説明

感光体カートリッジ,画像形成装置および画像形成方法

【課題】 帯電ローラと感光体との接触状態を均一にして帯電ムラを少なくし、高階調,高解像度の潜像を忠実に再現できるようにするとともに、装置の小型化・高速化にも対応できるようにする。
【解決手段】 少なくとも感光体1および帯電装置2を備えた感光体カートリッジにおいて、該感光体1が、直径10〜40mmの円筒状に形成されるとともに、CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)27.3゜に主要な回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを含有する感光層を有し、該帯電装置2が、直径5〜20mmの帯電ローラとして構成されるとともに、該帯電ローラが、アスカーC型硬度計による測定硬度が20°〜70°であって該感光体1との接触面を形成する弾性層を有するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体カートリッジ,画像形成装置および画像形成方法に関する。更に詳しくは、プリンターや電子写真複写機やFAXなどに用いて好適な、感光体カートリッジ,画像形成装置および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真法を用いた複写機,FAXおよびプリンターの急速な普及に伴い、高精細画像への要求が強くなってきている。
高精細画像を得るため、特に階調性や解像力を向上させるには、像露光時のドット数を増やすことが考えられる。この場合、ビーム径を絞り、出力パルス数を増やすことになるが、こうした高密度記録になると、1ドットを露光するのに要する時間が短くなる。このような場合、従来の感光体では感度が不十分で、1ドットの再現性が劣化してしまうため、階調性や解像力の向上には繋がらない。これを解決する方法として、光エネルギー自体を大きくすることも考えられるが、これでは感光層に光疲労などの課題を生じる。
【0003】
上述の課題を解決する方法として、特開平3−37678号公報には、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するX線回折スペクトルのブラッグ角2θが27.2±0.2°においてX線強度の強いピークを示す結晶型のオキシチタニルフタロシアニンを、感光層の光導電性物質として用いる方法が開示されている。このオキシチタニルフタロシアニンを用いることによって、高感度、高γで十分な光応答性を示す感光体を実現でき、この感光体を用いると、高密度記録で各ドットの露光時間が短い場合でも、十分なドット再現性を実現できることが示されている。
【0004】
同公報には、平均粒径が8μm以下の小粒径のトナーを併用することが記載されているが、実際には、トナーが小粒径というだけでは、上述の課題は必ずしも十分に解決されない。
【0005】
すなわち、電子写真プロセス上最も重要な一過程である帯電過程について、同公報では何ら特定がないが、感光体を再現性よく所望の帯電圧に均一に帯電させるための工夫,配慮が無いと、感光体表面を均一且つ良好に帯電することができず、高密度記録で各ドットの露光時間が短い場合に十分なドット再現性を実現することができないからである。
【0006】
従来は、コロナ帯電器を使用して帯電が行なわれていた。特にスコロトロン方式では、帯電は均一に行なわれ帯電ムラなどの問題は殆どないので、先に述べた公報では帯電方法に特に言及していないものと思われる。
しかし、最近では省電力化,オゾン発生量低減化などの観点から、接触あるいは近接などの帯電方式が広く使用されるようになってきた。特に、接触帯電方式が広く普及しつつある。
【0007】
接触帯電方式では、摩擦帯電,電荷注入帯電,気中放電の三種類の帯電過程があるとされている。このうち、ニップ近傍での発光現象,微量のオゾン発生,パッシェンの法則による感光体表面と帯電装置の空隙と空隙の破壊電圧の関係の理論値と実験値がほぼ一致している等の報告から、気中放電による帯電過程が支配的であると考えられる。
【0008】
この法則によれば、帯電装置の表面と感光体の表面との間の空隙が小さくなり、両表面の電位差が放電限界電圧を超えると、放電が始まって両表面の電位差が小さくなるように電荷が移動し、感光体表面が帯電される。ここで、帯電装置が均一に接触していれば、どの部分でも同じ空隙となり、同じ放電限界電圧で放電して帯電が実施される。
【0009】
しかし、現実には、帯電装置と感光体との接触状態には局部的に微妙なバラツキが生じている。接触の状態が変わると、感光体表面層と帯電装置表面層との間の空隙が場所によって異なり、均一にならない。放電限界電圧は、空隙間隔によって一意的に決まる。このため、放電開始時期が場所によって変わり、放電にムラが生じる可能性がある。放電ムラが生じると、帯電装置と感光体表面の電位差が場所によって異なる現象が生じやすくなって、感光体表面の電位に分布を生じ、これが帯電ムラの原因となる。特に、バイアスにDC印加のみを使用した場合は、放電が帯電装置表面から感光体表面の一方向にしか実施されないため、こうした帯電ムラが生じやすい。
【0010】
帯電ムラを生じると、感光体表面電位にムラが生じ、感光体表面から自由空間へ張り出す静電潜像電界にバラツキが生じ、トナー粒子の付着量が場所によって異なってしまうため、画像に濃淡が発生し、高精細な画像,細線などではトナー抜けなどの現象が発生して、悪い影響を及ぼす。
【0011】
さらに、トナー粒子についても、8μm以下であることだけでは、先に述べた課題を解決するには至らない。トナーの粒径のみならず、その粒径分布と1個1個の形状も、最終的に可視化される印字物,印画物の品質を決定する大事な要因となる。
従来のトナーは、例えば、着色剤,帯電制御剤,樹脂結着剤他を混合し、次いで粉砕,分級して得られる。こうした製造法でも、粉砕,分級の条件を適宜選ぶことによって小粒径なトナーを製造しうるが、粉砕したトナーであるが為に不定形となり、しかも分級しても粒度分布にバラツキがあり、かつ微粉の混入を完全には避けられない。
【0012】
極端に小さい微粉については、帯電性が強いため、トナー粒子の帯電性にバラツキを生じて、画像の濃淡に影響を及ぼす。従って、上述の製造法によって得られたトナーを用いた場合、先に述べた公報の組み合わせ技術を駆使しても、静電潜像の上に付着させるべきトナーの形状が不安定かつ粒径にバラツキがあるために、トナー粒子の均一帯電および細密充填がなされないため、結果として1ドットの濃度がでにくく、高精細な画像は得られない。
【0013】
一方、電子写真方式の画像形成装置において、像担持体として感光体を、像担持体を帯電する手段として帯電ローラを有する電子写真カートリッジ(感光体カートリッジ)が多く用いられている。そして、近年、感光体カートリッジの小型化,軽量化が強く求められ、構成物である帯電ローラや感光体にも、小径化などによる小型化,省スペース化,軽量化が要求されている。
【0014】
しかし、小型化により帯電ローラの外径が小さくなる一方で、画像形成過程を高速化すると帯電ローラの回転数が増加するため、回転軸に対して帯電ローラが垂直方向に振動してしまい、特に両端支持部よりも中央に近くなるほど感光体との接触が不良になりやすく、帯電不良の原因となる。
【0015】
こうした振動を防ぐためには、帯電ローラの芯金を太くするなどして帯電ローラの重量を増やすなどの対策が考えられるが、この場合には芯金上の弾性体の厚さを薄くすることが必要となる。その結果、帯電ローラの見かけの硬度が硬くなってしまうため、帯電ローラの寸法精度が充分でない場合や、帯電時に直流と交流とを重畳させている場合には、共振によって感光体とのニップ幅が充分に取れなくなり、やはり帯電不良が生じやすくなる。
【0016】
以上の理由から、小径感光体を使う場合には、接触帯電を使用できず、コロナ帯電などの非接触帯電装置を用いなければならない等の問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、従来技術における上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明の目的は、帯電ローラと感光体との接触状態を均一にして帯電ムラを少なくし、高階調,高解像度の潜像を忠実に再現できるようにするとともに、装置の小型化・高速化にも対応できるようにした感光体カートリッジ,画像形成装置および画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定のオキシチタニウムフタロシアニンを電荷発生材料として用いた感光体と、この感光体との接触面に硬度の低い弾性層を設けた帯電ローラとの組み合わせによって、上記課題が解決できることを見出し本発明に到達した。
【0019】
すなわち、本発明の要旨は、少なくとも感光体および帯電装置を備えた感光体カートリッジにおいて、該感光体が、直径10〜40mmの円筒状に形成されるとともに、CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)27.3゜に主要な回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを含有する感光層を有し、該帯電装置が、直径5〜20mmの帯電ローラとして構成されるとともに、該帯電ローラが、アスカーC型硬度計による測定硬度が20°〜70°であって該感光体との接触面を形成する弾性層を有することを特徴とする、感光体カートリッジに存する。
【0020】
また、本発明の別の要旨は、上記の感光体カートリッジに加えて、露光装置およびトナーを備えたことを特徴とする、画像形成装置に存する。
【0021】
さらに、本発明の別の要旨は、CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)27.3゜に主要な回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを含有する感光層をそなえた、直径10〜40mmの円筒状に形成された感光体を使用し、上記感光体の表面を、アスカーC型硬度計による測定硬度が20°〜70°であって該感光体との接触面を形成する弾性層を有する直径5〜20mmの帯電ローラとして構成された帯電装置を用いて接触帯電させ、該接触帯電させた上記感光体表面に対してデジタル像露光を行ない、該像露光によって形成された上記感光体上の静電潜像を体積平均粒径が3〜8μmであるトナーを用いて現像することを特徴とする、画像形成方法に存する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の感光体カートリッジ,画像形成装置および画像形成方法によれば、特定のオキシチタニウムフタロシアニンを電荷発生材料として用いた感光体と、この感光体との接触面に硬度の低い弾性層を設けた帯電ローラとを組み合わせて使用することにより、帯電ローラと感光体との接触状態が均一となって帯電ムラが少なくなり、高階調,高解像度の潜像を忠実に再現できるとともに、装置の小型化・高速化にも有利に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[電子写真装置の概要]
まず、本発明の感光体カートリッジおよびそれを備えた電子写真装置(画像形成装置)の概要を、フルカラー画像形成方法の一例である非磁性1成分系トナーを使用する電子写真装置について説明するが、本発明はこの一例に限定されるものではない。なお、以下の記載においては、電子写真装置を電子写真記録装置ということもある。
【0024】
図1は、本発明に用いられる電子写真装置の一実施態様の要部構成を示す概略図であるが、この電子写真装置は、感光体1,帯電装置2,露光装置3,現像装置4,転写装置5,クリーニング装置6および定着装置7を有している。
【0025】
ここで、感光体1は、例えばアルミニウムなどの導電体により形成された円筒状のもので、外周面に感光導電材料を塗布して感光層を形成したものである。この感光体1の外周面に沿って、帯電装置2,露光装置3,現像装置4,転写装置5およびクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
【0026】
本発明において、帯電装置2は、感光体1と接触して感光体1を帯電させるローラ型の帯電装置(帯電ローラ)であって、感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。
【0027】
ここで、感光体1と帯電装置2は、多くの場合、この両方を備えたカートリッジ(以下、感光体カートリッジと称す)として、電子写真装置の本体から取り外し可能に設計されている。そして、例えば感光体1や帯電装置2が劣化した場合に、この感光体カートリッジを電子写真装置本体から取り外し、別の新しい感光体カートリッジを電子写真装置本体に装着することができるようになっている。また、トナーについても、多くの場合、トナーカートリッジ中に蓄えられて、電子写真装置の本体から取り外し可能に設計され、カートリッジ中のトナーが無くなった場合に、このトナーカートリッジを電子写真装置本体から取り外し、別の新しいトナーカートリッジを装着することができるようになっている。さらに、感光体1,帯電装置2,トナーが全て備えられたカートリッジも用いられる。
【0028】
露光装置3は、感光体1の感光面にLEDやレーザー光などで露光を行なって、感光体1の感光面に静電潜像を形成するものである。
【0029】
現像装置4は、現像槽41,アジテータ42,供給ローラ43,現像ローラ44,規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジなどの容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
【0030】
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄,ステンレス鋼,アルミニウム,ニッケルなどの金属ロール、またはこうした金属ロールにシリコン樹脂,ウレタン樹脂,フッ素樹脂などを被覆した樹脂ロールなどからなる。現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
【0031】
現像ローラ44は、感光体1と供給ローラ43との間に配置され、感光体1および供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43および現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、感光体1の表面に接触させる。
【0032】
規制部材45は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂などの樹脂ブレード、ステンレス鋼,アルミニウム,銅,真鍮,リン青銅などの金属ブレード、またはこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
【0033】
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
【0034】
転写装置5は、感光体1に対向して配置された転写チャージャー,転写ローラ,転写ベルト等から構成される。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙,媒体)Pに転写するものである。
【0035】
クリーニング装置6は、ウレタン等のブレード,ファーブラシなどのクリーニング部材から構成されるもので、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。
【0036】
定着装置7は、上部定着部材(定着ローラ)71および下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71または72の内部には加熱装置73がそなえられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73がそなえられた例を示す。上部および下部の各定着部材71,72は、ステンレス,アルミニウムなどの金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、さらにテフロン樹脂で被覆した定着ロール、定着シートなどが公知の熱定着部材を使用することができる。さらに、各定着部材71,72は、離型性を向上させる為にシリコンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
【0037】
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
【0038】
以上のように構成された電子写真装置では、次のようにして画像の記録が行なわれる。即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。
【0039】
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
【0040】
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、いわゆる反転現像法により、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
【0041】
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
【0042】
次に、非磁性1成分系トナーをフルカラーとして使用する、タンデム方式の電子写真装置(画像形成装置)の一例について説明する。図2は、本発明に用いられるフルカラータンデム方式の電子写真装置の一実施態様の要部構成を示す概略図であり、感光体1,帯電装置2,露光装置3,ブラック現像装置4k,シアン現像装置4c,イエロー現像装置4y,マゼンタ現像装置4m,転写装置5および定着装置7を有し、ここではクリーニング装置は省略した。この電子写真装置では、マゼンタ,イエロー,シアンおよびブラックの各トナーTk,Tc,Ty,Tmを多層に重ねて所望する色に調整することで、カラー画像を得ることができる。
【0043】
なお、図2中、図1と同一の符号は同一もしくはほぼ同一の部分を示しているので、その説明は省略する。また、現像装置4k,4c,4yおよび4mは、それぞれ図1の現像装置4と同様に構成され、各色に対応したトナーTk,Tc,TyおよびTmによる現像を行なうものである。
【0044】
タンデム方式の場合、シアン,イエロー,マゼンタのカラー現像部がブラック現像部よりも前に(上流側に)位置する方が、ブラックトナーの逆転写などによる混色が少なくなる。また、ブラック現像部がカラー現像部より後ろに(下流側に)位置する方が、ブラックだけの単色で画像形成する場合にカラートナーの感光体カブリによる混色が少なくなる上に、ブラック画像形成の際には、カラー現像部をショートパスして記録紙Pを搬送することにより、画像形成の速度アップすることができる。従って、本発明の画像形成方法をフルカラー画像形成に適用する場合には、電子写真装置を図2に示す様に、カラー現像部が前、ブラック現像部が後にそれぞれ位置するような構成とするのが好ましい。なお、シアン,マゼンタ,イエローの各カラー現像部の位置する順番は、適宜自由に変更することができる。
【0045】
[感光体]
次に、本発明で用いられる感光体(図1,2の符号1参照)について、以下に詳細に説明する。
【0046】
本発明に用いられる感光体は、導電性支持体上に少なくとも感光層を有する。また、好ましくは、電荷発生層と電荷移動層が積層された積層型の構成をとる。電荷発生層と電荷移動層は、通常は電荷発生層の上に電荷移動層が積層された構成をとるが、逆の構成でも良い。
【0047】
また、これらの他に、接着層,ブロッキング層等の中間層や保護層など、電気特性,機械特性の改良のための層を設けても良い。導電性支持体としては、周知の電子写真感光体に採用されているものがいずれも使用できる。
【0048】
導電性支持体としては、具体的には、例えばアルミニウム,ステンレス,銅等の金属ドラム,シートあるいはこれらの金属箔のラミネート物,蒸着物が挙げられる。更に、金属粉末,カーボンブラック,ヨウ化銅,高分子電解質等の導電性物質を適当なバインダーとともに塗布して導電処理したプラスチックフィルム,ブラスチックドラム,紙,紙管等が挙げられる。また、金属粉末,カーボンブラック,炭素繊維等の導電性物質を含有し、導電性となったプラスチックのシートやドラムが挙げられる。また、酸化スズ,酸化インジウム等の導電性金属酸化物で導電処理したプラスチックフィルムやベルトが挙げられる。
【0049】
電荷発生層は、少なくともバインダーポリマーおよび電荷発生剤を含んでいる。本発明では、電荷発生剤としてオキシチタニウムフタロシアニンが用いられる。これに加え、必要に応じて、有機光導電性化合物,色素,電子吸引性化合物等を含んでいても良い。
【0050】
電荷発生層に用いられるバインダーポリマーとしては、スチレン,酢酸ビニル,塩化ビニル,アクリル酸エステル,メタクリル酸エステル,ビニルアルコール,エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体および共重合体,ポリビニルアセタール,ポリカーボネート,ポリエステル,ポリアミド,ポリウレタン,セルロースエステル,セルロースエーテル,フェノキシ樹脂,けい素樹脂,エポキシ樹脂等が挙げられる。オキシチタニウムフタロシアニンとバインダーポリマーとの割合は、特に制限はないが、一般には、オキシチタニウムフタロシアニン100重量部に対し、5〜500重量部、好ましくは20〜300重量部のバインダーポリマーを使用する。
【0051】
本発明の特徴の一つは、電荷発生剤として、特定の結晶型オキシチタニウムフタロシアニンを用いることにある。本発明に用いられる結晶型オキシチタニウムフタロシアニンは、CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)27.3゜に主要な回折ピークを示すものである。なお、X線回折は、一般的なブラッグ−ブレンターノの集中法で測定される。また、回折強度は、通常はcpsで表示される。
【0052】
この結晶型オキシチタニウムフタロシアニンは、例えば、特開昭62−67094号公報の第2図(同公報ではII型と称されている),特開平2−8256号公報の第1図,特開昭64−17066号公報の第1図,特開昭63−20365号公報の第1図,電子写真学会誌第92巻(1990年発行)第3号第250〜258頁(同刊行物ではY型と称されている)に示されている。本明細書では、本発明に用いられる結晶型オキシチタニウムフタロシアニンを、学術発表での呼称に従いY型と呼ぶこととする。
【0053】
Y型は、ブラッグ−ブレンターノの集中法によれば、27.3°に主要な(そして多くの場合は最大の)回折ピークを示すことが特徴であることから、α型、β型と区別される。例えば、特開平3−128973号公報,特開平3−269064号公報に記載の結晶も、結晶性は異なるが、結晶型はY型であると考えられる。
【0054】
また、このY型において、27.3°以外の主要なピークは、その結晶性によってピーク強度比が変化したり、ピークがブロードになってピークトップ位置がずれたりすることがあり得るものの(これは、結晶が強固ではないことを示している)、典型的には7.4゜,9.7゜,24.2゜に現れる。
【0055】
また、最近では、結晶の配向性を極力排除した透過法によるX線回折が行なわれるようになってきたが、試料ホルダーとしてキャピラリーを使用した1.2085Åによる透過法X線回折においては、Y型はブラッグ角(2θ±0.2)21.3°に最大のピークを、18.9°,7.6°,5.8°にその他の主要なピークを示す。これは、CuKα線による測定にて現れる主要なピークである27.3゜,24.2゜,9.7゜,7.4゜にそれぞれ対応している。なお、高解像度のX線回折では、9.7゜に相当するピークは2本あるいはそれ以上に分解される。
【0056】
本発明においては、感度を調節する等の目的で、Y型オキシチタニウムフタロシアニン以外の電荷発生剤を混合して用いても良いが、混合する場合には、電荷発生物質がα型オキシチタニウムフタロシアニン,β型オキシチタニウムフタロシアニン等のチタン含有フタロシアニン系化合物とのみ混合するのであれば、電荷発生剤中のY型オキシチタニウムフタロシアニンの割合は通常30重量%以上であり、50%重量以上が好ましく、70重量%以上が更に好ましい。また、チタン含有フタロシアニン系化合物以外の電荷発生剤とも混合するのであれば、電荷発生剤中のY型オキシチタニウムフタロシアニンの割合は通常40重量%以上であり、60%重量以上が好ましく、80重量%以上が更に好ましい。
【0057】
電荷発生層の膜厚は、0.05〜5μm、好ましくは0.1〜2μmである。電荷発生層から電荷キャリアーが注入される。電荷移動層は、キャリアーの注入効率と移動効率の高いキャリアー移動媒体(電荷移動剤)を含有する。
【0058】
電荷移動層は、少なくともバインダーおよび電荷移動剤を含んでおり、これに、必要に応じ、酸化防止剤,増感剤,可塑剤,流動性付与剤,架橋剤等の各種添加剤が含まれていても良い。
【0059】
電荷移動剤としては、高分子化合物として、ポリ−N−ビニルカルバゾール,ポリスチリルアントラセンのような複素環化合物や縮合多環芳香族化合物を側鎖に有する高分子化合物、低分子化合物として、ピラゾリン,イミダゾール,オキサゾール,オキサジアゾール,トリアゾール,カルバゾール等の複素環化合物,トリフェニルメタンのようなトリアリールアルカン誘導体,トリフェニルアミンのようなトリアリールアミン誘導体,フェニレンジアミン誘導体,N−フェニルカルバゾール誘導体,スチルベン誘導体,ヒドラゾン化合物などが挙げられるが、特に、置換アミノ基やアルコキシ基のような電子供与性基あるいはこれらの置換基を有する芳香族環基が置換した電子供与性の大きい化合物が挙げられる。
【0060】
これらの中でも、分子内に以下の式(1),式(2),式(3),式(4)または式(5)で表される原子団を有する化合物が好ましい。
【0061】
【化1】

式(1)
【0062】
【化2】

式(2)
【0063】
【化3】

式(3)
【0064】
【化4】

式(4)
【0065】
【化5】

式(5)
【0066】
電荷移動層に用いられるバインダーとしては、上記電荷移動剤との相溶性が良く、塗膜形成後にキャリアー移動媒体が結晶化したり、相分離することのないポリマーが好ましく、それらの例としては、スチレン,酢酸ビニル,塩化ビニル,アクリル酸エステル,メタクリル酸エステル,ブタジエン等のビニル化合物の重合体および共重合体,ポリビニルアセタール,ポリカーボネート,ポリエステル,ポリスルホン,ポリフェニレンオキサイド,ポリウレタン,セルロースエステル,セルロースエーテル,フェノキシ樹脂,けい素樹脂,エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、耐久性の点からポリエステル樹脂が好ましく、また、電気特性の点からポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0067】
電荷移動剤が高分子化合物の場合には、特にバインダーポリマーを用いなくても良いが、可とう性の改良等で混合することも行なわれる。低分子化合物の場合は、成膜性のためにバインダーポリマーが用いられ、その使用量は、通常電荷移動材100重量部に対し50〜3000重量部、好ましくは70〜1000重量部の範囲である。電荷移動層にはこの他に、塗膜の機械的強度や、耐久性向上のための種々の添加剤を用いることができる。このような添加剤としては、周知の可塑剤や、種々の安定剤、流動性付与剤、架橋剤等が挙げられる。
【0068】
[帯電装置]
次に、本発明で用いられる帯電装置(図1,図2の符号2参照)について、以下に詳細に説明する。
【0069】
(帯電の方法および形状)
本発明に用いられる帯電の方法としては、接触式が採用される。接触帯電は、スコロトロン帯電等の非接触式帯電方式に比べ、簡易な装置によって行なうことができ、装置の小型・軽量化が図りやすいという利点を有する。さらに、オゾン発生量が少ないこと、帯電させるのに必要な電源を小さくできることなどからも、接触式が利点を有する。
【0070】
(帯電装置の材質)
本発明で用いられる帯電装置は、接触式または近接式の帯電方式に用いられる装置で、本発明においては、直径が5〜20mmの円筒状の外形を有する、一般に帯電ローラと呼ばれるものとして構成される。帯電ローラの直径が上記範囲よりも小さい場合には、回転時の精度が悪くなり、上記範囲よりも大きい場合には、小型軽量化に不都合を生じる。また、帯電ローラの直径は7mm以上が好ましく、8mm以上が更に好ましい。また、18mm以下が好ましく、16mm以下が更に好ましい。
【0071】
帯電ローラの構成としては、導電性の芯材上に半導電性の弾性層を設けたものが用いられる。以下、弾性層とは、帯電ローラの導電性芯材以外の部分を呼ぶものとする。
【0072】
導電性の芯材としては、通常金属が用いられる。また、芯材上に設けられる弾性層の材質としては、半導電性であれば特に限定されるものではないが、一般的には高分子重合体組成物、例えば、加硫系・架橋系のゴム,熱硬化性樹脂,光硬化性樹脂,熱可塑性樹脂などに導電性を付与したものが使用される。特に、加工性や柔軟性などの面から、加硫系・架橋系ゴムおよび熱可塑性樹脂が好ましい。
【0073】
加硫系・架橋系ゴムとしては、特に限定されるものではないが、例えばEPDM,ポリブタジエン,天然ゴム,ポリイソプレンゴム,SBR,CR,NBR,シリコンゴム,ウレタンゴム,エピクロルヒドリンゴムなどがあり、熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばポリオレフィン系,ポリスチレン系,ポリエステル系,ポリアミド系,ポリウレタン系,ポリカーボネート,フッ素系,シリコン系などがある。
【0074】
特に、廃棄物を低減化させるためのリサイクル性の点から、熱可塑性樹脂が好ましい。また、硬度が低い材質の方が、弾性層の表面が粗くても感光体との接触を確実に確保して帯電ムラを生じ難くできるので、より好ましい。このため、先に述べた熱可塑性樹脂の中では、熱可塑性エラストマーのような柔らかいものが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、硬度が低い点からスチレン系熱可塑性エラストマーが好ましく、トナーの離型性が良好な点からオレフィン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0075】
本発明では、アスカーC硬度計による弾性層の測定硬度が20°〜70°となるように、弾性層を形成する。高速印刷になればなるほど、振動等の原因によって、OPCとの接触部分の接触幅に振れが生じやすくなる。接触幅が変化すると、OPCと弾性層との放電タイミングが変化して、帯電ムラが生じる原因となる可能性がある。特に、帯電ローラの硬度が硬い場合には、微妙な寸法のズレがあっても接触不良を生じることがある。このような現象を改善するためには、硬度の低い帯電ローラを用いて接触幅を大きくし、振動しても感光体との接触が不良とならないように構成することにより解決できる。硬度としては、より柔らかい方が好ましく、具体的には65°以下、更には60°以下のものが好ましい。また、あまり柔らかすぎると感光体との接触幅が増して、感光体表面および弾性層表面を早期に磨耗させてしまうので、25°以上が好ましい。
【0076】
(導電性を付与させる方法)
先に述べた高分子重合体組成物に、導電性フィラーや帯電防止剤などを分散させる方法がある。導電性フィラーとしては、例えば、カーボンブラック,カーボン系導電性フィラー,金属系導電性フィラー,金属酸化物系導電性フィラーなどがある。帯電防止剤としては、例えば、多価アルコール類の脂肪酸エステル,エステル型ポリエチレングリコール,硫酸エステル塩,スルホン酸塩,ジエタノールアミド型活性剤,第4級アンモニウム塩,ベタイン類,アミノ酸類,エチレンオキサイド付加物などがある。また、エーテル結合をもつ高分子重合体組成物を使用して導電性を発現する方法や、これにイオン性物質を添加させる方法もある。
【0077】
エーテル結合をもつ高分子重合体組成物としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレンオキサイド,ポリプロピオンオキサイド,エピクロルヒドリンゴム,エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体ゴム,ウレタン樹脂,ナイロン−ウレタン共重体組成物などがあり、これらに添加させるイオン性物質としては、アルカリ金属塩,過塩素酸塩などがある。また、ポリアセチレン,ポリピロール,ポリチオフェンなどの導電性高分子も材質として使用することもでき、またこれらを導電性フィラーとして使用することもできる。
【0078】
(帯電装置の構造)
弾性層の構造は、単層でもよく、積層されたものでも良い。弾性層を積層して形成する場合は、各層に機能を分担させる方法があり、例えば、芯材の上に半導電性弾性層、さらにその上に抵抗値調整層を、さらに保護層を形成させる方法がある(特開平2−311868号公報)。また、半導電性弾性層を発泡して硬度を低くし、その上に表面層を形成する方法がある(特開平8−240962号公報)。
【0079】
(帯電装置の成形方法)
半導電性弾性層については、特に限定されるものではないが、押出成形,圧縮成形,射出成形などがある。加硫系ゴムの場合は、形状を形成後、必要に応じて加硫工程を実施し加工する。熱可塑性樹脂の場合は、加硫工程を必要としないため、加硫ゴム系と比較して製造工程を簡略化できる。また、射出成形などは、成形後パーティングラインなどが発生し、後から研磨にて寸法調整が必要となる。このような工程を必要としない押出成形が、製造上の容易さの面から好ましい。押出成形による成形方法としては、芯金の上に溶融した樹脂を被覆する押出被覆成形が好ましい(特開平11−5239号公報)。
【0080】
また、半導電性弾性層の上に抵抗値調整層,保護層,表面層などを積層して形成する場合には、溶剤可溶性の樹脂などを溶剤に溶かし、導電性付与を行なって、ディッピング、スプレーなどの方法で塗布したり、チューブ状の収縮チューブなどを被せたりする方法がある。
【0081】
(積層時に使用する材料)
積層の目的によって使用する材料は異なるが、高分子重合体組成物に対して先に述べた導電性付与を行なった場合に、体積抵抗値が10-3〜1013Ω・cmとなるような材料が好ましい。また、積層によって最表面となる層に使用する材料としては、現像剤の離型性に優れたフッ素系高分子重合体組成物やポリオレフィン系,ポリアミド系,ポリウレタン系,シリコン系の高分子重合体組成物が好ましい。
【0082】
(その他)
本発明に用いられる帯電装置は、弾性層の体積抵抗値が10-3〜1013Ω・cmであるものが好ましい。弾性層の体積抵抗値としては、103〜1012Ω・cmがさらに好まく、106〜1010Ω・cmが特に好ましい。
【0083】
[露光装置]
次に、本発明で用いられる露光装置(図1,図2の符号3参照)について説明する。
【0084】
感光体に潜像を形成するために露光を行なう露光装置としては、デジタル露光を行なう装置が用いられるが、上記のY型オキシチタニウムフタロシアニンの吸光度を考慮すると、530〜850nmのレーザー光を発する露光装置が好ましい。より具体的には、635nm付近,650nm付近,780nm付近のレーザー光を発する露光装置が好ましい。
【0085】
また、本発明の露光装置は、本発明の特定の構造を有する感光体と帯電ローラとの組み合わせによる利点、すなわち、高階調,高解像度の潜像を忠実に再現できるという利点を生かすため、高記録密度にてデジタル像露光を行なうものであることが好ましい。具体的には、デジタル像露光における記録ドット密度が600ドット/インチ以上であることが好ましく、特に1200ドット/インチ以上であることが好ましい。
【0086】
[トナー]
次に、本発明に用いられるトナー(図1の符号Tや図2の符号Tk,Tc,Ty,Tm参照)について、以下に詳細に説明する。
本発明のトナーは、少なくとも結着樹脂(バインダー樹脂)および着色剤を含む。その他必要に応じて、帯電制御剤,ワックスその他の添加剤を含んでもよい。
【0087】
本発明に用いられるトナーを製造する方法としては、従来の粉砕トナーにおいて分級機の精度を上げる方法や、懸濁重合法、乳化重合凝集法等の湿式重合法により製造する方法があるが、本発明に用いられるトナーを効率よく作成するには湿式重合法が好ましい。中でも、本発明の粒径および円形度を持つトナーを効率的に作成できること、粒度分布の制御が容易であること等から、乳化重合凝集法を用いることが更に好ましい。
【0088】
トナーに用いられる結着樹脂は、従来公知のものを含む広い範囲から選択できる。好ましくは、スチレン−アクリル酸エステル共重合体,スチレン−メタクリル酸エステル共重合体またはこれらの樹脂のアクリル酸共重合体等のスチレン系ポリマー,飽和もしくは不飽和ポリエステル系ポリマー,エポキシ系ポリマーを挙げることができる。また、上記結着樹脂は単独で使用するに限らず、2種以上併用することもできる。
【0089】
着色剤は、無機顔料,有機顔料,有機染料のいずれでも良く、またはこれらの組み合わせであっても良い。これらの具体的な例としては、カーボンブラック,アニリンブルー,フタロシアニンブルー,フタロシアニングリーン,ハンザイエロー,ローダミン系染顔料,クロムイエロー,キナクリドン,ベンジジンイエロー,ローズベンガル,トリアリルメタン系染料,モノアゾ系,ジスアゾ系,縮合アゾ系染顔料など、公知の任意の染顔料を単独あるいは混合して用いることができる。フルカラートナーの場合には、イエローとしてベンジジンイエロー,モノアゾ系,縮合アゾ系染顔料、マゼンタとしてキナクリドン,モノアゾ系染顔料、シアンとしてフタロシアニンブルーをそれぞれ用いるのが好ましい。
【0090】
以上の中でも、シアン着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3、イエロー着色剤としては、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、マゼンタ着色剤としては、C.I.ピグメントレッド238、C.I.ピグメントレッド269、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド122等が、それぞれ好ましい。
【0091】
着色剤の添加量は、結着樹脂100重量部に対して2〜25重量部の範囲が好ましい。
【0092】
本発明に用いられるトナーには、帯電量の均一化や帯電安定性の付与のため、帯電制御剤を添加しても良い。
【0093】
帯電制御剤としては、公知の任意のものを単独ないしは併用して用いることができる。正帯電性としては、例えば、4級アンモニウム塩,塩基性・電子供与性の金属物質などが挙げられ、負帯電性としては、例えば、金属キレート類,有機酸の金属塩,含金属染料,ニグロシン染料,アミド基含有化合物,フェノール化合物,ナフトール化合物およびそれらの金属塩,ウレタン結合含有化合物,酸性もしくは電子吸引性の有機物質が挙げられる。
【0094】
また、カラートナー(図2の符号Tc,Ty,Tm参照)への適応性(帯電制御剤自体が無色ないしは淡色でトナーへの色調障害がないこと)を勘案すると、正帯電性としては4級アンモニウム塩化合物が、負帯電性としてはサリチル酸もしくはアルキルサリチル酸のクロム,亜鉛,アルミニウムなどとの金属塩,金属錯体や、ベンジル酸の金属塩,金属錯体,アミド化合物,フェノール化合物,ナフトール化合物,フェノールアミド化合物、4,4′−メチレンビス〔2−〔N−(4−クロロフェニル)アミド〕−3−ヒドロキシナフタレン〕等のヒドロキシナフタレン化合物が好ましい。その使用量は、トナーに対する所望の帯電量により決定すればよいが、通常はバインダー樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部を、好ましくは0.1〜10重量部を用いる。
【0095】
本発明に用いられるトナーには、定着ローラ(図1,図2の符号71,72参照)との離型性を付与するために、ワックスを添加しても良い。ワックスとしては任意の公知のものを使用できるが、具体的には低分子量ポリエチレン,低分子量ポリプロピレン,共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス;パラフィンワックス;ベヘン酸ベヘニル,モンタン酸エステル,ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス;水添ひまし油カルナバワックス等の植物系ワックス;ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン;アルキル基を有するシリコーン;ステアリン酸等の高級脂肪酸;エイコサノール等の長鎖脂肪族アルコール;グリセリン,ペンタエリスリトール等の多価アルコールと長鎖脂肪酸により得られる多価アルコールのカルボン酸エステルまたは部分エステル;オレイン酸アミド,ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド;低分子量ポリエステル等が例示される。
【0096】
ワックスを添加する場合には、トナーの定着性を改善するために、ワックスの融点は30℃以上が好ましく、40℃以上が更に好ましく、50℃以上が特に好ましい。また、100℃以下が好ましく、90℃以下が更に好ましく、80℃以下が特に好ましい。融点が低すぎると定着後にワックスが表面に露出してべたつきを生じやすく、融点が高すぎると低温での定着性が劣る。
【0097】
さらに、ワックスの化合物種としては、脂肪族カルボン酸と一価もしくは多価アルコールとから得られるエステル系ワックスが好ましく、エステル系ワックスの中でも炭素数が20〜100のものが更に好ましく、炭素数が30〜60のものが特に好ましい。
【0098】
一価アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルの中で特に好ましい化合物として、ベヘン酸ベヘニルとステアリン酸ステアリルが挙げられる。また、多価アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルの中で特に好ましい化合物として、ペンタエリスリトールのステアリン酸エステルおよびその部分エステル,グリセリンのモンタン酸エステルおよびその部分エステルが挙げられる。
【0099】
上記ワックスは、単独で用いても良く、混合して用いても良い。また、トナーを定着する定着温度により、ワックス化合物の融点を適宜選択することができる。
【0100】
ワックスの添加量は、通常はトナー中に0.1〜40重量%であり、1〜40重量%が好ましく、5〜35重量%が更に好ましく、7〜30重量%が特に好ましい。懸濁重合法や乳化重合凝集法を用いれば、5〜40重量%の多量添加が可能であるので、必要に応じ多量に添加しても良い。
【0101】
次に、本発明に用いられるトナーの好ましい製造法として、湿式重合法について説明する。
【0102】
まず、本発明に用いられる静電荷像現像用トナーを、乳化重合凝集法を用いて得る場合には、着色剤,帯電制御剤,ワックスは分散液の状態で用いられる。これらは以下の様にして得ることができる。例えば、それぞれの物質をポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等で代表されるノニオン系の界面活性剤,アルキルベンゼンスルホン酸塩で代表されるアニオン系の界面活性剤,4級アンモニウム塩で代表されるカチオン系の界面活性剤等と水中に添加し、メディア等を入れた機械的粉砕法を使用することにより作製することができる。また、必要に応じて水溶性の有機溶剤を添加しても良い。それぞれの物質の分散径は、0.001〜5μm,好ましくは0.01〜1μmの範囲である。
【0103】
乳化重合凝集法では、ポリマー乳化液に着色剤分散液,帯電制御剤分散液,ワックス分散液等を混合し、温度,塩濃度,pH等を適宜制御することによってこれらを凝集し、トナーを製造する。
【0104】
得られたトナーは、表面に界面活性剤等が残存する。これらを除去するために適宜、酸洗浄,アルカリ洗浄,水洗浄等を実施しても良い。
【0105】
懸濁重合法では、重合性単量体に着色剤,帯電制御剤,ワックス等を混合し、ディスパーザー等の分散機を用いて分散処理を行ない、この分散処理後の単量体組成物を水混和性媒体の中で適当な攪拌機を用いてトナー粒径に造粒し、その後重合性単量体を重合させてトナーを製造する。
【0106】
懸濁安定剤を用いる場合には、重合後にトナーを酸洗浄することにより容易に除去が可能な様に、水中で中性またはアルカリ性を示すものを選ぶことが好ましい。さらに、粒度分布の狭いトナーが得られるものを選ぶことが好ましい。これらを満足する懸濁安定剤としては、リン酸カルシウム,リン酸三カルシウム,リン酸マグネシウム,水酸化カルシウム,水酸化マグネシウム等が挙げられる。それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。これらの懸濁安定剤は、ラジカル重合性単量体に対して1〜10重量部使用することができる。
【0107】
乳化重合凝集法および懸濁重合法に用いられる重合開始剤としては、公知の重合開始剤を1種または2種以上組み合わせて使用することができる。例えば、過硫酸カリウム、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビスイソ(2,4−ジメチル)バレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、またはレドックス系開始剤などを使用することができる。これらの中で、乳化重合凝集法ではレドックス系開始剤が好ましく、懸濁重合法ではアゾ系開始剤が好ましい。
【0108】
上記方法によりトナーを製造した後に、ポリマー乳化液,着色剤分散液,帯電制御剤分散液,ワックス分散液等を添加してトナー表面を被覆することにより、カプセル構造を持つトナーとしても良い。
【0109】
特に、トナーの円形度および粒度分布を好適な範囲にするためには、トナーの製造法として乳化重合凝集法を採用するのが好ましい。
【0110】
さらに、低温定着性および離型性を高めるためには、上述のワックスを通常0.01μm〜3μm、好ましくは0.1〜2μm、更に好ましくは0.3〜1.5μmの体積平均粒径となるように、界面活性剤を用いてワックス微粒子の分散液とし、このワックス微粒子の分散液の存在下に、スチレン,アクリル酸,アクリル酸エステル等のモノマー混合物を追加混合しつつ乳化重合を行なって(いわゆるワックスシード重合)ワックスを含有し、通常0.02μm〜3μm、好ましくは0.05μm〜3μm、更に好ましくは0.1μm〜2μm、特に好ましくは0.1μm〜1μmの体積平均粒径である重合体一次粒子を作成し、このワックスを含有する重合体一次粒子を電解質を添加すること等によって凝集し、好ましくは重合体一次粒子のガラス転移温度以上に一定時間保持して重合体一次粒子同士を融着して、好ましくは体積平均粒径が3〜8μmのトナー粒子とする。
【0111】
本発明に用いられる静電荷像現像用トナーには、流動性や現像性を制御する為に公知の外添剤を添加しても良い。外添剤としては、シリカ,アルミナ,チタニア等の各種無機酸化粒子(必要に応じて疎水化処理する)、ビニル系重合体粒子等が使用できる。外添剤の添加量は、トナー粒子に対して0.05〜5重量部の範囲が好ましい。
【0112】
本発明のトナーは、2成分現像剤,マグネタイト含有トナー等の磁性1成分現像剤,非磁性1成分現像剤に適用することができる。
【0113】
本発明のトナーを2成分現像剤として用いる場合には、トナーと混合して現像剤を形成するキャリアとして、公知の鉄粉系,フェライト系,マグネタイト系キャリア等の磁性物質またはそれらの表面に樹脂コーティングを施したものや、磁性樹脂キャリアを用いることができる。
【0114】
キャリアの被覆樹脂としては、一般的に知られているスチレン系樹脂,アクリル樹脂,スチレンアクリル共重合樹脂,シリコーン系樹脂,変性シリコーン系樹脂,フッ素系樹脂等が利用できるが、これらに限定されるものではない。キャリアの平均粒径は、特に制限はないが10〜200μmの平均粒径を有するものが好ましい。これらのキャリアは、トナー1重量部に対して5〜100重量部使用することが好ましい。
【0115】
本発明においては、トナーの形状を定量化する方法として、シスメックス社製フロー式粒子像分析装置FPIA−2000にてトナーを測定し、下記式より求められた値の50%における累積粒度値に相当する円形度を、50%円形度と定義する。
円形度=粒子投影面積と同じ面積の円の周長/粒子投影像の周長
【0116】
本発明におけるトナーの50%円形度は、トナー粒子の凹凸の度合いを示し、トナーが完全な球形の場合、1となる。表面形状が複雑になるほど円形度の値は小さくなる。本発明に用いられるトナーは、この円形度が、0.9以上が好ましく、0.92以上が更に好ましく、0.95以上が特に好ましい。また、完全な球を作ることは製造上困難であるので、好ましくは0.995以下であり、更に好ましくは0.99以下である。
【0117】
また、本発明においては、トナーの粒子径を規定する方法として、ベックマン・コールター株式会社製の精密粒度分布測定装置コールター・カウンター マルチサイザーIIを用いる。
【0118】
本発明に用いられるトナーは、上記コールターカウンターで測定した体積平均粒径として3〜8μmが好ましく、4〜7.5μmが更に好ましい。
【0119】
また、トナーの粒度分布はシャープである方が、粒子個体間での帯電性が均等となりやすく好ましい。具体的には、体積平均粒径(DV)と個数平均粒径(DN)との関係が1.0≦DV/DN≦1.3を満たすものが好ましい。
【0120】
また、0.6μm〜2.12μmの微細な粒子を測定するには、シスメックス社製フロー式粒子像分析装置FPIA−2000を用いる。
【0121】
フロー式粒子像分析装置による0.6μm〜2.12μmの粒子の測定値(個数)が粒子の全数の15%以下であるトナーが好ましく、10%以下であるトナーが更に好ましい。これは、微細な粒子が一定量よりも少ないことを意味しているが、微細な粒子が少ない場合には、トナーの流動性が向上し、また、帯電性が均一となりやすい。
【0122】
[その他]
本発明において、上述のトナー,感光体,帯電装置および露光装置を用いて600dpi以上の画像を形成した場合に、高階調,高解像度の潜像を忠実に再現できる理由は、必ずしも明確ではないが、以下のように推測される。
【0123】
まず、帯電装置の直径が5〜20mm、好ましくは直径が7〜15mmであり、感光体の直径が10〜40mm、好ましくは15〜30mmと比較的小型である場合に、弾性層がC型アスカー硬度計で20°〜70°であれば、感光体との密着性が十分に得られ、弾性層の寸法精度や抵抗値の均一性が多少悪くても感光体と十分に接触し、放電ムラを小さくすることができる。
【0124】
さらに、直流電圧と交流電圧を重畳させているシステムで高速印字を行なうと感光体ドラムが共振する場合があるが、本発明では、硬度が比較的小さい、即ち、比較的柔らかい弾性層がドラムと接触しているので、共振が押さえられる上に、多少の共振が生じても、ドラムと弾性層との密着性が高いので、帯電の均一性が損なわれないものと考えられる。
【0125】
しかも、上記のオキシチタニウムフタロシアニンを感光体の電荷発生物質として用いることで、感光体が高感度,高γとなり、さらに十分な光応答性を示すので、ドット数が多く(特に600dpi以上)各ドットの露光時間が短い場合でも、即ち、より小型,高速の装置となった場合でも、十分なトナー濃度で現像することができる。
【0126】
そして、このような感光体と帯電装置を備えた感光体カートリッジと組み合わせて用いるトナーとしては、円形度が高く粒度分布のシャープなトナーが好ましい。このようなトナーを用いると、潜像上へのトナーの付着が良好になるので、高階調,高解像度の潜像を忠実に再現できる。
【実施例】
【0127】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例になんら制限されるものではない。
【0128】
なお、以下の例で「部」とあるのは「重量部」を意味する。また、平均粒径,重量平均分子量,ガラス転移温度(Tg)および50%円形度については、それぞれ下記の方法により測定した。
【0129】
平均粒径:ホリバ社製LA−500,日機装社製マイクロトラックUPA,コールター社製コールターカウンターマルチサイザーII型(コールターカウンターと略)により測定した。
【0130】
重量平均分子量(Mw):ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した(装置:東ソー社製GPC装置HLC−8020、カラム:Polymer Laboratory社製PL−gel Mixed−B 10μ、溶媒:THF、試料濃度:0.1重量%、検量線:標準ポリスチレン)。
【0131】
ガラス転移点(Tg):パーキンエルマー社製DSC7により測定した(30℃から100℃まで7分で昇温し、100℃から−20℃まで急冷し、−20℃から100℃まで12分で昇温し、2回目の昇温時に観察されたTgの値を用いた)。
【0132】
50%円形度:シスメックス社製フロー式粒子像分析装置FPIA−2000にてトナーを測定し、下記式より求められた値の50%における累積粒度値に相当する円形度を用いた。
円形度=粒子投影面積と同じ面積の円の周長/粒子投影像の周長
【0133】
[現像用トナーの製造−1]
(ワックス分散液)
脱塩水68.33部、ペンタエリスリトールのステアリン酸エステルを主体とするエステル混合物(ユニスターH476、日本油脂製)30部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ネオゲンSC、第一工業製薬社製、有効成分66%)1.67部を混合し、90℃で高圧剪断をかけ乳化し、エステルワックス微粒子の分散液を得た。LA−500で測定したエステルワックス微粒子の平均粒径は350nmであった。
【0134】
(重合体一次粒子分散液)
攪拌装置,加熱冷却装置,濃縮装置および各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器に上記ワックス分散液 35部,脱塩水397部を仕込み、窒素気流下で90℃に昇温して、8%過酸化水素水溶液1.6部,8%アスコルビン酸水溶液1.6部を添加した。
【0135】
その後、下の表1に示す組成のモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を重合開始から5時間かけて、同じく下の表1に示す組成の開始剤水溶液を重合開始から6時間かけて添加し、さらに30分保持した。
【0136】
【表1】

【0137】
重合反応終了後、冷却して、乳白色の重合体分散液を得た。重合体のTHF可溶分の重量平均分子量は139,000、UPAで測定した平均粒子径は201nm、Tgは不明瞭であった。
【0138】
(樹脂微粒子分散液)
攪拌装置,加熱冷却装置,濃縮装置および各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器に、15%ネオゲンSC水溶液6部,脱塩水372部を仕込み、窒素気流下で90℃に昇温して、8%過酸化水素水溶液1.6部,8%アスコルビン酸水溶液1.6部を添加した。
【0139】
その後、下の表2に示す組成のモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を重合開始から5時間かけて、同じく下の表2に示す組成の開始剤水溶液を重合開始から6時間かけて添加し、さらに30分保持した。
【0140】
【表2】

【0141】
重合反応終了後、冷却して、乳白色の重合体分散液を得た。重合体のTHF可溶分の重量平均分子量は57,000、UPAで測定した平均粒子径は56nm、Tgは84℃であった。
【0142】
(着色剤微粒子分散液)
ピグメントブルー15:3の水分散液(EP−700 Blue GA、大日精化製、固形分35%)を使用した。UPAで測定した平均粒径は150nmであった。
【0143】
(帯電制御剤微粒子分散液)
4,4′−メチレンビス〔2−〔N−(4−クロロフェニル)アミド〕−3−ヒドロキシナフタレン〕20部、アルキルナフタレンスルホン酸塩4部、脱塩水76部をサンドグラインダーミルにて分散し、帯電制御剤微粒子分散液を得た。UPAで測定した平均粒径は200nmであった。
【0144】
【表3】

【0145】
上の表3に示す組成の各成分を用いて、以下の手順によりトナーを製造した。
反応器に重合体一次粒子分散液と15%ネオゲンSC水溶液を仕込み、均一に混合してから、着色剤微粒子分散液を添加し、さらに均一に混合した。得られた混合分散液を攪拌しながら、硫酸アルミニウム水溶液を滴下した(固形分として0.6部)。その後、攪拌しながら30分かけて50℃に昇温して1時間保持し、さらに15分かけて60℃に昇温して30分保持した。帯電制御剤微粒子分散液,樹脂微粒子分散液,硫酸アルミニウム水溶液(固形分として0.07部)の順に添加し、10分かけて62℃に昇温して30分保持した。15%ネオゲンSC水溶液(固形分として3部)を添加してから40分かけて95℃に昇温して4時間保持した。その後冷却し、濾過,水洗し、乾燥することによりトナーを得た。
【0146】
このトナー100部に対して、疎水性の表面処理をしたシリカを0.6部混合して攪拌し、現像用トナーTD1を得た。
現像用トナーTD1のコールターカウンターによる体積平均粒径は7.6μm、体積平均粒径と数平均粒径の比は1.12、50%円形度は0.95であった。
【0147】
[感光体の製造−1]
(電荷発生層)
・β型オキシチタニウムフタロシアニン(β型TiOPc)の製造
フタロジニトリル97.5gをα−クロロナフタレン750ml中に加え、次に窒素雰囲気下で四塩化チタン22mlを滴下した。滴下後、昇温して、撹拌しながら200〜220℃で3時間反応させた後、放冷し、100〜130℃で熱時濾過し、100℃に加熱したα−クロロナフタレン200mlで洗浄した。更に、200mlのN−メチルピロリドンで熱懸洗処理(100℃、1時間)を3回行なった。続いてメタノール300mlで室温にて懸洗し、さらにメタノール500mlで1時間熱懸洗を3回行なった。
【0148】
この様にして得られたオキシチタニウムフタロシアニンのX線回折によれば、ブラッグ角(2θ±0.2゜)で4゜から8゜には実質的なピークはなく、9.3゜、10.6゜、13.2゜、15.1゜、15.7゜、16.1゜、20.8゜、23.3゜、26.3゜、27.1゜に主要な回折ピークがあり、このうち26.3゜のピークが最も強い。
【0149】
・Y型オキシチタニウムフタロシアニン(Y型TiOPc)の製造
上述の様に製造して得られたβ型オキシチタニウムフタロシアニンに対して、サンドグラインドミルを用いて20時間磨砕処理を行ない、続いて水400ml、オルソジクロロベンゼン40mlの懸濁液中に入れ、60℃で1時間加熱処理を行なった。この様にして得られたオキシチタニウムフタロシアニンのX線回折(ブラッグ−ブレンターノの集中法)によれば、ブラッグ角(2θ±0.2゜)で27.3゜に、最大かつ鋭いピークを示した。
【0150】
また、こうして得られたY型オキシチタニウムフタロシアニンを、試料ホルダとしてキャピラリーを用い、1.2085Åによる透過法X線回折を行なったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)21.3°(100)(但し、括弧内は21.3°のピーク強度を100としたときの相対強度)、18.9°(13)、14.1°(12)、11.8°(14)、11.1°(11)、9.2°(11)、7.6°(36)、7.4°(25)、5.8°(8)に回折ピークが観測された。
【0151】
なお、測定装置は、多連装検出器粉末X線回折装置で、装置の詳細は高エネルギー物理学研究所発行の、「放射光粉末回折実験ステーション(BL−4B)デザインレポート,(1995),KEK Report 94−11」に記載されている。
測定条件は、ステップ角0.005°、4.5秒/ステップ、d値計算用波長=1.2085Åである。
【0152】
上記製造例で製造したY型オキシチタニウムフタロシアニン4部、ポリビニルブチラール2部を、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン300部と共に、サンドグラインダーミルで8時間分散した。これを、アルミニウムドラム(φ30mm)に浸漬塗布により塗布し、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。次いで、電荷移動剤として4−(2,2−ジフェニルエテニル)−N,N−ジフェニルベンゼンアミンを100部とポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学社製 ユーピロン Z200)100部からなる膜厚20μmの電荷移動層を積層し、積層型感光層を有する感光体を得た。これを感光体PC1とする。
【0153】
[感光体の製造−2]
上記感光体の製造−1において、電荷発生剤としてY型オキシチタニウムフタロシアニンの代わりにβ型オキシチタニウムフタロシアニンを用いた以外は、同様の条件で感光体を作製した。これを感光体PC2とする。
【0154】
[帯電装置の製造]
下記の配合1〜3(弾性層1〜3)について、混合物を二軸押出機により溶融混練しペレット状にした。このぺレットを、クロスヘッドを取り付けた単軸押出機(特開平11−5239号公報参照)にて溶融して、先に述べた方法で芯金に被覆し、ローラを形成した(帯電ローラ1〜3)。減圧は実施せず、冷却は空冷で行なった。
【0155】
また、配合4,5(弾性層4,5)については、混合物を二軸押出機により溶融混練しペレット状にした。このぺレットを射出成形機のスクリュー部で溶融して、SUS棒をインサートした射出成形金型内に射出し、ローラを成形した(帯電ローラ4,5)。
【0156】
(アスカーC硬度計による弾性層の硬度の測定法)
高分子計器(株)のASKER C型硬度計を使用して、ローラの両端部(被覆部)より内側20mmの位置と中心部の3ヶ所を円周方向に90°おきに4点、すなわち全部で12点測定した。それら12点の平均値を測定値とした。
【0157】
(抵抗値の測定方法)
12mm幅の銅製の電極に3.2g/mmの荷重で帯電装置を押し付けて、芯材と弾性層の最表面に100Vの電圧を印加し、印加時間10秒にて測定した。測定値は、84点測定して、形状因子(断面積/長さ)を1.0として体積抵抗率を計算した。
【0158】
(帯電ローラ1:弾性層1)
下の表4に示す組成の配合物を、二軸押出機で混練した。得られた樹脂組成物を、クロスヘッドを取り付けた単軸押出機で溶融押出して芯金に被覆し、ローラを成形した。
【0159】
【表4】

【0160】
得られたローラの表面に、下の表5に示す組成の塗布液を塗布して、50μmの厚みの表面層を形成した。得られたローラを帯電ローラ1、その弾性層を弾性層1とする。
【0161】
【表5】

【0162】
弾性層1の体積抵抗率の最大値は9×108Ω・cm、最小値は8×108Ω・cmで、同一面内の体積抵抗率分布の標準偏差値は0.1であった。また、アスカーC硬度計による硬度は50°であった。
【0163】
(帯電ローラ2:弾性層2)
表面層の厚みを75μmとした以外は、帯電ローラ1と同様の手順でローラを作成した。得られたローラを帯電ローラ2、その弾性層を弾性層2とする。弾性層2の体積抵抗率の最大値は2×109Ω・cm、最小値は1×109Ω・cmであった。アスカーC硬度計による硬度は65°であった。
【0164】
(帯電ローラ3:弾性層3)
表面層の厚みを100μmとした以外は、帯電ローラ1と同様の手順でローラを作成した。得られたローラを帯電ローラ3、その弾性層を弾性層3とする。弾性層3の体積抵抗率の最大値は3×109Ω・cm、最小値は2×109Ω・cmであった。アスカーC硬度計による硬度は70°であった。
【0165】
(帯電ローラ4:弾性層4)
下の表6に示す組成の配合物を、二軸押出機で混練した。得られた樹脂組成物をクロスヘッドを取り付けた単軸押出機で溶融押出して、芯金形状Bに被覆しローラを成形した。得られたローラの表面に、弾性層1と同じように表面層を形成して、50μmとした。こうして得られたローラを帯電ローラ4、その弾性層を弾性層4とする。
【0166】
【表6】

【0167】
弾性層4の体積抵抗値の最大値は8×108Ω・cm、最小値は7×108Ω・cmであった。アスカーC硬度計による硬度は25°だった。
【0168】
(帯電ローラ5:弾性層5)
下の表7に示す組成の塗布液を使用し、表面層を100μmとした以外は、帯電ローラ1と同様の手順でローラを作成した。得られたローラを帯電ローラ5,その弾性層を弾性層5とする。
【0169】
【表7】

【0170】
弾性層5の体積抵抗値の最大値は2×109Ω・cm、最小値は1×109Ω・cmであった。アスカーC硬度計による硬度は80°だった。
【0171】
なお、上述の各帯電ローラ1〜5の形成は、いずれも下の表8に示す形状寸法に従って行なった。
【0172】
【表8】

【0173】
[評価法]
以上のようにして得られた現像用トナーTD1,感光体PC1,PC2および各帯電ローラ1〜5を、下の表9に示す組み合わせ(実施例1〜4、比較例1,2)でそれぞれCASIO社製Color PageprestoN4−612IIに搭載し、600dpiで画像形成を行なって、下記評価項目を評価した。
【0174】
(評価項目)
(A)階調性
網点の面積率で10段階の画像濃度を判別できるような画像モードを有したプリントローラを接続し、プリント画像が何段階まで判別できるかを評価した。
(B)解像度−1
プリント画像上に1mmあたり6本,9本,12本の等間隔の縦線を設けて評価した。
(C)解像度−2
プリント画像上における直径50μmの孤立ドットの再現性により評価した。
A:再現性極めて良好
B:再現性良好
C:再現性不良(解像力不充分)
【0175】
(結果)
以上の各項目についての評価結果を下の表9に示す。
【0176】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】本発明に用いられる電子写真装置(画像形成装置)の一実施態様の要部構成を示す概略図である。
【図2】本発明に用いられるフルカラータンデム方式の電子写真装置(画像形成装置)の一実施態様の要部構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0178】
1 感光体
2 帯電装置(帯電ローラ)
3 露光装置
4 現像装置
4k ブラック現像装置
4y イエロー現像装置
4c シアン現像装置
4m マゼンタ現像装置
5 転写装置
6 クリーニング装置
7 定着装置
41 現像槽
42 アジテータ
43 供給ローラ
44 現像ローラ
45 規制部材
71 上部定着部材(定着ローラ)
72 下部定着部材(定着ローラ)
73 加熱装置
T トナー
Tk ブラックトナー
Ty イエロートナー
Tc シアントナー
Tm マゼンタトナー
P 記録紙(用紙,媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも感光体および帯電装置を備えた感光体カートリッジにおいて、
該感光体が、直径10〜40mmの円筒状に形成されるとともに、CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)27.3゜に主要な回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを含有する感光層を有し、
該帯電装置が、直径5〜20mmの帯電ローラとして構成されるとともに、該帯電ローラが、アスカーC型硬度計による測定硬度が20°〜70°であって該感光体との接触面を形成する弾性層を有する
ことを特徴とする、感光体カートリッジ。
【請求項2】
該弾性層が、熱可塑性エラストマーを主成分とする
ことを特徴とする、請求項1記載の感光体カートリッジ。
【請求項3】
該弾性層の体積抵抗値が、1×10-3Ω・cm〜1×1012Ω・cmである
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の感光体カートリッジ。
【請求項4】
該感光体が、導電性支持体上に電荷発生層および電荷移動層を積層して構成される
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光体カートリッジ。
【請求項5】
少なくとも請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光体カートリッジ、露光装置およびトナーを備えた
ことを特徴とする、画像形成装置。
【請求項6】
該トナーの体積平均粒径(DV)が3〜8μmである
ことを特徴とする、請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
該トナーの体積平均粒径(DV)と個数平均粒径(DN)との関係が、1.0≦DV/DN≦1.3である
ことを特徴とする、請求項5または請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
該トナーの50%円形度が0.9〜1.0である
ことを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
但し、50%円形度とは、式(円形度=粒子投影面積と同じ面積の円の周長/粒子投影像の周長)より求められた値の50%における累積粒度分布値に相当するものとする。
【請求項9】
該トナーの、フロー式粒子分析装置による粒径0.6〜2.12μmの粒子の測定値(個数)が、全粒子個数の15%以下である
ことを特徴とする、請求項5〜8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
該露光装置が、600ドット/インチ以上の記録ドット密度でデジタル像露光を行なう
ことを特徴とする、請求項5〜9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)27.3゜に主要な回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを含有する感光層をそなえた、直径10〜40mmの円筒状に形成された感光体を使用し、
上記感光体の表面を、アスカーC型硬度計による測定硬度が20°〜70°であって該感光体との接触面を形成する弾性層を有する、直径5〜20mmの帯電ローラとして構成された帯電装置を用いて接触帯電させ、
該接触帯電させた上記感光体表面に対して、露光装置を用いてデジタル像露光を行ない、
該像露光によって形成された上記感光体上の静電潜像を、体積平均粒径が3〜8μmであるトナーを用いて現像する
ことを特徴とする、画像形成方法。
【請求項12】
該像露光における記録ドット密度が、600ドット/インチ以上である
ことを特徴とする、請求項11記載の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−99128(P2006−99128A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−317189(P2005−317189)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【分割の表示】特願2001−93083(P2001−93083)の分割
【原出願日】平成13年3月28日(2001.3.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】