説明

成形樹脂の製造方法及び光情報記録媒体の製造方法

【課題】同一の成形用金型を用いて多数の成形樹脂を製造することが可能な生産性に優れた成形樹脂の製造方法、及び同一のスタンパを用いて、多数の光情報記録媒体を製造することができる生産性に優れた光情報記録媒体の製造方法を提供する。
【解決手段】光硬化性転写シートの光硬化性転写層を、記録ピット及び/又はグルーブとしての微細凹凸に沿って反射層が設けられた基板の該反射層上に載置し、これらを押圧する工程、光硬化性転写層の他方の表面に、記録ピット及び/又はグルーブとしての微細凹凸表面に光触媒物質の薄層が形成されたスタンパを載置し、これらを押圧する工程及び該スタンパを有する光硬化性転写層を紫外線照射により硬化させ、次いでスタンパを除去することにより、光硬化性転写層の表面に微細凹凸を設ける工程を含む光情報記録媒体の製造方法、これに使用されるスタンパ表面に光触媒物質の薄層が形成された成形金型を用いる成型方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体、半導体、半導体高密度パッケージ等の製造、特にDVD(Digital Versatile Disc)等の大容量の文字、音声、動画像等の情報をディジタル信号として記録された及び/又は記録可能な光情報記録媒体の製造方法、これに用いられるスタンパ及び積層体、及び光情報記録媒体等の成形樹脂の製造方法、これに用いられる成形用金型、スタンパ及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ディジタル信号として表面にピット形成された記録済み光情報記録媒体(光ディスク)として、オーディオ用CD、CD−ROMが以前から広く使用されているが、最近では、動画像と記録も可能な両面にピット記録がなされたDVDが、CDの次世代記録媒体として使用され、その使用量も拡大している。またピット及びグルーブが形成されたユーザが記録可能なCD−R、CD−RW、DVD−R、DVD−RW等も広く使用されている。
【0003】
さらに高密度記録が可能な光ディスクとして、2002年2月10日に次世代光ディスクの統一規格「ブルーレイ・ディスク(Blu-ray Disc)」が提案されている。主な仕様は、記録容量:23.3/25/27GB、レーザ波長:405nm(青紫色レーザ)、レンズ開口数(N/A):0.85、ディスク直径:120mm、ディスク厚:1.2mm、トラックピッチ:0.32μm、最短ピット長:0.16/0.149/0.138μm等である。
【0004】
上記仕様を有する高密度の光情報記録媒体も既に実用化されているが、このようにブルーレイ・ディスクでは、上記のように溝の幅が狭く、且つピットも小さくなっている。このため読み取りレーザのスポットを小さく絞る必要があるが、スポットを小さくするとディスクの傾きによる影響を大きく受けるようになり、再生しようとする媒体がわずかに曲がっていても再生できなくなる。
【0005】
しかしながら、このようなブルーレイ・ディスク、高密度のDVD等の光情報記録媒体は、薄い基板が用いられているため得られる媒体が変形しやすく、その製造には媒体の反りや、厚みムラが問題となる。特に、従来のCD等の作製に使用されていた紫外線硬化性樹脂を用いてブルーレイ・ディスクを製造した場合、媒体の変形は顕著である。
【0006】
このような光情報記録媒体の製造に有利な方法が、特許文献1(特開2003−115130号公報)に開示されている。ここには、光重合性官能基を有する反応性ポリマーを含み且つ加圧により変形可能な光硬化性組成物からなる光硬化性転写シートを用いた製造方法が記載されている。さらに、特許文献2(特開2003−123332号公報)にも、上記と同様に、硬化前の貯蔵弾性率が103〜106Paの硬化性基を有するアクリル酸エステルの共重合体のスタンパ受容層を備えた光ディスク製造用シート(光硬化性転写シート)が開示されており、その光ディスク製造では、スタンパで受容層上に微細凹凸を形成し、金属蒸着して反射層を形成した後、反射層に保護層を設ける際、感圧接着剤が使用されている。
【0007】
従来のCD等の作製に使用されていた紫外線硬化性樹脂の代わりに、上記のように、固体状の上記光硬化性転写シートを用いて、スタンパに押圧することにより微細凹凸面を転写して、反りや、厚みムラ少ない光情報記録媒体を得ることができる。
【0008】
【特許文献1】特開2003−115130号公報
【特許文献2】特開2003−123332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者等の検討によると、光硬化性転写シートを用いた場合、媒体の反りや、厚みムラが改善されるが、これを用いて多層型、例えば2層型光ディスクを作製した場合、以下の様な問題があることが判明した。
【0010】
即ち、2層型光ディスクの作製においては、基板上に設けられた数nmオーダーのピットの微細凹凸ピット上にさらに形成された銀等の反射層の上に、2番目の記録層(同様のピットの微細凹凸)を形成するための光硬化性転写シートを押圧し、次いで光硬化性転写シート(光硬化性転写層)の表面にピットの微細凹凸を有するスタンパを押圧し、紫外線(UV)硬化し、その後スタンパを剥離して、光硬化性転写層の表面にピットの微細凹凸を形成する。このようなスタンパの押圧、硬化及び剥離は、実際の光ディスクの製造においては、1時間に数千回繰り返し行われる。初期のスタンパの凹凸表面は汚れ、損傷の無い状態であるが、硬化前の光硬化性転写シートにスタンパ押圧し、硬化後剥離するという操作を繰り返し行われると、スタンパの凹凸表面が徐々に汚れるようになり、これにより硬化後の光硬化性転写層からのスタンパの剥離が安定して行えなくなる。即ち、硬化後の光硬化性転写層とスタンパとの接着性が変動するため、剥離する力も変動する(一般に増大する)ようになる。この状態から、さら上記スタンパの押圧、剥離を繰り返すと、スタンパが剥離困難となったり、硬化後の光硬化性転写層の一部がスタンパに貼り付いた状態となり、光ディスクの製造ラインが停止することになる。
【0011】
スタンパは、極めて高価であり、硬化後の光硬化性転写層の一部が貼り付いたスタンパは、洗浄により除去して再使用されるが、この除去に多くの工数と多大な時間が必要になる場合が多く、生産性を著しく低下させるとことになる。
【0012】
またこのような問題は、上記の製造方法を包含する、記録媒体、半導体、半導体高密度パッケージ等の作製に使用されるナノインプリントプロセス法、又はマイクロインプリントプロセス法等を含む一般のスタンパ等の金型を用いる成型樹脂の製造においても同様な問題がある。
【0013】
従って、本発明は、同一の成形用金型を用いて極めて多数の成形樹脂を製造することが可能な生産性に優れた成形樹脂の製造方法を提供することをその目的とする。
【0014】
また、本発明は、半導体、半導体高密度パッケージ等の作製に有用なナノインプリントプロセス法に有用な成形樹脂の製造方法で、同一の微細凹凸パターンを有するスタンパを用いて極めて多数の成形樹脂を製造することが可能な生産性に優れた成形樹脂の製造方法を提供することをその目的とする。
【0015】
さらに、本発明は、記録ピット等の微細凹凸パターンを有する同一のスタンパを用いて、極めて多数の光情報記録媒体を製造することができる生産性に優れた光情報記録媒体の製造方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的は、
表面に光触媒物質の薄層が形成された成形用金型内に、硬化性樹脂を、必要により加熱して、該樹脂が該成形用金型表面上の光触媒物質の薄層に密着するように導入し、成形用金型及び硬化性樹脂からなる構造体を形成する工程;及び
構造体の硬化性樹脂を硬化させ、次いで成形用金型を除去することにより、成形された樹脂を得る工程;
を含む成形樹脂の製造方法によって達成することができる。
【0017】
上記硬化性樹脂は一般に熱又は紫外線硬化性樹脂であり、一般に紫外線硬化性樹脂が使用される。熱硬化性樹脂の場合は、熱硬化後あるいは硬化前若しくは硬化中に光照射して、光触媒物質に光触媒反応を起こさせる必要がある。また樹脂は液状でも、固形状でも、或いはシート状でも良い。
【0018】
上記本発明の成形樹脂の製造方法の好適態様は以下の通りである。
【0019】
1)光触媒物質の薄層が、ターゲットとして金属酸化物を物理的気相成膜することにより、或いはターゲットとして金属酸化物及び/又は金属を酸素雰囲気下に化学的気相成膜することにより得られる。
【0020】
2)物理的気相成膜の方法が、スパッタリング法、マグネトロン・スパッタリング法、対向ターゲット式スパッタリング及びレーザーアブレーション法から選択される方法である。
【0021】
3)化学的気相成膜の方法が、スパッタリング法、プラズマ・スパッタリング法、対向ターゲット式スパッタリング法、マグネトロン・スパッタリング法及びイオンプレーティング法から選択される方法である。
【0022】
4)ターゲットの金属が、白金、ニッケル、クロム、コバルト、錫、ニオブ、タンタル、銅、セリウム、鉛、鉄、バナジウム、金、銀、ジルコニウム、ナトリウム、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、マンガン、亜鉛、ガリウム、セレン、モリブデン、インジウム、ストロンチウム、テルル、バリウム、タングステン、ビスマス、及びイットリウムから選ばれる少なくとも1種である。特にチタンが好ましい。
【0023】
5)ターゲットの金属酸化物が、白金、ニッケル、クロム、コバルト、錫、ニオブ、タンタル、銅、セリウム、鉛、鉄、バナジウム、金、銀、ジルコニウム、ナトリウム、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、マンガン、亜鉛、ガリウム、セレン、モリブデン、インジウム、ストロンチウム、テルル、バリウム、タングステン、ビスマス、及びイットリウムから選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物である。特に酸化チタン(一般に二酸化チタン)が好ましい。
【0024】
本発明は、上記製造方法に有利に使用することができる、
表面に光触媒物質の薄層が形成された成形用金型;及び
表面に光触媒物質の薄層が形成された成形用金型と、該金型表面に密着状態で設けられた紫外線硬化性樹脂からなる構造体;
も新規である。
【0025】
また本発明は、
表面に微細な凹凸パターン及びその表面に光触媒物質の薄層が形成されたスタンパを、加圧により変形可能な硬化性樹脂層に、該スタンパの凹凸パターン表面に形成された光触媒物質の薄層が該樹脂層の表面に接触するように載置し、これらを押圧して該樹脂層の表面が該パターン表面に沿って密着した積層体を形成する工程;及び
該スタンパを有する積層体の樹脂層を硬化させ、次いでスタンパを除去することにより、表面に凹凸パターンを有する成形樹脂を得る工程;
を含む成形樹脂の製造方法にもある。
【0026】
上記硬化性樹脂層の硬化性樹脂は、光硬化性樹脂であることが好ましい。
【0027】
さらに本発明は、
下記の工程(1)〜(4):
(1)加圧により変形可能な光硬化性組成物からなる光硬化性転写層及び光硬化性転写層の一方又は両方の表面に設けられた剥離シートを含む光硬化性転写シートから、光硬化性転写シートが両面に剥離シートを有する場合に、その一方の剥離シートを除去する工程;
(2)該光硬化性転写シートの光硬化性転写層を、表面に記録ピット及び/又はグルーブとしての微細凹凸表面を有し、さらに該微細凹凸表面の凹凸に沿って反射層が設けられた基板の該反射層上に、該光硬化性転写シートの光硬化性転写層の表面が該反射層の微細凹凸表面に接触するように載置し、これらを押圧して該光硬化性転写シートの表面が該反射層の微細凹凸表面の凹凸に沿って密着された積層体を形成する工程;
(3)該積層体のもう一方の剥離シートを除去し、該除去された光硬化性転写層の表面に、記録ピット及び/又はグルーブとしての微細凹凸表面を有し、且つその微細凹凸表面に光触媒物質の薄層が形成されたスタンパを、光硬化性転写層の表面が微細凹凸表面の光触媒物質の薄層に接触するように載置し、これらを押圧して該転写層の表面が該微細凹凸表面上の薄膜の凹凸に沿って密着した積層体を形成する工程;及び
(4)該スタンパを有する積層体の光硬化性転写層を紫外線照射により硬化させ、次いでスタンパを除去することにより、光硬化性転写層の表面に微細凹凸を設ける工程;
を含むことを特徴とする光情報記録媒体の製造方法;
にもある。
【0028】
前記成形樹脂の製造方法における好適態様 1)〜 5)を、この光情報記録媒体の製造方法においても適用することができる。
【0029】
上記本発明の光情報記録媒体の製造方法のさらなる好適態様を以下に列記する。
【0030】
6)反射層が、銀又は銀合金の層である。
【0031】
7)前記工程(1)の前に、
(A)光硬化性転写シートを円盤状に打ち抜く工程
を行う。この場合、光硬化性転写シートは、一般に長尺状シートである。
【0032】
8)前記工程(4)を行った後、さらに
(5)該積層体のもう一方の剥離シートが除去された光硬化性転写層の表面に、記録ピット及び/又はグルーブとしての微細凹凸を有し且つその微細凹凸表面に光触媒物質の薄層が形成されたスタンパを該微細凹凸表面が転写層の表面に接触するように載置し、これらを押圧して該光硬化性転写層の表面が該微細凹凸表面の凹凸に沿って密着した積層体を形成する工程;及び
(6)該スタンパを有する積層体の光硬化性転写層を紫外線照射により硬化させ、次いでスタンパを除去することにより、光硬化性転写層の表面に微細凹凸を設ける工程;
を含む。
【0033】
9)スタンパが、ニッケル製である。
【0034】
10)前記(4)及び/又は(6)の紫外線照射を少なくとも300mJ/cm2の照射エネルギーで行う。短時間での硬化が可能である。
【0035】
11)前記(4)及び/又は(6)で得られる硬化した光硬化性転写層のガラス転移温度が65℃以上である。
【0036】
12)前記(5)〜(6)の工程を行った後、さらに
(7)光硬化性転写層の微細凹凸表面に反射層を設ける工程;
を含む。
【0037】
13)光硬化性組成物が、ポリマーと光重合性官能基を有する反応性希釈剤とを含む。組成物のTg、弾性率等の物性を適宜変更することが容易で、ピット等の転写性等の向上を図れる。
【0038】
14)ポリマーのガラス転移温度が80℃以上である。
【0039】
15)光硬化性転写層の300mJ/cm2の紫外線照射後のガラス転移温度が65℃以上である。短時間の紫外線照射により、転写での残留応力から発生しやすいピット形状等のダレ発生を防止することが可能で、転写されたピット形状等を保持することができる。
【0040】
16)光硬化性組成物(一般に光硬化性転写層)のガラス転移温度が20℃未満である。優れた転写性を得ることができやすい。
【0041】
17)ポリマーが、アクリル樹脂である。
【0042】
18)上記アクリル樹脂が、メチルメタクリレートの繰り返し単位を少なくとも50質量%含むアクリル樹脂である。反応性希釈剤との適宜組合せにより、良好な転写性と優れた硬化性の両立が容易となる。
【0043】
19)上記アクリル樹脂が、重合性官能基を有するアクリル樹脂である。
【0044】
上記アクリル樹脂が、メチルメタクリレートと、アルコール残基が炭素原子数2〜10個のアルキルの(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種と、グリシジル(メタ)アクリレートとの共重合体で、且つ該グリシジル基に重合性官能基を有するカルボン酸を反応させて得られたものであることが好ましい。反応性希釈剤との適宜組合せにより、良好な転写性と優れた硬化性の両立が容易となる。
【0045】
た上記アクリル樹脂が、メチルメタクリレートと、アルコール残基が炭素原子数2〜10個のアルキルの(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種と、重合性官能基を有するカルボン酸との共重合体で、且つ該カルボン酸基にグリシジル(メタ)アクリレートを反応させて得られたものであることが好ましい。反応性希釈剤との適宜組合せにより、良好な転写性と優れた硬化性の両立が容易となる。
【0046】
20)アクリル樹脂が、ヒドロキシル基を有するアクリル樹脂である。
【0047】
上記ヒドロキシル基を有するアクリル樹脂が、メチルメタクリレートと、アルコール残基が炭素原子数2〜10個のアルキルの(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種と、アルコール残基がヒドロキシルキを有する炭素原子数2〜4個のアルキルの(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種との共重合体であることが好ましい。メチルメタクリレートを50質量%以上有することが特に好ましい。反応性希釈剤との適宜組合せにより、良好な転写性と優れた硬化性の両立が容易となる。
【0048】
21)さらにポリイソシアネート(ジイソシアネートが好ましい)を含む。光硬化前の後架橋が可能となり、転写前のフィルムの形状保持性が向上する。
【0049】
22)ガラス転移温度が80℃以上のポリマーの数平均分子量が100000以上、及び/又は重量平均分子量が100000以上である。特に数平均分子量が100000〜300000、重量平均分子量が100000〜300000であることが好ましい。この分子量、アクリル樹脂の組成、及び反応性希釈剤の割合を、後述するように好適にすることにより特に優れた転写性と高い硬化速度を得ることができる。上記数平均分子量は、ポリスチレン標準を用いてGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)により測定する。
【0050】
23)光硬化性組成物が、光重合開始剤を0.1〜10質量%含む。
【0051】
24)380〜420nmの波長領域の光透過率が70%以上である。特に380〜800nmの波長領域の光透過率が70%以上であることが好ましい。
【0052】
25)光硬化性転写層の厚さが5〜300μmである。
【0053】
26)光硬化性転写シートが長尺状であり、かつ光硬化性転写層と剥離シートの幅が略同一である。
【0054】
27)上記工程(1)における、光硬化性転写シートが両面に剥離シートを有する場合に除去される一方の剥離シート(第1剥離シート)が、プラスチックフィルムと、その上に設けられた、光硬化性転写層と接する剥離層とを含み、この剥離層が、ヒドロキシル基を有するポリシロキサンと水素化ポリシロキサンとの縮合反応生成物からなる。ヒドロキシル基を有するポリシロキサンが、ジメチルポリシロキサンであることが好ましい。
【0055】
26)上記工程(5)において除去される、もう一方の剥離シート(第2剥離シート)が、プラスチックフィルムと、その上にも受けられた、光硬化性転写層と接する剥離層とを含み、この剥離層が、ケイ素原子を含まない熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂から、或いはこれらの樹脂とシランカップリング剤とから形成されている。或いは、第2剥離シートの剥離層が、不飽和2重結合基を有するポリシロキサンと水素化ポリシロキサンとの付加反応生成物(不飽和2重結合基を有するポリシロキサンがジメチルポリシロキサンであることが好ましい)からなる。また第2剥離シートは、剥離層を有していなくても良い。
【0056】
上記第1及び第2剥離シートのプラスチックフィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
【0057】
さらにまた、本発明の上記微細凹凸を有する成形樹脂の製造方法において有利に使用することができる、
表面に微細凹凸を有し且つその微細凹凸表面に光触媒物質の薄層が形成されたスタンパ;及び
表面に微細凹凸を有し且つその微細凹凸表面に光触媒物質の薄層が形成されたスタンパと、該スタンパの凹凸表面に密着するように設けられた硬化性樹脂からなる積層体も新規である。
【0058】
また、本発明は、上記微細凹凸を有する成形樹脂の製造方法及び光情報記録媒体の製造方法において有利に使用することができる、
表面に記録ピット及び/又はグルーブとしての微細凹凸を有し且つその微細凹凸表面に光触媒物質の薄層が形成されたスタンパ;及び
表面に記録ピット及び/又はグルーブとしての微細凹凸を有し且つその微細凹凸表面に光触媒物質の薄層が形成されたスタンパと、該スタンパの凹凸表面に密着するように設けられた紫外線硬化性樹脂からなる積層体;
も新規である。
【発明の効果】
【0059】
本発明の製造方法は、成形用金型を別の物に変更することなく、同一の金型を用いて、熱又は紫外線硬化性の成形用樹脂を、成形、硬化して、極めて大量の成形樹脂を製造することが可能にする、生産性に優れた成形樹脂の製造方法である。即ち、本発明の製造方法で使用される成形用金型は表面に光触媒物質の薄層が形成されており、驚くべきことに、これにより成形された樹脂の金型からの剥離が、安定して、大量に行うことができる。これは、光触媒物質の薄層の自己浄化機能により、熱又は紫外線硬化性の成形用樹脂の金型表面への貼り付きを防止し、金型表面の汚染を阻止しているためと考えられる(光触媒物質の薄層の自己浄化機能は、光触媒物質に光照射することにより発現するので、熱硬化性樹脂の場合、別途光照射する必要がある)。
【0060】
このような光触媒物質の薄層で被覆された成形用金型は、紫外線硬化性の成形用樹脂に特に有効であり、従って、光触媒物質薄層の被覆は、通常の成形用金型だけでなく、紫外線硬化性樹脂を用いて成形するために有利な金型、例えば、ナノインプリントプロセス法又はマイクロインプリントプロセス法に用いられる表面に微細な凹凸パターン成形用金型である成形用スタンパ、同様に微細な凹凸パターンを有する光情報記録媒体(光ディスク)製造用のスタンパに有用である。特に、微細な凹凸パターン成形用スタンパ及び光情報記録媒体(光ディスク)製造用のスタンパ等の精細な成形、中でも後者のスタンパに有効である。
【0061】
即ち、光情報記録媒体(光ディスク)製造においては、紫外線硬化性樹脂(光硬化性転写層)が基板上に設けられた反射層に接着していることが必要であり、スタンパの剥離力が増大するとスタンパの剥離時に硬化した樹脂層が反射層から剥がれたり、反射層が基板から剥がれたりする場合があり、特に一定の剥離力で安定して剥離が可能なスタンパが求められる。この点で本発明の光触媒物質の薄層で被覆されたスタンパは特に優れている。
【0062】
従って、本発明のスタンパを用いることにより、精度の高い光情報記録媒体を高い生産性で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
本発明の光触媒物質の薄層で被覆された成形用金型を用いて成形樹脂を製造する方法について図面を参照しながら詳しく説明する。
【0064】
図1には、射出成形機に使用される金型の1例が示されている。射出成形機1(部分図)のノズル1Aから加熱された熱硬化性樹脂が、スプルー3を介して金型2内に導入され、金型が加熱されて熱硬化性樹脂が硬化され、得られた成形樹脂が取り出される。熱硬化性樹脂が常温で流動性を有する場合は加熱しなくても良い。本発明では、金型2の表面に光触媒物質の薄層2Aが被覆されており、成形後(あるいは成形時、成形前)にこの薄層に光照射することに光触媒反応を起こし、自己浄化機能を示すようになる。このため、金型2の表面が硬化性樹脂により汚染され難いため、同じ金型で多数の成型品を一定の剥離力で安定して製造することができる。紫外線硬化性樹脂を用いて紫外線照射する場合は、一般に、金型では加熱せず、紫外線照射を行う。紫外線照射は、一般に金型では加熱せず、冷却して取り出してから行われる。また熱硬化と紫外線硬化を併用しても良い。加熱の場合、金型2内に導入時の樹脂の温度は一般に50から100℃であり、硬化させる時の温度は一般に130〜200℃である。
【0065】
図1では、射出成形機を示したが、金型を利用できる成形法であれば、どのような成形法(例、押出成形、圧縮成形、注形成形)でも利用することができる。この場合、一般に成形後に金型に光照射することが必要である。
【0066】
このような光触媒物質の薄層は、成形用金型として微細凹凸パターンを有する成形用スタンパに適用しても有効であり、このようなスタンパを用いて、記録媒体、半導体、半導体高密度パッケージ等の作製する方法(例、ナノインプリントプロセス法又はマイクロインプリントプロセス法)にも有用である。
【0067】
図2に、本発明の微細凹凸パターンを有する成形樹脂の製造方法の代表的な実施の形態の概略を描いた断面図を示す。
【0068】
まず硬化性樹脂層5上に、微細凹凸パターンを有する成形用スタンパ4を配置する。この際、成形用スタンパ4の微細凹凸パターンが硬化性樹脂層5の表面に対向するように配置する(1)。続いて、硬化性樹脂層5上に、成形用スタンパ4を押圧する(2)。押圧が可能なように、硬化性樹脂層5は必要に応じて加熱される。常温で押圧可能であれば加熱する必要はない。この状態で、硬化性樹脂層5を、加熱又は光(一般に紫外線)照射することにより、硬化させる。加熱硬化の場合は金型に光照射する必要がある。その後、成形用スタンパ4を硬化した硬化性樹脂層5’から除去する(3)。このようにして、微細凹凸パターンを硬化した硬化性樹脂層5’に形成し、成形樹脂が得られる。本発明では、成形用スタンパ4の微細凹凸パターンを有する表面に、本発明の光触媒物質の薄層4Aが形成されている。光照射後の薄層4Aにより成形用スタンパ4の表面が硬化性樹脂により汚染され難いため、同じスタンパで多数の成形品を一定の剥離力で安定して製造することができる。
【0069】
上記図1及び図2の方法において、硬化性樹脂の代わりに熱可塑性樹脂を用いて行うこともできる。その場合、熱可塑性樹脂を金型内でガラス転移温度以上に加熱し、その後冷却して金型から取り出す、または除去することにより行うことができる。
【0070】
次に、本発明の微細凹凸パターンを有するスタンパを用いる光情報記録媒体の製造方法について、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。
【0071】
図3は本発明の光情報記録媒体の製造方法で使用される光硬化性転写シート10の実施形態の代表例を示す断面図である。光硬化性転写層11には、一方の表面に、第1剥離シート12b、及び他方の表面に、第2剥離シート12aが、設けられている。第1剥離シート12b、及び第2剥離シート12aは、同一の剥離シートでも良く、また一方のみ設けられていても、或いは全く設けられていなくても良い。一般に、剥離シートは、プラスチックシート上に剥離層が設けられ、剥離層が光硬化性転写層11の表面と接触するように設けられている。第1剥離シート12bと第2剥離シート12aは後述するように相互に異なる剥離性を有することが好ましい。また光硬化性転写シートは長尺状であり、かつ光硬化性転写層と剥離シートの幅が略同一であることが製造上有利である。
【0072】
本発明の光硬化性転写層11は、スタンパの微細凹凸表面を押圧することにより精確に転写できるように、加圧により変形し易い層であるとともに、硬化後において銀合金等の反射層との接着性が良好で、スタンパの剥離性にも優れた層である。
【0073】
本発明では、光硬化性組成物は、ポリマーとして、ガラス転移温度が80℃以上のポリマーを含むことが好ましい。これにより、スタンパ或いは基板上の微細凹凸形状が容易に転写でき、その後の硬化も高速で行うことができる。また硬化された形状も高いTg有するのでその形状が変わることなく長期に維持され得る。ガラス転移温度が80℃以上のポリマーとしては、重合性官能基を有することが、反応性希釈剤と反応が可能となり硬化の高速化に有利である。またヒドロキシル基を有することにより、転写層11にジイソシアネートを含ませることで、ポリマーを僅かに架橋させることが可能となり、転写層のしみ出し、層厚変動が大きく抑えられた層とするのに特に有利である。ジイソシアネートは、ヒドロキシル基の無いポリマーでもある程度有効である。
【0074】
上記光硬化性転写シートは、情報の高密度化のため、再生レーザにより読み取りが容易なように380〜420nmの波長領域の光透過率が70%以上であることが好ましい。特に、380〜420nmの波長領域の光透過率が80%以上であることが好ましい。従って、この転写シート用いて作製される本発明の光情報記録媒体は380〜420nmの波長のレーザを用いてピット信号を再生する方法に有利に使用することができる。
【0075】
上記光硬化性転写シート10を用いて、本発明の光情報記録媒体を、例えば図3に示すように製造することができる。
【0076】
光硬化性転写シート10は、先ず円盤状に打ち抜かれる。この際、光硬化性転写層11と第1剥離シート12b、第2剥離シート12a全てを打ち抜く場合(一般にフルエッジの場合)と、光硬化性転写層11と一方の第1剥離シート12bを円盤状に打ち抜き、もう一方の第2剥離シート12aをそのまま残す場合(一般にドライエッジの場合)があり、適宜選択して行われる(工程A)。このように予めの打ち抜き作業は、本発明の光硬化性転写シートを用いることにより、転写層のしみ出し、はみ出し無く、作業性良く行うことができる。
【0077】
次いで、光硬化性転写シート10から第2剥離シート12aを除去し、第1剥離シート12b付き光硬化性転写層を用意する(工程1)。この場合、第2剥離シート12aを除去した光硬化性転写層11の表面は、硬化後、反射層と良好な接着性を有する必要があるため、第2剥離シート12aの第2剥離層は、一般に、硬化後転写層の接着性に悪影響をもたらさないように設計されている。表面に記録ピットとしての微細凹凸を有する基板21の該微細凹凸表面に形成された反射層23a(一般にAl等の高反射率の反射層)の上に、第2剥離シートの無い側を対向させて光硬化性転写シート10を押圧する(工程2)。これにより光硬化性転写シートの表面が基板の微細凹凸表面に沿って密着された積層体(12b,11,23a,21からなる)を形成する。この構成で光情報記録媒体として使用する場合は、光硬化性転写シート11を紫外線照射により硬化させ、第1剥離シート12bを除去する。
【0078】
次いで、積層体から本発明の特定の第1剥離シート12bを除去して(工程3)、表面に記録ピットとしての微細凹凸を有し且つその表面が本発明の光触媒物質の薄層24Aが形成されたスタンパ24を未硬化状態の光硬化性転写層11の表面(基板と接触していない側の表面)に押圧する(工程4)。光硬化性転写層11の表面がスタンパ24の微細凹凸表面(薄層)に沿って密着した積層体(21,23a,11,24A,24からなる)を形成し、そして積層体の光硬化性転写シートを紫外線照射(一般に300mJ/cm2以上)により硬化させた(工程5)のち光触媒物質の薄層24Aを有するスタンパ24を除去することにより、硬化シートの表面に記録ピット等の微細凹凸を設ける。これにより、基板11、反射層23a及び硬化した光硬化性転写層11aから成る積層体を得る。
【0079】
通常、この微細凹凸上(硬化シートの表面)に、半透明反射層(一般にAgX等の反射率の比較的低い反射層)23bを設け(工程6)、さらにその上に有機ポリマーフィルム(カバー層)26を接着剤層を介して貼付する(工程7)。これにより図4に示す光情報記録媒体を得る。記録ピットを有する硬化層の反射層の表面に、さらに光硬化性転写シートを押圧し、紫外線照射(一般に300mJ/cm2以上)により硬化させても良い。或いは、硬化層の反射層の表面に紫外線硬化性樹脂を塗布、硬化させても良い。半透明反射層23aは、通常のAl等の反射層でも良い(両面読み出し用)。また反射層23bを高反射率反射層、高反射率反射層23aを半透明反射層としても良い。さらにスタンパは、微細凹凸を有する基板であっても良い。
【0080】
本発明では、スタンパ24の凹凸表面に光触媒物質の薄層24Aが被覆されており、薄層24Aに光照射することによりスタンパ24の表面が硬化性樹脂により汚染され難いため、同じスタンパで多数の光情報記録媒体(光ディスク)を一定の剥離力で安定して製造することができる。即ち、光情報記録媒体の製造においては、光硬化性転写層11(紫外線硬化性樹脂)が基板上に設けられた反射層に接着していることが必要であり、スタンパの剥離力が増大するとスタンパの剥離時に硬化した転写層が反射層から剥がれたり、反射層が基板から剥がれたりする場合があり、特に一定の剥離力で安定して剥離が可能なスタンパが求められる。この点で本発明の光触媒物質の薄層で被覆されたスタンパは特に優れている。
【0081】
また、(6)の工程で高反射層の代わりに半透明反射層を設け、同様に(1)〜(6)の工程を繰り返すことにより、記録ピットを三層以上形成することもできる。例えば、図5に示すような4層構成の光情報記録媒体を形成することができる。この構成は、次世代のブルーレイ・ディスクとして特に注目されている一般的な構成である。即ち、表面に微細凹凸を有する基板21、その上に設けられた表面に微細凹凸を有する反射層23a、表面に微細凹凸を有する反射層23a上に表面に微細凹凸を有する硬化した光硬化性転写層(中間樹脂層)11a、この微細凹凸上に設けられた反射層(一般に前の反射層23aより反射率の低い反射層)23b、反射層23b上に設けられた表面に微細凹凸を有する硬化した光硬化性転写層(中間樹脂層)11b、その上に形成された反射層23c(前の反射層23bより反射率の低い反射層)、反射層23c上に設けられた表面に微細凹凸を有する硬化した光硬化性転写層(中間樹脂層)11c、その上に形成された反射層23d(前の反射層23cより反射率の低い反射層)から構成されている。反射層23d上には、前記と同様有機ポリマーフィルム(カバー層)26等が貼付される。本発明では、少なくとも中間樹脂層11aにおいて、本発明の光硬化性転写シートの転写層が使用される。本発明では、中間樹脂層の表面に本発明のリン原子含有化合物が付着している。反射層23a、23b、23c、23dの反射率の大きさは反対になるように設定しても良い。
【0082】
尚、上記方法においては、再生専用の光情報記録媒体について説明したが、記録可能な光情報記録媒体についても同様に行うことができる。記録可能媒体の場合、グルーブ或いはグルーブ及びプレピットを有しており、この場合反射層及び半透明反射層の代わりに金属記録層(色素記録層の場合や金属記録層の反射率が低い場合は、記録層及び反射層)及びその他の機能層(例、エンハンス層)が一般に設けられる。それ以外は上記と同様に光情報記録媒体を製造することができる。
【0083】
本発明の成形樹脂の製造に使用される成形用金型の製造、及び微細凹凸パターンを有する成形樹脂或いは光情報記録媒体の製造に使用されるスタンパに施される光触媒物質の薄層について説明する。
【0084】
成形用金型は、本発明の製造方法の条件を満足する限り、公知のどのような金型でも使用することができる。また微細凹凸パターンを有する成形樹脂製造用のスタンパは、ナノインプリントプロセス法又はマイクロインプリントプロセス法に用いられる公知のスタンパを使用することができ、そして光情報記録媒体の製造に使用されるスタンパは、光ディスクの製造に通常使用されるどのようなものでも使用することができ、一般にNi製のスタンパである。
【0085】
成形用金型又はスタンパのパターン面への光触媒物質の薄層の形成は、一般に、ターゲットとして金属酸化物を物理的気相成膜することにより、或いはターゲットとして金属酸化物及び/又は金属を酸素雰囲気下に化学的気相成膜することにより行われる。
【0086】
ターゲットの金属の例としては、白金、ニッケル、クロム、コバルト、錫、ニオブ、タンタル、銅、セリウム、鉛、鉄、バナジウム、金、銀、ジルコニウム、ナトリウム、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、マンガン、亜鉛、ガリウム、セレン、モリブデン、インジウム、ストロンチウム、テルル、バリウム、タングステン、ビスマス、及びイットリウムを挙げることができる。1種又は2種以上で使用される。ターゲットの金属酸化物の例としては、白金、ニッケル、クロム、コバルト、錫、ニオブ、タンタル、銅、セリウム、鉛、鉄、バナジウム、金、銀、ジルコニウム、ナトリウム、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、マンガン、亜鉛、ガリウム、セレン、モリブデン、インジウム、ストロンチウム、テルル、バリウム、タングステン、ビスマス、及びイットリウムを挙げることができる。1種又は2種以上で使用される。また、金属と金属酸化物の両方を使用することもできる。
【0087】
光触媒作用を有する好ましい金属酸化物としては、MeOx(MeはAl,Co,Cu,Fe,In,Mg,Sn,Ti,Zn等の金属を示し、xは金属の種類によって異なるが、0〜10、好ましくは0〜5の範囲の正数であり、xは必ずしも金属の価数に相当していなくてもよい)で表される化合物を挙げることができる。また好ましい金属としては、Al,Co,Cu,Fe,In,Mg,Sn,Ti,Zn等を挙げることができる。
【0088】
上記金属としては、特に、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、タングステン(W)、鉄(Fe)、ストロンチウム(Sr)が好ましく、中でもチタン(Ti)が好ましい。また、金属酸化物の例としては、特に、酸化チタン(特にTiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(特にWO3)、酸化鉄(特に、Fe23)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)を挙げることができ、中でも、酸化チタン(特にTiO2)が好ましい。金属と金属酸化物とを併用する場合は、一般に同じ金属が用いられる。
【0089】
光触媒物質の薄層の形成に用いられる物理的気相成膜の方法としては、スパッタリング法(例、マグネトロン・スパッタリング法及び対向ターゲット式スパッタリング)及びレーザーアブレーション法等、化学的気相成膜の方法としては、スパッタリング法(例、プラズマ・スパッタリング法、対向ターゲット式スパッタリング法、マグネトロン・スパッタリング法)及びイオンプレーティングから選択される方法である。特に対向2極ターゲット方式スパッタリング法が、高速で、アナタース型リッチの酸化チタン膜を形成するので好ましい。
【0090】
まず、光触媒物質の薄層の形成をターゲットとして酸化チタンを用いた場合の態様を例にとって説明する。
【0091】
金型又はスタンパは、一般に光触媒分解を受けない材料であるので、直接酸化チタン層を設ける。受けやすい材料の場合は、金型又はスタンパの表面に下地層が設けられる。
【0092】
上記本発明の酸化チタンの薄層は、例えば、金型(又はスタンパ)のパターン表面に、ターゲットとして導電性酸化チタンを用いて、スパッタリングすることにより形成される。これにより、アナタース型リッチの酸化チタンから成る薄膜が、金型表面に高速で形成することができる。即ち、導電性酸化チタンをターゲットとして用いることにより、酸素等の反応性ガスを導入せずに又はほとんど導入せずにスパッタリングを行うため、反応性スパッタリング自体がほとんど行われないので、高速でアナタース型リッチな酸化チタン膜を得ることができる。
【0093】
本発明の光触媒物質の薄層である酸化チタンの薄層は、酸素分子を有するガスを含有する不活性ガス中で金属ターゲットとしてチタンを用いて反応性スパッタリングを行うことにより形成された酸化チタンの薄層であることが好ましい。次にこの態様について図7を参照しながら説明する。上記反応性スパッタリングとして、通常のマグネトロンスパッタリング法等にて形成することができるが、特には対向ターゲット式スパッタリング法を採用することが好ましい。
【0094】
対向ターゲット式スパッタリング装置としては、公知の装置を用いることができ、例えば図7示す装置を使用し得る。即ち、図7において、70は内部を脱気真空可能な装置本体で、この装置本体70内に一対の金属ターゲット(チタン)72,72が互いに所定間隔離間対向して配置されたものである。これらターゲット72,72は、それぞれ支持部73a,73aを有するホールド73,73に保持され、これらホールド73,73を介して直流電源(スパッタ電源)74の陰極に接続されていると共に、上記ターゲット72,72の背後に磁石75,75が互いに異なる磁極が対向するように配置され、上記ターゲット72,72間のスパッタ空間76にターゲット72,72に対して垂直方向の磁界が発生するようになっている。そして、上記スパッタ空間の側方には、スパッタ膜を形成すべき基板である金型77が配置されたものである。なお、78は金型77を所定方向に移動可能に支持する支持部材である。こうして酸化チタンの薄膜が金型のパターン表面に形成される。
【0095】
上記スパッタリングを行う上で真空度は、一般に1×10-5〜1×10-4Paとした後、不活性ガスと酸素分子を有するガスが導入される。ガス導入後の真空度は0.01〜1.5Pa、特には0.01〜1.0Paが好ましい。ここで、上記スパッタ空間に供給される酸素分子を有するガス(酸化性ガス)としては、公知のガスを使用することができ、例えば、酸素、オゾン、空気、水等を挙げることができ、一般には酸素が用いられる。また、不活性ガスとしては、ヘリウム、アルゴンなどを用いることができ、特に工業的に安価なアルゴンが好適に使用し得る。
【0096】
この場合、不活性ガスと酸素分子を有するガスとは、不活性ガスと酸素ガスとの比率が3:1〜1:3、特に3:1〜1:1(容量比)となるように導入することが好ましい。これにより酸化チタンを成膜する場合は高活性のアナターゼ型リッチの酸化チタン結晶を形成し得る。上記比率を逸脱すると、ルチル型結晶が多くなるおそれがある。なお、上記ガスの流量は、チャンバーの大きさ、カソードの数などにより適宜選定されるが、不活性ガスと酸素分子を有するガスとの合計量で、通常2〜1000cm3/分程度である。
【0097】
投入電力も適宜選定されるが、高い投入電力とすることが好ましく、ターゲット面積当りのエネルギー量を1.3W/cm2以上、好ましくは2.6W/cm2以上、特に3.5W/cm2以上とすることが推奨され、これにより得られる光触媒物質の薄層を粗くすると共に、表面積を大きくできるので、光触媒物質の薄層の性能を更に向上させることができる。この場合、供給電力が400ワット未満、ターゲット面積当りのエネルギー量が1.3W/cm2未満であると、活性の高い光触媒膜を得ることができなくなる場合がある。
【0098】
なお、電源は、図示の例では直流電流であるが、これに限られず、例えば高周波電源等を使用することができ、また装置の構成も図示の例に限定されるものではない。
【0099】
更に、スパッタリングのその他の条件は公知の条件でよく、適宜選定される。
【0100】
上記のようにして得られる本発明の光触媒物質の薄層の層厚は、10〜500nm、特に20〜300nmの範囲が好ましい。
【0101】
本発明の光情報記録媒体の製造方法では、記録ピット及び/又はグルーブである微細凹凸形状を、光硬化性転写層11と基板21とを100℃以下の比較的低い温度(好ましくは常温)で押圧する(好ましくは減圧下)ことにより精確に転写されるように光硬化性転写シートが設計されている。基板21と、光硬化性転写層11との重ね合わせは、一般に圧着ロールや簡易プレスで行われる(好ましくは減圧下)。また、光硬化性転写層11の硬化後の層は、基板21の表面の反射層に用いられる金属との接着力が良好で剥離することはない。必要により反射層上に接着促進層を設けても良い。
【0102】
また本発明では、記録ピット及び/又はグルーブである微細凹凸形状を、光硬化性転写層11とスタンパ24とを100℃以下の低温(好ましくは常温)で押圧する(好ましくは減圧下)ことにより精確に転写されるように光硬化性転写シートが設計されている。スタンパ21と、光硬化性転写シート11との重ね合わせは、一般に圧着ロールや簡易プレスで行われる(好ましくは減圧下)。また、光硬化性転写層11の硬化後の層は、一般にTgが65℃以上(特に80℃以上)の層であり、スタンパに用いられるニッケルなどの金属との接着力が弱く、光硬化性転写シートをスタンパから容易に剥離することができる。
【0103】
基板21は、一般に厚板(通常0.3〜1.5mm、特に1.1mm程度)であるので、従来の射出成形法で作製することが一般的である。しかし光硬化性転写シートとスタンパを用いて製造しても良い。本発明の光硬化性転写シートは300μm以下(好ましくは150μm以下)に薄くすることができるので、もう一方の基板を従来法で作製し、基板の厚さを大きくすることができるのでピット形状の転写精度を上げることができる。
【0104】
上記工程において、光硬化性転写層を基板に押圧する際、或いはスタンパを光硬化性転写層に押圧する際に、減圧下に押圧を行うことが好ましい。これにより、気泡の除去等が円滑に行われる。
【0105】
上記減圧下の押圧は、例えば、減圧下に2個のロール間に、光硬化性転写シートとスタンパを通過させる方法、あるいは真空成形機を用い、スタンパを型内に載置し、減圧しながら光硬化性転写シートをスタンパに圧着させる方法を挙げることができる。
【0106】
また、二重真空室方式の装置を用いて減圧下の押圧を行うことができる。図8を参照しながら説明する。図8には二重真空室方式のラミネータの一例が示されている。ラミネータは下室84、上室82、シリコーンゴムシート83、ヒータ85を備えている。ラミネータ内の下室84に、微細凹凸を有する基板と光硬化性転写シートとの積層体89、又は基板と光硬化性転写シートとスタンパとの積層体89を置く。上室82及び下室84共に排気する(減圧する)。積層体89をヒータ85で加熱し、その後、下室84を排気したまま上室82を大気圧に戻し、積層体を圧着する。冷却して積層体を取り出し、次工程に移す。これにより排気時に脱泡が十分に行われ、気泡の無い状態で、スタンパ又は基板と光硬化性転写シートとを圧着することができる。
【0107】
本発明で使用される硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂及び/又は光硬化性樹脂について説明する。
【0108】
熱硬化性樹脂としては、公知の熱硬化性樹脂、例えばポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂を挙げることができる。或いは下記の光硬化性樹脂で、光重合性開始剤を熱重合開始剤に変えたものを使用することもできる。
【0109】
光硬化性樹脂は、以下の光硬化性組成物を使用することができ、液状の光硬化性樹脂を用いる場合は、以下の光硬化性組成物からポリマーを除去する等して調整することにより得ることができ、利用することができる。
【0110】
本発明の光情報記録媒体の製造方法で有利に使用することができる光硬化性転写シートは、加圧により変形可能な光硬化性組成物からなる光硬化性転写層を有するものである。
本発明の上記光硬化性組成物は、一般に、ポリマー(好ましくはガラス転移温度が80℃以上のポリマー)、光重合性官能基(一般に炭素炭素2重結合基、好ましくは(メタ)アクリロイル基)を有する反応性希釈剤(モノマー及びオリゴマー)、光重合性開始剤及び、所望により他の添加剤から構成される。
【0111】
本発明の光硬化性組成物の一般的な構成要件である光重合性官能基を有する反応性希釈剤としては、例えば、(メタ)アクリルモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリエトキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、o−フェニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、
ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジプロポキシジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、
グリセリンジアクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリレートメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス〔(メタ)アクリロキシエチル〕イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマー類;
ポリオール化合物(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオール類、前記ポリオール類とコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、アジピン酸、水添ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の多塩基酸又はこれらの酸無水物類との反応物であるポリエステルポリオール類、前記ポリオール類とε−カプロラクトンとの反応物であるポリカプロラクトンポリオール類、前記ポリオール類と前記、多塩基酸又はこれらの酸無水物類のε−カプロラクトンとの反応物、ポリカーボネートポリオール、ポリマーポリオール等)と、有機ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4'−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2',4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)と水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメチロールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等)の反応物であるポリウレタン(メタ)アクリレート、
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応物であるビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートオリゴマー類等を挙げることができる。これら光重合可能な官能基を有する化合物は1種又は2種以上、混合して使用することができる。
【0112】
前記ポリマー(好ましくはガラス転移温度が80℃以上)としては、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ビニルアセテート/(メタ)アクリレート共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン及びその共重合体、ポリ塩化ビニル及びその共重合体、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、メタクリレート/アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、2−クロロブタジエン−1,3−ポリマー、塩素化ゴム、スチレン/ブタジエン/スチレン共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、セルロースエステル、セルロースエーテル、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等を挙げることができる。
【0113】
本発明では、良好な転写性及び優れた硬化性の点から、アクリル樹脂が好ましい。アクリル樹脂は、前述したように、重合性官能基を有するアクリル樹脂又はヒドロキシル基を有するアクリル樹脂であることが特に好ましい。またアクリル樹脂は、メチルメタクリレートの繰り返し単位を少なくとも50質量%(特に60〜90質量%)含むことが、Tg80℃以上のアクリル樹脂を得られやすく、また良好な転写性、高速硬化性も得られやすく好ましい。
【0114】
上記重合性官能基を有するアクリル樹脂は、一般に重合性官能基を有するアクリル樹脂が、メチルメタクリレートと、アルコール残基が炭素原子数2〜10個のアルキルの(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種と、グリシジル(メタ)アクリレートとの共重合体で、且つ該グリシジル基に重合性官能基を有するカルボン酸が反応したもの、或いはメチルメタクリレートと、アルコール残基が炭素原子数2〜10個のアルキルの(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種と、重合性官能基を有するカルボン酸との共重合体で、且つ該カルボン酸基にグリシジル(メタ)アクリレートが反応したものである。
【0115】
メチルメタクリレートと、アルコール残基が炭素原子数2〜10個のアルキルの(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種と、グリシジル(メタ)アクリレートとの共重合体である。メチルメタクリレートは、その繰り返し単位として、ポリマー中に50質量%以上(特に60〜90質量%)含まれることが好ましい。反応性希釈剤との適当な組合せにより、良好な転写性と優れた硬化性の両立が容易となる。アルコール残基が炭素原子数2〜10個(特に3〜5個)のアルキルの(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。またこのような(メタ)アクリル酸エステルは、その繰り返し単位として、ポリマー中に、一般に5〜30質量%、特に10〜30質量%含まれることが好ましい。グリシジル(メタ)アクリレート又は重合性官能基を有するカルボン酸は、その繰り返し単位として、ポリマー中に、一般に5〜25質量%、特に5〜20質量%含まれることが好ましい。得られた共重合体のグリシジル基又はカルボン酸基に、それぞれ重合性官能基を有するカルボン酸又はグリシジル(メタ)アクリレートを反応させる。
【0116】
上記ヒドロキシル基を有するアクリル樹脂は、一般にメチルメタクリレートと、アルコール残基が炭素原子数2〜10個(特に3〜5個)のアルキルの(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種と、アルコール残基がヒドロキシル基を有する炭素原子数2〜4個のアルキルの(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種との共重合体である。メチルメタクリレートは、その繰り返し単位として、ポリマー中に50質量%以上(特に60〜90質量%)含まれることが好ましい。反応性希釈剤との適当な組合せにより、良好な転写性と優れた硬化性の両立が容易となる。アルコール残基が炭素原子数2〜10個(特に3〜5個)のアルキルの(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。またこのような(メタ)アクリル酸エステルは、その繰り返し単位として、ポリマー中に、一般に5〜30質量%、特に10〜30質量%含まれることが好ましい。アルコール残基がヒドロキシル基を有する炭素原子数2〜4個のアルキルの(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートを挙げることができ、その繰り返し単位として、ポリマー中に、一般に5〜25質量%、特に5〜20質量%含まれることが好ましい。
【0117】
前記重合性官能基を有するアクリル樹脂は、例えば、以下のように製造することができる。
【0118】
1種又は複数種の(メタ)アクリルモノマー(好ましくは上述の、メチルメタクリレートと、アルコール残基が炭素原子数2〜10個のアルキルの(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種と、グリシジル基を1個かつ重合性官能基を1個有する化合物(好ましくはグリシジル(メタ)アクリレート)或いは重合性官能基を有するカルボン酸とを、ラジカル重合開始剤と有機溶剤の存在下で溶液重合法などの公知の方法にて反応させて共重合体であるグリシジル基含有アクリル樹脂(a)又はカルボキシル基含有アクリル樹脂(b)を得る。(メタ)アクリルモノマー等のモノマー類の配合割合はグリシジル基含有アクリル樹脂(a)又はカルボキシル基含有アクリル樹脂(b)の固形分換算合計量に対して10〜45質量%とすることが好ましい。
【0119】
次いで得られたグリシジル基含有アクリル樹脂(a)に重合性官能基を有するカルボン酸を加え、或いは得られたカルボキシル基含有アクリル樹脂(b)にグリシジル基を1個かつ重合性官能基を1個有する化合物(好ましくはグリシジルメタクリレート)を加え、必要に応じ加熱することによりアクリル系光硬化型樹脂(A)又はアクリル系光硬化型樹脂(B)を得る。この配合比は、グリシジル基とカルボキシル基のモル比が1/0.9〜1/1となるように配合するのが好ましく、より好ましくは1/1である。グリシジル基過剰では長期安定性において増粘、ゲル化のおそれがあり、カルボキシル基過剰では皮膚刺激性が上がり作業性が低下する。さらに1/1の場合は残存グリシジル基がなくなり、貯蔵安定性が顕著に良好になる。反応は塩基性触媒、リン系触媒などの存在下で公知の方法にて行うことができる。
【0120】
上記OH又は重合性官能基を有するアクリル樹脂を含み、本発明で用いることができるアクリル樹脂を構成する主成分として使用することができる(メタ)アクリル系モノマーとしては、アクリル酸又はメタクリル酸の各種エステルを挙げることができる。アクリル酸又はメタクリル酸の各種エステルの例として、メチル(メタ)アクリレート((メタ)アクリレートとはアクリレート及びメタクリレートを示す。以下同様)、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、2−メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート、ピレノキシド付加物(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。さらに不飽和基を含有する芳香族化合物(例、スチレン)も使用しても良い。
【0121】
本発明では、前述のように、アクリル系モノマーの主成分としては、メチルメタクリレートと、アルコール残基が炭素原子数2〜10個のアルキルの(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0122】
本発明のポリマー(好ましくはガラス転移温度が80℃以上)は、数平均分子量が100000以上、特に100000〜300000、そして重量平均分子量が100000で以上、特に100000〜300000であることが好ましい。
【0123】
さらに本発明では、ポリマー(好ましくはガラス転移温度が80℃以上)として、ヒドロキシル基等の活性水素を有する官能基及び光重合性官能基の両方を有するポリマーも使用することができる。このような反応性ポリマーとしては、例えば、主として前記アクリル系モノマーから得られる単独重合体又は共重合体(即ちアクリル樹脂)で、且つ、主鎖又は側鎖に光重合性官能基及び活性水素を有する官能基を有するものである。従って、このような反応性ポリマーは、例えば、メチルメタクリレートと、前記1種以上の(メタ)アクリレートと、ヒドロキシル基等の官能基を有する(メタ)アクリレート(例、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)とを共重合させ、得られた重合体とイソシアナトアルキル(メタ)アクリレートなどの、重合体の官能基と反応し且つ光重合性基を有する化合物と反応させることにより得ることができる。その際、ヒドロキシル基が残るようにイソシアナトアルキル(メタ)アクリレートの量を調節して使用することにより、活性水素を有する官能基としてヒドロキシル基及び光重合性官能基を有するポリマーが得られる。
【0124】
或いは上記において、ヒドロキシル基の代わりにアミノ基を有する(メタ)アクリレート(例、2−アミノエチル(メタ)アクリレート)を用いることにより活性水素を有する官能基としてアミノ基を有する、光重合性官能基含有ポリマーを得ることができる。同様に、活性水素を有する官能基としてカルボキシル基等を有する、光重合性官能基含有ポリマーも得ることができる。
【0125】
本発明では、前記光重合性官能基をウレタン結合を介して有するアクリル樹脂も好ましい。
【0126】
上記光重合性官能基及び活性水素を有する官能基を有するポリマーは、光重合性官能基を一般に1〜50モル%、特に5〜30モル%含むことが好ましい。この光重合性官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基が好ましく、特にアクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。
【0127】
本発明の光硬化性組成物中に添加され得るジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4’−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2’,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを挙げることができる。またトリメチロールプロパンのTDI付加体等の3官能以上のイソシアネート化合物等のポリイソシアネートシアネートも使用することができる。これらの中でトリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加体が好ましい。
【0128】
本発明のジイソシアネートは、光硬化性組成物(不揮発分)中に0.2〜4質量%、特に0.2〜2質量%の範囲で含まれていることが好ましい。転写層のしみ出しを防止するために適当な架橋がもたらされると共に、基板やスタンパの微細凹凸の良好な転写性も維持される。上記化合物とポリマーとの反応は、転写層形成後、徐々に進行し、常温(一般に25℃)、24時間でかなり反応している。転写層形成用の塗布液を調製した後、塗布するまでの間にも反応は進行するものと考えられる。転写層を形成後、ロール状態で巻き取る前にある程度硬化させることが好ましいので、必要に応じて、転写層を形成時、或いはその後、ロール状態で巻き取る前の間に加熱して反応を促進させても良い。
【0129】
本発明の光硬化性組成物は、上述のように、一般に、ガラス転移温度が80℃以上のポリマー、光重合性官能基(好ましくは(メタ)アクリロイル基)を有する反応性希釈剤(モノマー及びオリゴマー)、光重合性開始剤及び、所望により他の添加剤から構成される。ポリマーと反応性希釈剤との質量比は、20:80〜80:20、特に30:70〜70:30の範囲が好ましい。
【0130】
本発明の光硬化性転写層の周波数1Hzにおける貯蔵弾性率は、25℃において1×107Pa以下であることが好ましく、特に1×104〜6×105Paの範囲であることが好ましい。また80℃において8×104Pa以下であることが好ましく、特に1×104〜5×105Paの範囲であることが好ましい。これにより、精確で迅速な転写が可能となる。さらに、本発明の光硬化性転写層は、ガラス転移温度を20℃以下であることが好ましい。これにより、得られる光硬化性転写層がスタンパの微細凹凸面に圧着されたとき、常温においてもその微細凹凸面に緊密に追随できる可撓性を有することができる。特に、ガラス転移温度が15℃〜−50℃、特に15℃〜−10℃の範囲にすることにより追随性がたものとなる。ガラス転移温度が高すぎると、貼り付け時に高圧力及び高圧力が必要となり作業性の低下につながり、また低すぎると、硬化後の十分な高度が得られなくなる。
【0131】
また上記光硬化性組成物からなる光硬化性転写層は、300mJ/cm2の紫外線照射後のガラス転移温度が65℃以上となるように設計されていることが好ましい。短時間の紫外線照射により、転写での残留応力から発生しやすいピット形状等のダレ発生を防止することが容易で、転写されたピット形状等を保持することができる。本発明の光硬化性組成物からなる光硬化性転写層は、主として、上記好ましいポリマー、以下の反応性希釈剤を使用することにより有利に得ることができる。
【0132】
光重合開始剤としては、公知のどのような光重合開始剤でも使用することができるが、配合後の貯蔵安定性の良いものが望ましい。このような光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系、ベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン系、ベンゾフェノン系、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系、その他特殊なものとしては、メチルフェニルグリオキシレートなどが使用できる。特に好ましくは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら光重合開始剤は、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸のごとき安息香酸系又は、第3級アミン系などの公知慣用の光重合促進剤の1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。また、光重合開始剤のみの1種または2種以上の混合で使用することができる。光硬化性組成物(不揮発分)中に、光重合開始剤を一般に0.1〜20質量%、特に1〜10質量%含むことが好ましい。
【0133】
光重合開始剤のうち、アセトフェノン系重合開始剤としては、例えば、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1など、ベンゾフェノン系重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンッゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンなどが使用できる。
【0134】
アセトフェノン系重合開始剤としては、特に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1が好ましい。ベンゾフェノン系重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチルが好ましい。また、第3級アミン系の光重合促進剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシルなどが使用できる。特に好ましくは、光重合促進剤としては、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0135】
本発明では、上記光重合性官能基を有する反応性希釈剤及び光重合開始剤に加えて、所望により下記の熱可塑性樹脂及び他の添加剤を添加することが好ましい。
【0136】
他の添加剤として、シランカップリング剤(接着促進剤)を添加することができる。このシランカップリング剤としてはビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどがあり、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらシランカップリング剤の添加量は、上記ポリマー(固形分)100質量部に対し通常0.01〜5質量部で十分である。
【0137】
また同様に接着性を向上させる目的でエポキシ基含有化合物を添加することができる。エポキシ基含有化合物としては、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート;ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル;1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル;アクリルグリシジルエーテル;2−エチルヘキシルグリシジルエーテル;フェニルグリシジルエーテル;フェノールグリシジルエーテル;p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル;アジピン酸ジグリシジルエステル;o−フタル酸ジグリシジルエステル;グリシジルメタクリレート;ブチルグリシジルエーテル等が挙げられる。また、エポキシ基を含有した分子量が数百から数千のオリゴマーや重量平均分子量が数千から数十万のポリマーを添加することによっても同様の効果が得られる。これらエポキシ基含有化合物の添加量は上記ポリマー(固形分)100質量部に対し0.1〜20質量部で十分で、上記エポキシ基含有化合物の少なくとも1種を単独で又は混合して添加することができる。
【0138】
上記光硬化性組成物において、滑剤としてリン原子含有化合物を含むことが好ましい。これによりスタンパの剥離性がさらに向上する。
【0139】
上記リン原子含有化合物として、下記の一般式(II):
【0140】
【化1】

【0141】
[但し、R4が、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基を表し、それぞれ置換基を有していても良く、
5が、 −CH2CH2−又は−CH(CH3)CH2−を表し、そして
nが1〜20を表す。]
リン酸アルキルポリオキシアルキレン化合物であることが好ましい。
【0142】
4において、アルキル基としては炭素原子数1〜20のアルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、セチル)、特に炭素原子数4〜18のアルキル基が好ましく、アリール基としてはフェニル基が好ましく、アルキルアリール基としては炭素原子数1〜3のアルキル基を有するフェニル基(特にメチルフェニル)が好ましく、アリールアルキル基としてはフェニルアルキル基(特にアルキル基は炭素原子数1〜3のアルキル基)が好ましい。置換基としては、ハロゲン(特に塩素、臭素)を挙げることができが、有しないことが好ましい。
【0143】
またR5は−CH2CH2−が好ましい。nは、1〜10、特に2〜5が好ましい。
【0144】
上記一般式(II)で表されるリン酸アルキルポリオキシアルキレン化合物は、商品名:LTP−2(川研ファインケミカル(株)製)、商品名:N3A及びN10A(クローダジャパン(株)製)が市場で入手可能であり、好ましい。上記N3Aは、式(II)におけるR1:オクチル、R2:−CH2CH2−、n:3である化合物、上記N10Aは、式(II)におけるR1:オクチル、R2:−CH2CH2−、n:10である化合物である。
【0145】
リン原子含有化合物は、光硬化性組成物(不揮発分)中に0.01〜1質量%、特に0.01〜0.5質量%、中でも0.02〜0.2質量%の範囲で含まれている。1質量%より多い場合は、反射層への接着性が低下し、0.01質量%より少ない場合は、スタンパからの剥離性が十分に良好とは言えない。
【0146】
さらに他の添加剤として、加工性や貼り合わせ等の加工性向上の目的で炭化水素樹脂を添加することができる。この場合、添加される炭化水素樹脂は天然樹脂系、合成樹脂系のいずれでも差支えない。天然樹脂系ではロジン、ロジン誘導体、テルペン系樹脂が好適に用いられる。ロジンではガム系樹脂、トール油系樹脂、ウッド系樹脂を用いることができる。ロジン誘導体としてはロジンをそれぞれ水素化、不均一化、重合、エステル化、金属塩化したものを用いることができる。テルペン系樹脂ではα−ピネン、β−ピネンなどのテルペン系樹脂のほか、テルペンフェノール樹脂を用いることができる。また、その他の天然樹脂としてダンマル、コーバル、シェラックを用いても差支えない。一方、合成樹脂系では石油系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂が好適に用いられる。石油系樹脂では脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、水素化石油樹脂、純モノマー系石油樹脂、クマロンインデン樹脂を用いることができる。フェノール系樹脂ではアルキルフェノール樹脂、変性フェノール樹脂を用いることができる。キシレン系樹脂ではキシレン樹脂、変性キシレン樹脂を用いることができる。
【0147】
上記炭化水素樹脂等の樹脂の添加量は適宜選択されるが、上記ポリマー(固形分)100質量部に対して1〜20質量部が好ましく、より好ましくは5〜15質量部である。
【0148】
以上の添加剤の他、本発明の光硬化性組成物は紫外線吸収剤、老化防止剤、染料、加工助剤等を少量含んでいてもよい。また、場合によってはシリカゲル、炭酸カルシウム、シリコーン共重合体の微粒子等の添加剤を少量含んでもよい。
【0149】
本発明で使用される光硬化性組成物からなる光硬化性転写層(光硬化性転写シート)は、例えば、ポリマー(好ましくはTg80℃以上)、光重合性官能基を有する反応性希釈剤(モノマー及びオリゴマー)、所望によりジイソシアネートシアネート及び、所望により他の添加剤とを均一に混合し、押出機、ロール等で混練した後、カレンダー、ロール、Tダイ押出、インフレーション等の製膜法により所定の形状に製膜して用いることができる。支持体を用いる場合は、支持体上に製膜する必要がある。より好ましい本発明の光硬化性接着剤の製膜方法は、各構成成分を良溶媒に均一に混合溶解し、この溶液をシリコーンやフッ素樹脂を精密にコートしたセパレーターにフローコート法、ロールコート法、グラビアロール法、マイヤバー法、リップダイコート法等により支持体上に塗工し、溶媒を乾燥することにより製膜する方法である。
【0150】
また、光硬化性転写層(光硬化性転写シート)の厚さは1〜1200μm、特に5〜500μmとすることが好ましい。特に5〜300μm(好ましくは150μm以下)が好ましい。1μmより薄いと封止性が劣り、透明樹脂基板の凸凹を埋め切れない場合が生じる。一方、1000μmより厚いと記録媒体の厚みが増し、記録媒体の収納、アッセンブリー等に問題が生じるおそれがあり、更に光線透過に影響を与えるおそれもある。
【0151】
本発明で使用される光硬化性転写シートは、一般に、加圧により変形可能な光硬化性組成物からなる光硬化性転写層と、その一方の側又は両側に剥離シートとを有する。さらに、一方の側に設けられた特定の第1剥離シートと他方の側に設けられた第1剥離シートと異なる性質の第2剥離シートとを有することが好ましい。
【0152】
上記第1剥離シートは、一般にヒドロキシル基を有するポリシロキサンと水素化ポリシロキサンとの縮合反応生成物からなる剥離層を有する。即ち、光硬化性転写層の表面と接する、第1剥離シートの第1剥離層は、スタンパの除去が容易となるように剥離性が高く(一般に、剥離性低分子量成分が少ない或いは表面張力が低い)、他方、第2剥離シートの光硬化性層の表面と接する側の表面である第2剥離層は、転写層と基板表面との接着性が要求されるので剥離性がそれほど高くはなっていない(一般に、剥離性低分子量成分が少ない、或いは表面張力がそれほど低くない)。
【0153】
第1剥離シートの剥離層は、上記のようにヒドロキシル基を有するポリシロキサンと水素化ポリシロキサンとの縮合反応生成物からなる層である必要があるが、第2剥離シートの剥離層はどのような層でも良い。第2剥離シートの剥離層は、一般的な剥離層であり、一般に、転写層の反射層との接着性を低下させない層であり、第1剥離シートの剥離層より表面張力が低い層が好ましい。
【0154】
本発明の第1剥離シートの剥離層は、前記のように、ヒドロキシル基を有するポリシロキサン(好ましくはジメチルポリシロキサン)と水素化ポリシロキサン(好ましくはジメチルポリシロキサン)から形成される層である。一般に、これらは、スズ系化合物等の触媒の存在下に、加熱して付加反応させることにより、本発明の剥離層(比較的低い表面張力の層)が得られる。
【0155】
上記第1剥離層は、上記シリコーン樹脂等を溶剤に溶解又は分散させ、リバースロールコート、グラビアコート、バーコート、ドクターブレードコート等により透明フィルムに塗布し、適当な時間加熱して得ることができる。加熱温度は一般に100〜150℃、好ましくは120〜140℃、加熱時間は一般に10〜60秒、好ましくは20〜30秒である。第1剥離層の層厚は、一般に300〜1500nm、500〜800nmが好ましい。層厚が、上記範囲未満では、塗布性の安定性に欠け、均一な塗膜を得るのが困難になる場合がある。一方、上記範囲 を超えて厚塗りにすると、剥離層自体の塗膜密着性、硬化性等が低下する場合がある。
【0156】
一方、第2剥離シートの剥離層は、一般的な剥離層であり、下記のいずれの樹脂からなる層であっても良い。即ち、第2剥離シートの剥離層は、ケイ素原子を含まない熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂から形成されていても、或いは熱可塑性樹脂又は熱硬化性のシリコーン樹脂等から形成されていても良い。本発明の第2剥離シートの剥離層は、反応型のシリコーン樹脂が好ましい。特に、不飽和2重結合基(好ましくはビニル基)を有するポリシロキサン(好ましくはジメチルポリシロキサン)と水素化ポリシロキサン(好ましくはジメチルポリシロキサン)とを用いることが好ましい。不飽和2重結合基を有するポリシロキサンの代わりに、不飽和2重結合基を有するポリアルキレンオキシド等を用いることもできる。
【0157】
第2剥離シートの剥離層は、ケイ素原子を含まない熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂から形成されているか、或いは熱可塑性樹脂又は上記以外の熱硬化性のシリコーン樹脂でもよい。
【0158】
上記第2剥離層は、上記シリコーン樹脂等を溶剤に溶解又は分散させ、リバースロールコート、グラビアコート、バーコート、ドクターブレードコート等により透明フィルムに塗布し、適当な時間加熱して得ることができる。加熱温度は、使用する樹脂の種類により異なる。一般に100〜150℃、好ましくは120〜140℃、加熱時間は一般に10〜60秒、好ましくは20〜30秒である。第2剥離層の層厚は、一般に300〜1500nm、500〜800nmが好ましい。層厚が、上記範囲未満では、塗布性の安定性に欠け、均一な塗膜を得るのが困難になる場合がある。一方、上記範囲 を超えて厚塗りにすると、剥離層自体の塗膜密着性、硬化性等が低下する場合がある。
【0159】
剥離シート(例、第1及び第2剥離シート)のプラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン46、変性ナイロン6T、ナイロンMXD6、ポリフタルアミド等のポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルサルフォン等のケトン系樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン等のサルフォン系樹脂の他に、ポリエーテルニトリル、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリビニルクロライド等の有機樹脂を主成分とする透明樹脂フィルムを用いることができる。これら中で、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートのフィルムが好適に用いることができ、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。厚さは10〜200μmが好ましく、特に30〜100μmが好ましい。
【0160】
本発明で使用される光硬化性転写シートは、加圧により変形可能な光硬化性組成物からなる光硬化性転写層とその両側に上記の第1、第2剥離シートを有するものである場合、この光硬化性転写シートはアニール処理されていることが好ましい。即ち、アニール処理した光硬化性転写シートを用いて、前述の光情報記録媒体を製造することが好ましい。アニール処理は、転写シートを30〜100℃、特に40〜70℃の温度で、1時間〜30日間、特に10時間〜10日間に亘って保管することにより行うことが好ましい。転写シートは、一般にロール状態(巻かれた状態)でアニール処理することが好ましい。このようなアニール処理により、第1剥離シートの剥離層の剥離を促進する成分(離型成分)が、光硬化性転写層への移行が進み、スタンパの除去が容易になると考えられる。
【0161】
表面に微細凹凸を有する基板21の材料としてはとしては、ガラス転移温度が50℃以上の透明の有機樹脂が好ましく、このような支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン46、変性ナイロン6T、ナイロンMXD6、ポリフタルアミド等のポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルサルフォン等のケトン系樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン等のサルフォン系樹脂の他に、ポリエーテルニトリル、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリビニルクロライド等の有機樹脂を主成分とする透明樹脂基板を用いることができる。これら中で、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートが転写性、複屈折の点で優れており、好適に用いることができる。厚さは200〜2000μmが好ましく、特に500〜1500μmが好ましい。
【0162】
有機ポリマーフィルムの材料26としては、ガラス転移温度が50℃以上の透明の有機樹脂が好ましく、このような支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン46、変性ナイロン6T、ナイロンMXD6、ポリフタルアミド等のポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルサルフォン等のケトン系樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン等のサルフォン系樹脂の他に、ポリエーテルニトリル、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリビニルクロライド等の有機樹脂を主成分とする透明樹脂基板を用いることができる。これら中で、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートが転写性、複屈折の点で優れており、好適に用いることができる。厚さは10〜200μmが好ましく、特に50〜100μmが好ましい。
【0163】
こうして得られる本発明に光硬化性転写シートでは、さらに光硬化性転写層の380〜420nmの波長領域の光透過率が70%以上であることが好ましい。
【0164】
光硬化性転写シートは380〜420nm(好ましくは380〜800nm)の波長領域の光透過率が70%以上であり、これはレーザによる読み取り信号の強度低下を防止するためである。さらに380〜420nmの波長領域の光透過率が80%以上であることが好ましい。
【0165】
本発明に光硬化性転写シートは、膜厚精度を精密に制御したフィルム状で提供することができるため、基板及びスタンパとの貼り合わせを容易にかつ精度良くおこなうことが可能である。また、この貼り合わせは、圧着ロールや簡易プレスなどの簡便な方法で20〜100℃で仮圧着した後、光により常温、1〜数十秒で硬化できる上、本接着剤特有の自着力によりその積層体にズレや剥離が起き難いため、光硬化まで自由にハンドリングができるという特徴を有している。
【0166】
本発明の光硬化性転写シートを硬化する場合は、光源として紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、例えば超高圧、高圧、低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザ光等が挙げられる。照射時間は、ランプの種類、光源の強さによって一概には決められないが、0.1秒〜数十秒程度、好ましくは0.5〜数秒である。紫外線照射量は、300mJ/cm2以上が好ましい。
【0167】
また、硬化促進のために、予め積層体を30〜80℃に加温し、これに紫外線を照射してもよい。
【0168】
得られた本発明の基板の微細凹凸表面の反射層或いは硬化した転写層上の反射層は、基板等に反射層を金属蒸着(例えばスパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティング等)することにより形成する。金属としては、アルミニウム、金、銀、これらの合金等を挙げることができる。銀合金が好ましく、特にAgX(XはCu・Pd又はCu・Ndが好ましい)が好ましい。本発明の反射層は、特に、銀合金(AgX(好ましくはAg・Cu・Pd(97.4:0.9:1.7(質量比))[例えばフルヤ金属(株)製のAPC]又はAg・Cu・Nd(98.4:0.7:0.9(質量比))[例えばコベルコ科研(株)製のANC]))等から構成されていることが好ましい。
【0169】
一般に、基板上の半透明反射層は、金属として銀等を用いて形成される。即ち、転写層の硬化層上には、上記反射層より高い反射率の反射層にする必要があり、成分、層厚等が変更される。例えば、銀合金の反射層を層厚を変えることにより反射率を変更することができるので、複数の反射層(低反射層から高反射層まで)を銀合金の反射層の厚さを変えて設けることができる。
【0170】
硬化シートの反射層上に有機ポリマーフィルムを貼り付ける場合、一方に接着剤を塗布し、その上に他方を重ね、硬化させる。接着剤がUV硬化性樹脂の場合はUV照射により、ホットメルト接着剤の場合は、加熱下に塗布し、冷却することにより得られる。
本発明の光情報記録媒体の製造は、通常、上記のように円盤状で処理されるが、シート状で連続的に作成し、最後に円盤状にしてもよい。
【0171】
以下に実施例を示し、本発明についてさらに詳述する。
【実施例】
【0172】
[比較例1]
<光硬化性転写シートの作製>
(ヒドロキシル基を有するポリマー1の作製)
ポリマー配合1
メチルメタクリレート 74.6質量部
n−ブチルメタクリレート 13.2質量部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 12.1質量部
AIBN 5質量部
トルエン 50質量部
酢酸エチル 50質量部
上記の配合の混合物を、穏やかに撹拌しながら、70℃に加熱して重合を開始させ、この温度で8時間撹拌し、側鎖にヒドロキシル基を有するヒドロキシル基を有するポリマー1(アクリル樹脂)を得た。固形分を36質量%に調製した(ポリマー溶液1)。
【0173】
得られたポリマー1は、Tgが90℃であり、重量平均分子量が110000であった。
【0174】
組成物配合1
ヒドロキシル基を有するポリマー溶液1(固形分) 100質量部
ヘキサンジオールジアクリレート 100質量部
(KS−HDDA;日本化薬(株)製)
トリメチロールプロパントリアクリレート 10質量部
(TMP−A;共栄社化学(株)製)
2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート 20質量部
(G−201P;共栄社化学(株)製)
ジイソシアネート(BXX5627、東洋インキ製造(株)製) 1質量部
イルガキュア651(チバガイギー(株)製) 1質量部
リン酸エステル 0.1質量部
(商品名LTP−2;川研ファインケミカル(株)製)
ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ) 0.05質量部
上記配合の混合物を均一に溶解、混練し、剥離シート(幅140mm、長さ300m、厚さ75μm;商品名No.23、藤森工業(株)製)上に、全面塗布し、乾燥厚さ25μmの光硬化性転写層を形成し、シートの反対側に上記と同一の剥離シートを貼付し、ロール状に巻き上げ、光硬化性転写シートのフルエッジタイプのロール(直径260mm)を得た。光硬化性転写層のTgは、−20℃であった。
【0175】
<光情報記録媒体の作製>
光硬化性転写シートのロールを円盤状に打ち抜いた後、一方の剥離シートを除去し、得られた円盤状光硬化性転写シートを、射出成形により成形したピットとしての微細凹凸面を有するポリカーボネート基板(厚さ1.1mm)の微細凹凸面に設けられた厚さ40nmの銀合金(Ag・Cu・Nd(組成比98.4:0.7:0.9(質量))の半透過反射層上に、転写シート面と反射層が接触するように配置し、シリコーンゴム製のローラを用いて2kgの荷重で光硬化性転写シートを押圧し、積層体を形成した(図4の(2)に対応)。
【0176】
ピットとしての微細凹凸表面を有するニッケル製のスタンパ(Ni電鋳品、丸長鍍金(株)製))を用意した。前記の積層体の光硬化性転写シートのもう一方の剥離シートを除去し、その除去された転写シート表面に、上記ニッケル製のスタンパを50℃に温調し、このスタンパの微細凹凸面とシート表面とが接触するように配置して、シリコーンゴム製のローラを用いて0.5Paの圧力でスタンパを押圧し、積層体を形成し、ニッケル製のスタンパの微細凹凸形状を転写シート表面に転写した(図4の(4)に対応)。
【0177】
次に、基板側から、メタルハライドランプ(600mW/cm)を用いて、前記反射層(Ag・Cu・Nd)の半透過反射層を介して、積算光量300mJ/cm2の条件でUV照射し(照射距離20cm、照射時間1.0秒、温度50℃)、転写シートを硬化させた(図4の(5)に対応)。
【0178】
硬化直後に、得られた積層体を突き上げることにより、積層体からスタンパを剥離、除去した。これにより、基板、反射層及び微細凹凸形状が転写された硬化転写層の積層体(光情報記録媒体)を得た。
【0179】
上記同一のニッケル製のスタンパを用いて上記光情報記録媒体を50回作製した。
【0180】
尚、硬化転写層のTgは65℃であった。
【0181】
[実施例1]
比較例2において、ニッケル製のスタンパの代わりに表面に光触媒物質の薄層が形成されたニッケル製のスタンパを用いた以外、同様にして光情報記録媒体を作製した。
【0182】
また、同様に、上記同一のニッケル製のスタンパを用いて上記光情報記録媒体を50回作製した。
(光触媒物質の薄層の形成)
図7に示す対向ターゲット式スパッタリング装置を用い、金属ターゲット72として金属チタンをセットし、スパッタ薄層を形成すべき基板である金型77としてスタンパを設置し、ロータリーポンプ及びメカニカルブースターポンプで粗く真空状態にした後、ターボ分子ポンプを用いて5×10-4Paまで真空排気を行った。その後、アルゴンガスを100cm3/分及び酸素ガスを50cm3/分導入し、排気バルブ(図示せず)の調節により圧力を0.5Paに調整した。ターゲットに4W/cm2の電力密度で電力を印可しスパッタリングを行い、約100nmの酸化チタンの薄膜を形成した。
【0183】
[実施例2]
実施例1において、組成物配合の調製において、配合の混合物を均一に溶解、混練し、下記の第2剥離シート1の剥離層上に、全面塗布し、乾燥厚さ25μmの光硬化性転写層を形成し、シートの反対側に下記の第2剥離シート1をその剥離層と転写層が接触するように貼付し、ロール状に巻き上げ、光硬化性転写シートのフルエッジタイプのロール(直径260mm)を得た。同様にして光情報記録媒体を作製した。
【0184】
また、同様に、実施例1と同一のニッケル製のスタンパを用いて上記光情報記録媒体を50回作製した。
(第2剥離シート1)
第2剥離層1配合(付加型シリコーン)
TPR6700(東芝シリコーン(株)製; 100質量部
CM670(白金触媒、 (株)製) 1質量部
トルエン 499質量部
PETフィルム(幅300mm、長さ300m、厚さ75μm)の表面に、第2剥離層1配合の混合物を、ロール塗布し、その後140℃で30秒間加熱して、付加反応させ、厚さ500nmの第2剥離層1を形成した。
(第1剥離シート1)
第1剥離層1配合(縮合型シリコーン)
XS56−A3075(東芝シリコーン(株)製; 100質量部
YC6831(スズ触媒、東芝シリコーン(株)製) 4質量部
YC6919(スズ触媒、東芝シリコーン(株)製) 2質量部
トルエン 2000質量部
PETフィルム(幅300mm、長さ300m、厚さ75μm)の裏面に、第1剥離層1配合の混合物を、ロール塗布し、その後150℃で10秒間加熱して、付加反応させ、厚さ500nmの第1剥離層1を形成した。
【0185】
(1)光硬化性転写シートの評価
(1−1)ガラス転移温度(Tg)の測定
得られた光硬化性転写シートから両側の剥離シートを除去し、長さ20mm、幅4mm(厚さ25μm)に裁断してサンプルとした。
【0186】
サンプルのTgを、TMA (Thermal Mechanical Analysis) 装置SS6100(SIIナノテクノロジー(株)製)を用いて、サンプル温度:30〜120℃、昇温レート:5℃/分、引張張力:4.9×105Paの条件で測定した。
【0187】
以上の条件で試験を行うと、図9に示すグラフが得られ、安定領域の接線と伸び領域の最大傾斜からの接線との交点をガラス転移温度とした。
【0188】
(2)光情報記録媒体の評価
(2−1)スタンパの剥離力
上記光情報記録媒体の作製を多数回行い、その間における剥離力の変化を調査した。調査は成形1回目、成形10回目、成形25回目、成形50回目における光情報記録媒体のスタンパを剥離するために要する力を、引張試験機を用いて測定した。
(2−2)ガラス転移温度(Tg)の測定
(1−1)と同様にして得られたサンプルに、積算光量300mJ/cm2の条件でUV照射し、(1−1)と同様にしてTgを測定した。
【0189】
積算光量(300mJ/cm2)は、フュージョンUVシステムズジャパン(株)製UV Power Puck(UV−Aバンド測定)を用いて層表面で測定した。
【0190】
得られた試験結果を表1に示す。
【0191】
【表1】

【0192】
上記結果から酸化チタンの薄層が形成されたスタンパを用いた実施例1では、成形回数が増加しても剥離力はほとんど増加せず安定しており、長期に亘って安定した成形が可能であることが分かる。
【0193】
また実施例2の剥離シートとして2種の異なるものを用いた場合は、5gf/25mmが50回目まで維持され、さらに安定した成形が可能であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1】本発明の成形樹脂の製造方法における実施の形態の1例を描いた概略断面図である。
【図2】本発明の微細な凹凸を有する成形樹脂の製造方法における実施の形態の1例を描いた概略断面図である。
【図3】本発明で用いられる光硬化性転写シートの実施形態の代表例を示す断面図である。
【図4】本発明に従う光情報記録媒体の製造方法の一例を示す断面図である。
【図5】本発明に従う光情報記録媒体の一例を示す断面図である。
【図6】本発明に従う光情報記録媒体の別の一例を示す断面図である。
【図7】対向ターゲット式スパッタリングを説明するための該略図である。
【図8】二重真空室方式の装置を用いた押圧法を説明するための該略図である。
【図9】ガラス転移温度(Tg)の決定に用いられるグラフである。
【符号の説明】
【0195】
1 射出成形機
1A ノズル
2 金型
2A 光触媒物質の薄層
3 スプルー
4 スタンパ
4A 光触媒物質の薄層
5 硬化性樹脂層
11 光硬化性転写層
12a 第2剥離シート
12b 第1剥離シート
21 基板
23a,23b,23c,23d 反射層
24 スタンパ
24A 光触媒物質の薄層
11a,11b,11c 硬化した光硬化性転写層
26 有機ポリマーフィルム(カバー層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に光触媒物質の薄層が形成された成形用金型内に、硬化性樹脂を、必要により加熱して、該樹脂が該成形用金型表面上の光触媒物質の薄層に密着するように導入し、成形用金型及び硬化性樹脂からなる構造体を形成する工程;及び
構造体の硬化性樹脂を硬化させ、次いで成形用金型を除去することにより、成形された樹脂を得る工程;
を含む成形樹脂の製造方法。
【請求項2】
硬化性樹脂が光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂である請求項1に記載の成形樹脂の製造方法。
【請求項3】
表面に微細な凹凸パターン及びその表面に光触媒物質の薄層が形成されたスタンパを、加圧により変形可能な硬化性樹脂層に、該スタンパの凹凸パターン表面に形成された光触媒物質の薄層が該樹脂層の表面に接触するように載置し、これらを押圧して該樹脂層の表面が該パターン表面に沿って密着した積層体を形成する工程;及び
該スタンパを有する積層体の樹脂層を硬化させ、次いでスタンパを除去することにより、表面に凹凸パターンを有する成形樹脂を得る工程;
を含む成形樹脂の製造方法。
【請求項4】
硬化性樹脂層の硬化性樹脂が光硬化性樹脂である請求項3に記載の成形樹脂の製造方法。
【請求項5】
光触媒物質の薄層が、ターゲットとして金属酸化物を物理的気相成膜することにより、或いはターゲットとして金属酸化物及び/又は金属を酸素雰囲気下に化学的気相成膜することにより得られる請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形樹脂の製造方法。
【請求項6】
物理的気相成膜の方法が、スパッタリング法、マグネトロン・スパッタリング法、対向ターゲット式スパッタリング及びレーザーアブレーション法から選択される方法である請求項5に記載の成形樹脂の製造方法。
【請求項7】
化学的気相成膜の方法が、スパッタリング法、プラズマ・スパッタリング法、対向ターゲット式スパッタリング法、マグネトロン・スパッタリング法及びイオンプレーティング法から選択される方法である請求項5に記載の成形樹脂の製造方法。
【請求項8】
下記の工程(1)〜(4):
(1)加圧により変形可能な光硬化性組成物からなる光硬化性転写層及び光硬化性転写層の一方又は両方の表面に設けられた剥離シートを含む光硬化性転写シートから、光硬化性転写シートが両面に剥離シートを有する場合に、その一方の剥離シートを除去する工程;
(2)該光硬化性転写シートの光硬化性転写層を、表面に記録ピット及び/又はグルーブとしての微細凹凸表面を有し、さらに該微細凹凸表面の凹凸に沿って反射層が設けられた基板の該反射層上に、該光硬化性転写シートの光硬化性転写層の表面が該反射層の微細凹凸表面に接触するように載置し、これらを押圧して該光硬化性転写シートの表面が該反射層の微細凹凸表面の凹凸に沿って密着された積層体を形成する工程;
(3)該積層体のもう一方の剥離シートを除去し、該除去された光硬化性転写層の表面に、記録ピット及び/又はグルーブとしての微細凹凸表面を有し、且つその微細凹凸表面に光触媒物質の薄層が形成されたスタンパを、光硬化性転写層の表面が微細凹凸表面の光触媒物質の薄層に接触するように載置し、これらを押圧して該転写層の表面が該微細凹凸表面上の薄膜の凹凸に沿って密着した積層体を形成する工程;及び
(4)該スタンパを有する積層体の光硬化性転写層を紫外線照射により硬化させ、次いでスタンパを除去することにより、光硬化性転写層の表面に微細凹凸を設ける工程;
を含むことを特徴とする光情報記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−86619(P2010−86619A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255942(P2008−255942)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】