説明

感光性樹脂組成物、フォトスペーサー及びその形成方法、保護膜、着色パターン、表示装置用基板、並びに表示装置

【課題】露光時の硬化性に優れ、低い加熱温度又は加熱処理無しでパターン構造物や保護膜を形成できる感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】〔A〕側鎖に、C=Oで表される部位及び/又はP=Oで表される部位を含む5員又は6員の環状構造、酸性基、並びにエチレン性不飽和結合を有する樹脂と、〔B〕重合性化合物と、〔C〕光重合開始剤と、を含有する感光性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、フォトスペーサー及びその形成方法、保護膜、着色パターン、表示装置用基板、並びに表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、高画質画像を表示する表示装置に広く利用されている。
液晶表示装置は一般に、一対の基板(以下、「表示装置用基板」ともいう)間に所定の配向により画像表示を可能とする液晶層が配置されており、この基板間隔、すなわち液晶層の厚みを均一に維持することが画質を決定する要素の一つであり、そのために液晶層の厚みを一定に保持するためのスペーサーが配設されている。この基板の間の厚みは一般に「セル厚」と称され、セル厚は通常、前記液晶層の厚み、換言すれば、表示領域の液晶に電界をかけている2枚の電極間の距離を示すものである。
【0003】
表示装置用基板(例えば、カラーフィルタ基板、アクティブマトリクス基板、等)は、基板上に着色パターンや保護膜等の構造物が形成された構成となっている。これらの構造物のうち、着色パターンや保護膜の形成方法としては、感光性樹脂組成物を用いてフォトリソグラフィーにより形成する方法が主流となっている。
【0004】
また、スペーサーについても、従来はビーズ散布により形成されていたが、近年では、感光性樹脂組成物を用いてフォトリソグラフィーにより位置精度の高いスペーサーが形成されるようになってきている。このような感光性樹脂組成物を用いて形成されたスペーサーは、フォトスペーサーと呼ばれている。
【0005】
感光性樹脂組成物に関しては、従来より種々の検討がなされており、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸等とエチレン性不飽和化合物との共重合体及び特定の光重合開始剤を用いた感光性樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、特定構造の脂肪族環状炭化水素基を有する構成単位と酸性官能基を有する構成単位とラジカル重合性基を有する構成単位とが連結した分子構造の脂肪族環状炭化水素基含有共重合体からなる硬化性樹脂が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2007−86565号公報
【特許文献2】特開2002−293837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の感光性樹脂組成物を用いて基板上にパターン構造物(例えば、フォトスペーサー、着色パターン、等。以下同じ)や保護膜を形成する場合、露光のみでは硬化が不十分となることがあり、露光・現像後に高温の加熱処理を施す必要を生ずる場合がある。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、露光時の硬化性に優れ、低い加熱温度又は加熱処理無しでパターン構造物や保護膜を形成できる感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、低い加熱温度又は加熱処理無しで形成された場合においても断面形状の均一性及び高さの均一性に優れるフォトスペーサー及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、低い加熱温度又は加熱処理無しで形成された場合においても膜厚均一性に優れる保護膜を提供すること、又は、低い加熱温度又は加熱処理無しで形成された場合においても断面形状の均一性及び膜厚の均一性に優れる着色パターンを提供することを目的とする。
また、本発明は、表示装置に用いた際に表示ムラを抑制できる表示装置用基板、及び表示ムラが抑制された表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討した結果、特定の樹脂を用いることで前記課題を解決できるとの知見を得、該知見に基づき本発明を完成した。
即ち、前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 〔A〕側鎖に、C=Oで表される部位及び/又はP=Oで表される部位を含む5員又は6員の環状構造、酸性基、並びにエチレン性不飽和結合を有する樹脂と、〔B〕重合性化合物と、〔C〕光重合開始剤と、を含有する感光性樹脂組成物である。
【0009】
<2> 前記樹脂が、更に、分岐及び/又は脂環構造を側鎖に有することを特徴とする<1>に記載の感光性組成物である。
<3> 前記重合性化合物の少なくとも1種は、C=Oで表される部位及び/又はP=Oで表される部位を含む5員又は6員の環状構造と、エチレン性不飽和二重結合と、を有することを特徴とする<1>又は<2>に記載の感光性組成物である。
【0010】
<4> <1>〜<3>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物を用いて形成されたフォトスペーサーである。
【0011】
<5> 少なくとも下記工程(イ)〜(ハ)を含むフォトスペーサーの形成方法である。
(イ)<1>〜<3>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物の被膜を基板上に形成する工程
(ロ)前記被膜の少なくとも一部を露光する工程
(ハ)露光後の前記被膜を現像する工程
<6> 更に、現像後の前記被膜を加熱する工程を有し、該加熱における最高温度が40℃以上145℃以下であることを特徴とする<5>に記載のフォトスペーサーの形成方法である。
【0012】
<7> <1>〜<3>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物を用いて形成された保護膜である。
<8> <1>〜<3>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物を用いて形成された着色パターンである。
<9> <4>に記載のフォトスペーサー、<7>に記載の保護膜、及び<8>に記載の着色パターンの少なくとも1つを備えた表示装置用基板である。
<10> <9>に記載の表示装置用基板を備えた表示装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、露光時の硬化性に優れ、低い加熱温度又は加熱処理無しでパターン構造物や保護膜を形成できる感光性樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、低い加熱温度又は加熱処理無しで形成された場合においても断面形状の均一性及び高さの均一性に優れるフォトスペーサー及びその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、低い加熱温度又は加熱処理無しで形成された場合においても膜厚均一性に優れる保護膜を提供すること、及び、低い加熱温度又は加熱処理無しで形成された場合においても断面形状の均一性及び膜厚の均一性に優れる着色パターンを提供することができる。
また、本発明によれば、表示装置に用いた際に表示ムラを抑制できる表示装置用基板、及び表示ムラが抑制された表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の感光性樹脂組成物について詳細に説明し、さらに該感光性樹脂組成物を用いたフォトスペーサー及びその形成方法、保護膜、着色パターン、表示装置用基板、並びに表示装置についても説明する。
【0015】
≪感光性樹脂組成物≫
本発明の感光性樹脂組成物は、〔A〕側鎖に、C=Oで表される部位及び/又はP=Oで表される部位を含む5員又は6員の環状構造、酸性基、並びにエチレン性不飽和結合を有する樹脂と、〔B〕重合性化合物と、〔C〕光重合開始剤と、を含んで構成される。
一般に感光性樹脂組成物を用いて基板上にパターン構造物(例えば、フォトスペーサー、着色パターン、等。以下同じ)や保護膜を形成する場合、露光のみでは硬化が不十分であるため、更に硬化を進めるために露光・現像後に高温の加熱処理を施す必要がある。
しかしながら、この高温の加熱処理により、形成しようとするパターン構造物や保護膜が劣化したり、既に基板上に形成されているパターン構造物や保護膜が劣化したりすることがある。例えば、着色パターンを有するカラーフィルタ基板上にフォトスペーサーを形成する場合には、形成しようとするフォトスペーサーが劣化したり、既に基板上に形成されている着色パターンが劣化したりすることがある。
そこで、感光性樹脂組成物を上記本発明の構成とすることにより、露光時の硬化性が向上し、低い加熱温度又は加熱処理なしでパターン構造物や保護膜の形成が可能となる。このため、形成しようとするパターン構造物や保護膜の劣化、及び、既に基板上に形成されているパターン構造物や保護膜の劣化を効果的に抑制できる。
【0016】
以下、本発明の感光性樹脂組成物を構成する各成分について詳細に説明する。
〔A〕樹脂
本発明の感光性樹脂組成物は、側鎖に、C=Oで表される部位及び/又はP=Oで表される部位を含む5員又は6員の環状構造、酸性基、並びにエチレン性不飽和結合を有する樹脂の少なくとも一種を含有する。
この樹脂は、側鎖に、C=Oで表される部位及び/又はP=Oで表される部位を含む5員又は6員の環状構造を備えるため、露光時の硬化性が向上する。
また、この樹脂は、酸性基を有して現像性を具えると共に、エチレン性不飽和結合を有することで、高い重合反応性を具えつつ、優れた液保存性及び乾膜での経時保存性を有しているので、パターン構造物を所望の形状及びそれに必要な膜厚(高さなど)に制御可能な制御性を付与することができる。
また、後述するように分岐及び/又は脂環構造を有する場合には、形成されたパターン構造物の外力を受けた際の圧縮弾性率、圧縮変形からの弾性回復性を高めることができる。これより、例えばカラーフィルタ用のスペーサなどのパターン構造物を構成するのに有用である。
【0017】
ここで、C=Oで表される部位及び/又はP=Oで表される部位を含む5員又は6員の環状構造、酸性基、並びにエチレン性不飽和結合は、それぞれが異なる側鎖中に含まれていてもよいし、一部が組み合わされて同じ側鎖中に含まれていてもよいし、全てが同じ側鎖中に含まれていてもよい。
【0018】
なお、本明細書中において、(メタ)アクリロイル基はアクリロイル基又はメタクリロイル基を表し、(メタ)アクリレートはアクリレート又はメタクリレートを表し、(メタ)アクリルはアクリル又はメタクリルを表し、(メタ)アクリルアミドはアクリルアミド又はメタクリルアミドを表し、(メタ)アクリルアニリドはアクリルアニリド又はメタクリルアニリドを表す。
【0019】
〜〜 C=Oで表される部位及び/又はP=Oで表される部位を含む5員又は6員の環状構造 〜〜
〔A〕樹脂は、樹脂の主鎖に結合する側鎖に、C=Oで表される部位及び/又はP=Oで表される部位を含む5員又は6員の環状構造(以下、「特定環状構造」ともいう)の少なくとも1種を含む。特定環状構造は、〔A〕樹脂の側鎖中に複数含まれていてもよい。また、特定環状構造は、〔A〕樹脂の側鎖中に、酸性基、及び/又は、エチレン性不飽和結合とともに含まれていてもよい。
また、特定環状構造は、〔A〕樹脂の主鎖に直接結合して特定環状構造のみで〔A〕樹脂の側鎖を構成していてもよいし、〔A〕樹脂の主鎖に2価の有機連結基を介して結合し、特定環状構造を有する基として〔A〕樹脂の側鎖を構成していてもよい。
【0020】
前記2価の有機連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、エステル基、アミド基、及びエーテル基から選ばれる一つ又は組み合わせが好ましい。前記アルキレン基としては、総炭素数1〜20のアルキレン基が好ましく、さらに好ましくは1〜10が好ましい。具体的には、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、オクチレン、ドデシレン、オクタデシレンなどが挙げられ、これらは分岐/環状構造、官能基を有していてもよく、さらに好ましくは、メチレン基、エチレン基、オクチレン基が好ましい。前記アリーレン基としては、総炭総数6〜20のアリーレン基が好ましく、さらに好ましくは6〜12が好ましい。具体的には、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフタレン基、アントラセン基などが挙げられ、これらは分岐、官能基を有していてもよく、さらに好ましくは、フェニレン基、ビフェニレン基が好ましい。
【0021】
特定環状構造は、露光時の硬化性の観点から、少なくともエステル基(−COO−)を介して〔A〕樹脂の主鎖に結合されている形態が好ましい。この形態は、特定環状構造がエステル基(−COO−)のみを介して〔A〕樹脂の主鎖に結合されている形態に限られず、特定環状構造がエステル基(−COO−)を含む2価の連結基を介して〔A〕樹脂の主鎖に結合されている形態であってもよい。すなわち、特定環状構造とエステル基との間、及び/又は、エステル基と〔A〕樹脂の主鎖との間に、他の原子や他の連結基が含まれていてもよい。
【0022】
前記C=Oを含む連結部位としては、下記式で表される部位が挙げられる。
なお、本明細書中では、結合手を*で示す。
【0023】
【化1】



【0024】
前記P=Oを含む連結部位としては、下記式で表される部位が挙げられる。
【0025】
【化2】



【0026】
また、C=Oを含む連結部位及び/又はP=Oを含む連結部位を有する5員又は6員の環状構造の具体例としては特に限定はないが、例えば、下記式で表される構造が挙げられる。
【0027】
【化3】



【0028】
〔A〕樹脂の側鎖に特定環状構造を導入するための単量体としては、スチレン類、(メタ)アクリレート類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類などが挙げられ、(メタ)アクリレート類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類が好ましく、(メタ)アクリレート類がより好ましい。
【0029】
〔A〕樹脂の側鎖に特定環状構造を導入するための具体的な単量体としては、下記の化合物が挙げられる(化合物M−1〜化合物M−16)。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
【化4】

【0031】
【化5】



【0032】
〔A〕樹脂の側鎖に特定環状構造を導入するための単量体としては、適宜合成した単量体を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
この単量体は、例えば、macromolecules,Vol36、No.11、2003のp3871に記載の方法などにより合成できる。
【0033】
前記市販品としては、例えば、化合物M−3として小畑産業(株)の1−AdA、化合物M−10として小畑産業(株)のGBLMAなどが挙げられる。
【0034】
〜〜酸性基〜〜
〔A〕樹脂は、主鎖に連結する側鎖に、酸性基の少なくとも1種を含む。酸性基は、側鎖中に複数含まれていてもよい。また、酸性基は、〔A〕樹脂の側鎖中に、前記特定環状構造、並びにエチレン性不飽和結合とともに含まれていてもよい。
また、前記酸性基は、〔A〕樹脂の主鎖に直接結合し酸性基のみで〔A〕樹脂の側鎖を構成してもよいし、〔A〕樹脂の主鎖に2価の有機連結基を介して結合し、酸性基を有する基として〔A〕樹脂の側鎖を構成してもよい。ここで、2価の有機連結基については前記特定環状構造における説明で例示した2価の有機連結基が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0035】
前記酸性基としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホンアミド基、リン酸基、フェノール性水酸基等が挙げられる。これらの中でも、現像性、及び硬化膜の耐水性が優れる点から、カルボキシ基、フェノール性水酸基であることが好ましい。
【0036】
前記酸性基を〔A〕樹脂に導入するための単量体の具体例としては、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、α−シアノ桂皮酸、アクリル酸ダイマー、水酸基を有する単量体と環状酸無水物との付加反応物、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、適宜製造したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0037】
前記水酸基を有する単量体と環状酸無水物との付加反応物に用いられる水酸基を有する単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記環状酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0038】
単量体の市販品としては、東亜合成化学工業(株)製:アロニックスM−5300、アロニックスM−5400、アロニックスM−5500、アロニックスM−5600、新中村化学工業(株)製:NKエステルCB−1、NKエステルCBX−1、共栄社油脂化学工業(株)製:HOA−MP、HOA−MS、大阪有機化学工業(株)製:ビスコート#2100等が挙げられる。これらの中でも現像性に優れ、低コストである点で(メタ)アクリル酸等が好ましい。
【0039】
〜〜エチレン性不飽和結合〜〜
〔A〕樹脂は、主鎖に連結する側鎖に、エチレン性不飽和結合の少なくとも1種を含む。〔A〕樹脂中において、エチレン性不飽和結合は、主鎖との間にエステル基を介して配されることが好ましい。
このエチレン性不飽和結合は、側鎖中に複数含まれていてもよい。また、エチレン性不飽和結合は、〔A〕樹脂の側鎖中に、前記特定環状構造、並びに/又は前記酸性基とともに含まれていてもよい。
【0040】
また、エチレン性不飽和結合は、〔A〕樹脂の主鎖との間に少なくとも1つのエステル基(−COO−)を介して結合し、エチレン性不飽和結合とエステル基のみで〔A〕樹脂の側鎖を構成していてもよい。また、〔A〕樹脂の主鎖とエステル基との間、及び/又は、エステル基とエチレン性不飽和結合との間に、さらに2価の有機連結基を有してもよく、エチレン性不飽和結合は「主鎖との間にエステル基を介して配されたエチレン性不飽和結合を有する基」として〔A〕樹脂の側鎖を構成していてもよい。ここで、2価の有機連結基については、特定環状構造における説明で例示した2価の有機連結基が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0041】
エチレン性不飽和結合としては、(メタ)アクリロイル基を導入して配されることが好ましい。
〔A〕樹脂の側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入する方法は、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、酸性基を持つ繰り返し単位にエポキシ基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法、ヒドロキシル基を持つ繰り返し単位にイソシアネート基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法、イソシアネート基を持つ繰り返し単位にヒドロキシ基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法などが挙げられる。
その中でも、酸性基を持つ繰り返し単位にエポキシ基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法が最も製造が容易であり、低コストである点で好ましい。
【0042】
前記エポキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、特に制限はないが、例えば、下記構造式(1)で表される化合物及び下記構造式(2)で表される化合物が好ましい。
【0043】
【化6】



【0044】
但し、前記構造式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Lは有機基を表す。
【0045】
【化7】



【0046】
但し、前記構造式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Lは有機基を表す。Wは4〜7員環の脂肪族炭化水素基を表す。
【0047】
前記構造式(1)で表される化合物及び構造式(2)で表される化合物の中でも、構造式(1)で表される化合物が構造式(2)よりも好ましい。前記構造式(1)及び(2)においては、L及びLがそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキレン基のものがより好ましい。
【0048】
前記構造式(1)で表される化合物又は構造式(2)で表される化合物としては、特に制限はないが、例えば、以下の例示化合物(1)〜(10)が挙げられる。
【0049】
【化8】



【0050】
〜〜分岐及び/又は脂環構造〜〜
〔A〕樹脂は、樹脂の主鎖に結合する側鎖に、分岐及び/又は脂環構造の少なくとも1種を含んでもよい。分岐及び/又は脂環構造を含む〔A〕樹脂を感光性樹脂組成物に含有させることにより、該感光性樹脂組成物を用いてパターン構造物を形成した際、該パターン構造物の、外力を受けた際の圧縮弾性率、圧縮変形からの弾性回復性をさらに高めることができる。
【0051】
〔A〕樹脂が分岐及び/又は脂環構造を含む場合、分岐及び/又は脂環構造は、〔A〕樹脂の側鎖中に複数含まれていてもよい。また、〔A〕樹脂が分岐及び/又は脂環構造を含む場合、分岐及び/又は脂環構造は、〔A〕樹脂の側鎖中に、特定環状構造、酸性基、及び/又は、エチレン性不飽和結合とともに含まれていてもよい。
また、〔A〕樹脂が分岐及び/又は脂環構造を含む場合、分岐及び/又は脂環構造は、〔A〕樹脂の主鎖に直接結合して分岐及び/又は脂環構造のみで〔A〕樹脂の側鎖を構成していてもよいし、〔A〕樹脂の主鎖に2価の有機連結基を介して結合し、分岐及び/又は脂環構造を有する基として〔A〕樹脂の側鎖を構成していてもよい。ここで、2価の有機連結基については、特定環状構造における説明で例示した2価の有機連結基が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0052】
分岐及び/又は脂環構造は、現像性及び弾性回復率の観点から、少なくともエステル基(−COO−)を介して〔A〕樹脂の主鎖に結合されている形態が好ましい。この形態は、分岐及び/又は脂環構造がエステル基(−COO−)のみを介して〔A〕樹脂の主鎖に結合されている形態に限られず、分岐及び/又は脂環構造がエステル基(−COO−)を含む2価の連結基を介して〔A〕樹脂の主鎖に結合されている形態であってもよい。すなわち、分岐及び/又は脂環構造とエステル基との間、及び/又は、エステル基と〔A〕樹脂の主鎖との間に、他の原子や他の連結基が含まれていてもよい。
【0053】
前記分岐構造としては、炭素原子数3〜12個の分岐状のアルキル基が挙げられ、例えば、i−プロピル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、i−アミル基、t−アミル基、3−オクチル、t−オクチル等が好ましい。これらの中でも、i−プロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基等がより好ましく、i−プロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が特に好ましい。
【0054】
前記脂環構造としては、炭素原子数5〜20個の脂環式炭化水素基が挙げられ、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンタニル基、トリシクロペンテニル基、及びトリシクロペンタニル基等並びにこれらを有する基が好ましい。これらの中でも、ジシクロペンテニル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、トリシクロペンテニル基、トリシクロペンタニル基等がより好ましく、ジシクロペンテニル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロペンテニル基等が更に好ましく、ジシクロペンテニル基、トリシクロペンテニル基が特に好ましい。
【0055】
更には、分岐及び/又は脂環構造を有する基として、下記一般式(3)で表される基を有して構成された形態が好ましい。
【0056】
【化9】



【0057】
一般式(3)において、Xは、2価の有機連結基を表し、無置換でも置換基を有していてもよい。yは、1又は2を表し、nは0〜15の整数を表す。
【0058】
前記2価の有機連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、エステル基、アミド基、及びエーテル基から選ばれる1つ又は組み合わせが好ましく、これらは置換基を有していてもよい。
前記アルキレン基としては、総炭素数1〜20のアルキレン基が好ましく、さらに好ましくは1〜10のアルキレン基である。具体的には、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、オクチレン、ドデシレン、オクタデシレンなどの基が挙げられ、これらは分岐/環状構造、官能基を有していてもよく、さらに好ましくは、メチレン基、エチレン基、オクチレン基である。
前記アリーレン基としては、総炭総数6〜20のアリーレン基が好ましく、さらに好ましくは6〜12のアリーレン基である。具体的には、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフタレン基、アントラセン基などが挙げられ、これらは分岐、官能基を有していてもよく、さらに好ましくは、フェニレン基、ビフェニレン基である。
置換されている場合の置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、ハロゲン基、芳香環基、脂環構造を有する基などが挙げられる。
【0059】
〔A〕樹脂の側鎖に分岐及び/又は脂環構造を導入するための単量体としては、スチレン類、(メタ)アクリレート類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類などが挙げられ、(メタ)アクリレート類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類が好ましく、(メタ)アクリレート類がより好ましい。
【0060】
〔A〕樹脂の側鎖に分岐構造を導入するための具体的な単量体としては、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸i−アミル、(メタ)アクリル酸t−アミル、(メタ)アクリル酸sec−iso−アミル、(メタ)アクリル酸2−オクチル、(メタ)アクリル酸3−オクチル、(メタ)アクリル酸t−オクチル等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル等が好ましく、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸t−ブチル等がより好ましい。
【0061】
〔A〕樹脂の側鎖に脂環構造を導入するための単量体としては、炭素原子数5〜20個の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的な例としては、(メタ)アクリル酸(ビシクロ〔2.2.1]ヘプチル−2)、(メタ)アクリル酸1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3−メチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5−ジメチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3−エチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸3−メチル−5−エチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5,8−トリエチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5−ジメチル−8−エチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ−4,7−メンタノインデン−5−イル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ−4,7−メンタノインデン−1−イルメチル、(メタ)アクリル酸1−メンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデシル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−2,6,6−トリメチル−ビシクロ〔3.1.1〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸3,7,7−トリメチル−4−ヒドロキシ−ビシクロ〔4.1.0〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フエンチル、(メタ)アクリル酸2,2,5−トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸トリシクロペンテニル等が挙げられる。
これら(メタ)アクリル酸エステルの中でも、嵩高い官能基 で圧縮弾性率、弾性回復性が良好になる点で、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸フエンチル、(メタ)アクリル酸1−メンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸トリシクロペンテニルなどが好ましく、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸トリシクロペンテニルが特に好ましい。
【0062】
また、〔A〕樹脂の側鎖に脂環構造を導入するための単量体としては、下記一般式(4)又は(5)で表される化合物が挙げられる。ここで、一般式(4)、(5)において、Xは2価の有機連結基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す。yは1又は2を表し、nは0〜15を表す。一般式(4)、(5)の中でも、y=1又は2、n=0〜8が好ましく、更に好ましくは、y=1又は2、n=0〜4(より好ましくはn=0〜2)である。一般式(4)又は(5)で表される化合物の好ましい具体例として、下記化合物D−1〜D−11、T−1〜T−12が挙げられる。
中でも、二重結合部位の反応性による弾性回復率の点で、下記一般式(4)で表される化合物が好ましい。
【0063】
【化10】



【0064】
一般式(4)〜(5)において、Xで表される2価の有機連結基は、無置換であっても、置換基を有していてもよく、前記一般式(3)のXで表される2価の有機連結基と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0065】
【化11】



【0066】
【化12】



【0067】
【化13】



【0068】
【化14】



【0069】
〔A〕樹脂の側鎖に脂環構造を導入するための単量体としては、適宜製造したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記市販品としては、日立化成工業(株)製:FA−511A、FA−512A(S)、FA−512M、FA−513A、FA−513M、TCPD−A、TCPD−M、
H−TCPD−A、H−TCPD−M、TOE−A、TOE−M、H−TOE−A、H−TOE−M等が挙げられる。これらの中でも現像性に優れ、変形回復率に優れる点で、FA−512A(S),512Mが好ましい。
【0070】
〜〜その他の単量体〜〜
本発明における〔A〕樹脂には、その他の単量体を用いて、その他の基が導入されていてもよい。
前記その他の単量体としては、特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、ビニルエーテル、二塩基酸無水物基、ビニルエステル基、炭化水素アルケニル基等を有する単量体などが挙げられる。
【0071】
前記ビニルエーテル基としては、特に制限はなく、例えば、ブチルビニルエーテル基などが挙げられる。
前記二塩基酸無水物基としては、特に制限はなく、例えば、無水マレイン酸基、無水イタコン酸基などが挙げられる。
前記ビニルエステル基としては、特に制限はなく、例えば、酢酸ビニル基などが挙げられる。
前記炭化水素アルケニル基としては、特に制限はなく、例えば、ブタジエン基、イソプレン基などが挙げられる。
【0072】
前記〔A〕樹脂におけるその他の単量体の含有率としては、組成比が、1〜40質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることがより好ましい。
【0073】
〔A〕樹脂の具体例としては、例えば、下記構造で表される化合物(例示化合物P−1〜P−40)が挙げられる。
また、例示化合物中のx、y、z、及びlは、各繰り返し単位の組成比(モル比)を表し、後述の好ましい範囲で構成する形態が好適である。また、各例示化合物の重量平均分子量も、後述の好ましい範囲で構成する形態が好適である。
【0074】
【化15】

【0075】
【化16】

【0076】
【化17】

【0077】
【化18】

【0078】
【化19】

【0079】
【化20】

【0080】
【化21】

【0081】
【化22】

【0082】
<合成法>
〔A〕樹脂は、モノマーの(共)重合反応の工程とエチレン性不飽和基を導入する工程の二段階の工程から合成することができる。
まず、(共)重合反応は種々のモノマーの(共)重合反応によって作られ、特に制限はなく公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、重合の活性種については、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、配位重合などを適宜選択することができる。これらの中でも合成が容易であり、低コストである点からラジカル重合であることが好ましい。また、重合方法についても特に制限はなく公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、バルク重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法などを適宜選択することができる。これらの中でも、溶液重合法であることがより望ましい。
【0083】
<炭素数>
〔A〕樹脂の主鎖の総炭素数としては、弾性係数(硬さ)の点で、10以上が好ましい。中でも、主鎖の総炭素数は、10〜30がより好ましく、特に好ましくは10〜15である。
【0084】
<分子量>
〔A〕樹脂の分子量としては、重量平均分子量で10,000〜10万が好ましく、12,000〜60,000が更に好ましく、15,000〜45,000が特に好ましい。重量平均分子量が前記範囲内であると、樹脂(好ましくは共重合体)の製造適性、現像性の点で望ましい。また、溶融粘度の低下により形成された形状が潰れ難い点で、また、架橋不良となり難い点、現像でのスペーサ形状の残渣がない点で好ましい。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定される。GPCについては、後記する実施例の項で詳細に示す。
【0085】
<ガラス転移温度>
〔A〕樹脂のガラス転移温度(Tg)は、40〜180℃であることが好ましく、45〜140℃であることはより好ましく、50〜130℃であることが特に好ましい。ガラス転移温度(Tg)が前記好ましい範囲内であると、良好な現像性、力学強度を有するスペーサが得られる。
【0086】
<酸価>
〔A〕樹脂の酸価は、とりうる分子構造により好ましい範囲が変動するが、一般には20mgKOH/g以上であることが好ましく、40mgKOH/g以上であることはより好ましく、50〜130mgKOH/gであることが特に好ましい。酸価が前記好ましい範囲内であると、良好な現像性、力学強度を有するスペーサが得られる。
【0087】
<Tg>
前記〔A〕樹脂は、良好な現像性、力学強度を有するスペーサが得られる点で、ガラス転移温度(Tg)が40〜180℃であり、かつ重量平均分子量が10,000〜100,000であることが好ましく、Tgが45〜140℃(更には50〜130℃)であり、かつ重量平均分子量が12,000〜60,000(更には15,000〜45,000)であることが好ましい。
更に、前記〔A〕樹脂の好ましい例は、好ましい前記分子量、ガラス転移温度(Tg)、及び酸価のそれぞれの組合せがより好ましい。
【0088】
本発明における〔A〕樹脂は、特定環状構造(C=Oで表される部位及び/又はP=Oで表される部位を含む5員又は6員の環状構造)と、酸性基と、エチレン性不飽和結合と、をそれぞれ別の繰り返し単位(共重合単位)に有する3元共重合以上の共重合体であることが、パターン構造物(例えばカラーフィルタ用のフォトスペーサー)を形成したときの変形回復率、現像残渣、レチキュレーションの観点から好ましい。
具体的には、前記〔A〕樹脂は、特定環状構造を有する繰り返し単位:X(xモル%)と、酸性基を有する繰り返し単位:Y(yモル%)と、エチレン性不飽和結合を有する繰り返し単位:Z(zモル%)と、を少なくとも有する3元共重合以上の共重合体であることが好ましい。さらに、必要に応じてその他の繰り返し単位:L(lモル%)を有していてもよい。
このような共重合体は、例えば、特定環状構造を有する単量体と、酸性基を有する単量体と、エチレン性不飽和結合を有する単量体と、必要に応じて他の単量体と、を共重合させて得ることができる。
【0089】
前記〔A〕樹脂が共重合体である場合の共重合組成比については、ガラス転移温度と酸価を勘案して決定される。一概に言えないが、下記の範囲とすることができる。
〔A〕樹脂における、特定環状構造を有する繰り返し単位の組成比(x)は、10〜70モル%が好ましく、10〜65モル%が更に好ましく、15〜60モル%が特に好ましい。組成比(x)が前記範囲内であると、良好な現像性が得られると共に、画像部の現像液耐性も良好である。
〔A〕樹脂における、酸性基を有する繰り返し単位の組成比(y)は、5〜70モル%が好ましく、10〜60モル%が更に好ましく、10〜50モル%が特に好ましい。組成比(y)が前記範囲内であると、良好な硬化性、現像性が得られる。
〔A〕樹脂における「エチレン性不飽和結合」を有する繰り返し単位の組成比(z)は、10〜70モル%が好ましく、20〜70モル%が更に好ましく、30〜60モル%が特に好ましい。組成比(z)が前記範囲内であると、顔料分散性に優れると共に、感度及び硬化性が良好であり、調液後の液保存性、及び塗布後の乾膜状態で長期保持された際の経時安定性が良好になる。
更には、〔A〕樹脂としては、組成比(x)が10〜70モル%(更には10〜65モル%、特には15〜60モル%)であって、組成比(y)が5〜70モル%(更には10〜60モル%、特には10〜50モル%)であって、組成比(z)が10〜70モル%(更には20〜70モル%、特には30〜60モル%)である場合が好ましい。
【0090】
また、〔A〕樹脂に「分岐及び/又は脂環構造」を有する場合、「分岐及び/又は脂環構造」の組成比(l)は、10〜60モル%が好ましく、15〜50モル%がより好ましい。
この場合、〔A〕樹脂としては、組成比(x)が10〜70モル%(更には10〜65モル%)であって、組成比(y)が5〜70モル%(更には10〜60モル%、特には10〜50モル%)であって、組成比(z)が10〜70モル%(更には20〜70モル%、特には30〜60モル%)であって、組成比(l)が10〜60モル%(更には10〜50モル%、特には15〜50モル%)である場合が好ましい。
【0091】
前記〔A〕樹脂の感光性樹脂組成物中における含有量としては、組成物の全固形分に対して、5〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。
〔A〕樹脂は、後述するその他の樹脂と併用できるが、前記〔A〕樹脂のみで構成される場合が好ましい。
【0092】
〜その他の樹脂〜
前記〔A〕樹脂と併用することができる樹脂としては、アルカリ性水溶液に対して膨潤性を示す化合物が好ましく、アルカリ性水溶液に対して可溶性である化合物がより好ましい。
アルカリ性水溶液に対して膨潤性又は溶解性を示す樹脂としては、例えば、酸性基を有するものが好適に挙げられ、具体的には、エポキシ化合物にエチレン性不飽和二重結合と酸性基とを導入した化合物(エポキシアクリレート化合物)、側鎖に(メタ)アクリロイル基、及び酸性基を有するビニル共重合体、エポキシアクリレート化合物と、側鎖に(メタ)アクリロイル基、及び酸性基を有するビニル共重合体との混合物、マレアミド酸系共重合体、などが好ましい。
前記酸性基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、などが挙げられ、これらの中でも、原料の入手性などの観点から、カルボキシル基が好ましく挙げられる。
【0093】
前記〔A〕樹脂とその他の樹脂とを併用する場合、〔A〕樹脂と併用することができる樹脂との合計の含有量(固形分)としては、感光性樹脂層の全固形分に対して、5〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。この含有量が、5質量%以上であると感光樹脂層の膜強度を維持でき、該感光樹脂層の表面のタック性を良好に保つことができ、70質量%以下であると露光感度が良好になる。
【0094】
〔B〕重合性化合物
本発明の感光性樹脂組成物は、重合性化合物の少なくとも一種を含有する。後述の光重合開始剤からのラジカルの作用を受けて重合反応を起こし、硬化膜を形成する。
【0095】
前記重合性化合物としては、公知の組成物を構成する重合性の化合物から選択して用いることができ、例えば、特開2006−23696号公報の段落番号[0010]〜[0020]に記載の成分や、特開2006−64921号公報の段落番号[0027]〜[0053]に記載の成分を挙げることができる。
前記重合性化合物としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジぺンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジぺンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0096】
また、露光時の硬化性をより向上させる観点からは、本発明における〔B〕重合性化合物は、C=Oで表される部位及び/又はP=Oで表される部位を含む5員又は6員の環状構造(即ち、特定環状構造)と、エチレン性不飽和二重結合と、を有する重合性化合物(以下、「特定重合性化合物」ともいう)を含むことが好ましい。
【0097】
C=Oで表される部位、P=Oで表される部位、C=Oを含む連結部位及び/又はP=Oを含む連結部位を有する5員又は6員の環状構造、については、既述の〔A〕樹脂の説明で述べたとおりであり、好ましい範囲も同様である。
【0098】
前記特定重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を有する。
この際、重合硬化性の観点からは、エチレン性不飽和二重結合は、特定重合性化合物中に、(メタ)アクリロイル基の一部として含まれることがより好ましい。
【0099】
特定重合性化合物の具体例としては、既述の、「〔A〕樹脂の側鎖に特定環状構造を導入するための具体的な単量体」として挙げた化合物(式M−1〜式M−16などで表される化合物)を用いることができる。
【0100】
また、特定重合性化合物は、エチレン性不飽和二重結合を複数個有することが好ましい。以下、エチレン性不飽和二重結合を複数個有する特定重合性化合物の具体例(式M−101〜M−112)を示す。
【0101】
【化23】



【0102】
【化24】

【0103】
前記〔A〕樹脂との関係において、〔B〕重合性化合物の〔A〕樹脂に対する質量比率(〔B〕/〔A〕比)は0.5〜2.0であることが好ましく、0.6〜1.8であることがより好ましく、0.7〜1.5であることが特に好ましい。〔B〕/〔A〕比が前記範囲内であると、良好な現像性、力学強度を有するパターン構造物が得られる。
【0104】
〔C〕光重合開始剤
本発明の感光性樹脂組成物は、光重合開始剤を少なくとも1種含有する。
本発明における光重合開始剤としては特に限定はなく、公知の光重合開始剤を用いることができる。公知の光重合開始剤としては、例えば、特開2006−23696号公報の段落番号[0010]〜[0020]や特開2006−64921号公報の段落番号[0027]〜[0053]に記載の開始剤を挙げることができる。公知の光重合開始剤の例としては、感度の点で、上記以外のアミノアセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、オキシムエステル系化合物が好適である。
アミノアセトフェノン系化合物の具体例としては、IRGACURE(Irg)907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)等が挙げられる。アシルフォスフィンオキサイド系化合物の具体例としては、DAROCUR TPOや、Irgacure(Irg)819(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)等が挙げられる。また、オキシムエステル系化合物の具体例としては、IRGACURE(Irg)OXE01やCGI242等(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)が挙げられる。以下に、これらの開始剤の構造を示す。
【0105】
【化25】



【0106】
光重合開始剤の感光性樹脂組成物中における総量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.5〜25質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。
【0107】
〔D〕微粒子
本発明における感光性樹脂組成物は、前記〔A〕樹脂、前記〔B〕重合性化合物、前記〔C〕光重合開始剤と共に、力学強度の点で、〔D〕微粒子を少なくとも1種含有することが好ましい。
微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、特開2003−302639号公報[0035]〜[0041]に記載の体質顔料が好ましく、中でも、良好な現像性、力学強度を有するフォトスペーサーが得られる点から、コロイダルシリカが好ましい。
【0108】
前記〔D〕微粒子の平均粒子径は、フォトスペーサー等の外力を受けやすい構造を形成する場合には高い力学強度が得られる点で、5〜50nmであることが好ましく、10〜40nmであることがより好ましく、15〜30nmであることが特に好ましい。
【0109】
前記〔D〕微粒子の感光性樹脂組成物(フォトスペーサーを形成するときにはフォトスペーサー(又はこれを構成する感光性樹脂層)中における含有量としては、高い力学強度を有するフォトスペーサーを得る観点から、感光性樹脂組成物中の全固形分(質量)に対して、5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましく、15〜30質量%であることが特に好ましい。
【0110】
〔E〕その他
本発明における感光性樹脂組成物は、前記〔A〕樹脂、前記〔B〕重合性化合物、前記〔C〕光重合開始剤、及び必要に応じて含まれる前記〔D〕微粒子以外に、さらに必要に応じて、光重合開始助剤などの他の成分を含んでいてもよい。
【0111】
感光性樹脂組成物は、他の添加成分として光重合開始助剤を併用してもよい。光重合開始助剤は、光重合開始剤によって重合が開始された重合性化合物の重合を促進するために、光重合開始剤と組み合わせて用いることができる。光重合開始助剤としては、アミン系化合物の少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0112】
前記アミン系化合物としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸2−ジメチルアミノエチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、N,N−ジメチルパラトルイジン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(通称ミヒラーズケトン)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノンなどが挙げられ、中でも4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましい。また、アミン系やその他の光重合開始助剤を複数組み合わせて使用してもよい。
上記以外の他の光重合開始助剤として、例えば、アルコキシアントラセン系化合物、チオキサントン系化合物、クマリン系化合物などが挙げられる。前記アルコキシアントラセン系化合物としては、例えば、9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセンなどが挙げられる。前記チオキサントン系化合物としては、例えば、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンなどが挙げられる。
また、光重合開始助剤として市販のものを用いることもできる。市販の光重合開始助剤としては、例えば、商品名「EAB−F」(保土谷化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0113】
光重合開始助剤の感光性樹脂組成物中における含有量としては、上記の光重合開始剤1質量部に対して、0.6質量部以上20質量部以下が好ましく、1質量部以上15質量部以下がより好ましく、とりわけ1.5質量部以上15質量部以下が好ましい。
【0114】
また、その他の成分としては、公知の組成物を構成する成分から選択して用いることができ、例えば、特開2006−23696号公報の段落番号[0010]〜[0020]や特開2006−64921号公報の段落番号[0027]〜[0053]に記載の成分を挙げることができる。
【0115】
本発明の感光性樹脂組成物は、後述する、フォトスペーサー、着色パターン、保護膜の形成に好適に用いることができる他、離画壁(例えば、ブラックマトリクス等)、配向制御用突起など、その他のパターン構造物や被膜の形成にも好適に用いることができる。
【0116】
≪フォトスペーサー及びその形成方法≫
本発明のフォトスペーサーは、既述の本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成されたものである。感光性樹脂組成物の詳細及び好ましい態様については、既述した通りである。
本発明のフォトスペーサーは、本発明の感光性樹脂組成物を用いて構成されるので、断面形状の均一性及び高さの均一性に優れる(即ち、断面形状のバラツキや高さのバラツキが抑制される)。
さらに、本発明の感光性樹脂組成物中の樹脂が側鎖に分岐及び/又は脂環構造を有する場合には、フォトスペーサーとして必要とされる高い圧縮弾性率、変形回復性を持つフォトスペーサーが得られる。
【0117】
本発明において、フォトスペーサー等のパターン構造物の「断面形状の均一性に優れる」状態としては、基板内の複数箇所(好ましくは3箇所以上)において、パターン構造物の断面形状が矩形に近い形状となっている状態が好ましい。
前記「矩形に近い形状」としては、基板法線方向に平行であって、かつ、パターン構造物の基板法線方向からみたパターンエッジ(円柱状のパターン構造物の場合はパターンエッジの接線)と直交する平面により、該パターン構造物を切断したときの切断面において、パターン構造物側面に相当する線とパターン構造物下面に相当する線とのなす角(以下、「テーパー角度」ともいう)が40°以上100°以下である形状がより好ましい。
ここで、前記パターン構造物下面とは、パターン構造物の面のうち、該パターン構造物が形成された下地との接触面をいう。また、前記パターン構造物側面とは、パターン構造物の面のうち、前記パターン構造物下面にもパターン構造物上面(前記パターン構造物下面と平行な面であって、前記下地と接触しない面)にも該当しない面をいう。
【0118】
本発明のフォトスペーサーは、本発明の感光性樹脂組成物を用いた方法であれば、いずれの方法で形成されてもよいが、以下に示す工程(イ)〜(ハ)を含む方法(本発明のフォトスペーサーの形成方法)を用いることによって最も好適に形成することができる。
本発明のフォトスペーサーの形成方法は、(イ)既述の本発明の感光性樹脂組成物の被膜を基板上に形成する工程(以下、「被膜形成工程」ともいう。)と、(ロ)前記被膜の少なくとも一部を露光する工程(以下、「露光工程」ともいう。)と、(ハ)露光後の前記被膜を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう。)と、を設けて構成されており、必要に応じて、(ニ)現像後の前記被膜を加熱する工程(以下、「被膜加熱工程」ともいう。)や、更に他の工程を設けて構成されてもよい。
【0119】
(イ)被膜形成工程
被膜形成工程は、既述の本発明の感光性樹脂組成物の被膜を基板上に形成する。被膜として感光性樹脂層を形成することができ、この感光性樹脂層は、後述の露光工程や現像工程等の他工程を経ることにより、セル厚を均一に保持し得るフォトスペーサーを構成する。本発明のフォトスペーサーを用いることにより、特にセル厚の変動で表示ムラが生じやすい表示装置(特に液晶表示装置)における画像中の表示ムラが効果的に解消される。
【0120】
基板上に感光性樹脂層を形成する方法としては、(a)既述の樹脂、重合性化合物、及び光重合開始剤を少なくとも含む感光性樹脂組成物を塗布する塗布法、及び(b)前記感光性樹脂層を有する感光性転写材料を用い、加熱及び/又は加圧により感光性樹脂層をラミネート、転写する転写法が好適に挙げられる。
【0121】
(a)塗布法
感光性樹脂組成物の塗布は、公知の塗布法、例えば、スピンコート法、カーテンコート法、スリットコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、あるいは米国特許第2681294号明細書に記載のポッパーを使用するエクストルージョンコート法等により行なうことができる。中でも、特開2004−89851号公報、特開2004−17043号公報、特開2003−170098号公報、特開2003−164787号公報、特開2003−10767号公報、特開2002−79163号公報、特開2001−310147号公報等に記載のスリットノズルあるいはスリットコーターによる方法が好適である。
【0122】
(b)転写法
転写は、感光性転写材料を用いて、仮支持体上に膜状に形成された感光性樹脂層を所望の基板面に例えば加熱及び/又は加圧したローラー又は平板を用いて圧着又は加熱圧着することによって貼り合せた後、仮支持体の剥離により感光性樹脂層を基板上に転写する。具体的には、特開平7−110575号公報、特開平11−77942号公報、特開2000−334836号公報、特開2002−148794号公報に記載のラミネーター及びラミネート方法が挙げられ、低異物の観点で、特開平7−110575号公報に記載の方法を用いるのが好ましい。
【0123】
感光性樹脂層を形成する場合、感光性樹脂層と仮支持体との間には更に酸素遮断層(以下、「酸素遮断膜」又は「中間層」ともいう。)を設けることができる。これにより、露光感度をアップすることができる。また、転写性を向上させるために、クッション性を有する熱可塑性樹脂層を設けてもよい。
感光性転写材料を構成する仮支持体、酸素遮断層、熱可塑性樹脂層、その他の層や該感光性転写材料の作製方法については、特開2006−23696号公報の段落番号[0024]〜[0030]に記載の構成、作製方法を適用することができる。
【0124】
(a)塗布法、(b)転写法ともに感光性樹脂層を形成する場合、その層厚は0.5〜10.0μmが好ましく、1〜6μmがより好ましい。層厚が前記範囲であると、製造時における塗布形成の際のピンホールの発生が防止され、未露光部の現像除去を長時間を要することなく行なうことができる。
【0125】
感光性樹脂層を形成する基板としては、例えば、透明基板(例えばガラス基板やプラスチックス基板)、透明導電膜(例えばITO膜)付基板、カラーフィルタ付きの基板(カラーフィルタ基板ともいう。)、駆動素子(例えば、薄膜トランジスタ[TFT])付駆動基板、などが挙げられる。基板の厚みとしては、700〜1200μmが一般に好ましい。
【0126】
(ロ)露光工程・(ハ)現像工程
露光工程では、前記被膜形成工程で形成された被膜の少なくとも一部を露光し、潜像を形成する。その後の現像工程では、前記露光工程で露光された被膜を現像し、所望の形状のスペーサーパターンを形成することができる。
【0127】
これらの工程の具体例としては、特開2006−64921号公報の段落番号[0071]〜[0077]に記載の形成例や、特開2006−23696号公報の段落番号[0040]〜[0051]に記載の工程などが、本発明において好適な例として挙げることができる。
【0128】
本発明のフォトスペーサーの形成方法は、後述の(ニ)被膜加熱工程を設けてもよいが、前記露光における露光量を増加させることなどにより、被膜加熱工程を設けることなく(以下、「加熱工程無し」ともいう)、断面形状の均一性及び高さの均一性に優れたフォトスペーサーを形成することもできる。
「加熱工程無し」とすることで、形成しようとするフォトスペーサーの劣化や、既に形成されているパターン構造物(着色パターン等)や保護膜の劣化を、より効果的に抑制できる。
「加熱工程無し」とする場合の露光量としては、1〜500mJ/cmが好ましく、10〜300mJ/cmが好ましい。
【0129】
(ニ)被膜加熱工程
本発明のフォトスペーサーの形成方法は、前記現像工程における現像後の被膜を加熱する被膜加熱工程を設けることもできる。加熱により、被膜の硬化がより促進され、高強度を有するフォトスペーサーが得られる。また、感光性樹脂組成物中の樹脂が側鎖に分岐及び/又は脂環構造を有する場合には、圧縮弾性率、弾性回復性の良好なフォトスペーサーが得られる。
【0130】
ここで、加熱における最高温度は、加熱時間によっても異なるが、40℃〜145℃であることが好ましく、40℃〜140℃であることがより好ましい。最高温度が40℃〜145℃の範囲内であると、形成しようとするフォトスペーサーの劣化や、既に形成されているパターン構造物(着色パターン等)や保護膜の劣化を、より効果的に抑制できる。
中でも、加熱における最高温度が80℃〜140℃であって、加熱時間は、0.1時間〜3.0時間(さらに好ましくは0.2時間〜1.0時間)であることがより好ましい。
【0131】
上記のようにして、基板上にフォトスペーサーを備えた表示装置用基板を作製することができる。フォトスペーサーは、基板上に形成されたブラックマトリクス等の黒色遮光部の上やTFT等の駆動素子上に形成されることが好ましい。また、ブラックマトリクス等の黒色遮光部やTFT等の駆動素子とフォトスペーサーとの間にITO等の透明導電層(透明電極)やポリイミド等の配向膜が存在していてもよい。
【0132】
例えば、フォトスペーサーが黒色遮光部や駆動素子の上に設けられる場合、該基板に予め配設された黒色遮光部(ブラックマトリクスなど)や駆動素子を覆うようにして、例えば、感光性転写材料の感光性樹脂層を支持体面にラミネートし、剥離転写して感光性樹脂層を形成した後、これに露光、現像、加熱処理等を施してフォトスペーサーを形成することによって、表示装置用基板を作製することができる。
本発明の表示装置用基板には更に、必要に応じて赤色(R)、青色(B)、緑色(G)3色等の着色画素が設けられてもよい。
【0133】
本発明のフォトスペーサーは、ブラックマトリクス等の黒色遮蔽部及び着色画素等の着色部を含むカラーフィルタを形成した後に形成することができる。
前記黒色遮蔽部及び着色部とフォトスペーサーとは、感光性樹脂組成物を塗布する塗布法と感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層を有する転写材料を用いる転写法と、を任意に組合せて形成することが可能である。
前記黒色遮蔽部及び着色部並びに前記フォトスペーサーはそれぞれ感光性樹脂組成物から形成でき、具体的には、例えば、基板に液体の前記感光性樹脂組成物を直接塗布することにより感光性樹脂層を形成した後に、露光・現像を行ない、前記黒色遮蔽部及び着色部をパターン状に形成し、その後、別の液体の前記感光性樹脂組成物を前記基板とは異なる別の基板(仮支持体)上に設置して感光性樹脂層を形成することにより作製された転写材料を用い、この転写材料を前記黒色遮蔽部及び着色部が形成された前記基板に密着させて感光性樹脂層を転写した後に、露光・現像を行うことによりフォトスペーサーをパターン状に形成することができる。
このようにして、フォトスペーサーが設けられたカラーフィルタを作製することができる。
【0134】
≪保護膜≫
本発明の保護膜は、既述の本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成されたものである。
本発明の保護膜は、本発明の感光性樹脂組成物を用いて構成されるので、低い加熱温度又は加熱処理無しで形成された場合においても膜厚均一性に優れる。
【0135】
本発明の保護膜は、本発明の感光性樹脂組成物を用いた方法であれば、いずれの方法で形成されてもよいが、前述の本発明のフォトスペーサーの形成方法と同様の方法により形成できる。ここで、保護膜にパターニングを施さない場合、即ち、保護膜をいわゆるベタ膜として形成する場合には、前記(ロ)露光工程において、被膜を全面露光する方法が好適である。
【0136】
≪着色パターン≫
本発明の着色パターンは、既述の本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成されたものである。ここで、感光性樹脂組成物は、既述の各成分に加え、更に、着色剤の少なくとも1種を含有する形態が好適である。
前記着色剤としては、特に制限はなく、公知の着色剤の中から適宜選択して用いることができる。公知の着色剤としては、具体的には、特開2005−17716号公報[0038]〜[0054]に記載の顔料及び染料や、特開2004−361447号公報[0068]〜[0072]に記載の顔料、特開2005−17521号公報[0080]〜[0088]に記載の着色剤などを挙げることができる。
【0137】
本発明の着色パターンは、本発明の感光性樹脂組成物を用いて構成されるので、低い加熱温度又は加熱処理無しで形成された場合においても断面形状の均一性及び膜厚の均一性に優れる。
なお、本発明の着色パターンが、複数色の着色パターンを有するカラーフィルタの一要素として用いられる場合は、少なくとも一色の着色パターンが本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成されていればよい。
【0138】
本発明の着色パターンは、本発明の感光性樹脂組成物を用いた方法であれば、いずれの方法で形成されてもよいが、例えば、前述の本発明のフォトスペーサーの形成方法と同様の方法により形成できる。
【0139】
≪表示装置用基板≫
本発明の表示装置用基板は、本発明のフォトスペーサー、本発明の保護膜、及び本発明の着色パターンの少なくとも1つを備えて構成される。
本発明の表示装置用基板は、本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成された、断面形状の均一性及び膜厚(高さ)均一性が良好な構造物(本発明のフォトスペーサー、本発明の保護膜、及び本発明の着色パターンの少なくとも1つ。以下同じ)を備えるため、表示装置に用いた際に表示ムラを抑制できる。
【0140】
ここで表示装置用基板とは、表示装置を構成するための一対の支持体のうち少なくとも一方を指す。
表示装置用基板の具体例としては、表示素子や表示装置の構成によっても異なるが、例えば、着色パターン(以下、「着色画素」ともいう)を備えたカラーフィルタ基板、駆動手段を備えた駆動手段付き基板(例えば、単純マトリクス基板、アクティブマトリクス基板、等)、離隔壁を備えた離隔壁付き基板(例えば、ブラックマトリクスを備えたブラックマトリクス付き基板、等)、着色パターンと駆動手段との双方を備えたカラーフィルタオンアレイ基板、パターン構造物や被膜が設けられていないガラス基板等が挙げられる。
【0141】
前記カラーフィルタ基板の前記着色パターン群(着色画素群)は、互いに異なる色を呈する2色の画素からなるものでも、3色の画素、4色以上の画素からなるものであってもよい。例えば3色の場合、赤(R)、緑(G)及び青(B)の3つの色相で構成される。RGB3色の画素群を配置する場合には、モザイク型、トライアングル型等の配置が好ましく、4色以上の画素群を配置する場合にはどのような配置であってもよい。カラーフィルタ基板の作製は、例えば2色以上の画素群を形成した後既述のようにブラックマトリックスを形成してもよいし、逆にブラックマトリックスを形成した後に画素群を形成するようにしてもよい。RGB画素の形成については、特開2004−347831号公報等を参考にすることができる。
【0142】
≪表示素子≫
本発明の表示装置用基板を用い、表示素子を形成することができる。
表示素子の1つとして、少なくとも一方が光透過性の一対の支持体(表示装置用基板を含む。)間に液晶層と液晶駆動手段(単純マトリックス駆動方式及びアクティブマトリックス駆動方式を含む。)を少なくとも備えた液晶表示素子が挙げられる。
【0143】
この液晶表示素子の場合、表示装置用基板は、複数のRGB画素群を有し、該画素群を構成する各画素が互いにブラックマトリックスで離画されているカラーフィルタ基板として用いることができる。このカラーフィルタ基板には、断面形状の均一性及び膜厚(高さ)の均一性に優れた構造物が設けられているため、該カラーフィルタ基板を備えた液晶表示素子は、カラーフィルタ基板と対向基板との間のセルギャップ(セル厚)の変動に起因して液晶材料が偏在する、低温発泡する等による色ムラ等の表示ムラの発生を効果的に防止することができる。これにより、作製された液晶表示素子は鮮やかな画像を表示できる。
【0144】
また、液晶表示素子のより詳細な態様として、少なくとも一方が光透過性の一対の支持体(液晶表示装置用基板を含む。)間に液晶層と液晶駆動手段とを少なくとも備え、前記液晶駆動手段がアクティブ素子(例えばTFT)を有し、かつ一対の基板間がフォトスペーサーにより所定幅に規制して構成されたものが挙げられる。
【0145】
≪表示装置≫
本発明の表示装置は、上記の表示装置用基板を備えたものである。
本発明の表示装置は、断面形状の均一性及び膜厚(高さ)の均一性に優れた構造物が設けられた本発明の表示装置用基板を備えるため、表示ムラが抑制される。
【0146】
表示装置としては、液晶表示装置、プラズマディスプレイ表示装置、EL表示装置、CRT表示装置などの表示装置などが挙げられる。表示装置の定義や各表示装置の説明については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。
【0147】
表示装置の中でも液晶表示装置が好ましい。
液晶表示装置は、例えば、互いに向き合うように対向配置された一対の基板間をフォトスペーサーで所定幅に規制し、規制された間隙に液晶材料を封入(封入部位を液晶層と称する。)して構成されており、液晶層の厚さ(セル厚)が所望の均一厚に保持されるようになっている。
【0148】
液晶表示装置における液晶表示モードとしては、STN型、TN型、GH型、ECB型、強誘電性液晶、反強誘電性液晶、VA型、IPS型、OCB型、ASM型、その他種々のものが好適に挙げられる。中でも、本発明の液晶表示装置においては、最も効果的に本発明の効果を奏する観点から、液晶セルのセル厚の変動により表示ムラを起こし易い表示モードが望ましく、セル厚が2〜4μmであるVA型表示モード、IPS型表示モード、OCB型表示モードに構成されるのが好ましい。
【0149】
また、本発明において使用可能な液晶としては、ネマチック液晶、コレステリック液晶、スメクチック液晶、強誘電液晶が挙げられる。
【0150】
液晶表示装置の基本的な構成態様としては、(a)薄膜トランジスタ(TFT)等の駆動素子と画素電極(導電層)とが配列形成された駆動側基板と、対向電極(導電層)を備えた対向基板とをフォトスペーサーを介在させて対向配置し、その間隙部に液晶材料を封入して構成したもの、(b)駆動基板と、対向電極(導電層)を備えた対向基板とをフォトスペーサーを介在させて対向配置し、その間隙部に液晶材料を封入して構成したもの、等が挙げられ、本発明の液晶表示装置は、各種液晶表示機器に好適に適用することができる。
【0151】
液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田龍男編集、側工業調査会、1994年発行)」に記載がある。本発明の液晶表示装置には、本発明の液晶表示素子を備える以外に特に制限はなく、例えば前記「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載された種々の方式の液晶表示装置に構成することができる。中でも特に、カラーTFT方式の液晶表示装置を構成するのに有効である。カラーTFT方式の液晶表示装置については、例えば「カラーTFT液晶ディスプレイ(共立出版(株)、1996年発行)」に記載がある。
【0152】
液晶表示装置は、既述のフォトスペーサー、着色パターン、保護膜、液晶表示装置用基板、液晶表示素子を備える以外は、電極基板、偏光フィルム、位相差フィルム、バックライト、フォトスペーサー.視野角補償フィルム、反射防止フィルム、光拡散フィルム、防眩フィルムなどの様々な部材を用いて一般的に構成できる。これら部材については、例えば「’94液晶ディスプレイ周辺材料・ケミカルズの市場(島健太郎、(株)シーエムシー、1994年発行)」、「2003液晶関連市場の現状と将来展望(下巻)(表良吉、(株)富士キメラ総研、2003等発行)」に記載されている。
【実施例】
【0153】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0154】
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定した。GPCは、HLC−8020GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgel、Super Multipore HZ−H(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。また、条件としては、試料濃度を0.35/min、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、IR検出器を用いて行なった。また、検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製した。
【0155】
<〔A〕樹脂の合成>
(例示化合物P−1の合成)
反応容器中に、1−メトキシ−2−プロパノール(MFG、日本乳化剤(株)製)7.48部をあらかじめ加え、90℃に昇温し、樹脂の側鎖に特定環状構造を導入するための単量体である前記化合物M−1(x)4.28部、メタクリル酸(MAA;y)11.7部、アゾ系重合開始剤(和光純薬(株)製、V−601)2.08部、及び1−メトキシ−2−プロパノール55.2部からなる混合溶液を窒素ガス雰囲気下、90℃の反応容器中に2時間かけて滴下した。滴下後、4時間反応させて、アクリル樹脂溶液を得た。
次いで、前記アクリル樹脂溶液に、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.15部、及びテトラエチルアンモニウムブロマイド0.34部を加えた後、メタクリル酸グリシジル(GLM,東京化成工業(株)製)26.4部を2時間かけて滴下した(GLM−MAA;z)。滴下後、空気を吹き込みながら90℃で4時間反応させた後、固形分濃度が45%になるように溶媒1−メトキシ−2−プロピルアセテート(MMPGAc、ダイセル化学工業(株)製)を添加することにより調製し、例示化合物P−1(〔A〕樹脂)の樹脂溶液(固形分酸価;76.0mgKOH/g、Mw;28,000、1−メトキシ−2−プロパノール/1−メトキシ−2−プロピルアセテート45%溶液)を得た(x:y:z=41モル%:24モル%:35モル%)。
ここで、GLM−MAAは、メタクリル酸にグリシジルメタクリレートが結合したものを示す(以下、同様である)。
なお、例示化合物P−1の分子量Mwは、重量平均分子量を示し、重量平均分子量の測定は、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC法)を用いて行なった(以下、同様である)。
【0156】
(例示化合物P−2の合成)
前記例示化合物P−1の合成において、前記化合物M−1を前記化合物M−2に変えた以外は前記例示化合物P−1の合成と同様にして例示化合物P−2(〔A〕樹脂)の樹脂溶液(固形分酸価;74.0mgKOH/g、Mw;31,000、1−メトキシ−2−プロパノール/1−メトキシ−2−プロピルアセテート45%溶液)を得た。
但し、化合物M−2、メタクリル酸、及びメタクリル酸グリシジルの添加量は、例示化合物P−2の共重合比x:y:zが48モル%:22モル%:30モル%となる量とした。
【0157】
(例示化合物P−3の合成)
前記例示化合物P−1の合成において、前記化合物M−1を前記化合物M−3に変えた以外は前記例示化合物P−1の合成と同様にして例示化合物P−3(〔A〕樹脂)の樹脂溶液(固形分酸価;73.0mgKOH/g、Mw;28,000、1−メトキシ−2−プロパノール/1−メトキシ−2−プロピルアセテート45%溶液)を得た。
但し、化合物M−3、メタクリル酸、及びメタクリル酸グリシジルの添加量は、例示化合物P−3の共重合比x:y:zが45モル%:20モル%:35モル%となる量とした。
【0158】
(例示化合物P−4の合成)
前記例示化合物P−1の合成において、前記化合物M−1を前記化合物M−4に変えた以外は前記例示化合物P−1の合成と同様にして例示化合物P−4(〔A〕樹脂)の樹脂溶液(固形分酸価;76.5mgKOH/g、Mw;25,500、1−メトキシ−2−プロパノール/1−メトキシ−2−プロピルアセテート45%溶液)を得た。
但し、化合物M−4、メタクリル酸、及びメタクリル酸グリシジルの添加量は、例示化合物P−4の共重合比x:y:zが40モル%:25モル%:35モル%となる量とした。
【0159】
(例示化合物P−5の合成)
前記例示化合物P−1の合成において、前記化合物M−1を前記化合物M−5に変えた以外は前記例示化合物P−1の合成と同様にして例示化合物P−5(〔A〕樹脂)の樹脂溶液(固形分酸価;77.0mgKOH/g、Mw;29,000、1−メトキシ−2−プロパノール/1−メトキシ−2−プロピルアセテート45%溶液)を得た。
但し、化合物M−5、メタクリル酸、及びメタクリル酸グリシジルの添加量は、例示化合物P−5の共重合比x:y:zが42モル%:26モル%:32モル%となる量とした。
【0160】
(例示化合物P−6の合成)
前記例示化合物P−1の合成において、前記化合物M−1を前記化合物M−6に変えた以外は前記例示化合物P−1の合成と同様にして例示化合物P−6(〔A〕樹脂)の樹脂溶液(固形分酸価;76.0mgKOH/g、Mw;27,800、1−メトキシ−2−プロパノール/1−メトキシ−2−プロピルアセテート45%溶液)を得た。
但し、化合物M−6、メタクリル酸、及びメタクリル酸グリシジルの添加量は、例示化合物P−6の共重合比x:y:zが41モル%:24モル%:35モル%となる量とした。
【0161】
(例示化合物P−7の合成)
前記例示化合物P−1の合成において、前記化合物M−1を前記化合物M−7に変えた以外は前記例示化合物P−1の合成と同様にして例示化合物P−7(〔A〕樹脂)の樹脂溶液(固形分酸価;76.0mgKOH/g、Mw;25,800、1−メトキシ−2−プロパノール/1−メトキシ−2−プロピルアセテート45%溶液)を得た。
但し、化合物M−7、メタクリル酸、及びメタクリル酸グリシジルの添加量は、例示化合物P−7の共重合比x:y:zが48モル%:22モル%:30モル%となる量とした。
【0162】
(例示化合物P−36の合成)
前記例示化合物P−1の合成において、前記化合物M−1(x)を前記化合物M−3(x)に変更し、前記化合物M−3(x)及び前記メタクリル酸(MAA;y)を添加する段階において、更に、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(日立化成工業(株)製のファンクリルFA−512M;l)を添加した以外は前記例示化合物P−1の合成と同様にして例示化合物P−36(〔A〕樹脂)の樹脂溶液(固形分酸価;76.0mgKOH/g、Mw;28,800、1−メトキシ−2−プロパノール/1−メトキシ−2−プロピルアセテート45%溶液)を得た。
但し、FA−512M、化合物M−3、メタクリル酸、及びメタクリル酸グリシジルの添加量は、例示化合物P−36の共重合比l:x:y:zが23.2モル%:23モル%:24.3モル%:29.5モル%となる量とした。
【0163】
(例示化合物P−37の合成)
前記例示化合物P−1の合成において、前記化合物M−1(x)を前記化合物M−3(x)に変更し、前記化合物M−3(x)及び前記メタクリル酸(MAA;y)を添加する段階において、更に、イソプロピルメタクリレート(i−PrMAA;l)を添加した以外は前記例示化合物P−1の合成と同様にして例示化合物P−37(〔A〕樹脂)の樹脂溶液(固形分酸価;79.0mgKOH/g、Mw;23,900、1−メトキシ−2−プロパノール/1−メトキシ−2−プロピルアセテート45%溶液)を得た。
但し、i−PrMAA、化合物M−3、メタクリル酸、及びメタクリル酸グリシジルの添加量は、例示化合物P−37の共重合比l:x:y:zが25モル%:15モル%:30モル%:30モル%となる量とした。
【0164】
(例示化合物P−31の合成)
前記例示化合物P−1の合成において、前記化合物M−1(x)及び前記メタクリル酸(MAA;y)を添加する段階において、更に、ジシクロペンタニルメタクリレート(日立化成工業(株)製のFA−513M;l)を添加した以外は前記例示化合物P−1の合成と同様にして例示化合物P−31(〔A〕樹脂)の樹脂溶液(固形分酸価;76.0mgKOH/g、Mw;25,500、1−メトキシ−2−プロパノール/1−メトキシ−2−プロピルアセテート45%溶液)を得た。
但し、FA−513M、化合物M−1、メタクリル酸、及びメタクリル酸グリシジルの添加量は、例示化合物P−31の共重合比l:x:y:zが35モル%:15モル%:24モル%:26モル%となる量とした。
【0165】
〔実施例1〕:塗布法
<カラーフィルタ基板の作製>
特開2005−3861号公報の段落番号[0084]〜[0095]に記載の方法により、ブラックマトリクス、R(赤色)画素、G(緑色)画素、B(青色)画素を有するカラーフィルタを作製した(以下、これをカラーフィルタ基板と称する。)。ここで、カラーフィルタ基板の基板サイズは、550mm×650mmとした。
次いで、得られたカラーフィルタ基板のR画素、G画素、及びB画素並びにブラックマトリクスの上に更に、ITO(Indium Tin Oxide)の透明電極をスパッタリングにより形成した。
【0166】
<フォトスペーサーの形成>
上記で作製したITO透明電極がスパッタ形成されたカラーフィルタ基板のITO透明電極上に、スピンナーにて、下記表1に示す処方(実施例1では処方1)からなる感光性樹脂層用塗布液をスリット塗布した。引き続き、真空乾燥機VCD(東京応化社製)を用いて30秒間溶媒の一部を乾燥させて塗布膜の流動性をなくした後、90℃のホットプレート上で3分間プリベークし、膜厚5.2μmの感光性樹脂層を形成した(被膜形成工程)。
【0167】
続いて、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)を用いて、マスク(直径15μmの円形パターンを有する石英露光マスク)と、該マスクと感光性樹脂層とが向き合うように配置したカラーフィルタ基板と、を略平行に垂直に立てた状態で、マスク面と感光性樹脂層の表面との間の距離を100μmとし、該マスクを介して、365nmにおける強度250W/mで紫外透過フィルタ(UV−35、東芝ガラス(株)製)を透過させた紫外線を照射した(露光工程、露光量200mJ/cm)。
【0168】
次に、炭酸Na系現像液(0.38モル/リットルの炭酸水素ナトリウム、0.47モル/リットルの炭酸ナトリウム、5%のジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アニオン界面活性剤、消泡剤、及び安定剤含有;商品名:T−CD1(富士フィルム(株)製)を純水で10倍に希釈した液)を用いて29℃で30秒間、コーン型ノズル圧力0.15MPaでシャワー現像し、パターン像を形成した(現像工程)。引き続いて、洗浄剤(燐酸塩・珪酸塩・ノニオン界面活性剤・消泡剤・安定剤含有;商品名:T−SD3(富士フィルム(株)製))を純水で10倍に希釈した液を用いて33℃で20秒間、コーン型ノズル圧力0.02MPaにてシャワーで吹きかけ、形成されたパターン像の周辺の残渣除去を行ない、円柱状のスペーサーパターンを300μm×300μmに1本のスペーサー間隔となるように形成した。
【0169】
次に、スペーサーパターンが設けられたカラーフィルタ基板を130℃下で60分間、加熱処理を行なう(加熱工程)ことにより、カラーフィルタ基板上にフォトスペーサーを作製した。
ここで、得られたフォトスペーサ1000個について、三次元表面構造解析顕微鏡(メーカー:ZYGO Corporation、型式:New View 5022)を用い、ITO透明電極上面(基板に平行な2つの面のうち、基板から遠い側の面)からフォトスペーサーの最も高い位置までの距離(以下、この距離を「フォトスペーサーの高さ」ともいう)を測定し、平均値をフォトスペーサーの平均高さとした。
また、得られたフォトスペーサーの底面積の計測は、SEM写真を用いて行なった。その結果、直径15.1μm、平均高さ4.7μmの円柱形状であった。測定値は下記表2に示す。
【0170】
【表1】

【0171】
<液晶表示装置の作製>
別途、対向基板としてガラス基板を用意し、上記で得られたカラーフィルタ基板の透明電極上及び対向基板上にそれぞれPVAモード用にパターニングを施し、その上に更にポリイミドよりなる配向膜を設けた。
【0172】
その後、カラーフィルタの画素群を取り囲むように周囲に設けられたブラックマトリックス外枠に相当する位置に紫外線硬化樹脂のシール剤をディスペンサ方式により塗布し、PVAモード用液晶を滴下し、対向基板と貼り合わせた後、貼り合わされた基板をUV照射した後、熱処理してシール剤を硬化させた。このようにして得た液晶セルの両面に、(株)サンリッツ製の偏光板HLC2−2518を貼り付けた。
【0173】
次いで、赤色(R)LEDとしてFR1112H(スタンレー電気(株)製のチップ型LED)、緑色(G)LEDとしてDG1112H(スタンレー電気(株)製のチップ型LED)、青色(B)LEDとしてDB1112H(スタンレー電気(株)製のチップ型LED)を用いてサイドライト方式のバックライトを構成し、前記偏光板が設けられた液晶セルの背面となる側に配置し、液晶表示装置とした。
【0174】
<評価>
得られたフォトスペーサー、液晶表示装置について、下記の評価を行なった。測定評価の結果は下記表2に示す。
【0175】
(フォトスペーサーの断面形状の均一性)
上記<フォトスペーサーの形成>で得られた加熱処理後のフォトスペーサーの断面形状を走査型電子顕微鏡を用いて観察した。観察は、基板周辺部4箇所(4隅)及び基板中央部1箇所の計5箇所について行った。
更に、下記基準に従ってフォトスペーサーの断面形状の均一性を評価した。
【0176】
〜評価基準〜
A:5箇所の全てにおいて、テーパー角度45°以上90°以下の均一な断面形状を有するフォトスペーサーが形成されていた。
B:5箇所の全てにおいて、テーパー角度45°以上95°以下の均一な断面形状を有するフォトスペーサーが形成されていたが、上記Aには該当しなかった。
C:5箇所の全てにおいて、テーパー角度40°以上100°以下の均一な断面形状を有するフォトスペーサーが形成されていたが、上記A及びBのいずれにも該当しなかった。
D:5箇所中1〜4箇所について、テーパー角度40°以上100°以下の範囲を外れるフォトスペーサーが形成されていた。
E:5箇所の全てにおいて、テーパー角度40°以上100°以下の範囲を外れるフォトスペーサーが形成されていた。
【0177】
(フォトスペーサーの高さ均一性)
上記<フォトスペーサーの形成>で測定されたフォトスペーサー1000個分の高さの結果から、最大値と最小値との差を算出し、下記基準に従って評価した。
差が小さい程、均一性に優れている。
【0178】
〜評価基準〜
A:フォトスペーサーの高さの最大値と最小値との差が0.2μm未満であった。
B:フォトスペーサーの高さの最大値と最小値との差が0.2μm以上0.3μm未満であった。
C:フォトスペーサーの高さの最大値と最小値との差が0.3μm以上0.4μm未満であった。
D:フォトスペーサーの高さの最大値と最小値との差が0.4μm以上0.5μm未満であった。
E:フォトスペーサーの高さの最大値と最小値との差が0.5μm以上であった。
【0179】
(加熱処理条件の評価)
以下の手順により、加熱処理条件の評価を行った。
まず、露光量を250mJ/cmに変更して露光を行った以外は上記<フォトスペーサーの形成>と同様にして、残渣処理後、加熱処理前までの操作を行い、スペーサーパターンを有する評価用サンプルを作製した。
得られた評価用サンプルについて、加熱処理無しとしたとき、及び、加熱温度を種々変化させて加熱処理(加熱処理時間は60分間に固定)を行ったときの、フォトスペーサーの断面形状の均一性及びフォトスペーサーの高さ均一性を評価した。フォトスペーサーの断面形状の均一性及びフォトスペーサーの高さ均一性の評価方法は前述のとおりである。
フォトスペーサーの断面形状の均一性及びフォトスペーサーの高さ均一性の評価結果に基づき、下記基準に従って加熱処理条件の評価を行った。
なお、下記基準において、「断面形状の均一性に優れた」状態とは、前記フォトスペーサーの断面形状の評価基準においてA、B、又はCである状態を指す。
また、下記基準において、「高さの均一性に優れた」状態とは、前記フォトスペーサーの高さ均一性の評価基準においてA、B、又はCである状態を指す。
【0180】
〜評価基準〜
A:加熱処理無しで断面形状の均一性及び高さの均一性に優れたスペーサーパターンが得られた。
B:加熱温度80℃未満で断面形状の均一性及び高さの均一性に優れたスペーサーパターンが得られた。
C:加熱温度80℃以上150℃未満で断面形状の均一性及び高さの均一性に優れたスペーサーパターンが得られた。
D:加熱温度150℃以上200℃未満で断面形状の均一性及び高さの均一性に優れたスペーサーパターンが得られた。
E:加熱温度200℃以上で断面形状の均一性及び高さの均一性に優れたスペーサーパターンが得られた。
【0181】
(変形回復率)
得られたフォトスペーサーに対して、微小硬度計(DUH−W201、(株)島津製作所製)により次のようにして測定を行ない、評価した。測定は、50μmφの円錘台圧子を採用し、最大荷重50mN、保持時間5秒として、負荷−除荷試験法により行なった。この測定値から下記式により変形回復率〔%〕を求め、下記評価基準にしたがって評価した。測定は、22±1℃、50%RHの環境下で行なった。
変形回復率(%)
=(荷重開放後の回復量[μm]/荷重時の変形量[μm])×100
【0182】
〜評価基準〜
A:変形回復率が90%以上であった。
B:変形回復率が87%以上90%未満であった。
C:変形回復率が85%以上87%未満であった。
D:変形回復率が80%以上85%未満であった。
E:変形回復率が75%以上80%未満であった。
F:変形回復率が75%未満であった。
【0183】
(液晶表示装置の表示ムラ)
上記で作製した液晶表示装置について、グレイのテスト信号を入力させたときのグレイ表示を目視にて観察し、表示ムラの発生の有無を下記評価基準にしたがって評価した。評価結果は下記表2に示す。
【0184】
〜評価基準〜
A:表示ムラはなく、非常に良好な表示画像が得られた。
B:ガラス基板のふち部分に微かにムラがあったものの、表示部への影響はなく表示画像は良好であった。
C:表示部に微かにムラがみられたが、実用上許容範囲内であった。
D:表示部にムラがみられた。
【0185】
〔実施例2〜10〕:塗布法
〔A〕樹脂の種類を下記表2に示すように変更した以外は実施例1と同様にしてフォトスペーサー及び液晶表示装置を作製した。得られたフォトスペーサー及び液晶表示装置について、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0186】
〔実施例11〕:塗布法
実施例1において、感光性樹脂層用塗布液の処方を表1中の処方1から処方2に変更した以外は実施例1と同様にして、フォトスペーサー及び液晶表示装置を作製した。得られたフォトスペーサー及び液晶表示装置について、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0187】
〔実施例12〕:転写法
実施例1において、感光性樹脂層用塗布液(処方1)の塗布に代えて以下に示すスペーサ用感光性転写フィルムを用いた転写を行なうことにより、感光性樹脂層を形成したこと以外は、実施例1と同様して、フォトスペーサー及び液晶表示装置を作製した。得られたフォトスペーサーは、円柱形状であった。得られたフォトスペーサー及び液晶表示装置について、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0188】
<スペーサー用感光性転写フィルムの作製>
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム仮支持体(PET仮支持体)上に、下記処方Aからなる熱可塑性樹脂層用塗布液を塗布、乾燥させ、乾燥層厚15.0μmの熱可塑性樹脂層を形成した。
【0189】
〜熱可塑性樹脂層用塗布液の処方A〜
・メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 … 25.0部
(=55/11.7/4.5/28.8[モル比]、重量平均分子量90,000)
・スチレン/アクリル酸共重合体 … 58.4部
(=63/37[モル比]、重量平均分子量8,000)
・2,2−ビス〔4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン
… 39.0部
・下記界面活性剤1 … 10.0部
・メタノール … 90.0部
・1−メトキシ−2−プロパノール … 51.0部
・メチルエチルケトン … 700部
【0190】
*界面活性剤1
・下記構造物1 …30%
・メチルエチルケトン …70%
【0191】
【化26】



【0192】
次に、形成した熱可塑性樹脂層上に、下記処方Bからなる中間層用塗布液を塗布、乾燥させて、乾燥層厚1.5μmの中間層を積層した。
【0193】
〜中間層用塗布液の処方B〜
・ポリビニルアルコール …3.22部
(PVA−205(鹸化率80%)、(株)クラレ製)
・ポリビニルピロリドン …1.49部
(PVP K−30、アイエスピー・ジャパン株式会社製)
・メタノール …42.3部
・蒸留水 …524部
【0194】
次に、形成した中間層上に更に、前記表1に示す処方3からなる感光性樹脂層用塗布液を塗布、乾燥させて、乾燥層厚5.0μmの感光性樹脂層を積層した。
【0195】
以上のようにして、PET仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/感光性樹脂層の積層構造(3層の合計層厚:21.5μm)に構成した後、感光性樹脂層の表面に更に、カバーフィルムとして厚み12μmのポリプロピレン製のフィルムを加熱・加圧して貼り付け、スペーサー用感光性転写フィルムを得た。
【0196】
<フォトスペーサーの作製>
得られたスペーサー用感光性転写フィルムのカバーフィルムを剥離し、露出した感光性樹脂層の表面を、実施例1と同様にして作製したITO透明電極がスパッタ形成されたカラーフィルタ基板のITO透明電極上に重ね合わせ、ラミネーターLamicII型〔(株)日立インダストリイズ製〕を用いて、線圧100N/cm、130℃の加圧・加熱条件下で搬送速度2m/分にて貼り合わせた。その後、PET仮支持体を熱可塑性樹脂層との界面で剥離除去し、感光性樹脂層を熱可塑性樹脂層及び中間層と共に転写した(被膜形成工程)。
【0197】
続いて、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)を用いて、マスク(画像パターンを有する石英露光マスク)と、該マスクと熱可塑性樹脂層とが向き合うように配置したカラーフィルタ基板とを略平行に垂直に立てた状態で、マスク面と感光性樹脂層の中間層に接する側の表面との間の距離を100μmとし、マスクを介して熱可塑性樹脂層側から露光量150mJ/cmにてプロキシミティー露光した(露光工程)。
【0198】
次に、トリエタノールアミン系現像液(トリエタノールアミン30%含有、商品名:T−PD2(富士フィルム(株)製)を純水で12倍(T−PD2を1部と純水11部の割合で混合)に希釈した液)を30℃で50秒間、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像し、熱可塑性樹脂層と中間層とを除去した。引き続き、このガラス基板の上面にエアを吹きかけて液切りした後、純水をシャワーにより10秒間吹き付け、純水シャワー洗浄し、エアを吹きかけて基板上の液だまりを減らした。続いて、炭酸Na系現像液(0.38モル/リットルの炭酸水素ナトリウム、0.47モル/リットルの炭酸ナトリウム、5%のジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アニオン界面活性剤、消泡剤、及び安定剤含有;商品名:T−CD1(富士フィルム(株)製)を純水で10倍に希釈した液)を用いて29℃で30秒間、コーン型ノズル圧力0.15MPaでシャワー現像し、パターン像を形成した(現像工程)。
次いで、洗浄剤(燐酸塩・珪酸塩・ノニオン界面活性剤・消泡剤・安定剤含有;商品名:T−SD3(富士フィルム(株)製))を純水で10倍に希釈した液を用いて33℃で20秒間、コーン型ノズル圧力0.02MPaにてシャワーで吹きかけ、形成されたパターン像の周辺の残渣除去を行ない、円柱状のスペーサーパターンを300μm×300μmに1本のスペーサー間隔となるように形成した。
次に、スペーサーパターンが設けられたカラーフィルタ基板を、130℃下で60分間加熱処理を行なう(被膜加熱工程)ことにより、カラーフィルタ基板上にフォトスペーサを作製した。得られたフォトスペーサーは、直径15.1μm、平均高さ4.7μmの円柱形状であった。
そして、フォトスペーサーが作製されたカラーフィルタ基板を用い、実施例1と同様にして、PVAモード液晶表示装置を作製した。
【0199】
〔比較例1〕
実施例1において、〔A〕樹脂を下記のようにして合成した比較化合物Z−1に変更した以外は実施例1と同様にしてフォトスペーサー及び液晶表示装置を作製した。得られたフォトスペーサー及び液晶表示装置について、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0200】
(比較化合物Z−1の合成)
反応容器中に1−メトキシ−2−プロパノール 25gと1−メトキシ−2−プロピルアセテート25gの混合溶媒をあらかじめ加え、90℃に昇温しスチレン(l)32.1g、メタクリル酸(MAA;y)36.5g、アゾ系重合開始剤(和光純薬社製、V−601) 6.73g、1−メトキシ−2−プロパノール 25g、および1−メトキシ−2−プロピルアセテート25gの混合溶液を窒素ガス雰囲気下、90℃の反応容器中に2時間かけて滴下した。滴下後4時間反応させて、アクリル樹脂溶液を得た。
【0201】
次いで、前記アクリル樹脂溶液に、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.5g、及びテトエチルアンモニウムブロマイド 0.015gを加えた後、グリシジルメタクリレート31.3gを2時間かけて滴下した(GLM−MAA;z)。滴下後、空気を吹き込みながら90℃で4時間反応させ、比較化合物Z−1(y:z:l=45mol%:23mol%:32mol%、Mw;12000)の溶液を得た。この比較化合物Z−1の溶液中の固形分は50%であった。
【0202】
【化27】



【0203】
〔比較例2〕:塗布法
実施例1において、感光性樹脂層用塗布液の処方を表1中の処方1から処方4に変更した以外は実施例1と同様にして、フォトスペーサー及び液晶表示装置を作製した。得られたフォトスペーサー及び液晶表示装置について、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0204】
【表2】

【0205】
表2に示すように、実施例のフォトスペーサーは断面形状の均一性及び高さの均一性に優れていた。また、実施例のフォトスペーサーを備えた液晶表示装置では表示ムラが抑制されていた。
【0206】
〔実施例13〕
<保護膜の形成>
実施例8中、カラーフィルタ基板の作製において、ブラックマトリクス、R画素、G画素、及びB画素形成後、ブラックマトリクス及び各画素上に、更に、前記処方1からなる感光性樹脂組成物を塗布し、マスクを介さずに露光し(全面露光)、加熱処理して保護膜を形成した。ここで、塗布、露光、加熱処理の条件は、マスクを介さずに露光する以外は実施例8中のフォトスペーサーの形成における塗布、露光、加熱処理の条件と同様である。
次いで、得られた保護層上に更に、ITO(Indium Tin Oxide)の透明電極をスパッタリングにより形成した。
【0207】
<フォトスペーサーの形成>
上記で形成されたITO透明電極上に、感光性樹脂組成物として比較例2で用いた感光性樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様の方法によりフォトスペーサーを形成した。
【0208】
<液晶表示装置の作製及び評価>
次に、前記フォトスペーサーが形成されたカラーフィルタ基板を用い、実施例1と同様の方法により液晶表示装置を作製した。
得られた保護膜及び液晶表示装置について、実施例1と同様の方法により評価を行った。保護膜の膜厚均一性の測定は、実施例1のフォトスペーサーの高さ測定と同様の方法により測定した。評価結果を表3に示す。
【0209】
〔実施例14〕
<着色パターンの形成>
実施例1中、カラーフィルタ基板の作製において、R画素を下記方法により形成した以外は実施例1と同様にしてカラーフィルタ基板を作製した。
即ち、前記処方1に、さらにピグメントレッド254(19.4部)及びピグメントレッド177(4.83部)を添加して、R画素用感光性樹脂組成物を調製した。
調製されたR画素用感光性樹脂組成物を用いたこと及びフォトマスクとしてR画素用フォトマスクを用いたこと以外は実施例1中のフォトスペーサーの形成と同様の方法により、R画素を形成した。
【0210】
作製されたカラーフィルタ基板のR画素、G画素、及びB画素形成後、各画素上に更に、ITO(Indium Tin Oxide)の透明電極をスパッタリングにより形成した。
【0211】
<フォトスペーサーの形成>
上記で形成されたITO透明電極上に、感光性樹脂組成物として比較例2で用いた感光性樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様の方法によりフォトスペーサーを形成した。
【0212】
<液晶表示装置の作製及び評価>
次に、前記フォトスペーサーが形成されたカラーフィルタ基板を用い、実施例1と同様の方法により液晶表示装置を作製した。
得られた着色パターン及び液晶表示装置について、実施例1と同様の方法により評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0213】
【表3】

【0214】
表3に示すように、本発明の感光性樹脂組成物を用いて保護膜及び着色パターンを形成した場合においても、フォトスペーサーを形成した場合と同様に良好な結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
〔A〕側鎖に、C=Oで表される部位及び/又はP=Oで表される部位を含む5員又は6員の環状構造、酸性基、並びにエチレン性不飽和結合を有する樹脂と、
〔B〕重合性化合物と、
〔C〕光重合開始剤と、
を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂が、更に、分岐及び/又は脂環構造を側鎖に有することを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記重合性化合物の少なくとも1種は、C=Oで表される部位及び/又はP=Oで表される部位を含む5員又は6員の環状構造と、エチレン性不飽和二重結合と、を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を用いて形成されたフォトスペーサー。
【請求項5】
少なくとも下記工程(イ)〜(ハ)を含むフォトスペーサーの形成方法。
(イ)請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の被膜を基板上に形成する工程
(ロ)前記被膜の少なくとも一部を露光する工程
(ハ)露光後の前記被膜を現像する工程
【請求項6】
更に、現像後の前記被膜を加熱する工程を有し、該加熱における最高温度が40℃以上145℃以下であることを特徴とする請求項5に記載のフォトスペーサーの形成方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を用いて形成された保護膜。
【請求項8】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を用いて形成された着色パターン。
【請求項9】
請求項4に記載のフォトスペーサー、請求項7に記載の保護膜、及び請求項8に記載の着色パターンの少なくとも1つを備えた表示装置用基板。
【請求項10】
請求項9に記載の表示装置用基板を備えた表示装置。

【公開番号】特開2009−186838(P2009−186838A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27994(P2008−27994)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】