説明

抗菌方法及び組成物

開示されたのは、アミノアシルtRNAシンセターゼ阻害剤、及び別のアミノアシルtRNAシンセターゼ阻害剤を組む別の抗生物質を含む薬学組成物である。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の背景
抗菌剤は、生存に必須の細胞機能の主要なプロセスを干渉することにより細菌の成長を抑制する(kill)か又は阻害する。β−ラクタム類(ペニシリン類及びセファロスポリン類)及びグリコペプチド類(バンコマイシン及びテイコプラニン)は、細胞壁の合成を阻害する。マクロリド類(エリスロマイシン、クラリスロマイシン、及びアジスロカイシン)、クリンダマイシン、クロラムフェニコール、アミノグリコシド類(ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、及びアミカシン)及びテトラサイクリン類は、蛋白質合成を阻害する。認定された新しいクラスの抗菌剤(リンゾリド)も蛋白質合成を阻害し、合成オキサゾリジノン類である。リファンピンはRNA合成を阻害し、フルオロキノロン類(例えば、シプロフロキサシン)は、DNAのトポロジカル状態を維持する酵素を阻害することにより間接にDNA合成を阻害する。トリメトプリン及びスルフォナミド類はフォレートの生合成を直接阻害し、そして必要なヌクレオチドの一つのプールを枯渇させることにより間接にDNA合成を阻害する(Chambers,H.F.and Sande,M.A.(1996)Antimicrobial Agents.Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,McGraw−Hill,New York)。この文献、及び本明細書に引用された全ての他の特許、特許出願、及び刊行物の開示は、それらの全体を本明細書に引用することにより編入する。
【0002】
抗菌剤に対する耐性は、薬剤の標的が変異することにより、それがいまだ機能し得るが、薬剤によりもはや阻害されないようなときに(例えば、フルオロキノロン類に対する耐性を付与する細菌のジャイラーゼ及びトポイソメラーゼ酵素のキノロン耐性決定領域内の変異)、生じる。耐性は、細胞内部から薬剤を除去する流出(efflux)ポンプの過剰発現又は活性化によっても媒介されるかもしれない(例えば、テトラサイクリン流出)。耐性の別の共通の機構は薬剤を修飾するか又は分解する酵素の生産を含み、その結果不活性になる(例えば、β−ラクタマーゼ、アミノグリコシド修飾酵素等)。成長上の利点のために、これは抗菌剤の存在下で耐性細胞及びそれらの子孫を提供し、耐性生物が細菌の集団を素早く引き継ぐ。一つの細胞において生じた耐性が集団中の他の細菌に移り得るのは、細菌が直接に遺伝物質を交換する機構を有するからである。最近の議会報告において、General Accounting Office(GAO)は、薬剤耐性細菌によりもたらされる現在と未来の公衆衛生の負担を要約した(Antimicrobial Resistance(1999)General Accounting Office(GAO/RCED−99−132))。この報告によれば、薬剤耐性細菌による感染のために設定された病院内で治療された患者の数は、1994年から1996年で二倍になり、そして1996年から1997年でさらにほぼ二倍になった。耐性株は、免役抑圧性患者のかなり大きな集団を有する病院又は三次医療施設のような環境において容易に広がり得る。同じGAOの報告は、以前に感受性であった細菌がますます耐性になり、そして世界中に広がるという明確な証拠を提供する。さらに、細菌集団内の耐性細菌の比率は増大している。特に驚くべき進展は、複数耐性であるか又は全ての承認された抗菌剤に対して全耐性(panresistant)な細菌株の出現である。薬剤耐性細菌の劇的な増加を認識することにより、食品医薬品局は、最近、医師に対して、抗菌剤の思慮分別ある使用と臨床上必要なときのみの使用を促す忠告を発した(FDA Advisory(2000).Federal Register 65(182),56511−56518)。
【0003】
これらの環境は、新生の抗生物質耐性細菌に打ち勝つ新規の抗生物質を開発する努力を促した。アミノアシルtRNAシンセターゼは、全ての生きている生物に見いだされる必須の酵素である。これらの酵素が新規な抗生物質の開発のための魅力ある標的として現れたのは、これらの酵素を阻害する化合物が、存在する耐性機構を回避する能力を有するからである。
【0004】
シュードモニック酸Aはムピロシンとしても知られ、シュードモナスフルオレセンスにより合成される天然生成物であり、そしてスタフィロコッカスアウレウス、スタフィロコッカスエピダミディス及びスタフィロコッカスサプロフィチカスを含むグラム陽性感染性病原体、及びヘモフィルスインフルエンザ、ナイセリアゴノロエ、及びナイセリアメニンギティディスを含むグラム陰性生物由来のイソロイシル−tRNAシンセターゼの阻害剤である。細菌のイソロイシルtRNAシンセターゼ酵素は、細菌の皮膚感染の局所治療のための軟膏又はローションとして製剤化された場合に、ムピロシン又は薬学上受容可能な塩により首尾よく標的化されてきた。
【0005】
ムピロシン及び誘導体は、グラム陽性好気生物及びいくつかのグラム陰性好気生物に対して主に活性である。ムピロシン遊離酸は、皮膚、目及び耳の疾患を治療することにおいて有用であることが見いだされる。
【0006】
3つの市販製品が、活性成分として、ムピロシン遊離酸又は結晶ムピロシンカルシウム二水和物を含む。これらの製品は、Bactroban(登録商標)軟膏、Bactroban(登録商標)鼻用(Nasal)及びBactroban(登録商標)クリームであり、グラクソスミスクラインビーチャムにより製造されている。第1の物はムピロシンを含むが、他の2つは結晶ムピロシンカルシウム二水和物を含む。Bactroban(登録商標)軟膏は、米国特許第4,524,075号に記載されている。Bactroban(登録商標)鼻用(Nasal)は、米国特許第4,790,989号に記載されている。Bactroban(登録商標)クリームは、WO95/10999及び米国特許第6,025,389号に記載されている。
【0007】
結晶ムピロシンカルシウム、その特性及び製造方法は、米国特許第4,916,155号に記載されている。この特許は、カルシウム塩の結晶二水和物形態の改善された熱安定性を強調している。ムピロシンカルシウム非結晶質は、米国特許第6,489,358号に記載されている。
【0008】
ムピロシンは広く受け入れられて成功した製品であるが、2種類の耐性が記載された:1)染色体によりコードされたイソロイシルtRNAシンセターゼ蛋白質内の変異に大きく帰する、8−256μg/mLの範囲の最小阻害濃度(MIC’s)の低レベル耐性、及び2)プラスミドによりコードされたIRS酵素により引き起こされ、MICs>512μg/mLをもたらす高レベル耐性(mupA)。
【0009】
さらに、2000年に実施された最近の監査研究は、ラテンアメリカにおいて4.6%、北アメリカ及び欧州においてそれぞれ14.1%及び17.8%の範囲でオキサシリン−耐性スタフィロコッカスアウレウス内のムピロシン耐性率を同定した。
【0010】
アミノアシルtRNAシンセターゼに向けられた他の公知の天然生成物阻害剤は、ボレリジン、フラノマイシン、グラナチシン、インドルマイシン、オカートキシン(ochartoxin)A、及びシスペンタシンを含むが、これまでにどれもが抗生物質までに開発されていない。メチオニルtRNAシンセターゼ阻害剤は、国際特許出願公開WO00/71524において記載されたとおり、ピリミドンメチオニルtRNAシンセターゼ阻害剤である;国際特許出願公開WO00/71522において記載されたメチオニルtRNAシンセターゼ阻害剤であるベンズイミダゾール誘導体;国際特許出願公開WO99/55677及びWO00/21949において記載されたメチオニルtRNAシンセターゼ阻害剤;米国特許第6,320,051号に記載されたメチオニルtRNAシンセターゼの阻害剤である2−(NH−−又はO−−置換された)キノロン類;2003年12月5日に出願された米国特許出願連続番号10/729,416は「抗菌活性を有する2−NH−ヘテロアリールイミダゾール」と題する;2004年2月2日に出願された国際特許出願連続番号PCT/US2004/03040は、「新規化合物」と題する;Jarvest,et al.,Bioorganic & Medical Chemistry Letters(2003)13:665−668;Jarvest,et al.,(2002)J.Med.Chem.45:1959−1962;及び2004年2月27日に出願された米国特許出願連続番号10/789,811は「抗菌活性を有する置換されたチオフェン類」と題する。抗菌剤としてのtRNAシンセターゼ阻害剤の製剤化に関する要求が残されている。
【0011】
発明の概要
本発明は、アミノアシルtRNAシンセターゼ阻害剤及び他のアミノアシルtRNAシンセターゼ組成物を含む他の抗菌剤を含む薬学組成物を提供する。
【0012】
発明の詳細な説明
本発明の一つの態様は、有効な様式にて宿主に投与された時に、治療用組成物がヒト又は動物を細菌により引き起こされた疾患から防御することができる。本明細書にて使用される防御化合物は、有効な様式にて宿主に投与された時に、細菌により引き起こされた疾患を治療、改善及び/又は予防することができる化合物を意味する。
【0013】
本開示は、抗菌剤としての使用のための、少なくとも一つのアミノアシルtRNAシンセターゼ阻害剤、特にメチオニルtRNAシンセターゼ阻害剤を含む治療用組み合わせ組成物を記載する。そのような組み合わせ治療の利益は、局所用途に限定されず、経口及び非経口投与に及ぶ。治療用組成物は、ムピロシン及び他の現在市販されている抗菌剤に耐性の生物により引き起こされた感染の予防及び/又は治療に有用である。
【0014】
一つの態様において、発明は、細菌感染の治療のための活性成分として、少なくとも一つの治療剤、好ましくは抗菌剤又は抗生物質と化合した、少なくとも一つのアミノアシルtRNAシンセターゼ阻害剤を含む製剤を意図する。
【0015】
一つの態様において、治療用組成物は、メチオニルアミノアシルtRNAシンセターゼ(MRS)阻害剤を含む。MRS阻害剤は、国際特許出願公開WO00/71524、WO00/71522、WO99/55677及びWO00/21949;米国特許第6,320,051号;2003年12月5日に出願された「抗菌活性を有する2−NH−ヘテロアリールイミダゾール」と題する米国特許出願連続番号10/729,416;2004年2月2日に出願された「新規化合物」と題する国際特許出願連続番号PCT/US2004/03040;Jarvest,et al.,Bioorganic & Medical Chemistry Letters(2003)13:665−668;Jarvest,et al.,(2002)J.Med.Chem.45:1959−1962;及び2004年2月27日に出願された「抗菌活性を有する置換されたチオフェン類」と題する米国特許出願連続番号10/789,811に記載されており、以下の化合物により、本明細書において例示される:
MRS阻害剤、
【0016】
【化1】

【0017】
MRS阻害剤1−8は、それぞれ、2−[3−(6,8−ジブロモ−2,3,4,5−テトラヒドロキノリン−4−イルアミノ)プロプ−1−イルアミノ]−1H−キノリン−4−オン;N−(6,8−ジブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−4−イル)−N’−(1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル)−プロパン−1,3−ジアミンジヒドロクロリド;2−{[(1R,2S)−2−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)シクロペンチルメチル]アミノ}−1H−キノリン−4−オン;N−(4,5−ジブロモ−3−メチルチオフェン−2−イルメチル)−N’−(1H−キノリン−4−オン)プロパン−1,3−ジアミン;N−(4−ブロモ−5−(1−フルオロビニル)−3−メチルチオフェン−2−イルメチル)−N’−(1H−キノリン−4−オン)プロパン−1,3−ジアミン;N−(4−ブロモ−5−(1−フルオロビニル)−3−メチルチオフェン−2−イルメチル)−N’−(1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル)−プロパン−1,3−ジアミン;N−(3−クロロ−5−メトキシ−1H−インドール−7−イルメチル)−N’−(1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル)−プロパン−1,3−ジアミン;及びN−(1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル)−N’−(3,4,6−トリクロロ−1H−インドール−2−イルメチル)−−プロパン−1,3−ジアミンとも呼ばれる。
【0018】
一つの態様において、治療用組成物は、MRS阻害剤とムピロシン又はフシジン酸を含む。ムピロシン又はフシジン酸はそれらの薬学上受容可能な塩又はエステルにて使用してよい。さらに、治療用組成物は、MRS阻害剤ムピロシネート(即ち、MRS阻害剤とムピロシンの間に形成される塩)又はMRS阻害剤フシデート(即ち、MRS阻害剤とフシジン酸の間に形成される塩)の形態であってよい。MRS阻害剤は、交換可能に、短縮してMRSiと呼んでよい。ムピロシン又はフシジン酸の適切な薬学上受容可能な塩は、当業界にてよく知られており、アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム及びリチウム及びアルカリ土類金属、例えば、カルシウムを含み、そのうちではカルシウム塩が望ましく、特に結晶無水物形態であり、並びに他の金属塩、例えば、銀及びアルミニウム塩及びアンモニウム置換されたアンモニウム塩を含む。上記の塩は無水物であってよく、あるいは薬学上受容可能な溶媒和物、例えばアルコラート、特に水和物の形態であってよい。塩は、カルシウム、銀及びリチウム塩、特にカルシウム塩を含み得る。ムピロシンのカルシウム塩の場合、結晶塩、結晶水和カルシウム塩、又は結晶二水和物を用いる。MRSiムピロシネート塩又はMRSiフシデートは、薬学上受容可能な溶媒和物、例えば、アルコラート、特に水和物の形態であってよい。
【0019】
【化2】

【0020】
一つの態様において、細菌の感染は局所細菌感染であり、限定ではないが、インペチゴ、感染した皮膚の外傷、感染性皮膚炎(湿疹、乾癬等)、創傷、やけどの感染、手術後の感染、透析部位の感染、及び病原性生物による鼻咽腔のコロニー化に付随した感染、副鼻腔炎、を含み、再発を含む。
【0021】
治療用組成物の活性成分がアミノアシルtRNAシンセターゼ阻害剤の場合、発明の治療用組成物中で組み合わせられた2つ又はそれより多い阻害剤は相乗性又は相加性を示すべきであるが、なぜなら、各阻害剤は同じ生化学プロセスの成分を標的とするからである(同起源のアミノ酸によるtRNAの変化、又はより一般的には蛋白質合成)。さらに、tRNAシンセターゼ阻害剤の組み合わせからなる抗菌薬剤は耐性の発現に関して低い傾向を有するが、なぜなら2つの酵素中の耐性は薬剤に対する細菌の防御を提供することを同時に発現することを必要とするからである。この発明において具体化される組み合わせ生成物は、臨床単離物において発生する低レベル及び高レベルのムピロシン(mupA)耐性機構の両方を回避する能力を有することになる。そのような組み合わせ生成物は、単独の薬剤物質との製剤において耐性細菌の発現の危険性を増加させるかもしれない低レベル用量の薬剤物質に細菌を暴露する不利を被らないはずである。これまでに記載されたアミノアシルtRNAシンセターゼ阻害剤の多くは静菌性(bacteriostatic)であるが、高い用量が局所的に適用できるために、組み合わされた生成物は感染の部位において局所濃度にて殺菌活性を示すことが予測される。
【0022】
当業界において公知のあらゆるtRNAシンセターゼ阻害剤も、この開示に従い組み合わせて使用することができる。上記のものに加えて、本発明において有用なtRNAシンセターゼ阻害剤は、限定ではないが、ボレジジン、フラノマイシン、グラナチシン、インドルマイシン、オクラトキシン、シスペンタシン、5’−O−グリシルスルファモイルアデノシン;米国特許出願公開2003−0013724A1、及び米国特許番号第6,417,217号及び第6,333,344号に記載されたプロリンに基づくtRNAシンセターゼ阻害剤;米国特許番号第5,824,657号に記載されたアミノアシルスルファミドに基づくtRNAシンセターゼ阻害剤;米国特許番号第6,348,482号及び米国特許出願公開2002−0040147A1に記載されたカテコールに基づくtRNAシンセターゼ阻害剤;米国特許番号第6,153,645号に記載されたヘテロシクルに基づくtRNAシンセターゼ阻害剤;米国特許番号第5,726,195号に記載されたアミノアシルアデニレート模倣体イソロイシル−tRNAシンセターゼ阻害剤;米国特許番号第6,414,003号及び第6,169,102号に記載されたオキサゾロン誘導体;及び米国特許第6,448,059号に記載されたtRNAのクリーブリーフ構造の領域を標的とするオリゴヌクレオチド類を含む。
【0023】
本開示の治療用組成物は、ブドウ球菌(Staphylococci)、連鎖球菌(Streptococci)及び腸球菌(Enterococci)、特に、現在市販されている薬剤に耐性の単離物を含む、臨床上重要なグラム陽性病原体に対して抗菌活性を有する。
【0024】
本開示の治療用組成物は、ムピロシン及び他の現在市販されている抗微生物剤に耐性の生物により引き起こされる感染の予防及び/又は治療のためにも使用することができる。
鼻咽腔を含む鼻及び喉の皮膚又は粘膜への局所塗布のためには、活性成分を、クリーム、ローション軟膏、スプレー又は吸入薬、トローチ剤、喉のペイント剤、歯磨き剤、粉末に調合し、ミセル又はリポソームへ封入し、そして徐放のためにデザインされた生物適合性被覆内に取り込まれた活性化合物を含む薬剤放出カプセル、及びマウスウオッシュ及び他のウオッシュに調合してよい。活性成分のために使用してよい製剤は、当業界においてよく知られた慣用の製剤であり、例えば、米国薬局方(USP)、英国薬局方、欧州薬局方、日本薬局方、及び国際薬局方のような薬学のテキストブックに記載されたとおりである。
【0025】
本開示の組成物は、抗生物質の局所投与に適したあらゆる慣用の担体、例えば、パラフィン及びアルコール内に調合してよい。それらは、例えば、軟膏,クリーム又はローション、目の軟膏及び耳の軟膏、ゲル、皮膚パッチ、浸潤包帯及びエアロゾルとして提示してよい。組成物は、適切な慣用の付加物、例えば、保存剤、薬剤の浸透を助ける溶剤(例えば、DMSO)、皮膚軟化薬、局所麻酔剤、保存剤及びバッファー剤を含んでもよい。
【0026】
本発明による適切な組成物は、約0.01重量%から99重量%、好ましくは0.1−40重量%の活性成分を含む。組成物が用量ユニットを含むなら、各用量ユニットは、好ましくは0.1−500mgの活性成分を含む。成人のヒトの治療のためには、tRNAシンセターゼ阻害剤の投与の経路及び頻度に依存して、用いられる用量は、好ましくは、1日あたり1mgから5gの範囲になる。
【0027】
適切な軟膏の基剤は、65から100%(好ましくは75から96%)の白色ソフトパラフィン、0から15%の液体パラフィン、及び0から7%(好ましくは3から7%)のラノリン又はその合成均等物の誘導体を好都合に含んでよい。別の適切な軟膏基剤は、好都合には、ポリエチレン−液体パラフィンマトリックスを含んでよい。
【0028】
適切なクリーム基剤は、好都合には、 乳化システム、例えば、2から10%のポリオキシエチレンアルコール(例えば、トレードマークCetomacrogol 1000にて利用可能な混合物)、10から25%のステアリルアルコール、20から60%の液体パラフィン、及び10から65%の水;一つ又はそれより多い保存剤、例えば、0.1から1%のN,N’’−メチレンビス[N’−[3−(ヒドロキシメチル)−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル]ウレア](Imidurea USNFの名前で利用可能)、0.1から1%のアルキル4−ヒドロキシベンゾエート(例えば、トレードマークNIPASTATにてNipa Laboratoriesから利用可能な混合物)、0.01から0.1%のソディウムブチル4−ヒロキシベンゾエート(例えば、トレードマークNIPABUTYL SODIUMにてNipa Laboratoriesから利用可能な混合物)、及び0.1から2%のフェノキシエタノールを共に含んでよい。
【0029】
クリームのための他の適切な基剤は、ソルビタンモノステアリレート、Polysorbate 60,セチルパルミテート、パラフィン、セチルステアリルアルコール、ベンジルアルコール、シリカ、トリアセチン、イソプロピルモノステアリレート、ポリエチレングリコール、グリセロールモノステアリレート、ポリアクリル酸、水酸化ナトリウム、ドクサートナトリウム(docusate sodium)、ジメチコーン、トリグリセリド、オクチルデカノール及びオクチルドデカノールを含む。いくつかの態様において、ペトロラタムとハードファットからなる群から選択される油性基剤;セトステアリルアルコール、セチルアルコール及びステアリルアルコールからなる群から選択される硬化剤;カストルオイル及びオレイルアルコールからなる群から選択される湿潤剤;5に等しいか又はそれ未満のHLBの界面活性剤からなる群から選択される界面活性剤、及び薬学上受容可能な付加物を含むクリーム調製物が提供される。
【0030】
適切なゲル基剤は、好都合には、高度な架橋により液体相が3次元ポリマーマトリックス内に束縛された(constrained)半固形システムを含んでよい。液体相は、好都合には、水を、0から20%の水混和性付加物、例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール、又はプロピレングリコール、及び0.1から10%、好ましくは0.5から2%の、天然産物、例えば、トラガカントゴム、ペクチン、カラゲーニン、寒天及びアルギン酸、又は合成或いは半合成化合物、例えば、メチルセルロース及びカルボキシポリメチレン(カルボポル)であってよい濃縮剤;並びに一つ又はそれより多い保存剤、例えば、0.1から2%のメチル4−ヒドロキシベンゾエート(メチルパラベン)又はフェノキシエタノールを含んでよい。他の適切な基剤は、70から90%のポリエチレングリコール(例えば、米国国有処方集(USNF)に従い調製された、40%のポリエチレングリコール3350及び60%のポリエチレングリコール400を含むポリエチレングリコール軟膏、5から20%の水、0.02から0.25%の抗酸化剤(例えば、ブチル化されたヒドロキシトルエン)、及び0.005から0.1%のキレート剤(例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA))を含んでよい。
【0031】
上で使用されたような用語ソフトパラフィンは、クリーム又は軟膏基剤の白色ソフトパラフィン及び黄色ソフトパラフィンを包含する。用語ラノリンは、天然ウールの脂肪及び精製されたウールの脂肪を包含する。ラノリンの誘導体は、特に、それらの物理特性又は化学特性を変えるために化学修飾されたラノリンを含み、そしてラノリンの合成均等物は、特に、公知であって薬剤及び化粧品においてラノリンの代替物として使用されて、例えば、ラノリン置換体と呼んでよい合成又は半合成化合物又は混合物を含む。
【0032】
使用してよいラノリンノ一つの適切な合成均等物は、SOFTISANトレードマークにて利用可能な物質である。
上記開示の組成物は、慣用の薬学の技術により製造してよい。即ち、上記の組成物は、都合よくは、例えば、上昇させた温度、好ましくは60−70℃において、ソフトパラフィン、存在させるなら液体パラフィン、及びラノリン又はその誘導体又は合成均等物を共に混合することにより製造してよい。上記混合物を、次に、室温にまで冷却し、そして活性成分及びあらゆる他の成分の添加後に、十分な拡散を保証するまで撹拌する。必要なら、上記組成物は、上記プロセスの如何なる適切な段階においてすりつぶしてよい。適切な滅菌手法を必要ならば含ませてもよい。或いは、原材料を滅菌条件下で得て、組成物を無菌にて製造する。
【0033】
一般に、上記開示において使用される治療剤は、有効な量をヒト又は動物に投与される。一般に、有効な量は、(1)治療されることが望まれる疾患の兆候を軽減するか又は(2)治療されることが望まれる疾患を治療することに関して薬学上の変化を誘導するのに有効な量である。細菌感染に関して、有効な量は、細菌の集団を減少させるか又は排除するか;感染の拡散を遅延させるか;又は病気のヒト又は動物の平均寿命を伸ばすのに有効な量である。
【0034】
上記治療剤の治療上有効な量は、所望の効果をもたらすのに十分な如何なる量又は用量でもあり得て、一部には、感染の条件、種類及び位置、患者の大きさ及び症状、並びに当業者には容易に知られる他の因子に依存する。用量は、一回の用量、又は複数回の用量にて提供することができ、例えば、数週間の期間にわたり分けることができる。
【0035】
本開示は、本開示の治療用組成物を利用する処置の方法にも向けられる。当該方法は、そのような投与を必要とする被験者に上記治療剤を投与することを含む。
組成物は、ヒト又は動物の外部皮膚及び他の部分の両方、例えば、目及び鼻内に局所塗布してよい。組成物は、例えば、やけどや創傷において見られるような皮膚が無くなったか又は損傷を受けたエリアに局所塗布してもよい。
【0036】
即ち、本開示は、ヒト又は家畜動物において皮膚の障害を治療する方法を提供し、当該方法は、その必要があるヒト又は家畜動物に組成物を局所塗布することを含む。
さらに、本発明は、いくつかの態様において、限定ではないが、再発性感染を含む、外科手術部位の感染、カテーテル関連の感染、やけど及び副鼻腔炎を含む感染の予後治療のための医薬の製造における、他のtRNAシンセターゼ阻害剤、例えば、ムピロシン又はその薬学上受容可能なエステル又は塩を含む他の抗生物質を伴う、tRNAシンセターゼ阻害剤の用途を提供する。
【0037】
そのような治療は、予後治療であってよく;即ち、細菌感染の完全な排除のみならず、その部分排除、即ち、急性のエピソードの数の減少も含む治療である。
細菌感染、例えば、再発性の中耳炎及び再発性の副鼻腔炎の治療の成功は、スタフィロコッカスアウレウス、ヘモフィルスインフルエンザ、ストレプトコッカスニューモニエ及びモレキセラカタルハリスのような病原細菌の鼻の通過(carriage)、特に、そのような生物による鼻咽腔のコロニー化の排除又は減少に関連する。
【0038】
従って、さらなる側面において、本発明は、再発性中耳炎に付随した病原性生物の鼻の通過を減少させるか又は排除するための医薬の製造における、tRNAシンセターゼ阻害剤と、別のtRNAシンセターゼ阻害剤を含む抗生物質、例えば、ムピロシン又は薬学上受容可能なそのエステル又は塩の用途を提供し、当該医薬は鼻の投与、特に鼻咽腔への集中した送達に適合される。
【0039】
実施例
実施例1.ムピロシネート塩の製剤化のための一般法
1.0meqのメタノリックシュードモニック酸A溶液に、1.0meqのMRSiを加えた。当該混合物を50℃に温め、そして穏やかに10分間撹拌した。混合物が周囲温度に戻った後で、それを1μmのガラス繊維シリンジフィルターに通した。フラスコとフィルターをメタノールで洗浄し、そして混合された濾過物を水で希釈した。当該溶液を、次に、遠心分離濃縮機を用いて濃縮し、次に、周囲温度において真空オーブン内で乾燥することにより、オフホワイトの非晶質の固形物を得た。
【0040】
実施例2.フシデート製剤化のための一般法
1.0meqのメタノリックフシジン酸に、1.0meqのMRSiを加えた。当該混合物を50℃に温め、そして穏やかに10分間撹拌した。混合物が周囲温度に戻った後で、それを1μmのガラス繊維シリンジフィルターに通した。フラスコとフィルターをメタノールで洗浄し、そして混合された濾過物を水で希釈した。当該溶液を、次に、遠心分離濃縮機を用いて濃縮し、次に、周囲温度において真空オーブン内で乾燥することにより、オフホワイトの非晶質の固形物を得た。
【0041】
実施例3.2−[3−(6,8−ジブロモ−2,3,4,5−テトラヒドロキノリン−4−イルアミノ)プロプ−1−イルアミノ]−1H−キノリン−4−オン.
メタノール(2ml)及び酢酸(0.1ml)中の2−(3−アミノプロピルアミノ)−1H−キノリン−4−オンジヒドロクロリド(0.038g,0.13mmol)を、ソディウムメトキシド(メタノール中0.5M、0.52ml,0.26mmol)で処理した。この溶液に、次に、メタノール(2ml)中の6,8−ジブロモ−2,3,4,5−テトラヒドロキノリン−4−オン(0.040g,0.13mmol)を加えた。当該混合物を、次に、アルゴン下で温め、そしてソディウムシアノボロヒドリド(0.025g,0.4mmol)を加えた。当該反応物を、次に、40時間還流し、16時間及び24時間後にもっとホウ化水素を加え、そして蒸発させて乾燥させた。残渣をSCXカートリッジ上、次にフラッシュクロマトグラフィー上で精製し、ジクロロメタン中の0−8%の「メタノール中の10%アンモニア」により溶出したところ、表題の化合物をオフホワイトのガムとして得た(0.009%,14%);δH
【0042】
【化3】

【0043】
実施例4.N−(6,8−ジブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−4−イル)−N’−(1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル)−プロパン−1,3−ジアミンジヒドロクロリド.
N−(6,8−ジブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−4−イル)−N’−(1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル)プロパン−1,3−ジアミン(実施例8、工程c)において記載される)(0.055g,0.29mmol)と6,8−ジブロモ−2,3,4,5−テトラヒドロキノリン−4−オン(0.088g,0.29mmol)のメタノール(2ml)中及び酢酸(0.06g)に、ソディウムシアノボロヒドリド(0.019g,0.3mmol)を加えた。反応物を、次に、20時間還流した。反応混合物を、MeOH(15ml)でフラッシュした2gのSCXカートリッジに適用した。当該カートリッジを、次に、15mlのMeOH中の0.2M NHにより溶出し、そしてこの溶出物を蒸発させて乾燥させた。ジクロロメタン中の0−10%(9:1メタノール/.880アンモニア水)により溶出するシリカゲル上でのさらなる精製により、表題の化合物、化合物2を得て、メタノール(0.4ml)中の1.0M HClへの溶解によりそのジヒドロクロリドに変換し、そして溶液を蒸発させて白色の固形物を得た(0.060g,37%);δH
【0044】
【化4】

【0045】
実施例5.2−{[(1R,2S)−2−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)シクロペンチルメチル]アミノ}−1H−キノリン−4−オン.
MRSi化合物3を、引用により本明細書に編入する米国特許第6,320,051号の実施例71に記載されたとおりに製造した。
【0046】
実施例6.N−(4,5−ジブロモ−3−メチルチオフェン−2−イルメチル)−N’−(1H−キノリン−4−オン)プロパン−1,3−ジアミンムピロシネート.
還元アミン化のための一般法を用いて、2−(3−アミノプロプ−1−イルアミノ)−1H−キノリン−4−オンジアミン(J.Med.Chem.2002,45,1959)と4,5−ジブロモ−3−メチルチオフェン−2−カルバルデヒドの混合物が、N−(4,5−ジブロモ−3−メチルチオフェン−2−イルメチル)−N’−(1H−キノリン−4−オン)プロパン−1,3−ジアミン4を白色固形物として与えた(0.034g,49%)。m/z(ES+)484(100%M+)。
【0047】
ムピロシネート形成のための一般法(実施例1)を用いて、N−(4,5−ジブロモ−3−メチルチオフェン−2−イルメチル)−N’−(1H−キノリン−4−オン)プロパン−1,3−ジアミン4とシュードモニック酸Aは、表題の化合物をオフホワイトの固形物として与えた(0.008g)。mp.60−70C.;
【0048】
【化5】

【0049】
実施例7.N−(4−ブロモ−5−(1−フルオロビニル)−3−メチルチオフェン−2−イルメチル)−N’−(1H−キノリン−4−オン)プロパン−1,3−ジアミンムピロシネート.
a)ジフェニル(1−フルオロビニル)メチルシラン.無水雰囲気下で火炎により乾燥させた1Lの3首丸底フラスコ中で、65mL(309mmol)のジフェニルメチルクロロシランを、650mLの無水THF中の4.3g(618mmol)のリチウムワイヤーに加えた。当該混合物を、周囲温度において20時間撹拌した。当該混合物を、次に、−78℃に冷却し、そして反応混合物の温度が−55℃未満のままであるように、雰囲気を1,1−ジフルオロエチレン(過剰)により置換した。反応温度がー70℃になるか又はそれ未満のままになったときに、ジフルオロエチレンの添加を止めた。透明な明るい黄色に変わるまで(約2時間)反応物を<−70℃にて撹拌し、そして周囲温度まで温めた。残ったリチウムワイヤーを除去し、そして添加と同時にガスが発生しなくなるまで、混合物をNaSO−10HOの一部(portions)で処理した。混合物を、次に、NaSO上で乾燥させ、シリカパッドを通して濾過し、そしてパッドをエーテルで洗浄した。混合された濾過物を真空下で乾燥させ、結果の残渣をヘキサン中に懸濁/溶解し、そして別のシリカパッドを通して濾過した。パッドをヘキサンで洗浄し、濾過物を混合し、そして減圧下で溶剤を除去したところ、明るい黄色みがかった(yellowish)液体を得たが、いくらかの白色結晶物質が存在した。当該産物を真空蒸発により精製(約2torrにて113−117℃)したところ、44g(59%)の表題の化合物を透明無色な液体として得た。
【0050】
【化6】

【0051】
b)4−ブロモ−5−(1−フルオロビニル)−3−メチルチオフェン−2−カルバルデヒド.25mL丸底フラスコ中の不活性雰囲気下で、166mgのa)からのジフェニル(1−フルオロビニル)メチルシラン(0.685mmol)、130mgの4,5−ジブロモ−3−メチルチオフェン−2−カルバルデヒド(0.459mmol)、209mgのCsF(1.38mmol)、88mgのCuI(0.459mmol)、10.5mgのPd(dba)(0.0115mmol)及び14.1mgのAsPh(0.0459mmol)を混合した。上記固形物を含むフラスコを氷のバスの中で約0℃に冷却し、そして2mLを脱気し、無水ジメチルフォルムアミド(DMF)を加えた。反応混合物を0から5℃において2時間撹拌し、2mLの水を加えた。混合物を、次に、5mLの1NのNaOHにより希釈し、そして25%ジエチルエーテル/ヘキサン(4x20mL)により抽出した。混合された抽出物をブライン(1x5mL)により洗浄し、NaSO上で乾燥させ、そして真空下で溶剤を除去した。残りの残渣をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(CHCl/ヘキサン)により精製したところ、50%の収量の表題の化合物を白色固形物として得た。
【0052】
【化7】

【0053】
c)N−(4−ブロモ−5−(1−フルオロビニル)−3−メチルチオフェン−2−イルメチル)−N‘−(1H−キノリン−4−オン)プロパン−1,3−ジアミン.乾燥雰囲気下及び周囲温度において、1.00g(3.45mmol)の2−(3−アミノプロプ−1−イルアミノ)−1H−キノリン−4−オンジヒドロクロリド及び0.770g(9.39mmol)のNaOAcを、40mLの無水MeOH中の溶解し、そして10分間室温において撹拌した。0.780gのb)からの4−ブロモ−5−(1−フルオロビニル)−3−メチルチオフェン−2−カルバルデヒド(3.13mmol)を次に加え、そして8mLのトリメチルオルトフォルメート及び追加の10mLの無水MeOHを加えた。当該混合物を周囲温度において2時間撹拌した。溶剤を次に減圧下で除去し、残った残渣を50mLの無水MeOHに溶解し、そして0.474g(12.5mmol)のNaBH4を周囲温度において撹拌しながら加えた。30分間周囲温度において撹拌後に、溶剤を減圧下で除去し、そして結果の粘着性の固形物を、0.1NのNaOH(1x,生成物が凝固する(solidify)のに要求される一晩の撹拌)、脱イオン水(2x)及び1:1のEtO/ヘキサン(2x)と共に摩砕した。残った固形物を真空下で乾燥させ、そして生成物をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(NH飽和されたMeOH/CHCl)により精製したところ、900mg(64%)の所望の生成物、化合物5を白色の泡として得た。
【0054】
【化8】

【0055】
d)N−(4−ブロモ−5−(1−フルオロビニル)−3−メチルチオフェン−2−イルメチル)−N’−(1H−キノリン−4−オン)プロパン−1,3−ジアミンムピロシネート.ムピロシネート形成のための一般法(実施例1)を用いて、c)からのN−(4−ジブロモ−5−(1−フルオロビニル)−3−メチルチオフェン−2−イルメチル)−N’−(1H−キノリン−4−オン)プロパン−1,3−ジアミン5と、シュードモニック酸Aは、表題の化合物をオフホワイトの固形物として与えた(2.1g)。mp.65−200C(200Cより高い分解)
【0056】
【化9】

【0057】
実施例8.N−(4−ブロモ−5−(1−フルオロビニル)−3−メチルチオフェン−2−イルメチル)−N’−(1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル)−プロパン−1,3−ジアミン.
a)1,3−ジヒドロイミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−チオン.ピリジン(40ml)中の2,3−ジアミノピリジン(4.36g,40mmol)に、二硫化炭素(3.6ml,60mmol)を加えた。当該混合物を50℃に6時間加熱し、次に、減圧下の蒸発により低容量に濃縮し、そして残渣をテトラヒドロフランにより摩砕した。パールブラウンの固形物を濾過により回収し、そして乾燥させることにより、3.6gの第1クロップを得た。第2クロップ(2.44g)は、再度の蒸発及びテトラヒドロフランによる摩砕により濾過物から得た。m/z(ESI+)152(MH,100%)。
【0058】
b)2−メタンスルファニル−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン 乾燥テトラヒドロフラン(100ml)中の工程a)からの化合物(5.55g,36.75mmol)に、アルゴン下で、トリエチルアミン(5.66ml,40mmol)及びヨードメタン(2.5ml,40mmol)を加えた。20時間20℃において撹拌後に、固形物を濾過により取り出して、THFにより洗浄した。混合された濾過物を蒸発させることにより乾燥させ、そしてジクロロメタンにより摩砕した。固形物を濾過により回収した、(4.55g,75%)。m/z(ESI+)166(MH,100%)。
【0059】
c)N−(1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル)プロパン−1,3−ジアミン.工程b)からの生成物(4.55g)を1,3−ジアミノプロパン(40ml)により還流しながらアルゴン下で50時間処理した。溶剤を蒸発により減圧下で除去し、そして残渣をジエチルエーテルにより摩砕して、褐色の固形物を得た。これをシリカゲル上のクロマトグラフィー、ジクロロメタン中の5−25%(9:1メタノール/.880アンモニア水)による溶出により精製し、要求された生成物、(2.6g,50%)を得た。
【0060】
d)還元アミン化のための一般法.メタノール(2ml)中のアミン(0.2mmol)(アミンがジヒドロクロリドとして存在するなら0.5mmolの酢酸ナトリウムを含む)に、メタノール(2ml)及び酢酸(0.033ml)中のアルデヒド(0.2mmol)を加えた。アルゴン下で10分間撹拌後に、MeOH(1ml)中のNaCNBH(24mg,0.4mmol)を加え、そして反応物を16時間撹拌した。反応混合物を、MeOH(8ml)によりフラッシュされた2gのVarian Bond Elute SCXカートリッジに適用した。当該カートリッジを、次に、MeOH中の8mlの0.2M NHにより溶出して、溶出物を蒸発により乾燥させた。残渣をCHCl中の2−10%(9:1 MeOH/20M NH)により溶出するシリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製した。生成物を含むフラクションを混合し、そして減圧下で蒸発させて、生成物を白色の固形物として得た。これを対応するジヒドロクロリドに変換するため、当該固形物をメタノール(0.4ml)中の1.0M HClに溶解して、溶液を蒸発させて乾燥させた。
【0061】
e)N−(4−ブロモ−5−(1−フルオロビニル)−3−メチルチオフェン−2−イルメチル)−N’−(1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル)−プロパン−1,3−ジアミン.還元アミン化のための一般法を用いて、工程c)からのN−(1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル)プロパン−1,3−ジアミンと、実施例7b)において製造されたとおりの4−ブロモ−5−(1−フルオロビニル)−3−メチルチオフェン−2−カルバルデヒドの混合物が、表題の化合物を白色の固形物として与えた。m/z(ES+)424(100%,M)。
【0062】
実施例9.N−(3−クロロ−5−メトキシ−1H−インドール−7−イルメチル)−N’−(1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル)−プロパン−1,3−ジアミンムピロシネート.
a)5−メトキシインドリン−7−カルバルデヒド.1−(tert−ブトキシカルボニル)−5−メトキシインドリン(Heterocycles,1992,34,1031;1.75g,7.0mmol)を乾燥THFに溶解し、TMEDA(1.4ml)により処理し、そしてアルゴン雰囲気下で−78℃に冷却した。s−ブチルリチウム(シクロヘキサン中1.3M,5.18ml)の溶液を滴下した。−78℃において1時間撹拌後に、当該溶液を乾燥DMF(1.08ml,14mmol)により処理し、そしてさらに0.5時間撹拌した。冷却バスを次に取り除き、そして溶液を1時間かけて室温に達するようにした。反応混合物を10%水性NHClによりクエンチし、そして生成物を酢酸エチルにより抽出した。抽出物を混合し、水とブラインにより洗浄し、乾燥し(MgSO)、そして蒸発させた。残渣をKieselgel 60上でクロマトグラフして、ヘキサン中の0−20%酢酸エチルにより溶出した。生成物を含むフラクションを混合し、そして蒸発させることにより、表題の化合物を与えた;35%(重量)の対応するN−Boc類似体が混在した;
【0063】
【化10】

【0064】
b)5−メトキシインドール−7−カルバルデヒド.9aからの生成物(80mg;0.3mmolの5−メトキシインドール−7−カルバルデヒドを含む)をジクロロメタン(310ml)に溶解し、そしてMnO(344mg,4.0mmol)により処理した。反応混合物を室温において16時間撹拌し、セライトを通して濾過し、そして溶剤を真空中で除去した。残渣をKieselgel 60上でクロマトグラフして、ヘキサン中の0−20%酢酸エチルにより溶出した。生成物を含むフラクションを混合し、そして蒸発させることにより、表題の化合物をパールイエローの固形物として与えた(23mg,44%),
【0065】
【化11】

【0066】
c)3−クロロ−5−メトキシ−1H−インドール−7−カルバルデヒド.b)からの5−メトキシインドール−7−カルバルデヒド(40mg,0.22mmol)をジクロロメタン(5ml)に溶解し、N−クロロサクシニミド(40mg)により処理し、そして混合物を室温において16時間撹拌した。当該溶液を、次に、ジクロロメタンにより希釈し、水とブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO)、そして蒸発させることにより、パールブラウンの固形物になった。
【0067】
d)N−(3−クロロ−5−メトキシ−1H−インドール−7−イルメチル)−N’−(1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル)−プロパン−1,3−ジアミン.c)からの生成物を、実施例8、工程c)からのN−(1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル)プロパン−1,3−ジアミンに、0.2mmolスケールにて、還元アミン化のための一般法(実施例8、工程d)を用いてカップリングさせたところ、表題の化合物、化合物7を白色の固形物として得た(7mg,9%);m/z(CI)386(MH,70%)。
【0068】
e)N−(3−クロロ−5−メトキシ−1H−インドール−7−イルメチル)−N’−(1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル)−プロパン−1,3−ジアミンムピロシネート.ムピロシネート形成のための一般法(実施例1)を用いて、d)からのN−(3−クロロ−5−メトキシ−1H−インドール−7−イルメチル)−N’−(1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル)−プロパン−1,3−ジアミン、化合物7とシュードモニック酸Aの混合物が、表題の化合物をオフホワイトの固形物として与えた(0.010g);mp.86−88C。
【0069】
実施例10.N−(1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル)−N’−(3,4,6−トリクロロ−1H−インドール−2−イルメチル)−−プロパン−1,3−ジアミンムピロシネート.
a)N−(3,4,6−トリクロロ−1H−インドール−2−イルメチル)−N’−(1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル)−プロパン−1,3−ジアミン.3,4,6−トリクロロインドール−2−カルボキシアルデヒドを、実施例8、工程c)からの化合物と、0.1mmolスケールにて、還元アミン化のための一般法を用いてカップリングさせたところ、表題の化合物を白色の固形物として得た(15mg,35%);
【0070】
【化12】

【0071】
b)ムピロシネート形成のための一般法(実施例1)を用いて、N−(1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル)−N’−(3,4,6−トリクロロ−1H−インドール−2−イルメチル)−−プロパン−1,3−ジアミン8(実施例10aから)とシュードモニック酸Aの混合物が、表題の化合物をオフホワイトの固形物として得た(0.011g);mp.96−98C。
【0072】
実施例11.N−(1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル)−N’−(3,4,6−トリクロロ−1H−インドール−2−イルメチル)−−プロパン−1,3−ジアミンフシデート.
フシデート形成のための一般法(実施例2)を用いて、N−(1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル)−N’−(3,4,6−トリクロロ−1H−インドール−2−イルメチル)−−プロパン−1,3−ジアミン8(実施例10aから)とフシジン酸Aの混合物が、表題の化合物をオフホワイトの固形物として得た(0.011g)。
【0073】
【化13】

【0074】
実施例12.MRS阻害剤単独及びムピロシンとの組み合わせは多剤耐性スタフィロコッカスアウレウスに対して活性である。
MRS阻害剤、
【0075】
【化14】

【0076】
を、ムピロシンと他の薬剤、例えばゲンタマイシン及びオキサシリンに対して多剤耐性の株を含む、スタフィロコッカスアウレウスの臨床単離物のコレクションに対して試験した。表1の結果は、3つのMRS阻害剤全ての抗菌活性が、他の薬剤クラスに対する交差耐性(cross−resistance)により影響されなかったことを示す。例えば、MRSi化合物2は、ムピロシンに対して低いレベルの耐性の株及び高いレベルの耐性の株を含む試験された全ての株に対して均等な活性を示した(0.06−0.25μg/mLの範囲のMICs)。これらのデータは、細菌のメチオニルtRNAシンセターゼを阻害する化合物がムピロシン耐性のブドウ球菌により引き起こされる感染の治療に有力であるかもしれないことを示す。
【0077】
【表1】

【0078】
MRS阻害剤4の単独及びムピロシンとの組み合わせ(ムピロシン塩及び1:1の組み合わせ)を、グラム陽性病原体に対して試験した。表2の結果は、MRSi化合物4のムピロシン塩とMRSi化合物4/ムピロシン1:1組み合わせの両方が、試験された全ての生物に対して均等な活性を示したことを示す。組み合わせ生成物は、ムピロシン耐性スタフィロコッカスアウレウス及びスタフィロコッカスエピダミディスに対して有力な活性を示した。
【0079】
【表2】

【0080】
MRS阻害剤8もフシデート及びムピロシネート塩として調製して、グラム陽性細菌に対する抗菌活性を試験した(表3)。ムピロシネート塩及びフシデート塩は、試験された生物全てに対して均等な抗菌活性を示した。MRSi化合物8単独及びフシデート塩及びムピロシネート塩は、ムピロシン耐性のスタフィロコッカスアウレウス及びスタフィロコッカスエピダミディス及びムピロシンに感受性ではないエンテロコッカスフェーカリスのような生物に対して活性であった。
【0081】
【表3】

【0082】
MRS阻害剤5アセテート及びムピロシン塩を、グラム陽性細菌のコレクションに対して試験した。他のMRS阻害剤と共通して、MRSi化合物5単独及びムピロシンとの組み合わせは、表4に示すとおり、ムピロシン及びオキサシリン(メチシリン)耐性のスタフィロコッカスアウレウスを含む全ての病原体に対して有力な活性を示した。
【0083】
【表4】

【0084】
MRSi化合物5(アセテート及びムピロシン塩)を、さらに、スタフィロコッカスアウレウスの62の臨床単離物に対して攻撃させ、そして表5がオキサシリン感受性及び耐性の両方の生物に対しての有力な活性を示す。
【0085】
【表5】

【0086】
実施例13.ムピロシン耐性スタフィロコッカスアウレウスに対するMRSI化合物5及びMRSI化合物5/ムピロシンの活性
MRS阻害剤5のアセテート及びムピロシン塩を、スタフィロコッカスアウレウスの低レベル及び高レベルの両方のムピロシン耐性臨床単離物のコレクションに対して試験した(表6)。結果は、MRSi化合物5単独及びムピロシンとの組み合わせ(ムピロシン塩)が低レベル及び高レベルの両方のムピロシン耐性スタフィロコッカスアウレウスに対して有力な活性を有することを示す。
【0087】
【表6−1】

【0088】
【表6−2】

【0089】
実施例14.バンコマイシン−中間体スタフィロコッカスアウレウス(VISA)に対するMRS阻害剤5単独及びMRSi活性を5/ムピロシンの活性
MRSi化合物5のアセテート及びムピロシン塩を、バンコマイシン−中間体(バンコマイシンMICs,8−16μg/mL)であるスタフィロコッカスアウレウスの8単離物に対して試験した。MRSi化合物5単独(アセテート)及びムピロシン(ムピロシネート)との組み合わせは、全てのVISA単離物に対して活性を保持し、MICsは≦0.008−0.25μg/mLの範囲であった。対照的に、ムピロシネートは3つの単離物に対して乏しい活性しか示さず、MICsは>8μg/mLであった。
【0090】
【表7】

【0091】
実施例15.バンコマイシン耐性株を含む腸球菌に対するMRS阻害剤単独及びムピロシネートとの組み合わせの活性
さらに、MRS阻害剤は、バンコマイシン耐性株(VRE)を含む腸球菌に対して有力な活性を示した。
【0092】
MRSi化合物5単独及びムピロシネートとの組み合わせを、エンテロコッカスフェーカリス(n=28)及びエンテロコッカスフェシウム(n=23)の最近の臨床単離物に試験した。MRSiのアセテート塩とムピロシネート塩の両方が、バンコマイシン感受性と耐性の両方の腸球菌に対して有力な活性を保持した(表8、9及び10)。
【0093】
【表8】

【0094】
【表9】

【0095】
【表10】

【0096】
実施例16.ストレプトコッカスピオゲネスに対するMRS阻害剤MRSI化合物5単独及びムピロシネートとの組み合わせの活性
ストレプトコッカスピオゲネスも重要な皮膚の病原体であり、48の最近の臨床単離物を、MRSi化合物5単独(アセテート)及びムピロシン(ムピロシネート)との組み合わせ(1:1)に対するそれらの感受性に関して試験した。MRSi関して5単独と1:1の組み合わせの両方が、ストレプトコッカスピオゲネスに対して有力な活性を示した(表11)。
【0097】
【表11】

【0098】
実施例17.相乗試験:ムピロシンとの組み合わせにおけるメチオニルtRNAシンセターゼ阻害剤
本研究の目的は、ムピロシン(細菌のイソロイシルtRNAシンセターゼの阻害剤)が、MRSi化合物2(細菌のメチオニルtRNAシンセターゼの阻害剤)と組み合わせたときに、スタフィロコッカスアウレウスのムピロシン感受性株及び耐性株に対して相乗性を示すか否かを決定した。
ムピロシン(シュードモニック酸)の構造
【0099】
【化15】

【0100】
MRSi化合物2の構造
【0101】
【化16】

【0102】
相乗試験
以下の株を相乗試験研究において使用した:
スタフィロコッカスアウレウスATCC29213(ムピロシン感受性)
スタフィロコッカスアウレウスオックスフォード(ムピロシン感受性)
スタフィロコッカスアウレウス31−1334(低レベルムピロシン耐性の臨床単離物)
スタフィロコッカスアウレウス14−354(低レベルムピロシン耐性の臨床単離物)
スタフィロコッカスアウレウス25−670(高レベルムピロシン耐性の臨床単離物)
細菌の株を、ムピロシン及びMRSi化合物2に対する感受性に関して、NCCLSガイドラインによるブロスマイクロ希釈法を用いて試験することにより、それらのMICsを測定した。
【0103】
上記化合物を、Eliopoulos,G.M.,and R.C.Moellering,Jr.1996.Antimicrobial combinations,p.330−396.In V.Lorian(ed.),Antibiotics in laboratory medicine.The Williams & Willkins Co.,Baltimore,Mdに記載されたチェッカーボード方法を用いて相乗に関して試験した。
【0104】
簡単に言えば、MICとチェッカーボードタイトレーションアッセイを、カチオン付加されたMueller−Hintonブロス(Difco)によりマイクロタイタートレイ中で株を用いて実施した。接種物は、0.5 McFarlandスタンダードのそれに均等な密度に滅菌塩溶液中の血液寒天プレートからの成長物(growth)を懸濁することにより調製し、そして1:10に希釈することにより、5x10CFU/mlの最終接種物を生産した。上記トレイを好気下で一晩培養した。標準の質の対照株を各実行において含ませた。フラクションの阻害濃度(FICs)は、組み合わせの薬剤A又はBのMIC/単独の薬剤A又はBのMICとして計算し、そしてFIC指数は2つのFICsを加算することにより得た。FIC指数は、値が≦0.5ならば相乗性、値が>0.5から4ならば付加的か又は並、そして値が>4.0ならば拮抗関係として解釈した。
【0105】
【表12】

【0106】
ムピロシンとメチオニルtRNAシンセターゼ阻害剤(MRSi化合物2)の組み合わせは、スタフィロコッカスアウレウスのムピロシン感受性株及び低レベル耐性株に対して付加性(additivity)を示した。当該組み合わせは、試験された高レベルの耐性株に対しては並(indifferent)であった。拮抗作用はこの研究において試験された5株に対して検出されなかった。
【0107】
実施例18.ムピロシンと組み合わせたMRS阻害剤(MRSI化合物2)がスタフィロコッカスアウレウスの自発的耐性変異体に関して選択する能力を測定する研究
多くの抗微生物薬剤は、自発的耐性変異体に関して選択できることが示された。最近の研究においては、臨床設定において単離された低レベルと高レベルの両方のムピロシン耐性腸球菌の報告が増加している。この研究の目的は、スタフィロコッカスアウレウスの自発的耐性変異体に関して選択することに関するムピロシンとMRS阻害剤単独及び組み合わせの能力を試験することであった。
【0108】
約10の細菌を、10%のウマ血液を付加され且つ様々な濃度の試験化合物単独及び組み合わせを付加されたMueller−Hinton寒天上にプレートした。35℃において24及び48時間インキュベート後に、細菌のコロニーを計数し、そして変異の頻度を、プレートされた生物の全生存カウントに比較して測定した。耐性コロニーは、1回、選択のために使用された同じ濃度の薬剤を含むプレートに再度プレートした。結果を表13及び図1及び2に要約する。
【0109】
【表13】

【0110】
自発的耐性変異体を、各化合物の2、4及び8倍のMICにおいてムピロシン又はMRSi化合物2を含む培地上にスタフィロコッカスアウレウス株ATCC29213及び31−1334をプレートすることにより、選択した。2、4及び8のそれらの各々のMICsにおいて両化合物を含むプレート上では、耐性コロニーが検出されなかった。これらの結果は、MRS阻害剤(MRSi化合物2)とムピロシン(IRS阻害剤)の組み合わせが、スタフィロコッカスアウレウスの耐性変異体の選択の傾向を実質上低下させることを示唆するデータを提供する。
【0111】
MRSi化合物5(アセテート塩、1μg/mL)、ムピロシン(1μg/mL及び1:1のMRSi化合物5/ムピロシンの組み合わせ(1μg/mLの各成分)を、7つの異なる腸球菌単離物からの自発的耐性変異体に関して選択するそれらの能力に関して試験した。10のコロニー形成ユニット(CFU)の各生物を単独の薬剤又は組み合わせの一つを含む培地上でインキュベートした。図3の結果は、MRSi化合物5とムピロシンの両方が、インキュベーション48時間後に腸球菌からの自発的耐性変異体の選択に関する低い傾向を有したことを示す(耐性頻度が3.3x10−9から1.35x10−7の範囲)。対照的に、MRSi化合物5/ムピロシン(1:1の組み合わせ)を含む培地上では、48時間のインキュベーション後に、試験された7つの腸球菌単離物の何れに関しても、耐性コロニーは検出できなかった。
【0112】
実施例19.継代後の耐性の発現
MRSi化合物5(アセテート塩)、ムピロシン及びMRSi化合物5/ムピロシン1:1組み合わせを、スタフィロコッカスアウレウス、コアグラーゼ陰性腸球菌及びストレプトコッカスピオゲネス株を含む19の単離物を用いた継代後の耐性の発現に関して試験した。MRSi化合物5単独の存在下の継代は、20代後には上昇したMICsを有する単離物をもたらした(表14)。選択できたもっとも耐性の単離物は、16μg/mLのMICsを有し、そして試験された生物の5つにおいて観察された。1:1のMRSi化合物5/ムピロシンの組み合わせの存在下において継代された生物の場合、上昇したMICsを有する単離物の選択に関して低い傾向があった。もっとも耐性の変異体は、単一の単離物、スタフィロコッカスアウレウス1079101(高いレベルのムピロシン耐性)から得られ、20代後に組み合わせ生成物に対して8/8μg/mLのMICを有した。
【0113】
【表14】

【0114】
実施例20.スタフィロコッカスアウレウスのMRS耐性変異体のムピロシン及び1:1MRSI化合物5/ムピロシン組み合わせに対する感受性
継代又は自発的耐性発現研究の何れかにおいてインビトロにおいて生じたMRS−耐性変異体を、ムピロシン単独及びMRSi化合物5との1:1組み合わせに対する感受性に関して評価した。全ての変異体がmetSに鍵となる変異を同定すると特徴付けられた(表15)。全てのMRS−耐性変異体が、ムピロシン及び1:1 MRSi化合物5/ムピロシンに関して感受性を保持しており、それぞれ0.12から1μg/mL及び0.06/0.06から1/1μg/mLの範囲のMICsであったことから、2つの標的の間には交差耐性(cross resistance)が全く又はほとんどないことが示される。
【0115】
【表15】

【0116】
実施例21.MRS−耐性変異体の成長曲線分析
MRS−耐性変異体、スタフィロコッカスアウレウスSP−1A2及びスタフィロコッカスアウレウスSP−1B5を、親の野生型株(スタフィロコッカスアウレウスATCC29213)と共に成長曲線研究において評価した。3株全ての成長を、8時間にわたり光学密度(600nm)を監視することにより測定した。図4の結果は、両耐性株が野生型親株に比較してゆっくりとした成長速度を有することを示す。A247EとI57N変異は、MRSi化合物5に対して低レベルの耐性に必須であるらしく、そして細胞に対する適合性負担コストにも関係するらしいと言える。
【0117】
実施例22.その作用様式を確認するために、MRSi化合物5をスタフィロコッカスアウレウスの株に対して試験したが、metRS遺伝子をスタフィロコッカスアウレウス適合可能なプラスミド上でxyl/tetプロモーターの制御下に置いた。当該株は、0.01μg/mLのアンヒドロテトラサイクリンの添加に際して高いレベルのMRSを発現する。表16の結果は、MRSの過剰発現が、MRSi化合物5に関してはMICにおいて8倍の増加を導くが、ムピロシン又は他の試験された対照の化合物に関しては導かないことを示す。
【0118】
【表16】

【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】図1は、MRSi化合物2及びムピロシン単独及び組み合わせへの暴露後の、スタフィロコッカスアウレウスATCC29213からの自発的耐性変異体の選択を示す。
【図2】図2は、MRSi化合物2及びムピロシン単独及び組み合わせへの暴露後のスタフィロコッカスアウレウス31−1334(低レベルムピロシン耐性)からの自発的耐性変異体の選択を示す。
【図3】図3は、MRSi化合物5単独、ムピロシン単独MRSi化合物5/ムピロシン組み合わせへの暴露後の7つの腸球菌からの自発的耐性変異体の選択を示す。
【図4】図4は、スタフィロコッカスアウレウスの低レベルMRS−耐性株(SP−1A2及びSP−1B5)及びそれらの野生型MRS−感受性親株に関する成長曲線を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノアシルtRNAシンセターゼ阻害剤又は薬学上受容可能なその塩、及び追加の抗菌剤を含む組成物。
【請求項2】
2つ又はそれより多いアミノアシルtRNAシンセターゼ阻害剤、又は薬学上受容可能なその塩の組み合わせを含む組成物。
【請求項3】
メチオニルtRNAシンセターゼ阻害剤又は薬学上受容可能なその塩及び追加の抗菌剤を含む組成物。
【請求項4】
抗菌剤がアミノアシルtRNAシンセターゼ阻害剤又は薬学上受容可能なその塩である、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
アミノアシルtRNAシンセターゼ阻害剤がイソロイシルtRNAシンセターゼ阻害剤である、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
イソロイシルtRNAシンセターゼ阻害剤がムピロシン又は薬学上受容可能なその塩である、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
メチオニルtRNAシンセターゼ阻害剤が、
【化1】

及び前記化合物の何れかの薬学上受容可能な塩からなる群から選択される、請求項3記載の組成物。
【請求項8】
メチオニルtRNAシンセターゼ阻害剤が
【化2】

又は薬学上受容可能なその塩であり、そして抗菌剤がムピロシン又は薬学上受容可能なその塩又はエステルである、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
ムピロシン又は薬学上受容可能なその塩又はエステル、及び少なくとも一つの追加のtRNAシンセターゼ阻害剤又は薬学上受容可能なその塩を含む、ヒト又は家畜動物への局所塗布のための薬学組成物。
【請求項10】
メチオニルtRNAシンセターゼ阻害剤の塩を含む組成物であって、当該塩がムピロシネート塩及びフシデート塩からなる群から選択される、組成物。
【請求項11】
メチオニルtRNAシンセターゼ阻害剤が、
【化3】

からなる群から選択される、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
N−(4,5−ジブロモ−3−メチルチオフェン−2−イルメチル)−N’−(1H−キノリン−4−オン)プロパン−1,3−ジアミンムピロシネートを含む、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
N−(4−ブロモ−5−(1−フルオロビニル)−3−メチルチオフェン−2−イルメチル)−N’−(1H−キノリン−4−オン)プロパン−1,3−ジアミンムピロシネートを含む、請求項11記載の組成物。
【請求項14】
N−(3−クロロ−5−メトキシ−1H−インドール−2−イルメチル)−N’−(1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル)−プロパン−1,3−ジアミンムピロシネートを含む、請求項11記載の組成物。
【請求項15】
N−(1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル)−N’−(3,4,6−トリクロロ−1H−インドール−2−イルメチル)−−プロパン−1,3−ジアミンムピロシネートを含む、請求項11記載の組成物。
【請求項16】
N−(1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル)−N’−(3,4,6−トリクロロ−1H−インドール−2−イルメチル)−−プロパン−1,3−ジアミンフシデートを含む、請求項11記載の組成物。
【請求項17】
請求項2記載の薬学組成物を細菌感染を有する宿主に投与することを含む、細菌感染を治療する方法。
【請求項18】
細菌感染が腸球菌の感染である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
腸球菌がエンテロコッカスフェーカリス及びエンテロコッカスフェシウムからなる群から選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
腸球菌がバンコマイシン耐性株である、請求項17記載の方法。
【請求項21】
細菌感染が、スタフィロコッカスアウレウス、ストレプトコッカスピオゲネス、スタフィロコッカスエピダミディス及びスタフィロコッカスヘモリチカスからなる群から選択される細菌の感染である、請求項17記載の方法。
【請求項22】
スタフィロコッカスアウレウスが、バンコマイシン中間体のスタフィロコッカスアウレウス、低レベルムピロシンに耐性のスタフィロコッカスアウレウス及び高レベルのムピロシン耐性のスタフィロコッカスアウレウスからなる群から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
細菌感染が、スタフィロコッカスアウレウス、ストレプトコッカスピオゲネス、スタフィロコッカスエピダミディス及びスタフィロコッカスヘモリチカスからなる群から選択される細菌の感染である、請求項17記載の方法。
【請求項24】
スタフィロコッカスアウレウスが、バンコマイシン中間体のスタフィロコッカスアウレウス、低レベルムピロシンに耐性のスタフィロコッカスアウレウス及び高レベルのムピロシン耐性のスタフィロコッカスアウレウスからなる群から選択される、請求項21記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−502861(P2007−502861A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532538(P2006−532538)
【出願日】平成16年5月3日(2004.5.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/013614
【国際公開番号】WO2005/009336
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(502354959)レプリダイン・インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】