成膜装置及び成膜方法
【課題】 基材表面に均一な薄膜を安定して形成できる成膜装置及び成膜方法を提供すること。
【解決手段】 チャンバ3内にガス供給部7−1、7−2、7−3が設けられる。チャンバ3内の基材13の同一表面側に電気的にフローティングレベルに設定された電極35−1、35−2が設けられ、電極15−1、15−2に電源17から電力が供給される。チャンバ3内にガス供給部7−1、7−2、7−3から成膜用ガスが供給され、電極35−1、35−2からプラズマが発生し、基材13上に薄膜が形成される。
【解決手段】 チャンバ3内にガス供給部7−1、7−2、7−3が設けられる。チャンバ3内の基材13の同一表面側に電気的にフローティングレベルに設定された電極35−1、35−2が設けられ、電極15−1、15−2に電源17から電力が供給される。チャンバ3内にガス供給部7−1、7−2、7−3から成膜用ガスが供給され、電極35−1、35−2からプラズマが発生し、基材13上に薄膜が形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマCVD成膜装置(以下、成膜装置と称する)及びプラズマCVD成膜方法(以下、成膜方法と称する)に係り、特に減圧下において基材表面に均一に薄膜を安定して形成する成膜装置及び成膜方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマCVD法により基材上に薄膜を形成するためには、容量結合型プラズマと誘導結合型プラズマを用いる方法が知られている(非特許文献1)。
【0003】
【非特許文献1】プラズマエレクトロニクス オーム社 菅井秀郎編集 第1版第1刷 平成12年8月25日発行 106ページ
【0004】
本文献106ページ8行目には、容量結合型プラズマは簡単に大口径プラズマを作れることが記載され、ウエハーやガラス等のセラミックス、樹脂板、プラスチックフィルム、金属板、金属箔等の基材に対して薄膜形成を行う分野で、容量結合型プラズマが広く用いられている。
【0005】
本文献、図6.3及び106ページ13行目から14行目には容量結合型プラズマを薄膜形成に用いる場合、プラズマ放電用の2枚の電極を用い、被成膜基材は、これら2枚の電極上に配置され、この状態で成膜が行われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような方法で成膜を行う場合、特に半導体や絶縁性の被成膜基板を電極上に配置することにより、プラズマの電気の流れにくさ、すなわち放電インピータンスが大きくなるという問題があった。この場合、プラズマ放電を立てにくくなったり、プラズマ放電の安定性が悪くなるという問題が生じる。
【0007】
また、放電インピーダンスが大きくなると、同一電力を投入した場合でも放電電圧が上昇し、放電電流は低下する。この結果、成膜速度の低下(生産性低下)、膜応力の増加、基材へのダメージ(電気的なチャージアップの発生、基材が強くエッチングされることによる密着性不良、基材着色発生など)の不具合が生じ、膜品質の低下が問題となる。
【0008】
さらには、基材によって放電インピーダンスが異なるため、形成される膜の膜厚や膜質が異なるという問題が生じ、基材の種類毎に成膜条件を最適化させる必要があった。
以上の問題は、例えばSiO2やTiO2のような絶縁膜を形成する際は、成膜材料の分解性が悪いことに起因して放電インピーダンスが更に大きくなり、成膜が不安定になるという問題がある。
一方で成膜インピーダンスが小さいことが問題となる場合もある。放電インピーダンスが小さい場合は、放電電圧が小さく、放電電流が大きくなり、基材へのイオン打ち込み効果が小さくなり、結果として膜の密着性が不足し、膜剥離を起すことがある。
【0009】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、基材表面に均一かつ良質な薄膜を安定して形成できる成膜装置及び成膜方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために第1の発明は、プラズマCVD法により、減圧下で基材に薄膜を形成する成膜装置であって、チャンバと、前記チャンバ内にガスを供給するガス供給部と、前記チャンバ内で、前記基材の同一表面側に配置され、電気的にフローティングレベルに設置された1組の電極と、前記2つの電極間に電力を供給する電源と、を具備することを特徴とする成膜装置である。
ここで電気的フローティングレベルとは、アースレベルに設置されたチャンバや成膜装置部品とは絶縁性が保たれるように、絶縁性部品や絶縁性コーティングを用い電極が設計、設置されている状態を意味している。電極の絶縁性が確保されているように設計されているにもかかわらず、電極の冷却に必要な冷媒が用いられ、この冷媒や冷媒を循環供給するための配管が若干の導電性を有することに起因してアースレベル(グランドレベル)を基準とし、電極とアースとの間で10kΩ〜1000MΩの抵抗を有している場合も本発明に含まれる。
この成膜装置では、前記1組の電極から構成される複数組の電極が、前記基板の両側に設置されてもよい。
【0011】
前記電極は、基材近傍にプラズマを集中して形成するマグネットを備えてもよい。前記マグネットは、基材表面での水平磁束密度が10ガウスから10000ガウスであり、前記マグネットは、マグネトロン構造を有する。
前記電源は、周波数が10Hzから27.12MHzが望ましい。前記電源は、投入電力制御または、インピーダンス制御等により制御される。
【0012】
前記基材は、電気的にアースレベルに設置されてもよく、電気的にフローティングレベルに設置されてもよい。また、前記基材が電気的にフローティングレベルの場合、前記基材に一定の直流電圧を印加してもよい。
前記ガス供給部は、前記基材の前記電極側に取り付けられ、前記基材表面に向けてガスを供給する。前記ガス供給部は、電気的にフローティングレベルである。
【0013】
前記チャンバは、成膜室と排気室とを有する構成としてもよい。前記排気室の真空度は、前記成膜室成膜時の真空度よりも10倍以上10000倍以下の範囲で高いことが望ましい。
また成膜装置は、基材搬送機構を更に具備してもよい。この場合、基材は、絶縁性のトレー、キャリア等の基材保持部品に載置される。また成膜装置は、前記チャンバに隣接するロードロック室を備えてもよい。
【0014】
第2の発明は、プラズマCVD法により、減圧下で基材に薄膜を形成する成膜方法であって、チャンバ内にガスを供給し、前記チャンバ内で、前記基材の同一表面側に配置され、電気的にフローティングレベルに設置された1組の電極に電力を供給してプラズマを発生させ、前記基材上に薄膜を形成することを特徴とする成膜方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば基材を電極間に置いて成膜しないため、プラズマ放電中に電気的にカップリングされず、放電のインピーダンス上昇を防ぐことが可能となる。この結果、放電開始電圧の低減により、プラズマ放電が立ちやすくなる、放電維持電圧の低減により、安定してプラズマ放電が可能となるなどの利点がある。また放電インピーダンスが上昇しないことから、プラズマCVD成膜においては成膜速度の向上(生産性向上)、膜応力の低減、基材へのダメージ低減(電気的なチャージアップの発生抑制、基材エッチング低減による密着性向上、基材着色低減)を図ることが可能となる。さらに、基材によるインピーダンス変動を考慮する必要がなくなるため、基材の種類毎に成膜条件を最適化する必要がなくなる。また、電極の配置や形状により、必要に応じてインピーダンスの大きさを調整することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態に係る成膜装置及び成膜方法について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る成膜装置1の概略構成を示す図である。チャンバ3内に成膜室4が形成され、成膜室4内にガス供給部7−1、7−2、7−3が設けられる。ガス供給部7−1、7−2、7−3は供給ガス種ごとに流量制御器8−1、8−2、8−3を介してガス貯留部5−1、5−2、5−3と接続される。ガス貯留部5−1、5−2、5−3は成膜用ガスを保持しており、ガス貯留部5−1は、例えば成膜原料であるTEOS(テトラエトキシシランSi(OC2H5)4)を貯留し、ガス貯留部5−2は分解性の酸化ガスである酸素(O2)を貯留し、ガス貯留部5−3は放電用イオンガスであるアルゴン(Ar)を貯留する。
【0017】
チャンバ3内で支持部9に基材ホルダ11が設けられ、基材ホルダ11上に基材13が保持される。図示してはいないが、成膜時に基板を冷却または加熱し、一定温度とすることを目的として、基板ホルダ11内部および支持部9に冷媒や熱媒を循環させるための温度調節媒体用配管を設けてもよい。この基材13としては、例えば、ウエハー、ガラス等のセラミックス、樹脂板、プラスチックフィルム、金属板、金属箔、紙、不織布、繊維等である。
【0018】
この基材13の表面側に1対の電気的にフローティングレベルに設置された電極35−1、35−2を有する電極ユニット15−1、15−2が設置され、この電極35−1、35−2は一定の周波数で電力を印加可能な電源17に接続される。電源17から電力が供給されて基材13に向けてプラズマ16を発する。チャンバ3には、圧力調整バルブ19を介して真空排気ポンプ21が設けられる。
【0019】
図2は電極ユニット15−1の側面図、図3は図2のA方向矢視図である。
支持台31に絶縁性シールド板33が設けられ、この絶縁性シールド板33に電極35が設けられる。電極35には電力供給配線37が設けられ、電極35の内部に温度調節媒体用配管39が設けられる。電極ユニット15−2も同一の構造体を用いることが可能である。また通常、組にして使用する電極および電極ユニットは、同一サイズ、同一構造体を用いるのが好適である。
【0020】
電力供給配線37は電源17に接続され、電源17から電力が供給されると電極35からプラズマ16が発生する。温度調節媒体用配管39内部には冷却水等の温度調節媒体が流れ、電極35等を冷却する。
【0021】
ガス供給部7−1、7−2、7−3はその噴出口が基材13表面に向けられるように配置される。このため、基材13表面に均一に成膜用ガスを拡散、供給させることができ、基材13の大面積の部分に均一な成膜を行うことができる。
【0022】
電源17は、その周波数が10Hzから27.12MHzである。10Hz以上の周波数で成膜原料の分解性が良好となり、プラズマ放電および成膜が可能となる一方、27.12MHzよりも高い周波数では電源やそのマッチング回路が高価になり装置コストが高くなる。
さらに好ましくは10kHz〜500kHz、13.56MHz、27.12MHzが好ましい。
【0023】
10kHz〜500kHzの成膜用電源を用いた場合は、成膜材料が成膜のために必要な分解を起こす効率が高く、基材13への成膜材料打ち込み効果が高いため良質な膜が得られる。また、13.56MHz、27.12MHzでは成膜材料の成膜に必要な分解を起こす分解効率が更に高まり、ガスの反応性が高くなり、緻密で密着性の高い良質な成膜が可能となる。これら電源は高周波数帯の中でも、産業上利用を許容された周波数であるため、同周波数電源は多数市販化されていて、安価であるという利点がある。
【0024】
電源17の制御方法としては、投入電力制御または放電電圧値を放電電流値で割り算した電気の流れにくさを示す放電インピーダンスを制御する、インピーダンス制御方式がある。投入電力制御では電源17の成膜投入電力を一定となるようにし、プラズマ放電を安定化させながら成膜を行え、安定的、簡便、安価に成膜を行うことができる。
【0025】
インピーダンス制御では、応答性が速く、長時間の成膜におけるインピーダンス変化が生じた場合(例えば放電によりチャンバ3の内壁が温まることで放出し始める水分の影響により、CVD成膜ガスの組成が変化し、結果としてインピーダンスが変化したような場合)、これを一定に維持する効果がある。
【0026】
また、電源17の安定成膜のための制御方法として、光学的手法を用いてもよい。たとえば、プラズマエミッションモニタを設置し、プラズマ中での特定元素の発光強度をモニタし、その発光強度を一定とするためのプロセス制御を行ってもよい。この場合のプロセス制御方法としては、成膜原料ガス、分解性ガス、酸化ガス、放電ガス、イオン化ガスなどの供給ガス量を制御したり、成膜ガス量や添加ガス量を制御したり、成膜圧力、基材温度等の成膜条件を制御してもよい。
【0027】
基材13は電気的にアースレベルに設置してもよい。基材13をアースレベルに設置した場合、基材13表面に蓄積された帯電電荷が、基材ホルダ11を伝わりアースレベルに開放され、結果として安定した成膜が可能となる。
この場合、基材ホルダ11やホルダ支持体に金属製の導電性材料を用いることで実現できる。
【0028】
また、基材13は電気的にフローティングレベル即ち絶縁電位に設置してもよい。基材13の電位をフローティングレベルとすることで電力の漏れを防ぐことができ、成膜投入電力を高くすることができ、且つその成膜への利用効率も高いものとなる。
【0029】
ここで電気的フローティングレベルとは、アースレベルに設置されたチャンバ3や他の成膜装置部品とは絶縁性が保たれるように、絶縁性部品や絶縁性コーティングを用い電極が設計、設置されている状態を意味している。基板ホルダ11の絶縁性が確保されているように設計されているにもかかわらず、基材13および基板ホルダ11の冷却または加熱に必要な冷媒や熱媒が用いられ、この冷媒や熱媒、これら媒体を循環供給するための配管が若干の導電性を有することに起因してアースレベル(グランドレベル)を基準として、基材13とアースまたは基板ホルダ11とアース間で10kΩ〜1000MΩの抵抗を有している場合も本発明に含まれる。
【0030】
具体的には、基材ホルダ11や基材ホルダ支持体に絶縁性、耐プラズマ性及び耐熱性を有するセラミックス、マイカ、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂のような絶縁性材料を用いる方法、または基材ホルダ、基材ホルダ支持体の表面に前記セラミックス、マイカ、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂からなる表面処理を施した材料を用いる方法、チャンバ3と基材ホルダ11との間に前記絶縁性のセラミックス、マイカ、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂からなる部材を挿入する方法があげられる。
セラミックス材料としては、酸化アルミや酸化珪素のような無機酸化膜、窒化アルミ、窒化珪素、窒化チタン、窒化クロムのような無機窒化膜、酸窒化アルミ、酸窒化珪素、酸窒化チタン、酸窒化クロムのような無機酸窒化膜が上げられる。
【0031】
ガス供給部7−1、7−2、7−3は電気的にフローティングレベルとしてもよい。この場合、ガス供給部7−1、7−2、7−3に成膜電力の漏れを防ぐことができ、成膜投入電力を高くすることができ、且つその成膜への利用効率も高いものとなる。
【0032】
また、ガス供給部7−1、7−2、7−3においてチャンバ3内にガスが供給される以前に配管供給口で成膜が生じ、供給口を塞ぐことを回避できる。
【0033】
次に、成膜装置1の概略の動作について説明する。基材13を基材ホルダ11上に設置し、真空排気ポンプ21を動作させ、圧力調整バルブ19を開き、チャンバ3内成膜室を真空排気する。ガス貯留部5−1、5−2、5−3からそれぞれ流量制御器8−1、8−2、8−3により流量制御しながら成膜用ガスを供給し、均一に混合した後、成膜室内のガス供給部7−1、7−2、7−3へ導き、基材3へ向けて均一に成膜用ガスを噴出させる。圧力調整バルブ19の開度を調整し、成膜室内を所望の真空度に設定する。通常、本プラズマCVD成膜装置および成膜方法においては、安定してプラズマを形成し、所望の十分な緻密性と密着性を有する膜を形成するためには、成膜室の成膜圧力(真空度)を圧力調整バルブ19の開度を調整し、0.1Paから100Paの間の真空度に設定、維持して成膜を行う。
電源17から電極35−1、35−2に一定周波数で電力を供給し、電極35−1、35−2から基材13に向けてプラズマ16が発せられ、基材13上に薄膜が形成される。成膜時に発生した副生成物は真空排気ポンプ21により排気される。
【0034】
このように第1の実施の形態によれば、電極35−1、35−2が基材13の同一面側に配置されて、成膜が行われる。
【0035】
本発明によれば、基材を電極上に置いて成膜せず、電気的にカップリングされなくなるため、プラズマ放電のインピーダンス上昇を防ぐことができ、容易にプラズマ形成が可能となり、かつ長時間安定して放電およびプラズマCVD成膜を行うことが可能となる。また、放電インピーダンスが上昇しないことから、プラズマCVD成膜においては成膜速度の向上(生産性向上)、膜応力の低減、基材へのダメージ低減(電気的なチャージアップの発生抑制、基材エッチング低減による密着性向上、基材着色低減)をはかることが可能となる。
【0036】
さらに基材によるインピーダンスを考慮する必要がなくなるため、基材の種類毎に成膜条件を最適化する必要がなくなる。
また、電極の配置や形状により、必要に応じてインピーダンスの大きさを調整することが可能となる。先に放電インピーダンスが大きくなる場合の不具合を説明したが、一方で成膜インピーダンスが小さいことが問題となる場合もある。放電インピーダンスが小さい場合は、放電電圧が小さく、放電電流が大きくなり、基材へのイオン打ち込み効果が小さくなり、結果として膜の密着性が不足し、膜剥離を起こすことがある。このような場合、具体的には対になって設置されている電極35−1と電極35−2の距離を広げることで放電インピーダンスは増加する。この結果、印加電力一定の場合、成膜の放電電圧は大きく、放電電流は小さくなり、結果としてイオン打ち込み効果が高まり、密着性の高い膜を形成することが可能となる。
反対に電極35−1と電極35−2の距離を狭めることで、放電インピーダンスは減少し、印加電力一定の場合、放電電圧は小さく、放電電流は大きくなり、成膜速度の向上(生産性向上)、膜応力の低減、基材へのダメージ低減(電気的なチャージアップの発生抑制、基材エッチング低減による密着性向上、基材着色低減)を図ることが可能となる。
このように、本発明により、放電インピーダンスを最適とすることが可能となり、基材13へのイオン打ち込み効果を調整し、膜の密着性を高めたり、基材へのダメージを低減し、良質な膜の形成が可能となる。
【0037】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る成膜装置101について説明する。
図4は、成膜装置101の概略構成を示すもので、チャンバ103内に隔壁105が設けられ、隔壁105により成膜室107と排気室109が形成される。
ガス供給部113−1、113−2、113−3は供給ガス種ごとに流量制御器114−1、114−2、114−3を介してガス貯留部111−1、111−2、111−3に接続され、ガス貯留部から111−1、111−2、111−3から個々に流量制御された成膜用ガスが供給される。
【0038】
チャンバ103に設けられた支持部115には電気的絶縁性部品からなるカップリング部117が設けられ、この支持部115に基材ホルダ119が設けられる。基材ホルダ119は基材121を支持する。
チャンバ103内に、電気的にフローティングレベルに設置された電極149−1、149−2を有する電極ユニット123−1、123−2が設けられ、この電極149−1、149−2は電源125に接続される。
【0039】
排気室109側に圧力調整バルブ129−1を介して真空排気ポンプ131−1が設けられ、成膜室107側に圧力調整バルブ129−2を介して真空排気ポンプ131−2が設けられる。
【0040】
図5は電極ユニット123−1、123−2の側面図、図6は図5のB方向の矢視図、図7は、図6のC−C断面図である。
電極ユニット123−1、123−2のマグネット構造はマグネトロン構造となっている。図5、図6、図7に示すように、マグネットケース141内に絶縁性スペーサ142、ベースプレート143が設けられ、このベースプレート143にマグネット145が設けられる。マグネットケース141に絶縁性シールド板147が設けられ、この絶縁性シールド板147に電極149が取り付けられる。従ってマグネットケース141と電極149は電気的に絶縁されており、マグネットケース141をチャンバ103内に設置、固定しても電極149は電気的にフローティングレベルとすることが可能である。電極149に電力供給配線151が接続され、電力供給配線151は電源125に接続される。また、電極149内部には電極149及びマグネット145冷却のための温度調節媒体用配管153が設けられる。
【0041】
成膜装置101ではチャンバ103内に隔壁105が設けられ、チャンバ103内が成膜室107と排気室109に分けられる。そして、成膜室107と排気室109内の圧力は異なる。成膜室107で安定してプラズマを形成し、所望の十分な緻密性と密着性を有する膜を形成するためには、成膜室の成膜圧力(真空度)は圧力調整バルブ131−2の開度を調整することにより、0.1Paから100Paの間の真空度に設定、維持され、成膜が行われる。排気室109は成膜室107の成膜時真空度の10倍以上10000倍以下とすることが好ましい。
このように、成膜室107と排気室109に分けることにより成膜時に発生した副生成物を基材121表面近傍から効率よく排気できる。
副生成物を効率よく排気するためには、成膜室107に対して排気室109は少なくとも10倍以上高い真空度であることが必要である。また排気室109の真空度を成膜室107よりも10000倍高いものとするには高価な排気系が必要となるため、10000倍以下とするのが好ましい。
【0042】
成膜装置101では図6、図7で示すように、電極ユニット123−1、123−2の内部で電極149−1、149−2の背面にマグネット145を備える。マグネット145は電極149からのプラズマが基材121表面に集中して形成するために設置される。
【0043】
マグネット145を設けることにより、基材121表面近傍での反応性が高くなり、良質な膜を高速で形成できる。
電極ユニット123−1、123−2のマグネット145は基材121の表面位置での水平磁束密度が10ガウスから10000ガウスである。基材121表面での水平磁束密度が10ガウス以上であれば、基材121表面近傍での反応性を十分高めることが可能となり、良質な膜を高速で形成することができる。
【0044】
一方、基材121表面での水平磁束密度を10000ガウスよりも高くするには高価な磁石または磁場発生機構が必要となる。
電極123−1、123−2のマグネット145の配置構造はマグネトロン構造である。マグネトロン構造とすることでプラズマCVD成膜時に形成されるイオンや電子はこのマグネトロン構造に従って連続的に回転運動を行う。
【0045】
このため、例えば300mm□以上の大面積の基材121に対してプラズマCVD成膜をする場合においても電極ユニット123−1、123−2表面全体にわたり、電子、イオン等の成膜材料の分解生成物が均一に拡散され、基材121が大面積の場合にも均一且つ安定した成膜が可能となる。
【0046】
また、電極149やマグネット145など電極ユニット123に局所的に偏って熱電子やイオンが蓄積することがなくなり、構成部材の耐熱性が低くてよくなるため、安価に部品を作製できるほか、熱変形、構造物の穴あきや割れ発生といった不具合発生を抑えることが可能となる。
電極149、149−1、149−2は、電力を投入するために導電性でプラズマ耐性に優れ、耐熱性を有し、冷却水による冷却効率が高く(熱伝導率が高く)、非磁性材料で加工性に優れた材料を用い作製することが好ましい。具体的には、アルミニウム、銅、ステンレスが好適に用いられる。
絶縁シールド板147は、絶縁性で、プラズマ耐性に優れ、耐熱性を有し、加工性に優れた材料を用いることが好ましい。具体的には、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂が好適に用いられる。
【0047】
成膜装置101における電極149−1、149−2、基材121の電位レベル等については成膜装置1と同様にすることができる。
【0048】
ここで基材121が電気的にフローティングレベルの場合、基材121に直流電位をかけ、基材121へのイオン化された成膜材料の打ち込み効果を強めたり、弱めたりする機構を設置することが可能である。イオン化打ち込み効果を高めるためには、基材121にマイナス10Vからマイナス3000Vのマイナス電位を与え、イオン化打ち込み効果を弱めるためには、基材121にプラス10Vからプラス3000Vのプラス電位を与えることが好ましい。
カップリング部117はこのように基材121に対して電位をかける場合に必要な機構で、基材ホルダ119を電気的にフローティングレベルとするためにチャンバ103と基材121と基材ホルダ119間に設置される電気的絶縁性の部材である。
【0049】
また、設備的には高額複雑となるが、基材121に10Hz〜27.12MHzの周波数を有する交流電力を与えてもよい。なお、このように基材121に直流電位をかけることは他の実施の形態において行ってもよい。
【0050】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る成膜装置201について説明する。
図8は成膜装置201を示すもので、この成膜装置201では基材213の両側に電極230−1、230−2、230−3、230−4を配置したものである。
【0051】
チャンバ203内にガス供給部207−1、207−2、207−3、207−4、207−5、207−6が設けられる。ガス供給部207−1、207−2、207−3は供給ガス種ごとに流量制御器240−1、240−2、240−3を介してガス貯留部205−1、205−2、205−3に接続され、ガス供給部207−4、207−5、207−6は供給ガス種ごとに流量制御器240−4、240−5、240−6を介してガス貯留部205−4、205−5、205−6に接続される。
【0052】
ガス貯留部205−1、205−2、205−3、205−4、205−5、205−6は成膜用ガスを貯留する。すなわち、ガス貯留部205−1、205−2、205−3は図1のガス貯留部5−1、5−2、5−3に相当する。同様に、ガス貯留部205−4、205−5、205−6はガス貯留部5−1、5−2、5−3に相当する。
【0053】
基材213は基材ホルダ211に保持される。基材213の片面側に電極230−1、230−2が設けられ、この電極230−1、230−2は電源217−1に接続される。
また、基材213の反対の面側に電極230−3、230−4が設けられ、電極230−3、230−4は電源217−2に接続される。
これら電極230−1、230−2、230−3、230−4の電極表面は電気的にフローティングレベルに設置されている。
【0054】
次に、成膜装置201の概略動作について説明する。
ガス貯留部205−1、205−2、205−3に貯留された成膜用ガスは流量制御器240−1、240−2、240−3により個別に流量調整されて、ガス供給部207−1、207−2、207−3から基材213の片面側に向けて放出される。電源217−1から電極230−1、230−2に電力が供給され、プラズマ216が発生する。
【0055】
同様に、ガス供給部207−4、207−5、207−6から成膜用ガスが基材213の反対の面側に向けて放出される。安定してプラズマを形成し、所望の十分な緻密性と密着性を有する膜を形成するためには、チャンバ内成膜室の成膜圧力(真空度)を圧力調整バルブ219の開度を調整し、0.1Paから100Paの間の真空度に設定、維持して成膜を行う。
電源217−2から電極230−3、230−4に電力が供給され、電極230−3、230−4からプラズマ216が発生する。そして、基材213の両面に薄膜が形成される。成膜時の副生成物は真空排気ポンプ221から排出される。
【0056】
成膜装置201では、基材213の両側に電極を1組ずつ設けるので、基材213の両面への成膜が可能となり、基材213の応力緩和が可能となり、良質な薄膜を形成することができる。
【0057】
次に、本発明の第4の実施の形態に係る成膜装置301について説明する。
図9は成膜装置301を示す図である。チャンバ303内に隔壁305が設けられ、チャンバ303内に成膜室307、排気室309が形成される。
【0058】
チャンバ303内にガス供給部313−1、313−2、313−3が設けられる。ガス供給部313−1、313−2、313−3は供給ガス種ごとに流量制御器314−1、314−2、314−3を介して、ガス貯留部311−1、311−2、311−3に接続される。ガス貯留部311−1、311−2、311−3は成膜用ガスを貯留する。
【0059】
チャンバ303内に電極360−1、360−2が電気的フローティングレベルとして設けられ、この電極360−1、360−2は電源325に接続される。
【0060】
チャンバ303内にトレー319の走行用のレール357が設けられる。排気室309側に圧力調整バルブ329−1を介して真空排気ポンプ331−1が設けられ、成膜室307側に圧力調整バルブ329−2を介して真空排気ポンプ331−2が設けられる。
【0061】
真空排気ポンプ331−1は排気室309の排気を行う。真空排気ポンプ331−2は成膜室307側の排気を行う。
チャンバ303にゲートバルブ341−1を介してロードロック室(予備排気室)351−1が設けられる。ロードロック室351−1に圧力調整バルブ353−1を介して真空排気ポンプ355−1が設けられる。
【0062】
また、チャンバ303にゲートバルブ341−2を介してロードロック室(予備排気室)351−2が設けられる。ロードロック室351−2に圧力調整バルブ353−2を介して真空排気ポンプ355−2が設けられる。
これらロードロック室351−1、351−2を設けることにより、大気雰囲気下への基材の出し入れを行う際に、成膜部を有するチャンバ303内部の真空を大気圧に戻すことなく連続して成膜処理を行うことが可能となる。この結果、生産性が高い装置となり、高い真空度を維持できるため、チャンバ303内部に水分吸着を防ぐことができ、良質な膜を形成可能なことなどの利点が得られる。
【0063】
チャンバ303内におけるガス供給部313、電極360等の機能は第1の実施の形態と同様である。
ゲートバルブ341−1はチャンバ303とロードロック室351−1との間の開閉を行う。ゲートバルブ341−2はチャンバ303とロードロック室351−2との間の開閉を行う。
【0064】
ロードロック室351−1には、複数の基材をストック可能とするためにトレー搬送、移動機構を備えている。基材321を載置したトレー319が多数備えられ、これらのトレー319は上下昇降機能を有する保管ラックに保管することができる。真空排気ポンプ351−1はロードロック室351−1内の排気を行う。ロードロック室351−1の真空度がチャンバ303の真空度とほぼ等しくなり圧力差がなくなった状態で、ゲートバルブ341−1の開閉動作が可能となる。
チャンバ303内ではトレー319がレール357上を走行する。
【0065】
ゲートバルブ341−2はチャンバ303とロードロック室351−2の間の開閉を行う。ロードロック室351−2は多数のトレー319を格納でき、トレー319は上下方向に移動可能である。真空排気ポンプ355−2はロードロック室351−2の排気を行う。
【0066】
次に、この成膜装置301の概略動作について説明する。
成膜室307および排気室309を備えたチャンバ303内部は真空排気ポンプ331−1および331−2により連続的に排気され圧力調整バルブ331−1および圧力調整バルブ331−2により、所望の真空度に設定される。
【0067】
大気中で、ロードロック室351−1内に基材321を載置したトレー319をセットする。続いて、真空排気ポンプ355−1を動作させ、圧力調整バルブ353−1を開状態としロードロック室351−1の真空引きを行う。ロードロック室351−1の真空度が、成膜室307を備えるチャンバ303の真空度と同一になった後、ゲートバルブ341−1を開くことが可能となる。このトレー319がレール357上を走行し、トレー319全体がゲートバルブ341−1を通過しチャンバ303に搬送された後、ゲートバルブ341−1は閉じられる。
【0068】
ゲートバルブ341−1が閉じられた後、ガス貯留部311−1、311−2、311−3に貯留された成膜用ガスは個別に設けられた流量制御器314−1、314−2、314−3により所望の流量供給され、これらガスは事前に均一に混合され、ガス供給部313−1、313−2、313−3から基材321側に向けて噴出される。また成膜室307および排気室309は真空排気ポンプ331−1、331−2および圧力調整バルブ329−1、329−2により成膜に適した圧力に設定される。排気室309は成膜室307よりも10倍以上10000倍までの範囲のより高い真空度で成膜が行われる。
トレー319がチャンバ303内のレール357上を走行し、電極360−1、360−2の下の位置に到達する。トレー319は電極360−1、360−2で停止してよいし、一定速度で走行させながら通過させてもよい。また必要膜厚を得るために、トレー319を双方向搬送を繰り返し成膜を行ってもよい。
安定してプラズマを形成し、所望の十分な緻密性と密着性を有する膜を形成するためには、チャンバ内成膜室の成膜圧力(真空度)は圧力調整バルブ329−1の開度を調整し、0.1Paから100Paの間の真空度に設定、維持して成膜を行い、また成膜時に基板表面に生成される副生成物を効率よく排気するため、チャンバ内排気室の圧力(真空度)は圧力調整バルブ329−2の開度を調整し、成膜室圧力の10倍から10000倍高い真空度に設定、維持して成膜を行う。
【0069】
このとき、電源325から電極360−1、360−2に電力が供給され、電極360−1、360−2からプラズマが発生する。そして、基材321上に薄膜が形成される。薄膜が形成された後、電極360−1、360−2に供給された電力の供給を停止し、プラズマ放電を停止する。更に成膜用ガス供給を停止し、圧力調整バルブ329−1、329−2を全開としてチャンバ303内の残留ガスを排気する。
【0070】
被成膜基材を再格納する部位として、ロードロック室351−1または351−2のいずれかを用いることができる。ここではロードロック室351−2に再格納する場合を説明する。あらかじめロードロック351−2室には被成膜基材を再格納するためのスペースを空けておき、真空排気ポンプ355−2を動作させ、圧力調整バルブ353−2を全開としてロードロック室351−2内部を減圧しておく。
【0071】
先に説明の成膜工程が完了し、残留ガスを排気した後、チャンバ303の真空度とロードロック室351−2の真空度を同一にした後、ゲートバルブ341−2を開き、基材トレー319及び被成膜基材をレール357上を搬送させ、ロードロック室351−2の所定の位置に移動させる。基材トレー319がゲートバルブ341−2を通過し、全体がロードロック室351−2に移動した後、ゲートバルブ341−2を閉じる。
【0072】
以上の工程を複数枚の基材321に対して、連続的に行うことも可能である。また全ての基材321に対して成膜処理が完了した後、ロードロック室351−2の真空引きを停止し、大気開放することで基材の取出しが可能となる。
【0073】
第4の実施の形態によれば、チャンバ303の前後に少なくとも1つのロードロック室351−1(または351−2)を備えるので、真空引き工程と成膜工程を分離させることができ、生産性が向上する。
【0074】
また、車輪付きのトレー319がレール357上を走行しつつ、基材321を搬送するので生産性が向上し、基材321の大面積の部分へ均一且つ安定した連続成膜が可能となる。
なお、基材搬送機構としては、レール357上を車輪付きトレー319で搬送させる他、基材の端部を爪で保持し、アーム移動する構造や基材をトレーや枠に積載し、全体をアームで移動する機構等を用いることもできる。
【0075】
なお、トレー319はその表面を絶縁性とし、基材321は電気的にフローティングレベルとすることが好ましい。トレー319を絶縁性とすることで電力の漏れを防ぐことができ、成膜投入電力を高くすることができ、成膜への利用効率も高く、安定した成膜が可能となる。
【0076】
以上、本発明に係る各実施の形態について説明したが、第2の実施の形態から第4の実施の形態において、ガス貯留部、ガス供給部、電源、電極等の機能は、第1の実施の形態と同様である。また電源電圧、電源の制御方法、基材の電位、ガス供給部の電位等も第1の実施の形態と同様にすればよい。さらに電極として、図2、図3に示すもの、図5、図6、図7に示すものを適宜用いてもよい。
【0077】
次に、図4に示す成膜装置101と図10に示す比較例となる成膜装置401を用いて実際に成膜を行った際の実験結果について説明する。
図4に示す成膜装置101において、電極149−1、149−2は前述したように図5、図6、図7に示すマグネトロン構造のマグネット145をセットし、基材121表面での平均水平磁束密度が1000ガウスとなるように設定した。チャンバ103はアースレベルに、基材ホルダ119はテフロン(登録商標)樹脂を介した構造として電気的にフローティングレベルとした。
【0078】
濃度30%のエチレングリコール水溶液を冷媒として冷却水用配管153に供給した。すなわち、基材ホルダ119、電極123−1、123−2に個別に冷媒を循環供給させ、基材ホルダ119を0度に冷却した。このとき、電極123−1と基材ホルダ119の間、電極123−2と基材ホルダ119との間、電極123−1と電極123−2の間の抵抗はそれぞれ1MΩであった。
【0079】
基材121としてシリコンウエハを用意し、基材ホルダ119上にセットした。真空排気ポンプ131−1、131−2より成膜室107、排気室109ともにチャンバ103内を1×10-4Paまで真空引きした。成膜用ガスとしてTEOS(テトラエトキシシランSi(OC2H5)4)を加熱温度120℃で気化してガス状態で供給した。そして、TEOS、酸素、アルゴンを流量制御器(マスフローコントローラー)を用いて流量制御を行いながらそれぞれ20sccm、500sccm、200sccm供給し、均一に混合させた後、基材121上にシャワー状にガスを供給した。
【0080】
次に、真空排気ポンプ131−1、131−2を調整し、成膜室107の圧力を10Pa、排気室109内の圧力を0.5Paの一定圧力となるように調整した。電源125に周波数40kHzの電源(Advanced Energy Industries Inc.製、PEII 10kW)を用い、電極123−1、123−2に3kWの電力を電力制御方式より印加し、成膜時間5分で成膜を行った。この間、平均放電電圧は525Vであった。また、目視により放電のアーキング(異常放電)発生回数をカウントした結果、発生は0回と異常放電なく、安定した成膜が可能なことが判明した。
【0081】
成膜後、チャンバ103内の残留ガスを排気し、基材121を取り出し、分光エリプソメトリー装置(JOBIN YVON社、UVISEL)を用いてウエハー基材上に形成されたSiO2膜の膜厚と屈折率を測定したところ、膜厚315nm、633nmにおける屈折率は1.46と緻密な膜であった。
図11は、この成膜を5回連続で実施した結果を示すもので、図11に示すとおり、再現性の良い結果が得られ、安定した成膜が可能なことが判明した。
【0082】
これに対して比較例として、図10に示す成膜装置401を用意した。この成膜装置401は図4に示す成膜装置101と比較して電源125の片側が基材ホルダ119側に接続されおり、電極123−1、123−2は電気的に等電位に接続されていて、電極123−1、123−2に間の抵抗は0.1Ωであった。
これら以外は、図4に示す装置と全く同様の設定手順で成膜を行った。図12は成膜結果を示す図である。
【0083】
図11と図12を比較すると、図4に示す本発明に係る成膜装置101では、放電電圧が低減され、放電が安定しやすく、放電中のアーキングがほぼ発生せず、良質且つ均一な膜が形成可能となった。また、投入する電力が成膜に有効に用いられることから成膜速度が向上し、膜の屈折率すなわち緻密性の高い良質な膜が形成された。
【0084】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る情報提供システム等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る成膜装置1の構成を示す図
【図2】電極15−1の側面図
【図3】図2のA方向矢視図
【図4】第2の実施の形態に係る成膜装置101の構成を示す図
【図5】電極123−1の側面図
【図6】図5のB方向矢視図
【図7】図6のC−C断面図
【図8】第3の実施の形態に係る成膜装置201の構成を示す図
【図9】第4の実施の形態に係る成膜装置301の構成を示す図
【図10】比較例となる成膜装置401の構成を示す図
【図11】成膜装置101による成膜結果を示す図
【図12】成膜装置401による成膜結果を示す図
【符号の説明】
【0086】
1、101、201、301………成膜装置
3、103、203、303………チャンバ
5、111、205、311………ガス貯留部
7、113、207、313……ガス供給部
8、114、240、314…………流量制御器
13、121、213、321………基材
15、123、215、323………電極ユニット
17、125、217、325………電源
35、149、230、360………電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマCVD成膜装置(以下、成膜装置と称する)及びプラズマCVD成膜方法(以下、成膜方法と称する)に係り、特に減圧下において基材表面に均一に薄膜を安定して形成する成膜装置及び成膜方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマCVD法により基材上に薄膜を形成するためには、容量結合型プラズマと誘導結合型プラズマを用いる方法が知られている(非特許文献1)。
【0003】
【非特許文献1】プラズマエレクトロニクス オーム社 菅井秀郎編集 第1版第1刷 平成12年8月25日発行 106ページ
【0004】
本文献106ページ8行目には、容量結合型プラズマは簡単に大口径プラズマを作れることが記載され、ウエハーやガラス等のセラミックス、樹脂板、プラスチックフィルム、金属板、金属箔等の基材に対して薄膜形成を行う分野で、容量結合型プラズマが広く用いられている。
【0005】
本文献、図6.3及び106ページ13行目から14行目には容量結合型プラズマを薄膜形成に用いる場合、プラズマ放電用の2枚の電極を用い、被成膜基材は、これら2枚の電極上に配置され、この状態で成膜が行われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような方法で成膜を行う場合、特に半導体や絶縁性の被成膜基板を電極上に配置することにより、プラズマの電気の流れにくさ、すなわち放電インピータンスが大きくなるという問題があった。この場合、プラズマ放電を立てにくくなったり、プラズマ放電の安定性が悪くなるという問題が生じる。
【0007】
また、放電インピーダンスが大きくなると、同一電力を投入した場合でも放電電圧が上昇し、放電電流は低下する。この結果、成膜速度の低下(生産性低下)、膜応力の増加、基材へのダメージ(電気的なチャージアップの発生、基材が強くエッチングされることによる密着性不良、基材着色発生など)の不具合が生じ、膜品質の低下が問題となる。
【0008】
さらには、基材によって放電インピーダンスが異なるため、形成される膜の膜厚や膜質が異なるという問題が生じ、基材の種類毎に成膜条件を最適化させる必要があった。
以上の問題は、例えばSiO2やTiO2のような絶縁膜を形成する際は、成膜材料の分解性が悪いことに起因して放電インピーダンスが更に大きくなり、成膜が不安定になるという問題がある。
一方で成膜インピーダンスが小さいことが問題となる場合もある。放電インピーダンスが小さい場合は、放電電圧が小さく、放電電流が大きくなり、基材へのイオン打ち込み効果が小さくなり、結果として膜の密着性が不足し、膜剥離を起すことがある。
【0009】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、基材表面に均一かつ良質な薄膜を安定して形成できる成膜装置及び成膜方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために第1の発明は、プラズマCVD法により、減圧下で基材に薄膜を形成する成膜装置であって、チャンバと、前記チャンバ内にガスを供給するガス供給部と、前記チャンバ内で、前記基材の同一表面側に配置され、電気的にフローティングレベルに設置された1組の電極と、前記2つの電極間に電力を供給する電源と、を具備することを特徴とする成膜装置である。
ここで電気的フローティングレベルとは、アースレベルに設置されたチャンバや成膜装置部品とは絶縁性が保たれるように、絶縁性部品や絶縁性コーティングを用い電極が設計、設置されている状態を意味している。電極の絶縁性が確保されているように設計されているにもかかわらず、電極の冷却に必要な冷媒が用いられ、この冷媒や冷媒を循環供給するための配管が若干の導電性を有することに起因してアースレベル(グランドレベル)を基準とし、電極とアースとの間で10kΩ〜1000MΩの抵抗を有している場合も本発明に含まれる。
この成膜装置では、前記1組の電極から構成される複数組の電極が、前記基板の両側に設置されてもよい。
【0011】
前記電極は、基材近傍にプラズマを集中して形成するマグネットを備えてもよい。前記マグネットは、基材表面での水平磁束密度が10ガウスから10000ガウスであり、前記マグネットは、マグネトロン構造を有する。
前記電源は、周波数が10Hzから27.12MHzが望ましい。前記電源は、投入電力制御または、インピーダンス制御等により制御される。
【0012】
前記基材は、電気的にアースレベルに設置されてもよく、電気的にフローティングレベルに設置されてもよい。また、前記基材が電気的にフローティングレベルの場合、前記基材に一定の直流電圧を印加してもよい。
前記ガス供給部は、前記基材の前記電極側に取り付けられ、前記基材表面に向けてガスを供給する。前記ガス供給部は、電気的にフローティングレベルである。
【0013】
前記チャンバは、成膜室と排気室とを有する構成としてもよい。前記排気室の真空度は、前記成膜室成膜時の真空度よりも10倍以上10000倍以下の範囲で高いことが望ましい。
また成膜装置は、基材搬送機構を更に具備してもよい。この場合、基材は、絶縁性のトレー、キャリア等の基材保持部品に載置される。また成膜装置は、前記チャンバに隣接するロードロック室を備えてもよい。
【0014】
第2の発明は、プラズマCVD法により、減圧下で基材に薄膜を形成する成膜方法であって、チャンバ内にガスを供給し、前記チャンバ内で、前記基材の同一表面側に配置され、電気的にフローティングレベルに設置された1組の電極に電力を供給してプラズマを発生させ、前記基材上に薄膜を形成することを特徴とする成膜方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば基材を電極間に置いて成膜しないため、プラズマ放電中に電気的にカップリングされず、放電のインピーダンス上昇を防ぐことが可能となる。この結果、放電開始電圧の低減により、プラズマ放電が立ちやすくなる、放電維持電圧の低減により、安定してプラズマ放電が可能となるなどの利点がある。また放電インピーダンスが上昇しないことから、プラズマCVD成膜においては成膜速度の向上(生産性向上)、膜応力の低減、基材へのダメージ低減(電気的なチャージアップの発生抑制、基材エッチング低減による密着性向上、基材着色低減)を図ることが可能となる。さらに、基材によるインピーダンス変動を考慮する必要がなくなるため、基材の種類毎に成膜条件を最適化する必要がなくなる。また、電極の配置や形状により、必要に応じてインピーダンスの大きさを調整することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態に係る成膜装置及び成膜方法について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る成膜装置1の概略構成を示す図である。チャンバ3内に成膜室4が形成され、成膜室4内にガス供給部7−1、7−2、7−3が設けられる。ガス供給部7−1、7−2、7−3は供給ガス種ごとに流量制御器8−1、8−2、8−3を介してガス貯留部5−1、5−2、5−3と接続される。ガス貯留部5−1、5−2、5−3は成膜用ガスを保持しており、ガス貯留部5−1は、例えば成膜原料であるTEOS(テトラエトキシシランSi(OC2H5)4)を貯留し、ガス貯留部5−2は分解性の酸化ガスである酸素(O2)を貯留し、ガス貯留部5−3は放電用イオンガスであるアルゴン(Ar)を貯留する。
【0017】
チャンバ3内で支持部9に基材ホルダ11が設けられ、基材ホルダ11上に基材13が保持される。図示してはいないが、成膜時に基板を冷却または加熱し、一定温度とすることを目的として、基板ホルダ11内部および支持部9に冷媒や熱媒を循環させるための温度調節媒体用配管を設けてもよい。この基材13としては、例えば、ウエハー、ガラス等のセラミックス、樹脂板、プラスチックフィルム、金属板、金属箔、紙、不織布、繊維等である。
【0018】
この基材13の表面側に1対の電気的にフローティングレベルに設置された電極35−1、35−2を有する電極ユニット15−1、15−2が設置され、この電極35−1、35−2は一定の周波数で電力を印加可能な電源17に接続される。電源17から電力が供給されて基材13に向けてプラズマ16を発する。チャンバ3には、圧力調整バルブ19を介して真空排気ポンプ21が設けられる。
【0019】
図2は電極ユニット15−1の側面図、図3は図2のA方向矢視図である。
支持台31に絶縁性シールド板33が設けられ、この絶縁性シールド板33に電極35が設けられる。電極35には電力供給配線37が設けられ、電極35の内部に温度調節媒体用配管39が設けられる。電極ユニット15−2も同一の構造体を用いることが可能である。また通常、組にして使用する電極および電極ユニットは、同一サイズ、同一構造体を用いるのが好適である。
【0020】
電力供給配線37は電源17に接続され、電源17から電力が供給されると電極35からプラズマ16が発生する。温度調節媒体用配管39内部には冷却水等の温度調節媒体が流れ、電極35等を冷却する。
【0021】
ガス供給部7−1、7−2、7−3はその噴出口が基材13表面に向けられるように配置される。このため、基材13表面に均一に成膜用ガスを拡散、供給させることができ、基材13の大面積の部分に均一な成膜を行うことができる。
【0022】
電源17は、その周波数が10Hzから27.12MHzである。10Hz以上の周波数で成膜原料の分解性が良好となり、プラズマ放電および成膜が可能となる一方、27.12MHzよりも高い周波数では電源やそのマッチング回路が高価になり装置コストが高くなる。
さらに好ましくは10kHz〜500kHz、13.56MHz、27.12MHzが好ましい。
【0023】
10kHz〜500kHzの成膜用電源を用いた場合は、成膜材料が成膜のために必要な分解を起こす効率が高く、基材13への成膜材料打ち込み効果が高いため良質な膜が得られる。また、13.56MHz、27.12MHzでは成膜材料の成膜に必要な分解を起こす分解効率が更に高まり、ガスの反応性が高くなり、緻密で密着性の高い良質な成膜が可能となる。これら電源は高周波数帯の中でも、産業上利用を許容された周波数であるため、同周波数電源は多数市販化されていて、安価であるという利点がある。
【0024】
電源17の制御方法としては、投入電力制御または放電電圧値を放電電流値で割り算した電気の流れにくさを示す放電インピーダンスを制御する、インピーダンス制御方式がある。投入電力制御では電源17の成膜投入電力を一定となるようにし、プラズマ放電を安定化させながら成膜を行え、安定的、簡便、安価に成膜を行うことができる。
【0025】
インピーダンス制御では、応答性が速く、長時間の成膜におけるインピーダンス変化が生じた場合(例えば放電によりチャンバ3の内壁が温まることで放出し始める水分の影響により、CVD成膜ガスの組成が変化し、結果としてインピーダンスが変化したような場合)、これを一定に維持する効果がある。
【0026】
また、電源17の安定成膜のための制御方法として、光学的手法を用いてもよい。たとえば、プラズマエミッションモニタを設置し、プラズマ中での特定元素の発光強度をモニタし、その発光強度を一定とするためのプロセス制御を行ってもよい。この場合のプロセス制御方法としては、成膜原料ガス、分解性ガス、酸化ガス、放電ガス、イオン化ガスなどの供給ガス量を制御したり、成膜ガス量や添加ガス量を制御したり、成膜圧力、基材温度等の成膜条件を制御してもよい。
【0027】
基材13は電気的にアースレベルに設置してもよい。基材13をアースレベルに設置した場合、基材13表面に蓄積された帯電電荷が、基材ホルダ11を伝わりアースレベルに開放され、結果として安定した成膜が可能となる。
この場合、基材ホルダ11やホルダ支持体に金属製の導電性材料を用いることで実現できる。
【0028】
また、基材13は電気的にフローティングレベル即ち絶縁電位に設置してもよい。基材13の電位をフローティングレベルとすることで電力の漏れを防ぐことができ、成膜投入電力を高くすることができ、且つその成膜への利用効率も高いものとなる。
【0029】
ここで電気的フローティングレベルとは、アースレベルに設置されたチャンバ3や他の成膜装置部品とは絶縁性が保たれるように、絶縁性部品や絶縁性コーティングを用い電極が設計、設置されている状態を意味している。基板ホルダ11の絶縁性が確保されているように設計されているにもかかわらず、基材13および基板ホルダ11の冷却または加熱に必要な冷媒や熱媒が用いられ、この冷媒や熱媒、これら媒体を循環供給するための配管が若干の導電性を有することに起因してアースレベル(グランドレベル)を基準として、基材13とアースまたは基板ホルダ11とアース間で10kΩ〜1000MΩの抵抗を有している場合も本発明に含まれる。
【0030】
具体的には、基材ホルダ11や基材ホルダ支持体に絶縁性、耐プラズマ性及び耐熱性を有するセラミックス、マイカ、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂のような絶縁性材料を用いる方法、または基材ホルダ、基材ホルダ支持体の表面に前記セラミックス、マイカ、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂からなる表面処理を施した材料を用いる方法、チャンバ3と基材ホルダ11との間に前記絶縁性のセラミックス、マイカ、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂からなる部材を挿入する方法があげられる。
セラミックス材料としては、酸化アルミや酸化珪素のような無機酸化膜、窒化アルミ、窒化珪素、窒化チタン、窒化クロムのような無機窒化膜、酸窒化アルミ、酸窒化珪素、酸窒化チタン、酸窒化クロムのような無機酸窒化膜が上げられる。
【0031】
ガス供給部7−1、7−2、7−3は電気的にフローティングレベルとしてもよい。この場合、ガス供給部7−1、7−2、7−3に成膜電力の漏れを防ぐことができ、成膜投入電力を高くすることができ、且つその成膜への利用効率も高いものとなる。
【0032】
また、ガス供給部7−1、7−2、7−3においてチャンバ3内にガスが供給される以前に配管供給口で成膜が生じ、供給口を塞ぐことを回避できる。
【0033】
次に、成膜装置1の概略の動作について説明する。基材13を基材ホルダ11上に設置し、真空排気ポンプ21を動作させ、圧力調整バルブ19を開き、チャンバ3内成膜室を真空排気する。ガス貯留部5−1、5−2、5−3からそれぞれ流量制御器8−1、8−2、8−3により流量制御しながら成膜用ガスを供給し、均一に混合した後、成膜室内のガス供給部7−1、7−2、7−3へ導き、基材3へ向けて均一に成膜用ガスを噴出させる。圧力調整バルブ19の開度を調整し、成膜室内を所望の真空度に設定する。通常、本プラズマCVD成膜装置および成膜方法においては、安定してプラズマを形成し、所望の十分な緻密性と密着性を有する膜を形成するためには、成膜室の成膜圧力(真空度)を圧力調整バルブ19の開度を調整し、0.1Paから100Paの間の真空度に設定、維持して成膜を行う。
電源17から電極35−1、35−2に一定周波数で電力を供給し、電極35−1、35−2から基材13に向けてプラズマ16が発せられ、基材13上に薄膜が形成される。成膜時に発生した副生成物は真空排気ポンプ21により排気される。
【0034】
このように第1の実施の形態によれば、電極35−1、35−2が基材13の同一面側に配置されて、成膜が行われる。
【0035】
本発明によれば、基材を電極上に置いて成膜せず、電気的にカップリングされなくなるため、プラズマ放電のインピーダンス上昇を防ぐことができ、容易にプラズマ形成が可能となり、かつ長時間安定して放電およびプラズマCVD成膜を行うことが可能となる。また、放電インピーダンスが上昇しないことから、プラズマCVD成膜においては成膜速度の向上(生産性向上)、膜応力の低減、基材へのダメージ低減(電気的なチャージアップの発生抑制、基材エッチング低減による密着性向上、基材着色低減)をはかることが可能となる。
【0036】
さらに基材によるインピーダンスを考慮する必要がなくなるため、基材の種類毎に成膜条件を最適化する必要がなくなる。
また、電極の配置や形状により、必要に応じてインピーダンスの大きさを調整することが可能となる。先に放電インピーダンスが大きくなる場合の不具合を説明したが、一方で成膜インピーダンスが小さいことが問題となる場合もある。放電インピーダンスが小さい場合は、放電電圧が小さく、放電電流が大きくなり、基材へのイオン打ち込み効果が小さくなり、結果として膜の密着性が不足し、膜剥離を起こすことがある。このような場合、具体的には対になって設置されている電極35−1と電極35−2の距離を広げることで放電インピーダンスは増加する。この結果、印加電力一定の場合、成膜の放電電圧は大きく、放電電流は小さくなり、結果としてイオン打ち込み効果が高まり、密着性の高い膜を形成することが可能となる。
反対に電極35−1と電極35−2の距離を狭めることで、放電インピーダンスは減少し、印加電力一定の場合、放電電圧は小さく、放電電流は大きくなり、成膜速度の向上(生産性向上)、膜応力の低減、基材へのダメージ低減(電気的なチャージアップの発生抑制、基材エッチング低減による密着性向上、基材着色低減)を図ることが可能となる。
このように、本発明により、放電インピーダンスを最適とすることが可能となり、基材13へのイオン打ち込み効果を調整し、膜の密着性を高めたり、基材へのダメージを低減し、良質な膜の形成が可能となる。
【0037】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る成膜装置101について説明する。
図4は、成膜装置101の概略構成を示すもので、チャンバ103内に隔壁105が設けられ、隔壁105により成膜室107と排気室109が形成される。
ガス供給部113−1、113−2、113−3は供給ガス種ごとに流量制御器114−1、114−2、114−3を介してガス貯留部111−1、111−2、111−3に接続され、ガス貯留部から111−1、111−2、111−3から個々に流量制御された成膜用ガスが供給される。
【0038】
チャンバ103に設けられた支持部115には電気的絶縁性部品からなるカップリング部117が設けられ、この支持部115に基材ホルダ119が設けられる。基材ホルダ119は基材121を支持する。
チャンバ103内に、電気的にフローティングレベルに設置された電極149−1、149−2を有する電極ユニット123−1、123−2が設けられ、この電極149−1、149−2は電源125に接続される。
【0039】
排気室109側に圧力調整バルブ129−1を介して真空排気ポンプ131−1が設けられ、成膜室107側に圧力調整バルブ129−2を介して真空排気ポンプ131−2が設けられる。
【0040】
図5は電極ユニット123−1、123−2の側面図、図6は図5のB方向の矢視図、図7は、図6のC−C断面図である。
電極ユニット123−1、123−2のマグネット構造はマグネトロン構造となっている。図5、図6、図7に示すように、マグネットケース141内に絶縁性スペーサ142、ベースプレート143が設けられ、このベースプレート143にマグネット145が設けられる。マグネットケース141に絶縁性シールド板147が設けられ、この絶縁性シールド板147に電極149が取り付けられる。従ってマグネットケース141と電極149は電気的に絶縁されており、マグネットケース141をチャンバ103内に設置、固定しても電極149は電気的にフローティングレベルとすることが可能である。電極149に電力供給配線151が接続され、電力供給配線151は電源125に接続される。また、電極149内部には電極149及びマグネット145冷却のための温度調節媒体用配管153が設けられる。
【0041】
成膜装置101ではチャンバ103内に隔壁105が設けられ、チャンバ103内が成膜室107と排気室109に分けられる。そして、成膜室107と排気室109内の圧力は異なる。成膜室107で安定してプラズマを形成し、所望の十分な緻密性と密着性を有する膜を形成するためには、成膜室の成膜圧力(真空度)は圧力調整バルブ131−2の開度を調整することにより、0.1Paから100Paの間の真空度に設定、維持され、成膜が行われる。排気室109は成膜室107の成膜時真空度の10倍以上10000倍以下とすることが好ましい。
このように、成膜室107と排気室109に分けることにより成膜時に発生した副生成物を基材121表面近傍から効率よく排気できる。
副生成物を効率よく排気するためには、成膜室107に対して排気室109は少なくとも10倍以上高い真空度であることが必要である。また排気室109の真空度を成膜室107よりも10000倍高いものとするには高価な排気系が必要となるため、10000倍以下とするのが好ましい。
【0042】
成膜装置101では図6、図7で示すように、電極ユニット123−1、123−2の内部で電極149−1、149−2の背面にマグネット145を備える。マグネット145は電極149からのプラズマが基材121表面に集中して形成するために設置される。
【0043】
マグネット145を設けることにより、基材121表面近傍での反応性が高くなり、良質な膜を高速で形成できる。
電極ユニット123−1、123−2のマグネット145は基材121の表面位置での水平磁束密度が10ガウスから10000ガウスである。基材121表面での水平磁束密度が10ガウス以上であれば、基材121表面近傍での反応性を十分高めることが可能となり、良質な膜を高速で形成することができる。
【0044】
一方、基材121表面での水平磁束密度を10000ガウスよりも高くするには高価な磁石または磁場発生機構が必要となる。
電極123−1、123−2のマグネット145の配置構造はマグネトロン構造である。マグネトロン構造とすることでプラズマCVD成膜時に形成されるイオンや電子はこのマグネトロン構造に従って連続的に回転運動を行う。
【0045】
このため、例えば300mm□以上の大面積の基材121に対してプラズマCVD成膜をする場合においても電極ユニット123−1、123−2表面全体にわたり、電子、イオン等の成膜材料の分解生成物が均一に拡散され、基材121が大面積の場合にも均一且つ安定した成膜が可能となる。
【0046】
また、電極149やマグネット145など電極ユニット123に局所的に偏って熱電子やイオンが蓄積することがなくなり、構成部材の耐熱性が低くてよくなるため、安価に部品を作製できるほか、熱変形、構造物の穴あきや割れ発生といった不具合発生を抑えることが可能となる。
電極149、149−1、149−2は、電力を投入するために導電性でプラズマ耐性に優れ、耐熱性を有し、冷却水による冷却効率が高く(熱伝導率が高く)、非磁性材料で加工性に優れた材料を用い作製することが好ましい。具体的には、アルミニウム、銅、ステンレスが好適に用いられる。
絶縁シールド板147は、絶縁性で、プラズマ耐性に優れ、耐熱性を有し、加工性に優れた材料を用いることが好ましい。具体的には、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂が好適に用いられる。
【0047】
成膜装置101における電極149−1、149−2、基材121の電位レベル等については成膜装置1と同様にすることができる。
【0048】
ここで基材121が電気的にフローティングレベルの場合、基材121に直流電位をかけ、基材121へのイオン化された成膜材料の打ち込み効果を強めたり、弱めたりする機構を設置することが可能である。イオン化打ち込み効果を高めるためには、基材121にマイナス10Vからマイナス3000Vのマイナス電位を与え、イオン化打ち込み効果を弱めるためには、基材121にプラス10Vからプラス3000Vのプラス電位を与えることが好ましい。
カップリング部117はこのように基材121に対して電位をかける場合に必要な機構で、基材ホルダ119を電気的にフローティングレベルとするためにチャンバ103と基材121と基材ホルダ119間に設置される電気的絶縁性の部材である。
【0049】
また、設備的には高額複雑となるが、基材121に10Hz〜27.12MHzの周波数を有する交流電力を与えてもよい。なお、このように基材121に直流電位をかけることは他の実施の形態において行ってもよい。
【0050】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る成膜装置201について説明する。
図8は成膜装置201を示すもので、この成膜装置201では基材213の両側に電極230−1、230−2、230−3、230−4を配置したものである。
【0051】
チャンバ203内にガス供給部207−1、207−2、207−3、207−4、207−5、207−6が設けられる。ガス供給部207−1、207−2、207−3は供給ガス種ごとに流量制御器240−1、240−2、240−3を介してガス貯留部205−1、205−2、205−3に接続され、ガス供給部207−4、207−5、207−6は供給ガス種ごとに流量制御器240−4、240−5、240−6を介してガス貯留部205−4、205−5、205−6に接続される。
【0052】
ガス貯留部205−1、205−2、205−3、205−4、205−5、205−6は成膜用ガスを貯留する。すなわち、ガス貯留部205−1、205−2、205−3は図1のガス貯留部5−1、5−2、5−3に相当する。同様に、ガス貯留部205−4、205−5、205−6はガス貯留部5−1、5−2、5−3に相当する。
【0053】
基材213は基材ホルダ211に保持される。基材213の片面側に電極230−1、230−2が設けられ、この電極230−1、230−2は電源217−1に接続される。
また、基材213の反対の面側に電極230−3、230−4が設けられ、電極230−3、230−4は電源217−2に接続される。
これら電極230−1、230−2、230−3、230−4の電極表面は電気的にフローティングレベルに設置されている。
【0054】
次に、成膜装置201の概略動作について説明する。
ガス貯留部205−1、205−2、205−3に貯留された成膜用ガスは流量制御器240−1、240−2、240−3により個別に流量調整されて、ガス供給部207−1、207−2、207−3から基材213の片面側に向けて放出される。電源217−1から電極230−1、230−2に電力が供給され、プラズマ216が発生する。
【0055】
同様に、ガス供給部207−4、207−5、207−6から成膜用ガスが基材213の反対の面側に向けて放出される。安定してプラズマを形成し、所望の十分な緻密性と密着性を有する膜を形成するためには、チャンバ内成膜室の成膜圧力(真空度)を圧力調整バルブ219の開度を調整し、0.1Paから100Paの間の真空度に設定、維持して成膜を行う。
電源217−2から電極230−3、230−4に電力が供給され、電極230−3、230−4からプラズマ216が発生する。そして、基材213の両面に薄膜が形成される。成膜時の副生成物は真空排気ポンプ221から排出される。
【0056】
成膜装置201では、基材213の両側に電極を1組ずつ設けるので、基材213の両面への成膜が可能となり、基材213の応力緩和が可能となり、良質な薄膜を形成することができる。
【0057】
次に、本発明の第4の実施の形態に係る成膜装置301について説明する。
図9は成膜装置301を示す図である。チャンバ303内に隔壁305が設けられ、チャンバ303内に成膜室307、排気室309が形成される。
【0058】
チャンバ303内にガス供給部313−1、313−2、313−3が設けられる。ガス供給部313−1、313−2、313−3は供給ガス種ごとに流量制御器314−1、314−2、314−3を介して、ガス貯留部311−1、311−2、311−3に接続される。ガス貯留部311−1、311−2、311−3は成膜用ガスを貯留する。
【0059】
チャンバ303内に電極360−1、360−2が電気的フローティングレベルとして設けられ、この電極360−1、360−2は電源325に接続される。
【0060】
チャンバ303内にトレー319の走行用のレール357が設けられる。排気室309側に圧力調整バルブ329−1を介して真空排気ポンプ331−1が設けられ、成膜室307側に圧力調整バルブ329−2を介して真空排気ポンプ331−2が設けられる。
【0061】
真空排気ポンプ331−1は排気室309の排気を行う。真空排気ポンプ331−2は成膜室307側の排気を行う。
チャンバ303にゲートバルブ341−1を介してロードロック室(予備排気室)351−1が設けられる。ロードロック室351−1に圧力調整バルブ353−1を介して真空排気ポンプ355−1が設けられる。
【0062】
また、チャンバ303にゲートバルブ341−2を介してロードロック室(予備排気室)351−2が設けられる。ロードロック室351−2に圧力調整バルブ353−2を介して真空排気ポンプ355−2が設けられる。
これらロードロック室351−1、351−2を設けることにより、大気雰囲気下への基材の出し入れを行う際に、成膜部を有するチャンバ303内部の真空を大気圧に戻すことなく連続して成膜処理を行うことが可能となる。この結果、生産性が高い装置となり、高い真空度を維持できるため、チャンバ303内部に水分吸着を防ぐことができ、良質な膜を形成可能なことなどの利点が得られる。
【0063】
チャンバ303内におけるガス供給部313、電極360等の機能は第1の実施の形態と同様である。
ゲートバルブ341−1はチャンバ303とロードロック室351−1との間の開閉を行う。ゲートバルブ341−2はチャンバ303とロードロック室351−2との間の開閉を行う。
【0064】
ロードロック室351−1には、複数の基材をストック可能とするためにトレー搬送、移動機構を備えている。基材321を載置したトレー319が多数備えられ、これらのトレー319は上下昇降機能を有する保管ラックに保管することができる。真空排気ポンプ351−1はロードロック室351−1内の排気を行う。ロードロック室351−1の真空度がチャンバ303の真空度とほぼ等しくなり圧力差がなくなった状態で、ゲートバルブ341−1の開閉動作が可能となる。
チャンバ303内ではトレー319がレール357上を走行する。
【0065】
ゲートバルブ341−2はチャンバ303とロードロック室351−2の間の開閉を行う。ロードロック室351−2は多数のトレー319を格納でき、トレー319は上下方向に移動可能である。真空排気ポンプ355−2はロードロック室351−2の排気を行う。
【0066】
次に、この成膜装置301の概略動作について説明する。
成膜室307および排気室309を備えたチャンバ303内部は真空排気ポンプ331−1および331−2により連続的に排気され圧力調整バルブ331−1および圧力調整バルブ331−2により、所望の真空度に設定される。
【0067】
大気中で、ロードロック室351−1内に基材321を載置したトレー319をセットする。続いて、真空排気ポンプ355−1を動作させ、圧力調整バルブ353−1を開状態としロードロック室351−1の真空引きを行う。ロードロック室351−1の真空度が、成膜室307を備えるチャンバ303の真空度と同一になった後、ゲートバルブ341−1を開くことが可能となる。このトレー319がレール357上を走行し、トレー319全体がゲートバルブ341−1を通過しチャンバ303に搬送された後、ゲートバルブ341−1は閉じられる。
【0068】
ゲートバルブ341−1が閉じられた後、ガス貯留部311−1、311−2、311−3に貯留された成膜用ガスは個別に設けられた流量制御器314−1、314−2、314−3により所望の流量供給され、これらガスは事前に均一に混合され、ガス供給部313−1、313−2、313−3から基材321側に向けて噴出される。また成膜室307および排気室309は真空排気ポンプ331−1、331−2および圧力調整バルブ329−1、329−2により成膜に適した圧力に設定される。排気室309は成膜室307よりも10倍以上10000倍までの範囲のより高い真空度で成膜が行われる。
トレー319がチャンバ303内のレール357上を走行し、電極360−1、360−2の下の位置に到達する。トレー319は電極360−1、360−2で停止してよいし、一定速度で走行させながら通過させてもよい。また必要膜厚を得るために、トレー319を双方向搬送を繰り返し成膜を行ってもよい。
安定してプラズマを形成し、所望の十分な緻密性と密着性を有する膜を形成するためには、チャンバ内成膜室の成膜圧力(真空度)は圧力調整バルブ329−1の開度を調整し、0.1Paから100Paの間の真空度に設定、維持して成膜を行い、また成膜時に基板表面に生成される副生成物を効率よく排気するため、チャンバ内排気室の圧力(真空度)は圧力調整バルブ329−2の開度を調整し、成膜室圧力の10倍から10000倍高い真空度に設定、維持して成膜を行う。
【0069】
このとき、電源325から電極360−1、360−2に電力が供給され、電極360−1、360−2からプラズマが発生する。そして、基材321上に薄膜が形成される。薄膜が形成された後、電極360−1、360−2に供給された電力の供給を停止し、プラズマ放電を停止する。更に成膜用ガス供給を停止し、圧力調整バルブ329−1、329−2を全開としてチャンバ303内の残留ガスを排気する。
【0070】
被成膜基材を再格納する部位として、ロードロック室351−1または351−2のいずれかを用いることができる。ここではロードロック室351−2に再格納する場合を説明する。あらかじめロードロック351−2室には被成膜基材を再格納するためのスペースを空けておき、真空排気ポンプ355−2を動作させ、圧力調整バルブ353−2を全開としてロードロック室351−2内部を減圧しておく。
【0071】
先に説明の成膜工程が完了し、残留ガスを排気した後、チャンバ303の真空度とロードロック室351−2の真空度を同一にした後、ゲートバルブ341−2を開き、基材トレー319及び被成膜基材をレール357上を搬送させ、ロードロック室351−2の所定の位置に移動させる。基材トレー319がゲートバルブ341−2を通過し、全体がロードロック室351−2に移動した後、ゲートバルブ341−2を閉じる。
【0072】
以上の工程を複数枚の基材321に対して、連続的に行うことも可能である。また全ての基材321に対して成膜処理が完了した後、ロードロック室351−2の真空引きを停止し、大気開放することで基材の取出しが可能となる。
【0073】
第4の実施の形態によれば、チャンバ303の前後に少なくとも1つのロードロック室351−1(または351−2)を備えるので、真空引き工程と成膜工程を分離させることができ、生産性が向上する。
【0074】
また、車輪付きのトレー319がレール357上を走行しつつ、基材321を搬送するので生産性が向上し、基材321の大面積の部分へ均一且つ安定した連続成膜が可能となる。
なお、基材搬送機構としては、レール357上を車輪付きトレー319で搬送させる他、基材の端部を爪で保持し、アーム移動する構造や基材をトレーや枠に積載し、全体をアームで移動する機構等を用いることもできる。
【0075】
なお、トレー319はその表面を絶縁性とし、基材321は電気的にフローティングレベルとすることが好ましい。トレー319を絶縁性とすることで電力の漏れを防ぐことができ、成膜投入電力を高くすることができ、成膜への利用効率も高く、安定した成膜が可能となる。
【0076】
以上、本発明に係る各実施の形態について説明したが、第2の実施の形態から第4の実施の形態において、ガス貯留部、ガス供給部、電源、電極等の機能は、第1の実施の形態と同様である。また電源電圧、電源の制御方法、基材の電位、ガス供給部の電位等も第1の実施の形態と同様にすればよい。さらに電極として、図2、図3に示すもの、図5、図6、図7に示すものを適宜用いてもよい。
【0077】
次に、図4に示す成膜装置101と図10に示す比較例となる成膜装置401を用いて実際に成膜を行った際の実験結果について説明する。
図4に示す成膜装置101において、電極149−1、149−2は前述したように図5、図6、図7に示すマグネトロン構造のマグネット145をセットし、基材121表面での平均水平磁束密度が1000ガウスとなるように設定した。チャンバ103はアースレベルに、基材ホルダ119はテフロン(登録商標)樹脂を介した構造として電気的にフローティングレベルとした。
【0078】
濃度30%のエチレングリコール水溶液を冷媒として冷却水用配管153に供給した。すなわち、基材ホルダ119、電極123−1、123−2に個別に冷媒を循環供給させ、基材ホルダ119を0度に冷却した。このとき、電極123−1と基材ホルダ119の間、電極123−2と基材ホルダ119との間、電極123−1と電極123−2の間の抵抗はそれぞれ1MΩであった。
【0079】
基材121としてシリコンウエハを用意し、基材ホルダ119上にセットした。真空排気ポンプ131−1、131−2より成膜室107、排気室109ともにチャンバ103内を1×10-4Paまで真空引きした。成膜用ガスとしてTEOS(テトラエトキシシランSi(OC2H5)4)を加熱温度120℃で気化してガス状態で供給した。そして、TEOS、酸素、アルゴンを流量制御器(マスフローコントローラー)を用いて流量制御を行いながらそれぞれ20sccm、500sccm、200sccm供給し、均一に混合させた後、基材121上にシャワー状にガスを供給した。
【0080】
次に、真空排気ポンプ131−1、131−2を調整し、成膜室107の圧力を10Pa、排気室109内の圧力を0.5Paの一定圧力となるように調整した。電源125に周波数40kHzの電源(Advanced Energy Industries Inc.製、PEII 10kW)を用い、電極123−1、123−2に3kWの電力を電力制御方式より印加し、成膜時間5分で成膜を行った。この間、平均放電電圧は525Vであった。また、目視により放電のアーキング(異常放電)発生回数をカウントした結果、発生は0回と異常放電なく、安定した成膜が可能なことが判明した。
【0081】
成膜後、チャンバ103内の残留ガスを排気し、基材121を取り出し、分光エリプソメトリー装置(JOBIN YVON社、UVISEL)を用いてウエハー基材上に形成されたSiO2膜の膜厚と屈折率を測定したところ、膜厚315nm、633nmにおける屈折率は1.46と緻密な膜であった。
図11は、この成膜を5回連続で実施した結果を示すもので、図11に示すとおり、再現性の良い結果が得られ、安定した成膜が可能なことが判明した。
【0082】
これに対して比較例として、図10に示す成膜装置401を用意した。この成膜装置401は図4に示す成膜装置101と比較して電源125の片側が基材ホルダ119側に接続されおり、電極123−1、123−2は電気的に等電位に接続されていて、電極123−1、123−2に間の抵抗は0.1Ωであった。
これら以外は、図4に示す装置と全く同様の設定手順で成膜を行った。図12は成膜結果を示す図である。
【0083】
図11と図12を比較すると、図4に示す本発明に係る成膜装置101では、放電電圧が低減され、放電が安定しやすく、放電中のアーキングがほぼ発生せず、良質且つ均一な膜が形成可能となった。また、投入する電力が成膜に有効に用いられることから成膜速度が向上し、膜の屈折率すなわち緻密性の高い良質な膜が形成された。
【0084】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る情報提供システム等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る成膜装置1の構成を示す図
【図2】電極15−1の側面図
【図3】図2のA方向矢視図
【図4】第2の実施の形態に係る成膜装置101の構成を示す図
【図5】電極123−1の側面図
【図6】図5のB方向矢視図
【図7】図6のC−C断面図
【図8】第3の実施の形態に係る成膜装置201の構成を示す図
【図9】第4の実施の形態に係る成膜装置301の構成を示す図
【図10】比較例となる成膜装置401の構成を示す図
【図11】成膜装置101による成膜結果を示す図
【図12】成膜装置401による成膜結果を示す図
【符号の説明】
【0086】
1、101、201、301………成膜装置
3、103、203、303………チャンバ
5、111、205、311………ガス貯留部
7、113、207、313……ガス供給部
8、114、240、314…………流量制御器
13、121、213、321………基材
15、123、215、323………電極ユニット
17、125、217、325………電源
35、149、230、360………電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマCVD法により、減圧下で基材に薄膜を形成する成膜装置であって、
チャンバと、
前記チャンバ内にガスを供給するガス供給部と、
前記チャンバ内で、前記基材の同一表面側に配置され、電気的にフローティングレベルに設置された1組の電極と、
前記2つの電極間に電力を供給する電源と、
を具備することを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記1組の電極から構成される複数組の電極が、前記基板の両側に設置されることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記電極は、基材近傍にプラズマを集中して形成するマグネットを備えることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項4】
前記マグネットは、基材表面での水平磁束密度が10ガウスから10000ガウスであることを特徴とする請求項3記載の成膜装置。
【請求項5】
前記マグネットは、マグネトロン構造を有することを特徴とする請求項3記載の成膜装置。
【請求項6】
前記電源は、周波数が10Hzから27.12MHzであることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項7】
前記電源は、投入電力制御されることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項8】
前記電源は、インピーダンス制御されることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項9】
前記基材は、電気的にアースレベルに設置されることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項10】
前記基材は電気的にフローティングレベルに設置されることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項11】
前記基材に一定の直流電圧を印加することを特徴とする請求項10記載の成膜装置。
【請求項12】
前記ガス供給部は、前記基材の前記電極側に取り付けられ、前記基材表面に向けてガスを供給することを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項13】
前記ガス供給部は、電気的にフローティングレベルであることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項14】
前記チャンバは、成膜室と排気室とを有することを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項15】
前記排気室の真空度は、前記成膜室の成膜時の真空度に対して10倍以上10000倍以下の真空度であることを特徴とする請求項14記載の成膜装置。
【請求項16】
基材搬送機構を更に具備することを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項17】
前記基材は、絶縁性の基材保持部品に載置されることを特徴とする請求項16記載の成膜装置。
【請求項18】
前記チャンバに隣接するロードロック室を備えることを特徴とする請求項16記載の成膜装置。
【請求項19】
プラズマCVD法により、減圧下で基材に薄膜を形成する成膜方法であって、
チャンバ内にガスを供給し、
前記チャンバ内で、前記基材の同一表面側に配置され、電気的にフローティングレベルに設置された1組の電極に電力を供給してプラズマを発生させ、
前記基材上に薄膜を形成することを特徴とする成膜方法。
【請求項1】
プラズマCVD法により、減圧下で基材に薄膜を形成する成膜装置であって、
チャンバと、
前記チャンバ内にガスを供給するガス供給部と、
前記チャンバ内で、前記基材の同一表面側に配置され、電気的にフローティングレベルに設置された1組の電極と、
前記2つの電極間に電力を供給する電源と、
を具備することを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記1組の電極から構成される複数組の電極が、前記基板の両側に設置されることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記電極は、基材近傍にプラズマを集中して形成するマグネットを備えることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項4】
前記マグネットは、基材表面での水平磁束密度が10ガウスから10000ガウスであることを特徴とする請求項3記載の成膜装置。
【請求項5】
前記マグネットは、マグネトロン構造を有することを特徴とする請求項3記載の成膜装置。
【請求項6】
前記電源は、周波数が10Hzから27.12MHzであることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項7】
前記電源は、投入電力制御されることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項8】
前記電源は、インピーダンス制御されることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項9】
前記基材は、電気的にアースレベルに設置されることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項10】
前記基材は電気的にフローティングレベルに設置されることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項11】
前記基材に一定の直流電圧を印加することを特徴とする請求項10記載の成膜装置。
【請求項12】
前記ガス供給部は、前記基材の前記電極側に取り付けられ、前記基材表面に向けてガスを供給することを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項13】
前記ガス供給部は、電気的にフローティングレベルであることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項14】
前記チャンバは、成膜室と排気室とを有することを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項15】
前記排気室の真空度は、前記成膜室の成膜時の真空度に対して10倍以上10000倍以下の真空度であることを特徴とする請求項14記載の成膜装置。
【請求項16】
基材搬送機構を更に具備することを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項17】
前記基材は、絶縁性の基材保持部品に載置されることを特徴とする請求項16記載の成膜装置。
【請求項18】
前記チャンバに隣接するロードロック室を備えることを特徴とする請求項16記載の成膜装置。
【請求項19】
プラズマCVD法により、減圧下で基材に薄膜を形成する成膜方法であって、
チャンバ内にガスを供給し、
前記チャンバ内で、前記基材の同一表面側に配置され、電気的にフローティングレベルに設置された1組の電極に電力を供給してプラズマを発生させ、
前記基材上に薄膜を形成することを特徴とする成膜方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−283119(P2006−283119A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−104451(P2005−104451)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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