説明

接着剤組成物、回路接続用接着剤組成物及びそれを用いた回路接続構造体、半導体装置

【課題】 被着体への転写性およびフレキシブル基板への仮固定が良好な特性バランスに優れた接着剤組成物、回路接続用接着剤組成物及びそれを用いた回路接続構造体、半導体装置を提供する。
【解決手段】 (1)ラジカル発生剤、(2)熱可塑性樹脂、(3)ラジカル重合性の2官能以上を有する重量平均分子量が3,000以上、30,000以下のウレタン(メタ)アクリレートを含む接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物に関し、さらには回路接続用接着剤組成物、それを用いた回路接続構造体および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体や液晶ディスプレイなどの分野で種々の電子部品を固定したり、回路接続を行うために各種の接着材料が使用されている。これらの用途では、ますます高密度化、高精細化が進み、接着剤にも高い接着力や信頼性が求められている。また、接着に使用する被着体は、プリント配線板やポリイミド等の耐熱性高分子等から構成される有機基板や銅、錫、ニッケル、アルミニウム等の金属及びITO、Si、SiO等の性質が異なる複数の基材間の接着剤として使用される。これら接着剤に対する要求は、接着性をはじめ、耐熱性、高温高湿状態における信頼性等多岐に渡る特性が要求されている。
特に、回路接続材料としては、液晶ディスプレイとTCP又はFPCとTCPとの接続、FPCとプリント配線板との接続には接着剤中に導電性粒子を分散させた異方導電性接着剤が使用されている。従来、前記半導体や液晶ディスプレイ用の接着剤としては、高接着性でかつ高信頼性を示すエポキシ樹脂を用いた熱硬化性樹脂が用いられてきた(例えば、特許文献1参照)中でも熱潜在性触媒を用いた一液型エポキシ樹脂系接着剤は、主剤と硬化剤との混合が不必要であり使用が簡便なことから、フィルム状・ペースト状・粉体状の形態で使用されている。実際の行程における硬化条件は170℃〜250℃の温度で1〜3時間硬化することにより、所望の接着力を得ていた。しかしながら、近年の半導体素子の高集積化、液晶素子の高精細化に伴い、素子間および配線間ピッチが狭小化し、硬化時の加熱によって、周辺部材に悪影響を及ぼすおそれが出てきた。また、電極幅および電極間隔が極めて狭く、さらに電極高さも低くなっている。このため、従来の回路接続用接着剤では、配線の位置ずれが生じるなどの問題点がある。さらに、低コスト化のためには工程時間の短縮が求められるため、より低温でかつ短時間で硬化し、接着することが求められている。
近年、低温および短時間化の方法として、アクリレート誘導体やメタアクリレート誘導体(以下(メタ)アクリレート誘導体と呼ぶ)等のラジカル重合性化合物とラジカル重合開始剤である過酸化物を併用したラジカル型接着剤が注目を集めている。ラジカル硬化は、反応活性種のラジカルが反応性に富むため、低温短時間化が可能である(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、ラジカル硬化を用いた接着剤は、硬化時の硬化収縮が大きいために、エポキシ樹脂を用いた場合と比較して、接着強度に劣る。特に無機材質や金属材質の基材に対する接着強度が低下する。接着強度の改良方法として、エーテル結合によって柔軟性及び可とう性を付与したウレタンアクリレート化合物をラジカル重合性化合物として使用する方法が提案されている(特許文献3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−113480公報
【特許文献2】特開2002−203427公報
【特許文献3】特許第3522634号公報
【特許文献4】特開2002−285128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記ウレタンアクリレート化合物を用いた場合、エーテル結合により、可とう性が向上しすぎて、硬化物の弾性率及びガラス転移温度の低下および耐水性、耐熱性、機械強度の低下による接着剤の物性が低下する。そのため85℃,85%RH等の高温多湿条件に放置する信頼性試験で、十分な性能(接着強度、接続抵抗等)が得られない。さらに、接着剤の粘着性が強すぎるためフィルム状にした場合、剥離性支持フィルムに背面転写するという問題が生じる場合があった。
【0005】
本発明は、ラジカル硬化系でありながら、金属及び無機材質で構成される基材への高い接着強度を示し、室温(20〜30℃)での貯蔵安定性および信頼性に優れ、かつ被着体への転写性およびフレキシブル基板等の接着剤組成物への仮固定が良好な特性バランスに優れた接着剤組成物、回路接続用接着剤組成物及びそれを用いた回路接続構造体、半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は[1](1)ラジカル発生剤、(2)熱可塑性樹脂、(3)分子内に2官能以上のラジカル重合性基を有し、かつ、重量平均分子量が3,000〜30,000のウレタン(メタ)アクリレートを含有する接着剤組成物に関する。
また、本発明は[2](3)のウレタン(メタ)アクリレートが、下記一般式(B)及び/または(C)の構造を含む上記[1]に記載の接着剤組成物に関する。
【0007】
【化1】

【0008】
【化2】


(一般式(C)中、Rは水素、Rはメチル基、または、Rはメチル基、Rは水素を示す。)
また、本発明は[3](3)のウレタン(メタ)アクリレートが、下記一般式(D),(E),(F)から選ばれる少なくとも一種を含む上記[1]または上記[2」に記載の接着剤組成物に関する。
【0009】
【化3】

【0010】
【化4】

【0011】
【化5】


(一般式(D)、(E)、(F)中、l,m,nは、それぞれ1〜60の整数を示す。)
また、本発明は[4](3)のウレタン(メタ)アクリレートが、一般式(A)で示される上記[1]ないし上記[3]のいずれかに記載の接着剤組成物に関する。
【0012】
【化6】


(ここで、一般式(A)中、Rは水素またはメチル基を、Rは炭素数1〜4の直鎖または分鎖状アルキル基を、Rは一般式(B)及び/または(C)を、Rは一般式(D),(E),(F)から選ばれる少なくとも一種を、kは1〜60の整数をそれぞれ示す。)
また、本発明は[5]フレキシブル基板に対する仮固定力が50〜150gf/cmである上記[1]ないし上記[4]のいずれかに記載の接着剤組成物に関する。
また、本発明は[6]ウレタン(メタ)アクリレートの25℃での粘度が、5.0Pa・s以上である上記[1]ないし上記[5]のいずれかに記載の接着剤組成物に関する。
また、本発明は[7]さらに、分子内に少なくとも1つ以上のリン酸基を有するビニル化合物を(2)熱可塑性樹脂50重量部に対して0.1〜15重量部含有する上記[1]ないし上記[6]のいずれかに記載の接着剤組成物に関する。
また、本発明は[8]さらに、(2)熱可塑性樹脂100重量部に対して、導電粒子0.5〜30重量部を含有する上記[1]ないし上記[7]のいずれかに記載の接着剤組成物に関する。
また、本発明は[9]相対向する回路電極を有する基板間に接着剤を介在させ、相対向する回路電極を有する基板を加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続する接着剤であって、前記接着剤は上記[1]ないし上記[8]のいずれかに記載の接着剤組成物である回路接続用接着剤組成物に関する。
また、本発明は[10]上記[9]に記載の回路接続用接着剤組成物を用いて接続された回路接続構造体に関する。
また、本発明は[11]半導体素子の電極と半導体搭載用基板の回路電極間に上記[1]ないし上記[8]のいずれかに記載の接着剤組成物を介在させ、加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続した半導体装置に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、ラジカル硬化系でありながら、金属及び無機材質で構成される基材への高い接着強度を示し、室温(20〜30℃)での貯蔵安定性および接続信頼性に優れ、かつ被着体への転写性に支障なく使用でき特性バランスに優れた接着剤組成物、回路接続用接着剤組成物及びそれを用いた回路接続構造体、半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、(1)ラジカル発生剤、(2)熱可塑性樹脂、(3)分子内に2官能以上のラジカル重合性基を有し、かつ、重量平均分子量が3,000以上、30,000以下のウレタン(メタ)アクリレートを含有する接着剤組成物である。
本発明において用いる(1)ラジカル発生剤としては、熱または光によってラジカルを発生する化合物であれば特に制限はなく、過酸化物、アゾ化合物などがあり、目的とする接続温度、接続時間、保存安定性等を考慮し適宜選択することができる。高反応性と保存安定性の点から、半減期10時間の温度が、40℃以上、かつ、半減期1分の温度が180℃以下の有機過酸化物が好ましく、半減期10時間の温度が、50℃以上かつ、半減期1分の温度が170℃以下の有機過酸化物が特に好ましい。接続時間を10秒とした場合、十分な反応率を得るための硬化剤の配合量は、1〜20重量%が好ましく、2〜15重量%が特に好ましい。
本発明で使用される有機過酸化物の具体的な化合物としては、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネト、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイドなどから選定できるが、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイドは、開始剤中の塩素イオンや有機酸が5000ppm以下であり、加熱分解後に発生する有機酸が少なく、回路部材の接続端子の腐食を抑えることができるため特に好ましい。
【0015】
ジアシルパーオキサイド類としては、イソブチルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0016】
パーオキシジカーボネート類としては、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等が挙げられる。
【0017】
パーオキシエステル類としては、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシノエデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、ジブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート等を挙げることができる。
【0018】
パーオキシケタール類では、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)デカン等が挙げられる。
【0019】
ジアルキルパーオキサイド類では、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。
【0020】
ハイドロパーオキサイド類では、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0021】
シリルパーオキサイド類としては、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジメチルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリビニルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジビニルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)ビニルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリアリルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジアリルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)アリルシリルパーオキサイド等が挙げられる。
【0022】
また、回路部材の接続端子の腐食を抑えるために、硬化剤中に含有される塩素イオンや有機酸は5,000ppm以下であることが好ましく、さらに、加熱分解後に発生する有機酸が少ないものがより好ましい。また、作製した回路接続材料の安定性が向上することから室温、常圧下で24時間の開放放置後に20重量%以上の重量保持率を有することが好ましい。これらは適宜混合して用いることができる。
これらの遊離ラジカル発生剤は単独又は混合して使用することができ、分解促進剤、抑制剤等を混合して用いても良い。
また、これらのラジカル発生剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したものは、可使時間が延長されるために好ましい。
【0023】
本発明で用いる(2)熱可塑性樹脂としては、特に制限無く公知のものを使用することができる。このような樹脂としては、ポリイミド、ポリアミド、フェノキシ樹脂類、ポリ(メタ)アクリレート類、ポリイミド類、ポリウレタン類、ポリエステル類、ポリビニルブチラール類などを用いることができる。これらは単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。さらに、これら樹脂中にはシロキサン結合やフッ素置換基が含まれていても良い。これらは、混合する樹脂同士が完全に相溶するか、もしくはミクロ相分離が生じて白濁する状態であれば好適に用いることができる。上記樹脂の分子量は大きいほどフィルム形成性が容易に得られ、また接着剤としての流動性に影響する溶融粘度を広範囲に設定できる。分子量は特に制限を受けるものではないが、一般的な重量平均分子量としては5,000〜150,000が好ましく、10,000〜80,000が特に好ましい。この値が、5,000未満ではフィルム形成性が劣る傾向があり、また150,000を超えると他の成分との相溶性が悪くなる傾向がある。
【0024】
本発明において、(3)分子内に2官能以上のラジカル重合性基を有し、かつ、重量平均分子量が3,000以上、30,000以下のウレタン(メタ)アクリレートは、分子中に少なくとも2個以上のウレタン結合を有し、分子中に少なくとも1個以上の(メタ)アクリレート誘導体を有する化合物であれば、特に制限なく公知のものを使用することができる。ここで、ウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタンメタアクリレートとウレタンアクリレートを意味する。前記(3)ラジカル重合性の2官能以上の重合性基を有するウレタン(メタ)アクリレートは、市販のポリスチレン標準を使用して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定によって重量平均分子量を測定することができる。本発明において使用するラジカル重合性の2官能以上を有するウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、耐熱性、流動性、接着性の観点から、重量平均分子量3,000以上、30,000以下であり、重量平均分子量5,000以上、15,000以下が好ましい。これらの重量平均分子量で、適度な接着力および粘着力が得られ、TCP、COF及びFPCに対して、高い仮固定力および被着体への良好な転写性が得られる。重量平均分子量3000未満では架橋密度が上昇し、硬化収縮による接着力強度の低下が問題になる。また、粘着性が強くなり、接着剤組成物をフィルムとし、このフィルム数10m以上をリールに巻いたテープ状製品とし、長時間室温に放置した場合、接着剤組成物層が剥離性支持フィルムに背面転写し、所望のテープ状製品をリールから引き出せないという問題が発生しやすくなる。さらに、フレキシブル基板に接着剤組成物を貼り付けた後、取り外すことが困難になり、リペア性が悪化するという問題も発生しやすくなる。一方、重量平均分子量が30,000を超えて大きいと、架橋密度が低下して、接続信頼性が低下する問題が生じる。さらに、粘着性が弱くなりすぎ、回路基板への転写ができないという問題が発生し、さらに、フレキシブル基板が接着剤組成物から、容易に脱落してしまうおそれがある。
【0025】
本発明で使用する(3)のウレタン(メタ)アクリレートは、下記一般式(B)及び/または(C)の構造を含むと好ましい。
【0026】
【化7】

【0027】
【化8】


(一般式(C)中、Rは水素、Rはメチル基、または、Rはメチル基、Rは水素を示す。)
接着性、リペア性の観点から、一般式(B)、一般式(C)より選ばれる1つ以上の構造を有するものが好ましく、さらに一般式(B)、一般式(C)を任意の割合で併用して良い。また、一般式(C)の異性体はそれぞれ単独または混合物でも良い。
【0028】
前記のウレタン(メタ)アクリレートに非対称または枝分かれした分子鎖を導入することで適度な硬化物の可とう性、接着性、粘着性を付与することができ、異種材料間の接続に対して、高い信頼性が得られる。
【0029】
また、前記(3)のウレタン(メタ)アクリレートは、流動性、接着性、粘着性の観点から、一般式(D)、一般式(E)、一般式(F)からなる群より選ばれる1つ以上の構造を有することが好ましく、さらに一般式(D)、一般式(E)、一般式(F)を任意の割合で併用して良い。
【0030】
【化9】

【0031】
【化10】

【0032】
【化11】


(一般式(D)、(E)、(F)中、l,m,nは、それぞれ1〜60の整数を示す。)
【0033】
前記のウレタン(メタ)アクリレートの末端ではなく鎖中に適度なエーテル基の距離を有しつつ、枝分かれした分子鎖を導入することで適度な硬化物の可とう性、接着性、粘着性を付与することができ、異種材料間の接続に対して、高い信頼性が得られる。
【0034】
さらに、前記(3)ラジカル重合性の2官能以上を有するウレタン(メタ)アクリレートが一般式(A)で示される構造であることが好ましい。
例えば、ジオール類とジイソシアネート化合物とアルコール性水酸基を有する(メタ)アクリレートとを反応して得られる化合物や、ジイソシアネート化合物とアルコール性水酸基を有する(メタ)アクリレートとを反応して得られる化合物が挙げられる。
【0035】
【化12】


(ここで、一般式(A)中、Rは水素またはメチル基を、Rは炭素数1〜4の直鎖または分鎖状アルキル基を、Rは一般式(B)及び/または(C)、Rは一般式(D),(E),(F)から選ばれる少なくとも一種を、kは1〜60の整数をそれぞれ示す。)
具体的には、ジイソシアネート化合物として、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、1,3−ジイソシアネートベンゼン、1,4−ジイソシアネートベンゼン、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジイソシアン酸−トランス−1,4‐シクロヘキサン、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等のジイソシアネート等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。特に、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートを用いることが望ましい。
【0036】
ジオール類としては、エーテルジオール、エステルジオール、カーボネートジオールやこれらを出発原料とした縮合物または共重合体等を用いることができる。
エーテルジオールとしては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-エチルブタン‐1、4-ジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,9-デカンジオール、1,9−ノナンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール‐1,4-ジメチロール、2,2-ジエチルプロパン‐1,3-ジオール、2,2-ジメチルプロパン‐1,3-ジオール、3-メチルペンタン‐1,4-ジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2-ジエチルブタン‐1,3-ジオール、4,5-ノナンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、2,2-ジメチル‐3-ヒドロキシプロピル‐2,2-ジメチル‐3-ヒドロキシプロピオネート、および2-ブテン‐1,4-ジオールなどの直鎖または分岐状アルキレングリコールまたはジオール類、ビスフェノールA、ハイドロキノン及びそれらのアルキレンオキシド付加体等の多価アルコール類や、これらを出発原料とした縮合物または共重合体等のポリオール類を用いることができる。
【0037】
エステルジオールとしては、1種または2種以上のジカルボン酸とジオール類を常法によって縮重合したものであり、ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びそれらの無水物あるいはエステル形成性誘導体、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸等の芳香族ヒドロメキシカルボン酸及びそれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。また、脂肪(環)族ジカルボン酸としてはコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、無水マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸およびそれらの無水あるいは、エステル形成性誘導体が挙げられる。
【0038】
カーボネートジオールとしてはジアルキルカーボネート、ジアルキレンカーボネート、ジフェニルカーボネートなどを挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせたポリカーボネートジオールも使用することができる。
【0039】
前記一般式(A)で示される構造のウレタン(メタ)アクリレートの繰り返し単位数kは1〜60の整数であるが、1以上、50以下が好ましく、5以上、30以下がより好ましい。kが60を超えた場合、架橋密度が低下して、接続信頼性が低下する傾向がある。
【0040】
また、前記ウレタン(メタ)アクリレートの一般式(A)で示されるRは、接着性、リペア性の観点から、一般式(B)、一般式(C)からなる群より選ばれる1つ以上の構造を有するものが好ましく、さらに一般式(B)、一般式(C)を任意の割合で併用して良い。また、一般式(C)の異性体はそれぞれ単独または混合物でも良い。
【0041】
前記ウレタン(メタ)アクリレートのRに非対称または枝分かれした分子鎖を導入することで適度な硬化物の可とう性、接着性、粘着性を付与することができ、異種材料間の接続に対して、高い信頼性が得られる。
【0042】
また、前記ウレタン(メタ)アクリレートの一般式(A)で示されるRは流動性、接着性、粘着性の観点から、一般式(D)、一般式(E)、一般式(F)からなる群より選ばれる1つ以上の構造を有することが好ましく、さらに一般式(D)、一般式(E)、一般式(F)を任意の割合で併用して良い。
【0043】
前記一般式(A)で示されるウレタン(メタ)アクリレートのRに末端ではなく鎖中に適度なエーテル基の距離を有しつつ、枝分かれした分子鎖を導入することで適度な硬化物の可とう性、接着性、粘着性を付与することができ、異種材料間の接続に対して、高い信頼性が得られる。
【0044】
また、前記(3)ラジカル重合性の2官能以上を有するウレタン(メタ)アクリレートの25℃における粘度が5.0Pa・s以上であることが好ましく、特に制限なく公知のものを使用することができる。5.0Pa・s未満の場合、接着剤組成物全体の粘度が低下し作業性およびリペア性が悪化する問題が生じる。
【0045】
本発明の接着剤組成物を用いてフレキシブル基板に仮固定した場合、仮固定力が50gf/cm以上、150gf/cm以下が好ましい。150gf/cmを超えた場合、粘着性が強くなり、接着剤組成物が剥離性支持フィルムに背面転写する問題が発生しやすくなる。さらに、フレキシブル基板を接着剤組成物に貼り付けた後、取り外すことが困難になり、リペア性が悪化するという問題も発生しやすくなる。一方、50gf/cm未満では、粘着性が弱くなりすぎ、回路基板への転写ができないという問題が発生し、また、フレキシブル基板が接着剤組成物から、容易に脱落してしまう問題が生じる。
【0046】
本発明の接着材組成物では、分子内に少なくとも1つ以上のリン酸基を有するビニル化合物を用いることが好ましい。分子内に少なくとも1つ以上のリン酸基を有するビニル化合物は、特に制限なく公知のものを使用することができるが、(メタ)アクリレート誘導体を有する化合物が好ましい。
具体的には、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシエチルアクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、アシッドホスホキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレート、2,2'−ジ(メタ)アクリロイロキシジエチルホスフェート、EO(エチレンオキサイド)変性リン酸ジメタクリレート等が挙げられる。
【0047】
分子内に少なくとも1つ以上のリン酸基を有するビニル化合物の添加量は、(2)熱可塑性樹脂50重量部に対して0.1〜15重量部であり、好ましくは、0.5〜10重量部である。添加量が、0.1重量部未満の場合、高い接着強度を得ることが困難になる。また、15重量部以上の場合は、硬化後の接着強度における物性の低下が著しく、接続信頼性が低下する問題が生じる。
【0048】
本発明の接着剤組成物、回路接続用接着剤組成物には、適宜、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃剤、カップリング剤を添加しても良い。
また、本発明の回路接続用接着剤組成物を硬化物としたときのTg(ガラス転移温度)が5℃以上異なる2種類以上の層からなる多層構成としても良い。
本発明の回路接続用接着剤組成物を使用して接着する回路電極を有する基板としては、電気的接続を必要とする電極が形成されているものであれば特に制限はないが、液晶ディスプレイに用いられているITO等で電極が形成されているガラスまたはプラスチック基板、プリント配線板、セラミック配線板、フレキシブル配線板、半導体シリコンチップなどが有り、必要に応じて組み合わせて使用される。
接続する場合の条件としては特に制限はないが、接続温度50〜250℃、好ましくは50〜190℃、接続時間1秒〜10分、好ましくは1〜10秒であり、圧力は、被着体に損傷を与えない範囲であれば、特に制限は受けないが、一般的には0.1〜10MPaが好ましい。使用する用途、接着剤、基板によって適宜選択され、必要に応じて、後硬化を行っても良い。また、接続時は加熱加圧により行われるが、必要に応じて熱以外のエネルギーたとえば光、超音波、電磁波等を使用しても良い。
【0049】
本発明で使用する導電粒子は、電気的接続を得ることができる導電性を有していればとくに制限はないが、Au、Ag、Ni、Cu、Co、はんだなどの金属粒子やカーボンなどがある。また、非導電性のガラス、セラミックス、プラスチックなどを前記金属の導電物質で被覆したものも使用できる。このとき、被覆する金属層の厚さは十分な導電性を得るためには100Å以上が好ましい。この導電粒子の平均粒径は、分散性、導電性の点から1〜18μmであることが好ましい。導電粒子は、接着剤成分に対して、0.1〜30体積%の範囲で使用し、好ましくは0.1〜20体積%の範囲で使用することができる。この値が、0.1体積%未満であると導電性が劣る傾向があり、30体積%を超えると回路の短絡が起こる傾向がある。なお、(2)熱可塑性樹脂100重量部に対して、導電粒子0.5〜30重量部を含有するように配合することが好ましい。
【0050】
本発明の接着剤組成物には、アルコキシシラン誘導体やシラザン誘導体に代表されるカップリング剤及び密着向上剤、レベリング剤などの接着助剤を適宜添加してもよい。具体的には、下記一般式で示される化合物が好ましい。
【0051】
【化13】


(ここでR、R、Rは独立に、水素、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基、アリール基、R10は水素、メチル基、oは1〜10の整数を示す。)
【0052】
特に、上記の一般式において、Rが炭素数1〜5のアルキル基またはアリール基、R及びRが炭素数2〜3のアルコキシ基、oが2〜4である化合物が、高接着性及び電気的信頼性の観点からより好ましい。
これらの化合物は単独で用いる他に、2種以上の化合物を混合して用いても良い。
【0053】
本発明の接着剤組成物は、橋架け率の向上を目的として、前記(3)分子内に2官能以上のラジカル重合性基を有し、かつ、重量平均分子量が3,000以上、30,000以下のウレタン(メタ)アクリレートの他に、アリル基、マレイミド基、ビニル基等の活性ラジカルによって重合する官能基を有する化合物を適宜添加してもよい。具体的には、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルピリジン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルカプロラクタム、4,4’−ビニリデンビス(N,N−ジメチルアニリン)、N-ビニルアセトアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドアクリルアミド等が挙げられる。
【0054】
本発明の接着剤組成物は、流動性向上を目的に、単官能(メタ)アクリレート類を併用しても良い。具体的には、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリンが挙げられる。
【0055】
本発明の接着剤組成物は、応力緩和及び接着性向上を目的に、ゴム成分を併用しても良い。具体的には、ポリイソプレン、ポリブタジエン、カルボキシル基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、カルボキシル基末端1,2−ポリブタジエン、水酸基末端1,2−ポリブタジエン、アクリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、水酸基末端スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基またはモルホリン基をポリマ末端に含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、水酸基末端ポリ(オキシプロピレン)、アルコキシシリル基末端ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオレフィングリコール、ポリ−ε−カプロラクトンが挙げられる。
上記ゴム成分としては、接着性向上の観点から、高極性基であるシアノ基、カルボキシル基を側鎖あるいは末端に含むゴム成分が好ましく、さらに流動性向上の観点から、液状ゴムがより好ましい。具体的には、液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基またはモルホリン基をポリマ末端に含有する液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム、液状カルボキシル化ニトリルゴムが挙げられ、極性基であるアクリロニトリル含有量が10〜60重量%が好ましい。
これらの化合物は単独で用いる他に、2種以上の化合物を混合して用いても良い。
【0056】
本発明の接着剤組成物には、貯蔵安定性付与を目的に、t−ブチルピロカテコール、t−ブチルフェノール、p−メトキシフェノール等に代表される重合禁止剤などの添加剤を適宜添加してもよい。
【0057】
本発明の接着剤組成物は、常温で液状である場合にはペースト状で使用することができる。室温で固体の場合には、加熱して使用する他、溶剤を使用してペースト化してもよい。使用できる溶剤としては、接着剤組成物及び添加剤と反応性がなく、かつ十分な溶解性を示すものであれば、特に制限は受けないが、常圧での沸点が50〜150℃であるものが好ましい。沸点が50℃未満の場合、室温で放置すると揮発する恐れがあり、開放系での使用が制限される。また、沸点が150℃を超える場合、溶剤を揮発させることが難しく、接着後の信頼性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0058】
本発明の接着剤組成物はフィルム状にして用いることもできる。接着剤組成物に必要により溶剤等を加えるなどした溶液を、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、離形紙等の剥離性基材上に塗布し、あるいは不織布等の基材に前記溶液を含浸させて剥離性基材上に載置し、溶剤等を除去してフィルムとして使用することができる。フィルムの形状で使用すると取扱性等の点から一層便利である。
【0059】
本発明の接着剤組成物は、熱膨張係数の異なる異種の被着体の接着剤として使用することができる。具体的には、異方導電接着剤、銀ペースト、銀フィルム等に代表される回路接続材料、CSP用エラストマー、CSP用アンダーフィル材、LOCテープ等に代表される半導体素子接着材料として使用することができる。
【0060】
以下に、本発明の接着剤組成物及び導電粒子を使用して作製した異方導電フィルムと電極の接続の一例について説明する。異方導電フィルムを、基板上の相対時する電極間に存在させ、加熱加圧することにより両電極の接触と基板間の接着を得、電極との接続を行える。電極を形成する基板としては、半導体、ガラス、セラミック等の無機質、ポリイミド、ポリカーボネート等の有機物、ガラス/エポキシ等のこれら複合の各組み合わせが適用できる。
【実施例】
【0061】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0062】
(分子量の測定)
一般式(A)の構造を有するウレタン(メタ)アクリレートの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー株式会社製、8020シリーズ)を用いて、表1に示す条件で測定した。
【0063】
【表1】

【0064】
(ウレタンアクリレートのUA−A合成)
攪拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を備えた反応容器に空気ガスを導入した後、2−ヒドロキシエチルアクリレート238重量部(2.05モル)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール(和光純薬工業株式会社製)118重量部(1モル)、重量平均分子量850のポリテトラメチレンエーテルグリコール(保土谷化学工業株式会社製、商品名PTG850)850重量部(1モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.18重量部、ジブチルスズジラウレート1.81重量部を仕込み、70〜75℃に加熱し、2,4,4,−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート630重量部(3モル)を3時間で均一に滴下し、反応させた。滴下完了後約15時間反応を継続し、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、重量平均分子量4,200のウレタンアクリレート(UA-A)を得た(イソシアネート(C)+ジオール(D)+ジオール(F))。
【0065】
(ウレタンアクリレート(UA-B)の合成)
攪拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を備えた反応容器に空気ガスを導入した後、2−ヒドロキシエチルアクリレート238重量部(2.05モル)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール(和光純薬工業株式会社製)118重量部(1モル)重量平均分子量2,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(保土谷化学工業株式会社製、商品名PTG2000)2,000重量部(1モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.53重量部、ジブチルスズジラウレート5.53重量部を仕込み、80〜90℃に加熱し、トリメチル−1,6−ジイソシアナートヘキサン630重量部(3モル)を3時間で均一に滴下し、反応させた。滴下完了後約15時間反応を継続し、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、重量平均分子量9,800のウレタンアクリレート(UA-B)を得た(イソシアネート(C)+ジオール(D)+ジオール(F))。
【0066】
(ウレタンアクリレート(UA-C)の合成)
攪拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を備えた反応容器に空気ガスを導入した後、2−ヒドロキシエチルアクリレート238重量部(2.05モル)、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(和光純薬工業株式会社製)118重量部(1モル)、重量平均分子量2,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(保土谷化学工業株式会社製、商品名PTG2000)2,000重量部(1モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.53重量部、ジブチルスズジラウレート5.53重量部を仕込み、70〜75℃に加熱し、2,4,4,−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート630重量部(3モル)を3時間で均一に滴下し、反応させた。滴下完了後約15時間反応を継続し、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、重量平均分子量9,200のウレタンアクリレート(UA-C)を得た(イソシアネート(C)+ジオール(E)+ジオール(F))。
【0067】
(ウレタンアクリレート(UA-D)の合成)
攪拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を備えた反応容器に空気ガスを導入した後、2−ヒドロキシエチルアクリレート238重量部(2.05モル)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール(和光純薬工業株式会社製)118重量部(1モル)、重量平均分子量2,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(保土谷化学工業株式会社製、商品名PTG2000)2,000重量部(1モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.64重量部、ジブチルスズジラウレート6.35重量部を仕込み、80〜90℃に加熱し、イソホロンジイソシアネート444重量部(3モル)を3時間で均一に滴下し、反応させた。滴下完了後約15時間反応を継続し、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、重量平均分子量11,500のウレタンアクリレート(UA-D)を得た(イソシアネート(B)+ジオール(D)+ジオール(F))。
【0068】
(ウレタンアクリレートのUA−E合成)
攪拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を備えた反応容器に空気ガスを導入した後、2−ヒドロキシエチルアクリレート238重量部(2.05モル)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール(和光純薬工業株式会社製)118重量部(1モル)、重量平均分子量850のポリテトラメチレンエーテルグリコール(保土谷化学工業社製、商品名PTG850)850重量部(1モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.18重量部、ジブチルスズジラウレート1.81重量部を仕込み、60〜65℃に加熱し、2,4,4,−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート630重量部(3モル)を3時間で均一に滴下し、反応させた。滴下完了後約8時間反応を継続し、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、重量平均分子量2,800のウレタンアクリレート(UA-E)を得た(イソシアネート(C)+ジオール(D)+ジオール(F))。
【0069】
(ウレタンアクリレートのUA−F合成)
攪拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を備えた反応容器に空気ガスを導入した後、2−ヒドロキシエチルアクリレート238重量部(2.05モル)、重量平均分子量2,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(保土谷化学工業株式会社製、商品名PTG2000)4,000重量部(2モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.64重量部、ジブチルスズジラウレート6.35重量部を仕込み、90〜100℃に加熱し、イソホロンジイソシアネート444重量部(3モル)を3時間で均一に滴下し、反応させた。滴下完了後約18時間反応を継続し、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、重量平均分子量32,000のウレタンアクリレート(UA-F)を得た(イソシアネート(B)+ジオール(D))。
【0070】
(実施例1〜4)
(2)熱可塑性樹脂として、フェノキシ樹脂(PKHC、ユニオンカーバイト社製商品名、平均分子量45,000)40gを、メチルエチルケトン60gに溶解して、固形分40重量%の溶液とした。ラジカル重合性化合物として、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート(M−215、東亜合成株式会社製商品名)、及び2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート(ライトエステルP-2M、共栄社化学株式会社製商品名)、(3)ラジカル重合性の2官能以上を有する一般式(A)の構造を有するウレタンアクリレートとして前記で合成したMw(重量平均分子量)=4,200(UA−A)、9,800(UA−B)、9,200(UA−C)、11,500(UA−D)、(1)ラジカル発生剤(ラジカル重合開始剤)としてt−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネートの50重量%DOP(ジオクチルフタレート)溶液(日本油脂株式会社製、商品名パーキュアHO)を用いた。また、ポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.20μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に、厚み0.02μmの金層を設けた平均粒径4μm、比重2.5の導電粒子を作製して用いた。
固形重量比で表2に示した配合で、さらに接着剤成分に対し導電粒子を1.5体積%配合分散させ、厚み80μmのフッ素樹脂フィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃、10分の熱風乾燥によって接着剤層の厚みが15μmのフィルム状接着剤を作製した。
【0071】
(比較例1〜2)
ラジカル重合性の2官能以上を有する一般式(A)の構造を有するウレタンアクリレートの分子量Mw=2,800(UA−E)、32,000(UA−F)を用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルム状接着剤を作製した。
【0072】
【表2】

【0073】
(接続抵抗の測定)
上記のようにして得たフィルム状接着剤を用いて、ライン幅25μm、ピッチ50μm、厚み18μmの銅回路を500本有するフレキシブル回路板(FPC)と、厚み0.20μmの酸化インジウムスズ(ITO)の薄層を形成したガラス(厚み1.1mm、表面抵抗20Ω/□)との接続を行った。予めITOの薄層を形成したガラス上に、フィルム状接着剤の剥離性PETフィルム反対面をITOの薄層を形成したガラス面に剥離性フッ素樹脂フィルム側から70℃、1MPaで3秒間加熱加圧してITOの薄層を形成したガラス面にフィルム状接着剤を仮接続した。その後、剥離性フッ素樹脂フィルムを接着フィルム界面から剥離して、ITOの薄層を形成したガラス上へフィルム状接着剤の転写を行った。その後、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング株式会社製)を用いて、175℃、3MPaで15秒間の加熱加圧を行って幅2mmにわたり接続し、回路接続構造体を作製した。この回路接続構造体の隣接回路間の抵抗値を、接着直後と、85℃、85%RHの高温高湿槽中に120時間保持した後にマルチメータで測定した。抵抗値は隣接回路間の抵抗150点の平均(x+3σ;xは平均値、σは標準偏差)で示した。
【0074】
(接着強度の測定)
JIS−Z0237に準じて90度剥離法で測定し、評価した。ここで、接着強度の測定装置は東洋ボールドウィン株式会社製テンシロンUTM−4(剥離速度50mm/min、25℃)を使用した。
【0075】
(仮固定力の評価)
フレキシブル基板に対する仮固定力は、PWB(プリント配線基板)あるいはガラス基板に接続材料を80℃、1MPa、3秒で仮圧着し、剥離性フッ素樹脂フィルムを剥離後、フレキシブル基板を23℃、0.5MPa、5秒で圧着する。引張り方向90°にて、引張り速度50mm/minでフレキシブル基板と接続材料の仮固定力を測定温度23±3℃で測定した。基材の仕様は以下の通りである。
フレキシブル基板;75μmポリイミドフィルム、1/2Oz(オンス)
銅箔錫メッキ、ピッチ0.2mm、電極幅/電極スペース=1/1
ガラス基板;15〜20Ω/□、スパッタ 全面電極、厚み1.1mm
以上のようにして行った回路接続構造体の接着強度、接続抵抗の測定の結果をまとめて表3に示した。
【0076】
【表3】

【0077】
本発明では、回路接続用接着剤の仮固定力は、50gf/cm〜150gf/cmの範囲内にあることが好ましい。仮固定力が150gf/cmを超えると粘着性が強すぎ、フレキシブル基板を回路接続用接着剤に貼り付けた後、取り外すことが困難になり、リペア性が悪化するという問題が発生しやすくなる。一方、仮固定力が50gf/cm未満の場合、粘着性が弱すぎ、フレキシブル基板が回路接続用接着剤から、容易に脱落してしまう。また、ウレタンアクリレート樹脂の構造中にエーテル基を含まない場合、硬化物の可とう性、接着性が不足し、接続信頼性が大幅に低下する。
【0078】
(実施例5)
半導体チップ(3×10mm,高さ0.5mm,主面の4辺周囲にバンプとよばれる100μm角、高さ20μmの突起した金電極が存在)のバンプ配置と対応した接続端子を有する厚み1mmのガラスエポキシ基板(回路は銅箔で厚み18μm)から作製した半導体搭載用基板を用意した。半導体搭載用基板の回路表面には、ニッケル/金めっきを施した。半導体チップの突起電極と半導体搭載用基板とを上記実施例2のフィルム状接着剤を用いて次のようにして接続した。半導体搭載用基板の回路面にフィルム状接着材を80℃、1MPa、3秒で仮圧着し、剥離性フッ素樹脂フィルムを剥離後、半導体チップの突起電極と半導体搭載用基板との位置合せを行い、180℃、10kgf/チップの温度及び圧力により20秒間加熱圧着した。
これによって、フィルム状接着剤を介して半導体チップの突起電極と半導体搭載用基板の回路とを電気的に接続すると同時に半導体チップと半導体搭載用基板の電極はフィルム状接着剤の硬化によって、この接続状態を保持した。このようにして得た半導体チップと半導体搭載用基板を接続した半導体装置を(−55℃、30分)/(125℃、30分)の条件で繰り返す冷熱サイクル試験に曝した。この冷熱サイクル試験1,000回後の半導体チップの突起電極と基板回路の接続抵抗を測定したところ接続抵抗の上昇がなく、良好な接続信頼性を示した。
【0079】
本発明の(3)分子内に2官能以上のラジカル重合性基を有し、かつ、重量平均分子量が3,000以上、30,000以下のウレタン(メタ)アクリレートを含有した実施例1〜4では、接続抵抗が低く、高温高湿槽中に120時間保持後においても接続直後と変わらず良好である。接着強度もまた良好である。これに対し重量平均分子量が3,000未満、30,000を超えるウレタン(メタ)アクリレートを使用した比較例1、2では、接続抵抗の高温高湿槽中に120時間保持後において抵抗の増加が大きかったり、接続直後の抵抗が大きかったりする。また、仮固定力が50gf/cm未満であり粘着性が弱すぎ、フレキシブル基板が回路接続用接着剤から、容易に脱落してしまった。
本発明の(1)ラジカル発生剤、(2)熱可塑性樹脂、(3)分子内に2官能以上のラジカル重合性基を有し、かつ、重量平均分子量が3,000以上、30,000以下のウレタン(メタ)アクリレートを含有する接着剤組成物は、転写性およびフレキシブル基板等への仮固定が良好で、特性バランスに優れており、貯蔵安定性および接続信頼性に優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ラジカル発生剤、(2)熱可塑性樹脂、(3)分子内に2官能以上のラジカル重合性基を有し、かつ、重量平均分子量が3,000〜30,000のウレタン(メタ)アクリレートを含有する接着剤組成物。
【請求項2】
(3)のウレタン(メタ)アクリレートが、下記一般式(B)及び/または(C)の構造を含む請求項1に記載の接着剤組成物。
【化1】


【化2】


(一般式(C)中、Rは水素、Rはメチル基、または、Rはメチル基、Rは水素を示す。)
【請求項3】
(3)のウレタン(メタ)アクリレートが、下記一般式(D),(E),(F)から選ばれる少なくとも一種を含む請求項1または請求項2に記載の接着剤組成物。
【化3】


【化4】


【化5】


(一般式(D)、(E)、(F)中、l,m,nは、それぞれ1〜60の整数を示す。)
【請求項4】
(3)のウレタン(メタ)アクリレートが、一般式(A)で示される請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の接着剤組成物。
【化6】


(ここで、一般式(A)中、Rは水素またはメチル基を、Rは炭素数1〜4の直鎖または分鎖状アルキル基を、Rは一般式(B)及び/または(C)を、Rは一般式(D),(E),(F)から選ばれる少なくとも一種を、kは1〜60の整数をそれぞれ示す。)
【請求項5】
フレキシブル基板に対する仮固定力が50〜150gf/cmである請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項6】
ウレタン(メタ)アクリレートの25℃での粘度が、5.0Pa・s以上である請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項7】
さらに、分子内に少なくとも1つ以上のリン酸基を有するビニル化合物を(2)熱可塑性樹脂50重量部に対して0.1〜15重量部含有する請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項8】
さらに、(2)熱可塑性樹脂100重量部に対して、導電粒子0.5〜30重量部を含有する請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項9】
相対向する回路電極を有する基板間に接着剤を介在させ、相対向する回路電極を有する基板を加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続する接着剤であって、前記接着剤は請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の接着剤組成物である回路接続用接着剤組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の回路接続用接着剤組成物を用いて接続された回路接続構造体。
【請求項11】
半導体素子の電極と半導体搭載用基板の回路電極間に請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の接着剤組成物を介在させ、加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続した半導体装置。


【公開番号】特開2011−168786(P2011−168786A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63032(P2011−63032)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【分割の表示】特願2005−74913(P2005−74913)の分割
【原出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】