説明

抗腫瘍化合物、癌の治療方法および製剤学的組成物

下記の構造式を有する化合物で
【化1】


式中、A、D、Q、T、U、V、W、X、Y、Z、Rおよび−−−−は本明細書に記載のとおりである。また本発明は、これらの化合物の1つでチューブリン重合を阻害し、癌または血管新生に関連する疾患を治療する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗腫瘍化合物、これを用いた癌の治療方法および製剤学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
癌治療には、手術、放射線療法、化学療法またはこれらの療法のいずれかの組み合わせをはじめとするいくつかの治療法が適用されている。このうち、化学療法は手術不能の癌または転移性癌には必要不可欠である。
【0003】
真核細胞の微小管系は、抗癌剤の重要な標的である。より具体的には、チューブリン重合/解重合が、新たな化学療法薬の標的になることが多い。臨床的に使用されている種々の化合物(パクリタキセル、エポチロンA、ビンブラスチン、コンブレタスタチンA―4、ドラスタチン10およびコルヒチンなど)は、チューブリン重合/解重合を標的としており、細胞内の微小管構造を破壊して有糸分裂を停止させ、新たな血管上皮細胞の増殖を阻害する。例えば、Jordan et al.(1998)Med. Res. Rev. 18:259―296を参照されたい。このように、これらの化合物は、癌(固形癌および血液腫瘍の両方)、心血管疾患(アテローム性動脈硬化症など)、慢性炎症(リウマチ性関節炎、クローン病など)、糖尿病(糖尿病性網膜症)、黄斑変性、乾癬、子宮内膜症および眼疾患(角膜、網膜血管新生など)等の疾患で起こる過剰な血管新生を抑える作用を有すると考えられる。例えば、Grigs et al.(2002)Am. J. Pathol. 160(3):1097―103を参照されたい。
【0004】
コンブレタスタチンA―4(CA―4)を例として挙げる。Pettitらによって1982年に単離された(Can. J. Chem. 60:1374―1376)CA―4は、南アフリカのCombretum caffrumという木の樹幹由来の最も強力な抗有糸分裂剤の一つである。この薬物は、多剤耐性癌細胞を含む多岐にわたるヒト癌細胞に対して強力な細胞毒性を示す。例えば、Petit et al.(1995)J. Med. Chem. 38:1666―1672;Lin et al.(1989)Biochemistry 28:6984―6991;およびLin et al.(1988)Mol. Pharmacol. 34:200―208を参照されたい。コルヒチンと同じ構造を有するCA―4は、コルヒチンそれ自体よりもチューブリン上のコルヒチン結合部位に対し高い親和性を示す(Pettit et al.(1989)Experientia 45: 209―211)。また、CA―4は抗血管新生作用も有することが明らかにされている。Pinney et al.のWO 01/68654A2号を参照されたい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、CA―4は水溶性が低いため、in vivoにおける有効性が制限されてしまう。Chaplin et al.(1999)Anticancer Research 19:189―195;およびCrosios et al.(1999)Br. J. Cancer 81:1318―1327を参照されたい。
【0006】
本発明の目的は、同様に微小管系を標的にする(チューブリン重合/解重合など)化合物を同定することにより、癌または癌に伴う症状を治療または予防するのに有用な新しい治療薬を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、縮合二環系ヘテロアリール基を有する化合物が特定の癌細胞の増殖を有効的に阻害するという発見に基づくものである。
【0008】
一態様では、本発明は縮合二環系ヘテロアリール化合物を特徴とする。
【0009】
この縮合二環系ヘテロアリール化合物の一種は以下の構造式を有し、
【0010】
【化1】

式中、各−−−−線は一重結合または二重結合であって、
AはC(=O)、CRR'、O、NR、S、SOまたはSOであって、
Dはアリールまたはヘテロアリールであり、
はH、アルキル、アリール、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、アミノまたはアルキルアミノから選択され、
Q、U、VおよびYはそれぞれ独自にCRまたはNであり、
XはN、CRまたはNR'であって、
ZはCであって、
TおよびWはそれぞれCまたはNであり、TおよびWの少なくとも一つはCであって、
TがCでありWがNである場合は、TとWとの結合は一重結合で、TとZとの結合は二重結合で、YとZの結合は一重結合で、XとYとの結合は二重結合で、WとXとの結合は一重結合で、XはNまたはCRであり、
TがNでありWがCである場合は、TとWとの結合は一重結合で、TとZとの結合は一重結合で、YとZとの結合は二重結合で、XとYとの結合は一重結合で、WとXとの結合は二重結合で、XはNまたはCRであり、
TがCでありWがCである場合は、TとWとの結合は二重結合で、TとZとの結合は一重結合で、YとZとの結合は二重結合で、XとYとの結合は一重結合で、WとXとの結合は一重結合で、XはNRでYはNであるか、XはNRでYはCRであり、Q、UおよびVのうち少なくとも一つはNであって、
RおよびR'はそれぞれ独自にH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクリル、ヘテロシクリル、SO、SO、SONR、CORa、COORaまたはCONRであり、RaおよびRbはそれぞれ独自にH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクリルまたはヘテロシクリルである。
【0011】
上記式において、本化合物は以下の特徴を有することができる。TおよびXはそれぞれNであり、WはCであり、Q、UおよびVはそれぞれCHであり、YはCRであって、TおよびWはそれぞれCであり、XはNHであり、YはNであり、Q、UおよびVはそれぞれCHであって、TおよびWはそれぞれCであり、QおよびUはそれぞれCHであり、VはNであり、XはNHであり、YはCRであって、TはCであり、WはNであり、Q、U、VおよびXはそれぞれCHであり、YはCRであって、TはNであり、WはCであり、Q、U、VおよびXはそれぞれCHであり、YはCRであって、TはCであり、WはNであり、Q、UおよびVはそれぞれCHであり、XはNであり、YはCRであって、TおよびWはそれぞれCであり、Q、UおよびVはそれぞれCHであり、XはOであり、YはNであって、TおよびWはそれぞれCであり、WはCであり、QはCHであり、UおよびVはそれぞれNであり、XはNHであり、YはCRであるか、TはCであり、W、VおよびXはそれぞれNであり、QおよびUはそれぞれCHであり、YはCRである。さらに、本化合物は下記の特徴を一つ以上有することができる。Dは置換フェニル、例えば3,4,5―トリメトキシフェニルであって、AはC(O)であって、AはCH、NH、O、SまたはSOである。
【0012】
また、縮合二環系ヘテロアリール化合物の別の一種は以下の構造式を有し、
【0013】
【化2】

式中、−−−−線は一重結合または二重結合であって、
AはC(=O)、CRR'、O、NR、S、SOまたはSOであり、
Dはアリールまたはヘテロアリールであり、
はアルキル、アリール、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、アミノまたはアルキルアミノから選択され、
Q、UまたはVはそれぞれ独自にCRまたはNであって、
XはOまたはSであって、
YはCR''またはNであって、
T、WおよびZはそれぞれCであって、
TとWとの結合は二重結合であって、
TとZとの結合は一重結合であって、
YとZとの結合は二重結合であって、
XとYとの結合は一重結合であって、
WとXとの結合は一重結合であり、
RおよびR'はそれぞれ独自にH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクリル、ヘテロシクリル、SO、SO、SONR、CORa、COORaまたはCONRであり、R''はH、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアリール、シクリル、ヘテロシクリル、SO、SO、SONR、CORa、COORaまたはCONRであって、RaおよびRはそれぞれ独自にH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクリルまたはヘテロシクリルである。
【0014】
上記の構造式において、本化合物は以下の特徴の一つ以上を有することができる。Q、UおよびVはそれぞれCHであり、YはCRであって、Dは置換フェニル、例えば3,4,5―トリメトキシフェニルであって、AはC(O)であって、YはCH、CNH、CCHまたはCCHCHである。
【0015】
本明細書で用いる用語「アルキル」は、1〜10個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖炭化水素を指す。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n―プロピル、i―プロピル、n―ブチル、i―ブチルおよびt―ブチルが挙げられるが、これに限定されない。用語「アルケニル」は、1〜10個の炭素原子および1つ以上の二重結合を含む直鎖または分枝鎖炭化水素を指す。用語「アルキニル」は、1〜10個の炭素原子および1つ以上の三重結合を含む直鎖または分枝鎖炭化水素を指す。用語「アルコキシ」は、―O―アルキルを指す。用語「アミノ」は2個の水素原子に結合した窒素基または1つの水素と1つのアルキル基または2つのアルキル基を指す。
【0016】
用語「アリール」は6炭素一環系、10炭素二環系、14炭素三環系の芳香族環系を指し、それぞれの環が1〜4個の置換基を有していてよい。アリール基の例としては、フェニル、ナフチルおよびアントラセニルが挙げられるが、これに限定されない。用語「アリロキシ」は―O―アリールを指す。用語「アラルキル」は、アリール基で置換したアルキル基を指す。
【0017】
用語「シクリル」は、3〜12個の炭素原子を有する飽和および部分的に不飽和な環系の炭化水素基を指す。シクリル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルが挙げられるが、これに限定されない。
【0018】
用語「ヘテロアリール」は、一つ以上のヘテロ原子(O、NまたはSなど)を有する芳香族一環系の5―8員環、二環系の8―12員環または三環系の11―14員環を指す。ヘテロアリール基の例としては、ピリジル、フリル、イミダゾリル、ベンジジダゾリル、ピリミジニル、チエニル、キノリニル、インドリルおよびチアゾリルが挙げられる。用語「ヘテロアラルキル」は、ヘテロアリール基で置換したアルキル基を指す。
【0019】
用語「ヘテロシクリル」は、1つ以上のヘテロ原子(O、NまたはSなど)を有する非芳香族一環系の5―8員環、二環系の8―12員環または三環系の11―14員環を指す。ヘテロシクリル基の例としては、ピペラジニル、ピロリジニル、ジオキサニル、モルフォリニルおよびテトラヒドロフラニルが挙げられるが、これに限定されない。
【0020】
本明細書に記載のアルキル、アルケニル、シクリル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリールおよびアルコキシは、飽和および非置換部位の両方を含む。置換基の例としては、ハロ、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、ニトロ、メルカプト、アルコキシカルボニル、アミド、カルボキシ、アルカンスルホニル、アルキルカルボニル、カルバミド、カルバミル、カルボキシル、チオウレイド、チオシアナト、スルホンアミド、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキロキシ、アリール、ヘテロアリール、シクリル、ヘテロシクリルが挙げられるが、これに限定されず、そのなかでアルキル、アルケニル、アルキニル、アルキロキシ、アリール、ヘテロアリールシクリルおよびヘテロシクリルをさらに任意に置換することができる。
【0021】
下記化合物1〜16は本発明による二環系のヘテロアリール化合物の例である。
【0022】
【化3】

本発明による化合物のその他の例を以下に挙げる。
【0023】
【化4】

上記の二環系ヘテロアリール化合物は癌細胞の増殖を阻害する。このため、別の態様において、本発明は癌の治療法も特色とする。この方法には、その治療を必要とする患者(被験者)に上記の化合物の一つの有効量を投与することも含まれる。
【0024】
さらに別の態様において、本発明はチューブリン重合を阻害し、血管新生に関連する疾患を治療する方法をも特色とする。この方法には、その治療を必要とする患者に上記の化合物の一つ以上の有効量を投与することも含まれる。
【0025】
また、本発明の範囲には、癌または血管新生に関連する疾患の治療に用いる上述の化合物を1種類以上含む組成物、ならびに癌または血管新生に関連する疾患を治療するための薬物の製造におけるこの組成物の使用が含まれる。
【0026】
本発明の多数の実施形態の詳細について下記に述べる。本発明のその他の特徴、目的および利点については、その説明および請求項によって明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
上述の縮合二環系ヘテロアリール化合物は当技術分野で既知の方法によって調製することができる。例えば、インダゾール、イミダゾ[1,2―a]ピリジン、1H―ピロロ[2,3―b]ピリジン、インドリジン、ピラゾロ[1,5―a]ピリジン、ベンゾ[d]イソキサゾールおよび7H―ピロロ[2,3―d]ピリミジンの合成方法は文献に記載されている。Chemistry of Heterocyclic Compounds, Vol.22、編集Richard H. Wiley、発行Interscience Publishers、New York、1967を参照されたい。当業者はこれらの方法を改善し、本発明の縮合二環系ヘテロアリール化合物を調製することができる。反応式1〜4に、化合物1、2、3および7それぞれの合成経路を示す。
【0028】
反応式1
【0029】
【化5】

反応式2
【0030】
【化6】

反応式3
【0031】
【化7】

反応式4
【0032】
【化8】

本発明の化合物を合成するためには、好適な合成のための化学的変換および保護基の方法論(保護および脱保護)を用いることができる。これらの変換および方法論は当技術分野において既知であり、例えばR. Larock, Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers (1989);T.W. Greene and P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Ed., John Wiley and Sons (1999);L. Fieser and M.Fieser, Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis、John Wiely and Sons (1994)およびL. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)およびその後の版に記載のものが含まれる。
【0033】
合成縮合二環系複素環式化合物はさらに、フラッシュカラムを用いるクロマトグラフィー、高性能液体クロマトグラフィーまたは結晶化によって精製することができる。
【0034】
また、本発明の適用範囲には、本発明の少なくとも1つの縮合二環系複素環式化合物の有効量および製剤学的に許容可能な担体を含む製剤学的な組成物が含まれる。さらに、本発明は、チューブリン重合を阻害する方法あるいは癌または血管新生に関連する疾患を治療する方法も網羅する。この方法には、既に述べたように、患者に縮合二環系複素環式化合物の一つの有効量を投与することも含まれる。
【0035】
本明細書で使用される場合に、用語「治療」は、疾患(癌または血管新生に関連する疾患など)を有する患者、またはこうした疾患による症状を呈する患者、またはこうした疾患の素因を有する患者に対して、疾患、疾患による症状または疾患の素因の治癒、完治、緩和、軽快、変化、治療、改善、改良または阻害を目的として縮合二環系ヘテロアリール化合物を投与することを指す。用語「有効量」は、患者において意図した治療効果を得るのに必要な活性剤の量を指す。当業者に認識されているように、有効量は投与経路、使用調剤および他剤との併用の可能性によって異なることがある。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「癌」は、自動的に増殖する能力を有する細胞、すなわち急速に激増する細胞増殖を特徴とする異常な状態または条件を有する細胞を指す。また、癌は、癌細胞がP―糖タンパク、多剤耐性関連タンパク質、肺癌耐性関連タンパク質、乳癌耐性タンパク質または抗癌剤への耐性を伴う他のタンパク質を発現している薬物耐性表現型になる恐れがある。癌の例としては、白血病、肉腫、骨肉腫、リンパ腫、メラノーマ、卵巣癌、皮膚癌、精巣癌、胃癌、膵臓癌、腎癌、乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、頭頚部癌、脳腫瘍、食道癌、膀胱癌、副腎癌、肺癌、気管支癌、子宮内膜癌、鼻咽腔癌、子宮頚部癌、肝癌または原発巣が不明の癌などの癌腫または肉腫が挙げられるが、これに限定されない。
【0037】
用語「血管新生」は、体内で起こる重要かつ自然な過程である新たな血管の増殖を指す。多くの重篤な疾患状態において、身体は血管新生を制御することができなくなる。血管新生依存性疾患は、新たな血管が過剰に増殖した結果として起こる。血管新生に関連する疾患の例としては、心血管疾患(アテローム性動脈硬化症など)、慢性炎症(リウマチ性関節炎またはクローン病など)、糖尿病(糖尿病性網膜症など)、黄斑変性、乾癬、子宮内膜症および眼疾患(角膜または網膜血管新生など)が挙げられる。
【0038】
本発明の方法を実践するには、上述の製剤学的組成物を経口、非経口、吸入スプレー、局所塗布、経直腸、経鼻、経頬粘膜、経膣または植え込み型リザーバーで投与することができる。本明細書で使用する場合、用語「非経口」の例としては、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液包内、胸骨内、髄腔内、病変内および頭蓋内への注射または注入法が挙げられる。
【0039】
滅菌注射用組成物、例えば滅菌注射用水性または油性懸濁液は、好適な分散剤または湿潤剤(Tween 80など)と懸濁剤とを用いて、当技術分野で既知の手法に従って調製することができる。滅菌注射用製剤は、例えば1,3―ブタンジオールを用いた溶液など、非毒性かつ非経口的に許容可能な希釈剤または用剤を用いた滅菌注射用溶液または懸濁液であることもできる。使用できる許容可能な担体および溶媒は、マンニトール、水、リンゲル液および等張性食塩水である。また、従来から滅菌した固定油が溶媒または懸濁用培地として使用されている(合成モノ―またはジグリセリドなど)。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸および、オリーブ油またはヒマシ油などの天然の製剤学的に許容可能な油、特に多価オキシエチル化された油は、注射溶液の調製に有用である。これらの油溶液または懸濁液は、長鎖アルコール希釈液または分散剤、あるいはカルボキシメチルセルロールまたは同様の分散剤を含むこともできる。このほか、よく用いられるTweens、Spansなどの界面活性剤あるいはその他の同様の乳化剤または製剤学的に許容可能な固形、液体または他の剤型の製造によく用いられる生体内利用率増強剤も、本組成のために用いることができる。
【0040】
経口投与用の組成物は、カプセル剤、錠剤、エマルジョンおよび水性懸濁液、分散液および溶液を含むが、これに限定されない経口的に許容可能なあらゆる剤型であることができる。経口投与用の錠剤の場合、よく用いられる担体はラクトースおよびトウモロコシデンプンである。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤も、通常、添加される。カプセルの形状での経口投与で有用な希釈剤は、ラクトースおよび乾燥トウモロコシデンプンである。水性懸濁液またはエマルジョンを経口投与する場合、活性成分は乳化剤または懸濁剤と結合した油相に懸濁または溶解することができる。必要に応じて、特定の甘味剤、香味剤または着色剤を添加することもできる。経鼻エアロゾルまたは吸入用組成物は、製薬業界で既知の手法に従って調製することができ、ベンジルアルコールまたは他の好適な保存剤、生体内吸収率を高めるための吸収促進剤、フルオロカーボンおよび/または業界内で既知のその他の可溶化剤または分散剤を用いて食塩水の溶液として調製することができる。縮合二環系複素環式化合物を含有する組成物は、直腸投与用の座薬という剤型で投与することもできる。
【0041】
製剤学的組成物での担体は、組成内の活性成分と適合し(好ましくは活性成分を安定化することができ)、治療される患者に有害ではないという意味において「許容可能」でなければならない。例えば、縮合二環系複素環式化合物と特異的でより可溶性の高い複合体を形成するシクロデキストリンなどの可溶化剤または一つ以上の可溶化剤を製剤学的調剤として使用して、縮合二環系複素環式化合物を送達することができる。その他の担体の例としては、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、ラウリル硫酸ナトリウムおよびD&C黄色10号が挙げられる。
【0042】
1つ以上の縮合二環系複素環式化合物が癌細胞系の増殖を阻害する際の有効性を予備的に評価するために好適なin vitro測定が使用できる。さらに、in vivo測定で癌治療における有効性をさらに調査することができる。例えば、この化合物は、癌を有する動物(マウスモデルなど)に投与され、その治療効果を評価することができる。その結果に基づき、適切な用量範囲および投与経路を判断することもできる。
【0043】
上述の縮合二環系複素環式化合物の、チューブリン重合を阻害し、血管新生を阻害するに際の有効性は、以下の具体例に記載の方法でスクリーニングすることができる。
【0044】
これ以上の詳細は述べずとも、上記の説明は十分に本発明を可能にするものであると考える。このため、下記の具体的な実施例は、単に説明目的でなされるものであって、いかなる方法をもってしても開示の残りを限定するものではない。本明細書に記載の参考文献はすべて参照として本文に組み込まれている。
【0045】
実施例
実施例1:(7―メトキシ―イミダゾ[1,2―a]ピリジン―3―イル)―(3,4,5―トリメトキシ―フェニル)メタノン(化合物1)の合成
Loeber, S et al.、Bioorg Med Chem Lett 1999,9(1),97―102に記載の方法に従って、7―メトキシイミダゾ[1,2―a]ピリジンを調製した。
【0046】
7―メトキシイミダゾ[1,2―a]ピリジン(621mg、4.2mmol)をジメチルホルムアミド(4mL)中でPOCl(16.8mmol)と混合した。この反応混合物を90℃で24時間加熱し、その後室温まで冷却した。溶媒を真空中で除去した後、油を採取した。この油を、シリカゲルカラムでEtOAc/ヘキサン(1:1)を用いて溶出精製して、7―メトキシイミダゾ[1,2―a]ピリジン―3―カルバルデヒド(508mg, 69%)を得た。
【0047】
濃縮器、漏斗および電磁撹拌機付きの乾燥フラスコに、削り状マグネシウム(2.5mmol)、無水テトラヒドロフラン(THF)0.5mLおよびイオジンの小片を入れた。これに漏斗を介してTHF 1.3mLに溶解した3,4,5―トリメトキシブロモベンゼンの約1/3(2.5mmol)を加えた。この溶液が無色になったら(加熱が必要な場合もある)、残りの3,4,5―トリメトキシブロモベンゼン溶液をゆっくりと還流しながら少量ずつこの溶液に加えた。この反応化合物を室温で1時間攪拌した後、THF(3mL)に溶解した7―メトキシイミダゾ[1,2―a]ピリジン―3―カルバルデヒド(0.094g、0.53mmol)を0℃でゆっくりと添加した。添加後、この溶液を室温でさらに20分間攪拌した。その後、飽和NHCl溶液(5mL)を0℃でゆっくりと添加し、この混合物を10分間攪拌した。水層を分離しEtO(3×10mL)で抽出した。混合有機層を食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥して、濾過した。この濾過物を真空中で濃縮し、その残留物をカラムクロマトグラフィーで精製してベンズヒドロール(0.119g)を得た。
【0048】
無水CHCl 5mLに溶解したベンズヒドロール(0.115g、0.33mmol)の溶液に、MnO(0.444g、5.1mmol)を0℃で攪拌しながら添加した。添加後、この混合物を室温で8時間攪拌した。この混合物を無水エーテル(50mL)で希釈し、セライトパッドで濾過した。この濾過物を真空中で濃縮し、その残留物をフラッシュクロマトグラフィーで精製して化合物1を得た(0.087g、76%)。
【0049】
H NMR(300MHz,CDCl)δ3.92(s,9H,−OC),3.94(s,3H,−OC),6.83(dd,1H,J=7.5,1.5Hz),7.11(s,2H),7.12(d,1H,J=1.5Hz),8.16(s,1H),9.49(d,J=1H,7.5Hz)。
【0050】
実施例2:(7―メトキシ―2―メチル―イミダゾ[1,2―a]ピリジン―3―イル)―(3,4,5―トリメトキシ―フェニル)―メタノン(化合物2)の合成
4―メトキシ―2―アミノピリジン(1.07g、8.6mmol)とエチル2―クロロアセトアセテート(5.4g)とEtOH(50mL)を混合し、24時間還流した。その後、この反応混合物を容量が半分になるまで濃縮し、CHClで抽出し、食塩水、次に水で洗浄し、無水MgSOで乾燥した。溶媒を真空中で除去し、残留物をシリカゲルカラムでEtOAc次にMeOH/CHCl(1:9)を用いて精製して、エチル―7―メトキシ―2―メチルイミダゾ[1,2―a]ピリジン―3―カルボキシレート(2.71g、90%)を得た。
【0051】
結果得られた産物(0.340g、1.04mmol)とTHF(15mL)の混合混合物を、N下にて0℃で10分間攪拌した。リチウムアルミニウムヒドリド(LAH)を添加し、この混合物をN下にて室温で1晩攪拌した。その後、NHCl水溶液(5mL)を添加した。この混合物を、容量が半分になるまで濃縮し、EtOAcで抽出した。この混合有機層を食塩水、ついで水で洗浄し、無水MgSOで乾燥し、蒸発させて残留物を得た。無水CHCl(15mL)中でMnO(0.783g、9mmol)をこの残留物に0℃で攪拌しながら添加した。添加後、この混合物を室温で8時間攪拌して、無水エーテル(50mL)で希釈し、セライトパッドで濾過した。この濾過物を真空中で濃縮し、その残留物をフラッシュクロマトグラフィーで精製して、7―メトキシ―2―メチルイミダゾ[1,2―a]ピリジン―3―カルバルデヒド(0.070g、53%)を得た。
【0052】
結果得られた産物を、3,4,5―トリメトキシブロモベンゼンと反応させ、実施例1に記載したのと同じ方法でMnOで酸化させ、収率55%にて化合物2を得た。
【0053】
H NMR(300MHz,CDCl)δ2.22(s,3H,−C),3.89(s,6H,−OC),3.92(s,3H,−OC),3.93(s,3H,−OC),6.71(dd,1H,J=7.8,2.4Hz),6.92(s,3H),9.24(d,1H,J=7.8Hz)。
【0054】
実施例3:(6―メトキシ―3a,7a―ジヒドロ―1H―インダゾール―3―イル)―(3,4,5―トリメトキシ―フェニル)―メタノン(化合物3)の合成
6―メトキシ―1H―インダゾール―3―カルボキシル酸(0.200g、1.04mmol)とTHF(15mL)の混合物を、N下にて0℃で10分間攪拌した。LAHを添加し、その混合物をN下にて室温で1晩攪拌した。その後、NHCl水溶液(5mL)を添加し、この反応混合物を容量が半分になるまで濃縮して、EtOAcで抽出した。有機層を食塩水および水で洗浄し、無水MgSOで乾燥し、真空中で溶媒を除去して残留物を得た。無水CHCl(15mL)中でMnO(0.680g、7.8mmol)をこの残留物に0℃で攪拌しながら添加した。添加後、この混合物を室温で8時間攪拌した。この混合物を、無水エーテル(50mL)で希釈して、セライトパッドで濾過した。濾過物を真空中で濃縮し、残留物をフラッシュクロマトグラフィーで精製して、6―メトキシ―1H―インダゾール―3―カルバルデヒド(0.100g、56%)を得た。
【0055】
結果得られた産物を、3,4,5―トリメトキシブロモベンゼンと結合させ、次に実施例1に記載したのと同じ方法でMnOで酸化させ、収率54%にて化合物3を得た。
【0056】
H NMR(300MHz,CDCl)δ3.89(s,3H,−OC),3.93(s,6H,−OC),3.94(s,3H,−OC),6.90(d,1H,J=2.1Hz),7.01(dd,1H,J=9,2.1Hz),7.665(s,2H),8.27(d,1H,J=9Hz),10.44(s,1H)。
【0057】
実施例4:(6―メトキシ―インドリジン―1―イル)―(3,4,5―トリメトキシ―フェニル)―メタノン(化合物4)の合成
tert―ブトキシドカリウム(5.4g、48mmol)をTHF(200mL)中の3―メチル―ピリジン―3―オール(5g、45.87mmol)に0℃で添加した。この混合物を室温で30分間攪拌した。MeI(3.2mL、48mmol)を少量ずつ0℃で添加し、室温で8時間攪拌を続けた。水を添加し、その混合物を容量が半分になるまで蒸発させ、EtOAcで抽出した。有機層を食塩水および水で洗浄し、無水MgSOで乾燥し、濾過した。この濾過物を真空中で濃縮し、残留物をフラッシュクロマトグラフィーで精製して、5―メトキシ―2―メチル―ピリジン(4.8g、85%)を得た。
【0058】
ヘキサン中のn―BuLi(1.6M、7.6mL、11.9mmol)を少量ずつ、THF(25mL)中のジイソプロピルアミン溶液(1.089g、10.9mmol)に、N下にて60〜−70℃で添加した。この混合物を10分間攪拌した。THF(5mL)中の5―メトキシ―2―メチル―ピリジン溶液(1.274g、10.35mmol)を上記の混合物に少量ずつ添加した。さらに10分間攪拌を続け、THF(5mL)中の3,4,5―トリメトキシベンゾニトリル(1.88g、9.74mmol)を−70℃で添加した。この混合物を−78℃で1時間攪拌した後、室温になるまで暖めた。さらに2時間攪拌を続け、この反応混合物を氷冷したNHCl水溶液に注ぎ入れた。有機層を分離し、水層をエーテルで抽出した。混合有機層を希釈したHCl溶液で抽出した。水層をエーテルで洗浄し、10%NaOH水溶液で中和して、エーテルで抽出した。有機層は水で洗浄して乾燥した。残留物をクロマトグラフィーでCHClを用いて溶出精製し、2―(5―メトキシピリジン―2―イル)―1―(3,4,5―トリメトキシフェニル)エタノン(2.31g、75.0%)を得た。
【0059】
結果として得られたピリジン誘導体(0.200g、0.631mmol)、クロロアセトアルデヒド(0.099g、1.3mmol)およびNaHCO(0.212g、2.6mmol)をアセトン(5mL)中で混合し、20時間還流した。沈殿物を濾過によって除去した。濾過物を濃縮して残留物を得て、それをシリカゲルカラムでCHClを用いて溶出精製し、化合物4(0.184g、95%)を得た。
【0060】
H NMR(300MHz,CDCl)δ3.86(s,3H,−OC),3.91(s,6H,−OC),3.93(s,3H,−OC),7.00(dd,1H,J=9.6,1.5Hz),7.08(d,1H,J=3Hz),7.10(s,2H),7.62(d,1H,J=1.5Hz),8.37(d,J=1H,9.6Hz)。
【0061】
実施例5:(6―メトキシ―2―メチル―インドリジン―1―イル)―(3,4,5―トリメトキシ―フェニル)―メタノン(化合物5)の合成
アセトン(5mL)中で2―(5―メトキシピリジン―2―イル)―1―(3,4,5―トリメトキシフェニル)エタノン(0.200g、0.631mmol)、1―ブロモ―2―プロパノン(0.171g、1.3mmol)およびNaHCO(0.212g、2.6mmol)を混合して、20時間還流した。沈殿物を濾過によって除去した。濾過物を濃縮して残留物を得て、それをシリカゲルカラムでCHClを用いて溶出精製して、化合物5(0.213g、95%)を得た。
【0062】
H NMR(300MHz,CDCl)δ2.29(s,3H,−C),3.81(s,3H,−OC),3.85(s,6H,−OC),3.92(s,3H,−OC),6.74(dd,1H,J=9.6,2.1Hz),6.97(s,2H),7.08(s,1H),7.40(d,1H,J=9.6Hz),7.50(d,1H,J=2.1Hz)。
【0063】
実施例6:(2―エチル―6―メトキシ―インドリジン―1―イル)―(3,4,5―トリメトキシ―フェニル)―メタノン(化合物6)の合成
アセトン(5mL)中で2―(5―メトキシピリジン―2―イル)―1―(3,4,5―トリメトキシフェニル)エタノン(0.200g、0.631mmol)、1―ブロモ―2―ブタノン(0.190g、1.3mmol)およびNaHCO(0.212g、2.6mmol)を混合して、加熱しながら20時間還流した。沈殿物を濾過によって除去した。濾過物を濃縮して残留物を得て、それをシリカゲルカラムでCHClを用いて溶出精製し、化合物6(0.213g、92%)を得た。
【0064】
H NMR(300MHz,CDCl)δ1.23(t,3H,−CH,J=7.5Hz),2.79(q,2H,−CCH,J=7.5Hz),3.81(s,3H,−OC),3.84(s,6H,−OC),3.92(s,3H,−OC),6.71(dd,1H,J=9.9,2.1Hz),6.97(s,2H),7.13(s,1H),7.31(d,1H,J=9.9Hz),7.52(d,1H,J=2.1Hz)。
【0065】
実施例7:(7―メトキシ―2―メチル―インドリジン―3―イル)―(3,4,5―トリメトキシ―フェニル)―メタノン(化合物7)の合成
THFに溶解した塩化メチル亜鉛(2M、10.489mL、21mmol)を、THF(10mL)に2―クロロ―4―メトキシピリジン(0.500g、3.48mmol)およびPd(PPh(0.161g、0.14mmol)を溶解した溶液に添加した。この混合物を40時間還流し、その後エチレンジアミンテトラ酢酸(1.5g)を含有する水溶液(10mL)に注ぎ入れた。結果得られた混合物を、KCOで中和して、EtOで抽出した。有機層を濃縮して残留物を得て、それをシリカゲルカラムでMeOH:EtOAc(1:10)を用いて溶出精製して、4―メトキシ―2―メチルピリジン(0.213g、50.0%)を得た。
【0066】
4―メトキシ―2―メチルピリジン(0.123g、1mmol)およびブロモアセトン(0.16mL、1mmol)をN下にて95℃で2時間加熱した。ベンゼン(10mL)中に溶解した1,8―ジアザビシクロ―[5.4.0]―ウンデカ―7―エン(0.34mL、2.2mmol)を添加した。その後、この混合物をN下で1時間還流し、氷水に注ぎ入れ、EtOAcで抽出した。混合有機層を水で洗浄し、乾燥した。溶媒を真空中で除去した後、残留物をシリカゲルカラムでEtOAc:ヘキサン(1:9)およびEtOAcを用いて溶出精製して、7―メトキシ―2―メチルインドリジン(0.050g、31%)を得た。
【0067】
このインドリジン7―メトキシ―2―メチルインドリジン(0.040g、0.25mmol、1eq.)、置換塩化ベンゾイル(2.0eq.)およびEtN(5.0eq.)の混合物を90℃(水浴温度)で2〜8時間加熱した。この反応混合物を室温になるまで冷却し、EtOAcを添加した。有機層を分離し、希釈HClおよび水で洗浄して、乾燥した。溶媒を除去した後、残留物をシリカゲルカラムでEtOAc:ヘキサン(1:9)を用いて溶出精製して、化合物7(0.065g、74%)を得た。
【0068】
H NMR(300MHz,CDCl)δ1.97(s,3H,−C),3.91(s,3H,−OC),3.88(s,9H,−OC),6.15(s,1H),6.54(dd,1H,J=7.8,2.7Hz),6.69(d,1H,J=2.7Hz), 6.85(s,2H),9.62(s,1H)。
【0069】
実施例8:(6―メチル―1H―ピロロ[2,3―b]ピリジン―3―イル)―(3,4,5―トリメトキシ―フェニル)―メタノン(化合物8)の合成
Samuel C.et al.,Heterocycles, 1990, 30(1), 627―633に記載の方法によって、6―クロロ―1―(フェニルスルホニル)―1H―ピロロ[2,3―b]ピリジンを調製した。
【0070】
THF(2M)中に塩化メチル亜鉛を溶解した溶液(9mL、12mmol)を、THF(30mL)中に6―クロロ―1―(フェニルスルホニル)―1H―ピロロ[2,3―b]ピリジン(0.600g、2.05mmol)およびPd(PPh(0.095g、0.08mmol)を溶解した溶液に添加した。この混合物を40時間還流し、水で急冷して0℃まで冷却し、EtOで抽出した。有機層を濃縮し、その残留物をシリカゲルカラムでEtOAc:ヘキサン(1:5)を用いて溶出精製して、N基で保護された6―メチル―7―アザインドール(0.495g、88%)を得た。
【0071】
50%NaOH溶液(0.573g)をエタノール(10mL)中のN基で保護された6―メチル―7―アザインドール(0.390g、1.43mmol)に添加した。8時間還流した後、この混合物を濃縮して、CHClで抽出した。有機層を水で洗浄して乾燥した。溶媒を真空中で蒸発させ、残留物をシリカゲルカラムでEtOAc:ヘキサン(1:3)を用いて溶出精製して、6―メチル―1H―ピロロ[2,3―b]ピリジン(0.148g、78%)を得た。
【0072】
室温で10分かけて、エチルマグネシウムブロミド(ジエチルエーテル中の3.0M溶液、0.43mL)を、乾燥CHCl(20mL)中の6―メチル―1H―ピロロ[2,3―b]ピリジン(0.127g、0.969mmol)および無水塩化亜鉛(0.263g、1.94mmol)の混合物に添加した。この懸濁液を1時間攪拌した後、乾燥CHCl(10mL)中の3,4,5―塩化トリメトキシベンゾイル(0.335g、1.45mmol)の溶液を5分かけて少量ずつ添加した。1時間後、塩化アルミニウム(0.129g、0.969mmol)を添加した。結果得られた濃い混合物を5時間激しく攪拌した。この反応混合物を水(10mL)で急冷し、CHCl(20mL)で抽出した。有機層を無水MgSOで乾燥させ、濃縮して茶色の油を得て、それをさらにシリカゲルカラム(MeOH:CHCl=1:25)で溶出精製して、白い固形物の化合物8(0.150g、48%)を得た。
【0073】
H NMR(300MHz,CDCl)δ2.76(s,3H,−C),3.92(s,6H,−OC),3.96(s,3H,−OC),7.17(s,2H),7.21(d,1H,J=8.1Hz),7.90(s,1H),8.59(d,1H,J=8.1Hz),13.29(s,1H)。

実施例9:(6―メトキシ―1H―ピロロ[2,3―b]ピリジン―3―イル)―(3,4,5―トリメトキシ―フェニル)―メタノン(化合物9)の合成
Minakata el al.,Synthesis, 1992, 7, 661―663に記載の方法によって、7―アザインドールN―オキシドを調製した。
【0074】
7―アザインドールN―オキシド(5.55g、8.6mmol)とAc2O(30mL)の混合物を12時間還流した。この反応混合物を、容量が半分になるまで濃縮し、CHClで抽出して、水で洗浄し、無水MgSOで乾燥して、蒸発させ、残留物を得て、その残留物をシリカゲルカラムでEtOAc:ヘキサン(1:6)を用いて溶出精製して、1―アセチル―1H―ピロロ[2,3―b]ピリジン―6―イルアセテート(4.55g、70%)を得た。
【0075】
1―アセチル―1H―ピロロ[2,3―b]ピリジン―6―イルアセテート(0.635g、2.9mmol)とKCO(1.6g、12mmol)をMeOH/HO(20mL/20mL)中で混合し、室温で12時間攪拌した。この反応混合物を容量が半分になるまで濃縮し、CHClで抽出した。有機層を無水MgSOで乾燥し、蒸発させて残留物を得て、それをさらにシリカゲルカラムで精製して、1H―ピロロ[2,3―b]ピリジン―6―オール(0.233g、60%)を得た。
【0076】
1H―ピロロ[2,3―b]ピリジン―6―オール(0.200g、1.49mml)とKCO(1g、7.45mmol)をアセトン(30mL)中で混合して、N下にて室温で1時間攪拌した。MeI(0.166g、1.192mmol)を添加した。この反応混合物をN下にて50℃で12時間撹拌し、その後濾過した。濾過物を容量が半分になるまで濃縮し、水で希釈して、CHClで抽出した。有機層を無水MgSOで乾燥して、蒸発させて残留物を得て、それをシリカゲルカラムでEtOAc:ヘキサン(1:4)を用いて溶出精製して、6―メトキシ―1H―ピロロ[2,3―b]ピリジン(159mg、89%)を得た。
【0077】
エチルマグネシウムブロミド(ジエチルエーテル中の3.0M溶液、0.33mL)を、乾燥CHCl(20mL)中の6―メトキシ―1H―ピロロ[2,3―b]ピリジン(0.108g、0.73mmol)および無水塩化亜鉛(0.201g、1.46mmol)の混合物に10分間かけて室温で添加した。この懸濁液を1時間攪拌して、乾燥CHCl(10mL)中の3,4,5―塩化トリメトキシベンゾイル(0.252g、1.09mmol)を5分間かけて少量ずつ添加した。この反応混合物を1時間攪拌した後、塩化アルミニウム(0.097g、0.73mmol)を添加した。結果得られた濃い混合物を5時間激しく攪拌した。この反応混合物を水(10mL)で急冷し、CHCl(20mL)で抽出した。混合有機層を無水MgSOで乾燥させ、蒸発させて茶色の油を得て、それをさらにシリカゲルカラムでEtOAc:ヘキサン(1:1)を用いて溶出精製し、化合物9(0.189g、76%)を得た。
【0078】
H NMR(300MHz,CDCl)δ3.91(s,6H,−OC),3.94(s,3H,−OC),3.99(s,3H,−OC),6.78(d,1H,J=8.7Hz),7.12(s,2H),7.64(d,1H,J=3Hz),8.49(d,1H,J=8.7Hz),9.09(s,1H)。
【0079】
実施例10:(6―エトキシ―1H―ピロロ[2,3―b]ピリジン―3―イル)―(3,4,5―トリメトキシ―フェニル)メタノン(化合物10)の合成
MeIの代わりにEtIを用いること以外は実施例9に記載のものと同じ方法で、化合物10を調製した。
【0080】
H NMR(300MHz,CDCl):δ1.45(t,1H,−OCH,J=6.9Hz),3.91(s,3H,−OC),3.93(s,3H,−OC),3.94(s,3H,−OC),4.39(q,2H,−OCCH,J=6.9Hz),6.76(d,1H,J=9Hz),7.12(s,2H),7.62(d,1H,J=3Hz),8.48(d,1H,J=9Hz),8.93(s,1H)。
【0081】
実施例11:(6―メトキシ―3a,7a―ジヒドロ―ベンゾフラン―3―イル)―(3,4,5―トリメトキシ―フェニル)―メタノン(化合物11)の合成
メタノール(40mL)中で(6―メトキシ―ベンゾフラン―3―イル)酢酸(2g、9.7mmol)およびHSO(0.3mL)を混合し、8時間還流した後に濃縮した。NaHCO水溶液を添加した後、CHClで抽出した。混合有機層を無水MgSOで乾燥させ、蒸発させて茶色の油を得て、それをさらにシリカゲルカラムでEtOAc:ヘキサン(1:10)を用いて溶出精製して、メチル2―(6―メトキシベンゾフラン―3―イル)アセテート(2.1g、98%)を得た。
【0082】
1,4―ジオキサン(10mL)中で、メチル2―(6―メトキシベンゾフラン―3―イル)アセテート(0.500g、2.27mmol)およびSeO(0.303g、2.73mmol)を混合して、2日間還流した後、濾過した。濾過物を真空中で濃縮し、残留物をシリカゲルカラムで精製して、メチル2―(6―メトキシベンゾフラン―3―イル)―2―オキソアセテート(0.452g、85%)を得た。
【0083】
メチル2―(6―メトキシベンゾフラン―3―イル)―2―オキソアセテート(0.280g、1.196mmol)とTHF(10mL)の混合物にLAH(0.093g、2.39mmol)をN下にて0℃で添加し、その混合物をN下にて室温で1晩攪拌した。NHCl水溶液(5mL)を添加し、その反応混合物を容量が半分になるまで濃縮し、EtOAcで抽出した。有機層を食塩水および水で洗浄し、無水MgSOで乾燥させて、蒸発させ、1―(6―メトキシ―ベンゾフラン―3―イル)―エタン―1,2―ジオールを得た。
【0084】
THF(50mL)および水(1mL)中の1―(6―メトキシ―ベンゾフラン―3―イル)―エタン―1,2―ジオール(0.180g、1.196mmol)に、NaIO(0.204g、1.12mmol)を攪拌しながら添加した。この混合物をN下にて室温で1晩攪拌した。水(10mL)を添加し、その混合物を容量が半分になるまで濃縮し、EtOAcで抽出した。有機層を食塩水および水で洗浄し、無水MgSOで乾燥させて、蒸発させ、残留物を得て、それをさらにシリカゲルカラムでEtOAc:ヘキサン(1:10)を用いて溶出精製して、6―メトキシベンゾフラン―3―カルバルデヒド(0.110g、73%)を得た。
【0085】
濃縮器、漏斗および電磁撹拌機付きの乾燥フラスコに、削り状マグネシウム(2.5mmol)、THF(0.5mL)およびイオジンの小片を加えた。これに漏斗を介してTHF 1.3mLに溶解した3,4,5―トリメトキシブロモベンゼンの約1/3(2.5mmol)を加えた。この溶液が無色になったら(加熱が必要な場合もある)、残りの3,4,5―トリメトキシブロモベンゼン溶液をゆっくりと還流しながら少量ずつこの溶液に加えた。その後攪拌を室温で1時間続けた。結果得られた溶液を、無水THF(5mL)中の6―メトキシベンゾフラン―3―カルバルデヒド(0.100g、0.176mmol)に0℃でゆっくりと添加した。添加後、この溶液を室温でさらに20分間攪拌した。その後、飽和NHCl溶液(5mL)を0℃でゆっくりと添加し、この混合物を10分間攪拌した。水層を分離しEtO(3×10mL)で抽出した。混合有機層を食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥して、濾過した。この濾過物を真空中で濃縮し、その残留物をカラムクロマトグラフィーで精製してベンズヒドロール(0.097g、50%)を得た。
【0086】
MnO(0.193g、1.88mmol)を、ベンズヒドロール(0.050g、0.145mmol)と無水CHCl 5mLの溶液に0℃で攪拌しながら添加した。添加後、この混合物を室温で8時間攪拌した。この混合物を無水エーテル(50mL)で希釈し、セライトパッドで濾過した。濾過物を真空中で濃縮し、残留物をフラッシュクロマトグラフィーで精製して、化合物11を得た(0.043g、87%)。
【0087】
H NMR(300MHz,CDCl)δ3.89(s,3H,−OC),3.92(s,6H,−OC),3.95(s,3H,−OC),7.03(dd,1H,J=8.4,2.1Hz),7.08(d,1H,J=2.1Hz),7.16(s,2H),8.03(s,1H),8.05(d,1H,J=9.3Hz)。
【0088】
実施例12:(6―メトキシ―2―メチル―3a,7a―ジヒドロ―ベンゾフラン―3―イル)―(3,4,5―トリメトキシ―フェニル)―メタノン(化合物12)の合成
6―メトキシベンゾフラン―3―カルバルデヒド(0.600g、3.41mmol)、HOCHCHOH(3.17g、51mmol)およびp―トルエンスルホン酸(0.001g)をベンゼン(20mL)中で混合し、Dean―Starkウォータートラップを用いて8時間還流した。この混合物を減圧で濃縮し、EtOAcで希釈した。この有機溶液を水で洗浄し、無水MgSOで乾燥させ、濃縮して、3―(1,3―ジオキソラン―2―イル)―6―メトキシベンゾフラン(0.711g、95%)を得た。
【0089】
3―(1,3―ジオキソラン―2―イル)―6―メトキシベンゾフラン(0.144g、0.65mmol)をTHF(5mL)に−30〜−20℃で溶解した。この溶液に、tert―ブチルリチウム(ペンタン中で15%、0.56mL、1.31mmol)を少量ずつ添加した。この反応混合物を−30℃で30分間持続的に撹拌し、0℃になるまで静置し、さらに20分間攪拌した。この反応混合物を再度−30℃まで冷却し、インドメタン(0.138g、0.98mmol)を少量ずつ添加した。−30℃でさらに1時間攪拌した後、1晩静置して室温にした。溶媒を減圧下で除去した後、残留物をEtOAcに溶解して、飽和NaHCOで洗浄した。水層をEtOAc(3×20mL)で抽出した。混合有機層を無水MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して、3―[1,3]ジオキソラン―2―イル―6―メトキシ―2―メチル―ベンゾフランを得た。
【0090】
2N HCl(5mL)を、THF(5mL)中の3―[1,3]ジオキソラン―2―イル―6―メトキシ―2―メチル―ベンゾフランに0℃で添加した。室温で1時間攪拌した後、溶媒を減圧下で除去した。残留物をEtOAcに溶解して、飽和NaHCOで洗浄した。水層をEtOAc(3×20mL)で抽出した。有機層を混合して、無水MgSOで乾燥させた。溶媒を除去した後、残留物をシリカゲルカラムでEtOAc:ヘキサン(1:9)を用いて溶出精製して、6―メトキシ―2―メチルベンゾフラン―3―カルバルデヒド(0.090g、81%)を得た。
【0091】
6―メトキシ―2―メチルベンゾフラン―3―カルバルデヒドを3,4,5―トリメトキシブロモベンゼンと結合させた後、実施例11に記載のものと同じ方法でMnOで酸化させ、化合物12を得た。
【0092】
H NMR(300MHz,CDCl)δ2.55(s,3H,−C),3.85(s,6H,−OC),3.86(s,3H,−OC),3.95(s,3H,−OC),6.85(dd,1H,J=9,2.4Hz),7.01(d,1H,J=2.4Hz),7.12(s,2H),7.34(d,1H,J=9Hz)。
【0093】
実施例13:(6―メトキシ―3a,7a―ジヒドロ―ベンゾ[b]チオフェン―3―イル)―(3,4,5―トリメトキシ―フェニル)―メタノン(化合物13)の合成
Campaigne et al.,J Heterocycl Chem, 1970, 7, 695に記載の方法を用いて、6―メトキシ―3―メチルベンゾ[b]チオフェンを調製した。
【0094】
6―メトキシ―3―メチルベンゾ[b]チオフェン(2.753g、15.5mmol)とSeO(2.06g、18.55mmol)を1,4―ジオキサン(30mL)中で混合し、2日間還流した後、濾過した。濾過物を真空中で濃縮し、残留物をシリカゲルカラムでEtOAc:ヘキサン(1:10)を用いて溶出精製して、6―メトキシベンゾ[b]チオフェン―3―カルバルデヒド(2.3g、80%)を得た。
【0095】
結果得られた産物を3,4,5―トリメトキシブロモベンゼンと結合させ、実施例11に記載のものと同じ方法でMnOで酸化させ、収率54%にて化合物13を得た。
【0096】
H NMR(300MHz,CDCl)δ3.89(s,6H,−OC),3.91(s,3H,−OC),3.95(s,3H,−OC),7.13(dd,1H,J=9,2.4Hz),7.14(s,2H),7.36(d,1H,J=2.4Hz),7.85(s,1H),8.37(d,1H,J=9Hz)。
【0097】
実施例14:(6―メトキシ―2―メチル―3a,7a―ジヒドロ―ベンゾ[b]チオフェン―3―イル)―(3,4,5―トリメトキシ―フェニル)―メタノン(化合物14)の合成
実施例12に記載の方法に従って、6―メトキシベンゾ[b]チオフェン―3―カルバルデヒドを、3―(1,3―ジオキソラン―2―イル)―6―メトキシベンゾ[b]チオフェンに変換した。
【0098】
結果得られた産物を3,4,5―トリメトキシブロモベンゼンと結合させ、実施例11に記載のものと同じ方法でMnOで酸化させ、収率79%にて化合物14を得た。
【0099】
H NMR(300MHz,CDCl)δ2.49(s,3H,−C),3.82(s,6H,−OC),3.87(s,3H,−OC),3.95(s,3H,−OC),6.92(dd,1H,J=9,2.4Hz),7.12(s,2H),7.26(d,1H,J=2.4Hz),7.44(d,1H,J=9Hz)。
【0100】
実施例15:(6―メトキシ―ピラゾロ[1,5―b]ピリダジン―3―イル)―(3,4,5―トリメトキシ―フェニル)メタノン(化合物15)の合成
THF(50mL)中の3,4,5―トリメトキシベンズアルデヒド(1.0g、5.0mmol)溶液を0℃で攪拌した。ナトリウムアセチリド(18% w.t.キシレン中のスラリー、1.63g、6.1mmol)をシリンジを介して添加した。この反応混合物を室温で1晩攪拌して、水で急冷した。その後、EtOAc(30mL×3)で抽出した。混合有機層を食塩水で洗浄し、無水MgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、粗産物を得て、それをフラッシュカラムクロマトグラフィーでEtOAc:n―ヘキサン(1:2)を用いて溶出精製して、白い固形物の1―(3,4,5―トリメトキシフェニル)プロップ―2―イン―1―オール(815mg、72%)を得た。
【0101】
アセトン(10mL)中の1―(3,4,5―トリメトキシフェニル)プロップ―2―イン―1―オール(100mg、0.44mmol)溶液を攪拌した後、ジョーンズ試薬を赤色を持続的に呈するまで少量ずつ0℃で添加した。この反応混合物を2―プロパノールで急冷し、セライトパッドを介した濾過によって沈殿物を除去した。濾過物をEtOAcで希釈し、飽和NaHCO水溶液、水および食塩水で数回洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮して、粗産物を得て、それをフラッシュカラムクロマトグラフィーでEtOAc:n―ヘキサン(1:4)を用いて溶出精製して、無色の油の1―(3,4,5―トリメトキシフェニル)プロップ―2―イン―1―オン(74mg、75%)を得た。
【0102】
メタノール(50mL)中の3―クロロ―6―メトキシピリダジン(1.0g、6.9mmol)と33%パラジウム炭素(100mg)の混合物を45psi下で1晩水素化した。触媒をセライトパッドで濾過して除去した。濾過物を濃縮し、EtOAcに溶解した。この溶液を飽和NaHCO溶液および食塩水で数回洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮して粗産物を得て、それをさらにシリカゲルカラムでEtOAc:n―ヘキサン(1:2)を用いて溶出精製して、薄い黄色の固形物である3―メトキシピリダジン(662mg、87%)を得た。
【0103】
H NMR(300MHz,CDCl):δ4.14(s,3H),6.98(dd,J=1.2,9.0Hz,1H),7.36(dd,J=4.5,8.7Hz,1H),8.84(dd,J=1.2,4.5Hz,1H)。
【0104】
重炭酸カリウム(2.5M)をヒドロキシルアミン―O―スルホン酸溶液(64.7mg、0.57mmol)に、pH値が5になるまで添加した。その後、3―メトキシピリダジン(42mg、0.38mmol)を70℃で10分かけて添加した。この混合物を70℃で2時間攪拌し、その後室温まで冷却した。この混合物のpH値を2.5M重炭酸カリウムを添加することによって8に調節した。CHCl(10mL)中の1―(3,4,5―トリメトキシフェニル)プロップ―2―イン―1―オン(42mg、0.19mmol)および水酸化カリウム(40mg、0.71mmol)を添加した。この混合物を室温で1晩攪拌し、CHClで抽出して、混合有機層を食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮して粗産物を得て、それをさらにシリカゲルカラムでCHCl:MeOH(20:1)を用いて溶出精製して、白い固形物である化合物15(31mg、48%)を得た。
【0105】
H NMR(300MHz,CDCl):δ3.93(s,6H),3.95(s,3H),4.11(s,3H),7.00(d,J=9.3Hz,1H),7.15(s,2H),8.23(s,1H),8.56(d,J=9.6Hz,1H)。
【0106】
実施例16:(2―メトキシ―7H―ピロロ[2,3―d]ピリミジン―5―イル)―(3,4,5―トリメトキシ―フェニル)―メタノン(化合物16)の合成
10%Pd/C(1.000g、11.6mmol)を、20mLの無水MeOH中の4―クロロ―2―メトキシ―7H―ピロロ[2,3―d]ピリミジン(0.200g、1.09mmol)溶液にH下にて室温で添加した。この混合物を8時間攪拌し、セライトパッドで濾過した。濾過物を真空中で濃縮し、主産物として2―メトキシ―6,7―ジヒドロ―5H―ピロロ[2,3―d]ピリミジンを得た。
【0107】
MnO(1.720g、20mmol)を、20mLの無水CHCl中の2―メトキシ―6,7―ジヒドロ―5H―ピロロ[2,3―d]ピリミジンに室温で添加した。この混合物を8時間攪拌し、無水エーテル(50mL)で希釈し、セライトパッドで濾過した。濾過物を真空中で濃縮し、残留物をシリカゲルカラムでMeOH:CHCl(1:9)を用いて溶出精製して、2―メトキシ―7H―ピロロ[2,3―d]ピリミジン(0.149g、90%)を得た。
【0108】
乾燥CHCl(20mL)中で、2―メトキシ―7H―ピロロ[2,3―d]ピリミジン(0.220g、1.476mmol)および無水塩化亜鉛(0.407g、2.953mmol)を混合し、エチルマグネシウムブロミド(0.65mL、ジエチルエーテル中の3.0M溶液)を室温で10分かけて添加した。この懸濁液を1時間攪拌し、乾燥CHCl(10mL)中の塩化トリメトキシベンゾイル(0.510g、2.2mmol)を5分かけて少量ずつ添加した。この反応混合物をさらに1時間攪拌し、塩化アルミニウム(0.196mg、1.476mmol)を添加した。結果得られた濃い混合物を5時間激しく攪拌した。この反応混合物を水(10mL)で急冷し、CHCl(20mL)で抽出した。混合有機層を無水MgSOで乾燥させ、蒸発させて茶色の油を得て、これをさらにシリカゲルカラム(EtOAc:ヘキサン=1:1〜MeOH:CHCl=1:20)で精製して、化合物16(0.081g、20%)を得た。
【0109】
H NMR(300MHz,CDCl)δ3.93(s,6H,−OC),3.95(s,3H,−OC),4.09(s,3H,−OC),7.13(s,2H),7.71(d,1H,J=2.4Hz),9.38(s,1H),9.79(s,1H)。
【0110】
実施例17:細胞増殖阻害測定
KB細胞(ヒト鼻咽腔癌由来の細胞系)およびNKM―45細胞(胃癌細胞系)を、5%ウシ胎仔血清を加えたRPMI1640培地を入れたプラスチック皿で維持した。KB細胞は最終細胞密度7000個/mLで96穴プレートに播種した。MKN―45細胞は最終細胞密度20000個/mLで96穴プレートに播種した。この細胞を被験化合物(5種類以上の濃度の被験化合物)で処理して、COインキュベータで37℃で72時間培養した。生存細胞の数をMTS測定(またはメチレンブルー測定)を用いて推定し、吸収率を490nmで測定した。被験化合物の細胞毒性はIC50値で表した。この値は2連の試料を用いた3種類の独立した実験の結果の平均値を表したものである。
【0111】
上記の測定で化合物1〜14を試験した。これらはすべてKB細胞およびMKN―45細胞の増殖を有効に阻害した。予測とは異なり、これらの化合物のほとんどのIC50値は、1mM未満であり、100nM未満のものもあった。
【0112】
実施例18:チューブリン重合測定
微小管の濁度測定を、Lopes et al.,(1997, Cancer Chemother. Pharmacol. 41:37―47)が記載した方法にいくらか改善を加えて実施した。MAPを豊富に含むチューブリン(2mg/mL)を、被験化合物とともに重合緩衝液(0.1M PIPES, pH6.9, 1mM MgCl)で4℃で2分間あらかじめインキュベートし、1mM GTPを添加した。その後、試料を96穴プレート自動調温制御分光光度計で37℃まで急速に暖め、350nmでの経時変化を測定した。
【0113】
実施例19:多剤抵抗性ヒト癌細胞系に対する細胞増殖阻害測定
本発明によるいくつかの縮合二環系ヘテロアリール化合物を、数個の多剤抵抗性細胞系パネルを対象にして試験した。ビンカアルカロイド類(ビンクリスチンおよびビンブラスチンなど)およびタキソールをはじめとするいくつかの抗有糸分裂剤が種々のヒト癌を治療するのに用いられてきたことはよく知られている。ビンカアルカロイド類の耐性は、p―糖タンパクおよび多剤耐性関連タンパク(MRP)の過剰発現をはじめとする多剤耐性(MDR)表現型に起因する多数の機序によるものとされてきた。タキソール耐性の原因である機序には、p―糖タンパクの過剰発現およびチューブリンの突然変異が含まれる。比較のため、5種類の抗有糸分裂剤すなわち、ビンクリスチン、VP―16、シスプラチン、カンプトテシンおよびタキソールを、例えばKB―Vin10(ビンクリスチン耐性細胞系)、KB100(カンプトテシン耐性細胞系)およびCPT30(カンプトテシン耐性細胞系)などのいくつかの薬剤耐性細胞系パネルを用いて試験する。
【0114】
実施例20:血管新生抑制能力のCAM測定
各被験化合物を2.5%アガロース水溶液に溶解する(最終濃度:1〜20mg/mL)。この溶液10μLを直径3mmの環状テフロンパレットに少量ずつ塗布し、その後直ちに室温まで冷却する。37℃、相対湿度80%で65〜70時間インキュベートした後、ニワトリ受精卵を水平に置いて数回回転させる。捩れ側を開ける前に、アルブミン10mLを突き出た側の穴から吸引する。2/3の高さ(突き出た側から)で、受精卵をメスでなぞり、殻を鉗子で除去する。開孔部(腔)を生鮮保存フィルムで覆った後、受精卵を37℃、相対湿度80%で75時間インキュベートした。絨毛尿膜がほぼ直径2cmになった時点で、1つのペレット(1ペレット/卵)をその上に置く。この卵を1日インキュベートした後に、立体顕微鏡で評価を行う。
【0115】
その他の実施形態
本明細書に開示した特性のすべてはあらゆる組み合わせで組み合わせることができる。本明細書に開示した特性はそれぞれ、同じ、同等の、または同類の目的を果たすための別の特性と置き替えてもよい。意図的に別の事例として記述されていない限り、開示された特性のすべては、同等または同類の特性の一般的な系列の例に過ぎない。
【0116】
上の説明から、当業者は本発明の本質的な特徴を容易に確かめることができ、その精神と範囲から逸脱することなしに、種々の使用および条件に合わせて本発明に種々の変化および改善を加えることができる。例えば、本発明の縮合二環系ヘテロアリール化合物と構造が類似している化合物を作り、癌細胞の増殖に対するそれらの抑制作用を調べ、本発明を実践するために使用することができる。このように、他の実施形態も本請求項内に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式を有することを特徴とする化合物。
【化1】

式中、各−−−−線は一重結合または二重結合であって、
AはC(=O)、CRR'、O、NR、S、SOまたはSOであって、
Dはアリールまたはヘテロアリールであり、
はH、アルキル、アリール、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、アミノまたはアルキルアミノから選択され、
Q、U、VおよびYはそれぞれ独自にCRまたはNであり、
XはN、CRまたはNR'であって、
ZはCであって、
TおよびWはそれぞれCまたはNであり、TおよびWの少なくとも一つはCであって、
TがCでありWがNである場合は、TとWとの結合は一重結合で、TとZとの結合は二重結合で、YとZの結合は一重結合で、XとYとの結合は二重結合で、WとXとの結合は一重結合で、XはNまたはCRであり、
TがNでありWがCである場合は、TとWとの結合は一重結合で、TとZとの結合は一重結合で、YとZとの結合は二重結合で、XとYとの結合は一重結合で、WとXとの結合は二重結合で、XはNまたはCRであり、
TがCでありWがCである場合は、TとWとの結合は二重結合で、TとZとの結合は一重結合で、YとZとの結合は二重結合で、XとYとの結合は一重結合で、WとXとの結合は一重結合で、XはNRでYはNであるか、XはNRでYはCRであり、Q、UおよびVのうち少なくとも一つはNであって、
RおよびR'はそれぞれ独自にH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクリル、ヘテロシクリル、SO、SO、SONR、CORa、COORaまたはCONRであり、RaおよびRbはそれぞれ独自にH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクリルまたはヘテロシクリルである。
【請求項2】
請求項1記載の化合物において、
TおよびXがそれぞれNであり、WはCであり、Q、UおよびVがそれぞれCHであり、YがCRであることを特徴とする化合物。
【請求項3】
請求項1記載の化合物において、
TおよびWがそれぞれCであり、XがNHであり、YがNであり、Q、UおよびVがそれぞれCHであることを特徴とする化合物。
【請求項4】
請求項1記載の化合物において、
TおよびWがそれぞれCであり、QおよびUがそれぞれCHであり、VがNであり、XがNHであり、YがCRであることを特徴とする化合物。
【請求項5】
請求項1記載の化合物において、
TがCであり、WがNであり、Q、U、VおよびXがそれぞれCHであり、YがCRであることを特徴とする化合物。
【請求項6】
請求項1記載の化合物において、
TがNであり、WがCであり、Q、U、VおよびXがそれぞれCHであり、YがCRであることを特徴とする化合物。
【請求項7】
請求項1記載の化合物において、
TがCであり、WがNであり、Q、UおよびVがそれぞれCHであり、XがNであり、YがCRであることを特徴とする化合物。
【請求項8】
請求項1記載の化合物において、
TおよびWがそれぞれCであり、Q、UおよびVがそれぞれCHであり、XがOであり、YがNであることを特徴とする化合物。
【請求項9】
請求項1記載の化合物において、
TおよびWがそれぞれCであり、WがCであり、QがCHであり、UおよびVがそれぞれNであり、XがNHであり、YがCRであることを特徴とする化合物。
【請求項10】
請求項1記載の化合物において、
TがCであり、W、VおよびXがそれぞれNであり、QおよびUがそれぞれCHであり、YがCRであることを特徴とする化合物。
【請求項11】
請求項1記載の化合物において、
Dが置換フェニルであることを特徴とする化合物。
【請求項12】
請求項1記載の化合物において、
Dが置換フェニルであり、AがC(O)であり、RがOCH、OCHCH、O―n―Pr、O―i―Pr、CHまたはN(CHであることを特徴とする化合物。
【請求項13】
請求項12記載の化合物において、
Dが3,4,5―トリメトキシフェニルであることを特徴とする化合物。
【請求項14】
請求項1記載の化合物において、
Dが置換フェニルであり、AがCH、NH、O、SまたはSOであり、RがOCH、OCHCH、O―n―Pr、O―i―Pr、CHまたはN(CHであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
以下の構造式を有することを特徴とする化合物。
【化2】

式中、−−−−線は一重結合または二重結合であって、
AはC(=O)、CRR'、O、NR、S、SOまたはSOであり、
Dはアリールまたはヘテロアリールであり、
はアルキル、アリール、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、アミノまたはアルキルアミノから選択され、
Q、UまたはVはそれぞれ独自にCRまたはNであって、
XはOまたはSであって、
YはCR''またはNであって、
T、WおよびZはそれぞれCであって、
TとWとの結合は二重結合であって、
TとZとの結合は一重結合であって、
YとZとの結合は二重結合であって、
XとYとの結合は一重結合であって、
WとXとの結合は一重結合であり、
RおよびR'はそれぞれ独自にH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクリル、ヘテロシクリル、SO、SO、SONR、CORa、COORaまたはCONRであり、R''はH、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアリール、シクリル、ヘテロシクリル、SO、SO、SONR、CORa、COORaまたはCONRであって、RaおよびRはそれぞれ独自にH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクリルまたはヘテロシクリルである。
【請求項16】
請求項15記載の化合物において、
Q、UおよびVがそれぞれCHであり、YがCRであることを特徴とする化合物。
【請求項17】
請求項16記載の化合物において、
Dが置換フェニルであり、AがC(O)であることを特徴とする化合物。
【請求項18】
請求項17記載の化合物において、
Dが3,4,5―トリメトキシフェニルであることを特徴とする化合物。
【請求項19】
請求項18記載の化合物において、
YがCH、CNH、CCHまたはCCHCHであることを特徴とする化合物。
【請求項20】
請求項1記載の化合物の有効量を治療の必要とする患者への投与を含むことを特徴とする癌の治療方法。
【請求項21】
請求項20記載の癌の治療方法において、
TおよびXがそれぞれNであり、WがCであり、Q、UおよびVがそれぞれCHであり、YがCRであることを特徴とする癌の治療方法。
【請求項22】
請求項20記載の癌の治療方法において、
TおよびWがそれぞれCであり、XがNHであり、YがNであり、Q、UおよびVがそれぞれCHであることを特徴とする癌の治療方法。
【請求項23】
請求項20記載の癌の治療方法において、
TおよびWがそれぞれCであり、QおよびUがそれぞれCHであり、VがNであり、XがNHであり、YがCRであることを特徴とする癌の治療方法。
【請求項24】
請求項20記載の癌の治療方法において、
TがCであり、WがNであり、Q、U、VおよびXがそれぞれCHであり、YがCRであることを特徴とする癌の治療方法。
【請求項25】
請求項20記載の癌の治療方法において、
TがNであり、WがCであり、Q、U、VおよびXがそれぞれCHであり、YがCRであることを特徴とする癌の治療方法。
【請求項26】
請求項15記載の化合物の有効量を治療の必要とする患者への投与を含むことを特徴とする癌の治療方法。
【請求項27】
請求項26記載の癌の治療方法において、
Q、UおよびVがそれぞれCHであり、XがOであり、YがCRであることを特徴とする癌の治療方法。
【請求項28】
請求項26記載の癌の治療方法において、
Q、UおよびVがそれぞれCHであり、XがSであり、YがCRであることを特徴とする癌の治療方法。
【請求項29】
製剤学的に許容可能な担体および請求項1記載の化合物を含むことを特徴とする製剤学的組成物。
【請求項30】
製剤学的に許容可能な担体および請求項15記載の化合物を含むことを特徴とする製剤学的組成物。

【公表番号】特表2008−526756(P2008−526756A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549615(P2007−549615)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/047366
【国際公開番号】WO2006/074041
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(507219941)ナショナル・ヘルス・リサーチ・インスティテューツ (1)
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL HEALTH RESEARCH INSTITUTES
【出願人】(507220604)
【氏名又は名称原語表記】CHAO, YU−SHENG
【Fターム(参考)】