説明

感光性樹脂組成物及び凹凸基板の製造方法

【課題】 感光性レジストに要求される一般特性を保持しながら、段差を有する基板に塗工した場合でも気泡を巻き込み難く、段差部での裾引きによる膜厚低下が生じ難い感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 (A)カルボキシル基及び/又はビニル基を含有する樹脂、(B)オキシムエステル骨格を有する光重合開始剤、(C)370〜420nmに極大吸収波長を有する光増感剤及び(D)光架橋性モノマーを含有する感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物及び凹凸基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクにおける磁気ヘッドスライダの先端部には、アルチック材(Al/TiC)と呼ばれるセラミック基材が使用されているが、近年のハードディスクの小型化と大容量化に伴い、磁気ヘッドスライダ先端部(読み取り部)にもさらなる小型化と微細加工が求められている。
【0003】
アルチック材の微細加工は一般的に感光性レジスト(例えば、特許文献1)を使用して形成される。すなわち、アルチック材の表面に感光性レジストをスピンコートなどの方法により塗工し、ホットプレートなどを使用して溶剤留去させ、紫外線照射およびアルカリなどを使用した現像工程を経て、アルチック材上にレジストパターンを形成する。
【0004】
レジストパターン形成後は、イオンミリングによるアルチック材表面の研削を行う。レジストパターンが残っている部分はアルチック材表面が研削されず、現像によりレジストが取り除かれた部分のアルチック材表面だけが研削され、アルチック材表面に凹凸が形成される。イオンミリング終了後は、感光性レジストは溶剤やアミンなどを使用して、アルチック材から剥離される。この一連のプロセスを数回繰り返し行って、アルチック材表面に数段になる微細な凹凸を形成する。
【特許文献1】特開2000−215419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような感光性レジストに要求される特性としては、(1)スピンコートにより段差のある基材をきれいに埋め込むことができる特性、(2)膜厚均一性、(3)水銀ランプのh線または紫色レーザー光(405nm)における感光特性、(4)弱アルカリによる現像性、(5)高解像性、(6)耐イオンミリング性、(7)剥離性などがある。
【0006】
従来、上記の用途には、感光性樹脂組成物であるドライフィルムレジスト(ネガ型)が用いられてきた。ドライフィルムレジストを使用することにより、解像性、耐イオンミリング性、剥離性、膜厚均一化を達成することができ、また1%程度の炭酸ナトリウムなどの弱アルカリによる現像が可能である。しかしながら、ドライフィルムを用いた場合、深い段差をラミネートで埋め込むことが困難で、段差間に空隙が生じてしまうことがある。また段差の幅が広くなった場合にはラミネート後にドライフィルムが破れてしまうなどの問題も発生し、処理可能な基板形状に制約があった。
【0007】
このような問題を解決することを目的として、液状ポジ型レジストが使用されている。ポジ型レジストは、解像性、耐イオンミリング性、剥離性に関しては優れているが、塗工した後に基板の深い段差の間に微小な気泡を巻き込んでしまうという問題がある。また段差の間隔が広い場合に、段差の角部では裾引きによって膜厚が薄くなる(不均一化が生じる)ため、イオンミリング処理時に、レジスト膜厚の薄い部分ではイオンミリング時の膜減りにより下地の基板が露出してしまい、研削すべきではない部分まで研削されてしまうという不具合が発生することがあった。さらには、現像時にはテトラメチルアンモニウムハイドレート等の強アルカリを使用するため、環境への弊害が考えられ、また作業者に危険が伴うなどの問題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、感光性レジストに要求される一般特性を保持しながら、段差を有する基板に塗工した場合でも気泡を巻き込み難く、段差部での裾引きによる膜厚低下が生じ難い感光性樹脂組成物、すなわち、段差埋め込み性及び膜厚均一性に優れた感光性樹脂組成物を提供することにある。本発明の目的はまた、この感光性樹脂組成物を用いた凹凸基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、従来のポジ型レジストでは、使用できる樹脂の構造や特性の制約から、上記課題を達成するのは困難であり、光照射を行った部分が高分子量化し光照射を行っていない部分をアルカリ現像により除去するネガ型レジストにおいて、その成分を特定の組み合わせとしたときにはじめて、上記課題が達成可能であることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含有する感光性樹脂組成物を提供する。
(A)カルボキシル基及び/又はビニル基を含有する樹脂
(B)オキシムエステル骨格を有する光重合開始剤
(C)370〜420nmに極大吸収波長を有する光増感剤
(D)光架橋性モノマー
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)〜(D)成分を組み合わせたことから、感光性レジストに要求される一般特性を保持しながら、段差を有する基板に塗工した場合でも気泡を巻き込み難く、膜厚均一性に優れる。特に、200μmの段差を有する基板に対して気泡を巻き込まず、また段差部での裾引きによる膜厚低下が発生しないようにすることができる。さらに、水銀ランプのh線または紫色レーザー光(405nm)における感光特性、弱アルカリによる現像性、高解像性、耐イオンミリング性、剥離性といった感光性レジストとしての特に好ましい性能を発揮する。
【0012】
このような効果が奏される理由は必ずしも明らかではないが、従来のポジ型レジストで課題となっていた段差埋め込み性が改良されたのは、本発明の感光性樹脂組成物中の(A)成分の存在が寄与しているものと推察する。(A)成分は、基材、特にアルチック基板に対して濡れ性が良好であるため、段差のある基材に対して気泡の巻き込みが発生し難くなり、これに関連して膜厚均一性が向上し、段差角部での裾引きも発生しにくくなるものと考えられる。
【0013】
(A)成分は、エポキシ樹脂にビニル基含有カルボン酸を反応させて成るビニル基含有樹脂、又は、当該ビニル基含有樹脂に酸無水物を反応させて成るカルボキシル基及びビニル基含有樹脂であることが好ましい。
【0014】
このような(A)成分を用いることで、基材、特にアルチック基板への濡れ性が向上し、気泡の巻き込みが顕著に低減されるとともに、膜厚均一性がさらに向上する。また、1%炭酸ナトリウム水溶液などの水系弱アルカリ液であっても、高い現像性を発揮するようになる。
【0015】
上記エポキシ樹脂は、芳香環を備えるエポキシ樹脂であることが好ましく、(D)成分としては、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシ ポリアルコキシ)フェニル)プロパンを含むことが好ましい。
【0016】
芳香環を備えるエポキシ樹脂を用いた(A)成分は、感光性樹脂組成物の基材への密着性を高めることができ、また、(D)成分として2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシ ポリアルコキシ)フェニル)プロパンが含まれた場合にこれと相溶して良好な硬化被膜を形成する。また、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシポリアルコキシ)フェニル]プロパンは感光性樹脂組成物の硬化物の剥離性を向上させる効果も発揮する。
【0017】
芳香環(ベンゼン環)骨格を有するエポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)にビニル基含有カルボン酸を反応させて成るビニル基含有樹脂、又は、このビニル基含有樹脂に酸無水物を反応させて成るカルボキシル基及びビニル基含有樹脂を、(A)成分として用いることで、耐イオンミリング性が得に良好となる。
【0018】
良好な段差埋め込み性及び膜厚均一性を維持しながら、感光性をさらに向上させる観点から、(B)成分の含有量は、感光性樹脂組成物の全重量に対して、0.1〜5質量%であることが好ましく、(C)成分は、N−メチルピロリドンに溶解した溶液の吸収スペクトルが405nmにおいて1000M−1cm−1以上のモル吸光係数を有する化合物であり、当該化合物の含有量は、前記感光性樹脂組成物の全重量に対して0.00.1〜3質量%であることが好ましい。
【0019】
上述した感光性樹脂組成物はレーザーダイレクトイメージングに対応可能とすることができる。すなわち、350〜360nmの波長領域に中心波長を有する青色レーザー光及び/又は400〜410nmの波長領域に中心波長を有する紫色レーザー光により硬化させることができる。
【0020】
本発明は、上記の感光性樹脂組成物を、基板上に積層し、露光及び現像の後、基板の露出部をドライエッチングするエッチング工程を備える、凹凸基板の製造方法を提供する。
【0021】
この製造方法によれば、感光性樹脂組成物を基板上に積層する場合において、段差を有する基板に塗工した場合でも気泡を巻き込み難く、段差部での裾引きによる膜厚低下が生じ難いことから、よりファインパターンの基板の製造が可能となる。
【0022】
上記製造方法においては、ドライエッチングとしてイオンミリングを採用することができ、基板としては、磁気ヘッドスライダ用のアルチック材(Al/TiC)を用いることができる。アルチック材については、従来のネガ型、ポジ型の感光性レジストではファインパターンの形成が困難であったが、本発明の感光性樹脂組成物を用いることでそのような問題が解決され、より精度の高い基板が形成可能になる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、感光性樹脂組成物の像形成に一般的に用いられる水銀灯のh線(405nm)に感度を有し、高い解像性を有する感光性樹脂組成物が提供される。さらにはパターニングにより得られた硬化物は十分な耐イオンミリング性を有し、磁気ヘッドスライダの加工において有効に機能する。本発明による感光性樹脂組成物は、磁気ヘッドスライダ加工への適用に限るものではなく、各種基板への密着性と高解像性という特性を生かし、ミクロンオーダーの微細な部品加工用途において、広く使用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0025】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基及び/又はビニル基を含有する樹脂、(B)オキシムエステル骨格を有する光重合開始剤、(C)370〜420nmに極大吸収波長を有する光増感剤及び(D)光架橋性モノマーを含有するものである。以下各成分について詳細に説明する。
【0026】
(A)成分は、カルボキシル基とビニル基の少なくも一方を含有する樹脂である。このような樹脂としては、(A1)エポキシ樹脂にビニル基含有カルボン酸を反応させて成るビニル基含有樹脂、(A2)エポキシ樹脂にビニル基含有カルボン酸を反応させ、さらに酸無水物を反応させて成るカルボキシル基及びビニル基含有樹脂が好適である。なお、(A1)成分、(A2)成分におけるビニル基含有カルボン酸としては、ビニル基含有モノカルボン酸が好ましい。
【0027】
(A1)成分は、好ましくは一般式(I)で示されるノボラック型エポキシ樹脂、一般式(II)で示されるビスフェノールΑ型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂及び一般式(III)で示されるサリチルアルデヒド型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種類のエポキシ樹脂(i)とビニル基含有モノカルボン酸(ii)とを反応させて得られる樹脂が用いられる。なお、式中、Xは水素原子又はグリシジル基(ただし、水素原子/グリシジル基(モル比)は、0/100〜30/70)、Rは水素原子又はメチル基、nは1以上の整数であり、nは好ましくは2〜100の整数である。
【化1】

【0028】
(A2)成分は、エポキシ樹脂にビニル基含有カルボン酸を反応させ、さらに酸無水物を反応させて成るカルボキシル基及びビニル基含有樹脂であるが、このような(A2)成分としては、(A1)成分に飽和若しくは不飽和基含有多塩基酸無水物(iii)を反応させることにより得られる反応生成物が好ましい。
【0029】
(A1)成分の生成時の反応においては、エポキシ樹脂(i)のエポキシ基にビニル基含有モノカルボン酸(ii)が付加反応していると考えられ、反応生成物はビニル基を備える樹脂となる。なお、エポキシ樹脂(i)が元来水酸基を有するものである場合、得られる反応生成物はビニル基と水酸基とを含み得る(エポキシ樹脂(i)の水酸基とビニル基含有モノカルボン酸(ii)のカルボキシル基が反応してエステル結合が生じている場合もある。)。
【0030】
一方、(A2)成分の生成時の反応においては、エポキシ樹脂(i)のエポキシ基とビニル基含有モノカルボン酸(ii)のカルボキシル基との付加反応により水酸基が形成され、次の反応で、生成した水酸基(エポキシ樹脂(i)中にある元来ある水酸基も含む)と飽和若しくは不飽和基含有多塩基酸無水物(iii)の酸無水物基とが半エステル反応しているものと推察される。
【0031】
一般式(I)で示されるノボラック型エポキシ樹脂は、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂があり、公知の方法でフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂にエピクロルヒドリンを反応させることで得られる。
また、一般式(II)で示される、Xがグリシジル基
【化2】



であるビスフェノールΑ型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、例えば、一般式(IV)で示されるビスフェノールΑ型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の水酸基とエピクロルヒドリンを反応させることにより得ることができる。なお、一般式(IV)において、Rは、水素原子又はメチル基、nは1以上の整数である。
【0032】
水酸基とエピクロルヒドリンとの反応を促進するためには、反応温度50〜120℃でアルカリ金属水酸化物存在下、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の極性有機溶剤中で反応を行うのが好ましい。反応温度が50℃未満では反応が遅くなり、反応温度が120℃では副反応が多く生じてしまう。
【化3】



【0033】
一般式(III)で示されるサリチルアルデヒド型エポキシ樹脂としては、具体的にはFΑE−2500、EPPN−501H、EPPN−502H(以上、日本化薬(株)製、商品名)等が挙げられる。
【0034】
上述したビニル基含有モノカルボン酸(ii)としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸の二量体、メタクリル酸、β−フルフリルアクリル酸、β−スチリルアクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、α−シアノ桂皮酸等が挙げられ、また、水酸基含有アクリレートと飽和あるいは不飽和二塩基酸無水物との反応生成物である半エステル化合物、ビニル基含有モノグリシジルエーテル若しくはビニル基含有モノグリシジルエステルと飽和あるいは不飽和二塩基酸無水物との反応生成物である半エステル化合物が挙げられる。これら半エステル化合物は、水酸基含有アクリレート、ビニル基含有モノグリシジルエーテル若しくはビニル基含有モノグリシジルエステルと飽和あるいは不飽和二塩基酸無水物とを等モル比で反応させることで得られる。これらビニル基含有モノカルボン酸(ii)は、単独、又は二種類以上併用して用いることができる。
【0035】
ビニル基含有モノカルボン酸(ii)の一例である上記半エステル化合物の合成に用いられる水酸基含有アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ペンタエリスルトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールペンタメタクリレートが挙げられ、ビニル基含有モノグリシジルエーテル又はビニル基含有モノグリシジルエステルとしては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0036】
上記半エステル化合物の合成に用いられる飽和あるいは不飽和二塩基酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
【0037】
本発明におけるエポキシ樹脂(i)とビニル基含有モノカルボン酸(ii)との反応において、エポキシ樹脂(i)のエポキシ基1当量に対して、ビニル基含有モノカルボン酸(ii)が0.8〜1.05当量となる比率で反応させることが好ましく、更に好ましくは0.9〜1.0当量である。
【0038】
エポキシ樹脂(i)とビニル基含有モノカルボン酸(ii)は有機溶剤に溶かして反応させられ、有機溶剤としては、例えば、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル類、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。
【0039】
さらに反応を促進させるために触媒を用いるのが好ましい。用いられる触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルメチルアミン、メチルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。触媒の使用量は、エポキシ樹脂(i)とビニル基含有モノカルボン酸(ii)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部である。
【0040】
この場合において、反応中の重合を防止する目的で、重合防止剤を使用するのが好ましい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール等が挙げられ、その使用量は、エポキシ樹脂(i)とビニル基含有モノカルボン酸(ii)の合計100質量部に対して、好ましくは0.0.1〜1質量部である。反応温度は、好ましくは60〜150℃、更に好ましくは80〜120℃である。
【0041】
必要に応じてビニル基含有モノカルボン酸(ii)と、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の多塩基酸無水物とを併用することができる。
【0042】
(A2)成分を得るときに用いられる、飽和若しくは不飽和基含有多塩基酸無水物(iii)としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
【0043】
(A1)成分と飽和若しくは不飽和基含有多塩基酸無水物(iii)との反応において、(A1)成分中の水酸基1当量に対して、飽和若しくは不飽和基含有多塩基酸無水物(iii)を0.1〜1.0当量反応させることで、(A)成分の酸価を調整できる。
【0044】
(A)成分の酸価は30〜150mgKOH/gであることが好ましく、50〜120mgKOH/gであることが更に好ましい。酸価が30mgKOH/g未満では光硬化性樹脂組成物の希アルカリ溶液への溶解性が低下し、150mgKOH/gを超えると硬化膜の電気特性が低下する傾向がある。(A1)成分と飽和若しくは不飽和基含有多塩基酸無水物(iii)との反応温度は、60〜120℃が好ましい。
【0045】
また必要に応じて、エポキシ樹脂(i)として、例えば、水添ビスフェノールΑ型エポキシ樹脂を、さらに(A)成分として、スチレン−無水マレイン酸共重合体のヒドロキシエチルアクリレート変性物あるいはスチレン−無水マレイン酸共重合体のヒドロキシエチルアクリレート変性物等のスチレン−マレイン酸系樹脂を一部併用することもできる。
【0046】
(A)成分の数平均分子量はポリスチレン換算で500〜10000の範囲で使用可能であり、好ましくは1000〜7000、さらに好ましくは1500〜5000である。数平均分子量が500より下であると、耐アルカリ現像液性に乏しくなる傾向があり、現像時に光硬化部が剥がれてしまうなどの問題が発生する場合がある。また、数平均分子量が10000より上であると、現像性が乏しくなり、解像性の低下や現像残りを発生しやすくなる。
【0047】
(A)成分の固形分酸価は、30〜170 mgKOH/gの範囲で使用可能であり、好ましくは50〜130 mgKOH/g、さらに好ましくは60〜120mgKOH/gである。固形分酸価が30より下であると、現像性が乏しくなる傾向があり、解像性の低下や現像残りを発生しやすくなる。一方固形分酸価が170より上であると、耐アルカリ現像液性に乏しくなり、現像時に光硬化部が剥がれてしまうなどの問題が発生する。なお、本発明においては、(A)成分について、ワニス状態(溶剤を含んだ状態)を酸価、溶剤を除去した状態の樹脂だけの状態での酸価を固形分酸価という。
【0048】
(A)成分として、市販のものとしては、CCR-1159H、CCR-1194H、CCR-1206H(ともに日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0049】
本発明の効果をより向上させる目的で、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂等を、感光性樹脂組成物に併用して使用することができる。
【0050】
本発明における(B)成分は、オキシムエステル骨格を含む光重合開始剤であり、例えば、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(o−ベンゾイルオキシム)や、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン−1−(o−アセチルオキシム)、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−[O−(エトキシカルボニル)オキシム]等が挙げられる。市販品としては、OXE01、OXE02(ともにチバスペシャリティケミカルズ(株)製)、PDO(LAMBSON社製)等が入手可能である。
【0051】
なお、本発明において「オキシムエステル骨格」とは、下記(a)で示される骨格(基)をいう(式中、*は、この部分で結合が生じていることを意味する。)
【化4】

【0052】
本発明の効果を向上させる目的で、上記オキシムエステル基を含まない光重合開始剤を併用することができる。
【0053】
オキシムエステル基を含まない光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンタラキノン、2−メチル1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体などが挙げられる。
【0054】
(B)成分の含有量は、(A)成分及び(D)成分の総量100質量部に対して、0.1〜10質量部とすることが好ましく、0.3〜5質量部とすることがより好ましく、0.5〜3質量部とすることが特に好ましい。この含有量が0.1質量部未満では光に対する感度が乏しく、像形成が不可能となる傾向があり、10質量部を超えると感度が過多となり、寸法安定性が乏しくなる傾向がある。
【0055】
本発明における(C)成分は、370〜420nmに極大吸収波長を有する光増感剤である。(C)成分として用いられる光増感剤としては、例えば、ピラリゾン類、アントラセン類、クマリン類、キサントン類、チオキサントン類などが挙げられる。感度及び細線密着を向上できる観点からは、ピラリゾン類が特に好ましい。
【0056】
このような光増感剤を用いることにより、水銀ランプのh線(405nm)や直接描画露光法の露光光に対して、十分に高い感度を有することが可能となる。増感色素の極大吸収波長が370nm未満であると、水銀ランプのh線(405nm)や直接描画露光光に対する感度が低下する傾向があり、420nm超えると、イエロー光環境下でも安定性が低下する傾向がある。極大吸収波長が370〜420nmである増感色素としては、例えば、ピラリゾン類、アントラセン類、クマリン類、キサントン類などが好ましい。
【0057】
上記光増感剤の含有量は、(A)成分及び(D)成分の総量100質量部に対して、0.0.1〜1質量部とすることが好ましく、0.02〜0.5質量部とすることがより好ましく、0.03〜0.3質量部とすることが特に好ましい。この含有量が0.0.1質量部未満では光に対する感度が乏しく、像形成が不可能となる傾向があり、1質量部を超えると感度が過多となり、寸法安定性が乏しくなる傾向がある。
【0058】
なお、(C)成分は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
本発明における(D)成分は、光架橋性モノマーである。(D)成分としては、光によりラジカル反応などの重合反応が進行するモノマーであればよく、ビニル基、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。このような重合性の官能基は分子中に少なくとも1つ存在すればよいが、当該官能基の数は2以上であることが好ましく、2〜8であることがより好ましく、2〜6であることがさらに好ましい。
【0060】
硬化物の剥離性が優れることから(D)成分としては、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシ ポリアルコキシ)フェニル)プロパンを含有することが好ましい。
【0061】
具体的には、エチレンオキサイド鎖及び/又はプロピレンオキサイド鎖を有する(メタ)アクリレートが剥離性を発現するために有効である。1分子内のアクリロイル基の個数は特に制限は無いが、特に好ましいのは2〜3つのアクリロイル基を有する光架橋性モノマーである。
【0062】
分子内に2〜3つのアクリロイル基を有する光架橋性モノマーとしては、例えば、一般式(V)で表されるビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート(市販品として、FA-321M,FA-323Mとして入手可能、日立化成工業(株)製),トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート(TMPEOTA,第一工業製薬(株)製),モノエタノールアミン変性トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート(ヒタロイド7836,日立化成工業(株)製)などが挙げられる。この中でも、一般式(V)で表されるビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【化5】

【0063】
一般式(V)中、R及びRは、各々独立に水素原子又はメチル基を示し、メチル基であることが好ましい。前記一般式(V)中、X及びXは各々独立に炭素数2〜6のアルキレン基を示す。上記炭素数2〜6のアルキレン基としては、例えば、メチル基、エチル基、N−プロピル基、イソプロピル基、N−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、これらの構造異性体等が挙げられ、解像性、剥離性の点からエチレン基が好ましい。
【0064】
上記イソプロピレン基は、−CH(CH3)CH−で表される基であり、前記一般式(V)中の−(X−O)−及び−(X−O)−において結合方向は、メチレン基が酸素と結合している場合とメチレン基が酸素に結合していない場合の2種があり、1種の結合方向でもよいし、2種の結合方向が混在してもよい。また、−(X−O)−及び−(X−O)−の繰り返し単位がそれぞれ2以上の時、2以上のX及び2以上のXは、各々同一でも相違していてもよく、X及びXが2種以上のアルキレン基で構成される場合、2種以上の−(X−O)−及び−(X−O)−は、ランダムに存在してもよいし、ブロック的に存在してもよい。
【0065】
一般式(V)中、p+qは4〜40となるように選ばれる正の整数であり、6〜34であることが好ましく、8〜30であることがより好ましく、8〜28であることが特に好ましく、8〜20であることが非常に好ましく、8〜16であることが非常に特に好ましく、8〜12であることが極めて好ましい。このp+qが4未満では剥離性が低下する傾向があり、40を超えると親水性が増加し、現像時にレジスト像がはがれやすくなる傾向がある。
【0066】
上記一般式(V)で表される化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等のビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0067】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパン等が挙げられ、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−500(新中村化学工業(株)製、製品名)、として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300(新中村化学工業(株)製、製品名)として商業的に入手可能である。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0068】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0069】
上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0070】
本発明の効果をより向上させる目的で、分子内に4以上の不飽和基を有する架橋性モノマーを併用することができる。
【0071】
分子内に4以上の不飽和基を有する架橋性モノマーとしては、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらを単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
また、分子内に一つの不飽和基を有する架橋性モノマも用いることができる。分子内に一つの不飽和基を有する架橋性モノマとしては、例えば、炭素数1〜20のアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレートγ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β’−(メタ)アクリロルオキシアルキル−o−フタレート等が挙げられる。
【0073】
(D)成分の含有量は、(A)成分及び(D)成分の総量100質量部に対して、3〜80質量部とすることが好ましく、5〜50質量部とすることがより好ましく、10〜30質量部とすることが特に好ましい。この含有量が3質量部未満では感度が乏しく、像形成が不可能となる傾向があり、80質量部を超えると感度過多となり寸法安定性が乏しくなるとともに、溶剤除去後の指触乾燥性が悪くなる傾向がある。
【0074】
本発明の感光性樹脂組成物は、上述した(A)〜(D)成分を必須成分とするが、これらの必須成分の他、溶剤(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン)等の添加成分を添加してもよい。本発明の感光性樹脂組成物が溶剤を含有する場合、その溶液の粘度(EH型粘度計による25℃の粘度)が0.1〜10Pa・s、好ましくは0.5〜5Pa・s、より好ましくは1〜2Pa・sとなるような量の溶剤を含有することが好ましい。
【0075】
本発明の感光性樹脂組成物は、405nmの波長を有する水銀灯のh線に感度を有し、高い解像性を有する感光性樹脂組成物を与える。さらに、パターニングにより得られた硬化物は十分な耐イオンミリング性を有するため、磁気ヘッドスライダの加工において、特にその効果を発揮する。
【0076】
磁気ヘッドスライダの材料であるアルチック材の微細加工は、一般的に感光性レジストを使用して形成される。すなわち、アルチック材の表面に本発明の感光性樹脂組成物をスピンコートなどの方法により塗工し、溶剤留去のためにホットプレートなどを使用して乾燥し、紫外線を照射、続いて弱アルカリ溶液を使用した現像工程を経て、アルチック材上にレジストパターンを形成することができる。
【0077】
その後、イオンミリングによるアルチック材表面の研削を行う。レジストパターンが残っている部分はアルチック材表面が研削されず、現像によりレジストが取り除かれた部分のアルチック材表面だけが研削され、アルチック材表面に凹凸を形成する。イオンミリング終了後は、感光性レジストは溶剤やアミンなどを使用して、アルチック材から剥離される。この一連のプロセスを数回繰り返し行って、アルチック材表面に数段になる微細な凹凸を形成する。
【0078】
本感光性樹脂組成物の光硬化物を剥離する際に用いる剥離液としては、N-メチルピロリドン等の有機溶剤が好ましく、モノエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の水溶性アミンを使用した際に、レジストは高い剥離性を有するため特に好ましい。アミン系剥離液としては、上記アミンを単独で又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【実施例】
【0079】
(実施例1〜7及び比較例1、2)
【0080】
表1に示すように、(A)〜(D)成分をそれぞれ所定量混合し、溶解するまで所定のディスパーを使用して混合攪拌した。さらにジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを添加し、EH型粘度計にて測定した粘度が、1.0〜2.0Pa・sとなるように希釈し、感光性樹脂組成物とした。
【0081】
【表1】

【0082】
(実施例1)
(A)成分である、酸変性ビスフェノールF型エポキシアクリレート(日本化薬(株)製、商品名:ZFR−1158若しくはZFR−1553H)80質量部と、光架橋剤、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジアクリレート(日立化成工業(株)製、商品名:FA−321M)30質量部とを混合し、さらに光重合開始剤、OXE01(1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(O−ベンゾイルオキシム)、商品名、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)2質量部と、クマリン系光増感剤、NF−MC(日本化学工業所(株)製、商品名、極大吸収波長:371.7nm)0.2質量部とを添加して感光性樹脂組成物を作製した。なお、「酸変性ビスフェノールF型エポキシアクリレート」は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂とエポキシアクリレートと反応させた反応物に、酸無水物を反応させて得られた樹脂である。
【0083】
(実施例2)
クマリン系光増感剤の代わりに、ピラゾリン系光増感剤、NF−EO(商品名、日本化学工業所(株)製、極大吸収波長:387.2nm)0.2質量部が添加された以外は、実施例1と同様の条件で感光性樹脂組成物を作製した。
【0084】
(実施例3)
光重合開始剤として、OXE01の代わりに、PDO(1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−[O−(エトキシカルボニル)オキシム]、商品名、LAMBSON社製、)2質量部が添加された以外は、実施例2と同様の条件で感光性樹脂組成物を作製した。
【0085】
(実施例4)
(A)成分として、酸変性ビスフェノールF型エポキシアクリレートの代わりに、酸変性クレゾールノボラック型エポキシアクリレート(日本化薬(株)製、商品名:CCR−1159H)80質量部が添加された以外は、実施例1と同様の条件で作製された感光性樹脂組成物である。なお、「酸変性クレゾールノボラック型エポキシアクリレート」は、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂とエポキシアクリレートと反応させた反応物に、酸無水物を反応させて得られた樹脂である。
【0086】
(実施例5)
光増感剤として、NF−EOを0.2質量部から0.4質量部に代えて添加させた以外は、実施例4と同様の条件で感光性樹脂組成物を作製した。
【0087】
(実施例6)
水素供与体としてN‐フェニルグリシン0.05質量部がさらに添加された以外は、実施例4と同様の条件で感光性樹脂組成物を作製した。
【0088】
(実施例7)
重合禁止剤としてt‐ブチルカテコール0.05質量部がさらに添加された以外は、実施例4と同様の条件で感光性樹脂組成物を作製した。
【0089】
(比較例1)
光重合開始剤として、OXE01の代わりにIC907(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1、チバスペシャリティケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア907)2質量部、クマリン系光増感剤の代わりに、チオキサントン系光増感剤、DETX(日本化薬(株)製、商品名:カヤキュアDETX−S、極大吸収波長383nm)0.2質量部が添加された以外は、実施例1と同様の条件で感光性樹脂組成物を作製した。
【0090】
(比較例2)
光重合開始剤として、イルガキュア907の代わりにIC369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、チバスペシャリティケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア369)2質量部が添加された以外は、比較例1と同様の条件で感光性樹脂組成物を作製した。
【0091】
感光性樹脂組成物を基板上へ形成させる積層工程において、塗工は以下のような条件にて行った。
(塗工条件)
塗工装置:スピンコータ(ミカサ(株)製)
基板:シリコンウエハー
回転数及び回転時間:1000rpmで10秒間回転後、2000rpmで30秒間回転
膜厚:約15μm
【0092】
<試験基板の作製>
実施例1〜7及び比較例1、2の感光性樹脂組成物を上記条件に基づいて塗工した後、ボックス型オーブンを使用して、塗膜から溶剤を除去するために乾燥を行った。オーブンの設定温度を80℃にし、感光性樹脂組成物を塗布した基板をオーブンに入れ、40分放置した後に取り出した。これにより、シリコンウエハー上に感光性樹脂型組成物からなる感光性樹脂型組成物が積層された評価基板を得た。
【0093】
<試験板の作製>
評価基板が室温に戻った後、感光性樹脂組成物層上に、以下の手法により露光を行った。露光装置としては、散乱光型露光機(オーク製作所製、HMW−551D、光源:超高圧水銀灯)を使用し、41段ステップタブレット(日立化成工業(株)製)と細線密着測定用マスクを感光性樹脂塗膜上に直接置き、さらにi線カットフィルタ(シグマ光機(株)製、商品名:SCF−100160R−39L)を置いた条件で、真空引き条件下において100mJ/cm(オーク製作所製、UV−351にて測定した)のエネルギーを照射した。さらに、以下の処理に従い、アルカリ現像を行った。露光した基板を5分以上大気条件下で放置した後、30℃に設定した1%炭酸ナトリウム水溶液を0.18MPaの圧力で基板に噴射し、その後0.10MPaの圧力で純水を基板に噴射し、水洗を行った。
【0094】
得られた試験板について、感度、細線密着性、解像性及、剥離性及び耐イオンミリング性の評価を行い、その結果を表2に示した。
【0095】
(光感度)
試験板上に形成された光硬化膜のステップタブレットの段数を測定することにより、感光性樹脂組成物の光感度を評価した。光感度は、ステップタブレットの段数で示され、このステップタブレットの段数が高いほど光感度が高いことを意味する。
【0096】
(線密着性)
試験板上に残存している最も細いライン幅(μm)を読み取った。
【0097】
(解像性)
細線密着性評価用ネガマスクの設計値20μmの部分におけるアルカリ現像後に得られたライン幅を光学顕微鏡を用いて計測した。
【0098】
(剥離性)
アルカリ現像後、試験板を、70℃に設定したN−メチルピロリドン中に投入し、60秒後に取り出した後の剥離残りの有無を確認した。実施例1〜7に示した硬化物は、いずれも剥離残りは見られず、良好な剥離性を有していることがわかった。
【0099】
(耐イオンミリング性)
シリコンウエハー上に実施例1〜7及び比較例1〜2の感光性樹脂組成物が積層された評価基板(感光性樹脂組成物は光硬化させる)に、日立イオンミリング装置(商品名E−3500、(株)日立ハイテクノロジー社製)を用いて処理を行った(使用ガス:アルゴン、ミリングレート:100μm /時間)。光硬化膜にクラック又は剥離等が生じなかったものは良好とし、光硬化膜にクラック又は剥離等が生じたものを不良とした。
【0100】
【表2】

【0101】
200μmの段差を有する基板に対して気泡の巻き込みがあるかどうか、また段差部での裾引きによる膜厚低下が発生するかどうか評価したところ、実施例1〜7のいずれにおいても、気泡の巻き込み及び段差部での裾引きによる膜厚低下は観察されなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含有する感光性樹脂組成物。
(A)カルボキシル基及び/又はビニル基を含有する樹脂
(B)オキシムエステル骨格を有する光重合開始剤
(C)370〜420nmに極大吸収波長を有する光増感剤
(D)光架橋性モノマー
【請求項2】
(A)成分は、エポキシ樹脂にビニル基含有カルボン酸を反応させて成るビニル基含有樹脂、又は、当該ビニル基含有樹脂に酸無水物を反応させて成るカルボキシル基及びビニル基含有樹脂である、請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂は、芳香環を備えるエポキシ樹脂である、請求項2記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
(D)成分は、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリアルコキシ)フェニル)プロパンを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
(B)成分の含有量は、前記感光性樹脂組成物の全重量に対して、0.1〜5質量%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
(C)成分は、N−メチルピロリドンに溶解した溶液の吸収スペクトルが405nmにおいて1000M−1cm−1以上のモル吸光係数を有する化合物であり、当該化合物の含有量は、前記感光性樹脂組成物の全重量に対して0.00.1〜3質量%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
350〜360nmの波長領域に中心波長を有する青色レーザー光及び/又は400〜410nmの波長領域に中心波長を有する紫色レーザー光により硬化する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を、基板上に積層し、露光及び現像の後、基板の露出部をドライエッチングするエッチング工程を備える、凹凸基板の製造方法。
【請求項9】
前記ドライエッチングは、イオンミリングである、請求項8記載凹凸基板の製造方法。
【請求項10】
前記基板は、磁気ヘッドスライダ用のアルチック材(Al/TiC)である請求項8又は9に記載の凹凸基板の製造方法。





【公開番号】特開2010−54847(P2010−54847A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220229(P2008−220229)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】