説明

成膜装置

【課題】 同一チャンバ内で基板ステージ上の処理基板に対し、ALD法による成膜とスパッタリング法による成膜とを行い得るように成膜装置を構成する場合に、ターゲットが、ALD法を行う際に導入する原料ガスや反応ガスによって汚染されないようにする。
【解決手段】 真空チャンバ11内に基板ステージ12を配置し、ターゲットを有するスパッタリング成膜手段4を、ターゲット41aと処理基板とを相互に対向させて設ける。真空チャンバをターゲットが存する第1空間51と基板ステージが存する第2空間52とに仕切る仕切り板5を設け、仕切り板に処理基板が臨む開口部5aを形成し、開口部を覆って第1空間及び第2空間相互の隔絶を可能とする閉位置と、開口部を開放する開位置との間で移動自在な遮蔽手段6を配置する。化学的成膜法により成膜を行い得る化学的成膜手段を第2空間に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理基板上に所定の薄膜を形成するための成膜装置に関し、特に、同一真空チャンバ内でスパッタリング法による成膜と、化学的成膜法による成膜との少なくとも一方を実施し得る成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化及び高速化に伴って、半導体素子の微細化と多層化とが進み、これに伴って埋込配線構造が用いられるようになってきた。絶縁膜に形成したビアホールやトレンチなどの層間接続孔に埋め込まれる配線材料としては、比抵抗値が小さい銅を用いることが主流である。ここで、埋込配線中の銅は、アルミニウムなどの他の配線材料とは異なり、SiOなどの絶縁膜中に拡散し易いという性質があることが知られている。
【0003】
この場合、絶縁膜中への拡散に起因する絶縁不良などを防止するために 例えば絶縁膜と配線形成用の銅薄膜との間に(層間接続孔の内面)、CVD法やスパッタリング法などにより、導電性の薄膜(バリア膜)を介在させることで、銅薄膜と絶縁膜とが直接接触することを防止して絶縁膜への拡散を抑制または防止することが考えられている。
【0004】
このバリア膜の成膜方法としては、化学的成膜法、例えばALD法があげられ、このALD法は、真空チャンバ内に設置した処理基板を所定温度まで昇温させた後、原料ガス及び反応ガスのうちいずれか一方を導入して処理基板に吸着させる工程と、導入したガスを一旦真空排気した後、他方を導入して処理基板上で反応させる工程とを繰り返すことによって、原子層程度で金属窒化物層を積層し、所定膜厚のバリア膜を得るものである(特許文献1)。
【特許文献1】特開平11−54459号(例えば、請求項1の記載参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このALD法によってバリア膜を形成する場合、層間絶縁膜などへの充分な付着強度が得られないという問題がある。このことから、ALD法によるバリア膜の形成に先立って、例えばスパッタリング法でバリア膜の密着層を形成することが考えられる。この場合、ALD法によるバリア膜の形成とスパッタリング法による密着層の形成とを別個の真空チャンバで行なうと、バリア膜形成の作業効率が低下する等の問題が生じることから、同一の真空チャンバ内でALD法によるバリア膜の形成とスパッタリング法による密着層の形成とを行うことが要請される。
【0006】
同一の真空チャンバ内でALD法による薄膜形成とスパッタリング法による薄膜形成とを行い得るようにする場合、スパッタリング用のターゲットの表面に、ALD法による成膜の際に導入されるガスが吸着して汚染される虞がある。ターゲットが汚染されると、スパッタリング法による成膜時に例えば異常放電を誘発する等の不具合が生じ、良好な成膜ができない。
【0007】
そこで、本発明の課題は、上記点に鑑み、同一の真空チャンバ内で、ターゲットの汚染を防止して、化学的成膜法による成膜とスパッタリング法による成膜とを良好に行い得る成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の成膜装置は、真空排気手段が接続された真空チャンバを備え、この真空チャンバ内に、処理基板の設置を可能とする基板ステージを配置すると共に、この基板ステージに対向させて配置した成膜材料であるターゲットを有し、基板ステージ上の処理基板に対しスパッタリング法により成膜を行い得るスパッタリング成膜手段を設けた成膜装置であって、前記真空チャンバをターゲットが存する第1空間と基板ステージが存する第2空間とに仕切る仕切り板を設け、この仕切り板に、基板ステージ上の処理基板が臨む開口部を形成すると共に、この開口部を覆って第1空間及び第2空間相互の隔絶を可能とする閉位置と、この開口部を開放する開位置との間で移動自在な遮蔽手段を配置し、第2空間に所定のガスの導入するガス導入手段を有し、基板ステージ上の処理基板に対し化学的成膜法により成膜を行い得る化学的成膜手段を第2空間に設けたことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、遮蔽手段が閉位置に保持された状態で、スパッタリング成膜手段を作動させて基板ステージ上の処理基板に対しスパッタリング法によって所定の薄膜を形成する。次いで、遮蔽手段を閉位置から開位置に移動させ、化学的成膜手段を作動させて基板ステージ上の処理基板に対し化学的成膜法によって所定の薄膜を形成する。この場合、基板ステージ上の処理基板に対し化学的成膜法による薄膜形成を行う間、遮蔽手段によって開口部を覆うことで、第1空間及び第2空間が相互に隔絶されているため、化学的成膜法を行う際に導入される原料ガスや反応ガスのターゲットが存する第1空間への流れ込みが防止され、これにより、ガスの吸着に起因したターゲットの汚染が防止される。
【0010】
尚、前記化学的成膜法は、例えば、原料ガスを導入して処理基板表面に原料ガスを吸着させる工程と、反応ガスを導入して吸着した原料ガスと反応させる工程とを周期的に繰り返して行うALD法である。
【0011】
前記基板ステージを仕切り板に向かって往復動自在として、基板ステージの外周縁部が開口部の縁部に当接可能としておけば、処理基板に対しスパッタリング法による成膜を行う際に、第1空間と第2空間とを相互に密閉できる。これにより、例えばスパッタリング法による成膜の際に第2空間を区画する真空チャンバの側壁などの汚染が防止できてよい。
【0012】
前記ガス導入手段は、基板ステージの仕切り板側に位置してこの基板ステージを囲うように設けたリング状のヘッド部を有し、このベッド部に、処理基板に向かって所定のガスを噴出するように所定の間隔を置いて複数のガス導入孔を形成しておけば、処理基板に対し所定の所定のガスを均等に供給できてよい。
【0013】
前記真空排気手段の排気管を、真空チャンバの第1空間及び第2空間にそれぞれ接続し、第1空間及び第2空間を独立して真空排気できるように構成しておけば、例えば、基板ステージを移動させて第1空間と第2空間とを相互に密閉した状態で成膜を実施する場合でも、第1空間及び第2空間をそれぞれ真空排気できてよい。
【0014】
化学的成膜法による成膜の際に、ターゲット近傍へのガスの流れ込みを防止するために、前記第1空間に存するターゲットの近傍に、所定のパージガスの導入を可能とする他のガス導入手段を設けてもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の成膜装置は、同一の真空チャンバ内で、ターゲットの汚染を防止して、化学的成膜法による成膜とスパッタリング法による成膜とを良好に行い得るという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1乃至図4を参照して、1は、同一の真空チャンバ内で、ターゲットの汚染を防止して、化学的成膜法であるALD法による成膜とスパッタリング法による成膜とを良好に行い得る本発明の成膜装置である。成膜装置1は、ターボ分子ポンプなどの真空排気手段2を有する真空チャンバ11を有し、真空チャンバ11の底部には、シリコンウェハーなどの処理基板Sの載置を可能とする基板ステージ12が設けられている。基板ステージ12には、処理基板Sを所定温度に加熱するために、例えば抵抗加熱方式の公知の加熱手段(図示せず)が内蔵されている。
【0017】
また、基板ステージ12の直上に位置して真空チャンバ11内には、処理基板Sに対し化学的成膜法による成膜を行う際に、所定のガスを導入する第1及び第2の各ガス導入手段31、32が設けられ、この加熱手段と各ガス導入手段31、32とが化学的成膜手段3を構成する。図3に示すように、第1及び第2のガス導入手段31、32は、基板ステージ12を囲うように同心状であって上下方向にずらして設けたリング状のヘッド部31a、32aをそれぞれ有し、各ベッド部31a、32aには、処理基板Sに向かって所定のガスを噴出するように90度づつ角度をずらして4個のガス導入孔31b、32bが形成されている。また、各ヘッド部31a、32aは、マスフローコントローラを設けたガス管31c、32cを介して、図示しない所定のガス源(例えば、原料ガス源、反応ガス源)にそれぞれ連通している。
【0018】
例えば処理基板S上に形成した絶縁膜にパターニングして形成した層間接続孔にALD法によりバリア膜を形成する場合、原料ガスとしては、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)などを化学構造中に含む有機金属ガスであり、反応ガスとしては、原料ガスと反応し、金属の構成元素を化学構造中に含む金属薄膜を析出させるアンモニアガスなどである。
【0019】
そして、基板ステージ12に載置した処理基板Sを所定温度まで昇温させた後、原料ガス及び反応ガスのうちいずれか一方を導入して処理基板Sに吸着させる工程と、この一方のガスを一旦真空排気した後、他方を導入して処理基板S上で反応させる工程とを繰り返すことによって、原子層程度で金属窒化物層を積層し、所定膜厚の薄膜が得られる。タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)などのピュアメタルを成膜する場合には、原料ガスを吸着させる工程と、H2ラジカル又はPVDで成膜、改質を行う工程とを繰り返すようにすればよい。
【0020】
ここで、ALD法によって成膜すると、付着強度が弱いという問題がある。このことから、本実施の形態では、同一真空チャンバ11内でALD法による薄膜形成に先立ってスパッタリング法で所定の密着層を形成できるように、真空チャンバ12の上面にはスパッタリング手段であるスパッタリングカソード41が設けられている。
【0021】
スパッタリングカソード41は、公知の構造を有し、処理基板Sに対向して設けたターゲット41aを有する。ターゲット41aは、処理基板S上に成膜しようする薄膜の組成に応じて公知の方法で作製される。例えば、スパッタリング法でバリア膜の密着層を形成する場合のターゲットとしては、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)など、原料ガスに含まれる金属の構成元素を主成分とするものである。また、ターゲット41aは、このターゲット41aの前方にプラズマが発生させるため、ターゲット41aに直流電圧または高周波電圧を印加するスパッタ電源42に接続されている。この場合、処理基板Sもまた、バイアス電圧を印加するためにスパッタ電源42に接続されている。
【0022】
真空チャンバ11の上部には、第3のガス導入手段43が設けられている。ガス導入手段3は、マスフローコントローラを介設したガス管43aを介して図示しないガス源に連通し、アルゴンなどのスパッタガスを一定の流量で導入できるようになっており、スパッタリングカソード41、スパッタ電源42及び第3のガス導入手段43がスパッタリング手段4を構成する。
【0023】
ところで、上記のように、同一の真空チャンバ11内でALD法による成膜とスパッタリング法による成膜とを行い得るように成膜装置1を構成した場合、ターゲット41aの表面(スパッタ面)に、ALD法による成膜の際に導入される原料ガスや吸着ガスが吸着して汚染される虞がある。ターゲット41aが汚染されると、スパッタリング法による成膜時に例えば異常放電を誘発する等の不具合が生じ、良好な成膜の妨げとなる虞がある。
【0024】
本実施の形態では、真空チャンバ11をターゲット42aが存する第1空間51と基板ステージ12が存する第2空間52とに仕切る仕切り板5を設けた。そして、この仕切り板5に、ターゲット41aから基板ステージ12上の処理基板Sが臨む開口部5aを形成すると共に、この開口部5aを覆って第1空間51及び第2空間52相互の隔絶を可能とする閉位置と、この開口部5aを開放する開位置との間で移動自在な遮蔽手段6を配置した。図4に示すように、遮蔽手段6は、開口部5aの面積より大きな面積を有するシャッター部61を有し、このシャッター61には、アーム部62の一端が連結され、その他端は、このアーム部62を水平方向に旋回さえるモータなどの駆動手段の回転軸63に連結されている。
【0025】
これにより、基板ステージ12上の処理基板Sに対しALD法によって成膜する間、シャッター部61により開口部5aを覆うことで、第1空間51と第2空間52とを相互に隔絶でき、導入される原料ガスや反応ガスによるターゲット41aが存する第1空間51への流れ込みを防止して、ガス吸着に起因したターゲット41aの汚染が防止できる。この場合、ターゲット41aの近傍に、希ガスなどの所定のパージガスの導入を可能とする第4のガス導入手段44を設けて、第1空間51と第2空間との間の圧力差でシャッター部61と開口部5aとの間の間隙を通って第1空間に原料ガスや反応ガスが流れ込むのを防止するのが好ましい。
【0026】
また、スパッタリング法による成膜の際に、第2空間52を区画する真空チャンバ11に設けた防着板11aなどの汚染を防止するために、基板ステージ12には、エアーシリンダなどの駆動手段12aを連結し、仕切り板5に向かって昇降(往復動)自在とし、仕切り板5に当接可能である。この場合、基板ステージ12の外周縁部には、耐熱性を有するOリングや金属性のラビリンスシールなどのシール(図示せず)が設けられ、基板ステージ12を上昇させてその外周縁部を仕切り板5に形成した開口部5aの縁部に当接させ、第1空間及び第2空間52を相互に密閉した状態で処理基板sに対しスパッタリング法によって成膜することもできる。この場合、処理基板Sの上面が第1空間51に突出するように仕切り板5の板厚を設定している(図2参照)。
【0027】
他方で、シャッター部61の下面の外周縁部に、耐熱性を有するOリングや金属性のラビリンスシールなどのシール(図示せず)を設けると共に、シャッター部61を昇降自在であるように駆動手段63を構成しておけば、シャッター部61を下降させてその外周縁部を仕切り板5に当接させ、第1空間51を密閉した状態で処理基板Sに対しALD法による成膜が行い得るようにしてもよい。真空排気手段2の排気管21、22は、真空チャンバの第1空間51及び第2空間52にそれぞれ接続され、例えば、真空ポンプの上流側に切換弁(図示せず)を配置しておき、この切換弁を切換えて第1空間51及び第2空間52を独立して真空排気できるように構成している。
【0028】
ところで、ALD法による成膜を行う場合、その成膜速度を高めるには、原料ガスや反応ガスの処理基板への吸着速度を高めると共に第2空間52内に導入した原料ガスや反応ガスが急速に真空排気できるようにする必要がある。他方で、スパッタリング法によって処理基板Sに対し成膜する場合、処理基板面内での薄膜の膜厚の均一性を高めるには、ターゲット41aと処理基板Sとの間の距離を設定する必要がある。
【0029】
本実施の形態では、基板ステージ12が仕切り板5に当接した位置で、ターゲット41aと処理基板Sとの間の距離が120mmより長くなると共に、基板ステージ12を下降させた位置(ALD法による成膜を行う位置)で、ターゲット41aと処理基板Sとの間の距離が300mmより短くなり、かつ、第2空間52の容積が可能な限り小さくなるように仕切り板5の真空チャンバ底面からの高さ位置を設定している。ヘッド部31a、32aと処理基板Sとの間の距離は、15〜30mmの範囲に設定される。これにより、ALD法による成膜を行う際に、原料ガス、反応ガスの切換えが早くできて、成膜速度を高めることが可能になる。
【0030】
次に、本発明の成膜装置1を用いて、絶縁膜に形成した層間接続孔に配線用の埋込層を形成する先立ってバリア膜を形成する場合の作動について説明する。処理基板Sの表面の脱ガスなどの前処理工程が終了した後、基板ステージ12に処理基板Sを載置する。この状態では、遮蔽手段6は開位置にあり、第1空間51及び第2空間52は連通している(図1参照)。次いで、基板ステージ12を上昇させて第1空間51を隔絶し、第1空間51内の圧力が所定値に到達すると、第3のガス導入手段4を介してスパッタガスを第1空間51に導入すると共に、スパッタ電源42を介してターゲット16に高周波電圧を印加することでターゲット41aの前方にプラズマを発生させて、ターゲット41aをスパッタリングし、絶縁膜上に所定膜厚で絶縁膜側密着層を形成する(図2参照)。
【0031】
次いで、基板ステージ12を下降させ、基板ステージ12に内蔵した加熱手段を作動させて処理基板Sを加熱する(図1参照)。この場合、遮蔽手段6を、駆動手段63によって開位置から閉位置に移動させて第1空間51及び第2空間52を相互に隔絶する。この場合、真空排気手段2によって、第1空間51及び第2空間52は独立して真空排気する。次いで、第2空間52の圧力が所定値に到達すると共に処理基板Sが所定温度に達すると、第1のガス導入手段31を介して原料原料ガスを導入して、処理基板の表面に原料ガスを吸着させる。次いで、第1のガス導入手段31に設けたマスフローコントローラを制御して原料ガスの供給を停止し、再度第2空間52の圧力が所定値に到達するまで真空排出する。
【0032】
次いで、第2のガス導入手段32を介して、第2空間52に反応ガスを導入し、処理基板基板S表面に吸着された原料ガスと反応させる。この場合、反応ガスをラジカル化して導入してもよい。そして、第2のガス導入手段32に設けたマスフローコントローラを制御して反応ガスの供給を停止し、再度第2空間52の圧力が所定値に到達するまで真空排出する。そして、上記手順を所望回数繰り返すことで、密着層上に所定膜厚でバリア膜が形成される。
【0033】
所定膜厚のバリア膜を形成した後、遮蔽手段6を再度閉位置から開位置に移動させると共に、基板ステージ12を上昇させて第1空間51及び第2空間52を相互に隔絶し(図2参照)、第1空間51内の圧力が所定値に到達すると、第3のガス導入手段4を介してスパッタガスを第1空間51に導入すると共に、スパッタ電源42を介してターゲット41aに高周波電圧を印加することでターゲット41aの前方にプラズマを発生させて、ターゲット41aをスパッタリングして、バリア膜の表面に金属薄膜すなわちバリア膜側密着層を形成する。
【0034】
尚、本実施の形態では、基板ステージ12を上昇させ、第1空間51及び第2空間52を相互に隔絶した状態で、スパッタリング法による成膜を行うこととしたが、これに限定されるものではなく、例えば、ALD法による成膜中に、遮蔽手段6を開位置に保持すると共に、スパッタガスを導入し、ターゲット41aに高周波電圧を印加してプラズマを発生させるようにしてもよい。この場合、原料ガスと反応ガスとを反応させて処理基板Sの表面上でバリア膜を形成する間、スパッタリングによって原料ガスと同じ金属の構成元素を主成分とする金属を処理基板Sに入射させることで、バリア膜中の金属の構成元素の含有率が増加させて改質でき、緻密なバリア膜が得られる。
【0035】
原料ガスが有機金属化合物の場合、スパッタリングによってこの構成元素が処理基板Sの表面に入射することにより、分解が促進されてカーボン等の不純物がバリア膜からはじき出されるため、不純物の少ない低抵抗のバリア膜を取得することができる。例えば、ターゲット41aとして金属タンタル、原料ガスとして有機タンタルガス、反応ガスとしてアンモニアガスを使用した場合、処理基板Sの表面上で有機タンタルとアンモニアガスとが反応している間に、金属タンタルが入射し、処理基板S表面に窒化タンタルの薄膜が析出される。
【0036】
また、本実施の形態では、絶縁膜と銅配線膜との間にバリア層を形成するものを例として説明し、化学的成膜法としてALD法を用いているが、これに限定されるものではなく、化学的成膜法としてはCVD法でもよく、スパッタリング法及び化学的成膜法を実施して薄膜を形成するものであれば、適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の成膜装置を、化学的成膜法を実施する位置で概略的に示す断面図。
【図2】本発明の成膜装置を、スパッタリング法を実施する位置で概略的に示す断面図。
【図3】化学的成膜法の行う際に用いるガスリングを説明する図。
【図4】第1空間及び第2空間を相互に隔絶する遮蔽手段を説明する図
【符号の説明】
【0038】
1 成膜装置
11 真空チャンバ
12 基板ステージ
2 真空排気手段
3 化学的成膜手段
3a、3b、43 ガス導入手段
4 スパッタリング成膜手段
41a ターゲット
5 仕切り板
5a 開口部
6 遮蔽手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空排気手段が接続された真空チャンバを備え、この真空チャンバ内に、処理基板の設置を可能とする基板ステージを配置すると共に、この基板ステージに対向させて配置した成膜材料であるターゲットを有し、基板ステージ上の処理基板に対しスパッタリング法により成膜を行い得るスパッタリング成膜手段を設けた成膜装置であって、
前記真空チャンバをターゲットが存する第1空間と基板ステージが存する第2空間とに仕切る仕切り板を設け、この仕切り板に、基板ステージ上の処理基板が臨む開口部を形成すると共に、この開口部を覆って第1空間及び第2空間相互の隔絶を可能とする閉位置と、この開口部を開放する開位置との間で移動自在な遮蔽手段を配置し、第2空間に所定のガスの導入するガス導入手段を有し、基板ステージ上の処理基板に対し化学的成膜法により成膜を行い得る化学的成膜手段を第2空間に設けたことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記化学的成膜法は、原料ガスを導入して処理基板表面に原料ガスを吸着させる工程と、反応ガスを導入して吸着した原料ガスと反応させる工程とを周期的に繰り返して行うALD法であることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記基板ステージを仕切り板に向かって往復動自在として、基板ステージの外周縁部が開口部の縁部に当接可能としたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の成膜装置。
【請求項4】
前記ガス導入手段は、基板ステージの仕切り板側に位置してこの基板ステージを囲うように設けたリング状のヘッド部を有し、このベッド部に、処理基板に向かって所定のガスを噴出するように所定の間隔を置いて複数のガス導入孔を形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項5】
前記真空排気手段の排気管を、真空チャンバの第1空間及び第2空間にそれぞれ接続し、第1空間及び第2空間を独立して真空排気できるように構成したことを特徴とする請求項1または請求項4のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項6】
前記第1空間に存するターゲットの近傍に、所定のパージガスの導入を可能とする他のガス導入手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の成膜装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−176823(P2006−176823A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−370497(P2004−370497)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】