説明

所望のドーパント濃度を実現するためのイオン注入法

【課題】本発明は、MOSFETのそれぞれが一義的に決る閾値電圧をもつ複数のMOSFETの形成方法を提供する。
【解決手段】各MOSFETのために、ドープされた井戸又はタブが形成される。次に、各半導体井戸に近接して、材料ラインを形成するために、パターン形成されたマスクが用いられる。この場合、ラインの幅はMOSFETに所望の閾値電圧に依存する。イオンビームが材料ラインを通過するように、基板表面に対し鋭い角度で、傾斜イオン注入が行われる。より厚いラインはイオンビームに対し、より低い透過係数をもち、従って隣接した半導体井戸に到達するイオンビームの強度は低下する。ライン幅を適当に選択することにより、タブ中のドーパント濃度、従って最終的なMOSFET閾値電圧は制御できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は電流を流すよう設計された伝導形が変化する接合を組込んだ半導体デバイス及びそのようなデバイスの作製方法に関する。より具体的には、本発明は一義的に決められる閾値電圧を有する金属−酸化物−電界効果トランジスタ(MOSFET)及びそのようなデバイスを組込んだ集積回路の作製方法に関する。
【0002】
本発明の背景
当業者には周知のように、ほとんどの金属−酸化物−半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)は、横方向に形成され、電流はソース領域及びドレイン領域間のチャネル中を、基板面又は基板表面に平行に流れる。
【0003】
エンハンスメントモードのnチャネルMOSFETの場合、基板はドープされたp形で、ソース及びドレイン領域はnドーピングに拡散又は注入される。薄い酸化物層がソース及びドレイン領域間で、シリコン表面領域から導電性ゲートを分離する。2つのn形領域間に導電性n形チャネルが形成されない限り、ドレインからソースに電流は流れない。典型的な場合、ソースに接続された基板に対し、ゲートに正の電圧が印加された時、実効的に正の電荷がゲート金属上に堆積し、それに応答して、負電荷が下のシリコン中に誘起される。これらの負電荷は可動電子で、シリコン表面の薄い反転表面領域中に形成される。これらの誘起された可動電子はMOSFETのチャネルを形成し、ドレインからソースへ電流が流れるようにする。ゲート電圧の効果は誘起されたチャネルのコンダクタンスを変えることである。コンダクタンスを下るとソース、チャネル及びドレイン間で電子が越える障壁が下る。もし、閾値電圧(V)を越えるゲート電圧を印加することによって、障壁が十分下ると、十分な電子がソースからドレインへ流れる。閾値電圧はチャネルを誘起、すなわちMOSFETを伝導状態に追いやるための反転領域を形成するのに必要な最小のゲート電圧である。nチャネルデバイスの場合、正のゲート電圧は導電性チャネルが誘起される前の正の閾値電圧より、大きくなければならない。同様にp形チャネルデバイス(n形基板上に作られ、p形ソース及びドレイン注入又は拡散を有する)は、チャネル中に(可動正孔を含む)必要な正の電荷を誘起する閾値より、より負のゲート電圧を必要とする。
【0004】
閾値電圧はMOSFETのいくつかの物理的及び電気的パラメータの関数で、その中には酸化物容量、酸化物厚、ゲート材料(典型的な場合、金属又はポリシリコン)とシリコン基板間の仕事関数差、チャネルドーピング及びゲート酸化物中の不純物イオン蓄積電荷が含まれる。以下で述べるように、従来技術に従うと、典型的な場合、基板ドーピング濃度は単一の集積回路上に異なる閾値電圧を有するMOSFETを形成するために、変えられる。
【0005】
集積回路チップ上に作製された複数のプレーナnチャネルMOSFET能動デバイスが、図1に断面で示されている。基板(9)はp領域(50)及びp層(52)を含み、後者は典型的な場合、p領域からエピタキシャル技術により、成長させる。MOSFET(2,4,6)が基板(9)中に作製されている。MOSFET(2)はLOCOS(シリコン基板の局所酸化)領域(10)により、MOSFET(4)から分離されている。同様に、MOSFET(6)はLOCOS領域(12)により、MOSFET(4)から分離されている。あるいは、MOSFET(2,4,6)は浅いトレンチ分離(SIT)により、電気的に分離してもよい。この場合、非等方性エッチングが2つの能動デバイス間の領域中に、トレンチを形成する。これは絶縁性材料で満される。
【0006】
MOSFET(2)はゲート(14)及びn形井戸(20)中に拡散させたソース領域(16)及びドレイン領域(18)を含む。MOSFET(4)はゲート(28)及びp形井戸(34)中に拡散させたソース領域(30)及びドレイン領域(32)を含む。最後に、MOSFET(6)はゲート(38)及びn形井戸(44)中に拡散させたソース領域(40)及びドレイン領域(42)を含む。ゲート(14,28,38)はゲート酸化物層とも呼ばれる二酸化シリコン層(46)により、基板(9)から分離されている。
【0007】
図1は集積回路の一部を簡略化して示すことを意図しているから、各種のコンタクト、相互接続、ビア及び金属層は示されておらず、形状の寸法比率は実際と異なる。特にディジタル用途では、チップの隣接した領域上にnチャネル及びpチャネルMOSFETの組合せを作製することが、特に有利である。この相補MOSFET(CMOS)形態が、図2中に基本的なインバータ回路の形で示されており、PMOSFET(60)及びNMOSFET(62)を含む。MOSFET(60)及び(62)のドレインは相互に接続され、出力端子(Vout)を形成する。入力端子(Vin)はMOSFETゲートの共通の接続により、形成されている。動作電圧はVで示されている。図2の概略図において、PMOSFET(60)は図1のMOSFET(2)の構造で実施でき、NMOSFET(62)は図1のMOSFET(4)の構造で実施できる。
【0008】
現在の集積回路作製では、単一のチップ上に多くの機能及びサブシステムを組合せる。たとえば、異なる型の論理回路、論理類、及びメモリ要素を組合せる。たとえば、最適の動作及び最小のパワー消費のために、集積回路上の個々のデバイスは、異なる動作電圧、すなわちV及びV値で動作してよい。従って、能動デバイスは選択された動作電圧に適合させるのに必要な物理的特徴を有するように作製しなければならない。しかし、これらの特性を有する物理的デバイスを生成する上で、作製プロセス工程の数を最小かつ簡単化することも望ましい。
【0009】
たとえば、図1のMOSFET(2,4,6)のそれぞれは、異なる動作電圧、すなわちV/V又は異なる閾値電圧Vで動作するよう設計してよい。一般に、デバイスのパワー消費、従ってチップ全体のパワー消費を最小にするのに必要な特性を生じる最小値にデバイス動作電圧を実現するのが望ましい。しかし、反対の効果があることが知られている。デバイス動作電圧が低下するにつれ、デバイスの動作速度も低下する。従って、これら両方のパラメータの最適値を得るために、個々のデバイスを必要な速度特性と一致する動作電圧で動作させる必要がある。
【0010】
チップ上に複数の動作電圧ができると、能動要素及びチップの回路によって生じる複数の出力電圧もできる可能性がある。従って、前の出力電圧に応答する入力回路又はデバイスは、その出力電圧に適合しなければならず、能動デバイスは適切な入力電圧でターンオンするよう設計しなければならない。MOSFET及び接合電界効果デバイス(JFET)の場合、このターンオン電圧が閾値電圧で、その値は上述のデバイスのある種の物理的パラメータにより実現される。
【0011】
異なる閾値電圧を有する複数のMOSFETを形成する従来技術のプロセスが、図3ないし6に示されている。このプロセスの終結において、各タブ又は井戸は異なるゲート濃度を有し、従って各タブ中に形成されるMOSFETは、異なる閾値電圧をもつ。図3に示されるように、p基板(100)はエピタキシャル成長させたp層(102)を支持し、その中に複数(この例では3個)のn形タブが形成されている。当業者はここに示されている概念は、p又はn形基板中にp形タブ又は井戸を形成する場合にも適用できることを認識する。タブを形成するためには、エピタキシャル層(102)のある領域は、タブ領域を規定するマスク間の空間を作って、マスク(104,106,108,110)によりマスクされる。矢印はn形井戸を作るために、リン又はヒ素を注入することを示す。典型的な場合、注入エネルギーは10ないし100keVで、ドーズ量は1cm当り1E12ないし5E14である。
【0012】
図4に示されるように、この注入工程により、3つのn形井戸(120,122,124)が形成され、それぞれ同じドーピング濃度を有する。もし3個の井戸の全ての他の物理的及び電気的パラメータが等価なら、プロセスのこの時点で、閾値電圧は等価である。図4は更に、マスク(126)及び(128)により井戸(122)及び(124)(及び基板(100)の他の領域)をマスクしたまま、井戸(120)に第2の注入を適用することを示している。従って、井戸(120)中に形成されるMOSFETの場合、最終のドーピング濃度及び閾値電圧は、井戸(120)中への図4の注入パラメータにより決る。
【0013】
図5に続くと、井戸(120)及び(124)はそれぞれマスク(130)及び(132)によりマスクされる。その中に形成されるMOSFETの最終のドーピング濃度及び閾値電圧を実現するため、井戸(122)に対し追加された工程を施す。最後に、図6に示されるように、マスク(134)で井戸(120)及び(122)がマスクされ、必要なら基板(100)の残りがマスク(136)によりマスクされる。井戸(124)中のドーピング濃度、従ってその中に形成されるMOSFETの閾値電圧を実現するため、追加された注入を行う。このプロセスは集積回路上の任意の数のMOSFETに対して容易に拡張できるが、集積回路に必要な閾値電圧の数に基く数の一義的なマスクとマスク工程が必要であることに注意する必要がある。集積回路の作製において、マスクの数を減すことは常に望ましい。なぜなら、それらを設計し、作製すること及び作製プロセス工程は、高価だからである。
【0014】
当業者には周知のように、この時点でMOSFETの作製は、従来通り進む。各MOSFETに対し、ゲート酸化物を成長させるか堆積させ、ゲートの形成が続く。ゲートは低濃度ドープドレイン及びソース領域を形成するため、第1の低ドーズ注入のマスクとして働く。次に、たとえば化学気相堆積により、二酸化シリコンの比較的厚い層を堆積させ、そのある部分を非等方的にエッチングし、ゲートに隣接した2つの側壁スペーサのみを残す。スペーサはソース及びドレイン領域を形成するため、高ドーズドーパント注入に対するマスクとして働く。ドライブイン拡散工程の後、ソース及びドレイン領域と隣接した低濃度ドープ領域が形成させる。
【0015】
本発明の簡単な要約
半導体デバイスに対し、複数の閾値電圧の形成を更に進めるため、異なる閾値電圧値をもつMOSFETデバイスを、形成する方法を供する。
【0016】
本発明の一実施例に従うと、集積回路半導体デバイスは複数のドープされたタブ又は井戸を含み、後にその中にソース、ドレイン及びチャネル領域が形成される。各井戸中のドーパント濃度は、その井戸中に形成されるMOSFETデバイスに必要な閾値電圧を生じるように実現される。タブ中に異なるドーピングレベルを生成するために、フォトレジスト、ポリシリコン、二酸化シリコン、シリコン窒化物又は注入イオンの浸透を阻止又は妨げる任意の材料のパターン形成されたラインを通して、傾斜注入を行う。パターン形成層中の各ラインは、パターン層を貫きラインに隣接した領域中の基板に入る注入イオンの数を制御するため、異なる幅をもつ。同じイオン注入エネルギー(典型的な場合、keVで測定される)に対し、厚いラインより層中の薄いラインを、より多くのイオンが透過する。従って、隣接したより薄いパターンラインを通した注入により形成されたタブは、より高いドーピング濃度を有し、その中に形成されたMOSFETは、より高い閾値電圧をもつ。
【0017】
本発明に従う方法は、異なる閾値電圧を有するMOSFETを形成する費用と複雑さを減少させる。ある範囲の閾値電圧をもつ複数のMOSFETが、マスク工程をつけ加えることなく同時に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来技術のMOSFETデバイスの断面図である。
【図2】従来技術のCMOS集積回路の部分的な概略図である。
【図3】一連のプロセス工程中の異なる閾値電圧をもつMOSFETを形成する従来技術のプロセスを断面で示す図である。
【図4】一連のプロセス工程中の異なる閾値電圧をもつMOSFETを形成する従来技術のプロセスを断面で示す図である。
【図5】一連のプロセス工程中の異なる閾値電圧をもつMOSFETを形成する従来技術のプロセスを断面で示す図である。
【図6】一連のプロセス工程中の異なる閾値電圧をもつMOSFETを形成する従来技術のプロセスを断面で示す図である。
【図7】従来技術の集積回路の概略を示す図である。
【図8】従来技術の集積回路の概略を示す図である。
【図9】本発明の指針に従い、異なる閾値電圧を有するMOSFETを形成するプロセスを断面で示す図である。
【図10】本発明の指針に従い、異なる閾値電圧を有するMOSFETを形成するプロセスを断面で示す図である。
【図11】本発明の指針に従い、異なる閾値電圧を有するMOSFETを形成するプロセスを断面で示す図である。
【図12】AおよびBは、本発明の指針に従い、異なる閾値電圧を有するMOSFETを形成するプロセスを断面で示す図である。
【図13】AおよびBは、本発明の指針に従い、異なる閾値電圧を有するMOSFETを形成するプロセスを断面で示す図である。
【図14】本発明の指針に従い、異なる閾値電圧を有するMOSFETを形成するプロセスを断面で示す図である。
【図15】AおよびBは、本発明の指針に従い、異なる閾値電圧を有するMOSFETを形成するプロセスを断面で示す図である。
【図16】AおよびBは、本発明の指針に従い、異なる閾値電圧を有するMOSFETを形成するプロセスを断面で示す図である。
【図17】A、BおよびCは、本発明の指針に従い、異なる閾値電圧を有するMOSFETを形成するプロセスを断面で示す図である。
【0019】
本発明の詳細な記述
図7は2対のCMOSデバイスを示す従来技術のCMOS集積回路(168)の部分的な概略図である。PMOSFET(170)及びNMOSFET(172)は第1のCMOS対を形成し、PMOSFET(174)及びNMOSFET(176)は第2のCMOS対を形成する。Vin1はPMOSFET(170)及びNMOSFET(172)に対するゲート駆動信号で、それは共通のドレイン接続において、出力信号(Vout1)を生じる。Vin2はCMOS対PMOSFET(174)及びNMOSFET(176)に対するゲート信号で、それは出力信号Vout2を生じる。更に、PMOSFET(170)はドレイン電圧Vddに応答し、PMOSFET(174)はドレイン電圧Vdd2に応答することに注意する必要がある。ドレイン電圧Vdd1及びVdd2は図7中ではオフチップ電圧源から生じるように示されているが、それらはオフチップ又はオンチップで発生させてよい。一実施例において、Vdd1及びVdd2は等しくないから、Vout1はVout2に等しくない。典型的な回路形態において、両方の出力信号Vout1及びVout2は、直列につないだ回路チェイン中の次の能動要素を駆動する。たとえば、Vout1は入力信号Vin2として働き、Vout2は集積回路(168)中の別の要素に供給するか、チップ外に送ることができる。Vin1は集積回路(168)中の別の回路により生成しても、オフチップ源から生成してもよい。いずれにしても、異なる動作電圧(Vdd1及びVdd2)及び入力/出力電圧(Vin1,Vin2,Vout1,Vout2)の使用には、異なる閾値電圧を有するMOSFETの作製が必要なことは明らかである。その結果、たとえばPMOSFET(170)及びNMOSFET(172)を含むCMOS対は、第1の閾値電圧を有するように作製し、PMOSFET(174)及びNMOSFET(176)を含むCMOS対は、第2の閾値電圧を有するように作製してよい。
【0020】
図8はNMOSデバイス(182)及びNMOSFET(184)を含む別の集積回路(178)の例を示す。図7と同様、入力信号Vg1及びVg2は同じ電圧範囲になくてよく、従ってNMOSFETデバイス(182)及び(184)は、異なる閾値電圧入力信号にそれぞれ適合するように、作製しなければならない。この場合、NMOSFET(182)及びNMOSFET(184)の両方のドレイン端子は、単一の供給電圧Vdd1に接続されていることに、注意する必要がある。各トランジスタを同じ供給電圧から動作させるという事実は、ゲート入力信号に適合するのに必要な決められた閾値電圧ということではない。MOSFETの閾値電圧は集積回路の多くの設計及び動作特性に基いて選択されるから、現在の集積回路ではいくつかの異なる閾値電圧のMOSFETが必要である可能性がある。
【0021】
図7を参照すると、PMOSFET(170)及びNMOSFET(172)は第1の閾値電圧を有するように作製でき、PMOSFET(174)及びNMOSFET(176)は第2の閾値電圧を有するように作製できることがわかる。本発明を図8の回路に適用することからわかるように、本発明はCMOS用途にのみ適用が限定されるのではなく、そのようなMOSFETが相互接続され、論理回路、信号処理回路、基本的なCMOSビルディングブロック回路又はメモリデバイスを形成しても、個々のMOSFETに応用できる。
【0022】
図9に示されるように、複数のMOSFETを形成し、それぞれに独立の閾値電圧を決る第1の工程は、井戸又はタブを注入することから始る。図9において、基板(200)(pドープ)がエピタキシャル成長p層(202)の下にある。マスク要素(204,206,208,210)がエピタキシャル層(202)上に配置され、マスク要素(204,206,208,210)間の空いた空間のエピタキシャル層(202)中に、リン又はヒ素ドーパントが注入される。結果が図10に示されており、3つのn形井戸(220,222,224)が示されている。当業者は本発明の指針に従って、より多く又はより少い井戸が形成できることを認識する。更に、別の実施例において、注入工程でホウ素イオンを用いて、同じ技術により、pチャネルMOSFETデバイスを生成するためのp形井戸が形成できる。一実施例において、各井戸(220,222,224)はシリコンの局所酸化(LOCOS)領域(225)及び(226)により、隣接した井戸から分離されている。別の実施例において、浅いトレンチ分離が使用できる。
【0023】
フォトレジスト、シリコン窒化物、二酸化シリコン又はマスク要素を通して注入すべきイオンを一部通す他の材料の層を、エピタキシャル層(202)上に形成する。複数の異なる幅のラインをもつマスク要素が生成され、マスクはラインがたとえばn形井戸(220,222,224)のような注入すべきn形井戸のそれぞれに近接して配置されるように、層をパターン形成するために用いられる。図11の実施例において、3つのそのようなパターン形成されたライン(230,232,234)が示されている。ラインは異なる幅をもち、それによりラインを通す傾斜注入の使用によって、隣接した井戸中のドーピング濃度が制御される。1°ないし89°の角度が可能であるが、約7°ないし60°の間の角度が典型的である。
【0024】
矢印の頭(236,238,240)はそれぞれ井戸(220,222,224)中へのドーパントイオンの傾斜注入を表わす。ある程度のイオンはライン(230,232,234)により吸収され、吸収の割合は個々のライン幅とライン材料(各候補材料は特定のイオンに対し、固有の透過係数をもつ)の関数である。従って、井戸(222)はライン(232)がライン(234)より広いため、井戸(224)より低い注入ドーピングを受ける。その結果、井戸(222)中に形成すべきMOSFETの閾値電圧は、井戸(224)中に形成すべきMOSFETの閾値電圧より低い。注入すべきドーパント濃度を制御することにより、必要なMOSFET閾値電圧を達成するようライン幅及び材料が選択される。井戸中にMOSFETチャネル領域が形成されるから、幅が変化するラインを形成するために、単一のマスクを用い、集積回路を通して、異なる閾値電圧を有するMOSFETが作製できる。
【0025】
ラインに最も近い井戸の領域は、ラインから遠い領域より高い注入ドーズを受けることに注意すべきである。後者の場合、注入イオンはマスク層中でより長い距離移動するからである。図12Aの例を参照すると、半導体基板(262)上に配置されたマスクライン(260)と複数の注入線(264)が示されている。マスクラインはすべての注入線(264)が貫通できるよう十分高いことに注意する必要がある。図12Bは半導体基板(262)中のドーピングプロフィルを示す。注入プロフィルは実線で示され、拡散後のプロフィルは破線で示されている。この時点でドーピングプロフィルに横方向の変化が生じ、デバイス閾値電圧は半導体基板(262)中の合成又は平均ドーピング密度により決る。
【0026】
図13Aの実施例において、マスクライン(270)が半導体基板(272)上に配置されているが、この場合マスクライン(270)はすべての注入線(274)が貫通するには十分高くない。従って、注入線(274)のある程度はマスクライン(270)を貫通し、他はマスク(270)上を通過する。得られたドーパントプロフィルが図13Bに示されている。図で注入プロフィルは実線で、拡散後のプロフィルは破線で示されている。この実施例において、デバイス閾値電圧は半導体基板(272)中の平均又は合成ドーピング濃度により決る。
【0027】
本発明の別の実施例において、井戸全体で比較的一様なドーパント分布が生じるように、第2の注入が行われる。図14に示されるように、ライン(290,292,294)を含む図11のラインパターンの鏡像が各井戸(220,222,224)の相対する側に形成され、図示されるように、相対する側から、第2の傾斜注入が行われる。井戸の両側から注入されたから、井戸全体のドーピング濃度は、比較的一様である。
【0028】
集積回路を通してライン幅を形成するために、典型的場合単一のマスク(あるいはもしより均一なドーピング濃度が必要なら2つのマスク)を用いるから、本発明に従うプロセスは、異なる閾値電圧を有するMOSFETを形成するために、複数のマスクを必要とする従来のプロセスより、かなり費用がかからない。本発明の一実施例において、ライン(230,232,234)はフォトレジスト材料で形成される。他の実施例において、ラインはポリシリコン、シリコン窒化物又は二酸化シリコンで形成され、それらすべてが従来の集積回路作製で用いられてきた共通の手段である。各ラインの幅を決るため、用いるライン材料について、考察しなければならない。各材料が注入すべきイオンに対し、異なる透過特性をもつからである。
【0029】
この点から、作製プロセスは従来のMOSFET作製工程に従って進める。各MOSFETに対し、ゲート酸化物を成長又は堆積させ、次にゲートを形成する。ドレイン及びソース延長部とも呼ばれる低濃度ドープドレイン及びソース領域を形成するための第1の低ドーズ注入用のマスクとして、ゲートは働く。次に、たとえば化学気相堆積により、二酸化シリコンの比較的厚い層を堆積させ、非等方的にエッチングし、ゲートに隣接した2つの側壁スペーサのみを残す。スペーサはソース及びドレイン領域を形成するための高ドーズドーパント注入用のマスクとして働く。ドライブイン拡散後、ソース及びドレイン領域と隣接した低濃度ドープ領域が示される。
【0030】
MOSFETの寸法が縮小し続けるにつれ、ある種の不利な動作特性が生じ、その中にはドレイン誘起障壁の低下が含まれる。この現象はソース及びドレイン領域間の意図しない静電的相互作用がある時起り、典型的な場合、デバイス領域の寸法が不適切になった時、すなわちソース及びドレイン領域が厚すぎるか、チャネルドーピングが低すぎる時起る。ドレイン誘起障壁の低下の結果、ソース及びドレイン間のパンチスルー漏れ又は降伏が生じ、ゲートの損失がチャネル電流を支配する。ドレイン誘起障壁の低下を避けるために、チャネル長が減少するとともに、ソース及びドレイン接合は十分浅く作らなければならない。また、ドレインがソース接合を制御するのを防止するために、チャネルドーピングは十分高くしなければならないが、チャネル領域全体のドーピング濃度を増すことは、閾値電圧を好ましくないほど高くする。従って、チャネルドーピングはソース及びドレイン領域近くのチャネル中に、局在したドーパント注入をすることにより高くする。局所注入はハロ又はポケットドーピングとして知られる。ソース及びドレイン領域近くのドーピングを高くすると、ソース及びドレイン空乏幅が減少し、これら2つの領域間の相互作用が防止される。ハロプロセスは傾斜注入形状を用い、典型的な場合、ゲート形成後に行われる。この注入により、ゲート下に不均一な横方向プロフィルが生じるが、ソース及びドレイン領域中の横方向プロフィルは比較的一様に保たれる。
【0031】
図15は半導体基板(300)中へのそのようなハロ注入を示す。半導体基板(300)の領域(304)上のゲートマスク(302)(すなわち、ゲートはマスクとして働く)に隣接した注入により、領域(304)内のドーピング濃度が制限される。図15B中の線(310)は基板(300)内のドーパント濃度プロフィルの例を示す。ハロ注入後のドーパント濃度は線(310)により示されている。図示されるように、領域(304)の外のドーピングプロフィルは比較的一様で、ゲートマスク(302)の下では不均一になる。MOSFETデバイスにあてはめると、領域(304)はチャネルを表わし、均一なドーピング濃度の領域は、ソース又はドレイン領域を表わす。
【0032】
本発明の指針は以下のように、ハロ注入とともに使用できる。図16Aに示されるように、2つのマスクライン(350)及び(352)が基板(354)上にあり、MOSFETのタブ又は井戸領域(355)が含まれる。破線はソース/ドレイン領域(356)及び(358)のおおよその位置を示し、それらはプロセスの後の段階で、タブ領域(355)中に形成される。イオン注入線(360)及び(362)はそれぞれマスクライン(350)及び(352)を貫通し、タブ(355)をドープし、図16B中に示されたドーピングプロフィルを生じる。この図はソース/ドレイン領域(356)及び(358)を貫く平面に沿ったドーピングプロフィルを示す。
【0033】
次に、図17Aに示されるように、ゲートマスク(370)と注入イオン線(372)及び(374)を用いて、ハロ注入が行われる。図17Bを参照すると、最初のドーピング濃度が線(376)により示されており、それは図16Aに示されたプロセスから生じたものである。ハロ濃度は線(378)により示され、全濃度は線(380)により示されている。ソース/ドレイン領域(356)及び(358)中の正味のドーパント濃度は、ソース/ドレイン領域(356/358)下のタブ領域(355)中の濃度より、約2桁高い。後者の濃度が図17Cに示されている。それは線(374)により図17Bに示される濃度と同じ形をもつことに、注意する必要がある。図17B中のドーパントプロフィルは2方向(すなわち紙面の平面)のドーパント濃度を表わす。
【0034】
図17Bのドーパントプロフィルは、約1μm以下のゲート幅をもつMOSFET中の狭幅効果を減すために、有利である。特に、1つの負の狭幅効果は、チャネル幅が減少するのに伴う閾値電圧の増加である。図17Bのドーパントプロフィルはゲートから離れた領域中で濃度が高く、この閾値電圧の増加が減少する。
【0035】
本発明に従うシミュレーションの結果は、0.65ミクロンのポリシリコン幅を用いると、1E17/cmの注入表面ドーピング濃度が生成することを示し、シミュレーションするMOSFETにある種の物理的特性を仮定すると、得られる閾値電圧は0.0025ボルトである。ライン幅を0.20ミクロンに変えると、表面ドーピング濃度は7E17/cmで、シミュレーションした閾値電圧は0.400ボルトである。
【0036】
タブがチャネル領域を含み、制御されたドーパント濃度をもつMOSFETを形成するのに有用なプロセスを述べてきた。本発明の具体的な適用例を示してきたが、ここで述べた原理は、様々な方法及びIII−V族化合物及び他の半導体材料で形成された構造を含む各種の回路構造で実施する基礎となる。実施例はタブを基本とするMOSFETに関するものであったが、本発明の指針は、デバイス特性がドーピング濃度に依存する任意のデバイス又はデバイス領域に、適用できる。たとえば、シリコン−オン−絶縁体及びバイポーラ接合トランジスタ領域のドーパント濃度は、上述の材料層を通した傾斜注入により、制御できる。たとえば、異なる利得値を有するバイポーラ接合トランジスタは、本発明の指針を用いて、ベースドーピング濃度を制御することにより、集積回路中に、形成できる。また、本発明の視野の中で、様々な変形が可能である。本発明は特許請求の範囲によってのみ、限定される。
【符号の説明】
【0037】
2,4,6 MOSFET
9 基板
10,12 LOCOS領域
14 ゲート
16 ソース領域
18 ドレイン領域
20 井戸
28 ゲート
30 ソース領域
32 ドレイン領域
34 井戸
38 ゲート
40 ソース領域
42 ドレイン領域
44 井戸
46 二酸化シリコン層
50 p領域
52 p層
60,62 MOSFET
100 基板
102 p層、エピタキシャル層
104,106,108,110 マスク
120,122,124 井戸
126,128,130,132,134,136 マスク
168 集積回路
170 PMOSFET
172 NMOSFET
174 PMOSFET
176 NMOSFET
178 集積回路
182 NMOSデバイス、NMOSFETデバイス、NMOSFET
184 NMOSFET、NMOSFETデバイス
200 基板
202 p層、エピタキシャル層
204,206,208,210 マスク要素
220,222,224 井戸
225,226 局所酸化領域
230,232,234 ライン
236,238,240 矢印の頭
260 マスクライン
262 半導体基板
264 注入線
270 マスクライン
274 注入線
290,292,294 ライン
300 半導体基板
302 ゲートマスク
304 領域
310 線
350,352 マスクライン
354 基板
355 タブ領域、タブ
356 ソース領域
358 ドレイン領域
360,362 注入線
370 ゲートマスク
372,374 注入イオン線
376,378,380 線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電界効果トランジスタを含み、第1のトランジスタは第1の伝導形のタブ領域中に形成され、第2のトランジスタとは異なる閾値電圧を特徴とし、第1のトランジスタはゲート構造及びタブ領域中に形成された第2の伝導形の正味の導電率をもつ第1及び第2のソース/ドレイン領域を含み、各ソース/ドレイン領域はゲート領域の相対する側のデバイスの横方向表面領域に沿って形成され、各ソース/ドレイン領域はゲート領域方向に延びる第1の部分とゲート領域から離れるように延びる第2の部分を含み、ソース、ドレイン領域の1つは、横方向表面領域に沿った第1の伝導形のタブドーパント濃度を特徴とし、第2の部分で第1のタブドーパント濃度は相対的に高く、第2の部分及びゲート構造に向う第1の領域から延びるタブドーパント濃度は相対的に低い半導体デバイス。
【請求項2】
前記1つのソース/ドレイン領域中の相対的に低いタブドーパント濃度は、ゲート構造に延びる請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
前記1つのソース/ドレイン領域中の相対的に高いタブドーパント濃度は、1cm当り1E19より低く、前記1つのソース/ドレイン領域中の相対的に低いドーパント濃度は、1cm当り9E18より低い請求項1記載のデバイス。
【請求項4】
前記1つのソース/ドレイン領域中の相対的に高いタブドーパント濃度は1cm当り1E16ないし1cm当り1E19で、前記1つのソース/ドレイン領域中の相対的に低いドーパント濃度は、1cm当り9E18より低い請求項1記載のデバイス。
【請求項5】
前記1つのソース/ドレイン領域中の相対的に高いタブドーパント濃度は、1cm当り約2E18で、前記1つのソース/ドレイン領域中の相対的に低いドーパント濃度は、1cm当り約1E18である請求項1記載のデバイス。
【請求項6】
複数の電界効果トランジスタを含み、第1のトランジスタは第1の伝導形のタブ領域中に形成され、第1のトランジスタはゲート構造及びタブ領域中に形成された第2の伝導形の正味の導電率をもつ第1及び第2のソース/ドレイン領域を含み、1つのソース/ドレイン領域下のタブ領域は、1つのソース/ドレイン領域に沿い、ゲート領域に延びる第1の部分と、1つのソース/ドレイン領域に沿い、ゲート領域から離れるように延びる第2の部分を含み、第1の部分は第2の部分のタブドーパント濃度に比べ低い第1の伝導形のタブドーパント濃度を特徴とする半導体デバイス。
【請求項7】
低い第1の部分のタブドーパント濃度は、ゲート構造下まで延びる請求項6記載のデバイス。
【請求項8】
第2の部分中のタブドーパント濃度は、1cm当り1E19より低く、第1の部分中のタブドーパント濃度は、1cm当り9E18より低い請求項6記載のデバイス。
【請求項9】
第2の部分中のタブドーパント濃度は1cm当り1E16ないし1cm当り1E19で、第1の部分中のタブドーパント濃度は1cm当り9E18より低い請求項6記載のデバイス。
【請求項10】
第2の部分中のタブドーパント濃度は1cm当り約1E18で、第1の部分中のタブドーパント濃度は1cm当り約5E17である請求項6記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−157759(P2010−157759A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38787(P2010−38787)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【分割の表示】特願2002−280434(P2002−280434)の分割
【原出願日】平成14年9月26日(2002.9.26)
【出願人】(301030605)アギア システムズ ガーディアン コーポレーション (15)
【氏名又は名称原語表記】Agere Systems Guardian Corporation 
【Fターム(参考)】