦形前の外径をd0とし、嵌合相手となる雌形締結体の締結機能部、あるいは嵌合部の内径をD1としたときに、下式(1)及び(2)
d0 < D1 (1)、d1 > D1 (2) を同時に満たすように、該締結機能部を設けることも提案している。
また、特開2004−190837(特許文献2)には、形状回復温度と形状回復方向がほぼ同一である形状記憶素材から雄ねじおよび雌ねじが形成され、雄ねじと雌ねじの螺合によって被締結部品A,Bの締結を行う。そして、雄ねじが形状回復した際の雄ねじ母材2Aのねじ形成部22Aは、ネジのない、雄ねじのネジの有効径と略同等の外径d2の筒状となり、雌ねじが形状回復した際の雌ねじ母材3Aのねじ形成部32Aは、ネジのない、雌ねじのネジの有効径と略同等の穴径D2の穴状となるものが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−145564
【特許文献2】特開2004−190837
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および2のものも有効ではあるが、特許文献2のものでは、雌ねじを有する雌形締結部も形状記憶材料により形成し、かつ適宜の塑性変形処理をなければならないという制約がある。
形状記憶性樹脂により、雄形締結体を形成する場合、締結機能を持たない形態の締結体基材を成形した後、形状記憶性樹脂の形状回復温度もしくはガラス転移温度以下の温度条件化において、締結機能(例えば、雄ねじ部)を付与する塑性変形工程を行うことが必要である。この塑性変形工程における塑性変形度が高いほど、塑性変形前の形状への復元率が低下する。しかし、塑性変形度が小さすぎると、形状復元した状態において、締結対象である雌形締結体より離脱しない状態が発生する。
そこで、本発明は、形状記憶性樹脂を用いた雄形締結体において、その形態を改良することにより、十分な締結力を保持し、かつ、形状回復温度以上への加温により、締結機能が確実に消失し、締結対象の雌形締結体より容易かつ確実に離脱することができる形状記憶性樹脂製雄型締結体およびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 外面に形成された雄ねじ部を有する柱状シャフト部を少なくとも備える形状記憶性樹脂製雄型締結体であって、
該雄型締結体は、前記シャフト部の中心軸に対して平行に延び、かつ前記シャフト部の中心軸から外面までの距離が長く、さらに向かい合うように2つもしくは前記シャフト部の中心軸に対してほぼ等角度となるよう設けられた複数の長径部と、前記シャフト部の中心軸に対して平行に延びかつ前記複数の長径部間に位置し、さらに、前記シャフト部の中心軸から外面までの距離が前記長径部より短い複数の短径部と、前記複数の長径部の外面に形成された前記雄ねじ部とを備える締結用形態と、所定温度以上に加温されることにより発現する締結機能消失形態とを有するものであり、該締結機能消失形態では、前記シャフト部は、前記短径部の半径より大きく、かつ、前記長径部の半径より小さい半径を有するほぼ円柱状であり、かつ外面に実質的に雄ねじ部を持たないものである形状記憶性樹脂製雄型締結体。
【0006】
(2) 前記形状記憶性樹脂は、動的粘弾性測定における損失正接値のピークとなる第1の損失正接ピーク温度を有する第1の形状記憶性ポリマーと、前記第1の形状記憶性ポリマーと相溶性を有し、かつ動的粘弾性測定における損失正接値のピークが前記第1の損失正接ピーク温度よりも高い第2の損失正接ピーク温度を有する第2の形状記憶性ポリマーとの混合物からなるものである上記(1)に記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体。
(3) 前記形状記憶性樹脂は、非晶性ポリエチレンテレフタレートと、非晶性ポリエチレンナフタレート、低結晶性形状記憶ポリエチレンナフタレートもしくは半結晶性ポリエチレンナフタレートとの混合物である上記(2)に記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体。
【0007】
(4) 前記形状記憶性樹脂は、非晶性形状記憶性ポリマーである上記(1)に記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体。
(5) 前記非晶性形状記憶性ポリマーは、非晶性ポリエステル、非晶性スチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリチオエーテル、非晶性ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、非晶性オレフィン系樹脂、ポリフェニレンサルファイドからなる群より選択された少なくとも1種のものである上記(4)に記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体。
(6) 前記形状記憶性樹脂は、非晶性ポリエチレンテレフタレート、非晶性ポリエチレンナフタレート、低結晶性形状記憶ポリエチレンナフタレートもしくは半結晶性ポリエチレンナフタレートのいずれかである上記(1)に記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体。
【0008】
(7) 前記雄型締結体は、前記シャフト部の一端に形成された頭部を備えている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体。
(8) 前記締結用形態における前記シャフト部は、楕円柱状であり、長径部分により向かい合う2つの長径部が形成されており、短径部分において向かい合う2つの短径部が形成されている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体。
(9) 前記締結用形態における前記シャフト部は、略正多角柱状であり、角部により前記シャフト部の中心軸に対してほぼ等角度となるよう複数形成された長径部が形成されており、各隣り合う長径部の中間部が短径部となっている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体。
【0009】
(10) 前記締結用形態における前記シャフト部は、略円柱状であり、かつ、前記シャフト部の中心軸に対して平行かつ向かい合うように2つもしくは前記シャフト部の中心軸に対してほぼ等角度となるよう複数形成された軸方向に延びる凹部を備え、該凹部により前記短径部が形成されており、該凹部間により前記長径部が形成されている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体。
(11) 前記雄型締結体は、前記締結用形態における前記長径部の前記雄ねじ部と螺合可能であり、かつ、前記締結機能消失形態における前記シャフト部と係合しない有効内径を有する雌ねじ部を有する雌形締結体に使用されるものである上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体。
(12) 前記締結機能消失形態となる前記所定温度は、50℃〜160℃である上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体。
(13) 前記形状記憶性樹脂は、ガラス繊維もしくは炭素繊維を含有している上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体。
【0010】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(14) 前記(1)ないし(13)のいずれかに記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体の製造方法であって、
前記形状記憶性樹脂を射出成形することにより、前記短径部の半径より大きく、かつ、前記長径部の半径より小さい半径を有するほぼ円柱状であり、かつ外面に雄ねじ部を持たない柱状シャフト部を有する締結体基材を成形し、
複数に分割されるとともに、内部に前記締結体基材の前記シャフト部を収納可能かつ収納した状態にて狭圧することにより、前記締結体基材の前記シャフト部に、該シャフト部の中心軸に対して平行に延び、かつ前記シャフト部の中心軸から外面までの距離が短い複数の短径部と、前記シャフト部の中心軸に対して平行に延び、かつ前記シャフト部の中心軸から外面までの距離が前記短径部より長く、さらに向かい合うように2つもしくは前記シャフト部の中心軸に対してほぼ等角度となるよう複数形成された長径部と、該複数の長径部の外面に雄ねじ部とを有する締結用形態に前記シャフト部を塑性変形可能な成型用型を用いて、前記形状記憶性樹脂性雄型締結体の形状回復温度以下の温度条件にて、前記雄型締結体基材の前記シャフト部を塑性変形させる形状記憶性樹脂製雄型締結体の製造方法。
(15) 前記成型用型は、複数に分割された成型ダイスを備え、各成型ダイスは、シャフト部成形用内面を備えるとともに該シャフト部成形用内面の長手方向に延びる所定部位には、雄ねじ形成用溝が設けられており、かつ雄ねじ形成用溝の側部は、前記シャフト部成形用内面の長手方向に延びる雄ねじ形成用溝非形成部となっている上記(14)に記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の形状記憶性樹脂製雄型締結体は、形状記憶性樹脂により成形されるとともに、外面に形成された雄ねじ部を有する柱状シャフト部を備え、該雄型締結体は、前記シャフト部の中心軸に対して平行に延び、かつ前記シャフト部の中心軸から外面までの距離が長く、さらに向かい合うように2つもしくは前記シャフト部の中心軸に対してほぼ等角度となるよう設けられた複数の長径部と、前記シャフト部の中心軸に対して平行に延びかつ前記複数の長径部間に位置し、さらに、前記シャフト部の中心軸から外面までの距離が前記長径部より短い複数の短径部と、前記複数の長径部の外面に形成された前記雄ねじ部とを備える締結用形態と、所定温度以上に加温されることにより発現する締結機能消失形態とを有するものであり、該締結機能消失形態では、前記シャフト部は、前記短径部の半径より大きく、かつ、前記長径部の半径より小さい半径を有するほぼ円柱状であり、かつ外面に実質的に雄ねじ部を持たないものとなっている。
特に、この形状記憶性樹脂製雄型締結体では、シャフト部は、締結機能消失形態時において、ほぼ円柱状であり、締結用形態時において非円柱状となっているとともに、シャフト部の全面に雄ねじ部を備えないものとなっている。このため、シャフト部に締結機能付与のために付加された塑性変形度が低く、使用する形状記憶性樹脂の形状回復温度以上に加温することにより、確実に締結機能消失形態に変態することが可能である。よって、締結対象の雌形締結体より容易かつ確実に離脱させることができる。
【0012】
また、本発明の形状記憶性樹脂製雄型締結体の製造方法は、上記の形状記憶性樹脂製雄型締結体の製造方法であるとともに、前記形状記憶性樹脂を射出成形することにより、前記短径部の半径より大きく、かつ、前記長径部の半径より小さい半径を有するほぼ円柱状であり、かつ外面に雄ねじ部を持たない柱状シャフト部を有する締結体基材を成形し、複数に分割されるとともに、内部に前記締結体基材の前記シャフト部を収納可能かつ収納した状態にて狭圧することにより、前記締結体基材の前記シャフト部に、該シャフト部の中心軸に対して平行に延び、かつ前記シャフト部の中心軸から外面までの距離が短い複数の短径部と、前記シャフト部の中心軸に対して平行に延び、かつ前記シャフト部の中心軸から外面までの距離が前記短径部より長く、さらに向かい合うように2つもしくは前記シャフト部の中心軸に対してほぼ等角度となるよう複数形成された長径部と、該複数の長径部の外面に雄ねじ部とを有する締結用形態に前記シャフト部を塑性変形可能な成型用型を用いて、前記形状記憶性樹脂性雄型締結体の形状回復温度以下の温度条件にて、前記雄型締結体基材の前記シャフト部を塑性変形させるものである。
よって、上記の使用する形状記憶性樹脂の形状回復温度以上に加温することにより、確実に締結機能消失形態に変態することが可能な締結体を容易かつ確実に製造することができ、かつ、シャフト部形態の設計も容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明の形状記憶性樹脂製雄型締結体をボルトに応用した実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の形状記憶性樹脂製雄型締結体をボルトに応用した実施例の正面図である。図2は、図1に示したボルトの右側面図である。図3は、図1のA−A線断面図である。図4は、図1のB−B線断面図である。図5は、図1に示したボルトの拡大底面図である。図6は、図1に示したボルトの斜視図である。
図7は、図1に示した形状記憶性樹脂製雄型締結体に用いられる締結体基材の正面図である。図8は、図7に示した締結体基材の底面図である。図9は、図7に示した締結体基材の斜視図である。
図10は、本発明の形状記憶性樹脂製雄型締結体の締結状態を示す断面図である。図11は、図10のC−C線断面図である。図12は、図10に示した雄型締結体を加温し、締結機能消失形態とした状態の断面図である。
【0014】
本発明の形状記憶性樹脂製雄型締結体1は、形状記憶性樹脂により成形されるとともに、外面に形成された雄ねじ部23を有する柱状シャフト部2を少なくとも備える。雄型締結体1は、シャフト部2の中心軸に対して平行に延び、かつシャフト部2の中心軸から外面までの距離が長く、さらに向かい合うように2つもしくはシャフト部2の中心軸に対してほぼ等角度となるように設けられた複数の長径部21と、シャフト部2の中心軸に対して平行に延びかつ複数の長径部21間に位置し、さらに、シャフト部2の中心軸から外面までの距離が長径部21より短い複数の短径部22と、長径部21の外面に形成された雄ねじ部23とを備える締結用形態と、所定温度以上に加温されることにより発現する締結機能消失形態とを有する。締結機能消失形態では、シャフト部2は、短径部22の半径a2より大きく、かつ、長径部21の半径a1より小さい半径a3を有するほぼ円柱状であり、かつ外面に実質的に雄ねじ部を持たないものである。
【0015】
図1ないし図6に示す実施例の雄型締結体(ボルト)について説明する。
この形状記憶性樹脂製締結体である形状記憶性樹脂製ボルト1は、締結用形態と締結機能消失形態を備える。締結用形態とは、締結体を締結体として用いる状態における形態であり、締結機能消失形態とは、ボルト1を使用する形状記憶性樹脂の動的粘弾性測定における損失正接値のピークとなる損失正接ピーク温度(形状回復温度)以上に加温することにより発現する形態であり、ボルトを締結対象部より離脱する際の形態である。
締結用形態において、ボルト1は、柱状シャフト部2と、シャフト部2の一端に形成された頭部3を備える。そして、締結用形態におけるシャフト部2は、楕円柱状であり、長径部分により向かい合う2つの長径部21が形成されており、2つの長径部21間に位置する短径部分において、向かい合う2つの短径部22が形成されている。そして、向かい合う2つの長径部21の表面には、雄ねじ部23が形成されている。そして、短径部22の表面は、図1および図6に示すように、雄ねじ部が形成されていない雄ねじ部非形成部(具体的には、平坦部)となっている。
【0016】
この実施例のボルト1では、長径部21は、シャフト部2の中心軸に対して平行にかつシャフト部2の全長にわたり形成されている。同様に、短径部22もシャフト部2の中心軸に対して平行にかつシャフト部2の全長にわたり形成されている。また、頭部3の上面には、締結用具接続用凹部31が形成されている。
そして、形状記憶性樹脂製ボルト1は、使用する形状記憶性樹脂の損失正接ピーク温度(形状回復温度)以上に加温することにより、締結機能消失形態に移行する。
締結機能消失形態では、図7、図8および図9に示す形態となる。具体的には、頭部3は、実質的に変化せず、柱状シャフト部2は、楕円柱状から、ほぼ円柱状のシャフト部2aに変化し、かつ、その表面に存在していた雄ねじ部が消失する。これにより、ボルト1は、締結機能を失うものとなる。
【0017】
そして、図5を用いて説明する。なお、図5における補助線24は、短径部22を半径とする円を示すものであり、補助線25は、締結機能消失形態におけるシャフト部2aの外径を示すものであり、補助線26は、締結対象の雌形締結体4の内径を示すものである。図5に示すように、締結機能消失形態におけるシャフト部2aの半径a3は、締結用形態における短径部22の半径a2より大きく、かつ、長径部21の半径a1より小さいものとなっている。よって、長径部21の半径a1、短径部22の半径a2、締結機能消失形態におけるシャフト部2aの半径a3は、a1>a3>a2の関係を有するものとなる。a1は、a2の1.5〜2.0倍程度であることが好ましく、a3は、a1の0.7〜0.9倍程度であることが好ましい。また、短径部22の幅(言い換えれば、平坦部の幅)は、長径部21の半径a1より小さいものとなっている。短径部22の幅は、長径部21の半径a1の0.6〜0.9倍程度であることが好ましい。
【0018】
そして、この締結体(ボルト)は、締結用形態における長径部21の雄ねじ部23と螺合可能であり、かつ、締結機能消失形態におけるシャフト部2aと係合しない、言い換えれば、締結機能消失形態におけるシャフト部2aの半径a3より大きい有効内径a4(図12参照)を有する雌ねじ部を備える雌形締結体4に使用される。
よって、長径部21の半径a1、短径部22の半径a2、締結機能消失形態におけるシャフト部2aの半径a3、使用対象の雌形締結体4の雌ねじ部の有効半径a4は、a1>a4>a3>a2の関係を有するものとなる。
【0019】
次に、本発明の形状記憶性樹脂製締結体1の作用を図10ないし図12を用いて説明する。
この例では、形状記憶性樹脂製締結体であるボルト1は、本体部材7に取付対象部材6を固定するため用いられている。本体部材7には、凹部(ボス)7aが設けられており、この凹部7aには、ボルト1と螺合可能な雌型締結体であるナット4が埋設されている。また、この例では、ボルト1の頭部3と取付対象部材6間には、第1の座金5aが、また、取付対象部材6と雌型締結体(ナット)4間には、第2の座金5bが配置されている。
【0020】
そして、図10に示すように、ボルト1は、ナット4に締結された状態において、ボルト1の長径部21の表面に形成された雄ねじ部23は、ナット4の内面に形成された雌ねじ部41と螺合している。そして、図10のC−C線断面図である図11に示すように、ボルト1の短径部22の表面は、ナット4に締結された状態において、ナット4の内面に形成された雌ねじ部41と所定距離離間し、接触しないものとなっている。よって、ボルト1は、長径部のみにおいて締結機能を発揮し、短径部では、締結に寄与しないものとなっている。
そして、形状記憶性樹脂製締結体であるボルト1をその形状回復温度以上に加温すると、図12に示すように、シャフト部は、短径部22の半径a2より大きく、かつ、長径部21の半径a1より小さく、かつ、ナット4の有効半径よりも小さい半径を有するほぼ円柱状に変形するとともに、外面に形成されていた雄ねじ部は、消失する。これにより、ボルト1は、締結機能を喪失し、本体部材7への取付対象部材6の固定を解除するとともに、シャフト部2aの半径は、ナット4の有効半径よりも小さいため、ナットより容易に離脱することが可能となる。
【0021】
次に、図13ないし図18に示す実施例の雄型締結体(ボルト)について説明する。
図13は、本発明の雄型締結体をボルトに応用した他の実施例の正面図である。図14は、図13に示したボルトの右側面図である。図15は、図13のD−D線断面図である。図16は、図13のE−E線断面図である。図17は、図13に示したボルトの拡大底面図である。図18は、図13に示したボルトの斜視図である。
【0022】
この実施例の雄型締結体(ボルト)50と上述した雄型締結体(ボルト)1との相違は、柱状シャフト部の形態のみである。
この実施例の形状記憶性樹脂製ボルト50も上述したボルト1と同様に、締結用形態と締結機能消失形態を備える。締結用形態とは、締結体を締結体として用いる状態における形態であり、締結機能消失形態とは、ボルトを使用する形状記憶性樹脂の損失正接ピーク温度(形状回復温度)以上に加温することにより発現する形態であり、ボルトを締結対象部より離脱する際の形態である。
締結用形態において、ボルト50、柱状シャフト部52と、シャフト部52の一端に形成された頭部3を備える。そして、締結用形態におけるシャフト部52は、略正多角柱状であり、角部によりシャフト部52の中心軸に対してほぼ等角度となるよう複数形成された長径部21が形成されており、各隣り合う長径部21の中間部が短径部22となっている。そして、各長径部21の表面には、雄ねじ部23が形成されている。そして、短径部22の表面は、図13ないし図16および図18に示すように、雄ねじ部が形成されていない雄ねじ部非形成部(具体的には、平坦部)となっている。
【0023】
この実施例のボルト50では、長径部21は、シャフト部52の中心軸に対して平行にかつシャフト部52の全長にわたり形成されている。同様に、短径部22もシャフト部52の中心軸に対して平行にかつシャフト部52の全長にわたり形成されている。また、頭部3の上面には、締結用具接続用凹部31が形成されている。
また、この実施例のボルト50では、シャフト部52は、略正三角柱状となっており、3つの角部によりシャフト部52の中心軸に対してほぼ等角度となるように3つ形成された長径部21が形成されており、各隣り合う長径部21の中間部により、3つの短径部22が形成されている。また、長径部である角部は、面取りされた形態となっている。具体的には、この実施例のボルト50は、図17に示すように、3つの長径部(角部)21a,21b,21cを備え、長径部21a,21b,21cには、雄ねじ部23a,23b,23cが設けられている。そして、長径部(角部)21aと長径部21b間には、短径部22bが形成されており、同様に、長径部(角部)21bと長径部21c間には、短径部22cが形成されており、長径部(角部)21cと長径部21a間には、短径部22aが形成されている。この実施例では、各長径部間の中央部が、最短径部となっている。
【0024】
なお、シャフト部52を形成する多角柱としては、正多角柱であることが好ましい。また、シャフト部52を形成する多角柱としては、上記の三角柱に限定されるものではなく、3〜6角柱であること好ましい。
そして、形状記憶性樹脂製ボルト50は、使用する形状記憶性樹脂の損失正接ピーク温度(形状回復温度)以上に加温することにより、締結機能消失形態に移行する。締結機能消失形態では、図7、図8および図9に示す形態となる。具体的には、頭部3は、実質的に変化せず、柱状シャフト部52は、略三角柱状から、ほぼ円柱状のシャフト部2aに変化し、かつ、その表面に存在していた雄ねじ部も消失する。これにより、ボルト50は、締結機能を失うものとなる。
【0025】
そして、図17を用いて説明する。なお、図17における補助線25は、締結機能消失形態におけるシャフト部2aの外径を示すものであり、補助線26は、締結対象の雌形締結体4の内径を示すものである。図17に示すように、ボルト50において、締結機能消失形態におけるシャフト部2aの半径a3は、締結用形態における短径部22の半径b2より大きく、かつ、長径部21の半径b1(中心点からの円弧頂点までの距離)より小さいものとなっている。よって、長径部21の半径b1、短径部22の半径b2、締結機能消失形態におけるシャフト部2aの半径a3は、b1>a3>b2の関係を有するものとなる。b1は、b2の1.5〜2.0倍程度であることが好ましく、a3は、b2の1.0〜1.5倍程度であることが好ましい。また、短径部22の幅(言い換えれば、平坦部の幅)は、長径部21の半径b1より小さいものとなっている。短径部22の幅は、長径部21の半径b1の1.0〜1.5倍程度であることが好ましい。
そして、この締結体(ボルト)50は、上述したボルト1と同様に、締結用形態における長径部21の雄ねじ部23と螺合可能であり、かつ、締結機能消失形態におけるシャフト部2aと係合しない、言い換えれば、締結機能消失形態におけるシャフト部2aの半径a3より大きい有効内半径a4(図12参照)を有する雌ねじ部を備える雌形締結体4に使用される。
よって、長径部21の半径b1、短径部22の半径b2、締結機能消失形態におけるシャフト部2aの半径a3、使用対象の雌形締結体4の雌ねじ部の有効内半径a4は、b1>a4>a3>b2の関係を有するものとなる。
【0026】
次に、図19ないし図23に示す実施例の雄型締結体(ボルト)について説明する。
図19は、本発明の雄型締結体をボルトに応用した他の実施例の正面図である。図20は、図19に示したボルトの側面図である。図21は、図19のF−F線断面図である。図22は、図19に示したボルトの拡大底面図である。図23は、図19に示したボルトの斜視図である。
この実施例の雄型締結体(ボルト)60と上述した雄型締結体(ボルト)1との相違は、柱状シャフト部の形態のみである。
【0027】
この実施例の形状記憶性樹脂製ボルト60も上述したボルト1と同様に、締結用形態と締結機能消失形態を備える。締結用形態とは、締結体を締結体として用いる状態における形態であり、締結機能消失形態とは、ボルトを使用する形状記憶性樹脂の損失正接ピーク温度(形状回復温度)以上に加温することにより発現する形態であり、ボルトを締結対象部より離脱する際の形態である。
締結用形態において、ボルト60、柱状シャフト部62と、シャフト部62の一端に形成された頭部3を備える。そして、締結用形態におけるシャフト部62は、略円柱状であり、かつ、シャフト部62の中心軸に対して平行かつ向かい合うように2つもしくはシャフト部の中心軸に対してほぼ等角度となるよう複数形成された軸方向に延びる凹部を備え、凹部により短径部22が形成されており、凹部22間により長径部21が形成されている。そして、各長径部21の表面には、雄ねじ部23が形成されている。そして、短径部22の表面は、図19、図20および図23に示すように、雄ねじ部が形成されていない雄ねじ部非形成部(具体的には、平坦部)となっている。
【0028】
この実施例のボルト60では、長径部21は、シャフト部62の中心軸に対して平行にかつシャフト部62の全長にわたり形成されている。同様に、短径部22もシャフト部62の中心軸に対して平行にかつシャフト部62の全長にわたり形成されている。また、頭部3の上面には、締結用具接続用凹部31が形成されている。
また、この実施例のボルト60では、シャフト部62は、略円柱状となっており、シャフト部62の中心軸に対してほぼ等角度となるように3つ形成された軸方向に延びる凹部が形成されており、この凹部により3つの短径部22が形成されるとともに、凹部となっていない軸方向に延びる部分により3つの長径部21が形成されており、この3つの長径部21もシャフト部62の中心軸に対してほぼ等角度となっている。なお、シャフト部62に形成される凹部(短径部)の数としては、上記の3つのものに限定されるものではなく、3〜6であることが好ましい。
そして、形状記憶性樹脂製ボルト60は、使用する形状記憶性樹脂の損失正接ピーク温度(形状回復温度)以上に加温することにより、締結機能消失形態に移行する。結機能消失形態では、図7、図8および図9に示す形態となる。具体的には、頭部3は、実質的に変化せず、柱状シャフト部62は、上述した形状から、ほぼ円柱状のシャフト部2aに変化し、かつ、その表面に存在していた雄ねじ部が消失する。これにより、ボルト60は、締結機能を失うものとなる。
【0029】
そして、図22を用いて説明する。なお、図22における補助線25は、締結機能消失形態におけるシャフト部2aの外径を示すものであり、補助線26は、締結対象の雌形締結体4の内径を示すものである。図22に示すように、ボルト60において、締結機能消失形態におけるシャフト部62の半径a3は、締結用形態における短径部22の半径c2より大きく、かつ、長径部21の半径c1より小さいものとなっている。よって、長径部21の半径c1、短径部22の半径c2、締結機能消失形態におけるシャフト部2aの半径a3は、c1>a3>c2の関係を有するものとなる。c1は、c2の1.4〜2.2倍程度であることが好ましく、a3は、c1の0.7〜0.9倍程度であることが好ましい。また、短径部22の幅(言い換えれば、平坦部の幅)は、長径部21の半径c1より小さいものとなっている。短径部22の幅は、長径部21の半径c1の0.4〜0.8倍程度であることが好ましい。
【0030】
そして、この締結体(ボルト)60は、上述したボルト1と同様に、締結用形態における長径部21の雄ねじ部23と螺合可能であり、かつ、締結機能消失形態におけるシャフト部62と係合しない、言い換えれば、締結機能消失形態におけるシャフト部2aの半径a3より大きい有効内半径a4(図12参照)を有する雌ねじ部を備える雌形締結体4に使用される。
よって、長径部21の半径c1、短径部22の半径c2、締結機能消失形態におけるシャフト部2aの半径a3、使用対象の雌形締結体4の雌ねじ部の有効半径a4は、c1>a4>a3>c2の関係を有するものとなる。
そして、本発明の形状記憶性樹脂製雄型締結体は、形状記憶性樹脂により成形されている。そして、本発明の形状記憶性樹脂製雄型締結体における締結機能消失形態となる温度は、50℃〜160℃であることが好ましい。
【0031】
形状記憶性樹脂としては、公知のものを使用することができる。
なお、ここでいう形状記憶性樹脂とは、直径5.3mm、高さ7.8mmの円柱状に射出成形により成形した後、樹脂組成物の損失正接ピーク温度より低い温度条件にて、高さが1/2になるように圧縮して所定時間放置した後、樹脂組成物の損失正接ピーク温度より高い温度に加温することにより、成形時の高さの90%以上の高さに復元するものを示すものである。
ポリマーのような粘弾性体は、理想弾性体と理想粘性体の中間の性質を示す。ポリマーに正弦波の形で応力を与えた場合、応力波形と歪波形の間には0°〜90°の範囲で位相差δが生じる。なお、理想弾性体では位相差が零であり、理想粘性体は応力に対して歪みは90°(π/2)遅れて検出される。
【0032】
粘弾性の応力と歪みの関係は、図30に示す複素平面上のベクトルとして表すことが出来る。
E*は、複素弾性率と呼ばれ、応力と歪みの振幅比に相当する。δは位相差である。
E’は、貯蔵弾性率と呼ばれ、試料の弾性としての特性を反映し、1周期あたりに加えられた応力が貯蔵され完全に回復するエネルギーの尺度である。
E’’は、損失弾性率と呼ばれ、試料の粘性としての特性を反映し、1周期あたりに加えられた応力が熱として損失(消費)されるエネルギーの尺度である。
tanδは、損失正接と呼ばれ、貯蔵弾性率と損失弾性率の比で表す。つまり与えられた力学的なエネルギーに対する熱として損失されたエネルギーの割合を示すもので、粘弾性特性の一つとして振動吸収性を表している。
【0033】
つまり、動的粘弾性測定において得られる損失正接値は、被検材料に正弦的に繰り返す引張方向の応力、及び歪みを与えた時に、その応答として得られる損失弾性率の貯蔵弾性率に対する比の値として表される。損失正接は、被検材料中の分子の束縛状態を示しており、損失正接値が大きくなるほど分子の束縛が緩くなることを示している。なお、この動的粘弾性により得られる値は、測定方法や条件により変化するが、本発明においては、10×50×2〜4mmの板状試験片を、測定温度範囲:室温〜200℃、設定昇温速度:2℃/分、測定周波数:1Hzの条件で固体粘弾性測定したものである。
【0034】
そして、形状記憶性ポリマーとしては、非晶性形状記憶性ポリマー、低結晶性形状記憶性ポリマーもしくは半結晶性形状記憶性ポリマーを用いることが好ましい。このような結晶性の低い形状記憶性ポリマーを用いることにより、形状回復が良好なものとなる。また、非晶性形状記憶性ポリマー、低結晶性形状記憶性ポリマーおよび半結晶性形状記憶性ポリマーは、JISK7122による結晶融解に伴う潜熱が2.1J/g以下の樹脂であることが好ましい。
形状記憶性ポリマーとしては、ポリエステル、スチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリチオエーテル、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、オレフィン系樹脂、ポリフェニレンサルファイドなどが使用される。
ポリエステルとしては、非晶性ポリエチレンテレフタレート、半結晶性ポリエチレンナフタレートもしくは低結晶性ポリエチレンナフタレートが好適である。非晶性ポリエチレンテレフタレートの損失正接ピーク温度は、約70℃である。半結晶性ポリエチレンナフタレートは、非晶性ポリエチレンテレフタレートより約40℃程度高い損失正接ピーク温度を有し、その損失正接ピーク温度は、約110℃である。そして、両者は、相溶性を有する。
【0035】
また、形状記憶性樹脂は、動的粘弾性測定における損失正接値のピークとなる第1の損失正接ピーク温度を有する第1の形状記憶性ポリマーと、第1の形状記憶性ポリマーと相溶性を有し、かつ動的粘弾性測定における損失正接値のピークが第1の損失正接ピーク温度よりも高い第2の損失正接ピーク温度を有する第2の形状記憶性ポリマーとの混合物からなるものであることが好ましい。
そして、第1の形状記憶性ポリマーおよび第2の形状記憶性ポリマーは、両者が相溶性を有する熱可塑性樹脂が選択される。また、第2の形状記憶性ポリマーは、第1の損失正接ピーク温度よりも高い損失正接ピーク温度を有するものが選択される。第1の形状記憶性ポリマーの損失正接ピーク温度としては、50〜160℃程度のものが好ましく、第2の形状記憶性ポリマーの損失正接ピーク温度としては、90〜220℃程度のものが好ましい。そして、第1の形状記憶性ポリマーと第2の形状記憶性ポリマーの損失正接ピーク温度の差は、30〜100℃程度であることが好ましい。また、本発明の形状記憶性樹脂組成物の損失正接ピーク温度は、70〜200℃程度であることが好ましい。
【0036】
形状記憶性樹脂組成物における第1の形状記憶性ポリマーおよび第2の形状記憶性ポリマーの配合量(配合比)は、形状記憶性樹脂組成物の目標損失正接ピーク温度、第1の形状記憶性ポリマーおよび第2の形状記憶性ポリマーの損失正接ピーク温度によって定まるものであり、一義的なものではないが、形状記憶性樹脂組成物における第1の形状記憶性ポリマーと第2の形状記憶性ポリマーの重量比は、10:2〜2:10程度が好ましく、より好ましくは、10:4〜4:10である。
そして、第1の形状記憶性ポリマーおよび第2の形状記憶性ポリマーは、相溶性を有する熱可塑性樹脂が選択される。このため、第1の形状記憶性ポリマーおよび第2の形状記憶性ポリマーは、上記の形状記憶性ポリマーより、同系統の2種のポリマーを選択することが好ましい。
【0037】
本発明の形状記憶性樹脂組成物における第1の形状記憶性ポリマーと第2の形状記憶性ポリマーとの組合せは、第1のポリエステルと第1のポリエステルと異なる第2のポリエステルの組合せであることが好適である。特に、第1の形状記憶性ポリマーと第2の形状記憶性ポリマーとの組合せは、非晶性ポリエチレンテレフタレートと半結晶性ポリエチレンナフタレートであることが好適である。この組合せによる形状記憶性樹脂組成物は、高い形状復元性を有するとともに、狭いガラス遷移温度領域を有する。狭いガラス遷移温度領域を有するため、形状記憶性樹脂組成物の損失正接ピーク温度を若干超える程度に加熱することにより、記憶形状に復元するので、復元のための加熱効率が良好であるとともに、ガラス遷移温度領域未満における不測の形状復元を起こすことがなく、形状保持および形状復元のための温度管理が容易なものとなる。また、非晶性ポリエチレンテレフタレートを用いることにより、工業的にマテリアル・リサイクルが可能である。
【0038】
非晶性ポリエチレンテレフタレートとしては、例えば、ジオール成分の50モル%以上がエチレングリコールであるジオールと、ジカルボン酸成分の50モル%以上がテレフタル酸またはそのアルキルエステルであるジカルボン酸類を重縮合して得られるホモポリマー、コポリマーまたはこれらの混合物であり、コポリマーとしては、例えば全カルボン酸類の50モル%以下の範囲で他のジカルボン酸、例えばイソフタル酸あるいはハロゲン化テレフタル酸を共重合したものや、全ジオールの50モル%以下の範囲でポリ(アルキレングリコール)具体的にはジエチレングリコールを共重合したものまたは、C3〜C12のアルキレングリコール、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールを共重合したものが挙げられる。例えば、イーストマンケミカル社製の商品名「PETG6763」(テレフタル酸からなるジカルボン酸成分と、30モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールと70モル%のエチレングリコールからなるジオール成分とを共重合したコポリエステル)、および商品名「Provista」(テレフタル酸からなるジカルボン酸成分と、30モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールと70モル%のエチレングリコールからなるジオール成分と、極めて少量の第3成分を共重合した溶融粘度が高いコポリエステル)として市販されている。
【0039】
ポリエチレンナフタレートとしては、エチレン−2,6−ナフタレート繰り返し単位から主としてなるが、それ以外にも以下に示すような成分を20モル%を超えない範囲で共重合成分として含んでいても良い。かかる共重合の酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸があげられる。また、該共重合のジオール成分としては、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族のジオールがあげられる。かかる共重合成分の共重合量は好ましくは10モル%以下である。
【0040】
スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、アクリロニトリルとスチレンとの共重合体であるAS樹脂、アクリロニトリルとブタジエンとスチレンとの共重合体であるABS樹脂、アクリロニトリルとEPDMとスチレンとの共重合体であるAES樹脂などがある。
ポリカーボネートとしては、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、脂肪族−芳香族ポリカーボネート等が挙げられる。
ポリイミドは、例えば、ピロメリット酸二無水物を1〜80モル%、及び、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を99〜20モル%含む芳香族テトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンである4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニルを重縮合し、得られたポリアミック酸を脱水することにより製造される。
【0041】
ポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジメトキシ−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジニトリル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,5−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)などが挙げられる。
【0042】
オレフィン系樹脂としては、炭素数2〜14のα−オレフィンと少なくとも1種の環状オレフィンとの共重合体が好ましい。炭素数2〜14のα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラドデセン等が挙げられる。環状オレフィンとしては、ビシクロ[2.2.1]ヘプトー2エン誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]−3−デセン誘導体、ヘキサシクロ[6.6.13.6.110.13.02.7.09.14]−4−ヘプタデセン誘導体、オクタシクロ[8.8.0.112.9.14.7.111.18.113.16.03.8.012.17]−5−ドコセン誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.13.6.02.7.09.14]−4−ヘキサデセン誘導体、ヘプタシクロ−5−イコセン誘導体、ヘプタシクロ−5−イコセン誘導体、ヘプタシクロ−5−ヘンエイコセン誘導体、トリシクロ[4.3.0.12.5]−3−デセン誘導体、トリシクロ[4.3.0.12.5]−3−ウンデセン誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13.6.02.7.09.14]−4−ペンタデセン誘導体、ペンタシクロペンタデカジエン誘導体、ペンタシクロ[4.7.0.112.5.08.13.19.12]−3−ペンタデセン誘導体及びノナシクロ[9.10.1.14.7.113.20.115.18.02.10.012.21.014.19]−5−ペンタコセン誘導体等を挙げることができる。α−オレフィンと上記の少なくとも1種の環状オレフィンとの重合方法としては、炭化水素溶媒(例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等)中で、例えばバナジウム化合物、有機アルミニウム化合物等の触媒を用いて行う方法が好ましいものとして例示できるが、特に制限はない。
【0043】
また、形状記憶性樹脂組成物は、ガラス繊維または炭素繊維を含有していることが好ましい。ガラス繊維または炭素繊維を含有させることにより、記憶形状への形状復元率が良好となる。さらには、このような繊維を添加することにより、回復時における熱膨張に起因する変形の発生を抑えることができ、回復後の寸法安定性も良好となる。
また、本発明において使用される形状記憶性樹脂は、形状記憶特性およびガラス転移温度に顕著な影響を与えない範囲で、無機フィラー、有機フィラー、補強材、着色剤、安定剤(ラジカル捕捉剤、酸化防止剤など)、抗菌剤、防かび材、難燃剤などを、必要に応じて添加してもよい。無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、タルク、砂、粘土、鉱滓などを使用できる。有機フィラーとしては、ポリアミド繊維や植物繊維などの有機繊維を使用できる。補強材としては、炭素繊維、ポリアミド繊維、ポリアリレート繊維、針状無機物、繊維状フッ素樹脂などを使用でき、上述したガラス繊維も補強材として機能する。
そして、本発明の形状記憶性樹脂製雄型締結体としては、上述したようなボルトに限定されるものではなく、各種の雄型締結体であってもよい。雄型締結体としては、頭部を持たないスタッドボルト、ねじであってもよい。
【0044】
次に、本発明の形状記憶性樹脂製雄型締結体の製造方法について説明する。
本発明の形状記憶性樹脂製雄型締結体の製造方法は、上述した形状記憶性樹脂製雄型締結体を製造するための製造方法であり、製造される雄型締結体1は、シャフト部2の中心軸に対して平行に延び、かつシャフト部2の中心軸から外面までの距離が長く、さらに向かい合うように2つもしくはシャフト部2の中心軸に対してほぼ等角度となるように設けられた複数の長径部21と、シャフト部2の中心軸に対して平行に延びかつ複数の長径部21間に位置し、さらに、シャフト部2の中心軸から外面までの距離が長径部21より短い複数の短径部22と、長径部21の外面に形成された雄ねじ部23とを備える締結用形態と、所定温度以上に加温されることにより発現する締結機能消失形態とを有する。締結機能消失形態では、シャフト部2は、短径部22の半径a2より大きく、かつ、長径部21の半径a1より小さい半径a3を有するほぼ円柱状であり、かつ外面に実質的に雄ねじ部を持たないものである。
【0045】
本発明の形状記憶性樹脂製雄型締結体の製造方法は、形状記憶性樹脂を射出成形することにより、短径部の半径より大きく、かつ、長径部の半径より小さい半径を有するほぼ円柱状であり、かつ外面に雄ねじ部を持たない柱状シャフト部を有する締結体基材を成形する工程と、複数に分割されるとともに、内部に締結体基材のシャフト部を収納可能かつ収納した状態にて狭圧することにより、締結体基材のシャフト部に、シャフト部の中心軸に対して平行に延び、かつシャフト部の中心軸から外面までの距離が短い複数の短径部と、シャフト部の中心軸に対して平行に延び、かつシャフト部の中心軸から外面までの距離が短径部より長く、さらに向かい合うように2つもしくはシャフト部の中心軸に対してほぼ等角度となるよう複数形成された長径部と、複数の長径部の外面に雄ねじ部とを有する締結用形態にシャフト部を塑性変形可能な成型用型内を用いて、形状記憶性樹脂性雄型締結体の形状回復温度以下の温度条件にて、雄型締結体基材のシャフト部を塑性変形させる工程とを行うものである。
【0046】
そこで、図24および図25を用いて、図1ないし図6に示す形状記憶性樹脂製雄型締結体の製造方法について説明する。
図24は、本発明の雄型締結体の製造用型の一例の斜視図である。図25は、本発明の雄型締結体の製造方法を説明するための説明図である。
製造される形状記憶性樹脂製雄型締結体(ボルト)1は、上述したとおりである。
【0047】
最初に、形状記憶性樹脂を射出成形することにより、図7ないし図9に示すような形態の締結体基材10を成形する。成形される締結体基材10は、最終的に製造される形状記憶性樹脂製雄型締結体の短径部の半径より大きく、かつ、長径部の半径より小さい半径を有するほぼ円柱状であり、かつ外面に雄ねじ部を持たない柱状シャフト部2aを有するものである。
そして、図24に示すような成型用型を用いて、雄型締結体基材のシャフト部を塑性変形させる工程を行う。この工程は、締結体基材を構成する形状記憶性樹脂の損失正接ピーク温度以下の条件下にて行われる。
【0048】
成型用型11は、複数に分割された成型ダイス12,13により構成されている。具体的には、図24に示すように、成型用型11は、第1の成型ダイス12と第2の成形ダイス13により構成されており、第1の成型ダイス12は、シャフト部成形用内面14を備え、第2の成形ダイス13は、シャフト部成形用内面15を備える。第1の成型ダイス12と第2の成形ダイス13は組み合わされることにより、楕円柱筒状内面となるシャフト部成形用内面を構成する。
【0049】
そして、成型ダイス12のシャフト部成形用内面14の長手方向に延びる所定部位には、雄ねじ形成用溝14a,14bが設けられており、かつ雄ねじ形成用溝の側部(言い換えれば、雄ねじ形成用溝14a,14bの間)は、シャフト部成形用内面14の長手方向に延びる雄ねじ形成用溝非形成部となっている。成型ダイス13は、成型ダイス12のシャフト部成形用内面14と上下反転した形状のシャフト部成形用内面15を備えている。そして、シャフト部成形用内面15の長手方向に延びる所定部位には、雄ねじ形成用溝15a,15bが設けられており、かつ雄ねじ形成用溝の側部(言い換えれば、雄ねじ形成用溝15a,15bの間)は、シャフト部成形用内面15の長手方向に延びる雄ねじ形成用溝非形成部となっている。そして、第1の成型ダイス12と第2の成形ダイス13を組み合わせた状態において、第2の成形ダイス13の雄ねじ形成用溝15a,15bは、第1の成型ダイス12の雄ねじ形成用溝14a,14bと向かい合うとともに、共同することにより、連続する雄ねじ部を形成可能となっている。
そして、図25に示すように、第1の成型ダイス12と第2の成形ダイス13間に、雄型締結体基材10のシャフト部2aを配置し、第1の成型ダイス12と第2の成形ダイス13を狭圧することにより、シャフト部2を成形ダイスのシャフト部成形用内面形状に対応した形状に塑性変形させる。そして、成形ダイスを取り外すことにより、本発明のシャフト部形状を有するボルト1が形成される。
【0050】
次に、図26および図27を用いて、図13ないし図18に示す形状記憶性樹脂製雄型締結体の製造方法について説明する。
図26は、本発明の雄型締結体の製造用型の他の例の斜視図である。図27は、本発明の雄型締結体の製造方法を説明するための説明図である。
この実施例の製造方法では、上述した形状記憶性樹脂製雄型締結体(ボルト)50が製造される。
【0051】
最初に、形状記憶性樹脂を射出成形することにより、図7ないし図9に示すような締結体基材を成形する。成形される締結体基材は、最終的に製造される形状記憶性樹脂製雄型締結体の短径部の半径より大きく、かつ、長径部の半径より小さい半径を有するほぼ円柱状であり、かつ外面に雄ねじ部を持たない柱状シャフト部を有するものである。
そして、図26に示すような成型用型を用いて、雄型締結体基材のシャフト部を塑性変形させる工程を行い。この工程は、締結体基材を構成する形状記憶性樹脂の損失正接ピーク温度以下の条件下にて行われる。
【0052】
図26に示す成型用型51は、第1の成型ダイス54と第2の成形ダイス55により構成されている。成型ダイス54,55は、組み合わせることにより、略正三角柱状内面となるシャフト部成形用内面56,57を備えている。そして、成型ダイス54のシャフト部成形用内面56の長手方向に延びる所定部位には、雄ねじ形成用溝56a,56bが設けられており、かつ雄ねじ形成用溝の側部(言い換えれば、雄ねじ形成用溝56a,56bの間、雄ねじ形成用溝56aとシャフト部成形用内面56の端部の間)は、シャフト部成形用内面56の長手方向に延びる雄ねじ形成用溝非形成部となっている。成型ダイス55は、成型ダイス54のシャフト部成形用内面56と左右反転した形状のシャフト部成形用内面57を備えている。そして、シャフト部成形用内面57の長手方向に延びる所定部位には、雄ねじ形成用溝57a,57bが設けられており、かつ雄ねじ形成用溝の側部(言い換えれば、雄ねじ形成用溝57a,57bの間、雄ねじ形成用溝57aとシャフト部成形用内面57の端部の間)は、シャフト部成形用内面57の長手方向に延びる雄ねじ形成用溝非形成部となっている。そして、第1の成型ダイス54と第2の成形ダイス55を組み合わせた状態において、第2の成形ダイス55の雄ねじ形成用溝57bは、第1の成型ダイス54の雄ねじ形成用溝56bに近接し向かい合うとともに、共同することにより、連続する雄ねじ部を形成可能となっている。また、第1の成型ダイス54の雄ねじ形成用溝56aおよび第二の成型ダイス55の雄ねじ形成用溝57aは、それぞれが単独にて、連続する雄ねじ部を形成可能となっている。
【0053】
そして、図27に示すように、第1の成型ダイス54と第2の成形ダイス55間に、雄型締結体基材10のシャフト部2aを配置し、第1の成型ダイス54と第2の成形ダイス55を狭圧することにより、シャフト部2aを成形ダイスのシャフト部成形用内面形状に対応した形状に塑性変形させる。そして、成形ダイスを取り外すことにより、本発明のシャフト部形状を有するボルト50が形成される。
【0054】
次に、図28および図29を用いて、図19ないし図23に示す形状記憶性樹脂製雄型締結体の製造方法について説明する。
この実施例の製造方法では、上述した形状記憶性樹脂製雄型締結体(ボルト)60が製造される。
最初に、形状記憶性樹脂を射出成形することにより、図7ないし図9に示すような締結体基材を成形する。成形される締結体基材は、最終的に製造される形状記憶性樹脂製雄型締結体の短径部の半径より大きく、かつ、長径部の半径より小さい半径を有するほぼ円柱状であり、かつ外面に雄ねじ部を持たない柱状シャフト部を有するものである。
【0055】
そして、図28に示すような成型用型を用いて、雄型締結体基材のシャフト部を塑性変形させる工程を行い。この工程は、締結体基材を構成する形状記憶性樹脂の損失正接ピーク温度以下の条件下にて行われる。
成型用型70は、6つに分割された成型ダイス73,74,75,76,77,78により構成されている。具体的には、成型用ダイス70は、内面が雄ねじ形成面となっているねじ部形成用ダイス73,74,75と、これらねじ部形成用ダイス73,74,75間に配置され、ねじ形成面を持たない凹部形成用ダイス76,77,78により構成されている。ねじ部形成用ダイス73の内面は、シャフト部成形用内面を構成するとともに、雄ねじ形成用溝73aを備えている。同様に、ねじ部形成用ダイス74の内面は、シャフト部成形用内面を構成するとともに、雄ねじ形成用溝74aを備え、ねじ部形成用ダイス75の内面にも、雄ねじ形成用溝75aが設けられている。また、凹部形成用ダイス76,77,78は、シャフト部成形用内面を構成するとともに、内面は、ねじ形成面を持たない雄ねじ形成用溝非形成部76a,77a,78aとなっている。
【0056】
そして、図29に示すように、成型用型70内に雄型締結体基材10のシャフト部2aを配置し、6つの成型ダイス73,74,75,76,77,78を配置されたシャフト部2aの中心に向かって狭圧し、さらに、ねじ形成面を持たない凹部形成用ダイス76,77,78を、シャフト部2aの中心方向に狭圧することにより、シャフト部2aを成形用型70のシャフト部成形用内面形状に対応した形状に塑性変形させる。そして、成形ダイスを取り外すことにより、本発明のシャフト部形状を有するボルト60が形成される。
樹脂ねじを作製する場合、射出成形でブランク(ねじ山なし)を作製し転造を行うのが一般的である。しかし、転造を行うとブランク自身の温度が上がり、ねじ山の立ち具合が良くない。ねじ山の立ち具合が悪いとナットとの引っ掛かりが少なくなり、抜け強度が低くなってしまう。このため、ブランク径をできるだけ大きくし、引っ掛かり高さを上げている。しかし、ブランク径が大きすぎると、回復後ナットと干渉し抜けにくくなる可能性がある。
上述した実施例のプレスもしくはかしめによる方法では、ねじ加工時の発熱を抑えることができ、ねじ山の立ちは一般の転造に比べ良好である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本発明の雄型締結体をボルトに応用した実施例の正面図である。
【図2】図2は、図1に示したボルトの右側面図である。
【図3】図3は、図1のA−A線断面図である。
【図4】図4は、図1のB−B線断面図である。
【図5】図5は、図1に示したボルトの拡大底面図である。
【図6】図6は、図1に示したボルトの斜視図である。
【図7】図7は、図1に示した雄型締結体に用いられる締結体基材の正面図である。
【図8】図8は、図7に示した締結体基材の底面図である。
【図9】図9は、図7に示した締結体基材の斜視図である。
【図10】図10は、本発明の雄型締結体の締結状態を示す断面図である。
【図11】図11は、図10のC−C線断面図である。
【図12】図12は、図10に示した雄型締結体を加温し、締結機能消失形態とした状態の断面図である。
【図13】図13は、本発明の雄型締結体をボルトに応用した他の実施例の正面図である。
【図14】図14は、図13に示したボルトの右側面図である。
【図15】図15は、図13のD−D線断面図である。
【図16】図16は、図13のE−E線断面図である。
【図17】図17は、図13に示したボルトの拡大底面図である。
【図18】図18は、図13に示したボルトの斜視図である。
【図19】図19は、本発明の雄型締結体をボルトに応用した他の実施例の正面図である。
【図20】図20は、図19に示したボルトの側面図である。
【図21】図21は、図19のF−F線断面図である。
【図22】図22は、図19に示したボルトの拡大底面図である。
【図23】図23は、図19に示したボルトの斜視図である。
【図24】図24は、本発明の雄型締結体の製造用型の一例の斜視図である。
【図25】図25は、本発明の雄型締結体の製造方法を説明するための説明図である。
【図26】図26は、本発明の雄型締結体の製造用型の他の例の斜視図である。
【図27】図27は、本発明の雄型締結体の製造方法を説明するための説明図である。
【図28】図28は、本発明の雄型締結体の製造用型の他の例の斜視図である。
【図29】図29は、本発明の雄型締結体の製造方法を説明するための説明図である。
【図30】図30は、粘弾性測定による損失正接の算出過程を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0058】
1 形状記憶性樹脂製雄型締結体
2 柱状シャフト部
3 頭部
4 雌型締結体
21 長径部
22 短径部
23 雄ねじ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面に形成された雄ねじ部を有する柱状シャフト部を少なくとも備える形状記憶性樹脂製雄型締結体であって、
該雄型締結体は、前記シャフト部の中心軸に対して平行に延び、かつ前記シャフト部の中心軸から外面までの距離が長く、さらに向かい合うように2つもしくは前記シャフト部の中心軸に対してほぼ等角度となるよう設けられた複数の長径部と、前記シャフト部の中心軸に対して平行に延びかつ前記複数の長径部間に位置し、さらに、前記シャフト部の中心軸から外面までの距離が前記長径部より短い複数の短径部と、前記複数の長径部の外面に形成された前記雄ねじ部とを備える締結用形態と、所定温度以上に加温されることにより発現する締結機能消失形態とを有するものであり、該締結機能消失形態では、前記シャフト部は、前記短径部の半径より大きく、かつ、前記長径部の半径より小さい半径を有するほぼ円柱状であり、かつ外面に実質的に雄ねじ部を持たないものであることを特徴とする形状記憶性樹脂製雄型締結体。
【請求項2】
前記形状記憶性樹脂は、動的粘弾性測定における損失正接値のピークとなる第1の損失正接ピーク温度を有する第1の形状記憶性ポリマーと、前記第1の形状記憶性ポリマーと相溶性を有し、かつ動的粘弾性測定における損失正接値のピークが前記第1の損失正接ピーク温度よりも高い第2の損失正接ピーク温度を有する第2の形状記憶性ポリマーとの混合物からなるものである請求項1に記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体。
【請求項3】
前記形状記憶性樹脂は、非晶性ポリエチレンテレフタレートと、非晶性ポリエチレンナフタレート、低結晶性形状記憶ポリエチレンナフタレートもしくは半結晶性ポリエチレンナフタレートとの混合物である請求項2に記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体。
【請求項4】
前記形状記憶性樹脂は、非晶性形状記憶性ポリマーである請求項1に記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体。
【請求項5】
前記非晶性形状記憶性ポリマーは、非晶性ポリエステル、非晶性スチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリチオエーテル、非晶性ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、非晶性オレフィン系樹脂、ポリフェニレンサルファイドからなる群より選択された少なくとも1種のものである請求項4に記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体。
【請求項6】
前記形状記憶性樹脂は、非晶性ポリエチレンテレフタレート、非晶性ポリエチレンナフタレート、低結晶性形状記憶ポリエチレンナフタレートもしくは半結晶性ポリエチレンナフタレートのいずれかである請求項1に記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体。
【請求項7】
前記雄型締結体は、前記シャフト部の一端に形成された頭部を備えている請求項1ないし6のいずれかに記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体。
【請求項8】
前記締結用形態における前記シャフト部は、楕円柱状であり、長径部分により向かい合う2つの長径部が形成されており、短径部分において向かい合う2つの短径部が形成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体。
【請求項9】
前記締結用形態における前記シャフト部は、略正多角柱状であり、角部により前記シャフト部の中心軸に対してほぼ等角度となるよう複数形成された長径部が形成されており、各隣り合う長径部の中間部が短径部となっている請求項1ないし7のいずれかに記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体。
【請求項10】
前記締結用形態における前記シャフト部は、略円柱状であり、かつ、前記シャフト部の中心軸に対して平行かつ向かい合うように2つもしくは前記シャフト部の中心軸に対してほぼ等角度となるよう複数形成された軸方向に延びる凹部を備え、該凹部により前記短径部が形成されており、該凹部間により前記長径部が形成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体。
【請求項11】
前記雄型締結体は、前記締結用形態における前記長径部の前記雄ねじ部と螺合可能であり、かつ、前記締結機能消失形態における前記シャフト部と係合しない有効内径を有する雌ねじ部を有する雌形締結体に使用されるものである請求項1ないし10のいずれかに記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体。
【請求項12】
前記締結機能消失形態となる前記所定温度は、50℃〜160℃である請求項1ないし11のいずれかに記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体。
【請求項13】
前記形状記憶性樹脂は、ガラス繊維もしくは炭素繊維を含有している請求項1ないし12のいずれかに記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体。
【請求項14】
前記請求項1ないし13のいずれかに記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体の製造方法であって、
前記形状記憶性樹脂を射出成形することにより、前記短径部の半径より大きく、かつ、前記長径部の半径より小さい半径を有するほぼ円柱状であり、かつ外面に雄ねじ部を持たない柱状シャフト部を有する締結体基材を成形し、
複数に分割されるとともに、内部に前記締結体基材の前記シャフト部を収納可能かつ収納した状態にて狭圧することにより、前記締結体基材の前記シャフト部に、該シャフト部の中心軸に対して平行に延び、かつ前記シャフト部の中心軸から外面までの距離が短い複数の短径部と、前記シャフト部の中心軸に対して平行に延び、かつ前記シャフト部の中心軸から外面までの距離が前記短径部より長く、さらに向かい合うように2つもしくは前記シャフト部の中心軸に対してほぼ等角度となるよう複数形成された長径部と、該複数の長径部の外面に雄ねじ部とを有する締結用形態に前記シャフト部を塑性変形可能な成型用型を用いて、前記形状記憶性樹脂性雄型締結体の形状回復温度以下の温度条件にて、前記雄型締結体基材の前記シャフト部を塑性変形させることを特徴とする形状記憶性樹脂製雄型締結体の製造方法。
【請求項15】
前記成型用型は、複数に分割された成型ダイスを備え、各成型ダイスは、シャフト部成形用内面を備えるとともに該シャフト部成形用内面の長手方向に延びる所定部位には、雄ねじ形成用溝が設けられており、かつ雄ねじ形成用溝の側部は、前記シャフト部成形用内面の長手方向に延びる雄ねじ形成用溝非形成部となっている請求項14に記載の形状記憶性樹脂製雄型締結体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2009−68570(P2009−68570A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236367(P2007−236367)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(592118103)メイラ株式会社 (19)
【Fターム(参考)】