説明

情報提供装置

【課題】計算処理負荷の低減と所要時間推定精度の向上とを適切にバランスさせた情報提供装置を提供すること。
【解決手段】出発地から目的地までの所要時間を推定し、ユーザに情報提供する情報提供装置に、出発地から目的地までの経路上の各リンクについて、出発地出発時刻における渋滞状況に基づいて所要時間を計算する所要時間計算手段と、出発地から目的地までの経路上の各リンクのうち、当該出発地から所定範囲を越える域外リンクについて、所要時間計算手段により計算された所要時間に渋滞状況の変化を表す渋滞傾向係数を乗じて補正する所要時間補正手段と、当該出発地から上記所定範囲内の域内リンクについて所要時間計算手段により計算された所要時間と、上記域外リンクについて所要時間補正手段により補正された所要時間との和を、当該出発地から当該目的地までの推定所要時間としてユーザに情報提供する情報提供手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、出発地から目的地までの所要時間を推定し、ユーザに情報提供する情報提供装置に係り、特に、計算処理負荷の低減と所要時間推定精度の向上とを適切にバランスさせた情報提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、出発地から目的地までの所要時間を算出/推定し、ユーザに情報提供する装置が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
特許文献1には、「出発時刻や到着時刻を変化させた時に求まる渋滞予測を考慮した複数の推奨経路の経路表示を行」う、ことを狙いとしたナビゲーション端末が開示されている(段落番号0007)。
【0004】
特許文献2には、「・・・出発地から目的地までの最短経路距離および直線距離ならびに出発時刻に基づいて出発地を出発して目的地に到着する概算到着予想時刻を算出する。・・・各道路リンクの時刻別所要時間データ及び出発時刻に基づいて出発地から目的地へ向けての出発地起点最短時間経路を探索するのとほぼ同時並行して、・・・各道路リンクの時刻別所要時間データ及び概算到着予想時刻に基づいて目的地から出発地へ向けての目的地起点最短時間経路を探索する」、ことを狙いとした最短時間経路探索方法が開示されている(段落番号0082)。
【0005】
特許文献3には、「・・・求めた推定時間(概略の所要時間)を1/2した時間を出発時刻に加え、その時刻に対応するネットワークデータを経路探索に使用するように選択する。例えば、・・・推定時間が1時間であった場合、出発時刻を17:00とすれば、推定時間1時間を1/2した30分を出発時刻に加え、出発時刻から30分経過後のネットワークデータ、すなわち、17:30のネットワークデータを使用して経路探索を行う」、ことを狙いとしたナビゲーションシステムが開示されている(段落番号0052)。
【特許文献1】特開2004−233230号公報
【特許文献2】特開2005−009978号公報
【特許文献3】特開2006−071390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献3の段落番号0013などにも記載されているように、渋滞は時間の経過とともに増加したり、減少したりするため、上記特許文献1記載の従来装置のように、出発時点での渋滞情報のみを利用して目的地到着までの所要時間を算出すると、渋滞が増加傾向にある場合には実際により短い所要時間が算出されてしまい、減少傾向にある場合には実際より長い所要時間が算出されてしまう。
【0007】
また、上記特許文献2は、通過時刻によって変化する各道路リンクの時刻別所要時間データを用いて経路探索しつつ、経路探索処理負荷の軽減を図るために、出発地と目的地とから同時に経路探索を開始するものとしているが、各リンクについて時刻別所要時間データを参照していることに変わりはなく、処理負荷の大幅な低減は見込めない。
【0008】
さらに、上記特許文献3は、上記特許文献2と同様の処理負荷低減の観点から、各道路リンクについて個々に時刻別所要時間データを用いずに、すべてのリンクについて、出発地出発時刻に目的地までの推定所要時間の半分の時間を加えた時刻における所要時間データを用いるものとしているが、出発地からさほど離れていない範囲内の道路リンクについては、出発地出発時刻における所要時間データを用いた方が比較的現実の所要時間に近いと考えられるため、処理負荷低減を優先するあまり精度の点で劣ると考えられる。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、計算処理負荷の低減と所要時間推定精度の向上とを適切にバランスさせた情報提供装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、出発地から目的地までの所要時間を推定し、ユーザに情報提供する情報提供装置であって、出発地から目的地までの経路上の各リンクについて、出発地出発時刻における渋滞状況に基づいて所要時間を計算する所要時間計算手段と、出発地から目的地までの経路上の各リンクのうち、当該出発地から所定範囲を越える域外リンクについて、上記所要時間計算手段により計算された所要時間に渋滞状況の変化を表す渋滞傾向係数を乗じて補正する所要時間補正手段と、当該出発地から上記所定範囲内の域内リンクについて上記所要時間計算手段により計算された所要時間と、上記域外リンクについて上記所要時間補正手段により補正された所要時間との和を、当該出発地から当該目的地までの推定所要時間としてユーザに情報提供する情報提供手段とを有する情報提供装置である。
【0011】
上記一態様において、上記所定の範囲は、例えば、出発地出発時刻における渋滞状況に基づいて計算されたリンク退出時刻が、出発地出発時刻から所定時間の範囲である。
【0012】
また、上記一態様において、上記渋滞傾向係数は、渋滞増減割合を表す係数であり、例えば、当該出発地から当該目的地まで所定の速度(例えば、道路種別、地域、又は、時間帯に依存する)で走行したときに掛かる所要時間を出発地出発時刻に加えた目的地到着予測時刻における、上記域外リンクの過去の平均所要時間を、出発地出発時刻における上記域外リンクの過去の平均所要時間で除算して得る。
【0013】
上記一態様によれば、出発地から目的地までの所要時間を推定するときに、出発地に比較的近い範囲内では出発地出発時刻における渋滞状況に基づいて所要時間が計算されると共に、出発地から比較的遠い範囲内では出発地出発時刻における渋滞状況に基づいて計算された所要時間が、過去の統計データに基づいて算出した渋滞が増加する傾向にあるのか、或いは、減少する傾向にあるのかを表した係数を乗じて補正される。
【0014】
これにより、上記一態様によれば、出発地から目的地までの各リンクについて個々独立に時刻別所要時間データを参照する場合に比べて大幅に処理負荷が軽減されると共に、出発地から目的地までの各リンクについて特定の一の時刻における所要時間統計データを一律に採用する場合に比べて所要時間の推定精度が向上すると考えられる。
【0015】
したがって、上記一態様によれば、計算処理負荷の低減と所要時間推定精度の向上とを適切にバランスさせることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、計算処理負荷の低減と所要時間推定精度の向上とを適切にバランスさせた情報提供装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。なお、現在位置から指定された目的地までの経路を探索し、案内するナビゲーション装置/システムの基本概念、主要なハードウェア構成、作動原理、及び基本的な制御手法等については当業者には既知であるため、詳しい説明を省略する。
【実施例】
【0018】
以下、図1〜3を参照して、本発明の一実施例に係る情報提供装置100について説明する。なお、本実施例では、一例として、情報提供装置100がカーナビゲーションシステムと一体化されて、車両に搭載されているものとする。
【0019】
図1は、本実施例に係る情報提供装置100の概略構成図である。
【0020】
情報提供装置100は、無線通信を利用して渋滞情報を受信するための通信部101を有する。通信部101が備えるアンテナの性能や形状並びに通信に利用する方式や周波数帯域などについては、特段の制限はなく、適切な渋滞情報が受信できるように適宜設計されればよい。
【0021】
具体的には、例えば、既存のVICS(Vehicle Information and Communication System)から渋滞情報を受信する場合には、電波ビーコン、光ビーコン、FM多重放送などの通信規格、所定のセンタから渋滞情報を受信する場合には、既存の携帯電話や無線LAN(Wireless Local Area Network)などの通信規格、に準拠した無線通信方式を採用することが考えられる。
【0022】
情報提供装置100は、更に、例えばGPS(Global Positioning System;全地球測位システム)を利用して自車両の位置を検出する自車両位置検出部102有する。自車両位置検出部102の検出精度(分解能)は高い(細かい)ほど好ましく、例えばRTK(Real Time Kinematic)−GPSなどの高精度GPSが利用されることが好ましい。
【0023】
情報提供装置100は、更に、ユーザが目的地の入力・設定などに用いるユーザ入力部103を有する。ユーザ入力部103は、自車両運転者が容易に操作できる位置に設けられることが望まれる。
【0024】
情報提供装置100は、更に、地図情報及びリンク毎の渋滞情報の統計値(例えば時刻別の平均所要時間)を記憶保持する記憶部104を有する。記憶部104は、任意の種類・規格の記憶媒体でよい。また、記憶部104に記憶保持される地図情報及び渋滞情報統計値は、例えば通信部101による通信を利用して、最新のバージョン/内容に適宜更新されることが好ましい。
【0025】
情報提供装置100は、更に、自車両位置検出部102によって検出された自車両現在位置周辺の地図情報を記憶部104から抽出して、検出された自車両現在位置と目的地までの経路とを重畳させて自車両運転者に視覚的に表示するとともに、右左折時などには音声メッセージを出力して運転者に経路を案内する情報提供部105を有する。
【0026】
情報提供部105は、例えば、文字・記号情報を表示するディスプレイ装置と、音声メッセージを出力するスピーカとから成る。情報提供部105のディスプレイ装置は、任意の種類のディスプレイ装置でよく、例えば液晶ディスプレイ(LCD)である。他の車載システム(例えば、マルチメディアシステムなど)のディスプレイ装置と兼用であってもよい。また、ユーザ入力部103と情報提供部105のディスプレイ装置とは、一体となったタッチパネル式ディスプレイ装置として実現することが可能であり、且つ、ユーザ利便性の観点からこのようなタッチパネル式のディスプレイ装置として実現されることがむしろ好ましい。
【0027】
また、情報提供部105のスピーカは、車室内に設けられた任意のスピーカでよく、他の車載システム(例えば、オーディオビジュアルシステムなど)のスピーカと兼用であってもよい。
【0028】
情報提供装置100は、更に、各種の演算を実行すると共に、情報提供装置100の各構成要素を統括的に制御する演算・制御部106を有する。本実施例において、演算・制御部106は、例えば、ECU(Electronic Control Unit;電子制御装置)である。
【0029】
このような構成の情報提供装置100において、演算・制御部106は、ユーザ入力部103を通じてユーザにより目的地が入力・設定されると、自車両位置検出部102により検出された自車両現在位置と目的地とを記憶部104に記憶保持された地図情報に照らして、現在位置から目的地までの経路を探索すると共に、通信部101を通じて渋滞情報を取得して、当該経路を通って目的地に到着するまでに掛かる所要時間を推定する。
【0030】
そのとき、演算・制御部106は、通信部101を通じて取得した、その時点での(リアルタイムの)渋滞情報を、記憶部104に記憶保持された過去の統計データ(渋滞情報の統計値)を用いて適宜補正して、自車両が目的地へ向かって進行している間に発生し得る渋滞の程度を予測し、これも考慮した上で、目的地に到着するのに要する所要時間を計算する。
【0031】
次いで、上記のような本実施例に係る情報提供装置100による推定所要時間の計算処理の流れについて、図2のフローチャートを参照して、詳述する。
【0032】
ユーザにより目的地が設定され、経路探索が開始されると(S201)、まず、演算・制御部106は、探索された経路上の各リンクについて、通信部101を通じて、その時点での(リアルタイムの)渋滞情報を取得し、取得したリアルタイムの渋滞情報に基づいて、各リンクの所要時間の現況値を算出する(S202)。
【0033】
既述のように、このようにして算出された経路上の各リンクを通過するのに掛かると見込まれる所要時間の現況値を積算して、目的地までの推定所要時間とすると、探索時点での渋滞情報しか考慮されておらず、その後の渋滞状況の変化が加味されないため、渋滞が増える傾向にあるときには実際より短い所要時間が算出されてしまい、渋滞が減る傾向にあるときには実際より長い所要時間が算出されてしまう。
【0034】
一方で、各リンクについて、個々独立に、時刻別所要時間データ(過去の統計値)を用いるものとすると、既述のように、処理負荷が大きくなってしまう。
【0035】
またさらに一方で、経路上のすべてのリンクについて、出発時刻以外の特定の一の時刻における所要時間の統計値を用いるものとすると、既述のように推定精度が落ちる。
【0036】
そこで、本実施例では、探索された経路上の各リンクを、出発地点から所定範囲内のリンク(以下、便宜上、「域内リンク」と称す)と、それ以外の(すなわち、出発地点から所定範囲を越えた)リンク(以下、便宜上、「域外リンク」と称す)の2種類に大きく分類して、域内リンクについては、出発時刻における渋滞情報、すなわち渋滞情報の現況値を利用して算出した所要時間の現況値をそのまま用いるものとし、域外リンクについては、出発地出発以降に発生し得る渋滞の影響を反映させるために、所要時間の現況値を渋滞状況の変化を表す渋滞傾向係数(後述)で補正して得られた所要時間を用いるものとする。
【0037】
図2に戻る。より具体的には、まず、演算・制御部106は、探索された経路上の各リンクを、自車両位置検出部102により検出された自車両現在位置から所定の範囲内にある域内リンクと、所定の範囲を超える域外リンクと、に分類する(S203)。
【0038】
ここで、域内リンクと域外リンクとを分ける上記所定の範囲は、任意に設定することができる。一例を挙げれば、例えば、所要時間の現況値に基づいて計算されたリンク退出時刻が出発時刻から所定時間(例えば15分など)内のリンクを域内リンク、該所定時間を超えるリンクを域外リンク、とすることができる。
【0039】
次いで、演算・制御部106は、自車両現在位置から目的地まで探索された経路を通って固定車速で走行した場合に、目的地に到着する予想時刻を算出する(S204)。
【0040】
ここで、固定車速とは、例えば、a)全国一律で道路種別により定義しておいてもよく(例えば、高速道路では毎時80キロメートル、一般道路では毎時30キロメートル、など)、或いは、b)地域ごと・道路種別ごとに定義しておいてもよく(例えば、東京の一般道路は毎時20キロメートル、北海道の一般道路は毎時40キロメートル、など)、或いは、c)時間帯ごと・地域ごと・道路種別により定義してもよい(例えば、東京の7〜8時の一般道路は毎時15キロメートル、東京の8〜9時の一般道路は毎時20キロメートル、など)。
【0041】
目的地到着予想時刻が算出されると、次いで、演算・制御部106は、域外リンクに対する補正係数である上述の渋滞傾向係数を計算するために、まず、域外リンクに分類された各リンクについて、出発時刻における所要時間の統計値(A)と、目的地到着予想時刻における所要時間の統計値(B)と、を記憶部104から抽出する(S205)。
【0042】
そして、目的地到着予想時刻における所要時間の統計値(B)を出発時刻における所要時間の統計値(A)で除算することによって、渋滞傾向係数を算出する(渋滞傾向係数=B/A)。このような算出方法により、渋滞傾向係数は、出発時刻から目的地到着予想時刻までの渋滞状況の変化による所要時間の変化の割合を表す係数として算出されることになる。
【0043】
このようにして渋滞傾向係数が算出されると、演算・制御部106は、最終的に、目的地までの推定所要時間を計算する(S207)。すなわち、上述のように、域内リンクについては、所要時間の現況値をそのまま採用し、域外リンクについては、所要時間の現況値に渋滞傾向係数を乗じた上で採用する。すなわち、目的地までの推定所要時間を、(各域内リンクの所要時間の現況値の和)+(各域外リンクの所要時間の現況値の和)×(渋滞傾向係数)として求める。
【0044】
このようにして、出発時刻以降に発生し得る渋滞も考慮して算出された、現在位置から目的地までの、探索された経路に沿った推定所要時間は、例えば、当該経路と共に視覚的にユーザに表示されたり、及び/又は、音声メッセージとして出力されたりして、情報提供部105からユーザに提示される(S208)。
【0045】
次いで、図3に示した経路の一例及び所要時間の一例を参照して、上記の本実施例に係る推定所要時間計算方法の具体例を説明する。
【0046】
まず、目的地Tが設定されると、自車両現在位置Vから目的地Tまでの経路が探索される(図2のS201)。ここでは、簡便のため、図3(a)に示すように、自車両現在位置Vから星印で示した目的地Tまでの探索された経路が、リンク1(7.5キロメートル)、リンク2(2.5キロメートル)、及び、リンク3(5キロメートル)という3つのリンクをこの順序で通過する経路であったものとする。
【0047】
次いで、探索された経路上の各リンク(ここでは、リンク1〜3)について、通信を利用して取得された渋滞情報の現況値(リアルタイムの渋滞情報)に基づいて、所要時間の現況値が算出される(図2のS202)。ここでは、出発地(自車両現在位置V)を出発する時刻(ここでは、現在時刻)が7:30であるものとし、7:30時点での各リンクの所要時間が、図3(b)に示すように、リンク1=13分、リンク2=7分、リンク3=12分、であったものとする。
【0048】
次いで、リンク1〜3が域内リンクと域外リンクに分類される(図2のS203)。ここでは、域内リンクとする範囲が、仮に、一例として、「リンク退出時刻が出発地出発時刻から15分以内」に設定されているものとする。すると、リンク1の退出時刻は所要時間の現況値によると出発地出発時刻から13分後であるからリンク1は域内リンクに分類される。以下、同様に、リンク2の退出時刻は20分後であるから域外リンクに分類され、リンク3の退出時刻は32分後であるから同じく域外リンクに分類される。
【0049】
次いで、目的地Tへの到着予想時刻が算出される(図2のS204)。ここで、上述の固定車速が毎時30キロメートルであるものとすると、目的地Tへの予想到着時刻は8:00となる((7.5km+2.5km+5km)/(30km/h)=30分)。
【0050】
次いで、渋滞傾向係数が算出される(図2のS205〜S206)。ここで、出発地出発時刻(ここでは7:30)におけるリンク1〜3の所要時間の統計値が、図3(c)に示すように、リンク1=15分、リンク2=5分、リンク3=10分、であるものとし、目的地到着予想時刻(ここでは8:00)におけるリンク1〜3の所要時間の統計値が、図3(d)に示すように、リンク1=15分、リンク2=5分、リンク3=30分、であるものとする。
【0051】
ここで、上記のように、図示した一例において域外リンクはリンク2及び3であるから、渋滞傾向係数は、(5分+30分)/(5分+10分)として計算され、35分/15分≒2.3となる。
【0052】
次いで、算出された渋滞傾向係数を用いて、現在位置Vから目的地Tまでの推定所要時間が計算される(図2のS207)。ここで、域内リンクに分類されたリンク1については、所要時間の現況値:13分をそのまま採用し、域外リンクに分類されたリンク2及び3については、出発時刻以降の渋滞が増加する傾向にあるという状況を反映させるために、所要時間の現況値:7分及び12分を渋滞傾向係数2.3で補正する。
【0053】
したがって、ここで挙げた一例における現在位置Vから目的地Tまでの推定所要時間は、13分+(7分+12分)×2.3≒57分として計算され、この数値がユーザに提示されることになる。
【0054】
このように、本実施例によれば、出発地から目的地までの所要時間を推定する際に、出発地から目的地までの経路上の各リンクを域内リンクと域外リンクに分類し、域内リンクについては出発地出発時刻における所要時間の現況値を用いると共に、域外リンクについては出発地出発時刻における所要時間の現況値をその後の渋滞の増減傾向が反映されるように所定の係数を乗じて補正した上で用いるため、出発地から目的地までの経路上のすべてのリンクについて出発地出発時刻における所要時間の現況値又はある特定の一の時刻における所要時間の統計値を一律に用いる場合よりも所要時間の推定精度を向上させることができると共に、すべてのリンクについて個々に所要時間の時刻別統計値を用いる場合よりも処理負荷を大幅に低減させることができる。
【0055】
したがって、本実施例によれば、計算処理負荷の低減と所要時間推定精度の向上とを適切にバランスさせることができる。
【0056】
なお、上記一実施例においては、一例として、本発明に係る情報提供装置がカーナビゲーションシステムと一体化されて車両に搭載される場合について説明したが、当業者には明らかなように、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。上記一実施例を参照して説明したような構成・機能が実現される限り、本発明に係る情報提供装置は、単体の装置として独立して存在してもよく、或いは、携帯電話や、PDAや、パーソナルコンピュータなどの携帯端末と一体化されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、出発地から目的地までの車両走行に掛かる所要時間を推定し、ユーザに提示する情報提供装置に利用できる。対象となる車両の動力源種類、燃料種類、外観デザイン、重量、サイズ、走行性能等はいずれも不問である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施例に係る情報提供装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施例に係る情報提供装置による目的地までの推定所要時間計算処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施例に係る情報提供装置が目的地までの推定所要時間計算処理に用いる所要時間の統計値及び現況値の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
100 情報提供装置
101 通信部
102 自車両位置検出部
103 ユーザ入力部
104 記憶部
105 情報提供部
106 演算・制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発地から目的地までの所要時間を推定し、ユーザに情報提供する情報提供装置であって、
出発地から目的地までの経路上の各リンクについて、出発地出発時刻における渋滞状況に基づいて所要時間を計算する所要時間計算手段と、
出発地から目的地までの経路上の各リンクのうち、当該出発地から所定範囲を越える域外リンクについて、前記所要時間計算手段により計算された所要時間に渋滞状況の変化を表す渋滞傾向係数を乗じて補正する所要時間補正手段と、
当該出発地から前記所定範囲内の域内リンクについて前記所要時間計算手段により計算された所要時間と、前記域外リンクについて前記所要時間補正手段により補正された所要時間との和を、当該出発地から当該目的地までの推定所要時間としてユーザに情報提供する情報提供手段と、を有することを特徴とする情報提供装置。
【請求項2】
請求項1記載の情報提供装置であって、
前記所定の範囲は、出発地出発時刻における渋滞状況に基づいて計算されたリンク退出時刻が、出発地出発時刻から所定時間の範囲である、ことを特徴とする情報提供装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の情報提供装置であって、
前記渋滞傾向係数は、当該出発地から当該目的地まで所定の速度で走行したときに掛かる所要時間を出発地出発時刻に加えた目的地到着予測時刻における、前記域外リンクの過去の平均所要時間を、出発地出発時刻における前記域外リンクの過去の平均所要時間で除算して得た、渋滞増減割合を表す係数である、ことを特徴とする情報提供装置。
【請求項4】
請求項3記載の情報提供装置であって、
前記所定の速度は、道路種別、地域、又は、時間帯に依存する、ことを特徴とする情報提供装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−256418(P2008−256418A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96916(P2007−96916)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】