説明

接合方法、接合体および光学素子

【課題】2つの基板同士を強固に接合して、製造時と実使用時での温度が異なっていても、残留応力の発生を抑制し、実使用時に高い寸法精度を維持し得る接合体を製造可能な接合方法、およびかかる接合方法により2つの基板同士を高い寸法精度で強固に接合してなる接合体および光学素子を提供すること。
【解決手段】本発明の接合方法は、第1の基板2および紫外線に対して透過性を有する第2の基板4を用意し、第1の基板2の表面上に、プラズマ重合法により接合膜3を成膜する工程と、接合膜3にエネルギーを付与する工程と、接合膜3を介して第1の基板2と第2の基板4とを接合し、接合体5を得る工程と、接合体5に対して第2の基板4側から紫外線を照射する工程と、接合体5の温度を、製造後の接合体5が使用される際の実体温度に維持しつつ、2つの定盤7で接合体5を押圧した状態で保持することにより、接合体5の形状を平板状に矯正する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合方法、接合体および光学素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2つの部材(基板)同士を接合(接着)する際には、従来、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤等の接着剤を用いて行う方法が多く用いられている。
接着剤は、部材の材質によらず、接着性を示すことができる。このため、種々の材料で構成された部材同士を、様々な組み合わせで接着することができる。
例えば、透過する光に位相差を生じさせる機能を有する光学素子として波長板が知られている。波長板は、水晶のような複屈折結晶の基板を2枚組み合わせたものであり、基板間は接着剤を用いて接着される。
このように接着剤を用いて基板同士を接着する際には、液状またはペースト状の接着剤を接着面に塗布し、塗布された接着剤を介して基板同士を貼り合わせる。その後、熱または光の作用により接着剤が硬化して基板同士が接着される。
【0003】
ところが、接着剤は硬化の際に体積収縮を伴うため、硬化後には接着剤が基板を引っ張るような応力が発生する。また、結晶軸の向きが異なる水晶基板同士や異種材料からなる基板同士を接合した場合には、基板同士の熱膨張率が異なるため、環境温度の変化に伴って熱膨張率差に起因した応力が生じることとなる。このようにして発生した応力(残留応力)は、波長板を変形させ、光学性能を低下させる原因となっていた。さらに、変形した波長板は修復することができず、不良品となるため、歩留まりの低下を招いていた。
【0004】
また、接着剤を所定の厚さで均一に塗布することは難しいため、基板間距離が不均一になることが避けられない。その結果、波長板には波面収差等の収差が生じ、意図しない位相のズレを招くことが問題となっていた。
さらに、接着剤は、前述したような樹脂材料で構成されるため、耐光性に乏しいことも問題とされていた。
また、接着剤の硬化時間が非常に長くなるため、接着に長時間を要するという問題もある。
【0005】
一方、接着剤を用いない接合方法として、固体接合による方法がある。
固体接合は、接着剤等の中間層が介在することなく、部材同士を直接接合する方法である(例えば、特許文献1参照)。
このような固体接合によれば、接着剤のような中間層を用いないので、寸法精度の高い接合体を得ることができる。
【0006】
しかしながら、固体接合では、部材の材質に制約があるという問題がある。具体的には、一般に固体接合は、同種材料同士の接合しか行うことができない。仮に異種材料からなる部材同士を接合したとしても、両部材の熱膨張率差が緩和されることなく接合界面に応力を発生させ、変形や剥離等の不具合を招くこととなる。しかも、一旦接合した界面は、接合を緩めたりすることができないため、接合後に発生した変形等を修復することは不可能である。また、接合可能な材料が、シリコン系材料や一部の金属材料等に限られるため、固体接合の応用範囲は極めて限定的である。
さらに、固体接合を行う雰囲気は減圧雰囲気に限られる上、高温(700〜800℃程度)の熱処理を必要とする等、接合プロセスにおける問題もある。
【0007】
【特許文献1】特開平5−82404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、2つの基板同士を強固に接合して、製造時と実使用時での温度が異なっていても、残留応力の発生を抑制し、実使用時に高い寸法精度を維持し得る接合体を製造可能な接合方法、およびかかる接合方法により2つの基板同士を高い寸法精度で強固に接合してなる接合体および光学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の接合方法は、少なくとも一方が紫外線に対して透過性を有する第1の基板および第2の基板を用意し、第1の基板の表面上に、プラズマ重合法により、シロキサン(Si−O)結合を含むランダムな原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含む接合膜を形成する第1の工程と、
前記接合膜にエネルギーを付与し、前記接合膜の少なくとも表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離することにより、接着性を発現させる第2の工程と、
前記接合膜を介して前記第1の基板と前記第2の基板とを接合し、接合体を得る第3の工程と、
前記接合体に対して、前記第1の基板および前記第2の基板のうち、前記紫外線に対する透過性を有する基板側から紫外線を照射する第4の工程と、
前記紫外線を照射した接合体の温度を、製造後の前記接合体が使用される際の実体温度に維持しつつ、該接合体を加圧して、所定の形状に矯正する第5の工程とを有することを特徴とする。
これにより、2つの基板同士を強固に接合して、製造時と実使用時での温度が異なっていても、残留応力の発生を抑制し、実使用時に高い寸法精度を維持し得る接合体を製造することができる。
【0010】
本発明の接合方法では、前記接合膜を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10〜90原子%であることが好ましい。
これにより、接合膜は、Si原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、接合膜自体が強固なものとなる。また、かかる接合膜は、第1の基板および第2の基板に対して、特に高い接合強度を示すものとなる。
【0011】
本発明の接合方法では、前記接合膜中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3であることが好ましい。
これにより、接合膜の安定性が高くなり、第1の基板と第2の基板とをより強固に接合することができるようになる。
本発明の接合方法では、前記Si骨格の結晶化度は、45%以下であることが好ましい。
これにより、Si骨格は特にランダムな原子構造を含むものとなる。そして、寸法精度および接着性に優れた接合膜が得られる。
【0012】
本発明の接合方法では、前記接合膜は、Si−H結合を含んでいることが好ましい。
Si−H結合は、シロキサン結合の生成が規則的に行われるのを阻害すると考えられる。このため、シロキサン結合は、Si−H結合を避けるように形成されることとなり、Si骨格の規則性が低下する。このようにして、プラズマ重合法によれば、接合膜中にSi−H結合が含まれることにより、結晶化度の低いSi骨格を効率よく形成することができる。
【0013】
本発明の接合方法では、前記Si−H結合を含む接合膜についての赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピーク強度を1としたとき、Si−H結合に帰属するピーク強度が0.001〜0.2であることが好ましい。
これにより、接合膜中の原子構造は、相対的に最もランダムなものとなる。このため、接合膜は、接合強度、耐薬品性および寸法精度において特に優れたものとなる。
【0014】
本発明の接合方法では、前記脱離基は、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子が前記Si骨格に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものであることが好ましい。
これらの脱離基は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、エネルギーを付与することによって比較的簡単に、かつ均一に脱離する脱離基が得られることとなり、接合膜の接着性をより高度化することができる。
本発明の接合方法では、前記脱離基は、アルキル基であることが好ましい。
これにより、耐候性および耐薬品性に優れた接合膜が得られる。
【0015】
本発明の接合方法では、前記脱離基としてメチル基を含む接合膜についての赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピーク強度を1としたとき、メチル基に帰属するピーク強度が0.05〜0.45であることが好ましい。
これにより、メチル基の含有率が最適化され、メチル基がシロキサン結合の生成を必要以上に阻害するのを防止しつつ、接合膜中に必要かつ十分な数の活性手が生じるため、接合膜に十分な接着性が生じる。また、接合膜には、メチル基に起因する十分な耐候性および耐薬品性が発現する。
【0016】
本発明の接合方法では、前記接合膜は、その少なくとも表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離した後に、活性手を有することが好ましい。
これにより、接合膜は、第2の基板に対して、化学的結合に基づいて強固に接合可能なものとなる。
本発明の接合方法では、前記活性手は、未結合手または水酸基であることが好ましい。
これにより、第2の基板に対して、特に強固な接合が可能となる。
【0017】
本発明の接合方法では、前記接合膜は、ポリオルガノシロキサンを主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、接着性により優れた接合膜が得られる。また、この接合膜は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなり、例えば、薬品類等に長期にわたって曝されるような基板の接合に際して、有効に用いられるものとなる。
本発明の接合方法では、前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものであることが好ましい。
これにより、接着性に特に優れた接合膜が得られる。
【0018】
本発明の接合方法では、前記プラズマ重合法において、プラズマを発生させる際の高周波の出力密度は、0.01〜100W/cmであることが好ましい。
これにより、高周波の出力密度が高過ぎて原料ガスに必要以上のプラズマエネルギーが付加されるのを防止しつつ、ランダムな原子構造を有するSi骨格を確実に形成することができる。
【0019】
本発明の接合方法では、前記接合膜の平均厚さは、1〜1000nmであることが好ましい。
これにより、第1の基板と第2の基板とを接合した接合体の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、これらをより強固に接合することができる。
本発明の接合方法では、前記接合膜は、流動性を有しない固体状のものであることが好ましい。
これにより、接合体の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。また、従来に比べ、短時間で強固な接合が可能になる。
本発明の接合方法では、前記接合膜の屈折率は、1.35〜1.6であることが好ましい。
このような接合膜は、その屈折率が水晶や石英ガラスの屈折率に比較的近いため、例えば、接合膜を貫通するような構造の光学部品を製造する際に好適に用いられる。
【0020】
本発明の接合方法では、前記第1の基板および前記第2の基板のうち、前記紫外線に対する透過性を有する基板は、石英ガラスまたは水晶により構成されていることが好ましい。
これにより、接合界面における屈折率差が小さくなり、例えば光透過性の高い積層光学部品に適した接合体が得られる。また、基板と接合膜との熱膨張率差が小さくなるため、接合後の変形を抑制することができる。
【0021】
本発明の接合方法では、前記第4の工程において照射する紫外線の波長は、120〜200nmであることが好ましい。
このような波長の紫外線を用いることにより、接合膜中のSi−O結合をほとんど切断することなく、それより結合エネルギーの小さい化学結合を切断することができるので、接合膜に適度な柔軟性を付与することができる。
【0022】
本発明の接合方法では、前記第4の工程において照射する紫外線は、前記接合膜中のSi−O結合を切断することなく、Si−O結合以外の化学結合を切断し得るエネルギーを有するものであることが好ましい。
これにより、紫外線を照射された接合膜は、内部にSi−O結合以外の化学結合(例えばSi−C結合)を多く残したものとなり、紫外線を照射した際に、十分な柔軟性を発現して残留応力を効果的に低減し得るものとなる。
【0023】
本発明の接合方法では、前記第4の工程における紫外線の照射時間は、1秒〜10分間であることが好ましい。
これにより、接合膜の化学結合に柔軟性を付与するのに必要かつ十分なエネルギーが付与される。
本発明の接合方法では、前記第5の工程において、前記接合体を所定の形状に矯正した状態で保持する時間は、10秒以上であることが好ましい。
これにより、化学結合の再結合が完了して接合膜の化学結合の柔軟性が確実に低下し、残留応力の低減と接合体の形状の矯正を十分に行うことができる。
【0024】
本発明の接合方法では、製造後の前記接合体は、その実体温度が所定の温度幅で変動しつつ使用されるものであり、
前記第5の工程において前記紫外線を照射した接合体を維持する温度は、前記所定の温度幅の中心温度であることが好ましい。
これにより、得られた接合体は、実使用時の温度幅全体において発生する残留応力を平準化してピークの応力を最小限に抑え得るものとなる。すなわち、実使用時に温度の変動があった場合、温度幅の端部では熱膨張率差に伴う応力が発生するものの、その温度幅全体で見れば、最も寸法精度が高くなる接合体が得られる。
【0025】
本発明の接合方法では、前記第5の工程における前記接合体の加圧は、前記接合体を包含する押圧面を有する治具を用い、前記押圧面を前記接合体に押圧することにより行われ、
前記接合体は、前記治具の押圧面に沿って変形させることにより矯正されることが好ましい。
これにより、接合体を均一に押圧してその形状を正確に矯正することが可能である。
【0026】
本発明の接合方法では、前記治具は、その温度を可変し得る温度可変手段を有しており、
前記第5の工程において前記紫外線を照射した接合体は、前記治具を介してその温度が制御されることが好ましい。
これにより、接合体の温度制御と加圧とを効率よく正確に行うことができる。
【0027】
本発明の接合方法では、前記エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、前記接合膜に圧縮力を付与する方法、および前記接合膜をプラズマに曝す方法のうちの少なくとも1つの方法により行われることが好ましい。
これにより、接合膜に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができる。
本発明の接合方法では、前記エネルギーの付与は、大気雰囲気中で行われることが好ましい。
これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギーの付与をより簡単に行うことができる。
【0028】
本発明の接合方法では、前記第1の工程において、前記第2の基板の表面上に、前記接合膜と同様の接合膜を形成し、
前記第2の工程において、前記各接合膜にエネルギーを付与した後、前記第3の工程において、前記各接合膜同士が密着するようにして、前記第1の基板と前記第2の基板とを接合し、前記接合体を得ることが好ましい。
これにより、第1の基板と第2の基板とをより強固に接合することができる。
【0029】
本発明の接合体は、2つの基板を有し、これらが本発明の接合方法により接合されたものであり、
内部に残留応力を有していないことを特徴とする。
これにより、実使用時において寸法精度の高い接合体が得られる。
本発明の光学素子は、本発明の接合体を備えることを特徴とする。
これにより、実使用時において寸法精度が高く、光学性能の高い光学素子が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の接合方法、接合体および光学素子を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<接合方法>
本発明の接合方法は、2つの基板(第1の基板2および第2の基板4)を、接合膜3を介して接合する方法である。かかる方法によれば、実使用時において、2つの基板2、4を高い寸法精度で強固に接合することができる。また、接合膜3は、プラズマ重合法により形成されたものであり、シロキサン(Si−O)結合を含むランダムな原子構造を有するSi骨格と、このSi骨格に結合する脱離基とを含むものである。
【0031】
このような接合膜3は、エネルギーを付与することにより、接合膜3の少なくとも表面付近に存在する脱離基がSi骨格から脱離するものである。そして、この接合膜3は、脱離基の脱離によって、その表面のエネルギーを付与した領域に、他の被着体との接着性が発現するという特徴を有するものである。
このような特徴を有する接合膜3は、2つの基板2、4間を、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合可能なものである。そして、かかる接合膜3を用いることにより、2つの基板2、4間が強固に接合してなる信頼性の高い接合体5が得られる。
そして、このようにして得られた接合体5に対して、残留応力を低減させつつ形状を矯正する工程を行うことにより、実使用時において寸法精度の高い接合体5が得られる。
【0032】
≪第1実施形態≫
次に、本発明の接合方法の第1実施形態について説明する。
図1および図2は、本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図1および図2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0033】
本実施形態にかかる接合方法は、第1の基板2および紫外線に対して透過性を有する第2の基板4を用意し、第1の基板2の表面上に、プラズマ重合法により接合膜3を成膜する工程(第1の工程)と、接合膜3にエネルギーを付与する工程(第2の工程)と、接合膜3を介して第1の基板2と第2の基板4とを接合し、接合体5を得る工程(第3の工程)と、接合体5に対して、第2の基板4側から紫外線を照射する工程(第4の工程)と、接合体5の温度を、製造後の接合体5が使用される際の実体温度に維持しつつ、2つの定盤で接合体5を表裏から押圧した状態で保持することにより、接合体5の形状を平板状に矯正する工程(第5の工程)とを有する。以下、各工程について順次説明する。
【0034】
[1]まず、第1の基板2および第2の基板4を用意する。このような第1の基板2および第2の基板4は、少なくとも一方が紫外線に対して透過性を有する必要があるが、本実施形態では、第2の基板4が透過性を有するものとして説明する。
第1の基板2の構成材料は、それぞれ、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アラミド系樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等の樹脂系材料、Fe、Ni、Co、Cr、Mn、Zn、Pt、Au、Ag、Cu、Pd、Al、W、Ti、V、Mo、Nb、Zr、Pr、Nd、Smのような金属、またはこれらの金属を含む合金、炭素鋼、ステンレス鋼、酸化インジウムスズ(ITO)、ガリウムヒ素のような金属系材料、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコンのようなシリコン系材料、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛(アルカリ)ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス系材料、アルミナ、ジルコニア、フェライト、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンのようなセラミックス系材料、グラファイトのような炭素系材料、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。
【0035】
一方、第2の基板4の構成材料は、第1の基板2の構成材料のうち、紫外線に対して透過性を有するものの中から適宜選択すればよい。
なお、第1の基板2の構成材料と第2の基板4の構成材料とは、同じでも互いに異なっていてもよい。
また、第1の基板2は、その表面に、Niめっきのようなめっき処理、クロメート処理のような不働態化処理、または窒化処理等を施したものであってもよい。
【0036】
なお、第1の基板2および第2の基板4の平均厚さは、特に限定されないが、それぞれ0.01〜10mm程度であるのが好ましく、0.1〜3mm程度であるのがより好ましい。第1の基板2および第2の基板4の平均厚さをそれぞれ前記範囲内とすることにより、各基板2、4が撓み易くなり、互いの形状に沿って十分に変形可能なものとなるため、これらの密着性がより高くなる。このため、各基板2、4間の接合強度を高めることができる。
また、後述する工程において、第1の基板2と第2の基板4の接合体5の形状を矯正する際に、接合体5が撓み易いことから、その形状を容易かつ精密に矯正することが可能になる。
【0037】
次に、第1の基板2の表面上に接合膜3を形成する(第1の工程)。接合膜3は、第1の基板2と第2の基板4との間に位置し、これらの接合を担うものである。
かかる接合膜3は、図3、4に示すように、シロキサン(Si−O)結合302を含み、ランダムな原子構造を有するSi骨格301と、このSi骨格301に結合する脱離基303とを有するものである。
なお、接合膜3については、後に詳述する。
【0038】
また、第1の基板2の少なくとも接合膜3を形成すべき領域には、第1の基板2の構成材料に応じて、接合膜3を形成する前に、あらかじめ、第1の基板2と接合膜3との密着性を高める表面処理を施すのが好ましい。
かかる表面処理としては、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。このような処理を施すことにより、第1の基板2の接合膜3を形成すべき領域を清浄化するとともに、該領域を活性化させることができる。これにより、第1の基板2と接合膜3との接合強度を高めることができる。
【0039】
また、これらの各表面処理の中でもプラズマ処理を用いることにより、接合膜3を形成するために、第1の基板2の表面を特に最適化することができる。
なお、表面処理を施す第1の基板2が、樹脂材料(高分子材料)で構成されている場合には、特に、コロナ放電処理、窒素プラズマ処理等が好適に用いられる。
また、第1の基板2の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜3の接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる第1の基板2の構成材料としては、例えば、前述したような各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を主材料とするものが挙げられる。
【0040】
このような材料で構成された第1の基板2は、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、比較的活性の高い水酸基が結合している。したがって、このような材料で構成された第1の基板2を用いると、上記のような表面処理を施さなくても、第1の基板2と接合膜3との密着強度を高めることができる。
なお、この場合、第1の基板2の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも接合膜3を形成すべき領域の表面付近が上記のような材料で構成されていればよい。
【0041】
また、第2の基板4の場合、その構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、第1の基板2と第2の基板4との接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる第2の基板4の構成材料には、前述した第1の基板2の構成材料と同様のもの、すなわち、各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を用いることができる。
【0042】
さらに、第2の基板4の接合膜3に密着する領域に、以下の基や物質を有する場合には、上記のような表面処理を施さなくても、第1の基板2と第2の基板4との接合強度を十分に高くすることができる。
このような基や物質としては、例えば、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、イミダゾール基のような官能基、ラジカル、開環分子、2重結合、3重結合のような不飽和結合、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン、過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基または物質が挙げられる。
【0043】
また、このようなものを有する表面が得られるように、上述したような各種表面処理を適宜選択して行うのが好ましい。
また、表面処理に代えて、第1の基板2の少なくとも接合膜3を形成すべき領域および第2の基板4の接合膜3に密着する領域には、あらかじめ、中間層を形成しておくのが好ましい。
【0044】
この中間層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、接合膜3との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能等を有するものが好ましい。このような中間層を用いることにより、信頼性の高い接合体を得ることができる。
かかる中間層の構成材料としては、例えば、アルミニウム、チタンのような金属系材料、金属酸化物、シリコン酸化物のような酸化物系材料、金属窒化物、シリコン窒化物のような窒化物系材料、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボンのような炭素系材料、シランカップリング剤、チオール系化合物、金属アルコキシド、金属−ハロゲン化合物のような自己組織化膜材料、樹脂系接着剤、樹脂フィルム、樹脂コーティング材、各種ゴム材料、各種エラストマーのような樹脂系材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらの各材料で構成された中間層の中でも、酸化物系材料で構成された中間層によれば、接合体5の接合強度を特に高めることができる。
【0045】
[2]次に、接合膜3の表面35に対してエネルギーを付与する(第2の工程)。
エネルギーが付与されると、接合膜3では、脱離基303がSi骨格301から脱離する。そして、脱離基303が脱離した後には、接合膜3の表面35および内部に活性手が生じる。これにより、接合膜3の表面35に、第2の基板4との接着性が発現する。その結果、接合膜3は、化学的結合に基づいて第2の基板4と強固に接合可能なものとなる。
【0046】
ここで、接合膜3に付与するエネルギーは、いかなる方法で付与されてもよく、例えば、エネルギー線を照射する方法、接合膜3を加熱する方法、接合膜3に圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法、プラズマに曝す(プラズマエネルギーを付与する)方法、オゾンガスに曝す(化学的エネルギーを付与する)方法等が挙げられる。また、これらの方法のうち、任意の2以上の方法を適宜組み合わせてもよい。
また、接合膜3にエネルギーを付与する方法として、特に接合膜3にエネルギー線を照射する方法を用いるのが好ましい。これらの方法は、接合膜3に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギー付与方法として好適である。
【0047】
このうち、エネルギー線としては、例えば、紫外線、レーザー光のような光、X線、γ線、電子線、イオンビームのような粒子線等、またはこれらのエネルギー線を組み合わせたものが挙げられる。
これらのエネルギー線の中でも、特に、波長126〜300nm程度の紫外線を用いるのが好ましい。かかる紫外線によれば、付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜3中のSi骨格301が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、Si骨格301と脱離基303との間の結合を選択的に切断することができる。これにより、接合膜3の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜3に接着性を発現させることができる。
また、紫外線によれば、広い範囲をムラなく短時間に処理することができるので、脱離基303の脱離を効率よく行わせることができる。さらに、紫外線には、例えば、UVランプ等の簡単な設備で発生させることができるという利点もある。
なお、紫外線の波長は、より好ましくは、160〜200nm程度とされる。
【0048】
また、UVランプを用いる場合、その出力は、接合膜3の面積に応じて異なるが、1mW/cm〜1W/cm程度であるのが好ましく、5mW/cm〜50mW/cm程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプと接合膜3との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
【0049】
また、紫外線を照射する時間は、接合膜3の表面35付近の脱離基303を脱離し得る程度の時間、すなわち、接合膜3の内部の脱離基303を多量に脱離させない程度の時間とするのが好ましい。具体的には、紫外線の光量、接合膜3の構成材料等に応じて若干異なるものの、0.5〜30分程度であるのが好ましく、1〜10分程度であるのがより好ましい。
また、紫外線は、時間的に連続して照射されてもよいが、間欠的(パルス状)に照射されてもよい。
【0050】
一方、レーザー光としては、例えば、エキシマレーザー(フェムト秒レーザー)、Nd−YAGレーザー、Arレーザー、COレーザー、He−Neレーザー等が挙げられる。
また、接合膜3に対するエネルギー線の照射は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよく、具体的には、大気、酸素のような酸化性ガス雰囲気、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられるが、特に大気雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギー線の照射をより簡単に行うことができる。
このように、エネルギー線を照射する方法によれば、接合膜3に対して選択的にエネルギーを付与することが容易に行えるため、例えば、エネルギーの付与による第1の基板2の変質・劣化を防止することができる。
【0051】
また、エネルギー線を照射する方法によれば、付与するエネルギーの大きさを、精度よく簡単に調整することができる。このため、接合膜3から脱離する脱離基303の脱離量を調整することが可能となる。このように脱離基303の脱離量を調整することにより、第1の基板2と第2の基板4との間の接合強度を容易に制御することができる。
すなわち、脱離基303の脱離量を多くすることにより、接合膜3の表面35および内部に、より多くの活性手が生じるため、接合膜3に発現する接着性をより高めることができる。一方、脱離基303の脱離量を少なくすることにより、接合膜3の表面および内部に生じる活性手を少なくし、接合膜3に発現する接着性を抑えることができる。
さらに、エネルギー線を照射する方法によれば、短時間で大きなエネルギーを付与することができるので、エネルギーの付与をより効率よく行うことができる。
【0052】
なお、付与するエネルギーの大きさを調整するためには、例えば、エネルギー線の種類、エネルギー線の出力、エネルギー線の照射時間等の条件を調整すればよい。具体的には、後述する工程では、接合体5に対して紫外線を照射するが、本工程で接合膜3に対して照射するエネルギー線は、接合膜3が破壊されないように、エネルギー線の照射条件を調整する。例えば、本工程で紫外線を照射する場合には、その照射時間を、後述する接合体5に対して照射する際の照射時間より短くするのが好ましい。また、後述する工程よりも、長波長または低出力の紫外線を用いるようにしてもよい。
【0053】
また、接合膜3にエネルギーを付与する方法として、プラズマに曝す方法も好ましく用いられる(図2(b)参照)。この方法によれば、接合膜3の表面に対して選択的にエネルギーを付与することができるため、接合膜3の表面に活性手を生成することができる。さらに、接合膜3の内部はプラズマと接しないので、エネルギー付与前の状態が維持される。この状態は、脱離基303を多く含んでおり、かつエネルギーを付与したときの化学結合の切断・再結合を容易に行い得る状態なので、後述する工程において、形状の矯正を確実に行い得る接合体5を得ることができる。換言すれば、このような接合膜3は、後述する工程において切断・再結合する余地のある化学結合を多く含んだものになるため、形状を著しく矯正することも可能になる。
【0054】
一方、エネルギー線により接合膜3に対して必要以上のエネルギーが付与されると、接合膜3の内部から脱離基303がほとんど脱離してしまい、後述する工程において切断・再結合可能な結合が著しく減少するおそれがある。このような状態になると、接合膜3の化学結合の柔軟性が失われるおそれがある。したがって、プラズマを曝す方法によるエネルギーの付与は、本発明において特に有用である。
【0055】
接合膜3をプラズマに曝す(プラズマ処理)方法としては、大気圧プラズマを用いる方法が好ましい。大気圧プラズマによれば、減圧手段等の高価な設備を用いることなく、容易にプラズマ処理を行うことができる。また、このプラズマ処理には、接合膜3の近傍でプラズマを発生させるダイレクトプラズマ方式の他、被処理物とプラズマ発生部とが離間したリモートプラズマ方式またはダウンフロープラズマ方式による処理も好ましく用いられる。ダイレクトプラズマ方式によれば、接合膜3の近傍でプラズマを発生させるため、プラズマ処理を効率よくかつ均一に行うことができる。また、被処理物とプラズマ発生部とが離間している場合、被処理物とプラズマ発生部とが干渉しないため、被処理物をイオン損傷から避けることができる。
【0056】
なお、プラズマを発生させるガスとしては、Ar、He、H、N、O等が挙げられ、これらの2種以上を混合して用いることもできる。このうち、接合膜3の酸化等を考慮した場合には、Ar等の不活性ガスが好ましく用いられる。
また、プラズマ処理は、図5に示すプラズマ重合装置100を用いて行うこともできる。すなわち、図5に示すプラズマ重合装置100を用いて接合膜3を形成した後、これを装置から取り出すことなく、続けて本工程のプラズマ処理を施すことができるので、本発明の接合方法の簡略化を図ることができる。
【0057】
ここで、エネルギーが付与される前の接合膜3は、図3に示すように、Si骨格301と脱離基303とを有している。かかる接合膜3にエネルギーが付与されると、脱離基303(本実施形態では、メチル基)がSi骨格301から脱離する。これにより、図4に示すように、接合膜3の表面35に活性手304が生じ、活性化される。その結果、接合膜3の表面に接着性が発現する。
【0058】
ところで、接合膜3を「活性化させる」とは、接合膜3の表面35および内部の脱離基303が脱離して、Si骨格301において終端化されていない結合手(以下、「未結合手」または「ダングリングボンド」とも言う。)が生じた状態や、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、または、これらの状態が混在した状態のことを言う。
【0059】
したがって、活性手304とは、未結合手(ダングリングボンド)、または未結合手が水酸基によって終端化されたもののことを言う。このような活性手304によれば、第2の基板4に対して、特に強固な接合が可能となる。
なお、後者の状態(未結合手が水酸基によって終端化された状態)は、例えば、接合膜3に対して大気雰囲気中でエネルギー線を照射することにより、大気中の水分が未結合手を終端化することによって、容易に生成することができる。
【0060】
また、本実施形態では、第1の基板2と第2の基板4とを貼り合わせる前に、あらかじめ接合膜3に対してエネルギーを付与する場合について説明しているが、かかるエネルギーの付与は、第1の基板2と第2の基板4とを貼り合わせる(重ね合わせる)際、または貼り合わせた(重ね合わせた)後に行われるようにしてもよい。このような場合については、後述する第2実施形態において説明する。
【0061】
[3]次に、図1(c)に示すように、活性化させた接合膜3と第2の基板4とが密着するように、第1の基板2と第2の基板4とを貼り合わせる。これにより、図2(d)に示すような接合体5を得る(第3の工程)。
このようにして得られた接合体5では、従来の接合方法で用いられていた接着剤のように、主にアンカー効果のような物理的結合に基づく接着ではなく、共有結合のような短時間で生じる強固な化学的結合に基づいて接合されている。このため、接合体5は短時間で形成することができ、かつ極めて剥離し難く、接合ムラ等も生じ難いものとなる。
【0062】
また、このような方法によれば、従来の固体接合のように、高温(例えば、700℃以上)での熱処理を必要としないことから、耐熱性の低い材料で構成された第1の基板2および第2の基板4をも、接合に供することができる。
また、接合膜3を介して第1の基板2と第2の基板4とを接合しているため、第1の基板2や第2の基板4の構成材料に制約がないという利点もある。
以上のことから、本発明によれば、第1の基板2および第2の基板4の各構成材料の選択の幅をそれぞれ広げることができる。
【0063】
また、固体接合では、接合層を介していないため、第1の基板2と第2の基板4との間の熱膨張率に大きな差がある場合、その差に基づく応力が接合界面に集中し易く、剥離等が生じるおそれがあったが、接合体(本発明の接合体)5では、接合膜3によって応力の集中が緩和され、剥離を防止することができる。
また、本実施形態では、接合に供される第1の基板2および第2の基板4のうち、一方のみ(本実施形態では、第1の基板2)に接合膜3が設けられている。第1の基板2上に接合膜3を形成する際に、接合膜3の形成方法によっては第1の基板2が比較的長時間にわたってプラズマに曝されることになるが、本実施形態では第2の基板4はプラズマに曝されることはない。したがって、例えば、第2の基板4のプラズマに対する耐久性が著しく低い場合であっても、本実施形態にかかる方法によれば、第1の基板2と第2の基板4とを強固に接合することができる。したがって、第2の基板4を構成する材料は、プラズマに対する耐久性をあまり考慮することなく、幅広い材料から選択することが可能になるという利点もある。
【0064】
ここで、本工程において、第1の基板2と第2の基板4とが接合されるメカニズムについて説明する。
例えば、第2の基板4の接合面に水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、接合膜3の表面35と第2の基板4の接合面とが接触するように、これらを貼り合わせたとき、接合膜3の表面35に存在する水酸基と、第2の基板4の接合面に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、第1の基板2と第2の基板4とが接合されると推察される。
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合する。その結果、第1の基板2と第2の基板4との接触界面では、水酸基が結合していた結合手同士が酸素原子を介して結合する。これにより、第1の基板2と第2の基板4とがより強固に接合されると推察される。
【0065】
なお、前記工程[2]で活性化された接合膜3の表面は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、前記工程[2]の終了後、できるだけ早く本工程[3]を行うようにするのが好ましい。具体的には、前記工程[2]の終了後、60分以内に本工程[3]を行うようにするのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。かかる時間内であれば、接合膜3の表面が十分な活性状態を維持しているので、本工程で第1の基板2と第2の基板4とを貼り合わせたとき、これらの間に十分な接合強度を得ることができる。
【0066】
換言すれば、活性化させる前の接合膜3は、Si骨格301を有する接合膜であるため、化学的に比較的安定であり、耐候性に優れている。このため、活性化させる前の接合膜3は、長期にわたる保存に適したものとなる。したがって、そのような接合膜3を備えた第1の基板2を多量に製造または購入して保存しておき、本工程の貼り合わせを行う直前に、必要な個数のみに前記工程[2]に記載したエネルギーの付与を行うようにすれば、接合体5の製造効率の観点から有効である。
【0067】
以上のようにして、図2(d)に示す接合体(本発明の接合体)5を得ることができる。
なお、図2(d)では、接合膜3の全面を覆うように第2の基板4を重ね合わせているが、これらの相対的な位置は互いにずれていてもよい。すなわち、接合膜3から対向基板4がはみ出るようにしてもよい。
このようにして得られた接合体5は、第1の基板2と第2の基板4との間の接合強度が5MPa(50kgf/cm)以上であるのが好ましく、10MPa(100kgf/cm)以上であるのがより好ましい。このような接合強度を有する接合体5は、その剥離を十分に防止し得るものとなる。
【0068】
なお、従来のシリコン直接接合のような固体接合では、接合に供される表面を活性化させても、その活性状態は、大気中で数秒〜数十秒程度の極めて短時間しか維持することができなかった。このため、表面の活性化を行った後、接合する2つの基板を貼り合わせる等の作業に要する時間を、十分に確保することができないという問題があった。
これに対し、本発明によれば、Si骨格301を有する接合膜3を用いて接合を行っているため、数分以上の比較的長時間にわたって活性状態を維持することができる。したがって、貼り合わせ作業に要する時間を十分に確保することができ、接合作業の効率化を高めることができる。
【0069】
ところで、このようにして作製された接合体5には、図2(d)に示すような反りや歪み等の変形が発生することが多い。この原因としては、第1の基板2と第2の基板4の間の熱膨張率差や、各基板2、4と接合膜3との熱膨張率差等に起因する内部応力(残留応力)が挙げられる。特に、水晶のように結晶軸の方向によって熱膨張率が異なる材料では、この残留応力に伴う変形が生じ易い。
【0070】
さらには、物質の熱膨張による寸法変化は、物質の温度に応じて変化するため、接合体5の残留応力は、温度に応じて変化することとなる。したがって、接合体5を製造する際の温度と、接合体5を実際に使用する際の温度が異なっている場合、この温度差に伴う寸法変化が接合体5中に残留応力を発生させ、その結果、接合体5の変形を招くおそれがあった。
【0071】
こうした接合体5の変形は、接合体5の利用に際して以前から問題となっていた。例えば、本発明の接合方法により光学部品同士を接合してなる光学素子では、その変形に伴って波面収差等の各種収差が生じる。その結果、光学部品の光学性能の低下を招いていた。
そこで、本発明では、接合体5を得た後、実際の使用時における接合体5中の残留応力を低減するべく、以下の[4]および[5]の工程を経ることとした。以下、この工程について説明する。
【0072】
[4]図2(e)に示すように、接合体5の第2の基板4側から紫外線を照射する(第4の工程)。
この紫外線の照射により、接合膜3中の化学結合の一部が切断され、接合膜3の化学結合の柔軟性が向上する。
なお、例えば原料ガスとしてシラン系ガスを用いて成膜された接合膜3中には、Si−O結合、Si−C結合等の化学結合が含まれているが、このうち、Si−O結合は切断されず、Si−O結合よりも結合エネルギーの小さい化学結合(例えば、Si−C結合)が切断されるようなエネルギーの紫外線が照射される。このような紫外線を用いることにより、接合膜3中のSi骨格301が完全に破壊されるのを防止しつつ、接合膜3中の化学結合の一部のみを切断し、接合膜3の化学結合に適度な柔軟性を付与することができる。その結果、接合体5は、後述する工程を経ることにより、残留応力を確実に低減し得るものとなる。
ここで、紫外線は、接合膜3を透過するため、接合膜3の表面はもちろん、内部の化学結合も切断する。
【0073】
ところで、前記工程[2]で接合膜3にエネルギーを付与する際、接合膜3をプラズマに曝す方法を用いることにより、接合膜3の表面近傍の化学結合を切断する一方、接合膜3の内部の化学結合を必要以上に切断することがない。このため、接合膜3は、内部にSi−O結合以外の化学結合(例えばSi−C結合)を多く残したものとなり、本工程において紫外線を照射した際に、十分な柔軟性を発現して残留応力を効果的に低減し得るものとなる。
【0074】
本工程に用いる紫外線には、その波長が120〜200nm程度のものが好ましく用いられ、150〜200nm程度のものがより好ましく用いられる。このような波長の紫外線は、Si−O結合をほとんど切断することなく、それより結合エネルギーの小さい化学結合を選択的に切断することができるので、接合膜3の化学結合に適度な柔軟性を付与することが可能である。
【0075】
また、紫外線の照射時間は、好ましくは1秒〜10分間程度、より好ましくは10秒〜5分間程度とされる。この程度の照射時間であれば、接合膜3の化学結合に柔軟性を付与するのに必要かつ十分なエネルギーが付与される。
また、紫外線を照射する際の雰囲気は、特に限定されないが、好ましくは窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気とされ、より好ましくは水蒸気含有率の少ない乾燥した不活性ガス雰囲気とされる。このような雰囲気であれば、接合膜3の酸化による変質・劣化が防止され、接合膜3中の切断された化学結合に水酸基等が結合するのを防止することができる。
なお、本実施形態では、第2の基板4のみが紫外線に対して透過性を有するものであるが、第1の基板2も紫外線に対して透過性を有するものである場合には、接合体5の両面側から紫外線を照射するようにしてもよい。この場合、各面に照射する紫外線の照射条件(波長、照射時間等)は、同一でもよく、異なっていてもよい。
【0076】
[5]次に、接合体5の温度を、製造後の接合体5が実際に使用される際の実体温度(接合体5そのものの温度)に制御する。
次いで、図2(f)に示すように荷重を加える(加圧する)ことにより、接合体5を所定の形状に矯正する。そして、この状態(形状矯正状態)で一定時間保持する(第5の工程)。これにより、接合膜3では、前記工程で一旦切断された化学結合が、形状矯正状態で保持されている間に再結合する。その結果、接合膜3は、形状矯正状態下でその化学結合の柔軟性が低下し、硬化することとなる。また、この接合膜3の化学結合が柔軟性を有することに伴い、接合体5中の残留応力が放出されて緩和される。これにより、本工程を経た接合体5は、残留応力の低減に伴って、目的とする形状に矯正される。その結果、接合体5の寸法精度の向上を図ることができる。
【0077】
また、接合体5の形状を矯正する際には、接合体5の温度を、製造後の接合体5が使用される際の実体温度に維持しつつ形状を矯正することにより、実使用時における接合体5の残留応力が低減されることとなる。具体的には、例えば実使用時の接合体5の温度が常温よりも50℃高い温度である場合には、接合体5の温度を常温より50℃高い温度に維持しつつ形状を矯正する。このようにして形状が矯正された接合体5は、その温度が常温に戻った際には、熱膨張率差に伴う残留応力が再び発生し、残留応力を含むものとなってしまい、残留応力の大きさによっては、接合体5には変形が生じる。
【0078】
しかしながら、常温では残留応力を含んでいて本来の寸法精度ではないものの、この接合体5を実際に使用する場合、すなわち接合体5の温度を常温より50℃高い温度にした場合には、接合体5中の残留応力が放出された状態になる。このため、接合体5は矯正後の形状に戻り、寸法精度が向上する。すなわち、実使用時には、設計通りの寸法精度の接合体5が得られる。
【0079】
なお、接合体5を加圧する場合、接合体5が目的の形状に矯正されるよう、適当な治具等を用いて接合体5の厚さ方向に荷重を加えるようにすればよい。例えば、図2(d)に示すような反りが生じた接合体5を、各基板1、2の本来の形状である平板状に矯正する場合には、図2(f)に示すように、平滑面を有する2つの定盤(治具)7で接合体5を挟み込む。そして、2つの定盤7で接合体5を圧縮するように加圧すれば、各定盤7表面の高い平面度が接合体5の形状に反映されて、最終的に平面度(平行度)の高い接合体5を得ることができる。用いる定盤7は、それぞれ接合体5を包含する押圧面を有するものを用いることにより、接合体5を均一に押圧してその形状を正確に矯正することが可能である。
また、必要に応じて、所定の曲率の曲面を有する治具を用いることにより、湾曲した接合体5を得ることも可能である。
【0080】
接合体5を形状矯正状態で保持する時間は、特に限定されないが、好ましくは10秒以上とされ、より好ましくは30秒以上とされる。このような保持時間であれば、化学結合の再結合が確実になされて接合膜3の化学結合の柔軟性が低下し、残留応力の低減と接合体5の形状の矯正を十分に行うことができる。
また、接合体5の実使用時の実体温度が所定の温度幅で変動する場合は、接合体5の形状矯正状態における温度を、実使用時の温度幅の中心温度に合わせるようにするのが好ましい。このようにすれば、得られた接合体5は、実使用時の温度幅全体において発生する残留応力を平準化してピークの応力を最小限に抑え得るものとなる。すなわち、実使用時に温度の変動があった場合、温度幅の端部では熱膨張率差に伴う応力が発生するものの、その温度幅全体で見れば、最も寸法精度が高くなる接合体5が得られる。
【0081】
さらに、前記温度幅のうち、接合体5の実使用時の実体温度が位置する温度に偏りがある場合、すなわち接合体5の実体温度が所定の温度幅全体にわたって常時変動するのではなく、温度幅のうち、特定の温度に位置する時間的割合が高い場合には、この割合に応じて、接合体5の形状矯正状態における温度を適宜設定すればよい。
具体的には、接合体5の実使用時の実体温度が、前記温度幅の中心温度より高温側に位置する時間的割合が高い場合には、形状矯正状態における温度を中心温度よりも高温側に設定するのが好ましい。これにより、温度幅全体で見たときの接合体5の変形を最小限に抑えることができる。
【0082】
接合体5の加熱温度は、接合体5の実使用温度に応じて決めればよいが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。このような温度範囲であれば、接合体5が熱によって変質・劣化するのを防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
【0083】
また、接合体5の温度制御は、いかなる方法で行うようにしてもよいが、上述したような定盤7(治具)を用いて接合体5の矯正を行う場合には、定盤7に内蔵したヒータ8(図2(f)参照。)のような加熱手段またはペルチェ素子や熱交換器のような冷却手段等の温度可変手段を備える定盤7を用いることにより、接合体5の温度制御と加圧とを効率よく正確に行うことができる。
また、接合体5を加圧する際の圧力は、0.2〜10MPa程度であるのが好ましく、1〜5MPa程度であるのがより好ましい。
【0084】
さらに、接合体5を加圧する際の雰囲気は、特に限定されないが、好ましくは窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気とされ、より好ましくは水蒸気含有率の少ない乾燥した不活性ガス雰囲気または減圧雰囲気とされる。このような雰囲気であれば、接合膜3の酸化による変質・劣化が防止され、接合膜3中の切断された化学結合に水酸基等が結合するのを防止することができる。
なお、本工程は、前記工程[4]の終了後、できるだけ時間間隔を置かずに行うのが好ましい。具体的には、10分以内に行うのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。これにより、前述した作用・効果がより顕著に発揮される。
以上のようにして、実使用時において、寸法精度が高く、かつ残留応力のない接合体5(本発明の接合体)が得られる。
【0085】
ここで、接合膜3について詳述する。
前述したように接合膜3は、プラズマ重合法により形成されたものであり、図3に示すように、シロキサン(Si−O)結合302を含み、ランダムな原子構造を有するSi骨格301と、このSi骨格301に結合する脱離基303とを有するものである。このような接合膜3は、シロキサン結合302を含みランダムな原子構造を有するSi骨格301の影響によって、変形し難い強固な膜となる。これは、Si骨格301の結晶性が低くなるため、結晶粒界における転位やズレ等の欠陥が生じ難いためであると考えられる。このため、接合膜3自体が接合強度、耐薬品性および寸法精度の高いものとなり、最終的に得られる接合体5においても、接合強度、耐薬品性および寸法精度が高いものが得られる。
【0086】
このような接合膜3は、エネルギーが付与されると、脱離基303がSi骨格301から脱離し、図4に示すように、接合膜3の表面35および内部に、活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜3表面に接着性が発現する。かかる接着性が発現すると、接合膜3は、第2の基板4に対して高い寸法精度で強固に効率よく接合可能なものとなる。
なお、脱離基303とSi骨格301との結合エネルギーは、Si骨格301中のシロキサン結合302の結合エネルギーよりも小さい。このため、接合膜3は、エネルギーの付与により、Si骨格301が破壊されるのを防止しつつ、脱離基303とSi骨格301との結合を選択的に切断し、脱離基303を脱離させることができる。
【0087】
また、接合膜3中のSi骨格301がランダムな原子構造を有しているため、紫外線を照射して接合膜3の化学結合が柔軟化した後、その形状が矯正された場合、新たな応力の発生を招くことなく矯正することができる。これは、プラズマ重合法により成膜された接合膜3は、結晶性の高い膜に比べて原子配置の自由度が高いため、いかなる形状に矯正されたとしても、化学結合の再結合が無理なく行われるためであると推察される。
【0088】
また、このような接合膜3は、流動性を有しない固体状のものとなる。このため、従来、流動性を有する液状または粘液状の接着剤に比べて、接着層(接合膜3)の厚さや形状がほとんど変化しない。これにより、接合体5の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
【0089】
なお、接合膜3においては、特に接合膜3を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10〜90原子%程度であるのが好ましく、20〜80原子%程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子とが、前記範囲の含有率で含まれていれば、接合膜3はSi原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、接合膜3自体が強固なものとなる。また、かかる接合膜3は、第1の基板2および第2の基板4に対して、特に高い接合強度を示すものとなる。
また、接合膜3中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜3の安定性が高くなり、第1の基板2と第2の基板4とをより強固に接合することができるようになる。
【0090】
また、接合膜3中のSi骨格301の結晶化度は、45%以下であるのが好ましく、40%以下であるのがより好ましい。これにより、Si骨格301は十分にランダムな原子構造を含むものとなる。このため、前述したSi骨格301の特性が顕在化し、接合膜3の寸法精度および接着性がより優れたものとなる。
なお、Si骨格301の結晶化度は、一般的な結晶化度測定方法により測定することができ、具体的には、結晶部分における散乱X線の強度に基づいて測定する方法(X線法)、赤外線吸収の結晶化バンドの強度から求める方法(赤外線法)、核磁気共鳴吸収の微分曲線の下の面積に基づいて求める方法(核磁気共鳴吸収法)、結晶部分には化学試薬が浸透し難いことを利用した化学的方法等により測定することができる。
【0091】
また、接合膜3は、その構造中にSi−H結合を含んでいるのが好ましい。このSi−H結合は、プラズマ重合法によってシランが重合反応する際に重合物中に生じるものであるが、このとき、Si−H結合がシロキサン結合の生成が規則的に行われるのを阻害すると考えられる。このため、シロキサン結合は、Si−H結合を避けるように形成されることとなり、Si骨格301の原子構造の規則性が低下する。このようにして、プラズマ重合法によれば、結晶化度の低いSi骨格301を効率よく形成することができる。
【0092】
一方、接合膜3中のSi−H結合の含有率が多ければ多いほど結晶化度が低くなるわけではない。具体的には、接合膜3の赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピークの強度を1としたとき、Si−H結合に帰属するピークの強度は、0.001〜0.2程度であるのが好ましく、0.002〜0.05程度であるのがより好ましく、0.005〜0.02程度であるのがさらに好ましい。Si−H結合のシロキサン結合に対する割合が前記範囲内であることにより、接合膜3中の原子構造は、相対的に最もランダムなものとなる。このため、Si−H結合のピーク強度がシロキサン結合のピーク強度に対して前記範囲内にある場合、接合膜3は、接合強度、耐薬品性および寸法精度において特に優れたものとなる。
【0093】
また、Si骨格301に結合する脱離基303は、前述したように、Si骨格301から脱離することによって、接合膜3に活性手を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないようSi骨格301に確実に結合しているものである必要がある。
なお、プラズマ重合法による成膜の際には、原料ガスの成分が重合して、シロキサン結合を含むSi骨格301と、それに結合した残基とを生成するが、例えばこの残基が脱離基303となり得る。
【0094】
かかる観点から、脱離基303には、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子を含み、これらの各原子がSi骨格301に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものが好ましく用いられる。かかる脱離基303は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、接合膜3の接着性をより高度なものとすることができる。
【0095】
なお、上記のような各原子がSi骨格301に結合するよう配置された原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、ビニル基、アリル基のようなアルケニル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、ハロゲン化アルキル基、メルカプト基、スルホン酸基、シアノ基、イソシアネート基等が挙げられる。
これらの各基の中でも、脱離基303は、特にアルキル基であるのが好ましい。アルキル基は化学的な安定性が高いため、アルキル基を含む接合膜3は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
【0096】
ここで、脱離基303がメチル基(−CH)である場合、その好ましい含有率は、赤外光吸収スペクトルにおけるピーク強度から以下のように規定される。
すなわち、接合膜3の赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピークの強度を1としたとき、メチル基に帰属するピークの強度は、0.05〜0.45程度であるのが好ましく、0.1〜0.4程度であるのがより好ましく、0.2〜0.3程度であるのがさらに好ましい。メチル基のピーク強度がシロキサン結合のピーク強度に対する割合が前記範囲内であることにより、メチル基がシロキサン結合の生成を必要以上に阻害するのを防止しつつ、接合膜3中に必要かつ十分な数の活性手が生じるため、接合膜3に十分な接着性が生じる。また、接合膜3には、メチル基に起因する十分な耐候性および耐薬品性が発現する。
【0097】
このような特徴を有する接合膜3の構成材料としては、例えば、ポリオルガノシロキサンのようなシロキサン結合とそれに結合した脱離基303となり得る有機基とを含む重合物等が挙げられる。
ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜3は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜3は、第1の基板2に対して特に強固に被着するとともに、第2の基板4に対しても特に強い被着力を示し、その結果として、第1の基板2と第2の基板4とを強固に接合することができる。
また、ポリオルガノシロキサンは、通常、撥水性(非接着性)を示すが、エネルギーを付与されることにより、容易に有機基を脱離させることができ、親水性に変化し、接着性を発現するが、この非接着性と接着性との制御を容易かつ確実に行えるという利点を有する。
【0098】
なお、この撥水性(非接着性)は、主に、ポリオルガノシロキサン中に含まれたアルキル基による作用である。したがって、ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜3は、エネルギーを付与されることにより、表面35に接着性が発現するとともに、表面35以外の部分においては、前述したアルキル基による作用・効果が得られるという利点も有する。したがって、このような接合膜3は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなり、例えば、薬品類等に長期にわたって曝されるような光学素子や液滴吐出ヘッドの組み立てに際して、有効に用いられるものとなる。
【0099】
また、ポリオルガノシロキサンの中でも、特に、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものが好ましい。オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とする接合膜3は、接着性に特に優れるものである。また、オクタメチルトリシロキサンを主成分とする原料は、常温で液状をなし、適度な粘度を有するため、取り扱いが容易であるという利点もある。
【0100】
このような接合膜3の平均厚さは、1〜1000nm程度であるのが好ましく、2〜800nm程度であるのがより好ましい。接合膜3の平均厚さを前記範囲内とすることにより、接合体5の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、これらをより強固に接合することができる。
すなわち、接合膜3の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜3の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、接合体5の寸法精度が低下するおそれがある。
【0101】
さらに、接合膜3の平均厚さが前記範囲内であれば、接合膜3にある程度の形状追従性が確保される。このため、例えば、第1の基板2の接合面(接合膜3に隣接する面)に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するように接合膜3を被着させることができる。その結果、接合膜3は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。そして、第1の基板2と第2の基板4とを貼り合わせた際に、両者の密着性を高めることができる。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜3の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜3の厚さをできるだけ厚くすればよい。
【0102】
以上、接合膜3について詳述したが、このような接合膜3は、プラズマ重合法により作製されたものである。プラズマ重合法によれば、緻密で均質な接合膜3を効率よく作製することができる。これにより、接合膜3は、第2の基板4に対して特に強固に接合し得るものとなる。さらに、プラズマ重合法で作製された接合膜3は、エネルギーが付与されて活性化された状態が比較的長時間にわたって維持される。このため、接合体5の製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
【0103】
以下、接合膜3を作製する方法について説明する。
まず、接合膜3の作製方法を説明するのに先立って、第1の基板2上にプラズマ重合法を行いて接合膜3を作製する際に用いるプラズマ重合装置について説明する。
図5は、本発明の接合方法に用いられるプラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図5中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0104】
図5に示すプラズマ重合装置100は、チャンバー101と、第1の基板2を支持する第1の電極130と、第2の電極140と、各電極130、140間に高周波電圧を印加する電源回路180と、チャンバー101内にガスを供給するガス供給部190と、チャンバー101内のガスを排気する排気ポンプ170とを備えている。これらの各部のうち、第1の電極130および第2の電極140がチャンバー101内に設けられている。以下、各部について詳細に説明する。
チャンバー101は、内部の気密を保持し得る容器であり、内部を減圧(真空)状態にして使用されるため、内部と外部との圧力差に耐え得る耐圧性能を有するものとされる。
【0105】
図5に示すチャンバー101は、軸線が水平方向に沿って配置されたほぼ円筒形をなすチャンバー本体と、チャンバー本体の左側開口部を封止する円形の側壁と、右側開口部を封止する円形の側壁とで構成されている。
チャンバー101の上方には供給口103が、下方には排気口104が、それぞれ設けられている。そして、供給口103にはガス供給部190が接続され、排気口104には排気ポンプ170が接続されている。
なお、本実施形態では、チャンバー101は、導電性の高い金属材料で構成されており、接地線102を介して電気的に接地されている。
【0106】
第1の電極130は板状をなしており、第1の基板2を支持している。
この第1の電極130は、チャンバー101の側壁の内壁面に、鉛直方向に沿って設けられており、これにより、第1の電極130は、チャンバー101を介して電気的に接地されている。なお、第1の電極130は、図5に示すように、チャンバー本体と同心状に設けられている。
【0107】
第1の電極130の第1の基板2を支持する面には、静電チャック(吸着機構)139が設けられている。
この静電チャック139により、図5に示すように、第1の基板2を鉛直方向に沿って支持することができる。また、第1の基板2に多少の反りがあっても、静電チャック139に吸着させることにより、その反りを矯正した状態で第1の基板2をプラズマ処理に供することができる。
【0108】
第2の電極140は、第1の基板2を介して、第1の電極130と対向して設けられている。なお、第2の電極140は、チャンバー101の側壁の内壁面から離間した(絶縁された)状態で設けられている。
この第2の電極140には、配線184を介して高周波電源182が接続されている。また、配線184の途中には、マッチングボックス(整合器)183が設けられている。これらの配線184、高周波電源182およびマッチングボックス183により、電源回路180が構成されている。
このような電源回路180によれば、第1の電極130は接地されているので、第1の電極130と第2の電極140との間に高周波電圧が印加される。これにより、第1の電極130と第2の電極140との間隙には、高い周波数で向きが反転する電界が誘起される。
【0109】
ガス供給部190は、チャンバー101内に所定のガスを供給するものである。
図5に示すガス供給部190は、液状の膜材料(原料液)を貯留する貯液部191と、液状の膜材料を気化してガス状に変化させる気化装置192と、キャリアガスを貯留するガスボンベ193とを有している。また、これらの各部とチャンバー101の供給口103とが、それぞれ配管194で接続されており、ガス状の膜材料(原料ガス)とキャリアガスとの混合ガスを、供給口103からチャンバー101内に供給するように構成されている。
【0110】
貯液部191に貯留される液状の膜材料は、プラズマ重合装置100により、重合して第1の基板2の表面に重合膜を形成する原材料となるものである。
このような液状の膜材料は、気化装置192により気化され、ガス状の膜材料(原料ガス)となってチャンバー101内に供給される。なお、原料ガスについては、後に詳述する。
【0111】
ガスボンベ193に貯留されるキャリアガスは、電界の作用により放電し、およびこの放電を維持するために導入するガスである。このようなキャリアガスとしては、例えば、Arガス、Heガス等が挙げられる。
また、チャンバー101内の供給口103の近傍には、拡散板195が設けられている。
拡散板195は、チャンバー101内に供給される混合ガスの拡散を促進する機能を有する。これにより、混合ガスは、チャンバー101内に、ほぼ均一の濃度で分散することができる。
【0112】
排気ポンプ170は、チャンバー101内を排気するものであり、例えば、油回転ポンプ、ターボ分子ポンプ等で構成される。このようにチャンバー101内を排気して減圧することにより、ガスを容易にプラズマ化することができる。また、大気雰囲気との接触による第1の基板2の汚染・酸化等を防止するとともに、プラズマ処理による反応生成物をチャンバー101内から効果的に除去することができる。
また、排気口104には、チャンバー101内の圧力を調整する圧力制御機構171が設けられている。これにより、チャンバー101内の圧力が、ガス供給部190の動作状況に応じて、適宜設定される。
【0113】
次に、上記のプラズマ重合装置100を用いて、第1の基板2上に接合膜3を作製する方法について説明する。
図6は、第1の基板2上に接合膜3を作製する方法を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図6中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
接合膜3は、強電界中に、原料ガスとキャリアガスとの混合ガスを供給することにより、原料ガス中の分子を重合させ、重合物を第1の基板2上に堆積させることにより得ることができる。以下、詳細に説明する。
まず、第1の基板2を用意し、必要に応じて、第1の基板2の上面25に前述したような表面処理を施す。
【0114】
次に、第1の基板2をプラズマ重合装置100のチャンバー101内に収納して封止状態とした後、排気ポンプ170の作動により、チャンバー101内を減圧状態とする。
次に、ガス供給部190を作動させ、チャンバー101内に原料ガスとキャリアガスの混合ガスを供給する。供給された混合ガスは、チャンバー101内に充填される(図6(a)参照)。
【0115】
ここで、混合ガス中における原料ガスの占める割合(混合比)は、原料ガスやキャリアガスの種類や目的とする成膜速度等によって若干異なるが、例えば、混合ガス中の原料ガスの割合を20〜70%程度に設定するのが好ましく、30〜60%程度に設定するのがより好ましい。これにより、重合膜の形成(成膜)の条件の最適化を図ることができる。
また、供給するガスの流量は、ガスの種類や目的とする成膜速度、膜厚等によって適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、原料ガスおよびキャリアガスの流量を、それぞれ、1〜100ccm程度に設定するのが好ましく、10〜60ccm程度に設定するのがより好ましい。
【0116】
次いで、電源回路180を作動させ、一対の電極130、140間に高周波電圧を印加する。これにより、一対の電極130、140間に存在するガスの分子が電離し、プラズマが発生する。このプラズマのエネルギーにより原料ガス中の分子が重合し、図6(b)に示すように、重合物が第1の基板2に付着・堆積する。これにより、第1の基板2上にプラズマ重合膜で構成された接合膜3が形成される(図6(c)参照)。
【0117】
また、プラズマの作用により、第1の基板2の表面が活性化・清浄化される。このため、原料ガスの重合物が第1の基板2の表面に堆積し易くなり、接合膜3の安定した成膜が可能になる。このようにプラズマ重合法によれば、第1の基板2の構成材料によらず、第1の基板2と接合膜3との密着強度をより高めることができる。
原料ガスとしては、例えば、メチルシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルフェニルシロキサンのようなオルガノシロキサン等が挙げられる。
このような原料ガスを用いて得られるプラズマ重合膜、すなわち接合膜3は、これらの原料が重合してなるもの(重合物)、すなわちポリオルガノシロキサンで構成されることとなる。
【0118】
プラズマ重合の際、一対の電極130、140間に印加する高周波の周波数は、特に限定されないが、1kHz〜100MHz程度であるのが好ましく、10〜60MHz程度であるのがより好ましい。
また、高周波の出力密度は、特に限定されないが、0.01〜100W/cm程度であるのが好ましく、0.1〜50W/cm程度であるのがより好ましく、1〜40W/cm程度であるのがさらに好ましい。高周波の出力密度を前記範囲内とすることにより、高周波の出力密度が高過ぎて原料ガスに必要以上のプラズマエネルギーが付加されるのを防止しつつ、ランダムな原子構造を有するSi骨格301を確実に形成することができる。すなわち、高周波の出力密度が前記下限値を下回った場合、原料ガス中の分子に重合反応を生じさせることができず、接合膜3を形成することができないおそれがある。一方、高周波の出力密度が前記上限値を上回った場合、原料ガスが分解する等して、脱離基303となり得る構造がSi骨格301から分離してしまい、得られる接合膜3において脱離基303の含有率が低くなったり、Si骨格301のランダム性が低下する(規則性が高くなる)おそれがある。
また、成膜時のチャンバー101内の圧力は、133.3×10−5〜1333Pa(1×10−5〜10Torr)程度であるのが好ましく、133.3×10−4〜133.3Pa(1×10−4〜1Torr)程度であるのがより好ましい。
【0119】
原料ガス流量は、0.5〜200sccm程度であるのが好ましく、1〜100sccm程度であるのがより好ましい。一方、キャリアガス流量は、5〜750sccm程度であるのが好ましく、10〜500sccm程度であるのがより好ましい。
処理時間は、1〜10分程度であるのが好ましく、4〜7分程度であるのがより好ましい。
また、基板2の温度は、25℃以上であるのが好ましく、25〜100℃程度であるのがより好ましい。
以上のようにして、接合膜3を得る。
【0120】
なお、接合膜3は、光を透過させることができる。また、接合膜3の形成条件(プラズマ重合の際の条件や原料ガスの組成等)を適宜設定することにより、接合膜3の屈折率を調整することができる。具体的には、プラズマ重合の際の高周波の出力密度を高めることにより、接合膜3の屈折率を高めることができ、反対に、プラズマ重合の際の高周波の出力密度を低くすることにより、接合膜3の屈折率を低くすることができる。
【0121】
具体的には、プラズマ重合法によれば、屈折率の範囲が1.35〜1.6程度の接合膜3が得られる。このような接合膜3は、その屈折率が、水晶や石英ガラスの屈折率に近いため、例えば接合膜3を光路が貫通するような構造の光学部品を製造する際に好適に用いられる。また、接合膜3の屈折率を調整することができるので、所望の屈折率の接合膜3を作製することができる。
【0122】
また、かかる観点から、上記範囲の屈折率を有する接合膜3を介して水晶または石英ガラスからなる光学部品同士を接合した場合、接合界面における屈折率差が小さくなり、光透過性の高い積層光学部品を得ることができる。
また、接合膜3は、水晶や石英ガラスの熱膨張率に近いため、これらの熱膨張率差が小さくなり、接合後の変形を抑制することができる。
【0123】
≪第2実施形態≫
次に、本発明の接合方法の第2実施形態について説明する。
図7は、本発明の接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図7中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、第2実施形態にかかる接合方法について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0124】
本実施形態にかかる接合方法は、第1の基板2と第2の基板4とを重ね合わせた後に、接合膜3にエネルギーを付与するようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態にかかる接合方法は、第1の基板2と紫外線に対する透過性を有する第2の基板4とを用意し、第1の基板2の表面上に接合膜3を成膜する工程と、接合膜3と第2の基板4とが密着するように、第1の基板2と第2の基板4とを重ね合わせて仮接合体を得る工程と、仮接合体中の接合膜3に対してエネルギーを付与して、第1の基板2と第2の基板4とを接合してなる接合体5を得る工程と、接合体5に対して、第2の基板4側から紫外線を照射する工程と、2つの定盤7で接合体5を表裏から押圧した状態で保持することにより、接合体5の形状を平板状に矯正する工程とを有する。以下、本実施形態にかかる接合方法の各工程について順次説明する。
【0125】
[1]まず、前記第1実施形態と同様にして、第1の基板2および第2の基板4を用意し、第1の基板2の表面上に、プラズマ重合法により接合膜3を成膜する(図7(a)参照)。
[2]次に、図7(b)に示すように、接合膜3の表面35と第2の基板4とが密着するように、第1の基板2と第2の基板4とを重ね合わせ、仮接合体を得る。なお、この仮接合体の状態では、第1の基板2と第2の基板4との間は接合されていないので、第1の基板2の第2の基板4に対する相対位置を調整することができる。すなわち、仮接合体において互いの位置をずらすことによって、これらの位置を容易に微調整することができる。その結果、接合体5の位置精度を高めることができる。
【0126】
[3]次に、仮接合体中の接合膜3に対してエネルギーを付与する。接合膜3にエネルギーが付与されると、接合膜3に第2の基板4との接着性が発現する。これにより、第1の基板2と第2の基板4とが接合され、図7(d)に示す接合体5が得られる。
ここで、接合膜3に付与するエネルギーは、いかなる方法で付与されてもよいが、例えば、接合膜3にエネルギー線を照射する方法、接合膜3を加熱する方法、接合膜3に圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法を用いるのが好ましい。これらの方法は、仮接合体中の接合膜3に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギー付与方法として好適である。
このうち、接合膜3にエネルギー線を照射する方法としては、前記第1実施形態と同様の方法を用いることができる。
なお、この場合、エネルギー線は、第1の基板2または第2の基板4を透過して接合膜3に照射されることとなる。
【0127】
一方、図7(c)に示すように、接合膜3を加熱することにより接合膜3に対してエネルギーを付与する場合には、加熱温度を25〜100℃程度に設定するのが好ましく、50〜100℃程度に設定するのがより好ましい。かかる範囲の温度で加熱すれば、各基板2、4が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合膜3を確実に活性化させることができる。
また、加熱時間は、接合膜3の脱離基303を脱離し得る程度の時間とすればよく、具体的には、加熱温度が前記範囲内であれば、1〜30分程度であるのが好ましい。
【0128】
また、接合膜3は、いかなる方法で加熱されてもよいが、例えば、ヒータを用いる方法、赤外線を照射する方法、火炎に接触させる方法等の各種方法で加熱することができる。
なお、赤外線を照射する方法を用いる場合には、第1の基板2または第2の基板4は、光吸収性を有する材料で構成されているのが好ましい。これにより、赤外線を照射された第1の基板2または第2の基板4は、効率よく発熱する。その結果、接合膜3を効率よく加熱することができる。
また、ヒータを用いる方法または火炎に接触させる方法を用いる場合には、第1の基板2または第2の基板4は、熱伝導性に優れた材料で構成されているのが好ましい。これにより、第1の基板2または第2の基板4を介して、接合膜3に対して効率よく熱を伝えることができ、接合膜3を効率よく加熱することができる。
【0129】
また、接合膜3に圧縮力を付与する場合には、第1の基板2と第2の基板4とが互いに近づく方向に、0.2〜10MPa程度の圧力で圧縮するのが好ましく、1〜5MPa程度の圧力で圧縮するのがより好ましい。これにより、単に圧縮するのみで、接合膜3に対して適度なエネルギーを簡単に付与することができ、接合膜3に、第2の基板4との十分な接着性が発現する。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、第1の基板2と第2の基板4の各構成材料によっては、損傷等が生じるおそれがある。
【0130】
また、圧縮力を付与する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、圧縮力を付与する時間は、圧縮力の大きさに応じて適宜変更すればよい。具体的には、圧縮力の大きさが大きいほど、圧縮力を付与する時間を短くすることができる。
以上のようにして接合体5を得ることができる。
その後、接合体5に対して前記第1実施形態における工程[4]、[5]を行うことにより、実使用時において、寸法精度が高く、かつ残留応力のない接合体5(本発明の接合体)が得られる。
【0131】
≪第3実施形態≫
次に、本発明の接合方法の第3実施形態について説明する。
図8は、本発明の接合方法の第3実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図8中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、第3実施形態にかかる接合方法について説明するが、前記第1実施形態および前記第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0132】
本実施形態にかかる接合方法は、各基板2、4の表面にそれぞれ接合膜を形成し、この接合膜同士が密着するようにして各基板2、4を接合するようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態にかかる接合方法は、第1の基板2と紫外線に対する透過性を有する第2の基板4とを用意し、第1の基板2の表面上に接合膜31を成膜するとともに、第2の基板4の表面上に接合膜32を成膜する工程と、各接合膜31、32に対してそれぞれエネルギーを付与して、各接合膜31、32を活性化させる工程と、各接合膜31、32同士が密着するように、第1の基板2と第2の基板4とを貼り合わせ、接合体5aを得る工程と、接合体5aに対して、第2の基板4側から紫外線を照射する工程と、2つの定盤で接合体5aを表裏から押圧した状態で保持することにより、接合体5aの形状を平板状に矯正する工程とを有する。以下、本実施形態にかかる接合方法の各工程について順次説明する。
【0133】
[1]まず、前記第1実施形態と同様にして、第1の基板2および第2の基板4を用意し、各基板2、4の表面上にそれぞれプラズマ重合法により接合膜31、32を成膜する(図8(a)参照)。
[2]次に、図8(b)に示すように、各接合膜31、32に対してそれぞれエネルギーを付与する。各接合膜31、32にエネルギーが付与されると、各接合膜31、32にそれぞれ接着性が発現する。
なお、エネルギー付与方法としては、前記第1実施形態と同様の方法を用いることができる。
ここで、各接合膜31、32を「活性化させる」とは、前述したように、各接合膜31、32の表面351、352および内部の脱離基303が脱離して、Si骨格301に終端化されていない結合手(未結合手)が生じた状態や、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、または、これらの状態が混在した状態のことを言う。
したがって、活性手304とは、未結合手または未結合手が水酸基によって終端化されたもののことを言う。
【0134】
[3]次に、図8(c)に示すように、接着性が発現した各接合膜31、32同士が密着するように、第1の基板2と第2の基板4とを貼り合わせ、接合体5aを得る。
ここで、本工程において、各接合膜31、32同士を接合するが、この接合は、以下のような2つのメカニズム(i)、(ii)の双方または一方に基づくものであると推察される。
【0135】
(i)例えば、各接合膜31、32の表面351、352に水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、各接合膜31、32同士が密着するように、第1の基板2と第2の基板4とを貼り合わせたとき、各接合膜31、32の表面351、352に存在する水酸基同士が、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、第1の基板2と第2の基板4とが接合されると推察される。
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合する。その結果、各接合膜31、32の間では、水酸基が結合していた結合手同士が酸素原子を介して結合する。これにより、第1の基板2と第2の基板4とがより強固に接合されると推察される。
【0136】
(ii)各接合膜31、32同士が密着するように、第1の基板2と第2の基板4とを貼り合わせると、各接合膜31、32の表面351、352や内部に生じた終端化されていない結合手(未結合手)同士が再結合する。この再結合は、互いに重なり合う(絡み合う)ように複雑に生じることから、接合界面にネットワーク状の結合が形成される。これにより、各接合膜31、32を構成するそれぞれの母材(Si骨格301)同士が直接接合して、各接合膜31、32同士が一体化する。
【0137】
以上のような(i)または(ii)のメカニズムにより、図8(d)に示すような接合体5aが得られる。
その後、接合体5aに対して前記第1実施形態における工程[4]、[5]を行うことにより、実使用時において、寸法精度が高く、かつ残留応力のない接合体5a(本発明の接合体)が得られる。
【0138】
≪第4実施形態≫
次に、本発明の接合方法の第4実施形態について説明する。
図9は、本発明の接合方法の第4実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図9中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、第4実施形態にかかる接合方法について説明するが、前記第1実施形態ないし前記第3実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0139】
本実施形態にかかる接合方法は、接合膜3の一部の所定領域350のみを選択的に活性化させることにより、第1の基板2と第2の基板4とを所定領域350において部分的に接合するようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態にかかる接合方法は、第1の基板2と紫外線に対する透過性を有する第2の基板4とを用意し、第1の基板2の表面上に接合膜3を成膜する工程と、接合膜3の一部の所定領域350に対して選択的にエネルギーを付与する工程と、接合膜3を介して第1の基板2と第2の基板4とを接合し、接合体5を得る工程と、接合体5に対して、第2の基板4側から紫外線を照射する工程と、2つの定盤で接合体5を表裏から押圧した状態で保持することにより、接合体5の形状を平板状に矯正する工程とを有する。以下、本実施形態にかかる接合方法の各工程について順次説明する。
【0140】
[1]まず、前記第1実施形態と同様にして、第1の基板2および第2の基板4を用意し、第1の基板2の表面上に、プラズマ重合法により接合膜3を成膜する(図9(a)参照)。
[2]次に、図9(b)に示すように、接合膜3の表面35のうち、一部の所定領域350に対して選択的にエネルギーを付与する。
エネルギーが付与されると、接合膜3では所定領域350において、脱離基303がSi骨格301から脱離する(図3参照)。そして、脱離基303が脱離した後には、接合膜3の表面35および内部に活性手304が生じる(図4参照)。これにより、接合膜3の所定領域350に第2の基板4との接着性が発現する。一方、接合膜3の所定領域350以外の領域には、接着性はほとんど発現しない。
このような状態の接合膜3は、所定領域350において、第2の基板4と部分的に接着可能なものとなる。
なお、所定領域350に選択的にエネルギーを付与するためには、図9(b)に示すように、所定領域350に対応する窓部61を備えるマスク6を用い、このマスク6を介して接合膜3にエネルギーを付与するようにすればよい。
【0141】
[3]次に、図9(c)に示すように、所定領域350に接着性を発現させた接合膜3と第2の基板4とが密着するように、第1の基板2と第2の基板4とを貼り合わせる。これにより、図9(d)に示す接合体5bを得る。
このようにして得られた接合体5bは、第1の基板2と第2の基板4の対向面全体を接合するのではなく、一部の領域(所定領域350)のみを部分的に接合してなるものである。そして、この接合の際、接合膜3に対してエネルギーを付与する領域を制御することのみで、接合される領域を簡単に選択することができる。これにより、所定領域350の面積を制御することにより、接合体5bの接合強度を容易に調整することができる。その結果、例えば、接合した箇所を容易に分離することができる接合体5bが得られる。
【0142】
また、図9(d)に示す第1の基板2と第2の基板4との接合部(所定領域350)の面積や形状を適宜制御することにより、接合部に生じる応力の局所集中を緩和することができる。これにより、第1の基板2と第2の基板4との間で熱膨張率差が大きい場合でも、これらを確実に接合することができる。
さらに、接合体5bでは、接合膜3と第2の基板4との間隙のうち、接合している所定領域350以外の領域では、わずかな間隙が生じている(残存している)。したがって、この所定領域350の形状を適宜調整することにより、接合膜3と第2の基板4との間に閉空間や流路等を容易に形成することができる。
以上のようにして接合体5bを得ることができる。
その後、接合体5bに対して前記第1実施形態における工程[4]、[5]を行うことにより、実使用時において、寸法精度が高く、かつ残留応力のない接合体5b(本発明の接合体)が得られる。
【0143】
≪第5実施形態≫
次に、本発明の接合方法の第5実施形態について説明する。
図10は、本発明の接合方法の第5実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図10中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、第5実施形態にかかる接合方法について説明するが、前記第1実施形態ないし前記第4実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0144】
本実施形態にかかる接合方法は、第1の基板2の上面25のうち、一部の所定領域350のみに接合膜3aを形成することにより、第1の基板2と第2の基板4とを、前記所定領域350において部分的に接合するようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態にかかる接合方法は、第1の基板2と紫外線に対する透過性を有する第2の基板4とを用意し、第1の基板2の上面25のうち、一部の所定領域350のみに接合膜3aを形成する工程と、接合膜3aを介して第1の基板2と第2の基板4とを接合し、接合体5cを得る工程と、接合体5に対して、第2の基板4側から紫外線を照射する工程と、2つの定盤で接合体5cを表裏から押圧した状態で保持することにより、接合体5cの形状を平板状に矯正する工程とを有する。以下、本実施形態にかかる接合方法の各工程について順次説明する。
【0145】
[1]まず、前記第1実施形態と同様にして、第1の基板2および第2の基板4を用意し、第1の基板2の上面25のうち、一部の所定領域350のみに接合膜3aを成膜する(図10(a)参照)。
所定領域350に選択的に接合膜3aを成膜するためには、図10(a)に示すように、所定領域350に対応する窓部61を備えるマスク6を用い、このマスク6を介してプラズマ重合法によりプラズマ重合膜を成膜するようにすればよい。
[2]次に、図10(b)に示すように、接合膜3aにエネルギーを付与する。エネルギーが付与されると、接合膜3aに接着性が発現する。
【0146】
[3]次に、図10(c)に示すように、接着性が発現した接合膜3aと第2の基板4とが密着するように、第1の基板2と第2の基板4とを貼り合わせ、図10(d)に示す接合体5cを得る。
このようにして得られた接合体5cは、第1の基板2と第2の基板4の対向面全体を接合するのではなく、一部の領域(所定領域350)のみを部分的に接合してなるものである。そして、接合膜3aを形成する際、形成領域を制御することのみで、接合される領域を簡単に選択することができる。これにより、例えば、接合膜3aを形成する領域(所定領域350)の面積を制御することにより、接合体5cの接合強度を容易に調整することができる。その結果、例えば、接合した箇所を容易に分離することができる接合体5cが得られる。
【0147】
また、図10(d)に示す第1の基板2と第2の基板4との接合部(所定領域350)の面積や形状を適宜制御することにより、接合部に生じる応力の局所集中を緩和することができる。これにより、例えば、第1の基板2と第2の基板4との間で熱膨張率差が大きい場合でも、第1の基板2と第2の基板4とを確実に接合することができる。
さらに、接合体5cの第1の基板2と第2の基板4との間には、所定領域350以外の領域に、接合膜3aの厚さに相当する離間距離の間隙3cが形成されている(図10(d)参照)。したがって、所定領域350の形状や接合膜3aの厚さを適宜調整することにより、第1の基板2と第2の基板4との間に、所望の形状の閉空間や流路等を容易に形成することができる。
以上のようにして接合体5cを得ることができる。
その後、接合体5cに対して前記第1実施形態における工程[4]、[5]を行うことにより、実使用時において、寸法精度が高く、かつ残留応力のない接合体5c(本発明の接合体)が得られる。
【0148】
≪第6実施形態≫
次に、本発明の接合方法の第6実施形態について説明する。
図11は、本発明の接合方法の第6実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図11中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、第6実施形態にかかる接合方法について説明するが、前記第1実施形態ないし前記第5実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0149】
本実施形態にかかる接合方法は、第4の工程において、接合体5の一部の所定領域350のみに紫外線を照射するようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態にかかる接合方法は、第1の基板2と紫外線に対する透過性を有する第2の基板4とを用意し、第1の基板2の表面上に接合膜3を成膜する工程と、接合膜3を介して第1の基板2と第2の基板4とを接合し、接合体5を得る工程と、接合体5のうち、一部の所定領域350のみに、第2の基板4側から紫外線を照射する工程と、2つの定盤で接合体5cを表裏から押圧した状態で保持することにより、接合体5の形状を平板状に矯正する工程とを有する。以下、本実施形態にかかる接合方法の各工程について順次説明する。
【0150】
[1]まず、前記第1実施形態と同様にして、第1の基板2および第2の基板4を用意し、第1の基板2の表面上に、プラズマ重合法により接合膜3を成膜する。
[2]次に、接合膜3にエネルギーを付与する。エネルギーが付与されると、接合膜3に接着性が発現する。
[3]次に、接着性が発現した接合膜3と第2の基板4とが密着するように、第1の基板2と第2の基板4とを貼り合わせ、図11(a)に示す接合体5を得る。
【0151】
[4]次に、図11(b)に示すように、接合体5のうち、一部の所定領域350のみに、第2の基板4側から紫外線を照射する。これにより、接合膜3のうち、所定領域350の一部の化学結合が選択的に切断され、所定領域350の化学結合の柔軟性が向上する。その結果、接合体5中の残留応力が放出される。
なお、所定領域350に選択的に紫外線を照射するためには、図11(b)に示すように、所定領域350に対応する窓部61を備えるマスク6を用い、このマスク6を介して接合膜3に紫外線を照射するようにすればよい。
【0152】
[5]次に、前記第1実施形態と同様にして、接合体5の温度を、製造後の接合体5が実際に使用される際の実体温度に制御して維持する。
次に、図11(c)に示すように、2つの定盤7で接合体5を圧縮する。これにより、各定盤7表面の高い平面度が接合体5の形状に反映されて、最終的に平面度(平行度)の高い接合体5を得ることができる。
【0153】
このような方法では、接合体5のうち、所定領域350の一部の化学結合が選択的に切断されることとなる。その結果、この部分のみ、接合膜3の化学結合の柔軟性が向上し、これによりこの部分の残留応力が放出される。したがって、本実施形態によれば、特定の部分の残留応力を選択的に低減することができるので、紫外線の照射領域を最低限に抑えることができる他、一部の残留応力のみを低減することにより、接合体5の一部にあえて残留応力を残すこともできる。その結果、紫外線照射による各基板2、4の変質・劣化を抑制したり、目的とする形状に変形した接合体5を製造したりすることができる。
【0154】
以上のような前記各実施形態にかかる接合方法は、種々の複数の部材同士を接合するのに用いることができる。
このような接合に供される部材としては、例えば、トランジスタ、ダイオード、メモリのような半導体素子、水晶発振子のような圧電素子、反射鏡、光学レンズ、回折格子、光学フィルターのような光学素子、太陽電池のような光電変換素子、半導体基板とそれに搭載される半導体素子、絶縁性基板と配線または電極、インクジェット式記録ヘッド、マイクロリアクタ、マイクロミラーのようなMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)部品、圧力センサ、加速度センサのようなセンサ部品、半導体素子や電子部品のパッケージ部品、磁気記録媒体、光磁気記録媒体、光記録媒体のような記録媒体、液晶表示素子、有機EL素子、電気泳動表示素子のような表示素子用部品、燃料電池用部品等が挙げられる。
【0155】
<光学素子>
ここでは、本発明の接合体を光学素子に適用した場合の実施形態について説明する。
図12は、本発明の接合体を適用して得られた波長板(光学素子)を示す斜視図である。
図12に示す波長板9は、透過する光に1/2波長分の位相差を与える「1/2波長板」であって、2枚の複屈折性を有する結晶板91、92を、それぞれの光学軸が直交するように接着してなるものである。複屈折性を有する材料としては、例えば、水晶、方解石、MgF、YVO、TiO、LiNbO等の無機材料や、ポリカーボネート等の有機材料が挙げられる。
このような波長板9を光が透過するとき、光学軸に平行な偏光成分と垂直な偏光成分とに光が分離される。そして、分離された光は、各結晶板91、92の複屈折性に伴う屈折率差に基づいて一方に遅延が生じ、前述した位相差が生じることとなる。
【0156】
ところで、波長板9によって透過光に与えられる位相差の精度や波長板9の透過率は、各結晶板91、92の板厚の精度に依存しているため、各結晶板91、92の板厚は高精度に制御されている必要がある。
それに加え、結晶板91と結晶板92との間隙も透過光の位相に影響を及ぼすため、結晶板91と結晶板92との間隙は、離間距離が厳密に制御されており、かつ離間距離が変化しないように強固に接着されている必要がある。
【0157】
そこで、本発明では、波長板9に本発明の接合体を適用することとした。これにより、接合膜を介して結晶板91と結晶板92とが強固に接合された波長板9を容易に得ることができる。この接合膜は、非常に薄いものであるため、波長板9を透過する光に及ぼす影響を抑えることができる。また、この接合膜の屈折率は、各結晶板91、92の構成材料として一般的に多用される水晶に近いため、接合界面での光損失を低減し、波長板9の透過率低下を抑制することができる。
【0158】
また、波長板9の製造時には、前述した本発明の接合方法により、結晶板91と結晶板92とを貼り合わせて積層体(接合体)を得るが、その際、積層体には、各結晶板91、92と接合膜との熱膨張率差に伴って、残留応力やそれに伴う反り等の変形が発生する。この際の変形量は、積層体の温度に応じて変化するが、波長板9が本来の光学性能を発揮するためには、波長板9が実際に使用される際の温度を考慮し、この温度において残留応力を最も低減させることが必要である。例えば、一般的な波長板の場合、光が継続的に照射されることにより発熱し、温度上昇を招くことが多い。そこで、本発明の接合方法によれば、前述したように、実使用時の温度を踏まえ、この温度で残留応力が最も低減するように加熱手段を用いて積層体を加熱しつつ形状を矯正する。このため、最終的に実使用時において寸法精度が高くなる波長板9が得られる。このような波長板9は、透過光に与える位相差の精度が高く、かつ透過率の高いものとなる。
なお、波長板9は、1/2波長板の他に、1/4波長板、1/8波長板等であってもよい。
また、光学素子としては、波長板の他に、偏光フィルタのような光学フィルタ、光ピックアップのような複合レンズ、プリズム、回折格子等が挙げられる。
【0159】
以上、本発明の接合方法、接合体および光学素子を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の接合方法は、前記各実施形態のうち、任意の1つまたは2つ以上を組み合わせたものであってもよい。
また、本発明の接合方法では、必要に応じて、1以上の任意の目的の工程を追加してもよい。
また、前記各実施形態では、基板と対向基板の2枚の基材を接合する方法について説明しているが、3枚以上の基材を接合する場合に、本発明の接合方法を用いるようにしてもよい。
【実施例】
【0160】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.接合体の製造
以下では、実施例、参考例および比較例において、それぞれ接合体を複数個ずつ製造した。
【0161】
(実施例1)
まず、第1の基板として、縦20mm×横20mm×平均厚さ2mmの水晶基板を用意し、また第2の基板として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmの水晶基板を用意した。なお、これらの水晶基板は、いずれも光学研磨を施したものである。
次いで、各基板を図5に示すプラズマ重合装置100のチャンバー101内に収納し、酸素プラズマによる表面処理を行った。
次に、表面処理を行った面に、平均厚さ200nmのプラズマ重合膜を成膜した。なお、成膜条件は以下に示す通りである。
【0162】
<成膜条件>
・原料ガスの組成 :オクタメチルトリシロキサン
・原料ガスの流量 :50sccm
・キャリアガスの組成:アルゴン
・キャリアガスの流量:100sccm
・高周波電力の出力 :100W
・高周波出力密度 :25W/cm
・チャンバー内圧力 :1Pa(低真空)
・処理時間 :15分
・基板温度 :20℃
【0163】
これにより、各基板上にプラズマ重合膜を成膜した。
このようにして成膜されたプラズマ重合膜は、オクタメチルトリシロキサン(原料ガス)の重合物で構成されており、シロキサン結合を含み、ランダムな原子構造を有するSi骨格と、アルキル基(脱離基)とを含むものである。また、プラズマ重合膜の結晶化度を赤外線吸収法により測定した。その結果、プラズマ重合膜の結晶化度は、測定箇所によって若干バラツキがあるものの、5〜30%の範囲であった。
【0164】
次に、得られた各プラズマ重合膜に、それぞれ大気圧下でプラズマ処理を施した。なお、プラズマ処理の際の処理ガスには、アルゴンガスを用いた。
次に、プラズマ処理を施してから1分後に、プラズマ重合膜同士が接触するように、各基板同士を重ね合わせた。これにより、接合体を得た。
次に、得られた接合体に、第2の基板側から以下に示す条件で紫外線を照射した。
【0165】
<紫外線照射条件>
・雰囲気ガスの組成 :大気(空気)
・雰囲気ガスの温度 :20℃
・雰囲気ガスの圧力 :大気圧(100kPa)
・紫外線の波長 :172nm
・紫外線の照射時間 :120秒
【0166】
次に、紫外線を照射してから1分後に、接合体を2つの定盤で挟み込んだ状態で接合体を押圧するとともに、各定盤に内蔵したヒータに通電して接合体の温度を70℃に制御した。そして、この状態で60秒間保持した。なお、用いた定盤は、前述した水晶基板の表面と同程度の研磨を表面に施したもので、JIS B 7513に規定の平面度を有するものである。
以上のようにして接合体中の残留応力の低減と、接合体の形状の矯正を図った。
【0167】
(実施例2)
接合体の両面側からそれぞれ紫外線を照射するようにした以外は、前記実施例1と同様にして接合体を得た。
(参考例1)
紫外線の照射および接合体への加重を省略した以外は、前記実施例1と同様にして接合体を得た。
【0168】
(参考例2)
接合体の加圧工程を下記のようにした以外は、前記実施例1と同様にして接合体を得た。
接合体に紫外線を照射してから1分後に、接合体を2つの定盤で挟み込んだ状態で接合体を押圧しつつ、接合体の温度を室温(20℃)に制御した。そして、この状態で60秒間保持した。
(比較例)
第1の基板と第2の基板とを、エポキシ系光学接着剤を用いて接着した以外は、前記実施例1と同様にして接合体を得た。
【0169】
2.接合体の評価
2.1 接合強度(割裂強度)の評価
各実施例、各参考例および比較例で得られた接合体について、それぞれ接合強度を測定した。
接合強度の測定は、各基板を引き剥がしたとき、剥がれる直前の強度を測定することにより行った。また、接合強度の測定は、接合直後と、接合後に−40℃〜125℃の温度サイクルを100回繰り返した後のそれぞれにおいて行った。
その結果、各実施例および各参考例で得られた接合体は、接合直後と温度サイクル後のいずれも、十分な接合強度を有していた。
一方、比較例で得られた接合体は、接合直後は十分な接合強度を有していたものの、温度サイクル後には接合強度が低下した。
【0170】
2.2 寸法精度の評価
各実施例、各参考例および比較例で得られた接合体について、接合体の温度を70℃に維持しつつ、それぞれ厚さ方向の寸法精度(平行度)を測定した。
具体的には、接合体の四隅の厚さをマイクロゲージで測定した。そして、四隅の厚さの差に基づいて、接合体の両面の相対的な傾きを算出した。
その結果、各実施例で得られた接合体は、平行度が±1秒以下であり、しかも複数の接合体で平行度のバラツキが小さかった。
これに対し、各参考例および比較例で得られた接合体は、平行度が±1秒以上あり、かつ複数の接合体で平行度のバラツキが大きかった。
【0171】
2.3 光透過率の評価
各実施例、各参考例および比較例で得られた接合体について、それぞれ厚さ方向の光透過率(波長405nm)を測定した。
その結果、いずれの接合体もほぼ同等の光透過性(99.5%以上)であった。
また、波長405nm、出力100mWの光を70℃環境で連続して1000時間照射した後に、上記のようにして再び光透過性を測定したところ、各実施例および各参考例で得られた接合体は99.5%以上の優れた光透過性を示した一方、比較例で得られた接合体では光透過性が90%以下に低下していた。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図2】本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図3】本発明の接合方法において、接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図である。
【図4】本発明の接合方法において、接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。
【図5】本発明の接合方法に用いられるプラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図である。
【図6】第1の基板上に接合膜を作製する方法を説明するための図(縦断面図)である。
【図7】本発明の接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図8】本発明の接合方法の第3実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図9】本発明の接合方法の第4実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図10】本発明の接合方法の第5実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図11】本発明の接合方法の第6実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図12】本発明の接合体を適用して得られた波長板(光学素子)を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0173】
2……第1の基板 25……上面 3、3a、31、32……接合膜 301……Si骨格 302……シロキサン結合 303……脱離基 304……活性手 3c……間隙 35、351、352……表面 350……所定領域 4……第2の基板 5、5a、5b、5c……接合体 6……マスク 61……窓部 7……定盤 8……ヒータ 100……プラズマ重合装置 101……チャンバー 102……接地線 103……供給口 104……排気口 130……第1の電極 140……第2の電極 139……静電チャック 170……ポンプ 171……圧力制御機構 180……電源回路 182……高周波電源 183……マッチングボックス 184……配線 190……ガス供給部 191……貯液部 192……気化装置 193……ガスボンベ 194……配管 195……拡散板 9……波長板 91、92……結晶板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が紫外線に対して透過性を有する第1の基板および第2の基板を用意し、第1の基板の表面上に、プラズマ重合法により、シロキサン(Si−O)結合を含むランダムな原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含む接合膜を形成する第1の工程と、
前記接合膜にエネルギーを付与し、前記接合膜の少なくとも表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離することにより、接着性を発現させる第2の工程と、
前記接合膜を介して前記第1の基板と前記第2の基板とを接合し、接合体を得る第3の工程と、
前記接合体に対して、前記第1の基板および前記第2の基板のうち、前記紫外線に対する透過性を有する基板側から紫外線を照射する第4の工程と、
前記紫外線を照射した接合体の温度を、製造後の前記接合体が使用される際の実体温度に維持しつつ、該接合体を加圧して、所定の形状に矯正する第5の工程とを有することを特徴とする接合方法。
【請求項2】
前記接合膜を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10〜90原子%である請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記接合膜中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3である請求項1または2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記Si骨格の結晶化度は、45%以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の接合方法。
【請求項5】
前記接合膜は、Si−H結合を含んでいる請求項1ないし4のいずれかに記載の接合方法。
【請求項6】
前記Si−H結合を含む接合膜についての赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピーク強度を1としたとき、Si−H結合に帰属するピーク強度が0.001〜0.2である請求項5に記載の接合方法。
【請求項7】
前記脱離基は、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子が前記Si骨格に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものである請求項1ないし6のいずれかに記載の接合方法。
【請求項8】
前記脱離基は、アルキル基である請求項7に記載の接合方法。
【請求項9】
前記脱離基としてメチル基を含む接合膜についての赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピーク強度を1としたとき、メチル基に帰属するピーク強度が0.05〜0.45である請求項8に記載の接合方法。
【請求項10】
前記接合膜は、その少なくとも表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離した後に、活性手を有する請求項1ないし9のいずれかに記載の接合方法。
【請求項11】
前記活性手は、未結合手または水酸基である請求項10に記載の接合方法。
【請求項12】
前記接合膜は、ポリオルガノシロキサンを主材料として構成されている請求項1ないし11のいずれかに記載の接合方法。
【請求項13】
前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものである請求項12に記載の接合方法。
【請求項14】
前記プラズマ重合法において、プラズマを発生させる際の高周波の出力密度は、0.01〜100W/cmである請求項1ないし13のいずれかに記載の接合方法。
【請求項15】
前記接合膜の平均厚さは、1〜1000nmである請求項1ないし14のいずれかに記載の接合方法。
【請求項16】
前記接合膜は、流動性を有しない固体状のものである請求項1ないし15のいずれかに記載の接合方法。
【請求項17】
前記接合膜の屈折率は、1.35〜1.6である請求項1ないし16のいずれかに記載の接合方法。
【請求項18】
前記第1の基板および前記第2の基板のうち、前記紫外線に対する透過性を有する基板は、石英ガラスまたは水晶により構成されている請求項1ないし17のいずれかに記載の接合方法。
【請求項19】
前記第4の工程において照射する紫外線の波長は、120〜200nmである請求項1ないし18のいずれかに記載の接合方法。
【請求項20】
前記第4の工程において照射する紫外線は、前記接合膜中のSi−O結合を切断することなく、Si−O結合以外の化学結合を切断し得るエネルギーを有するものである請求項1ないし19のいずれかに記載の接合方法。
【請求項21】
前記第4の工程における紫外線の照射時間は、1秒〜10分間である請求項1ないし20のいずれかに記載の接合方法。
【請求項22】
前記第5の工程において、前記接合体を所定の形状に矯正した状態で保持する時間は、10秒以上である請求項1ないし21のいずれかに記載の接合方法。
【請求項23】
製造後の前記接合体は、その実体温度が所定の温度幅で変動しつつ使用されるものであり、
前記第5の工程において前記紫外線を照射した接合体を維持する温度は、前記所定の温度幅の中心温度である請求項1ないし22のいずれかに記載の接合方法。
【請求項24】
前記第5の工程における前記接合体の加圧は、前記接合体を包含する押圧面を有する治具を用い、前記押圧面を前記接合体に押圧することにより行われ、
前記接合体は、前記治具の押圧面に沿って変形させることにより矯正される請求項1ないし23のいずれかに記載の接合方法。
【請求項25】
前記治具は、その温度を可変し得る温度可変手段を有しており、
前記第5の工程において前記紫外線を照射した接合体は、前記治具を介してその温度が制御される請求項24に記載の接合方法。
【請求項26】
前記エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、前記接合膜に圧縮力を付与する方法、および前記接合膜をプラズマに曝す方法のうちの少なくとも1つの方法により行われる請求項1ないし25のいずれかに記載の接合方法。
【請求項27】
前記エネルギーの付与は、大気雰囲気中で行われる請求項1ないし26のいずれかに記載の接合方法。
【請求項28】
前記第1の工程において、前記第2の基板の表面上に、前記接合膜と同様の接合膜を形成し、
前記第2の工程において、前記各接合膜にエネルギーを付与した後、前記第3の工程において、前記各接合膜同士が密着するようにして、前記第1の基板と前記第2の基板とを接合し、前記接合体を得る請求項1ないし27のいずれかに記載の接合方法。
【請求項29】
2つの基板を有し、これらが請求項1ないし28のいずれかに記載の接合方法により接合されたものであり、
内部に残留応力を有していないことを特徴とする接合体。
【請求項30】
請求項29に記載の接合体を備えることを特徴とする光学素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−89108(P2010−89108A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260158(P2008−260158)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】