説明

排ガス中のNOxを最小化するための装置、システムおよび方法

排ガス中のNOxを最小化するための装置、システムおよび方法が開示される。装置は、エンジン100の排ガスを少なくとも部分的にイオン化するように構成されたイオン化モジュール410を含んでいる。評価モジュール302はイオン化された排ガス中にあるNOxイオンを特定するように構成されている。またエンジン制御モジュール310は、評価モジュール302と通信し、特定されたNOxレベルに応じてエンジンパラメータを修正するように構成されている。システムは、空燃混合物を少なくとも1つの燃焼室に供給するように構成された吸気マニホルドと、燃焼室からの排ガスを受けるように構成された排気マニホルド106と、前記装置とを有する内燃エンジン100を含んでいる。方法は、エンジン100の排ガスを少なくとも部分的にイオン化するように構成されたイオン化モジュール410を制御する工程と、イオン化された排ガス中にあるNOxイオンを特定する工程と、特定されたNOxレベルに応じて1つまたは複数の選択されたエンジンパラメータを修正する工程と、を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃エンジンによって生成される排ガス中のNOxの最小化に関し、特に、個々の燃焼室によって生成されるNOxレベルの判定およびNOxレベルに応じた選択されたエンジンパラメータの修正に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素過剰の環境で燃焼が起こると、ピーク燃焼温度が上昇し、その結果、窒素酸化物(NOx)のような不用な排出物が形成される。この問題は、新鮮空気流の質量を増大し、それによって燃焼室内にある酸素および窒素の質量を増大するターボチャージの存在によって一層悪化する。
【0003】
NOxのような不都合な排出物を低減する公知の技術の1つは、後続の燃焼用の新鮮空気流に化学不活性ガスを導入する工程を含んでいる。新鮮空気流の酸素濃度を低減することによって、燃料の燃焼はより遅くなり、ピーク燃焼温度が低下することによって、NOxの生成が低減する。内燃エンジンの環境では、このような化学不活性ガスは排ガスの形態で容易に豊富に存在し、不活性ガスを導入する公知の方法の1つは、排ガス再循環(EGR)システムの使用によるものである。EGRシステムは排気マニホルドからの排ガスを、吸気マニホルドバルブへと流れる新鮮空気流へと誘導する。しかし、このような方法で燃焼温度を低下させることで、実際には粒子状物質および不燃焼炭化水素の放出量が増大する。
【0004】
NOxを還元する他の方法には、触媒コンバータ、および点火/インジェクタ・タイミング制御が含まれる。触媒コンバータは典型的には異なる2種類の触媒、すなわち還元触媒と酸化触媒とを使用する。還元触媒と酸化触媒の双方とも共通して、排気流内の触媒の最大の表面積を達成するためにセラミックハニカム状構造の表面に埋め込まれる。双方の場合とも、プラチナ、ロジウム、および/またはパラジウムのような金属が触媒の役割を果たす。
【0005】
触媒コンバータのさらに別の構成要素は、排ガス流を監視し、検知されたNOxレベルに応じて燃料噴射システムを制御するエンジン制御モジュール(ECM)である。排ガス流を監視する方法の1つは、典型的には触媒コンバータの上流に装着される酸素センサである。酸素センサは排ガスに含まれる酸素量を表示するように構成されている。ECMはその後、燃焼室に噴射される空気量を増減することができる。あるいは、触媒コンバータによって転換されないNOxを検知するため、触媒コンバータの下流に酸素センサを装着してもよい。
【0006】
現在、専用のNOxセンサはほとんどがソリッドステート電気化学センサである。高温のNOxを検知するために排ガス流内でイットリア安定化ジルコニア(YSZ)センサがこれまで使用されてきた。しかし、YSZセンサは精度が低く、応答時間が遅いことに悩まされ、したがって利用可能性が制約される。さらに、YSZセンサの感度はガス成分の変化、特に酸素濃度によっても影響されるので、相関感度は主要な干渉問題である。
【0007】
しかし、共通のNOxセンサの主要な欠点は、どの燃焼室がNOxを発生しているかを正確に特定できないことである。NOxセンサは一般に排気マニホルドの下流に設置される。本明細書で用いられる下流とは、排ガスがエンジンから離れて進行する方向である。図1は先行技術による排気マニホルドを有する内燃エンジン100(以下「エンジン」)の一部を示す側面斜視図である。エンジン100は典型的にはシリンダヘッド104に連結されたシリンダブロック102を含んでいる。
【0008】
シリンダヘッド104は空燃混合物のような燃焼物質の吸気用の吸気口(図示せず)と、燃焼物質の排気用の排気口(図示せず)とを有している。排気口は一般に、各燃焼室またはシリンダから排ガスを収集する排気マニホルド106に連結されている。ターボチャージャ108を排気マニホルドに連結してもよい。
【0009】
図2は先行技術によるシリンダヘッド104と排気マニホルド106との上面図を示す概略ブロック図である。当業者には公知であるが、本明細書の説明には関連しないエンジンの基本を構成する多くの部品は省略され、詳細には説明しない。排ガスの流れは矢印202で示すようにシリンダヘッド104から触媒コンバータ204の方向に流れる。前述のように触媒コンバータ204は排ガス流中のNOxを還元する。NOxを検知するようにされた酸素センサ206は、触媒コンバータ204を通過するNOxを検知するために触媒コンバータ204の下流に設置してもよい。
【0010】
酸素センサ206からのフィードバックは典型的にはエンジン制御モジュール208に伝送される。エンジン制御モジュール208は次に、シリンダ内部のNOx生成物を還元するためにエンジンパラメータを修正してもよい。研究では空気/燃料比を適切に制御すればNOx排出が低減することが示されている。しかし、現行のNOxセンサはどのシリンダがNOxを生成しているかを検知することができず、したがってエンジン制御モジュール208は全てのシリンダのタイミングおよび/または空気/燃料比を修正しなければならない。その結果、前述のように粒子排出物が増大し、エンジン性能が低下することが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の記載から、排ガス中のNOxを検知し、修正する装置、システムおよび方法が存在する必要があることは明白であろう。このような装置、システムおよび方法は、個々のシリンダ内で生成されるNOxのレベルを検知し、検知されたNOxレベルに応じてエンジンパラメータを選択的に修正することができればさらに有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は現在の技術水準に応じて、特に現在市販されている窒素酸化物(NOx)最小化システムによっては未だに完全に解決されないこの分野の問題および必要性に応じて開発されたものである。したがって、本発明はこの分野での上記の欠点の多くの、または全ての欠点を克服する排ガス中のNOxを最小化する装置、システムおよび方法を提供するために開発された。
【0013】
排ガス中のNOxを最小化する装置は、エンジンの排ガスを少なくとも部分的にイオン化するように構成されたイオン化モジュールと、イオン化された排ガス中にあるNOxイオンを特定するように構成された評価モジュールと、評価モジュールと通信し、特定されたNOxレベルに応じてエンジンパラメータを修正するように構成されたエンジン制御モジュールとを備えている。
【0014】
一実施形態では、評価モジュールはNOxの存在に応じて抵抗率を変更するように構成された金属酸化物半導体センサをさらに備えている。加えて、評価モジュールは、イオンを金属酸化物半導体の表面に向けて加速するように構成された加速モジュールを含んでいてもよい。
【0015】
さらに別の実施形態では、評価モジュールはイオン電流を検知するように構成されたイオンセンサモジュールを備えていてもよい。エンジン制御モジュールは複数の評価モジュールと通信し、特定されたNOxレベルに応じてエンジンパラメータを修正するように構成されてもよい。一実施形態では、エンジンパラメータはタイミング、燃料補給、および排ガスの再循環を含んでいてもよい。
【0016】
排ガス中のNOxを最小化するための本発明のシステムも提供される。特に、このシステムは、一実施形態では、空燃混合物を少なくとも1つの燃焼室に供給するように構成された吸気マニホルドと、燃焼室からの排ガスを受けるように構成された排気マニホルドとを有する内燃エンジンとを含んでいる。このシステムはさらに、内燃エンジンの排ガスを少なくとも部分的にイオン化するように構成されたイオン化モジュールを含んでいる。
【0017】
このシステムはある特定の実施形態ではさらに、イオン化された排ガス中にあるNOxイオンを特定するように構成された評価モジュールと、評価モジュールと通信し、特定されたNOxレベルに応じてエンジンパラメータを修正するように構成されたエンジン制御モジュールとを含んでいる。
【0018】
排ガス中のNOxを最小化する本発明の方法も提供される。開示される実施形態での方法はそれらとは別個に実行してもよいが、実質的に、上記の装置およびシステムの動作に関して上記の機能を実行するために必要な工程を含んでいる。一実施形態では、この方法はエンジンの排ガスを少なくとも部分的にイオン化するように構成されたイオン化モジュールを制御する工程と、イオン化された排ガス中にあるNOxイオンを特定する工程と、特定されたNOxレベルに応じてエンジンパラメータを修正する工程とを含んでいる。
【0019】
この方法はさらに、NOxの存在に応じて抵抗率の変化を検知する工程と、イオンを金属酸化物半導体の表面に向けて加速する工程をも含んでいてもよい。さらに別の実施形態では、この方法はイオン電流を検知し、特定されたNOxレベルに応じてエンジンパラメータを修正する工程とを含んでいる。
【0020】
本明細書を通して機能、利点または同様の言語への言及は、本発明によって実現できる機能および利点の全てが本発明の単一の実施形態に存在すべきである、または存在することを意味するものではない。逆に、機能および利点に関する言語は、実施形態に関連して記載される特定の機能、利点または特徴は本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味するものと理解されたい。したがって、本明細書を通して機能、利点およびこれと同様の言語の検討/議論は、同じ実施例に言及することもあるが、必ずしもそうではないこともある。
【0021】
さらに、記載される本発明の機能、利点および特徴は、いずれかの適宜な態様で1つまたは複数の実施形態と組み合わせることができる。関連分野の当業者は、本発明を特定の実施形態の1つまたは複数の特定の機能または利点なしでも実施できることを理解しよう。別の場合には、本発明の全ての実施形態には存在しない付加的な機能および利点が、ある実施例では認識されることがある。
【0022】
本発明の上記の機能および利点は以下の説明および添付の特許請求の範囲からより完全に明確になり、または下記のような発明の実践によって習得されよう。
本発明の利点を容易に理解するため、添付図面で図示した特定の実施形態を参照して、簡単に前述した本発明をより具体的に説明する。これらの図面は本発明の典型的な実施形態を示すだけであり、したがって発明の範囲を限定すると見なされるものではないことを理解した上で、添付図面を用いて本発明を付加的な特定性および詳細によって説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本明細書に記載される機能ユニットの多くは、それらの実装非依存性を一層特別に強調するため、モジュールとして表示されている。例えば、モジュールはカスタムVLSI回路、またはゲートアレイ、論理チップ、トランジスタ、またはその他の個別部品のような既成半導体からなるハードウェア回路として実装してもよい。モジュールはフィールドプログラマブルゲートアレイ、プログラマブルアレイ論理、プログラマブル論理デバイスなどのようなプログラマブルハードウェアデバイスで実装してもよい。
【0024】
モジュールは様々な種類のプロセッサによって実行されるようにソフトウェアで実装されてもよい。実行可能コードの特定されたモジュールは例えば、コンピュータ命令の1つまたは複数の物理または論理ブロックを含んでいてもよく、これらのブロックは例えば、目的、手順または機能として編成されてもよい。それにも関わらず、特定されたモジュールの実行可能コードは物理的に一緒に配置される必要はなく、互いに論理結合されるとモジュールを構成し、モジュールの前述の目的を達成する、異なる領域/場所に記憶される多様の異なる命令を含んでいてもよい。
【0025】
実際には、実行可能コードのモジュールは単一の命令でも多くの命令でもよく、異なるプログラム中に、また幾つかのメモリデバイスにまたがって、幾つかの異なるコードセグメントにわたって配分されることさえできる。同様に、本明細書ではオペレーショナルデータをモジュール内に特定し、また図示し、いずれかの適宜な形態で実施し、適宜の種類のデータ構造内に編成してもよい。オペレーショナルデータは単一のデータセットとして収集され、異なる記憶デバイスを含む異なる領域にわたって配分されてもよく、また少なくとも部分的に、システムまたはネットワーク上に単に電子信号として存在してもよい。
【0026】
本明細書を通して「一実施形態」、「ある実施形態」または同様の言語への言及は、実施形態と関連して記載される特定の機能、構造または特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味している。このように、本明細書を通して「一実施形態に」、「ある実施形態に」または同様の言語の語句が出てきたときは、全て同じ実施形態を意味することもあるが、必ずしもそうではないこともある。
【0027】
信号保持媒体への言及では、信号を生成させる、またはデジタル処理装置で機械読み取り可能な命令のプログラムを実行させる信号を生成可能なあらゆる形態をとってもよい。信号保持媒体は伝送線、コンパクトディスク、デジタルビデオディスク、磁気テープ、ベルヌーイドライブ、磁気ディスク、パンチカード、フラッシュメモリ、集積回路、またはその他のデジタル処理装置のメモリデバイスによって実施してもよい。
【0028】
さらに、本発明の記載の機能、構造または特徴を1つまたは複数の実施形態でいずれかの適宜の態様で組み合わせてもよい。以下の記載では、本発明を完全に理解するためにプログラミング、ソフトウェアモジュール、ユーザー選択、ネットワークトランザクション、データベース照会、データベース構造、ハードウェアモジュール、ハードウェア回路、ハードウェアチップなどの例のような多数の特定の詳細が提示される。しかし、本発明を1つまたは複数の特定の詳細なしで、または他の方法、構成部品、材料などを用いて実施してもよいことを当業者は認識しよう。別の場合は、本発明の態様が曖昧になることを避けるために、公知の構造、材料または動作は詳細には図示、または説明されない。
【0029】
図3は本発明による排ガス中のNOxを最小化するためのシステム300の一実施形態を図示した概略ブロック図である。システム300は図1および2を参照して前述したシリンダヘッド104と、排気マニホルド106とを含んでいる。排気マニホルド106には図示のように、複数の排気口が備えられている。各排気口301はシリンダヘッド104に連結され、燃焼室またはシリンダの排ガスを捕集するように構成されている。一実施形態では、システム300は複数の評価モジュール302を備えていてもよい。各評価モジュール302はユニオン304の上流の排気口301(排気マニホルド106とも呼ばれる)内に配置されている。ユニオン304は、排ガスが各シリンダから共通の排気管306へと流入する排気マニホルド106のポイントである。
【0030】
評価モジュール302は一実施形態では排ガス中のNOxレベルを特定するように構成されている。ケーブルまたはバスのような連絡/通信経路308が各評価モジュール302をエンジン制御モジュール310(ECM)と結合する。ECM310はエンジン100の動作全体を制御し、管理するように構成されている。ECM310はエンジン100に結合された様々なセンサおよびシステムとインターフェースするための入力を含んでいてもよい。内燃エンジンに関連する様々なセンサおよびシステムは当業者には公知であり、ここではこれ以上説明しない。
【0031】
各評価モジュール302は連絡経路308を通じてECM310と通信するように構成されている。ECM310は各評価モジュール302からNOxレベルの情報を収集し、平均NOxレベルを計算するように構成されている。あるいは、ECM310を各シリンダのNOxレベルの履歴を保持するように構成してもよい。1つのシリンダ312が他のシリンダ312以上のNOxを生成していることをECM310が判定すると、ECM310は問題を生じているシリンダ位置を修正モジュール314と通信する。修正モジュール314は一実施形態では、それらに限定されないがタイミング、燃料補給および排ガスの再循環を含むエンジンパラメータを変更することによってNOxレベルを最小化するように構成されている。エンジンパラメータの変更は各シリンダ共通に行われてもよいが、一実施形態では、各シリンダの性能を個々に強化するために各シリンダごとに個々に行われる。
【0032】
図4は本発明による金属酸化物半導体評価モジュール402の一実施形態を示す概略ブロック図である。図示のように、評価モジュール402は、図3に関連して前述のように、排気マニホルド106の片側に取り付けてもよい。一実施形態では、評価モジュール402は、排ガスが評価モジュール402を流れることができるようにする複数の入口404を含んでいる。排ガスの流れは図4では矢印406によって示されている。
【0033】
評価モジュール402は排ガスが交互に流れ、停滞し、引き続いて出口408を通ってモジュールを出るように構成されている。ガスが評価モジュール402内に停滞している間、イオン化モジュール410が一連の電極412に電圧を印加する。排気事象中に、エンジンからの排ガスの急激な流れがそれまでに累積したイオンを評価モジュールから全て一掃する。エンジンの排気口(図示せず)が閉鎖されると、評価モジュール402内の排ガスは流れを停止し、電極412の近傍に停滞する。電極412間の排ガスはイオン化モジュールによってイオン化される。発生したイオンはイオンドリフト領域内へと加速され、引き続き矢印417で示すように金属酸化物半導体センサ416の方向に加速される。
【0034】
イオン化モジュール410は、評価モジュール402内部の排ガスの特性を特定するために、各排気サイクル中の時間を基準にした金属酸化物半導体センサ416の抵抗を測定する。イオンが金属酸化物半導体センサ416の表面に吸着されると、金属酸化物半導体センサ416の電気抵抗の変化が生ずる。抵抗の変化はイオンと反応する吸着された酸素による表面電子の利得または損失の結果である。電気抵抗の変化の大きさは排ガス中に存在するイオンの濃度と直接関連する。
【0035】
金属酸化物半導体センサ416は異なる種類のイオンを検知するように「同調」させることができる。図示した実施形態では、金属酸化物半導体センサ416はNOxイオンに対して極めて敏感であるように選択された材料から形成されている。例えば、金属酸化物半導体センサ416をチタンをベースにした酸化物から形成してもよい。あるいは、金属酸化物半導体センサ416を、それらに限定されないが酸化タングステン、酸化スズ、酸化インジウムおよび酸化鉄を含む材料から形成してもよい。本発明による使用に適する金属酸化物半導体センサはニューヨーク、ホワイトプレーンのデュポンケミカル社から市販のSenplex(登録商標)センサである。
【0036】
図5は本発明による評価モジュール502の代替実施形態を示す概略ブロック図である。一実施形態では、評価モジュール502はイオンセンサモジュール503を含んでいてもよい。排気事象中、排ガスはエンジンから排気マニホルド106を通って矢印504で示される全般的な方向に流れる。イオンセンサモジュール503は少なくとも1つの入口506と、少なくとも1つの出口508とを含んでいる。
【0037】
排気口が閉鎖されると、イオンセンサモジュール内部の残留排ガスは電極510の近傍に停滞する。イオン化モジュール410は高電圧を電極510に供給し、排ガスをイオン化し、それによって火花電流が流れるように構成されている。電極510の間のイオンは電極510の間から出て正512と負514のイオンドラフト領域へと加速され、そこでイオンは矢印517で示すように低電圧電極516の方向に移動する。
【0038】
イオン化モジュール410は、排ガスの特性を特定するために、各排気サイクル中の時間を基準にした電極510での火花電流と、電極516でのドリフト電流とを測定する。イオン化モジュール410は電流の大きさ、電流ピーク、電流減衰までの時間、および放電の変化のような態様を測定するように構成されてもよい。評価モジュール502はイオン測定についてECMと通信するように構成されている。
【0039】
以下の概略フローチャート図は基本的に論理フローチャート図として記載される。したがって、図示した順序および表記された工程は提示された方法の一実施形態を示すものである。図示した方法の1つまたは複数の工程またはその一部と機能、論理または効果が同等である他の工程および方法も考えられる。加えて、使用されるフォーマットおよび記号は方法の論理段階を説明するためのものであり、方法の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0040】
フローチャート図では様々な種類の矢印と線が用いられるが、それらは対応する方法を限定するものではないことを理解されたい。まさに、ある種の矢印またはその他の結合記号を方法の論理の流れだけを示すために用いることがある。例えば、矢印は図示した方法の列挙される工程間の特定されていない継続期間の待機周期または監視周期を示すために用いてもよい。加えて、特定の方法が実行される順序は図示した対応する工程の順序に厳密に準拠することもしないこともある。
【0041】
図6は排ガス中のNOxを最小化するための方法600の一実施形態を示す概略フローチャート図である。方法600は602で開始され、排ガス中のNOxを最小化するシステム300が604で備えられる。一実施形態では、システム300には604で、金属酸化物半導体センサ416を有する評価モジュールが備えられる。あるいは、システム300には604でイオンセンサモジュール503が備えられる。
【0042】
次に評価モジュール302が606で排ガス中のNOxレベルを監視し、ECM310と通信する。ECM310は各シリンダ312ごとのNOxレベル情報を保持し、1つまたは複数のシリンダがNOxを生成しているか否かを判定する。一実施形態では、ECM310は608で1つのシリンダのNOxレベルを隣接するシリンダのNOxレベルと比較する。あるいは、ECM310は608で1つのシリンダを隣接するシリンダと比較せずに、判定を行ってもよい。
【0043】
608でNOxの閾値に達すると、修正モジュール314はNOxレベルを最小化するようにエンジンパラメータを調整する。一実施形態では、修正モジュール314は612で燃料補給を調整し、614でタイミングを調整し、または616で排ガスを再循環させる。一実施形態では、タイミングの調整には空気/燃料混合物をシリンダに推進し、または遅らせることが含まれる。ECM310は3つのパラメータの全てが168、620、622で調整されたか否かを判定する。さらに別の実施形態では、3つのパラメータの1つ、またはいずれかの組み合わせが618、620、622で調整されてもよい。あるいは、NOxレベルを最低限にするため、シリンダによって選択可能な別のエンジンパラメータが調整されてもよい。
【0044】
610でNOxの閾値に達しない場合は、評価モジュール302は606で排ガスの監視を継続する。同様に、618、620、622でのエンジンパラメータの調整の後、評価モジュール302は606で排ガスの監視を継続する。エンジンが停止されると、方法600は624で終了する。
【0045】
本発明はその趣旨または必須の特徴から離れることなく他の特定の形態で実施してもよい。記載の実施形態はあらゆる局面で例示のためであり、限定的なものではないものと見なされるべきである。したがって、本発明の範囲はこれまでの記載ではなく添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の意味および同等の範囲内の全ての変更はそれらの範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】先行技術による排気マニホルドを有する内燃エンジンの一部を示す側面斜視図である。
【図2】先行技術によるシリンダヘッドおよび排気マニホルドの上面図を示す概略ブロック図である。
【図3】本発明による排ガス中のNOxを最小化するためのシステムの一実施形態を図示した概略ブロック図である。
【図4】本発明による金属酸化物半導体評価モジュールの一実施形態を示す概略ブロック図である。
【図5】本発明による評価モジュールの代替実施形態を示す概略ブロック図である。
【図6】排ガス中のNOxを最小化するための方法の一実施形態を図示した概略フローチャート図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中の窒素酸化物(NOx)を最小化する装置であって、
エンジンの排ガスを少なくとも部分的にイオン化するように構成されたイオン化モジュールと、
該イオン化された排ガス中にあるNOxイオンを特定するように構成された評価モジュールと、
該評価モジュールと通信し、特定されたNOxレベルに応じてエンジンパラメータを修正するように構成されたエンジン制御モジュールと、を備える装置。
【請求項2】
前記評価モジュールは、前記NOxの存在に応じて抵抗率を変更するように構成された金属酸化物半導体センサをさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記金属酸化物半導体は、NOxに敏感であるように選択された材料からなる請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記材料は、酸化チタン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化インジウム、および酸化鉄からなる群から選択される請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記金属酸化物半導体センサは、イオンを前記金属酸化物半導体の表面に向けて加速するように構成された加速モジュールをさらに備える請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記評価モジュールは、イオン電流を検知するように構成されたイオンセンサモジュールをさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記エンジン制御モジュールはさらに、複数の評価モジュールと通信し、特定されたNOxレベルに応じて複数のシリンダの各々について個々にエンジンパラメータを修正するように構成される請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記エンジンパラメータは、タイミング、燃料補給、および排ガスの再循環からなる群から選択される請求項1に記載の装置。
【請求項9】
排ガス中の窒素酸化物(NOx)を最小化するシステムであって、
空燃混合物を少なくとも1つの燃焼室に供給するように構成された吸気マニホルドと、各燃焼室ごとに、該燃焼室からの排ガスを受けるように構成された排気口を有する排気マニホルドとを有する内燃エンジンと、
該内燃エンジンの排ガスを少なくとも部分的にイオン化するように構成されたイオン化モジュールと、
該イオン化された排ガス中にあるNOxイオンを特定するように構成された評価モジュールと、
該評価モジュールと通信し、該特定されたNOxレベルに応じて1つまたは複数のエンジンパラメータを修正するように構成されたエンジン制御モジュールと、を備えるシステム。
【請求項10】
複数のイオン化モジュールと複数の評価モジュールとをさらに備え、各排気口は少なくとも1つのイオン化モジュールと、少なくとも1つの評価モジュールとを有する請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記エンジン制御モジュールは、複数の評価モジュールと通信し、特定されたNOxレベルに応じて個々の燃焼室についてエンジンパラメータを選択的に修正するように構成される請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記評価モジュールは、前記NOxの存在に応じて抵抗率を変更するように構成された金属酸化物半導体センサをさらに備える請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記金属酸化物半導体は、NOxに敏感であるように選択された材料からなる請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記材料は、二酸化チタン、および酸化鉄からなる群から選択される請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記金属酸化物半導体センサは、イオンを前記金属酸化物半導体の表面に向けて加速するように構成された加速モジュールをさらに備える請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記評価モジュールは、イオン電流を検知するように構成されたイオンセンサモジュールをさらに備える請求項9に記載のシステム。
【請求項17】
前記選択される1つまたは複数のエンジンパラメータは、タイミング、燃料補給、および排ガスの再循環からなる群から選択される請求項9に記載の装置。
【請求項18】
排ガス中の窒素酸化物(NOx)を最小化する動作を行うためにデジタル処理装置によって実行可能な機械読み取り可能命令のプログラムを具体化する信号保持媒体であって、前記動作は、
エンジンの排ガスを少なくとも部分的にイオン化するように構成されたイオン化モジュールを制御する工程と、
該イオン化された排ガス中にあるNOxイオンを特定する工程と、
該特定されたNOxレベルに応じて1つまたは複数の選択されたエンジンパラメータを修正する工程と、を含む信号保持媒体。
【請求項19】
前記命令は、NOxの存在に応じて抵抗率を変更する動作をさらに含む請求項17に記載の信号保持媒体。
【請求項20】
前記命令は、イオンを前記金属酸化物半導体の表面に向けて加速する動作をさらに含む請求項17に記載の信号保持媒体。
【請求項21】
前記命令は、イオン電流を検知する動作をさらに含む請求項17に記載の信号保持媒体。
【請求項22】
前記命令は、特定されたNOxレベルに応じてエンジンパラメータを修正する動作をさらに含む請求項17に記載の信号保持媒体。
【請求項23】
排ガス中の窒素酸化物(NOx)を最小化する方法であって、
エンジンの排ガスを少なくとも部分的にイオン化するように構成されたイオン化モジュールを制御する工程と、
該イオン化された排ガス中にあるNOxイオンを特定する工程と、
該特定されたNOxレベルに応じて1つまたは複数の選択されたエンジンパラメータを修正する工程と、を含む方法。
【請求項24】
前記方法は、前記NOxの存在に応じて抵抗率を変更する工程を含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記方法は、イオンを前記金属酸化物半導体の表面に向けて加速する工程を含む請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記方法は、イオン電流を検知する工程を含む請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記方法は、特定されたNOxレベルに応じてエンジンパラメータを修正する工程を含む請求項23に記載の方法。
【請求項28】
排ガス中の窒素酸化物(NOx)を最小化する装置であって、
エンジンの排ガスを少なくとも部分的にイオン化するように構成されたイオン化モジュールを制御する手段と、
該イオン化された排ガス中にあるNOxイオンを特定する手段と、
該特定されたNOxレベルに応じて1つまたは複数のエンジンパラメータを修正する手段と、を含む装置。
【請求項29】
前記方法は、前記NOxの存在に応じて抵抗率を変更する手段をさらに含む請求項27に記載の装置。
【請求項30】
イオンを前記金属酸化物半導体の表面に向けて加速する手段をさらに含む請求項27に記載の装置。
【請求項31】
イオン電流を検知する手段をさらに含む請求項27に記載の装置。
【請求項32】
特定されたNOxレベルに応じてエンジンパラメータを修正する手段をさらに含む請求項27に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−525710(P2008−525710A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548471(P2007−548471)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/046597
【国際公開番号】WO2006/071727
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(507212148)カミンズ インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】