説明

接着剤組成物及び半導体装置

【課題】 作業性に優れた粘度を有し、接着性と熱伝導性に優れた接着剤組成物を提供する。
【解決手段】 本発明は、(1)フィラー(A)、溶剤(B)及びバインダ(C)を含む接着剤組成物であって、
前記接着剤組成物の回転数0.5rpmでの粘度が70Pa・s以上200Pa・s以下であり、前記接着剤組成物のチキソ値が4.0以上9.5以下であり、前記接着剤組成物の硬化物の熱伝導率が15W/m・K以上であり、前記接着剤組成物の硬化物の200℃における接着強度が8MPa以上であり、260℃における接着強度が5MPa以上であることを特徴とする接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着剤組成物及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造する際、半導体素子とリードフレーム(支持部材)とを接着させる方法として、エポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂などの樹脂に銀粉等の充てん剤を分散させてペースト状とし、これを接着剤として使用する方法が知られている。この方法では、ディスペンサーや印刷機、スタンピングマシン等を用いて、ペースト状の接着剤をリードフレームのダイパッドに塗布した後、半導体素子をダイボンディングし、加熱硬化により接着させて半導体装置を製造する。
【0003】
得られた半導体装置は更に、封止材によって外部が封止され半導体パッケージされた後、配線基盤上に半田付けされて実装される。最近の実装は、高密度及び高効率が要求されるため、半田実装は半導体装置のリードフレームを基板の表面に直接半田付けする表面実装法が主流となっている。この表面実装法では、基板全体を赤外線などで加熱するリフローソルダリングが用いられ、パッケージは200℃以上の高温に加熱される。この時、パッケージの内部、特に接着剤層中に水分が存在すると、この水分が気化してダイパッドと封止材の間に回り込み、パッケージにクラック(リフロークラック)が発生する。このリフロークラックは半導体装置の信頼性を著しく低下させるため、深刻な問題・技術課題となっており、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材との接着に多く用いられている接着剤には、高温時の接着力を始めとし信頼性が求められてきた。
【0004】
さらに、近年、半導体素子の高速化、高集積化が進むに伴い、従来から求められてきた接着力等の信頼性に加えて、半導体装置の動作安定性を確保するために高放熱特性が求められるようになった。即ち、前記課題を解決するためには、放熱部材と半導体素子を接合する接着剤に用いられる、高い接着力と高熱伝導性を兼ね備える接着剤組成物が求められていた。
【特許文献1】特開2006−73811号公報
【非特許文献1】日刊工業新聞社刊、粉体工学会編、粉体工学便覧、初版1刷、昭和61年2月号(第101〜107頁)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接着剤の熱伝導性を高めるためにフィラーの充てん率を高める方法があるが、これまでタップ密度の高いフィラーを用いた場合においても、単一のフィラーを使用すると十分にタップ密度が上がらない、またはフィラーの沈降が起こる、接着剤の粘度が高くなり作業性が低下するなど、高充てん化された接着剤組成物が製造できないという欠点があった。上記の非特許文献1に記載されている高充てん可能なフィラーの作製法は、球状の粒子を組み合わせて均一に混合する方法である。即ち、球状のフィラー粒子を規則的に配列させ、さらに小さな粒径の球状のフィラー粒子をその隙間に充填することで、理論的には80%以上の相対密度が得られると記載されている。
【0006】
また、上記の特許文献1に記載されているように、フィラーの含有量を高めたことにより接着剤の粘度が上昇し作業性が低下することを防ぐために、溶剤を多量に混合すると、硬化後の接着層中に溶剤が残存しボイドが発生しやすくなり、放熱特性や信頼性の低下につながっていた。
【0007】
本発明の課題は、作業性に優れた粘度を有し、接着性と熱伝導性に優れた接着剤組成物を提供することである。また、本発明の課題は、前記接着剤組成物を用いて半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを接着してなる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(1)フィラー(A)、溶剤(B)及びバインダ(C)を含む接着剤組成物であって、
前記接着剤組成物の回転数0.5rpmでの粘度が70Pa・s以上200Pa・s以下であり、前記接着剤組成物のチキソ値が4.0以上9.5以下であり、前記接着剤組成物の硬化物の熱伝導率が15W/m・K以上であり、前記接着剤組成物の硬化物の200℃における接着強度が8MPa以上であり、260℃における接着強度が5MPa以上であることを特徴とする接着剤組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、(2)前記(1)に記載の接着剤組成物を用いて半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを接着してなる半導体装置に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業性に優れた粘度を有し、接着性と熱伝導性に優れた接着剤組成物を提供することができる。また、本発明によれば、前記接着剤組成物を用いて半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを接着してなる半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の接着剤組成物は、フィラー(A)、溶剤(B)及びバインダ(C)を含む接着剤組成物であって、
前記接着剤組成物の回転数0.5rpmでの粘度が70Pa・s以上200Pa・s以下であり、前記接着剤組成物のチキソ値が4.0以上9.5以下であり、前記接着剤組成物の硬化物の熱伝導率が15W/m・K以上であり、前記接着剤組成物の硬化物の200℃における接着強度が8MPa以上であり、260℃における接着強度が5MPa以上であることを特徴とする。
【0012】
本発明の接着剤組成物は、回転数0.5rpmでの粘度が70Pa・s以上200Pa・s以下であり、好ましくは90Pa・s以上180Pa・s以下であり、より好ましくは90Pa・s以上150Pa・s以下である。前記粘度が70Pa・s未満であると塗布後の接着剤組成物が滲み、200Pa・sを超えると作業性が悪くなる。接着剤組成物の回転数0.5rpmでの粘度が70Pa・s以上となるようにするには、フィラーの配合量、フィラーのタップ密度、フィラーの粒径、フィラーの形状、溶剤の配合量、溶剤の粘度、バインダの配合量、バインダの粘度などによって調整すればよい。
【0013】
本発明の接着剤組成物は、チキソ値が4.0以上9.5以下であり、好ましくは5.0以上9.0以下であり、より好ましくは5.4以上8.7以下である。前記チキソ値が4.0未満であると塗布後の接着剤組成物が滲み、9.5を超えると滲みは発生しなくなるが作業性が悪くなると共に、塗布した接着剤組成物の表面の平滑性が悪くなる。接着剤組成物のチキソ値が4.0以上9.5以下となるようにするには、球状又は略球状のフィラーや扁平状のフィラーなど異なる形状のフィラーを適宜組み合わせたり、異なる粒径のフィラーを適宜組み合わせて調整すればよい。
【0014】
本発明の接着剤組成物は、その硬化物の熱伝導率が15W/m・K以上であり、好ましくは18W/m・K以上であり、より好ましくは20W/m・K以上である。前記熱伝導率が15W/m・K未満では半導体装置において十分な放熱性が得られない。接着剤組成物の硬化物の熱伝導率が15W/m・K以上となるようにするには、フィラーの配合量、フィラーのタップ密度、フィラーの粒径、フィラーの形状、溶剤の配合量、溶剤の沸点、溶剤の蒸発速度、バインダの配合量、バインダの種類、硬化剤の配合量、硬化剤の種類、硬化条件などによって調整すればよい。
【0015】
本発明の接着剤組成物は、その硬化物の200℃における接着強度が8MPa以上であり、好ましくは10MPa以上である。前記200℃における接着強度が8MPa未満では、半導体装置において十分な信頼性が得られない。接着剤組成物の硬化物の200℃における接着強度が8MPa以上となるようにするには、フィラーの配合量、フィラーのタップ密度、フィラーの粒径、フィラーの形状、溶剤の配合量、溶剤の沸点、溶剤の蒸発速度、バインダの配合量、バインダの種類、硬化剤の配合量、硬化剤の種類、硬化条件などによって調整すればよい。
【0016】
本発明の接着剤組成物は、その硬化物の260℃における接着強度が5MPa以上であり、好ましくは8MPa以上である。前記260℃における接着強度が5MPa未満では、半導体装置において十分な信頼性が得られない。接着剤組成物の硬化物の260℃における接着強度が5MPa以上となるようにするには、フィラーの配合量、フィラーのタップ密度、フィラーの粒径、フィラーの形状、溶剤の配合量、溶剤の沸点、溶剤の蒸発速度、バインダの配合量、バインダの種類、硬化剤の配合量、硬化剤の種類、硬化条件などによって調整すればよい。
【0017】
本発明の接着剤組成物は、上記の各特性を満たすものであり、それにより作業性に優れた粘度を有し、接着性と熱伝導性に優れる。
【0018】
本発明において接着剤組成物の粘度は、東京計器製造所製のEHD型回転粘度計を用い、25℃における回転数0.5rpmで測定を行い、0.5rpmでの値を用いて数式(1)から求めることが出来る。
【0019】
粘度(Pa・s)=0.5rpmでの値×f1・・・(1)
(数式(1)中、f1は0.5rpmの補正係数である。)
本発明において接着剤組成物のチキソ値は、東京計器製造所製のEHD型回転粘度計を用いて、25℃における回転数0.5rpm及び5rpmで測定を行い、0.5rpmでの値及び5rpmを用いて数式(2)から求めることが出来る。
【0020】
チキソ値=(0.5rpmでの値×f1)/(5rpmでの値×f2)・・・・(2)
(数式(2)中、f1は0.5rpmの補正係数、f2は5rpmの補正係数である。)
本発明において、接着剤組成物の硬化物の熱伝導率は、硬化物の熱拡散率をレーザーフラッシュ法(ネッチ社製、LFA 447、25℃)によりで測定し、比熱容量を示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製 Pyris1)によりで測定し、また、アルキメデス法で比重を算出し、これらの積(熱伝導率=熱拡散率×比熱容量×比重)により求めることができる。
【0021】
本発明において、接着剤組成物の硬化物の200℃における接着強度は、硬化物を万能型ボンドテスタ(デイジ社製、4000シリーズ)を用い、200℃で加熱した後の剪断強さ(MPa)を測定することにより求めることができる。
【0022】
本発明において、接着剤組成物の硬化物の260℃における接着強度は、硬化物を万能型ボンドテスタ(デイジ社製、4000シリーズ)を用い、260℃で加熱した後の剪断強さ(MPa)を測定することにより求めることができる。
【0023】
以下、本発明の接着剤組成物に含まれる各成分について説明する。
【0024】
フィラー(A)
本発明で用いられるフィラー(A)は、タップ密度が6.5g/cm以上8.5g/cm以下であることが好ましい。前記フィラー(A)のタップ密度が、6.5g/cm未満である場合は、接着剤組成物の粘度が上昇し作業性が悪くなる可能性があり、8.5g/cmを超える混合粉は現実的でない。前記フィラー(A)のタップ密度は、より好ましくは7.0g/cm以上8.5g/cm以下、より好ましくは7.0g/cm以上8.0g/cm以下である。フィラー(A)のタップ密度を6.5g/cm以上8.5g/cm以下の範囲に調整する方法としては、球状又は略球状のフィラーや扁平状のフィラーなど異なる形状のフィラーを適宜組み合わせたり、粒径の異なるフィラーを適宜組み合わせて調整すればよい。
【0025】
また、前記フィラー(A)は相対密度が60%以上85%以下であることが好ましく、65%以上80%以下の範囲であることがより好ましい。フィラー(A)の相対密度を60%以上85%以下の範囲に調整する方法としては、球状又は略球状のフィラーや扁平状のフィラーなど異なる形状のフィラーを適宜組み合わせたり、粒径の異なるフィラーを適宜組み合わせて調整すればよい。
【0026】
本発明で用いられるフィラー(A)は、球状又は略球状のフィラーと扁平状のフィラーとの混合粉であることが好ましい。本発明では、球状又は略球状のフィラーと扁平状のフィラーとの混合粉を用いることにより、単一形状のフィラーを用いた場合に比べてタップ密度向上や調整が容易に出来、高熱伝導性と低粘度の両立がし易くなる。単一形状のフィラーを用いた場合は、十分にタップ密度が上がらない、フィラーの沈降が起こるといった問題が起こりやすい。
【0027】
前記球状又は略球状のフィラーは、長径の平均粒子径が0.6μm以上3.0μm以下の範囲であることが好ましく、1μm以上2.5μm以下の範囲であることがより好ましい。前記長径の平均粒子径が0.6μm未満では接着剤組成物の粘度が上昇し作業性が低下する傾向にあり、3.0μmを超えると混合粉のタップ密度が十分に上がらない傾向にある。また、球状又は略球状のフィラーは、タップ密度が4.2g/cm以上6.3g/cm以下であることが好ましく、4.5g/cm以上6.0g/cm以下であることがより好ましい。前記タップ密度が4.2g/cm未満では混合粉のタップ密度が十分に上がらない傾向にあり、6.3g/cmを超える球状又は略球状のフィラーは現実的でない。また、球状又は略球状のフィラーは、相対密度が40%以上60%以下の範囲であることが好ましく、43%以上57%以下の範囲であることがより好ましい。前記相対密度が40%未満では混合粉のタップ密度が十分に上がらない傾向にあり、60%を超える球状又は略球状のフィラーは現実的でない。また、球状又は略球状のフィラーは、アスペクト比が1以上1.5以下の範囲であることが好ましい。前記アスペクト比が1.5を超えると混合粉のタップ密度が十分に上がらない傾向にある。
【0028】
前記扁平状のフィラーは、長径の平均粒子径が8μm以上25μm以下の範囲であることが好ましく、10μm以上20μm以下の範囲であることがより好ましい。前記長径の平均粒子径が8μm未満では混合粉のタップ密度が十分に上がらない傾向にあり、25μmを超えるとディスペンス性や印刷性などの作業性が低下する傾向にある。また、扁平状のフィラーは、タップ密度が4.8g/cm以上7.3g/cm以下であることが好ましく、5.0g/cm以上7.0g/cm以下であることが好ましい。前記タップ密度が4.8g/cm未満では混合粉のタップ密度が十分に上がらない傾向にあり、7.3g/cmを超える扁平状のフィラーは現実的でない。また、扁平状のフィラーは、相対密度が45%以上70%以下であることが好ましく、47%以上67%以下の範囲であることがより好ましい。前記相対密度が45%未満では混合粉のタップ密度が十分に上がらない傾向にあり、70%を超える扁平状のフィラーは現実的でない。また、扁平状のフィラーは、アスペクト比が3以上20以下の範囲であることが好ましく、5以上15以下の範囲であることがより好ましい。前記アスペクト比が3未満では混合粉のタップ密度が十分に上がらない傾向にあり、20を超えるとフィラー同士の接触性が悪くなり硬化物において十分な熱伝導率が得られない傾向にある。
【0029】
上記平均粒子径は、50体積%の粒子径であり、マスターサイザー・レーザー散乱型粒度分布測定装置(マルバーン社製)を用いて測定して求めることができる。
【0030】
上記タップ密度は、JIS Z−2540に従い、フィラー100gをメスシリンダーに入れ、600回タップを行い、投入した重量100gと600回タップ後のメスシリンダーが示す体積から換算して求めることができる。
【0031】
上記相対密度は次式から求めることができる。
【0032】
相対密度(%)=(タップ密度/真密度)×f×100
(ただしfは実測値による補正係数である。)
上記アスペクト比は、フィラー粒子の長径と短径の比率(長径/短径)をいう。本発明では、粘度の低い硬化性樹脂中にフィラー粒子をよく混合し、静置して粒子を沈降させるとともにそのまま樹脂を硬化させ、得られた硬化物を垂直方向に切断し、その切断面に現れる粒子の形状を電子顕微鏡で拡大して観察し、少なくとも100の粒子について一つ一つの粒子の長径/短径を求め、それらの平均値をもってアスペクト比とする。ここで、短径とは、前記切断面に現れる粒子について、その粒子の外側に接する二つの平行線の組み合わせのうち最短間隔になる二つの平行線の距離である。一方、長径とは、前記短径を決する平行線に直角方向の二つの平行線であって、粒子の外側に接する二つの平行線の組み合わせのうち、最長間隔になる二つの平行線の距離である。これらの四つの線で形成される長方形は、粒子がちょうどその中に納まる大きさとなる。
【0033】
本発明で用いられるフィラーは、球状又は略球状のフィラーと扁平状のフィラーとの混合粉であることが好ましいが、接着剤組成物の粘度、塗布面積、膜厚、接合部材等の接合の仕様や要求特性に応じて、混合の組み合わせや比率を適宜選択すればよい。例えば、平面方向の熱伝導は、フィラー同士の接触面積、配向等の点から扁平状のフィラーの混合比率を高めることが好ましく、断面方向の熱伝導は断面方向に対する単一粒子が占める体積が増えるので球状又は略球状のフィラーの混合比率を高めることが好ましい。また、接着強度は、接合の仕様によって異なるが、一般的に基材に対して平滑に塗布した接着剤組成物では、扁平状のフィラーの方が球状又は略球状のフィラーより高い値を示す。熱伝導、接着強度、作業性、信頼性等の点から、球状又は略球状のフィラーと扁平状のフィラーとの混合比率は、重量比で、球状又は略球状のフィラー:扁平状のフィラーが10:90〜70:30の範囲であることが好ましく、30:70〜50:50の範囲であることがより好ましい。前記扁平状のフィラーの混合比率が30%未満では、ペースト層の膜厚方向の熱伝導パスが形成されにくく熱伝導率の向上効果に劣る傾向にあり、90%を超えると、接着剤組成物中の扁平状のフィラーが沈降しやすくなる傾向がある。
【0034】
なお、扁平状のフィラーを主として用いた場合、接着剤組成物の粘度は高くなる。一方、球状又は略球状のフィラーを主として用いた場合、扁平状のフィラーを主として用いた場合より粘度が低くなり作業性がよくなる。また球状又は略球状のフィラーを主として用いた場合と扁平状のフィラーを主として用いた場合の接着剤組成物の粘度を同一にする場合は、球状又は略球状のフィラーの比率を扁平状のフィラーの比率より高くすることができる。
【0035】
本発明で用いられるフィラーは熱伝導率が50W/mK〜2500W/mKであることが好ましい。前記熱伝導率が50W/mK未満であると硬化物において十分な熱伝導率が得られない傾向があり、2500WmKを超えるものは入手が困難で、生産性に劣る傾向がある。
【0036】
本発明の接着剤組成物において、フィラーとバインダの配合割合(フィラー:バインダ)は、重量比で、93:7〜97:3であることが好ましく、93:7〜95:5であることがより好ましい。前記フィラーの重量比が93%未満では硬化物において十分な熱伝導率が得られない傾向にあり、97%を超える場合は接着強度が低下する傾向にある。一方、前記フィラーとバインダの配合割合(フィラー:バインダ)は、体積比で、60:40〜80:20であることが好ましく、60:40〜70:30であることがより好ましい。前記フィラーの体積比が60%未満では熱伝導率向上効果に劣る傾向にあり、80%を超えると接着強度が低下する傾向にある。
【0037】
本発明で用いられるフィラーとしては、特に制限はなく、各種公知のものを使用することができ、例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、鉄、アルミニウム、ステンレス等の導電性の粉体、酸化珪素、窒化アルミニウム、窒化硼素、硼酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ダイヤモンド等の非導電性の粉体などが挙げられ、これらのなかでも、ダイヤモンド、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、アルミナ、金、白金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、パラジウムが高熱伝導性の確保及び入手が容易である点で好ましく、銀が耐酸化性、価格、特性の面で特に好ましい。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
本発明において、タップ密度が6.5g/cm以上8.5g/cm以下の混合粉を使用する場合は、バインダと混合する際に、フィラーの粒子同士を予備混合する必要がなく、バインダと混合粉を混合するだけでよいので混合分散に要する時間が短くて済む。そして、相対密度が60%以上85%以下と高い混合粉を使用するため、少量のバインダでペースト化することができ、またバインダと混合する際、混合を開始した直後の粘度も低いので、容易に均一に混合することができる。
【0039】
溶剤(B)
溶剤を含有している接着剤組成物は、溶剤を含有していない接着剤組成物より、塗布した時と熱処理を行い硬化させた後の接着剤組成物の体積減少量が溶剤を含んでいるだけ大きい。また熱処理を行う過程で溶剤を含有している接着剤組成物の方が、接着剤組成物の粘度が大きく低下し、接着剤組成物に含まれているフィラーがバインダ内で緻密になる。これらの要因のため、溶剤を含有している接着剤組成物は、溶剤を含有していない接着剤組成物より熱伝導性が良好になりバラツキも少なくなると考えられる。また、溶剤は、熱処理時の接着剤組成物の粘度が大きく低下する溶剤ほど好ましく、逆に乾燥性が速く熱処理を行った時に溶剤の乾燥が進み接着剤組成物の粘度が大きく低下しない溶剤は好ましくない。
【0040】
上記考えに基いて種々の溶剤を検討したところ、本発明では、沸点が150℃以上260℃以下であり、かつ、25℃及び55%RHにおけるn−酢酸ブチルの蒸発速度を100したときの蒸発速度が10以下(0を除く)の溶剤を用いることが好ましい。
【0041】
本発明で用いる溶剤(B)は、沸点が150℃以上260℃以下であることが好ましい。前記溶剤(B)の沸点が150℃未満であると、塗布後の接着剤組成物に含まれる溶剤の乾燥が速い、即ち塗布から熱処理工程中の溶剤の乾燥が速いため接着剤組成物の粘度が大きく低下しないので、フィラーがバインダ内で緻密にならず、熱処理後の熱伝導が低下しバラツキが大きくなる可能性がある。前記溶剤(B)の沸点が260℃を超えると溶剤の乾燥速度が遅くなり短時間の熱処理工程に適さない傾向にある。前記溶剤(B)の沸点は、より好ましくは170℃以上240℃以下、特により好ましくは180℃以上220℃以下である。
【0042】
本発明で用いる溶剤(B)は、25℃及び55%RHにおけるn−酢酸ブチルの蒸発速度を100したときの蒸発速度が10以下(0を除く)であることが好ましい。前記蒸発速度が10を超える溶剤を用いると、塗布後の接着剤組成物に含まれる溶剤の乾燥が速い、即ち塗布から熱処理工程中の溶剤の乾燥が速いため接着剤組成物の粘度が大きく低下しないので、フィラーがバインダ内で緻密にならず、熱処理後の熱伝導が低下しバラツキが大きくなる可能性がある。前記溶剤(B)の蒸発速度は、より好ましくは5以下(0を除く)、特に好ましくは3以下(0を除く)である。
【0043】
本発明において蒸発速度とは、温度が25℃及び相対湿度が55%RHでのn−酢酸ブチルの蒸発速度を100とした場合の相対速度である。具体的には、溶剤10gを直径90mmのガラスシャーレに滴下し、これを25℃及び55%RH、1気圧の雰囲気に1時間放置した後の乾燥重量減少量をAとする。また、n−酢酸ブチル10gを前記と同様の雰囲気に1時間放置した後の乾燥重量減少量をBとする。蒸発速度は、A/B×100で求めることができる。
【0044】
本発明で使用される溶剤(B)の具体例としては、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブタノール、乳酸エチル、乳酸ブチル、γ―ブチロラクトン、α―テルピネオール、イソホロン、p−シメン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アニソールなどが挙げられる。
【0045】
上記溶剤は1種単独で、又は2種以上の溶剤を混合して用いることが出来る。2種以上の溶剤を混合して用いる場合は、混合後の溶剤の沸点及び蒸発速度が150℃以上260℃以下であり、かつ、25℃及び55%RHにおけるn−酢酸ブチルの蒸発速度を100したときの蒸発速度が10以下(0を除く)となるように選択することが好ましい。
【0046】
溶剤の配合量は、熱伝導性及び作業性の観点から、バインダ(C)に対して体積比で10%以上100%以下であることが好ましく、40%以上100%以下であることがより好ましい。また、溶剤の配合量は、接着剤組成物に対して2〜10重量%の範囲であることが好ましく、2〜7.5重量%の範囲であることがより好ましい。
【0047】
バインダ(C)
本発明で用いられるバインダ(C)は、エポキシ樹脂(C1)、アクリロニトリルブタジエン共重合体(C2)、エポキシ化ポリブタジエン(C3)、エポキシ樹脂硬化剤(C4)、アクリル酸エステル化合物又はメタクリル酸エステル化合物(C5)、ラジカル開始剤(C6)を含有している。
【0048】
以下、バインダ(C)に含まれる各成分(C1)〜(C6)について説明する。
【0049】
エポキシ樹脂(C1)
本発明で用いられるエポキシ樹脂(C1)としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に制限はなく、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂[AER−X8501(旭化成工業株式会社、商品名)、R−301(油化シェルエポキシ株式会社、商品名)、YL−980(油化シェルエポキシ株式会社商品名)]、ビスフェノールF型エポキシ樹脂[YDF−170(東都化成株式会社、商品名)]、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂[R−1710(三井石油化学工業株式会社、商品名)]、フェノールノボラック型エポキシ樹脂[N−730S(大日本インキ化学工業株式会社、商品名)、Quatrex−2010(ダウ・ケミカル社、商品名)]、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂[YDCN−702S(東都化成株式会社、商品名)、EOCN−100(日本化薬株式会社、商品名)]、多官能エポキシ樹脂[EPPN−501(日本化薬株式会社、商品名)、TACTIX−742(ダウ・ケミカル社、商品名)、VG−3010(三井石油化学工業株式会社、商品名)、1032S(油化シェルエポキシ株式会社、商品名)]、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂[HP−4032(大日本インキ化学工業株式会社、商品名)]、脂環式エポキシ樹脂[EHPE−3150、CELー3000(ダイセル化学工業株式会社、商品名)、DME−100(新日本理化株式会社、商品名)]、脂肪族エポキシ樹脂[W−100(新日本理化株式会社、商品名)]、アミン型エポキシ樹脂[ELM−100(住友化学工業株式会社、商品名)、YH−434L(東都化成株式会社、商品名)、TETRAD−X、TETRAC−C(三菱瓦斯化学株式会社、商品名)]、レゾルシン型エポキシ樹脂[デナコールEX−201(ナガセ化成工業株式会社、商品名)]、ネオペンチルグリコール型エポキシ樹脂[デナコールEX−211(ナガセ化成工業株式会社、商品名)]、ヘキサンディネルグリコール型エポキシ樹脂[デナコールEX−212(ナガセ化成工業株式会社、商品名)]、エチレン・プロピレングリコール型エポキシ樹脂[デナコールEX−810、811、850、851、821、830、832、841、861(ナガセ化成工業株式会社、商品名)]、下記一般式(I)で表されるエポキシ樹脂[E−XL−24、E−XL−3L(三井東圧化学株式会社、商品名)]などが挙げられる。
【化1】

【0050】
(一般式(I)中、aは0〜5の整数を表す)
これらエポキシ樹脂は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0051】
また、エポキシ樹脂(C1)として、1分子中にエポキシ基を1個だけ有するエポキシ化合物(反応性希釈剤)を含んでもよい。このようなエポキシ化合物は、本発明の接着剤組成物の特性を阻害しない範囲で使用されるが、エポキシ樹脂全量に対して0〜30重量%の範囲で使用することが好ましい。このようなエポキシ化合物の市販品としては、PGE(日本化薬株式会社、商品名)、PP−101(東都化成株式会社、商品名)、ED−502、509、509S(旭電化工業株式会社、商品名)、YED−122(油化シェルエポキシ株式会社、商品名)、KBM−403(信越化学工業株式会社、商品名)、TSL−8350、TSL−8355、TSL−9905(東芝シリコーン株式会社、商品名)などが挙げられる。
【0052】
アクリロニトリルブタジエン共重合体(C2)
本発明で用いられるアクリロニトリルブタジエン共重合体(C2)としては、分子内にエポキシ基、カルボキシル基、アミノ基及びビニル基から選ばれる少なくとも1種以上の官能基を有しているものが好ましい。アクリロニトリルブタジエン共重合体(C2)は、あらかじめ前記エポキシ樹脂(C1)と、エポキシ樹脂:アクリロニトリルブタジエン共重合体=10:90〜90:10(重量部)の比率で、80℃〜120℃で20分〜6時間程度反応させておくことができる。反応時には必要に応じて、ブチルセロソルブ、カルビトール、酢酸ブチルセロソルブ、酢酸カルビトール、エチレングリコールジエチルエーテル、α−テルピネオール等の比較的沸点の高い有機溶剤を用いることができる。
【0053】
アクリロニトリルブタジエン共重合体(C2)の数平均分子量は、500〜10000が好ましい。前記数平均分子量が500未満の場合は、チップ反りが起き易くなる傾向があり、10000を超えると接着剤組成物の粘度が上昇し作業性に劣る傾向がある。前記数平均分子量は、蒸気圧浸透法で測定した値又はゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレンの検量線を利用して測定(以下、GPC法という)した値である。
【0054】
アクリロニトリルブタジエン共重合体(C2)の配合量は、エポキシ樹脂(C1)100重量部に対して、10〜100重量部であることが好ましく、30〜80重量部であることがより好ましい。前記配合量が10重量部未満であるとチップ反りが起こり易くなる傾向があり、100重量部を超えると粘度が増大し、作業性が低下する傾向がある。
【0055】
エポキシ化ポリブタジエン(C3)
本発明で用いられるエポキシ化ポリブタジエン(C3)としては、エポキシ当量が100〜500(g/eq)のものが好ましい。前記エポキシ当量が100(g/eq)未満では粘度が増大し、接着剤組成物の作業性が低下する傾向があり、500(g/eq)を超えると熱時の接着強度が低下する傾向がある。なお、エポキシ当量は過塩素酸法により求めたものである。エポキシ化ポリブタジエン(C3)として分子内に水酸基を持つものを使用してもよい。
【0056】
エポキシ化ポリブタジエン(C3)の数平均分子量は、500〜10000が好ましい。前記数平均分子量が500未満の場合は、チップ反りが起き易くなる傾向があり、10000を超えると接着剤組成物の粘度が上昇し作業性に劣る傾向がある。前記数平均分子量は、GPC法により測定した値である。
【0057】
エポキシ化ポリブタジエンの配合量(C3)の配合量は、エポキシ樹脂(C1)100重量部に対して、10〜100重量部であることが好ましく、30〜80重量部であることがより好ましい。前記配合量が10重量部未満であるとチップ反りが起き易くなる傾向があり、100重量部を超えると、接着剤組成物の粘度が上昇し作業性に劣る傾向がある。
【0058】
エポキシ樹脂硬化剤(C4)
本発明で用いられるエポキシ樹脂硬化剤(C4)は、エポキシ樹脂の硬化剤として通常用いられるものであれば特に制限はなく、例えばフェノールノボラック樹脂[H−1(明和化成株式会社、商品名)、VR−9300(三井東圧化学株式会社、商品名)]、フェノールアラルキル樹脂[XL−225(三井東圧化学株式会社、商品名)]、アリル化フェノールノボラック樹脂[AL−VR−9300(三井東圧化学株式会社、商品名)]、エポキシ樹脂とアミン化合物の反応物からなるマイクロカプセル型硬化剤[ノバキュア(旭化成工業株式会社、商品名)]、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールAD、アリル化ビスフェノールF、アリル化ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールAD、ジシアンジアミド、下記一般式(II)で表される特殊フェノール樹脂[PP−700−300(日本石油化学株式会社、商品名)]、下記一般式(III)で表される二塩基酸ジヒドラジド[ADH、PDH、SDH(いずれも日本ヒドラジン工業株式会社、商品名)]等が挙げられる。
【化2】

【0059】
(一般式(II)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、Rは水素又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、bは2〜4の整数を示す。)
【化3】

【0060】
(一般式(III)中、Rはm−フェニレン基、p−フェニレン基等の2価の芳香族炭化水素基、炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示す。)
これらエポキシ樹脂硬化剤(C4)は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0061】
エポキシ樹脂硬化剤(C4)の配合量は、エポキシ樹脂(C1)100重量部に対して、0.01〜90重量部であることが好ましく、0.1〜50重量部であることがより好ましい。前記エポキシ樹脂硬化剤(C4)の配合量が0.01重量部未満であると硬化性が低下する傾向があり、90重量部を超えると粘度が上昇し、作業性が低下する傾向がある。
【0062】
本発明の接着剤組成物には必要に応じて硬化促進剤を添加することができる。硬化促進剤としては、有機ボロン塩化合物[EMZ・K、TPPK(北興化学工業株式会社、商品名)]、三級アミン類又はその塩[DBU、U−CAT102、106、830、840、5002(サンアプロ社、商品名)]、イミダゾール類[キュアゾール、2P4MHZ、C17Z、2PZ−OK(四国化成株式会社、商品名)]などが挙げられる。
【0063】
エポキシ樹脂硬化剤(C4)及び必要に応じて添加される硬化促進剤は、それぞれ単独で用いてもよく、また、複数種のエポキシ樹脂硬化剤(C4)及び硬化促進剤を適宜組み合わせて用いてもよい。硬化促進剤の配合量は、エポキシ樹脂(C1)100重量部に対して、20重量部以下であることが好ましい。
【0064】
アクリル酸エステル化合物又はメタクリル酸エステル化合物(C5)
本発明で用いられるアクリル酸エステル化合物又はメタクリル酸エステル化合物(C5)としては、1分子中に1個以上のアクリル基又はメタクリル基を有する化合物であり、好ましくは下記の一般式(IV)〜(XIII)で表される化合物が使用される。
【0065】
一般式(IV)で表される化合物は、以下の化合物である。
【化4】

【0066】
(一般式(IV)中、Rは水素又はメチル基を表し、Rは炭素数1〜100、好ましくは炭素数1〜36の2価の脂肪族又は環状構造を持つ脂肪族炭化水素基を表す。)
一般式(IV)で示される化合物の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルアクリレート等のアクリレート化合物;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメタクリレート等のメタクリレート化合物;等がある。
【0067】
一般式(V)で表される化合物は、以下の化合物である。
【化5】

【0068】
(一般式(V)中、R及びRは一般式(IV)におけるものと同じものを表す。)
一般式(V)で示される化合物の具体例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等がある。
【0069】
一般式(VI)で表される化合物は、以下の化合物である。
【化6】

【0070】
(一般式(VI)中、Rは一般式(IV)におけるものと同じものを表し、Rは水素、メチル基又はフェノキシメチル基を表し、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル基、ジシクロペンテニル基、フェニル基又はベンゾイル基を表し、bは1〜50の整数を表す。)
一般式(VI)で示される化合物の具体例としては、ジエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等のアクリレート化合物;ジエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシジエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレート等のメタクリレート化合物;等がある。
【0071】
一般式(VII)で表される化合物は、以下の化合物である。
【化7】

【0072】
(一般式(VII)中、Rは一般式(IV)におけるものと同じものを表し、Rはフェニル基、ニトリル基、−Si(OR(Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す)、
【化8】

【0073】
(R10、R11及びR12はそれぞれ独立に水素又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R13は水素又は炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を表す)を表す。cは0、1、2又は3の数を表す。)
一般式(VII)で示される化合物の具体例としては、ベンジルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロピラニルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、1,2,2,6,6,−ペンタメチルピペリジニルアクリレート、2,2,6,6,−テトラメチルピペリジニルアクリレート、アクリロイルオキシエチルホスフェート、アクリロイルオキシエチルフェニルアシッドホスフェート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート等のアクリレート化合物;ベンジルメタクリレート、2−シアノエチルメタクリレート、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、テトラヒドロピラニルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、1,2,2,6,6,−ペンタメチルピペリジニルメタクリレート、2,2,6,6,−テトラメチルピペリジニルメタクリレート、メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メタクリロイルオキシエチルフェニルアシッドホスフェート等のメタクリレート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート等のメタクリレート化合物;等がある。
【0074】
一般式(VIII)で表される化合物は、以下の化合物である。
【化9】

【0075】
(一般式(VIII)中、R及びRは一般式(IV)におけるものと同じものを表す。)
一般式(VIII)で示される化合物の具体例としては、エチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ダイマージオールジアクリレート等のジアクリレート化合物;エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ダイマージオールジメタクリレート等のジメタクリレート化合物;等がある。
【0076】
一般式(IX)で表される化合物は、以下の化合物である。
【化10】

【0077】
(一般式(IX)中、Rは一般式(IV)におけるものと同じものを表し、R、bは一般式(VI)におけるものと同じものを表す。)
一般式(IX)で示される化合物の具体例としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート等のジアクリレート化合物;ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート等のジメタクリレート化合物;等がある。
【0078】
一般式(X)で表される化合物は、以下の化合物である。
【化11】

【0079】
(一般式(X)中、Rは一般式(IV)におけるものと同じものを表し、R14及びR15はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表す。)
一般式(X)で示される化合物の具体例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールAD1モルとグリシジルアクリレート2モルとの反応物、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールAD1モルとグリシジルメタクリレート2モルとの反応物等がある。
【0080】
一般式(XI)で表される化合物は、以下の化合物である。
【化12】

【0081】
(一般式(XI)中、Rは一般式(IV)におけるものと同じものを表し、R14及びR15は一般式(X)におけるものと同じものを表し、R16及びR17はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、d及びeはそれぞれ独立に1〜20の整数を表す。)
一般式(XI)で示される化合物の具体例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリエチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリプロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリエチレンオキサイド付加物のジメタクリレート、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリプロピレンオキサイド付加物のジメタクリレート等がある。
【0082】
一般式(XII)で表される化合物は、以下の化合物である。
【化13】

【0083】
(一般式(XII)中、Rは一般式(IV)におけるものと同じものを表し、R18、R19、R20及びR21はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、fは1〜20の整数を表す。)
一般式(XII)で示される化合物の具体例としては、ビス(アクリロイルオキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アクリロイルオキシプロピル)メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、ビス(メタクリロイルオキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、ビス(メタクリロイルオキシプロピル)メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー等がある。
【0084】
一般式(XIII)で表される化合物は、以下の化合物である。
【化14】

【0085】
(一般式(XIII)中、Rは一般式(IV)におけるものと同じものを表し、g、h、i、j及びkはそれぞれ独立に1以上、好ましくは1〜10の数を表す。)
一般式(XIII)で示される化合物の具体例としては、無水マレイン酸を付加させたポリブタジエンと分子内に水酸基を持つアクリル酸エステル化合物又はメタクリル酸エステル化合物を反応させて得られる反応物及びその水素添加物があり、1分子中に1個以上のアクリル基又はメタクリル基を有する化合物であれば特に制限はないが、例えばMM−1000−80、MAC−1000−80(共に、日本石油化学株式会社商品名)等がある。
【0086】
アクリル酸エステル化合物又はメタクリル酸エステル化合物(C5)は、上記の化合物を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0087】
アクリル酸エステル化合物又はメタクリル酸エステル化合物(C5)の配合量は、エポキシ樹脂(C1)、アクリロニトリルブタジエン共重合体(C2)及びエポキシ化ポリブタジエン(C3)の総量100重量部に対して、5〜100重量部であることが好ましく、10〜50重量であることがより好ましい。前記配合量が5重量部未満では短時間での硬化性に劣る傾向にあり、100重量部を超えると接着強度が低下する傾向がある。
【0088】
ラジカル開始剤(C6)
本発明で用いられるラジカル開始剤(C6)は、特に制限はないが、ボイド等の点から過酸化物が好ましく、また接着剤組成物の硬化性及び粘度安定性の点から過酸化物の分解温度が70〜170℃のものが好ましい。
【0089】
ラジカル開始剤(C6)の具体例としては、1,1,3,3−テトラメチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、クメンハイドロパーオキサイド等がある。
【0090】
ラジカル開始剤(C6)の配合量は、アクリル酸エステル化合物又はメタクリル酸エステル化合物(C5)の総量100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、0.5〜5重量部であることがより好ましい。
【0091】
その他の添加剤
本発明の接着剤組成物には、必要に応じて更に、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の吸湿剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ジルコアルミネートカップリング剤等の接着力向上剤、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の濡れ向上剤、シリコーン油等の消泡剤、無機イオン交換体等のイオントラップ剤、重合禁止剤、ブリード抑制剤等のその他の添加剤を適宜添加することができる。
【0092】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O−(ビストリメチルシリル)アセトアミド、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、4,5−ジヒドロイミダゾールプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−シアノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリ(メタクリロイルオキシエトキシ)シラン、メチルトリ(グリシジルオキシ)シラン、2−エチルヘキシル−2−エチルヘキシルホスホネート、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、N−トリメチルシリルアセトアミド、ジメチルトリメチルシリルアミン、ジエチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール、トリメチルシリルイソシアネート、ジメチルシリルジイソシアネート、メチルシリルトリイソシアネート、ビニルシリルトリイソシアネート、フェニルシリルトリイソシアネート、テトライソシアネートシラン、エトキシシラントリイソシアネート等がある。
【0093】
チタネートカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ジイソプロポキシビス(2,4−ペンタジオネート)チタニウム(IV)、ジイソプロピルビストリエタノールアミノチタネート、チタニウムラクテート、アセトアセティックエステルチタネート、ジ−i−プロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジヒドロキシビス(ラクタト)チタン、チタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレート、チタニウムステアレート、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート等がある。
【0094】
重合禁止剤としては、例えば、キノン類、ヒドロキノン、ニトロ・ニトロソ化合物、アミン類、ポリオキシ化合物、p−tert−ブチルカテコール、ピクリン酸、ジチオベンゾイルジスルフィド等の含硫黄化合物、塩化第二銅、ジフェニルピクリルヒドラジル、トリ−p−ニトロフェニルメチル、トリフェニルフェルダジル、N−(3−N−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
ブリード抑制剤としては、例えば、パーフロロオクタン酸、オクタン酸アミド、オレイン酸等の脂肪酸、パーフロロオクチルエチルアクリレート、シリコーン等が挙げられる。
【0096】
本発明の接着剤組成物を製造するには、フィラー(A)、溶剤(B)及びバインダ(C)を、必要に応じて添加される希釈剤及び各種添加剤とともに、一括又は分割して撹拌器、らいかい器、3本ロール、プラネタリーミキサー等の分散・溶解装置を適宜組み合わせ、必要に応じて加熱して混合、溶解、解粒混練又は分散して均一なペースト状とすれば良い。
【0097】
本発明の接着剤組成物を加熱硬化して得られる硬化物のガラス転移点は、通常、40〜180℃であり、好ましくは70〜180℃の範囲である。前記ガラス転移点が40℃未満であると熱伝導性、接着強度、接合部の柔軟性等他の特性とのバランスの良い接着剤組成物の作製が非常に困難であるか又は作製できない場合がある。前記ガラス転移点が180℃を超えるとエポキシ樹脂の比率を低下させなければならず、そのため接着強度が低下する可能性がある。
【0098】
本発明の半導体装置は、本発明の接着剤組成物を用いて半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを接着することにより得られる。図1及び図2に示すように、半導体素子を半導体素子搭載用支持部材に接着した後、必要に応じ、ワイヤボンド工程、封止工程を行う。半導体素子としては、例えば、ICチップやLEDチップ等が挙げられる。半導体素子搭載用支持部材としては、例えば、42アロイリードフレーム、銅リードフレーム、パラジウムPPFリードフレーム等のリードフレーム、ガラスエポキシ基板(ガラス繊維強化エポキシ樹脂からなる基板)、BT基板(シアネートモノマー及びそのオリゴマーとビスマレイミドからなるBTレジン使用基板)等の有機基板が挙げられる。
【0099】
本発明の接着剤組成物を用いて半導体素子を半導体素子搭載用支持部材に接着させるには、まず半導体素子搭載用支持部材上に接着剤組成物をディスペンス法、スクリーン印刷法、スタンピング法等により塗布した後、半導体素子を圧着し、その後オーブン又はヒートブロック等の加熱装置を用いて加熱硬化することにより行うことができる。加熱硬化は、通常、50〜300℃で、1秒〜10時間加熱することにより行われる。さらに、ワイヤボンド工程を経た後、通常の方法により封止することにより完成された半導体装置とすることができる。
【実施例】
【0100】
次に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって制限されるものではない。実施例1〜6及び比較例1〜5で用いた材料は以下のようにして作製したもの、あるいは入手したものである。
【0101】
フィラー(A):
AgC−224(福田金属箔粉株式会社、商品名、扁平状の銀粉、平均粒子径10μm、タップ密度5.5g/cm、相対密度52%)
SPQ05S(三井金属鉱業株式会社、商品名、球状の銀粉、平均粒子径0.85μm、タップ密度4.6g/cm、相対密度44%)
SPQ08S(三井金属鉱業株式会社、商品名、球状の銀粉、平均粒子径1.5μm、タップ密度4.8g/cm、相対密度46%)
TCG−1(株式会社徳力化学研究所、商品名、扁平状の銀粉、平均粒子径4.5μm、タップ密度5.0g/cm、相対密度48%)
溶剤(B):
ジプロピレングリコールメチルエーテル(沸点188℃、蒸発速度3)
ジエチレングリコールジブチルエーテル(沸点256℃、蒸発速度<1)
プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(沸点156℃、蒸発速度34)
バインダ(C):
エポキシ樹脂(C1):YDF−170(東都化成株式会社、商品名、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量=170)7.5重量部及びYL−980(油化シェルエポキシ株式会社、商品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量=185)7.5重量部を80℃に加熱し、1時間撹拌を続け、均一なエポキシ樹脂溶液を得た。
【0102】
アクリロニトニルブタジエン共重合体(C2):CTBNX−1300×9(宇部興産株式会社、商品名、カルボキシル基末端アクリロニトニルブタジエン共重合体)
エポキシ化ポリブタジエン(C3):E−1000−8.0(日本石油化学株式会社、商品名)
エポキシ樹脂硬化剤(C4):ジシアンジアミド
硬化促進剤:C17Z(四国化成株式会社、商品名、イミダゾール)
メタクリル酸エステル化合物(C5):エチレングリコールジメタクリレート
ラジカル開始剤(C6):ジクミルパーオキサイド
希釈剤:PP−101(東都化成株式会社、商品名、アルキルフェニルグリシジルエーテル)

実施例1〜6
表1に示す配合割合(重量%)で各材料を混合し、3本ロールを用いて混練した後、5トル(Torr)以下で10分間脱泡処理を行い、接着剤組成物を得た。
【0103】
比較例1〜5
表2に示す配合割合(重量%)で各材料を混合し、3本ロールを用いて混練した後、5トル(Torr)以下で10分間脱泡処理を行い、接着剤組成物を得た。
【0104】
フィラーおよび溶剤の特性、実施例1〜6及び比較例1〜5で得られた各接着剤組成物の特性を下記に示す方法で調べた。結果を表1、2に示す。
【0105】
(1)平均粒子径:フィラーを少量試験管に取り、水又はイソプロピルアルコールで分散させた後、レーザー回折・散乱法(マスターサイザー2000、マルバーン社製)で粒径を測定し、50体積%の粒径を平均粒子径とした。(2)タップ密度:JIS Z−2504に従い、フィラー100gを精秤後、ロートでメスシリンダーに入れ、落差20mm、60回/分の速さで600回タップを行い、投入した重量100gと600回タップ後のメスシリンダーが示す体積から換算して求めた。
【0106】
(3)相対密度:(タップ密度/真密度)×f×100で算出した。ただしfは実測値による補正係数である。
【0107】
(4)粘度:EHD型回転粘度計(東京計器製造所製)を用い、25℃における回転数0.5rpmと5rpmで測定し、各測定値に補正係数を乗じて求めた。
【0108】
(5)チキソ値:上記回転数5rpmでの粘度に対する回転数0.5rpmでの粘度の比から算出した。
【0109】
(6)ダイシェア強度:パラジウムめっきリードフレーム(PPF、ランド部:10mm×8mm)上に接着剤組成物を約0.2mg塗布し、この上に2mm×2mmのシリコンチップ(厚さ0.4mm)を圧着し、さらにクリーンオーブン(エスペック社製)で180℃、1時間加熱処理した。これを万能型ボンドテスタ(デイジ社製、4000シリーズ)を用い、測定スピード500μm/s、測定高さ120μmで200℃及び260℃で30秒加熱した後の剪断強さ(MPa)を測定した。
【0110】
(7)接着剤組成物の硬化物の熱伝導率:接着剤組成物を180℃、1時間加熱処理し、10mm×10mm×1mmの試験片を得た。この試験片の熱拡散率をレーザーフラッシュ法(ネッチ社製、LFA 447、25℃)で測定し、比熱容量を示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製 Pyris1)により測定した。また、アルキメデス法で比重を算出した。硬化物の熱伝導率(W/m・K)を熱拡散率、比熱容量、比重の積(熱伝導率=熱拡散率×比熱容量×比重)により算出した。
【表1】

【表2】

【0111】
実施例1〜6の接着剤組成物は、作業性に優れた粘度を有し、接着強度を維持しつつ、熱伝導率の向上を図ることが可能である。これに対し、比較例1〜5の接着剤組成物は、粘度が高く作業性に劣り、硬化物の接着強度及び熱伝導率が低下する。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の接着剤組成物を用いた半導体装置の一例の断面図である。
【図2】本発明の接着剤組成物を用いた半導体装置の別な例断面図である。
【符号の説明】
【0113】
1 半導体素子(チップ)
2 半導体素子搭載用支持部材(リードフレーム)
3 本発明の接着剤組成物からなる接着層
4 ワイヤ
5 封止材
6 半導体素子搭載用支持部材(ガラスエポキシ基板)
7 電極
8 半導体素子(LEDチップ)
9 透光性封止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラー(A)、溶剤(B)及びバインダ(C)を含む接着剤組成物であって、
前記接着剤組成物の回転数0.5rpmでの粘度が70Pa・s以上200Pa・s以下であり、前記接着剤組成物のチキソ値が4.0以上9.5以下であり、前記接着剤組成物の硬化物の熱伝導率が15W/m・K以上であり、前記接着剤組成物の硬化物の200℃における接着強度が8MPa以上であり、260℃における接着強度が5MPa以上であることを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の接着剤組成物を用いて半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを接着してなる半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−102603(P2009−102603A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25292(P2008−25292)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】