説明

振り子式に懸架される駆動軸を有する駆動系

本発明は、振り子サスペンション(30)を用いて懸架される駆動軸(20)を備える電動車両の駆動系に関し、振り子サスペンション(30)が、車両に対して固定して連結される締結構造(32、34)、及び、駆動軸(20)に対して連結されかつ締結構造(32、34)に対して枢動可能にベアリング内で軸支される駆動軸締結部(106)を備え、伝達構造(50)が被駆動入力軸(52)を備え、電動機(60)が駆動軸(20)を駆動するために配置され、電動機(60)の回転子が入力軸(52)に対して連結され、電動機(60)の固定子(66)を含む電動機(60)の非回転部分が前記駆動軸締結部(106)に対して固定して連結される。本発明はまた電動車両に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文にかかる、振り子式に懸架される駆動軸を有する駆動系に関する。本発明はまた電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、採掘車等の四輪駆動車の従来の駆動系において、駆動軸に動力を伝達するためにカルダン軸が配置される。車両のアクセス性を向上させるために、駆動軸の一方を振り子式に懸架し、他方をフレームに堅く固定させる。振り子サスペンションは、駆動軸をこれに対して直角の軸の周りに、例えば、接地位置から±10度の範囲で回転可能にする。電動車両は従来の方法で組立かつ制御することができる。
【0003】
振り子式に懸架される駆動軸は通常、スライドベアリング内で軸支され、振り子による摩耗が生じる。摩耗の結果、軸が時と共に移動し車両の内部の隙間が減少する。これを補償するために、今日では、駆動軸とカルダン軸上の固定ポイントとの間にクラッチが設けられ、そこには通常は伝達構造が連結されて、そのような移動が補償される。この連結の結果、構造が複雑になり空間が占有される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、エネルギ効率が良く、同時に空間効率も良く、その結果駆動部品の摩耗が少ない、振り子式に懸架される駆動軸を有する駆動系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これら及び他の目的は、以下の記載より明らかにされるが、駆動系及び電動車両を用いて達成されるものであり、導入の目的で記載され、また、添付の請求項1及び9の特徴を述べる条項において列挙される特徴が提示される。本発明の駆動系の好ましい実施形態は、添付の従属請求項2から8において定義される。
【0006】
本発明により、目的は、電動車両の駆動系により達成され、駆動系は、振り子サスペンションを用いて懸架される駆動軸、及び駆動軸を駆動するための差動装置を備え、振り子サスペンションは、車両に対して固定して連結される締結構造、及び駆動軸に対して連結されかつ前記締結構造に対して枢動可能にベアリング内で軸支される駆動軸締結部を備え、差動装置は被駆動入力軸を備え、電動機が駆動軸を駆動するために配置され、電動機の回転子が入力軸に対して連結され、電動機の固定子を含む電動機の非回転部分が前記駆動軸締結部に対して固定して連結される。
【0007】
電動機を使用することによりエネルギ効率の良い駆動系が得られる。電動機をこのように配置することにより、摩耗により時と共に生ずる幾何学的な変化を補償するために電動機と差動装置との間を連結する必要がない。電動機の非回転部分を駆動軸締結部と締結することにより、連結部がコンパクトになるという点で空間の必要性が減少する。さらに、駆動軸締結部により全体の力が担持されるため、電動機の追加のサスペンションは必要とされない。
【0008】
駆動系の一実施形態によると、前記枢動可能なベアリングはスライドベアリングを備える。スライドベアリングを使用することの利点は、振り子式に懸架される駆動軸のための空間を節約できることである。
【0009】
駆動系の一実施形態によると、電動機の前記非回転部分が、内側のベアリング部であるスライドベアリングの内側で駆動軸締結部に対して連結される。これにより、締結構造に対して駆動軸締結部が回転する際の、入力軸に対して連結される回転子/回転子軸の破損、歪曲、又は類似事象が起こるリスクが回避される。
【0010】
駆動系の一実施形態によると、駆動軸締結部が外部円錐体を備え、前記外部円錐体と締結構造との間に前記スライドベアリングが配置される。これにより、外部円錐体によって保護部が構成されるより強固で信頼性のある連結が容易となる。
【0011】
駆動系の一実施形態によると、前記締結構造がフロントロッカーアームサスペンション及びリアロッカーアームサスペンションを備える。この結果、駆動軸の安定したサスペンションが得られる。
【0012】
駆動系の一実施形態によると、前記駆動軸締結部が、前記外部円錐体の内側に配置される内部円錐体を備える。これにより、内部円錐体が保護部を構成し、伝達構造を保護する。
【0013】
駆動系の一実施形態によると、電動機の前記非回転部分が前記外部円錐体に対して連結される。有利には外部円錐体が支持部を構成することができるため、この結果、強固な連結が得られる。
【0014】
駆動系の一実施形態によると、電動機の前記非回転部分が前記内部円錐体に対して連結される。この結果、電動機の連結が保護される。
【0015】
本発明は、以下の詳細な説明を参照し添付の図面と併せて読むことにより、より良く理解されるであろう。いくつかの図面を通して、同様の参照記号は同様の部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態による電動車両の概略的な側面図である。
【図2】本発明の一実施形態による駆動系の概略的な平面図である。
【図3】本発明の一実施形態による駆動系の概略的な側面図である。
【図4a】本発明の一実施形態による、駆動軸構成及び電動機を備える図2における駆動系の一部の概略的な平面図である。
【図4b】図4aにおける駆動系の一部の概略的な側面図である。
【図4c】図4aにおける駆動系の一部の概略的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一実施形態による電動車両1を概略的に例示する。電動車両1は、一実施形態によると建設車両により構成される。電動車両1は、一実施形態によると連結式車両1により構成される。電動車両1は、電気ハイブリッド自動車、ディーゼル電気自動車、又は電気自動車により構成される。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態による駆動系2の平面図を概略的に例示し、図3は、図2の駆動系の一種による駆動系3の側面図を概略的に例示する。
【0019】
これらの実施形態による駆動系2、3は、前輪12a、12bを駆動するべく配置されるフロント駆動軸10、及び、振り子サスペンション30を用いて懸架されかつ後輪22a、22bを駆動するべく配置されるリア駆動軸を備える。
【0020】
振り子サスペンションは、車両に対して固定して連結される締結構造32、34、及び、駆動軸20に対して連結されかつ前記締結構造32、34に対して枢動可能にベアリング内で軸支される駆動軸締結部106を備え、その詳細は図4aから4cに示され、締結構造32、34はフロントロッカーアームサスペンション32及びリアロッカーアームサスペンション34を備える。
【0021】
駆動系2、3はフロント駆動軸10を駆動するためのフロント伝達構造40を備え、フロント伝達構造40は差動装置又はかさ歯車により構成することができる。フロント伝達構造40は被駆動フロント入力軸すなわちフロントピニオンを備えるが、図2及び3には示されない。駆動系はさらに、リア駆動軸20を駆動するためのリア伝達構造50を備え、リア伝達構造50は差動装置又はかさ歯車により構成することができる。リア伝達構造50は、被駆動リア入力軸すなわちリアピニオンを備えるが、図2及び3には示されない。
【0022】
駆動系はフロント及びリア駆動軸10、20を駆動するための電動機60を備え、電動機の回転子はリア入力軸に連結され、電動機の固定子を含む電動機60の非回転部分が前記締結構造に固定して連結されるが、これは図4から明らかである。
【0023】
駆動系はさらにカルダン軸70を備え、カルダン軸は電動機とフロント伝達構造との間に配置され、一方の端部が電動機60の回転子に、他方の端部がフロント入力軸に、連結される。
【0024】
駆動系は、図3の実施形態によると、燃焼機関80、及び燃焼機関80に連結される発電機90を備える。発電機は、電動機に連結され、電動機を駆動するべく配置される。発電機は、本実施形態によると、電圧変換器92を介して電動機に連結される。前記電圧変換器92は、発電機90からの交流電圧を整流するべく配置される整流器92a、及び、発電機90からの直流電圧を変換するべく配置されるインバータ92bを備え、電動機60の電圧及び周波数を制御することができ、周波数により回転数を制御し、電圧によりトルクを制御する。これにより、バッテリユニット又は相当物等のエネルギ格納ユニットの係合も容易となり、エネルギ格納ユニット95が選択的な代替物として点鎖線で例示される。
【0025】
点線Xは、車両の駆動系を連結式車両用の駆動系とすることができることを例示する。
【0026】
前述のような図3による駆動系は単なる例である。任意の適切な駆動系、例えば、電気ハイブリッド自動車用の駆動系、ディーゼル電気自動車用の駆動系、電気自動車用の駆動系を使用することができる。例えば、電気自動車においては、燃焼機関は必要ではない。
【0027】
図4aから4cは、本発明の一実施形態による、駆動軸構成及び電動機60を備える図2における駆動系を一部4として別の図で概略的に例示する。
【0028】
振り子式に懸架される駆動軸構成は駆動軸20及び振り子サスペンションを備え、駆動軸20は、前記振り子サスペンション30を用いて振り子式に懸架される。
【0029】
振り子サスペンション30は、車両に対して固定して連結される締結構造32、34、及び、駆動軸20に対して連結されかつ前記締結構造32、34に対して枢動可能にベアリング内で軸支される駆動軸締結部106を備える。前記枢動可能なベアリングはスライドベアリング37、38を備える。
【0030】
締結構造32、34は、フロントロッカーアームサスペンション32及びリアロッカーアームサスペンション34を備える。フロントロッカーアームサスペンション32は、駆動軸20の前方に配置され、リアロッカーアームサスペンションは駆動軸20の後方に配置され、すなわち、駆動軸20がフロントロッカーアームサスペンション32とリアロッカーアームサスペンション34との間に配置される。これにより、駆動軸20の安定したサスペンションが得られる。本実施形態によると、駆動軸20がリア駆動軸20であり、フロントロッカーアームサスペンション32が駆動軸20と電動機60との間に配置される。ロッカーアームサスペンション32、34のそれぞれは、締結具32a、34aを用いて車両に固定して連結される。
【0031】
ロッカーアームサスペンション32、34はそれぞれ、基本的に環状の外形を有し、両側部から基本的には水平のアーム32b、34bが突出する。前記締結具32a、34aは、それぞれのアーム32b、34bにおいて車両に取り付けるべく配置される。ロッカーアームサスペンション32、34はそれぞれ、内部環状表面32c、34cを有する。
【0032】
駆動軸構成は、加えて、駆動軸20を駆動するための伝達構造50を備え、伝達構造50は被駆動入力軸52すなわちピニオン52を備える。伝達構造50は、本実施形態によると、かさ歯車により構成される。代替実施形態によると、伝達構造50は差動装置により構成される。
【0033】
駆動入力軸52は、基本的には車両の長手方向に伸び、従って駆動軸20に対して直角を成し、ここではかさ歯車である伝達構造50を介して駆動力が伝達される。入力軸52は電動機60の回転子62に対して連結され、回転子62の回転子軸64が、直接又は遊星歯車(図示せず)等の歯車構造を介して、前記入力軸52に対して連結される。一変形実施形態によると、回転子軸64の延長部及び前記入力軸52すなわち前記ピニオンが、一体化して構成される。
【0034】
伝達構造50及び駆動軸20の一部が、ハウジング構造100の中央部に収容される。ハウジング構造100は、ハウジング構造の中央部の両側から横方向に伸びる実質的に管状の拡張部102、104を備え、その管状の拡張部内に駆動軸20が動作すべく配置される。
【0035】
ハウジング構造100はさらに、その前方部分から長手方向に伸び、前方に向かって細くなる第1の円錐形拡張部106、及び、後方部分から長手方向に伸び、後方に向かって細くなる第2の円錐形拡張部108を備える。
【0036】
ハウジング構造の第1の円錐形拡張部106は、端部106aで第1のスライドベアリング37を介してフロントロッカーアームサスペンション32に対して軸支するように連結され、第1の円錐形拡張部106は、フロントロッカーアームサスペンション32に対して回転可能である。従って、第1のスライドベアリング37は、フロントロッカーアームサスペンション32の内部環状表面32cと、第1の円錐形拡張部106の端部106aの外部表面106bとの間に配置される。
【0037】
ハウジング構造の第2の円錐形拡張部108は、端部108aで第2のスライドベアリング38を介してリアロッカーアームサスペンション34に対して軸支するように連結され、第2の円錐形拡張部108は、リアロッカーアームサスペンション34に対して回転可能である。従って、第2のスライドベアリング38は、リアロッカーアームサスペンション34の内部環状表面34cと、第2の円錐形拡張部108の端部108aの外部表面108bとの間に配置される。
【0038】
ハウジング構造100の第1の円錐形拡張部106は、端部106aで電動機60の固定子66に対して連結され、駆動軸締結部が前記円錐形拡張部106を備える。電動機60は、第1のスライドベアリング37の内側で円錐形拡張部106に対して連結される。
【0039】
ハウジング構造100の第1の円錐形拡張部106は、外部円錐体106c、及び、前記外部円錐体106cの内側に配置される内部円錐体106dを備える。内部円錐体106dは、入力軸52の保護を成す。従って、外部円錐体106cの外部表面106bは、第1のスライドベアリング37に対してスライド可能に配置される。外部円錐体106cは、本実施形態によると、荷重を支持する。外部円錐体106cは、本実施形態によると、電動機60の固定子66に対して連結され、電動機60が、外部円錐体106c、及び、第1のスライドベアリング37の内側に連結される。外部円錐体106c及び電動機の固定子は、例えばねじ継手補強等の任意の適切な連結を用いて連結することができる。
【0040】
代替実施形態によると、電動機60は内部円錐体106dに対して連結され、電動機60はまた第1のスライドベアリング37の内側で内部円錐体106dに連結される。この連結には締結具が含まれ、一実施形態による締結具はねじ継手補強により構成される。
【0041】
さらに別の代替実施形態によると、電動機60は締結具を用いて外部円錐体と内部円錐体との間に連結され、一変形実施形態による締結具はねじ継手補強により構成される。
【0042】
電動機60が、第1の円錐形拡張部106、すなわち外部円錐体及び/又は内部円錐体に対して連結されるという事実により、車両の重さにより生ずるスライドベアリング37の上部の摩耗による回転子軸64と入力軸52との間の破損のリスクが回避される。
【0043】
ハウジング構造100の第2の円錐形拡張部108は、外部円錐体108c、及び、前記外部円錐体の内側に配置される内部円錐体108dを備える。従って、外部円錐体108cの外部表面108bは、第2のスライドベアリング38に対してスライド可能に配置される。外部円錐体108cは、本実施形態によると、荷重を支持する。内部円錐体108dは伝達構造の保護を成す。
【0044】
その結果、駆動軸締結部は外部円錐体、及び、外部円錐体の内側に配置される内部円錐体を備える。前記スライドベアリングは前記外部円錐体と前記締結構造との間に配置される。
【0045】
電動機の回転子60は、前記入力軸を駆動するために入力軸に対して連結される。電動機の固定子60を含む電動機60の非回転部分は、駆動軸締結部の前記内部円錐体に対して固定して連結される。
【0046】
代替実施形態によると、車両のフロント駆動軸が振り子式に懸架される。
【0047】
上述の本発明の好ましい実施形態は、例示及び説明の目的で提供された。網羅することも、開示される形式に本発明を厳格に限定することも意図されない。当業者にとって多くの修正及び変形が明らかであろうことは明白である。実施形態は、本発明の原理及びその実際の応用を最良に説明するために選択され記載されたものであり、従って、他の当業者が種々の実施形態について、想到される特定の使用に適合するような種々の変形と共に本発明を理解することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振り子サスペンション(30)を用いて懸架される駆動軸(20)を備える電動車両の駆動系であって、前記振り子サスペンション(30)が、車両に対して固定して連結される締結構造(32、34)と、前記駆動軸(20)に対して連結されかつ前記締結構造(32、34)に対して枢動可能に軸支される駆動軸締結部(106)とを備え、伝達構造(50)が被駆動入力軸(52)を備える駆動系において、
電動機(60)が前記駆動軸(20)を駆動するために配置され、前記電動機(60)の回転子が前記入力軸(52)に対して連結され、前記電動機(60)の固定子(66)を含む前記電動機(60)の非回転部分が前記駆動軸締結部(106)に対して固定して連結されることを特徴とする駆動系。
【請求項2】
前記枢動可能なベアリングがスライドベアリング(37、38)を備える、請求項1に記載の駆動系。
【請求項3】
前記電動機(60)の前記非回転部分が、前記スライドベアリング(37)の内部のベアリング部の内側で前記駆動軸締結部(106)に対して連結される、請求項2に記載の駆動系。
【請求項4】
前記駆動軸締結部(106)が外部円錐体を備え、前記スライドベアリング(37)が前記外部円錐体と前記締結構造(32)との間に配置される、請求項2又は3に記載の駆動系。;
【請求項5】
前記締結構造(32、34)がフロントロッカーアームサスペンション及びリアロッカーアームサスペンションを備える、請求項4に記載の駆動系。
【請求項6】
前記駆動軸締結部(106)が、前記外部円錐体の内側に配置される内部円錐体を備える、請求項4又は5に記載の駆動系。
【請求項7】
前記電動機(60)の前記非回転部分が前記外部円錐体に対して連結される、請求項4〜6のいずれか1項に記載の駆動系。
【請求項8】
前記電動機(60)の前記非回転部分が前記内部円錐体に対して連結される、請求項6又は7に記載の駆動系。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の駆動系を備えることを特徴とする電動車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【公表番号】特表2013−517172(P2013−517172A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548916(P2012−548916)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【国際出願番号】PCT/SE2010/051487
【国際公開番号】WO2011/087426
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(512129686)ビーエーイー システムズ ハグランド アクチボラグ (2)
【Fターム(参考)】