説明

接着シート

【課題】ダイボンディング工程及びワイヤボンディング工程で発生する熱による硬化の影響を受け難く、封止工程での凹凸埋込み性に十分に優れる接着剤層を備える接着シートを提供すること。
【解決手段】本発明は、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体とを含む接着剤組成物をシート状に形成した接着剤層を備える接着シートであって、エポキシ樹脂硬化剤が、下記一般式(1)で表されるフェノール樹脂を含有する接着シートに関する。式(1)中、nは1〜20の整数を示し、mは1〜20の整数を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子と半導体素子搭載用配線基板との接合には、銀ペーストが主に使用されている。しかし、近年の半導体素子の小型化・高性能化に伴い、使用される配線基板にも小型化・細密化が要求されるようになってきている。銀ペーストを用いた接合では、はみ出しや半導体素子の傾きに起因するワイヤボンディング時における不具合の発生、接着層の膜厚の制御困難性、接着層のボイド発生等により上記要求に対処しきれなくなってきている。そのため、近年、半導体素子と半導体素子搭載用配線基板との接合に、フィルム状の接着剤(接着フィルム)が使用されるようになってきている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
一般に、実装基板作製プロセスは、下記のように行われる。まず、接着フィルムをダイシングテープと貼り合わせた後、接着フィルムのもう片面を半導体ウェハの裏面に貼付ける。その後、ダイシング工程にて接着フィルムが貼付された半導体ウェハを接着フィルム付き半導体素子に個片化する。次に、ダイボンディング工程にて個片化した接着フィルム付き半導体素子をピックアップし、配線基板に接合する。次いで、配線基板に接合した半導体素子が搬送中に剥がれたり、取れたりすることを防ぐために、オーブンにて短時間硬化を行う。その後、ワイヤボンディング工程、封止工程、封止材硬化工程及び半田ボール付けを行うリフロー工程を経ることで、実装基板が製造される。
【0004】
半導体素子をはじめとする各種電子部品を搭載した実装基板に最も重要な特性の一つとして、信頼性がある。製造される半導体装置の信頼性向上のため、耐熱性、耐湿性及び耐リフロー性を考慮したフィルム状接着剤の開発も行われている。このようなフィルム状接着剤として、例えば、特許文献3には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びアクリル共重合体を含む接着フィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−192178号公報
【特許文献2】特開平4−234472号公報
【特許文献3】特開2002−220576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、配線基板に接着フィルム付き半導体素子を多段に積層させることで実装基板の高容量化が進んでおり、半導体素子を多段に積層するためにダイボンディング工程とワイヤボンディング工程とが繰り返し行われている。ダイボンディング工程にて配線基板上面に貼り付けた接着フィルムは、ワイヤボンディング工程を経た後、封止工程での高い温度と圧力によって、配線基板上面の凹凸を埋め込む必要がある。しかし、従来の接着フィルムでは、ダイボンディング工程及びワイヤボンディング工程での繰り返し加熱により接着フィルムの硬化が進み流動性が低下していまい、封止工程で配線基板上の凹凸を埋め込むことが困難となり、結果として実装基板の信頼性を低下させることがある。
【0007】
そのため、ダイボンディング工程及びワイヤボンディング工程での加熱の影響を受け難い接着フィルムが求められている。
【0008】
そこで、本発明は、ダイボンディング工程及びワイヤボンディング工程で発生する熱による硬化の影響を受け難く、封止工程での凹凸埋込み性に十分に優れる接着剤層を備える接着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体とを含む接着剤組成物をシート状に形成した接着剤層を備える接着シートであって、エポキシ樹脂硬化剤が、下記一般式(1)で表されるフェノール樹脂を含有する接着シートを提供する。
【0010】
【化1】


[式(1)中、nは1〜20の整数を示し、mは1〜20の整数を示す。]
【0011】
本発明の接着シートは、エポキシ樹脂及びエポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体と、特定の構造を有するフェノール樹脂とを含む接着剤組成物から形成された接着剤層を備えることで、ダイボンディング工程及びワイヤボンディング工程で発生する熱による硬化の影響を受け難く、封止工程での凹凸埋込み性に十分に優れるものとなる。
【0012】
埋込み性をより一層向上する観点から、エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体は、エポキシ基を有するモノマーに由来する構造単位を0.5〜3.0質量%含有し、ガラス転移温度が−50〜30℃であり、重量平均分子量が10万〜300万であることが好ましい。
【0013】
また、接着剤層の流動性及び硬化性を両立する観点から、エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体の質量に対する、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤の合計量の比は、0.05〜0.40であることが好ましい。
【0014】
本発明の接着シートは、接着剤組成物が無機フィラーを更に含むことで、埋込み性及び絶縁性に十分に優れ、作製される半導体装置の信頼性を向上することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ダイボンディング工程及びワイヤボンディング工程で発生する熱による硬化の影響を受け難く、封止工程での凹凸埋込み性に十分に優れる接着剤層を備える接着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の接着シートの好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。なお、各図における寸法比は、説明のため誇張している部分があり、必ずしも実際の寸法比とは一致しない。
【0018】
図1は、本発明の接着シートの好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示した接着シート1は、基材フィルム20と、基材フィルム20上に設けられた接着剤層10と、で構成される。接着剤層10は、本発明に係る接着剤組成物からなる。本発明の接着シートは、接着剤層10上の基材フィルム20の反対側の面を保護フィルムで被覆してもよい。
【0019】
本発明の接着シートは、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体とを含む接着剤組成物をシート状に形成した接着剤層を備える接着シートであって、エポキシ樹脂硬化剤が、下記一般式(1)で表されるフェノール樹脂を含有する。
【0020】
まず、本発明に係る接着剤組成物を構成する各成分について詳しく説明する。
【0021】
(エポキシ樹脂)
本実施形態に係るエポキシ樹脂は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するものであれば特に限定されない。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等の二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂及び脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
(エポキシ樹脂硬化剤)
本実施形態に係るエポキシ樹脂硬化剤は、下記式(1)で表されるフェノール樹脂を含有する。
【0023】
【化2】

【0024】
式(1)中、n及びmはそれぞれ独立に1〜20の整数を示す。
【0025】
上記フェノール樹脂は、分子内にトリフェノールメタン型樹脂及びフェノールノボラック型樹脂の重合単位を特定の割合で有する。これにより、エポキシ樹脂の硬化剤として、優れた硬化特性を備えることができる。上記フェノール樹脂は、フェノール類、サリチルアルデヒド類及びホルムアルデヒドを、酸触媒の存在下で縮合させることにより合成することができる。また、上記フェノール樹脂は、市販品として入手可能であり、例えば、エア・ウォーター(株)製の商品名「HE910−20」を好適に用いることができる。
【0026】
エポキシ樹脂とフェノール系硬化剤との配合比率は、接着剤層の硬化性の観点から、エポキシ樹脂のエポキシ当量と、フェノール樹脂の水酸基当量との比率が0.70/0.30〜0.30/0.70の範囲に設定されていることが好ましく、より好ましくは0.65/0.35〜0.35/0.65、さらに好ましくは0.60/0.40〜0.40/0.60、特に好ましくは0.55/0.45〜0.45/0.55である。
【0027】
(エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体)
本実施形態に係るエポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体は、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート等の官能性モノマーを含有するモノマーを重合して得ることができる。上記官能性モノマーはエポキシ樹脂と非相溶であるため、硬化後にエポキシ樹脂と(メタ)アクリル共重合体とがそれぞれ分離し、接着剤層の耐リフロークラック性及び耐熱性を向上することができる。
【0028】
(メタ)アクリル共重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリルゴム等を使用することができ、アクリルゴムがより好ましい。アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とし、主として、ブチルアクリレートとアクリロニトリル等の共重合体や、エチルアクリレートとアクリロニトリル等の共重合体からなるゴムである。
【0029】
すなわち、エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体として、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート等の官能性モノマーと、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、アクリロニトリル等との共重合体を用いることができる。エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体の重合方法は特に限定されず、パール重合、溶液重合等を使用することができる。
【0030】
接着力の確保とゲル化の防止とを両立する観点から、エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体中のエポキシ基を有するモノマーに由来する構造単位は、0.5〜3.0質量%であることが好ましく、2.0〜3.0質量%であることがより好ましい。
【0031】
エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体は、市販品として入手でき、例えば、ナガセケムテック(株)製の商品名「HTR―860P−3」を用いることができる。
【0032】
エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体のガラス転移温度(Tg)は−50〜30℃であることが好ましく、−30〜30℃であることがより好ましい。エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体のTgが−50℃未満であると、−50〜30℃の範囲内にある場合と対比して、接着剤層の柔軟性が高くなりすぎる傾向にある。これにより、ウエハダイシング時に接着剤層を切断し難くなり、その結果バリが発生してダイシング性が低下する傾向にある。またTgが+30℃を超えると、−50〜30℃の範囲内にある場合と対比して、接着剤層の柔軟性が低下する傾向にある。
【0033】
エポキシ基含有アクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)は、10万〜300万であることが好ましく、50万〜200万であることがより好ましい。エポキシ基含有アクリル共重合体のMwがこの範囲にあると、フィルム状、フィルム状での強度、可撓性、タック性を適切に制御することができると共に、リフロー性に優れ、埋め込み性を向上することができる。ここで、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて換算した値を意味する。
【0034】
エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体の配合量は、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤の合計100質量部に対して250〜2000質量部であることが好ましく、300〜1500質量部であることがより好ましい。い。すなわち、エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体の質量に対する、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤の合計量の比が、0.05〜0.40であることが好ましく、0.06〜0.3であることがより好ましい。この範囲にあると、成形時の流動性の制御、高温での取り扱い性及び埋込み性をより一層良好することができる。
【0035】
(無機フィラー)
本実施形態の接着剤組成物には、無機フィラーを更に含有することができる。無機フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミウィスカ、窒化ホウ素及び結晶性シリカ、非晶性シリカが挙げられる。これらは、1種又は2種以上を併用することができる。接着剤層の熱伝導性を向上する観点から、無機フィラーとして、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、結晶性シリカ又は非晶性シリカを含有することが好ましい。接着剤層の溶融粘度の調整や、接着剤組成物にチキソトロピック性を付与する観点からは、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、結晶性シリカ又は非晶性シリカを含有することが好ましい。
【0036】
無機フィラーの平均粒径は、接着性を向上する観点から、0.005μm〜0.1μmが好ましく、0.01〜0.1μmがより好ましい。
【0037】
無機フィラーの配合量は、無機フィラーを除いた接着剤組成物100質量部に対して1〜50質量部が好ましく、10〜40質量部がより好ましい。無機フィラーの配合量がこの範囲にあると、接着剤層の十分な貯蔵弾性、接着性及び電気特性を確保できる。
【0038】
また、本実施形態の接着剤組成物には、硬化促進剤を添加することもできる。硬化促進剤は、特に限定されず、各種イミダゾール類を用いることができる。イミダゾール類としては、2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチルー2−メチルイミダゾール等が挙げられ、これらは1種または2種以上を併用することもできる。
【0039】
硬化促進剤の添加量は、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤の合計100質量部に対して0.04〜5質量部が好ましく、0.04〜0.2質量部がより好ましい。硬化促進剤の添加量がこの範囲にあると、硬化性と信頼性を両立することができる。
【0040】
接着剤組成物は、上述の各成分の他に、必要に応じて、触媒、添加剤、カップリング剤等の各種添加剤を更に含んでもよい。被着体に対して接着力を向上する観点から、カップリング剤を含むことが好ましい。カップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤及びアルミニウム系カップリング剤が挙げられ、中でもシラン系カップリング剤を好適に用いることができる。
【0041】
基材フィルム20として、特に制限はなく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム等が用いられる。
【0042】
これらのフィルムに対して、必要に応じてプライマー塗布、UV処理、コロナ放電処理、研磨処理、エッチング処理等の表面処理を行ってもよい。基材フィルム20の厚みは、特に制限はなく、接着剤層10の厚みや接着シート1の用途によって適宜選択される。
【0043】
本発明の接着シート1は、例えば、下記のようにして作製することができる。まず、上述の接着剤組成物を構成する各成分を溶剤中で混合、混練してワニスを調製し、このワニスの層を基材フィルム20上に形成させ、加熱により乾燥することにより接着シート1を得ることができる。また、ワニス層の乾燥後に基材フィルム20を除去して、接着剤層10のみから構成される接着シートとしてもよい。
【0044】
上記ワニスの調製に用いる溶剤としては、特に限定されないが、フィルム作製時の揮発性等を考慮すると、メタノール、エタノール、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、2−エトキシエタノール、トルエン、キシレン等の比較的低沸点の溶媒を使用するのが好ましい。また、塗膜性を向上させるために、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、シクロヘキサノン等の比較的高沸点の溶媒を加えることもできる。
【0045】
上記の混合、混練は、通常の撹拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル、ビーズミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。無機フィラーを添加した際のワニスの製造には、無機フィラーの分散性を考慮して、らいかい機、三本ロール、ボールミル又はビーズミルを使用するのが好ましい。また、無機フィラーと低分子量成分を予め混合した後、高分子量成分を配合することによって、混合する時間を短縮することもできる。さらに、ワニスとした後、真空脱気等によってワニス中の気泡を除去することもできる。
【0046】
調製したワニスを基材フィルム20上に塗工して、加熱乾燥して接着剤層10を形成することにより接着シートが得られる。支持体へのワニスの塗布方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法等が挙げられる。加熱乾燥の条件は、使用した溶剤が充分に揮散する条件であれば特に制限はないが、通常50〜200℃で、0.1〜90分間加熱して行う。
【0047】
接着剤層10の厚みは、特に限定されるものではないが、5〜40μmが好ましい。この範囲にあると、配線基板の凹凸埋込み性を十分に発揮できるともに、経済的である。また、接着剤層10は、所望の厚さを得るために2枚以上を貼り合わせることもできる。
【0048】
本発明の接着シートは、それ自体で用いても構わないが、本発明の接着シートにおける接着剤層を従来公知のダイシングテープ上に積層したダイシングテープ一体型接着フィルムとして用いることもできる。ダイシングテープ上に接着剤層を積層する方法としては、印刷のほか、予め作製した接着シートをダイシングテープ上にプレス、ホットロールラミネート方法が挙げられるが、連続的に製造でき、効率が良い点でホットロールラミネート方法が好ましい。なお、ダイシングテープの膜厚は、特に制限はなく、接着剤層の膜厚やダイシングテープ一体型接着フィルムの用途によって適宜、当業者の知識に基づいて定められるものである。経済性及びフィルムの取扱い性の観点から、ダイシングテープの膜厚は、好ましくは60〜200μmであり、より好ましくは70〜170μmである。
【0049】
本発明の接着シートは、ダイボンディング工程及びワイヤボンディング工程で発生する熱による硬化の影響を受け難く、封止工程での半導体素子又は配線基板の凹凸部の埋込み性が良好である。したがって、本発明の接着シートを使用することにより、接続信頼性に十分に優れる半導体装置を製造することができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
表1に示す配合割合(質量部)で各成分を配合して、接着剤組成物を調製した。まず、エポキシ樹脂として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成(株)製、商品名:YDCN−700−10、エポキシ当量:210)50.0質量部、エポキシ樹脂硬化剤として、式(1)で表される構造を有するフェノール樹脂(エア・ウォーター(株)製、商品名:HE910−20、CAS番号:304859−44−7)24.0質量部、シランカップリング剤として、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名:A−189)2.0質量部及び3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン(モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名:A−1160)6.0質量部、無機フィラーとして、真球状シリカ(株式会社アドマテックス製、商品名:アドマナノ、平均粒径:約0.050μm)37.0質量部及びシクロヘキサノン1900質量部を攪拌混合した。ここに、エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体として、アクリルゴム(ナガセケムテック(株)製、商品名:HTR−860P−3、Mw:80万、Tg:15℃、ブチルアクリレート/エチルアクリレート/アクリロニトリル/グリシジルメタクリレートの質量比:39.4/29.3/30.3/3)210.0質量部を加え、混合した後、真空脱気して接着剤組成物のワニスを得た。
【0052】
次いで、上記ワニスを、基材フィルムである厚さ38μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、90℃で5分間及び130℃で5分間加熱乾燥して、Bステージ状態の接着剤層(膜み20μm)が基材フィルム上に形成された接着シートを作製した。
【0053】
(実施例2)
アクリルゴムの配合量を270.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして接着シートを作製した。
【0054】
(実施例3)
アクリルゴムの配合量を410.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして接着シートを作製した。
【0055】
(比較例1)
エポキシ樹脂硬化剤を、式(1)で表される構造を有しないフェノール樹脂(三井化学株式会社製、商品名:XLC−LL)に変更した以外は、実施例1と同様にして接着シートを作製した。
【0056】
【表1】

【0057】
<溶融粘度の測定>
接着シートの接着剤層の溶融粘度は回転式粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製、商品名:ARES−RDA〕を用いて測定した。
【0058】
接着シートから基材フィルムを剥離した後、接着剤層を70℃で張り合わせて膜厚100〜300μmのフィルムとし、直径8mmの円形に打ち抜いた。作製した円形のフィルムを同じく直径8mmの治具2枚ではさみ、サンプルを作製し、治具:パラレルプレート、周波数:1Hz、歪み:5.0%、設定温度:150℃又は175℃、測定時間:60分の測定条件での溶融粘度を測定した。そして、150℃で測定終了時の溶融粘度をa、175℃で測定終了時の溶融粘度をbとした場合の比率(b/a)を算出した。結果を表2に示す。
【0059】
設定温度150℃は、ダイボンディング工程及びワイヤボンディング工程で加えられる加熱温度を想定している。150℃では、長時間経過しても溶融粘度の上昇が少ない、つまり、接着剤層の硬化速度が遅い方が好ましい。これは、半導体チップを多段に積層することでダイボンディング工程やワイヤボンディング工程の時間が長くなった場合でも、接着剤層の硬化が進行し難いことを意味する。
【0060】
一方、設定温度175℃は、封止工程及び半田ボール付けリフロー工程で加えられる加熱温度を想定している。175℃では、溶融粘度上昇が早い、つまり、接着剤層の硬化速度が早い方が好ましい。これは、封止工程及び半田ボール付けリフロー工程で接着剤層を硬化させることで、信頼性の向上が図れることを意味する。
【0061】
<埋込み性の評価>
接着シートの接着剤層面にダイシングシートを貼り付け、基材フィルムを剥離した後、もう一方の接着剤層面に100μm厚の半導体ウェハを熱板上でラミネートする。その後、ダイシング工程を経て半導体ウェハを個片化して、7.5mm×7.5mmの接着層付き半導体チップとした。
【0062】
上記接着層付き半導体チップを120℃、0.1MPa、1秒間の条件で、幅30μm深さ50μmの凹凸を有する基板(400μm厚シリコンウエハ)に貼り付けたサンプルを作製し、ホットプレート上で150℃、30分間熱処理した。その後、モールド用封止材(日立化成工業株式会社製、商品名:CEL−9700HF)を用いて175℃、6.9MPa、120秒間の条件で封止を行い、評価用パッケージを作製した。基板上面の凹凸(幅30μm、深さ50μm)への充填性を、断面観察及び超音波顕微鏡で観察を行い、凹凸部に空隙がないものを「A」、空隙のあるものを「B」とした。
【0063】
【表2】

【0064】
本発明の接着シートを用いた場合は、配線基板上の凹凸部の埋込み性に十分に優れることが確認できた。すなわち、本発明に係る接着剤層は、ダイボンディング工程やワイヤボンディング工程で加えられる加熱温度領域では硬化速度が遅く、多段に半導体チップを積層した場合でも、封止工程で配線基板上の充てん性に優れている。したがって、本発明の接着シートによれば、半導体装置の信頼性を向上すると共に、半導体装置の加工速度、歩留の向上をはかることが可能となる。
【符号の説明】
【0065】
1…接着シート、10…接着剤層、20…基材フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体とを含む接着剤組成物をシート状に形成した接着剤層を備える接着シートであって、
前記エポキシ樹脂硬化剤が、下記一般式(1)で表されるフェノール樹脂を含有する、接着シート。
【化1】


[式(1)中、nは1〜20の整数を示し、mは1〜20の整数を示す。]
【請求項2】
前記エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体は、エポキシ基を有するモノマーに由来する構造単位を0.5〜3.0質量%含有し、ガラス転移温度が−50〜30℃であり、重量平均分子量が10万〜300万である、請求項1記載の接着シート。
【請求項3】
前記エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体の質量に対する、前記エポキシ樹脂及び前記エポキシ樹脂硬化剤の合計量の比が、0.05〜0.40である、請求項1又は2記載の接着シート。
【請求項4】
前記接着剤組成物が、無機フィラーを更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の接着シート。

【図1】
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【公開番号】特開2012−246340(P2012−246340A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117017(P2011−117017)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】