説明

感光性樹脂組成物、感光性フィルム、永久マスクレジスト及びその製造方法

【課題】 感光性樹脂組成物の安定性(ポットライフ)、硬化膜の耐折性及び耐めっき性に優れた感光性樹脂組成物、感光性フィルム、永久マスクレジスト及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 (A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂、(B)(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸ブチルエステルを構成モノマーとして含むバインダーポリマー、(C)光重合性化合物、及び(D)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(B)(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸ブチルエステルを構成モノマーとして含むバインダーポリマーの酸価が、50〜130mgKOH/gである感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、感光性フィルム、永久マスクレジスト及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板の一種として、フレキシブルプリント配線板(Flexible Printed Circuit;以下、「FPC」という。)と呼ばれるフィルム状のプリント配線板が、特にカメラ、磁気ヘッド、携帯電話などの小型機器に用いられている。これは、FPCがそれ自体を折り曲げてもその機能を維持することができることから、上述のような小型機器に収容するプリント配線板として最適であるためである。
特に最近では、各種電子機器の更なる小型化及び軽量化の要請が増えてきており、FPCの採用によって、該小型機器の更なる小型化、軽量化、製品コストの低減並びに設計の簡素化等が徐々に進められている。
FPCには、はんだ付け位置の限定及び配線の保護を目的としてカバーレイ又はカバーコートと呼ばれる永久マスクレジストが設けられる。カバーレイは、接着層を有するポリイミドやポリエステルフィルムを所定の型に打ち抜いた後、FPC上に熱圧着等で形成されるのが一般的である。また、カバーコートは、熱硬化や光硬化性のインクを印刷、硬化させて形成されるのが一般的である。
カバーレイ又はカバーコートには、通常のプリント配線板に用いられるソルダーレジストと同様に耐めっき性、耐薬品性、高密着性、高解像性、電気絶縁性及びはんだ耐熱性等の特性が求められ、さらにいわゆる耐折性(可とう性)が要求される。このため、FPCの永久マスクレジストとしては、可とう性に優れるポリイミド製のカバーレイが広く用いられている。
しかし、上述のカバーレイは、型抜きの為に高価な金型が必要であるうえに、型抜きしたフィルムを人手によって張り合わせる作業が必要となること、さらに接着剤のはみ出し等のため歩留まりが悪いことから、製造コストが高くなり、FPC市場拡大の障害となっている。さらに、近年の配線の高密度化に対応する事が困難となっている。
そこで、写真現像法(イメージ露光後、現像により画像を形成する方法)で、寸法精度、解像性に優れた高精度、高信頼性のレジストを形成することができる感光性樹脂組成物の開発が求められている。
こうした要求に応えるため、永久マスクレジスト形成用の感光性樹脂組成物を用いることが試みられてきた。かかる永久マスクレジスト形成用の感光性樹脂組成物として、例えば、アクリル系ポリマー及び光重合性モノマーを主成分とする難燃性の感光性樹脂組成物(例えば、特許文献1及び2)、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を主成分とする耐熱性の感光性樹脂組成物(例えば、特許文献3)、主鎖にカルコン基を有する感光性エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を主成分とする高安定性の感光性樹脂組成物(例えば、特許文献4)、エポキシ基を有するノボラック型エポキシアクリレート及び光重合性開始剤を主成分とし、硬化性、耐溶剤性、耐めっき性等に優れる感光性樹脂組成物(例えば、特許文献5)、カルボキシル基含有ポリマー、単量体、光重合性開始剤及び熱硬化性樹脂などを含有し、安定性、経済性等に優れアルカリ水溶液で現像可能な感光性樹脂組成物(例えば、特許文献6〜9)などが提案されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭53−056018号公報
【特許文献2】特開昭54−001018号公報
【特許文献3】特開昭54−082073号公報
【特許文献4】特開昭58−062636号公報
【特許文献5】特開昭61−000272号公報
【特許文献6】特開昭48−073148号公報
【特許文献7】特開昭57−178237号公報
【特許文献8】特開昭58−042040号公報
【特許文献9】特開昭59−151152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の感光性樹脂組成物によって形成される永久マスクレジストは、耐折性、耐めっき性等の特性を十分に満足することが困難であった。
また、エポキシアクリレート等の樹脂とアクリル樹脂とを用いた感光性樹脂組成物は、樹脂組成物溶液とした場合に樹脂どうしの相溶性が悪く、安定性(ポットライフ)が不十分であるために時間の経過と共に分離が起こるという問題があった。
本発明は、前述した従来の技術の欠点を解消し、感光性樹脂組成物の安定性(ポットライフ)、硬化膜の耐折性及び耐めっき性に優れた感光性樹脂組成物、感光性フィルム、永久マスクレジスト及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、[1](A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂、(B)(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸ブチルエステルを構成モノマーとして含むバインダーポリマー、(C)光重合性化合物、及び(D)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(B)(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸ブチルエステルを構成モノマーとして含むバインダーポリマーの酸価が、50〜130mgKOH/gである感光性樹脂組成物を提供する。
また、本発明は、[2]前記(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂が、(a1)エポキシ樹脂と、(a2)ビニル基含有モノカルボン酸とを反応させて得られる樹脂と、(a3)多塩基酸無水物と、を反応させて得られる樹脂を含有し、前記(a1)エポキシ樹脂がノボラック型エポキシ樹脂又はトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂である、前記[1]記載の感光性樹脂組成物を提供する。
本発明は、また、[3]支持体と、該支持体上に設けられた上記[1]又は[2]記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層とを備える感光性フィルムを提供する。
本発明は、また、[4]上記[1]又は[2]記載の感光性樹脂組成物を光照射により硬化させてなる永久マスクレジストを提供する。
本発明は、また、[5]基板上に上記[1]又は[2]記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を積層する積層工程と、活性光線を前記感光性樹脂組成物層の所定部分に照射して、前記感光性樹脂組成物層に光硬化部を形成させる露光工程と、前記感光性樹脂組成物層の前記光硬化部以外の部分を除去する現像工程とを含む永久マスクレジストの製造方法を提供する。かかる製造方法によれば、上記効果を奏する本発明の感光性樹脂組成物を用いているため、可とう性、耐めっき性、耐熱性、解像性及び耐薬品性に優れ、フレキシブルプリント配線板に好適に使用できる永久マスクレジストを製造することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、感光性樹脂組成物の安定性(ポットライフ)、硬化膜の耐折性及び耐めっき性に優れた感光性樹脂組成物、感光性フィルム、永久マスクレジスト及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の感光性フィルムの好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。なお、本明細書における(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及びそれに対応するメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイルとはアクリロイル及びそれに対応するメタクリロイルを意味する。
【0009】
図1は、本発明の感光性フィルムの好適な一実施形態を示す模式断面図である。感光性フィルム1は、支持体10と、支持体10上に設けられる感光性樹脂組成物層20と、感光性樹脂組成物層20上に設けられる保護フィルム30とを備える。
【0010】
感光性樹脂組成物層20は、感光性樹脂組成物からなる。感光性樹脂組成物は、(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂、(B)(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸ブチルエステルを構成モノマーとして含むバインダーポリマー、(C)光重合性化合物、及び(D)光重合開始剤を含有する。
【0011】
(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂、すなわち(A)成分は次の二段階の反応によって得ることができる。最初の反応(以下、便宜的に「第一の反応」という。)では、(a1)エポキシ樹脂と(a2)ビニル基含有モノカルボン酸とを反応する。次の反応(以下、便宜的に「第二の反応」という。)では、第一の反応で生成した樹脂と、多塩基酸無水物(a3)とを反応する。
第一の反応では、(a1)成分のエポキシ基と(a2)ビニル基含有モノカルボン酸のカルボキシル基との付加反応により水酸基が生成する。
エポキシ樹脂(a1)としては特に制限はないが、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中では、ノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0012】
本実施形態のエポキシ樹脂(a1)としては、硬化させて得られる永久マスクレジストの耐めっき性、可とう性及び密着性を一層向上させる観点から、下記一般式(1)で示されるノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0013】
【化1】

[一般式(1)中、Xは水素原子又はグリシジル基を示し、rは0〜3の整数を示し、nは1以上の整数を示す。なお、複数存在するXは同一でも異なっていてもよく、X全体の水素原子/グリシジル基のモル比は0/100〜70/30である。]
(a1)成分のうち、上記一般式(1)で示されるノボラック型エポキシ樹脂としては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂やフェノールノボラック型エポキシ樹脂(r=0)があり、中でもクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。これらの樹脂は、クレゾールノボラック樹脂又はフェノールノボラック樹脂とエピクロルヒドリンとを反応させる公知の方法で得ることができる。
【0014】
ビニル基含有モノカルボン酸(a2)としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸の二量体、メタクリル酸、β−フルフリルアクリル酸、β−スチリルアクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、α−シアノ桂皮酸、及びソルビン酸等を用いることができる。また、水酸基含有アクリレートと飽和又は不飽和基含有二塩基酸無水物との反応生成物である半エステル化合物、ビニル基含有モノグリシジルエーテル又はビニル基含有モノグリシジルエステルと飽和又は不飽和基含有二塩基酸無水物との反応生成物である半エステル化合物を用いることができる。ここで、半エステル化合物とは、例えば、2個のカルボキシル基のうち、一方だけがエステル化された化合物をいう。これらのビニル基含有モノカルボン酸(a2)は、単独で、又は二種類以上併用して用いることができる。
【0015】
半エステル化合物は、水酸基含有アクリレート、あるいはビニル基含有モノグリシジルエーテル又はビニル基含有モノグリシジルエステルと、飽和又は不飽和基含有二塩基酸無水物とを等モル比で反応させることによって得ることができる。
【0016】
水酸基含有アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、グリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレート等を用いることができる。
【0017】
ビニル基含有モノグリシジルエーテル又はビニル基含有モノグリシジルエステルとしては、グリシジル(メタ)アクリレート等を用いることができる。
【0018】
飽和又は不飽和基含有二塩基酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、及び無水イタコン酸等を用いることができる。
【0019】
第一の反応における、エポキシ樹脂(a1)とビニル基含有モノカルボン酸(a2)との比率は、エポキシ樹脂(a1)のエポキシ基1当量に対して、ビニル基含有モノカルボン酸(a2)が0.7〜1.05当量となる比率であることが好ましく、0.8〜1.0当量となる比率であることがより好ましい。
【0020】
第一の反応は、エポキシ樹脂(a1)及びビニル基含有モノカルボン酸(a2)の双方を有機溶剤に溶解させて反応させることができる。有機溶剤としては、例えば、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル類、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等を用いることができる。
【0021】
第一の反応において、反応を促進させるために触媒を用いることが好ましい。触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルメチルアミン、メチルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、及びトリフェニルホスフィン等を用いることができる。触媒の使用量は、エポキシ樹脂(a1)とビニル基含有モノカルボン酸(a2)の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部とすることが好ましい。
【0022】
第一の反応において、エポキシ樹脂(a1)同士又はビニル基含有モノカルボン酸(a2)同士、あるいはエポキシ樹脂(a1)とビニル基含有モノカルボン酸(a2)との重合を防止するため、重合防止剤を使用することが好ましい。
【0023】
重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、及びピロガロール等を用いることができる。重合防止剤の使用量は、エポキシ樹脂(a1)とビニル基含有モノカルボン酸(a2)の合計100質量部に対して、0.01〜1質量部とすることが好ましい。第一の反応の反応温度は、60〜150℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。
【0024】
第一の反応では、エポキシ樹脂(a1)及びビニル基含有モノカルボン酸(a2)の他に、必要に応じて無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の多塩基酸無水物及びフェノール誘導体等を併用することができる。
【0025】
第二の反応では、第一の反応で生成した水酸基、及びエポキシ樹脂(a1)中に元来ある水酸基が、多塩基酸無水物(a3)の酸無水物基と半エステル反応すると推察される。
【0026】
多塩基酸無水物(a3)は、飽和又は不飽和基含有多塩基酸無水物である。飽和又は不飽和基含有多塩基酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、及び無水イタコン酸等を用いることができる。
【0027】
第二の反応では、第一の反応によって得られる樹脂中の水酸基1当量に対して、0.1〜1.0当量の多塩基酸無水物(a3)を反応させることができる。多塩基酸無水物(a3)の量をこの範囲内で調製することによって、(A)成分の酸価を調整することができる。
【0028】
本発明で用いる(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂であるエポキシアクリレート化合物としては、CCR−1218H、CCR−1159H、CCR−1222H、PCR−1191H、TCR−1335H、ZAR−2001H、及びZCR−1569H等(以上、日本化薬株式会社製、商品名)などの市販品が入手可能である。
【0029】
(A)成分の酸価は、感光性樹脂組成物の希アルカリ溶液への溶解性及び硬化後の基材等への密着性を共に良好にする観点から、30〜180mgKOH/gであることが好ましく、50〜150mgKOH/gであることがより好ましく、60〜120mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0030】
(A)成分の重量平均分子量は、感光性樹脂組成物層20と支持体10との粘着性、すなわちタック性と、(B)成分との相溶性とを共に良好にする観点から、3,000〜50,000であることが好ましく、5,000〜40,000であることがより好ましく、7,000〜35,000であることがさらに好ましく、10,000〜30,000であることが特に好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線で換算することによって得ることができる。
【0031】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物を作製する場合、(A)成分の固形分(有機溶剤に溶解している場合、以下同じ)の含有割合は、形成されるカバーレイ等の永久マスクレジストの耐めっき性及び耐折性を共に良好にする観点から、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の固形分総量に対して、10〜70質量%であることが好ましく、15〜60質量%であることがより好ましく、20〜50質量%であることがさらに好ましい。
【0032】
(B)(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸ブチルエステルを構成モノマーとして含むバインダーポリマーは、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸ブチルエステルと共に共重合しうるその他のビニル共重合モノマーを含んでいてもよい。その他のビニル共重合モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のα−位又は芳香族環において置換されている重合可能なスチレン誘導体、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド、アクリロニトリル、ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸系単量体、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマル酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、及びプロピオール酸等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0033】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、下記一般式(3)で表される化合物や、この化合物のアルキル基がヒドロキシル基、エポキシ基、ハロゲン等で置換されたものが挙げられる。
【0034】
【化2】

上記一般式(3)中、Rは水素原子又はメチル基、Rは炭素数1〜3及び5〜12のアルキル基を示す。Rで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、及びこれらの構造異性体が挙げられる。
【0035】
上記一般式(3)で表される化合物として、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸プロピルエステル、(メタ)アクリル酸ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸オクチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ノニルエステル、(メタ)アクリル酸デシルエステル、(メタ)アクリル酸ウンデシルエステル、及び(メタ)アクリル酸ドデシルエステルを用いることができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明で用いる(B)成分の酸価は50〜130mgKOH/gであり、感光性樹脂組成物のアルカリ現像性及び永久マスクレジストのパターン形成性を良好にし、且つ耐めっき性を向上する観点から、50〜100mgKOH/gであることが好ましく、60〜90mgKOH/gであることがより好ましい。
なお、(B)成分の酸価は、以下の方法により測定することができる。
(B)成分としての樹脂溶液約1gを精秤した後、その樹脂溶液にアセトンを30g添加し、樹脂溶液を均一に溶解する。次いで、指示薬であるフェノールフタレインをその溶液に適量添加して、0.1NのKOH水溶液を用いて滴定を行う。そして、滴定結果より次式により酸価を算出する。
【0036】
【数1】

【0037】
なお、式中Aは酸価(mgKOH/g)を示し、Vfは0.1NのKOH水溶液の滴定量(mL)を示し、Wpは(A)成分としての樹脂溶液の重量(g)を示し、Iは(B)成分としての樹脂溶液の不揮発分の割合(質量%)を示す。
【0038】
(B)成分の重量平均分子量は、20,000〜300,000とすることが好ましく、30,000〜150,000とすることがより好ましく、50,000〜130,000とすることがさらに好ましい。この重量平均分子量が、20,000未満では、フィルム性が低下する傾向があり、300,000を超えると、現像性が低下する傾向がある。
【0039】
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線で換算することによって得ることができる。
【0040】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物を作製する場合、(B)成分の固形分の含有割合は、感光性樹脂組成物の安定性(ポットライフ)、フィルム形成性、アルカリ現像性及び耐めっき性を良好にする観点から、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の固形分総量に対して、20〜80質量%であることが好ましく、25〜65質量%であることがより好ましく、30〜60質量%であることがさらに好ましい。
【0041】
(C)光重合性化合物、すなわち(C)成分は、分子内に少なくとも一つのエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物である。(C)光重合性化合物としては、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等のビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、グリシジル基含有化合物にα、β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー、ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β′−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β′−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等のフタル酸系化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられるが、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物を必須成分とすることが好ましい。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0042】
上記多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14であり、プロピレン基の数が2〜14であるポリエチレンポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO,PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパン等が挙げられ、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−500(新中村化学工業株式会社製、製品名)又はFA−321M(日立化成工業株式会社、製品名)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300(新中村化学工業株式会社製、製品名)として商業的に入手可能である。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0044】
上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0045】
上記分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーとイソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、新中村化学工業株式会社製、製品名UA−11等が挙げられる。また、EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、新中村化学工業株式会社製、製品名UA−13等が挙げられる。
【0046】
なお、EOはエチレンオキサイドを示し、EO変性された化合物はエチレンオキサイド基のブロック構造を有する。また、POはプロピレンオキサイドを示し、PO変性された化合物はプロピレンオキサイド基のブロック構造を有する。
【0047】
前記ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレートとしては、例えば、ノニルフェノキシテトラエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシペンタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシヘキサエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシヘプタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシオクタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシノナエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシデカエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシウンデカエチレンオキシアクリレート等が挙げられる。
【0048】
本実施形態の(C)光重合性化合物は、感光性樹脂組成物の感度及び解像度と永久マスクレジストの可とう性を一層向上させる観点から、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物を含有することが好ましく、中でも2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンを含有することがより好ましい。
【0049】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物を作製する場合、(C)成分の割合は、感光性樹脂組成物のフィルム形成性、感度及び永久マスクレジストの耐めっき性を良好にする観点から、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の固形分総量に対して、10〜70質量%であることが好ましく、15〜50質量%であることがより好ましく、20〜40質量%であることがさらに好ましい。
【0050】
(D)光重合開始剤、すなわち(D)成分としては、例えば、置換又は非置換の多核キノン類(2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン等)、α−ケタルドニルアルコール類(ベンゾイン、ピバロン等)、エーテル類、α−炭化水素置換芳香族アシロイン類(α−フェニル−ベンゾイン、α,α−ジエトキシアセトフェノン等)、芳香族ケトン類(ベンゾフェノン、4,4'−ビスジアルキルアミノベンゾフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン等)、チオキサントン類(2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−エチルチオキサントン等)、アシルフォスフィンオキサイド類(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等)及びα−アミノアルキルフェノン類(2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モノホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等)を用いることができる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
(D)成分としては、感光性樹脂組成物の感度及び形成される永久マスクレジストの耐めっき性の観点から、α−アミノアルキルフェノン類を含むことが好ましく、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1を含むことがより好ましい。2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1は、Irgacure369(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0052】
また、感光性樹脂組成物の感度を一層向上させる観点から、(D)成分は4,4'−ビスジアルキルアミノベンゾフェノンをさらに含むことが好ましい。
【0053】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物を作製する場合、(D)成分の含有割合は、感光性樹脂組成物の感度及び永久マスクレジストのはんだ耐熱性を共に良好にする観点から、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の固形分総量に対して、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましく、0.5〜6質量%であることがさらに好ましい。
【0054】
本発明の感光性樹脂組成物には、さらに、メラミン樹脂、ブロック化イソシアネート化合物等の熱硬化成分、密着性付与剤、染料、顔料、可塑剤、安定剤、有機フィラー及び無機フィラーなどを必要に応じて添加することができる。
【0055】
本発明の感光性フィルムは、支持体フィルム上に、前記本発明の感光性樹脂組成物の層を積層することにより製造することができる。
【0056】
支持体としては、重合体フィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等からなるフィルムが挙げられ、中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。これらの重合体フィルムは多層構造を有していてもよく、更に片面にエンボスなどの処理を施してあってもよい。
【0057】
また、これらの重合体フィルムの厚さは、5〜100μmとすることが好ましく、10〜30μmとすることがより好ましい。この厚さが、5μm未満では、回路被覆性が低下する傾向があり、100μmを超えると、パターン形成が困難となる傾向がある。
【0058】
これらの重合体フィルムは、一つは感光層の支持フィルムとして、他の一つは感光層の保護フィルムとして感光層の両面に積層することができる。
【0059】
本発明の感光性フィルムの製造方法としては、(A)成分、(B)成分(C)成分および(D)成分、その他の成分を含む感光性樹脂組成物を、溶剤に均一に溶解ないし分散する。
【0060】
この時に使用する溶剤としては、感光性樹脂組成物を溶解する溶剤であればよく、例えば、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エーテル系溶剤(メチルソロソルブ、エチルセロソルブ等)、塩素化炭化水素系溶剤(ジクロルメタン、クロロホルム等)、アルコール系溶剤(メチルアルコール、エチルアルコール等)などが用いられる。これらの溶剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0061】
ついで、溶液状の感光性樹脂組成物を、前記支持フィルムの重合体フィルム上に、均一に塗布した後、加熱及び/又は熱風吹き付けにより溶剤を除去し、乾燥皮膜とすることができる。
【0062】
乾燥皮膜の厚さは、特に制限はなく、10〜100μmとすることが好ましく、20〜60μmとすることがより好ましく、30〜50μmとすることがさらに好ましい。
【0063】
このようにして得られた感光層と重合体フィルムとの2層からなる本発明の感光性フィルムは、そのままで又は感光層の他の面に保護フィルムをさらに積層してロール状に巻き取って貯蔵することができる。
【0064】
本発明の感光性フィルムを用いて、フォトレジスト画像を製造する方法としては、前記保護フィルムが存在している場合には、保護フィルムを除去後、感光層を加熱しながら基板に圧着させることにより積層することができる。感光層の加熱温度としては、特に制限はなく、90〜130℃とすることが好ましい。また、圧着圧力としては、特に制限はなく、0.1〜1MPa程度(1〜10kgf/cm程度)、具体的には、2.94×10Pa(3kgf/cm)とすることが好ましく、4000Pa(30mmHg)以下の減圧下で行われることが好ましい。
【0065】
積層される表面としては、特に制限はなく、エッチング等により配線の形成された銅張り積層板やFPCであることが好ましく、FPCであることがより好ましい。
【0066】
本発明の感光性フィルムを使用する場合には、感光層を前記のように加熱しながら基板に圧着させるため、予め基板を予熱処理することは必要でないが、積層性を更に向上させるために、基板の予熱処理を行うこともできる。
【0067】
このようにして積層が完了した感光層は、ネガフィルム又はポジフィルムを用いて活性光に画像的に露光される。この時、感光層上に存在する重合体フィルムが透明の場合には、そのまま露光することができるが、不透明の場合には、除去する必要がある。
【0068】
感光層の粉塵や傷からの保護及び空気中の酸素による感度低下を防止する観点から、重合体フィルムは透明であることが好ましく、残存させたままの重合体フィルムを通して露光することが好ましい。
【0069】
活性光としては、公知の活性光源が使用でき、例えば、カーボンアーク、水銀蒸気アーク、キセノンアーク、その他から発生する光等が挙げられる。感光層に含まれる光開始剤の感受性は、通常、紫外線領域において最大であるため、その場合の活性光源は、紫外線を有効に放射するものが好ましい。
【0070】
次いで、露光後、感光層上に重合体フィルムが存在している場合には、これを除去した後、アルカリ水溶液を用いて、例えば、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知方法により未露光部を除去して現像することができる。
【0071】
アルカリ性水溶液の塩基としては、例えば、リチウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物等の水酸化アルカリ、リチウム、ナトリウム又はカリウムの炭酸塩又は重炭酸塩等の炭酸アルカリ、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩などが挙げられ、中でも、炭酸ナトリウムの水溶液が好ましい。
【0072】
現像に用いるアルカリ水溶液のpHとしては、9〜11とすることが好ましく、現像温度は、感光層の現像性に合わせて調整することができる。また、前記アルカリ水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させることができる。
【0073】
さらに、現像後、FPCの永久マスクレジスト(カバーレイ)としてのはんだ耐熱性、耐薬品性等を向上させる目的で、高圧水銀ランプによる紫外線照射や加熱を行うことができる。紫外線の照射量としては、0.2〜10J/cmとすることが好ましい。また、加熱時の加熱温度としては、100〜170℃とすることが好ましく、加熱時間としては、15〜90分間とすることが好ましい。これら紫外線の照射と加熱は、どちらを先に行ってもよく、同時に行ってもよい。紫外線の照射と加熱を同時に行う場合、60〜150℃の熱を伴うことが好ましい。
【0074】
FPC等のプリント配線板はこのようにして永久マスクレジストの特性を付与された後、LSI等の部品の実装(はんだ付け)、カメラ等機器へ装着される。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
(実施例1〜2及び比較例1〜3)
(感光性樹脂組成物の作製)
表1及び表2に示す材料を配合し、感光性樹脂組成物の溶液を得た。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

数値は固形分の配合量(質量部)
【0078】
*1:クレゾールノボラック型エポキシアクリレート化合物(日本化薬株式会社製、商品名)
*2:2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(日立化成工業株式会社製、商品名)
*3:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商品名)
*4:下記式(6)で表されるイソシアネート化合物
【0079】
【化3】

*5:下記式(7)で表されるメチルエチルケトンオキシム(ブロック剤)
【0080】
【化4】

【0081】
[安定性(ポットライフ)評価]
表1及び表2に示す材料を配合した感光性樹脂組成物の溶液(溶液A)を透明なガラス瓶へ移し、密閉したガラス瓶を30℃の恒温槽へ3日間投入した後、分離の有無等、溶液の変化を目視により確認した。
【0082】
(感光性フィルムの作製)
上記同様、表1及び表2に示す材料を配合した溶液(溶液A)を、25μmの厚さのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポン株式会社製、商品名「G2-16」)上に均一に塗布し、100℃の熱風循環式乾燥器で、5分間乾燥して溶剤を除去した。感光性樹脂組成物層の乾燥後の厚さは、40μmであった。
【0083】
次いで、感光性樹脂組成物層の上に、ポリエチレンフィルム(タマポリ株式会社製、商品名「NF−13」)を保護フィルムとして貼り合わせ、感光性フィルム(積層体)を得た。
【0084】
(評価用基板の作製)
別に、35μm厚銅箔をポリイミド基材に積層したFPC用基板(ニッカン工株式会社業製、商品名「F30VC125RC11」)の銅表面を砥粒ブラシで研磨、水洗し、乾燥した。
【0085】
次いで真空加圧式ラミネータ(株式会社名機製作所製、型式MVLP−500)を用いて、前記FPC用基板に前記感光性フィルムの保護フィルムをはく離した後、感光層が基板側となるようにラミネートし、評価用基板を得た。ラミネータの成形温度は60℃、成形圧力は0.4MPa(4kgf/cm)、真空時間及び加圧時間をそれぞれ20秒とした。
【0086】
[ラミネート追従性]
得られた評価用基板について、FPC用基板と感光層との間の気泡の有無を目視により観察した。気泡が認められなかったものを良好、気泡が認められたものを不良として評価した。
【0087】
[密着性評価]
次いで、ラミネート終了後、23℃まで冷却し、1時間以上放置した後、ライン幅/スペース幅が30/400〜200/400(単位:μm)の配線パターンを有するフォトツールを評価用基板上に密着させ、高圧水銀灯ランプを有する散乱光露光機(株式会社オーク製作所製、HMW−201GX)を用いて所定のエネルギー量で露光した。露光後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を30℃で60秒間スプレーすることにより、未露光部分を除去して密着性の評価をした。密着性は、現像液によって剥離せずに残ったラインの幅(μm)で表され、この数値が小さい程密着性が高いことを示す。結果を表3に示した。
【0088】
[耐折性の評価]
次いで、160℃で50分間の加熱処理を行い、FPC用基板上に永久マスクレジスト層を備えるサンプル基板を得た。
上記サンプル基板を260℃のはんだ浴中に10秒間浸漬してはんだ処理を行った後、ハゼ折りで180°折り曲げ、折り曲げた際の永久マスクレジスト層のクラックの発生状況を目視で観察し、下記の基準で評価した。結果を表3に示した。
良好:クラックの発生無し、
不良:クラックが発生したもの。
【0089】
[耐めっき性の評価]
【0090】
耐めっき性として、無電解ニッケル/金めきを評価した。前述のように形成した永久マスクレジスト層を備えた評価基板を用い、脱脂・5分浸漬、水洗、ソフトエッチング・2分浸漬、水洗、酸洗・3分浸漬、水洗、プレディップ・90秒浸漬、無電解ニッケルめっき・23分処理、水洗、無電解金めっき・15分処理、水洗、乾燥した。尚上記において各工程に用いた材料は以下の通りである。
【0091】
脱脂:PC−455(メルテックス株式会社製)25質量%の水溶液
ソフトエッチング:過硫酸アンモニウム150g/Lの水溶液
酸洗:5体積%硫酸水溶液
無電解ニッケルめっき:ニムデンNPF−2(上村工業株式会社製)
無電解金めっき:ゴブライトTIG−10(上村工業株式会社製)
【0092】
乾燥後、耐金めっき性を評価する為に、直ちにセロテープ(登録商標)を貼り、これを垂直方向に引き剥がして(90°ピールオフ試験)、レジストの剥れの有無を光学顕微鏡により観察した。また、金めっきのもぐり幅を光学顕微鏡により観察し、以下の基準で評価した。金めっき液がレジスト底部にもぐりこむことによって金が析出するため、金めっきのもぐり幅はレジストを介して観察することができる。結果を表3に示した。
◎:金めっきのもぐり幅が5μm未満であったもの
○:金めっきのもぐり幅が5μm以上、10μm未満であったもの
△:金めっきのもぐり幅が10μm以上、20μm未満であったもの
×:金めっきのもぐり幅が20μm以上であったもの
【0093】
【表3】

【0094】
表3から明らかなように、本発明の感光性樹脂組成物を用いた場合には、安定性(ポットライフ)、耐折性及び耐めっき性に優れたカバーレイが得られ、十分なラミネート追従性及び密着性をも有していた。一方、本発明の感光性樹脂組成物を用いない比較例1〜3では、安定性(ポットライフ)、耐折性、耐めっき性のいずれか又は全てが実施例よりも劣っていた。
【符号の説明】
【0095】
1‥感光性フィルム
10‥支持体
20‥感光性樹脂組成物層
30‥保護フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂、
(B)(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸ブチルエステルを構成モノマーとして含むバインダーポリマー、
(C)光重合性化合物、及び
(D)光重合開始剤
を含有する感光性樹脂組成物であって、
前記(B)(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸ブチルエステルを構成モノマーとして含むバインダーポリマーの酸価が、50〜130mgKOH/gである感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂が、
(a1)エポキシ樹脂と、
(a2)ビニル基含有モノカルボン酸とを反応させて得られる樹脂と、
(a3)多塩基酸無水物と、
を反応させて得られる樹脂を含有し、前記(a1)エポキシ樹脂がノボラック型エポキシ樹脂又はトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂である、請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
支持体と、該支持体上に形成された請求項1又は2記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層と、を備える感光性フィルム。
【請求項4】
請求項1又は2記載の感光性樹脂組成物を光照射により硬化させてなる永久マスクレジスト。
【請求項5】
基板上に請求項1又は2記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を積層する積層工程と、
活性光線を前記感光性樹脂組成物層の所定部分に照射して、前記感光性樹脂組成物層に光硬化部を形成させる露光工程と、
前記感光性樹脂組成物層の前記光硬化部以外の部分を除去する現像工程と、
を含む永久マスクレジストの製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−169808(P2010−169808A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10884(P2009−10884)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】