説明

接着層付き金属箔及び金属張積層板

【課題】 特に高周波帯での伝送損失を十分に低減可能であり、しかも絶縁層及び導電層間の接着力を十分に強くしたプリント配線板を形成可能な接着層付き金属箔、及びその接着層付き金属箔を用いて作製される金属張積層板を提供する。
【解決手段】 本発明の接着層付き金属箔は、金属箔と、該金属箔上に設けられた接着層とを備える接着層付き金属箔であって、接着層は、(A)成分;オキシラン環又はオキセタン環を有し、かつエチレン性不飽和結合を有する化合物と、(B)成分;トリアジン環を有するノボラック型フェノール樹脂とを含有する硬化性樹脂組成物からなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着層付き金属箔及び金属張積層板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される移動体通信機器やその基地局装置、サーバー、ルーター等のネットワーク関連電子機器及び大型コンピュータ等では、大容量の情報を低損失かつ高速で伝送・処理することが要求されている。かかる要求に対応するため、上述のような装置に搭載されるプリント配線板上で扱う電気信号は高周波数化が進んでいる。しかしながら、高周波になればなるほど電気信号は減衰しやすくなる性質を持つため、これらの分野で使用されるプリント配線板は一層伝送損失を低くする必要がある。
【0003】
低伝送損失のプリント配線板を得るために、従来、プリント配線板の基板材料として比誘電率や誘電正接の低いフッ素系樹脂を含有した熱可塑性樹脂材料が使用されている。しかしながらフッ素系樹脂は一般的に溶融粘度が高く、その流動性が比較的低いため、プレス成形時に高温高圧条件を設定する必要がある。しかも、上記の通信機器、ネットワーク関連電子機器及び大型コンピュータ等に使用されるプリント配線板用材料としては、加工性、寸法安定性及び金属めっきとの接着性が不十分である。
【0004】
そこで、比誘電率や誘電正接が低い熱硬化性樹脂組成物である、特許文献1〜3に示されているトリアリルシアヌレートやトリアリルイソシアヌレートを含有する樹脂組成物、特許文献1、2、4及び5に示されているポリブタジエンを含有する樹脂組成物、特許文献6に示されているアリル基等のラジカル架橋性の官能基を付与された熱硬化性ポリフェニレンエーテルと上記トリアリルシアヌレートやトリアリルイソシアヌレートを含有する樹脂組成物を、上記電子機器等の誘電体材料の原料として用いる方法が提案されている。これらの特許文献によると、概して、硬化後の樹脂が極性基を多く有していないため低伝送損失化が可能となる、とされている。
【0005】
しかしながら、特許文献1〜6に記載されているような低誘電率、低誘電正接の樹脂を誘電体材料に用い、絶縁層(誘電層)における電気信号の低伝送損失化を図るのみでは、近年の電気信号の更なる高周波化への対応として不十分となっている。すなわち、電気信号の伝送損失は、絶縁層に起因する損失(誘電体損失)と導電層に起因する損失(導体損失)に分類されるところ、昨今、誘電体損失の低減のみでなく、導体損失の低減についても、その必要性を無視できなくなってきている。特に、近年実用化されている大部分のプリント配線板(多層配線板)において、導電層である信号層及びグランド層間に配置される絶縁層厚みが200μm以下と比較的薄くなっているため、その絶縁層の材料に、ある程度低い誘電率や誘電正接を示す樹脂を採用すると、該配線板全体の伝送損失としては、誘電体損失よりもむしろ導体損失の方が支配的になっている。
【0006】
また、特許文献7、8には、高周波特性に優れ、かつ、耐熱性、ピール強度、電気特性が良好であり、しかも、製造が円滑に進むような積層板およびその製法を提供することを意図して、ビニル硬化系のポリブタジエン樹脂等の熱硬化性プリプレグとエポキシ、マレイン酸、カルボン酸等で変性されたポリブタジエンを付着した銅箔とを積層成形して銅張積層板を得る手段が提案されている。
【特許文献1】特公平6−69746号公報
【特許文献2】特公平7−47689号公報
【特許文献3】特開2002−265777号公報
【特許文献4】特公昭58−21925号公報
【特許文献5】特開平10−117052号公報
【特許文献6】特公平6−92533号公報
【特許文献7】特開昭54−74883号公報
【特許文献8】特開昭55−86744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
導体損失の低減を図る方法としては、導電層の絶縁層との接着面である粗化処理面(以下、「M面」という。)側の表面凹凸が小さい金属箔、具体的には、M面の表面粗さ(十点平均粗さ;Rz)が4μm以下の金属箔(以下、「ロープロファイル箔」という。)を用いた金属張積層板を採用する方法が挙げられる。
【0008】
そこで、本発明者らは、特許文献1〜6に記載されたものを始めとする、ビニル基やアリル基等の重合によって硬化する低誘電率、低誘電正接樹脂と上述のロープロファイル箔とを併用したプリント配線板について詳細に検討した。その結果、かかるプリント配線板は、絶縁層の極性が低く、しかも金属箔のM面の凹凸に起因するアンカー効果が低下するがゆえに、絶縁層及び導電層間の接着力(接合力)が弱くなり、それらの層間に容易に剥離が生じることが見出された。このような剥離は、該プリント配線板を加熱した際(特に吸湿後に加熱した際)に顕著となる。よって、上述の樹脂を誘電体材料に用いた場合、ロープロファイル箔の採用により十分な低伝送損失化を図るには限界があることを、本発明者らは明らかにした。
【0009】
また、特許文献7、8に記載された手段を応用して、M面のRzが4μm以下のロープロファイル銅箔を用いてプリント配線板を作製すると、十分に高い銅箔引き剥がし強さを得られず、耐熱性(特に吸湿時の耐熱性)の低下を招くことを、本発明者らは見出した。
【0010】
そこで、本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、特に高周波帯での伝送損失を十分に低減可能であり、しかも絶縁層及び導電層間の接着力を十分に強くしたプリント配線板を形成可能な接着層付き金属箔、及びその接着層付き金属箔を用いて作製される金属張積層板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、絶縁層の誘電体材料としてのポリブタジエン、トリアリルイソシアヌレート及び官能化ポリフェニレンエーテル等の低誘電率の熱硬化性樹脂について、ロープロファイル箔等の表面粗さの小さい金属箔と併用しても上記課題を解決できるよう鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明の接着層付き金属箔は、金属箔と、該金属箔上に設けられた接着層とを備える接着層付き金属箔であって、接着層は、(A)成分;オキシラン環又はオキセタン環を有し、かつエチレン性不飽和結合を有する化合物と、(B)成分;トリアジン環を有するノボラック型フェノール樹脂とを含有する硬化性樹脂組成物からなるものである。
【0013】
また、本発明の接着層付き金属箔は、金属箔と、該金属箔上に設けられた接着層とを備える接着層付き金属箔であって、接着層は、(A)成分;オキシラン環又はオキセタン環を有し,かつエチレン性不飽和結合を有する化合物と、(B)成分;トリアジン環を有するノボラック型フェノール樹脂と、(C)成分;高分子成分とを含有する硬化性樹脂組成物からなるものである。
【0014】
本発明に係る上記接着層を用いると、金属箔としてロープロファイル箔等の表面粗さの小さいものと、上述の誘電体材料とを併用しても、十分に高い金属箔引き剥がし強さを確保できる。よって、本発明の接着層付き金属箔を用いると、高周波帯での伝送損失を十分に低減可能であり、しかも絶縁層及び導電層間の接着力を十分に強くしたプリント配線板を形成できる。
【0015】
また、上記のような電子機器等に使用される高周波回路では、低伝送損失化と同様に良好なインピーダンス制御が求められており、それを実現するためには、信号層における導体パターン幅を形成する際の精度向上が重要なポイントとなる。ロープロファイル箔のような表面粗さの小さい金属箔を用いると、エッチング精度を向上させることができるので、導体パターン幅形成の際の精度向上や回路の更なるファインパターン化に有効となる。本発明の接着層付き金属箔は、金属箔としてロープロファイル箔を用い、低誘電率、低誘電正接の樹脂を絶縁樹脂層に用いても、絶縁層と金属箔との間に十分な接着力を得ることができるため、良好なインピーダンス制御を実現可能となる。
【0016】
なお、本発明に係る接着層を硬化して得られる層(以下、「硬化層」という。)は、プリント配線板の絶縁層の一部としても機能するものであるので、本明細書において、硬化層以外の絶縁層を構成する部分は「絶縁樹脂層」と表記し、硬化層と区別することとする。
【0017】
本発明の接着層付き金属箔が、上述の目的を達成できる要因は、現在のところ詳細には明らかになっていないが、本発明者らは以下のように推測している。ただし、要因はこれに限定されない。
【0018】
分子内にトリアジン環を有するノボラック型フェノール樹脂(以下、「トリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂」という。)を硬化剤として用いたエポキシ樹脂組成物は、他のエポキシ硬化剤を用いたエポキシ樹脂組成物よりも導体層との接着性が良好である。しかしながら、該フェノール樹脂は、上述のようなビニル硬化系やアリル硬化系等の低誘電率樹脂とは相溶性が低く反応性も極めて低い。そのため、これらの樹脂を用いた層(絶縁樹脂層)との間では、該フェノール樹脂のみを構成材料とした硬化層は、十分な引き剥がし強さを示すことができない。
【0019】
本発明の接着層付き金属箔を用いて作製されたプリント配線板においては、(A)成分が、低誘電率樹脂との相溶性を高める。つまり、(A)成分であるオキシラン環又はオキセタン環を有し、かつエチレン性不飽和結合を有する化合物は、接着層において(B)成分と重合反応すると同時に、隣接する絶縁樹脂層の構成材料である低誘電率樹脂ともラジカル重合により架橋反応する。これにより、接着層から得られる硬化層と絶縁樹脂層とはほぼ一体化する。その結果、該硬化層は、導体層との間で十分に高い接着力を有するのみでなく、硬化層内部及び硬化層と絶縁樹脂層との界面近傍における破壊強度を向上させることができ、絶縁樹脂層との間でも十分に高い接着力を有することとなる。また、(C)成分である高分子成分を用いると、接着層の強靭性と導体層との接着性を更に向上させることができる。
【0020】
本発明の接着層付き金属箔は、(A)成分におけるエチレン性不飽和結合を有する官能基として、ビニル基、アリル基、アクリル基(CH=CHCOO−)及びメタクリル基(CH=CCHCOO−)からなる群より選ばれる1種以上の基を有すると好ましい。
【0021】
本発明の接着層付き金属箔は、(A)成分が、ポリブタジエン構造及びオキシラン環を有するエポキシ化合物であると、すなわち、オキシラン環を有するエポキシ化合物であって更にポリブタジエン構造を有すると、硬化性の更なる向上の観点及び絶縁樹脂層との相溶性の観点から好ましい。このような(A)成分は、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、イミノ基(−NH−)及び下記式(III)で表される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有する変性ポリブタジエンと、2つ以上のオキシラン環を有する化合物とを反応させることにより得られる。
【化1】

【0022】
本発明の接着層付き金属箔において、接着層を構成する硬化性樹脂組成物中のエポキシ化合物が、その側鎖又は末端にビニル基を有すると好ましい。
【0023】
また、上記エポキシ化合物が、下記一般式(1)、(2)又は(3)で表されるもの、あるいは下記一般式(5)で表される構造単位を有するものであると好ましい。
【化2】


【化3】


【化4】


【化5】

【0024】
ここで、式(1)中、nは2〜8の整数を示し、n及びmの合計は10〜10000の整数を示す。また、式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は水酸基を示し、Rはアクリル基又はオキシラニル基を示す。
【0025】
式(3)中、Rは下記式(4)で表される基を示し、iは0〜100の整数を示し、i及びjの合計は10〜10000の整数を示す。
【化6】

【0026】
また、式(5)中、p及びuはそれぞれ独立に1〜10000の整数を示し、qは1〜100の整数を示し、r及びsはそれぞれ独立に0〜100の整数を示し、tは1〜10000の整数を示す。ただし、r及びsのいずれかは1以上の整数を示す。
【0027】
本発明の接着層付き金属箔において、上述の本発明の効果を一層発揮する観点から、(B)成分の配合割合が、(A)成分100質量部に対して0.5〜200質量部であると好ましい。
【0028】
本発明の接着層付き金属箔は、接着層の強靱性及び導体層との接着性を更に向上させる観点から、(C)成分の高分子成分が架橋ゴム粒子であると好ましく、アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子及びブタジエンゴム−アクリル樹脂のコアシェル粒子からなる群より選ばれる1種以上の粒子からなることがより好ましい。
【0029】
同様の観点から、本発明の接着層付き金属箔は、(C)成分がポリビニルアセタール樹脂及び/又はカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂からなると好ましく、ポリアミドイミドであると好ましい。
【0030】
本発明の接着層付き金属箔は、(C)成分がポリアミドイミドである場合に、そのポリアミドイミドが飽和炭化水素からなる構造単位を有することが好ましい。このような接着層付き金属箔を用いて形成されるプリント配線板は、導電層及び絶縁層間の接着力を更に高めることができ、しかも吸湿時においても高い接着力を保持できるため、高い耐湿耐熱性を発現できる。
【0031】
本発明の接着層付き金属箔において、上述の本発明の効果を一層発揮する観点から、(C)成分の配合割合が、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して0.5〜800質量部であると好ましい。
【0032】
本発明に係る接着層は、例えば、硬化性樹脂組成物及び溶媒を含有する樹脂ワニスを金属箔の主面上に塗布した後に溶媒を揮発させることにより得られ、該接着層の膜厚が0.1〜5μmであると好ましい。
【0033】
本発明に係る金属箔において、その主面の十点平均粗さ(Rz)が4μm以下であると伝送損失を更に低減することができ、しかも金属箔と硬化層との間の接着力を十分に高い状態で維持できる。ここで、十点平均粗さRzは、JIS−B0601−1994に準拠した表面粗さである。
【0034】
本発明の金属張積層板は、絶縁性を有する樹脂を含有する絶縁樹脂膜の少なくとも片面に、上述の接着層付き金属箔を、該接着層付き金属箔の接着層が接するように積層して積層体を得、該積層体を加熱及び加圧することにより得られるものである。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、特に高周波帯での伝送損失を十分に低減可能であり、しかも絶縁層及び導電層間の接着力を十分に強くしたプリント配線板を形成可能な接着層付き金属箔を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0037】
本発明の好適な第1の実施形態に係る接着層付き金属箔は、金属箔と、該金属箔上に設けられた接着層とを備える接着層付き金属箔であって、接着層は、(A)成分;オキシラン環又はオキセタン環を有し、かつエチレン性不飽和結合を有する化合物と、(B)成分;トリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂とを含有する硬化性樹脂組成物からなるものである。以下、接着層を構成する硬化性樹脂組成物及びその成分について説明する。
【0038】
((A)成分)
(A)成分であるオキシラン環又はオキセタン環を有し、かつエチレン性不飽和結合を有する化合物は、エチレン性不飽和結合とオキシラン環又はオキセタン環を分子内に有する化合物であれば特に限定されない。具体的には、例えば、エチレン性不飽和結合を有するエポキシ化合物、エチレン性不飽和結合を有するオキセタン化合物等が挙げられ、エチレン性不飽和結合を有するエポキシ化合物を用いると好ましい。
【0039】
かかるエチレン性不飽和結合を有するエポキシ化合物としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基等のエチレン性不飽和基を1つ以上有するエポキシ樹脂であれば特に限定されない。具体的には、エチレン性不飽和基を有するポリブタジエン変性エポキシ化合物、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン等のビニル基を有する脂環式エポキシ樹脂、グリシジルメタクリレート(GMA)、メチルグリシジルメタクリレート(M−GMA)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート等のアクリル基又はメタクリル基を有するエポキシ化合物等を例示できる。これらのなかでも、エチレン性不飽和基を有するポリブタジエン変性エポキシ化合物が好適に用いられる。
【0040】
上述のポリブタジエン変性エポキシ化合物としては、1,2−ポリブタジエン構造及び/又は1,4−ポリブタジエン構造を有する化合物のエチレン性不飽和基の一部をエポキシ化して得られるポリブタジエン変性エポキシ化合物(以下、「第1の変性エポキシ化合物」という。)、あるいは、オキシラン環と反応する、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、イミノ基又は2,5−ジヒドロフラン−2,5−ジオン−3−イル基などの基を有する変性ポリブタジエンと、2つ以上のオキシラン環を有する多官能エポキシ化合物とを反応させて得られるポリブタジエン変性エポキシ化合物(以下、「第2の変性エポキシ化合物」という。)等が挙げられる。そのような化合物のうち、分子中の末端又は側鎖にビニル基を一つ以上有するポリブタジエン変性エポキシ化合物を用いると、特に好ましい。
【0041】
第1の変性エポキシ化合物の具体例としては、上記一般式(1)若しくは(2)で表される化合物、又は上記一般式(5)で表される構造単位を有する化合物が挙げられる。式(1)で表されるエポキシ化合物としては、BF−1000(日本曹達社製、商品名)等、式(2)で表されるエポキシ化合物としては、PB3600(ダイセル化学工業社製、商品名)等、式(5)で表される構造単位を有するエポキシ化合物としては、A1005、A1010、A1020(以上、ダイセル化学工業社製、商品名)等を商業的に入手可能である。
【0042】
第2の変性エポキシ化合物の具体例としては、上記一般式(3)で示されるような、カルボキシル基を有するポリブタジエンとビスフェノールA型エポキシ樹脂とを反応させて得られるエポキシ化合物が例示できる。式(3)中、Rは上記式(4)で表される基である。このような第2の変性エポキシ化合物としては、EPB−13(日本曹達社製、商品名)を、商業的に入手できる。
【0043】
第2の変性エポキシ化合物は、多官能エポキシ化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂の他に、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、アラルキレン骨格含有エポキシ樹脂、ビフェニル−アラルキレン骨格エポキシ樹脂、フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、低級アルキル基置換フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂及び多官能脂環式エポキシ樹脂等を用いて得られるポリブタジエン変性エポキシ化合物であってもよい。
【0044】
また、本実施形態に係る(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
((B)成分)
(B)成分であるトリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂の主鎖にトリアジン環を含むノボラック型フェノール樹脂であり、分子内にトリアジン環を有するクレゾールノボラック型フェノール樹脂であってもよい。
【0046】
トリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂の分子中の窒素含有量は、その樹脂の総量に対して10〜25質量%であると好ましく、より好ましくは12〜19質量%である。分子中の窒素含有量がこの範囲内にあると、誘電損失が大きくなりすぎることもなく、接着補助剤をワニスとする場合に、溶剤への溶解度が適当となり、未溶解物の残存量を抑制できる。トリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂は、その数平均分子量が500〜600であると、本発明の上記効果を一層有効に奏することができるので好ましい。これらは1種を単独でも2種以上を組み合わせても用いることができる。
【0047】
トリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂は常法により得られ、例えば、フェノールとアルデヒドとトリアジン環を分子内に有する化合物とを、pH5〜9の条件下で反応させて得られる。トリアジン環を分子内に有する化合物としては、メラミン、グアナミン及びその誘導体、シアヌル酸及びその誘導体などを使用することができる。原料のフェノールに代えてクレゾールを用いると、トリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂が得られる。クレゾールは、o−クレゾール、m−クレゾール及びp−クレゾールのいずれをも使用することができる。
【0048】
トリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂の市販品としては、例えば、大日本インキ化学工業株式会社製のトリアジン環含有ノボラックフェノール樹脂LA−1356(窒素含有量:19質量%、固形分濃度58〜62質量%、商品名)が挙げられる。トリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂の市販品としては、例えば、大日本インキ化学工業株式会社製のトリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂フェノライトEXB−9829(窒素含有量:18質量%、商品名)が挙げられる。
【0049】
本実施形態に係る接着層の構成材料である熱硬化性樹脂組成物において、(B)成分の配合割合は、(A)成分100質量部に対して、0.5〜200質量部の範囲とすると好ましく、7〜80質量部とすることがより好ましく、10〜50質量部とすることが更に好ましい。(B)成分であるトリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂の配合割合が0.5質量部未満であると、かかる配合割合の(B)成分を採用して得られる接着層付き金属箔又はプリント配線板において、硬化層の靭性や硬化層と金属箔(導電層)との接着性が低下する傾向にある。また、200質量部を超えると、接着層の熱硬化性及び接着層(硬化層)と絶縁樹脂層との反応性が低下するため、接着層(硬化層)や絶縁樹脂層と接着層(硬化層)との界面近傍の耐熱性、耐薬品性及び破壊強度が低下する傾向にある。
【0050】
本実施形態の接着層付き金属箔において、接着層の構成材料である熱硬化性樹脂組成物は、(A)成分のオキシラン環又はオキセタン環と(B)成分のトリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂との反応を促進させるような触媒機能を有する硬化促進剤を更に含有していると好ましい。具体的には、硬化促進剤として、アミン化合物、イミダゾール化合物、有機リン化合物、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、第四級アンモニウム塩等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの硬化促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
熱硬化性樹脂組成物における硬化促進剤の配合割合は、(A)成分の配合割合に応じて決定することができ、(A)成分100質量部に対して、0.05〜10質量部とすることが好ましい。この数値範囲内で硬化促進剤を配合すると、適切な反応速度が得られ、しかも接着層の熱硬化性樹脂組成物が反応性、硬化性に一層優れるようになるため、得られる硬化層が、より優れた耐薬品性、耐熱性及び/又は耐湿耐熱性を備えるようになる。
【0052】
また、本実施形態に係る接着層の構成材料である熱硬化性樹脂組成物には、接着層中の(A)成分同士の架橋反応、並びに、本実施形態に係る接着層付き金属箔を用いて形成されるプリント配線板において接着層(硬化層)に隣接する絶縁樹脂層中の不飽和結合を有する化合物と接着層中の(A)成分との架橋反応を促進させるために、ラジカル重合開始剤を更に含有していると好ましい。
【0053】
具体的には、ラジカル重合開始剤として、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、イソブチリルパーオキサイド、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンゾインメチルエーテル、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらのラジカル重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
熱硬化性樹脂組成物におけるラジカル重合開始剤の配合割合は、(A)成分の配合割合に応じて決定することができ、(A)成分100質量部に対して、0.5〜10質量部とすることが好ましい。この数値範囲内でラジカル重合開始剤を配合すると、適切な反応速度が得られ、しかも接着層の熱硬化性樹脂組成物が反応性、硬化性に一層優れるようになるため、得られる硬化層の破壊強度や導体引き引き剥がし強さが高くなり、耐薬品性、耐熱性及び耐湿耐熱性に優れるようになる。
【0055】
また、本実施形態に係る接着層の構成成分である熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて難燃剤、充填剤等の各種添加剤を、プリント配線板とした際の耐熱性、接着性、耐吸湿性等の特性を悪化させない範囲の配合量で、更に配合してもよい。
【0056】
上記難燃剤としては特に限定されないが、臭素系、リン系、金属水酸化物等の難燃剤が好適に用いられる。より具体的には、臭素系難燃剤としては、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の臭素化エポキシ樹脂、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン及び2,4,6−トリス(トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン等の臭素化添加型難燃剤、トリブロモフェニルマレイミド、トリブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、テトラブロモビスフェノールA型ジメタクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート及び臭素化スチレン等の不飽和二重結合含有の臭素化反応型難燃剤が挙げられる。
【0057】
リン系難燃剤しては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ−2,6−キシレニルホスフェート及びレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)等の芳香族系リン酸エステル、フェニルホスホン酸ジビニル、フェニルホスホン酸ジアリル及びフェニルホスホン酸ビス(1−ブテニル)等のホスホン酸エステル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド誘導体等のホスフィン酸エステル、ビス(2−アリルフェノキシ)ホスファゼン、ジクレジルホスファゼン等のホスファゼン化合物、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸アンモニウム及び赤リン等のリン系難燃剤を例示できる。また、金属水酸化物難燃剤としては水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等が例示される。
【0058】
上述の難燃剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物における難燃剤の配合割合は特に限定されるものではないが、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、5〜150質量部とすることが好ましく、5〜80質量部とすることがより好ましく、5〜60質量部とすることが更に好ましい。難燃剤の配合割合が5質量部未満では耐燃性が不十分となる傾向があり、100質量部を超えると硬化させた接着層の耐熱性が低下する傾向にある。
【0060】
上述の充填剤としては特に限定されるものではないが、通常無機充填剤が好適に用いられ、無機充填剤としては、例えば、アルミナ、酸化チタン、マイカ、シリカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー等のクレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素等が挙げられる。これらの充填剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、充填剤の形状、粒径についても特に制限はなく、通常、粒径0.01〜50μm、好ましくは0.1〜15μmのものが好適に用いられる。
【0061】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物における充填剤の配合割合は特に限定するものではないが、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、1〜1000質量部が好ましく、1〜800質量部がより好ましい。
【0062】
本実施形態に係る接着層の構成材料である熱硬化性樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分、硬化促進剤、ラジカル重合開始剤及び必要に応じてその他の添加剤を、公知の方法で配合、混合することにより製造することができる。
【0063】
本発明の好適な第2の実施形態に係る接着層付き金属箔は、金属箔と、該金属箔上に設けられた接着層とを備える接着層付き金属箔であって、接着層は、(A)成分;オキシラン環又はオキセタン環を有し、かつエチレン性不飽和結合を有する化合物と、(B)成分;トリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂と、(C)成分;高分子成分とを含有する硬化性樹脂組成物からなるものである。
【0064】
本実施形態に係る(A)成分及び(B)成分としては、本発明の好適な第1の実施形態に係る(A)成分及び(B)成分と同様のものを用いることができる。
【0065】
((C)成分)
(C)成分の高分子成分としては、架橋ゴム粒子であることが好ましく、アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子及びブタジエンゴム−アクリル樹脂のコアシェル粒子からなる群より選ばれる1種以上の粒子からなることがより好ましい。これにより、絶縁層及び導電層間の接着力の向上がより一層図られる、という利点がある。
【0066】
アクリロニトリルブタジエンゴム粒子は、アクリロニトリル及びブタジエンを共重合させ、かつ共重合する段階で、部分的に架橋させ、粒子状にしたものである。またその共重合の段階で、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボン酸を併せて共重合させることにより、カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子を得ることも可能である。
【0067】
ブタジエンゴム−アクリル樹脂のコアシェル粒子は、乳化重合でブタジエン粒子を重合させ、引き続きアクリル酸エステル、アクリル酸等のアクリル樹脂の原料となるモノマーを添加して重合を続ける二段階の重合方法で得ることができる。粒子の大きさは、一次平均粒子径で、50nm〜1μmにすることができる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
アクリロニトリルブタジエンゴム粒子の市販品としては、例えば日本合成ゴム株式会社製、XER−81(商品名)が挙げられ、カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子の市販品としては、例えば日本合成ゴム株式会社製のXER−91(商品名)が挙げられる。また、ブタジエンゴム−アクリル樹脂のコアシェル粒子としては、呉羽化学工業株式会社製のEXL−2655、武田薬品工業株式会社のAC−3832(いずれも商品名)が挙げられる。
【0069】
(C)成分は、ポリビニルアセタール樹脂及び/又はカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂からなることも好ましい。これにより、絶縁層及び導電層間の接着力の向上がより一層図られる、という利点がある。
【0070】
ポリビニルアセタール樹脂の種類、水酸基量、アセチル基量は特に限定されないが、数平均重合度は1000〜2500のものが好ましい。数平均重合度がこの範囲内にあると、はんだ耐熱性を一層確保でき、また、ワニスの粘度、取り扱い性も更に良好となる。ここでポリビニルアセタール樹脂の数平均重合度は、その原料であるポリ酢酸ビニルの数平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィによる標準ポリスチレンの検量線を用いて測定する)から決定することができる。
【0071】
また、ポリビニルアセタール樹脂に加えて又は代えて、ポリビニルアセタール樹脂を常法によりカルボン酸変性して得られるカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂を用いることもできる。カルボン酸変性ポロビニルアセタール樹脂についても、ポリビニルアセタール樹脂と同様の理由により、数平均重合度が1000〜2500のものが好ましい。
【0072】
ポリビニルアセタール樹脂及びカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂は常法により合成してもよく、市販品を入手してもよい。市販品としては、例えば、積水化学工業株式会社製の商品名エスレックBX−1、BX−2、BX−5、BX−55、BX−7、BH−3、BH−S、KS−3Z、KS−5、KS−5Z、KS−8、KS−23Z、電気化学工業株式会社製の商品名、電化ブチラール4000−2、5000A、6000C、6000EP等が挙げられる。
これらの樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0073】
(C)成分として上述の架橋ゴム粒子並びにポリビニルアセタール樹脂及び/又はカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂を併用すると、金属箔の引き剥がし強さや化学粗化後の無電解めっきの引き剥がし強さが向上するので、更に好ましい。
【0074】
また、(C)成分はポリアミドイミドであることが好ましい。これにより、高周波帯での伝送損失の低減、及び絶縁層及び導電層間の接着力の向上をより高いレベルで実現可能となる。
【0075】
ポリアミドイミドは、特に限定されるものではないが、例えば、無水トリメリット酸と芳香族ジイソシアネートとの反応による、いわゆるイソシアネート法で合成されるポリアミドイミドが挙げられる。ポリアミドイミドを合成するイソシアネート法の具体例としては、芳香族トリカルボン酸無水物とエーテル結合を有するジアミン化合物とをジアミン化合物過剰存在下で反応させ、次いでジイソシアネートを反応させる方法(例えば、特許2897186号公報に記載の方法)、芳香族ジアミン化合物と無水トリメリット酸とを反応させる方法(例えば、特開平04−182466号公報に記載の方法)が挙げられる。
【0076】
また、ポリアミドイミドの主鎖にシロキサン構造を導入させてもよい。これにより、接着層を硬化させて得られる硬化層の弾性率や可撓性等の特性が向上し、さらに乾燥効率等も改善することができる。かかる主鎖にシロキサン構造を有するポリアミドイミドは、イソシアネート法に従って合成可能である。具体的な合成方法としては、例えば、芳香族トリカルボン酸無水物、芳香族ジイソシアネート及びシロキサンジアミン化合物を重縮合させる方法(例えば、特開平05−009254号公報に記載の方法)、芳香族ジカルボン酸又は芳香族トリカルボン酸とシロキサンジアミン化合物とを重縮合させる方法(例えば、特開平06−116517号公報に記載の方法)、芳香族環を3つ以上有するジアミン化合物及びシロキサンジアミンを含む混合物と無水トリメリット酸とを反応させて得られるジイミドジカルボン酸を含む混合物を、芳香族ジイソシアネートと反応させる方法(例えば、特開平06−116517号公報に記載の方法)等が挙げられる。本実施形態においては、上述の公知の方法で合成されるポリアミドイミドを用いても、十分に高い金属箔引き剥がし強さを発現し得る。
【0077】
さらには、飽和炭化水素からなる構造単位を有するポリアミドイミドを用いると、金属箔引き剥がし強さが更に向上し、しかも耐湿性が向上するため、吸湿後にも高い接着性を維持し、一層高い耐湿耐熱性が得られる。同様の観点から、上記構造単位が飽和脂環式炭化水素基であるとより好ましい。飽和脂環式炭化水素基を含有するポリアミドイミドは耐湿耐熱性に一層優れ、より高いTgを示す。
【0078】
飽和炭化水素からなる構造単位を有するポリアミドイミドは、例えば、飽和炭化水素基を有するジアミン化合物と無水トリメリット酸とを反応させて得られるイミド基含有ジカルボン酸を酸ハロゲン化物を誘導して、または縮合剤を用いて、ジアミン化合物と反応させることにより得られる。あるいは、飽和炭化水素からなる構造単位を有するポリアミドイミドは、飽和炭化水素基を有するジアミン化合物と無水トリメリット酸とを反応させて得られるイミド基含有ジカルボン酸に、ジイソシアネートを反応させることによっても得られる。同様に、飽和脂環式炭化水素からなる構造単位を有するポリアミドは、上記の合成法において、ジアミン化合物として飽和脂環式炭化水素基を有するものを用いればよい。
【0079】
上述のジアミン化合物としては、例えば下記一般式(6a)又は(6b)で表されるものが挙げられる。
【化7】


式(6a)、(6b)中、Lはハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基、カルボニル基、単結合又は下記式(7a)又は(7b)で表される2価の基を示し、Lはハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基又はカルボニル基を示し、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、水酸基、メトキシ基、ハロゲン置換されていてもよいメチル基を示す。
【0080】
【化8】


式(7a)中、Lはハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基、カルボニル基又は単結合を示す。
【0081】
飽和脂環式炭化水素基を有するジアミン化合物としては、2,2−ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]プロパン、ビス[4−(3−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルホン、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]メタン、4,4’−ビス(4−アミノシクロヘキシルオキシ)ジシクロヘキシル、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]エーテル、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]ケトン、1,3−ビス(4−アミノシクロヘキシルオキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノシクロヘキシルオキシ)ベンゼン、2,2’−ジメチルビシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ジシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、2,6,2’,6’−テトラメチル−4,4’−ジアミン、5,5’−ジメチル−2,2’−スルフォニルジシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、3,3’−ジヒドロキシジシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルエーテル、(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルスルホン、(4,4’−ジアミノシクロヘキシル)ケトン、(3,3’―ジアミノ)ベンゾフェノン、(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン、(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルエーテル、(3,3’−ジアミノ)ジシクロヘキシルエーテル、(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン、(3,3’―ジアミノ)ジシクロヘキシルエーテル、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン等を例示できる。これらのジアミン化合物は1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、さらに他のジアミン化合物、すなわち飽和炭化水素基を有していないジアミン化合物を併用することもできる。
【0082】
飽和脂環式炭化水素基を有するジアミン化合物は、例えば、芳香族ジアミン化合物を水素還元することによって容易に得ることが可能である。このような芳香族ジアミン化合物としては、例えば、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(以下、「BAPP」と表記する。)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−4,4’−ジアミン、2,6,2’,6’−テトラメチル−4,4’−ジアミン、5,5’−ジメチル−2,2’−スルフォニルビフェニル−4,4’−ジアミン、3,3’−ジヒドロキシビフェニル−4,4’−ジアミン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルスルホン、(4,4’−ジアミノ)ベンゾフェノン、(3,3’―ジアミノ)ベンゾフェノン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルメタン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(3,3’―ジアミノ)ジフェニルエーテル等を例示できる。
【0083】
芳香族ジアミン化合物の水素還元は、芳香環の一般的な還元方法によって可能である。そのような還元方法としては、例えば、ラネーニッケル触媒や酸化白金触媒(D.Varechら、Tetrahedron Letter 26、 61(1985)、R.H.Bakerら、J.Am.Chem.Soc.、69、1250(1947))、 ロジウム−酸化アルミニウム触媒(J.C.Sircarら、J.Org.Chem.、30、3206(1965)、A.I.Meyersら、Organic Synthesis Collective Volume VI、 371(1988)、A.W.Burgstahler、OrganicSynthesis Collective Volume V、 591(1973)、 A.J.Briggs、 Synthesis、 1988、 66)、酸化ロジウム−酸化白金触媒(S.Nishimura、Bull.Chem.Soc.Jpn.、34、32(1961)、E.J.Coreyら、J.Am.Chem.Soc.101、1608(1979))、チャコール担持ロジウム触媒(K.Chebaaneら、Bull.Soc.Chim.Fr.、1975、244)、水素化ホウ素ナトリウム−塩化ロジウム系触媒(P.G.Gassmanら、OrganicSynthesis Collective Volume VI、 581(1988)、P.G.Gassmanら、Organic Synthesis Collective Volume VI、 601(1988))などの触媒の存在下での水素還元等が挙げられる。
【0084】
本発明において好適に用いられるポリアミドイミドは、ジアミン化合物として、上述したジアミン化合物に加えて下記一般式(8)で表されるジアミン化合物を用いることによって合成することができる。
【化9】


式(8)中、Lはメチレン基、スルホニル基、オキソ基、カルボニル基又は単結合を示し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又は置換していてもよいフェニル基を示し、kは1〜50の整数を示す。
【0085】
及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は置換していてもよいフェニル基であると好ましい。フェニル基に結合していてもよい置換基としては、炭素数1〜3のアルキル基、ハロゲン原子等を例示できる。一般式(8)で表されるジアミン化合物において、低弾性率及び高Tgを両立する観点から、Lがオキシ基であることが特に好ましい。このようなジアミン化合物としては、ジェファーミンD−400、ジェファーミンD−2000(以上、サンテクノケミカル社製、商品名)等を例示できる。
【0086】
本発明において好適に用いられるポリアミドイミドは、上述のような特定の飽和炭化水素基を有するジアミン化合物から得られることに起因して、耐吸水性又は撥水性が従来のポリアミドイミドと比較して極めて高くなる。特に、脂環式飽和炭化水素基を有するジアミン化合物から得られる、脂環式飽和炭化水素からなる構造単位を有するポリアミドイミドを、後述の熱硬化性樹脂組成物の構成材料として用い、本実施形態の接着層付き金属箔を形成すると、かかる接着層付き金属箔から得られる金属張積層板は、例えば芳香環を有するポリアミドイミドを含有する樹脂組成物を構成材料に用いた場合に比べて、吸湿時の接着性が低下し難くなる。
【0087】
さらに好ましくは、本発明に係るポリアミドイミドが、飽和炭化水素基を有するジアミン化合物に芳香族ジアミン化合物を併用して合成することができる。そのような芳香族ジアミン化合物としては、下記一般式(9a)、(9b)で表されるものを例示できる。
【化10】

【0088】
式(9a)、(9b)中、Lはハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基、カルボニル基、単結合又は下記式(10a)又は(10b)で表される2価の基を示し、Lはハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基又はカルボニル基を示し、R10、R11及びR12は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、メトキシ基、ハロゲン置換されていてもよいメチル基を示す。
【化11】


式(10a)中、Lはハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基、カルボニル基又は単結合を示す。
【0089】
より具体的には、芳香環に2つのアミノ基が直接結合している化合物、及び2つ以上の芳香環が直接又は一つの基を介して結合しているジアミンであれば特に制限はないが、例えば、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−4,4’−ジアミン、2,6,2’,6’−テトラメチル−4,4’−ジアミン、5,5’−ジメチル−2,2’−スルフォニルビフェニル−4,4’−ジアミン、3,3’−ジヒドロキシビフェニル−4,4’−ジアミン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルスルホン、(4,4’−ジアミノ)ベンゾフェノン、(3,3’―ジアミノ)ベンゾフェノン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルメタン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(3,3’―ジアミノ)ジフェニルエーテル等が挙げられる。これらの芳香族ジアミン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの芳香族ジアミン化合物を上述のジアミン化合物と併用して得られる接着層の熱硬化性樹脂組成物は、更にTgが向上し、耐熱性を改良することが可能となる。
【0090】
さらには、ジアミン化合物として、下記一般式(11)で表されるシロキサンジアミンを併用してもよい。
【化12】


式(11)中、R13、R14、R15、R16、R17及びR18(以下、「R13〜R18」のように表記する。)は、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基又は置換していてもよいフェニル基であると好ましい。フェニル基に結合していてもよい置換基としては、炭素数1〜3のアルキル基又はハロゲン原子が好ましい。R19及びR20は、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキレン基又は置換していてもよいアリーレン基が好ましく、該アリーレン基としては置換していてもよいフェニレン基又は置換していてもよいナフタレン基が好ましい。アリーレン基に結合していてもよい置換基としては、炭素数1〜3のアルキル基又はハロゲン原子が好ましい。また、a及びbはそれぞれ1〜15の整数を示す。
【0091】
かかるシロキサンジアミンとしては、ジメチルシロキサンの両末端にアミン基が結合したものを用いることが特に好ましい。これらのシロキサンジアミンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。一般式(11)で表されるシロキサンジアミンは、シリコーンオイルX−22−161AS(アミン当量450)、X−22−161A(アミン当量840)、X−22−161B(アミン当量1500)、X−22−9409(アミン当量700)、X−22−1660B−3(アミン当量2200)(以上、信越化学工業社製、商品名)、BY16−853(アミン当量650)、BY16−853B(アミン当量2200)、(以上、東レダウコーニングシリコーン社製、商品名)等として商業的に入手可能である。
【0092】
上述のシロキサンジアミンを原料として用いることにより得られるポリアミドイミドは、主鎖にシロキサン構造を有するようになるため、可撓性が向上し、また、高温条件下における膨れ等の発生を大幅に低減させることができる。
【0093】
本実施形態に係るポリアミドイミドを得るには、例えば、まず、上記ジアミン化合物のアミノ基を無水トリメリット酸のカルボキシル基又は無水カルボキシル基と反応させる。この際、上記アミノ基が無水カルボキシル基と反応すると好ましい。かかる反応は、両化合物を非プロトン性極性溶媒に溶解又は分散させて、70〜100℃で行うことができる。非プロトン性極性溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、シクロヘキサノン等を例示でき、これらのなかでもNMPが特に好ましい。これらの非プロトン性極性溶媒は、1種を単独でも用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
上述の非プロトン性極性溶媒は、該非プロトン性極性溶媒、ジアミン化合物及び無水トリトメット酸を含有する溶液の全重量に対して、固形分が10〜70質量%となる量であると好ましく、20〜60質量%となる量であるとより好ましい。この溶液中の固形分が10質量%未満となる場合、溶媒の使用量が多いため工業的に不利となる傾向にあり、70質量%を超えると、無水トリメリット酸の溶解性が低下し、充分な反応を行うことが困難となる傾向にある。
【0095】
次いで、上記反応後の溶液中に水と共沸可能な芳香族炭化水素を添加し、150〜200℃で更に反応させて脱水閉環反応を生じさせることにより、イミド基含有ジカルボン酸を得ることができる。水と共沸可能な芳香族炭化水素としては、トルエン、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン等を例示でき、トルエンを用いることが好ましい。かかる芳香族炭化水素は、非プロトン性極性溶媒100質量部に対して、10〜50質量部に相当する量を添加されることが好ましい。芳香族炭化水素の添加量が、非プロトン性極性溶媒100質量部に対して10質量部未満である場合、水の除去効果が不十分となる傾向があり、イミド基含有ジカルボン酸の生成量が減少する傾向がある。また、50質量部を超えると、反応温度が低下し、イミド基含有ジカルボン酸の生成量が減少する傾向にある。
【0096】
また、脱水閉環反応中に、水と同時に溶液中の芳香族炭化水素も留出することにより、その芳香族炭化水素量が上述の好適な範囲よりも少なくなる場合があるため、例えば、コック付きの水分定量受器中に留出した芳香族炭化水素を水と分離した後に反応溶液中に戻す等して、芳香族炭化水素量を一定割合に保つことが好ましい。なお、脱水閉環反応の終了後には、溶液の温度を150〜200℃程度に保持して水と共沸可能な芳香族炭化水素を除去しておくことが好ましい。
【0097】
上述のようにして得られるイミド基含有ジカルボン酸は、例えば、下記一般式(12)で表される化合物が好適である。
【化13】


式中、Lは上記一般式(6a)、(6b)、(8)、(9a)、(9b)又は(11)で表されるジアミン化合物のアミノ基を除いた残基を示す。ここで、R〜R20及びk、a、bは上記と同義である。
【0098】
本実施形態において好適に用いられるポリアミドイミドは、上述したようなイミド基含有ジカルボン酸を酸ハロゲン化物に誘導し、上記ジアミン化合物と共重合させて製造することができる。イミド基含有ジカルボン酸は、塩化チオニルや三塩化リン、五塩化リン、ジクロロメチルメチルエーテルとの反応により容易に酸ハロゲン化物に誘導され、得られるイミド基含有ジカルボン酸のハロゲン化物は室温若しくは加熱条件下で容易に上記ジアミン化合物と共重合させることができる。
【0099】
また、本実施形態において好適に用いられるポリアミドイミドは、上述したようなイミド基含有ジカルボン酸を縮合剤の存在下、上記ジアミン化合物と共重合させて製造することができる。かかる反応において、縮合剤としては、アミド結合を形成する一般的な縮合剤を用いることができるが、特にジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド若しくはN−エチル−N’−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミドを単独で、又はN−ヒドロキシスクシンイミド若しくは1−ヒドロキシベンゾトリアゾールと併用することが好ましい。
【0100】
さらに、本実施形態のポリアミドイミドは、上述したように、上記イミド基含有ジカルボン酸を酸ハロゲン化物に誘導した後、ジイソシアネートを反応させて得ることができる。かかる反応を経由する場合、(ジアミン化合物:無水トリメリット酸:ジイソシアネート)は、モル比で1.0:(2.0〜2.2):(1.0〜1.5)の範囲であることが好ましく、1.0:(2.0〜2.2):(1.0〜1.3)の範囲であることがより好ましい。反応の際、これらの化合物のモル比を上記範囲内とすることにより、より高分子量でフィルム形成に有利なポリアミドイミドを得ることが可能となる。
【0101】
ポリアミドイミドの合成の際に用いるジイソシアネートとしては、下記一般式(13)で表される化合物を例示できる。
【化14】

【0102】
式(13)中、Lは1つ以上の芳香環を有する2価の有機基、又は、2価の脂肪族炭化水素基であり、下記式(14a)で表される基、下記式(14b)で表される基、トリレン基、ナフチレン基、ヘキサメチレン基及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレン基からなる群より選ばれる基であることが好ましい。
【化15】

【0103】
一般式(13)で表されるジイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネート又は芳香族ジイソシアネートを用いることができるが、芳香族ジイソシアネートを用いることが好ましく、両者を併用することが特に好ましい。芳香族ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、2,4−トリレンダイマー等を例示でき、MDIを用いることが特に好ましい。芳香族ジイソシアネートとしてMDIを用いることにより、得られるポリアミドイミドの可撓性を向上させ、結晶性を低減させることができるので、ポリアミドイミドのフィルム形成性を向上させることができる。脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等を例示できる。
【0104】
芳香族ジイソシアネート及び脂肪族ジイソシアネートを併用する場合は、脂肪族ジイソシアネートを芳香族ジイソシアネート100モル部に対して5〜10モル部程度添加することが好ましい、これにより、得られるポリアミドイミドの耐熱性を更に向上させることができる。
【0105】
イミド基含有ジカルボン酸とジイソシアネートとの反応は、イミド基含有ジカルボン酸を含む溶液中にジイソシアネートを添加することにより、反応温度130〜200℃で行うことができる。塩基性触媒を用いる場合は、この反応を70〜180℃で行うことが好ましく、120〜150℃で行うことがより好ましい。塩基性触媒の存在下でかかる反応を行う場合は、塩基性触媒の不在下で反応を行う場合に比べて、より低い温度でこの反応を進行させることが可能となるため、高温条件下におけるジイソシアネート同士の反応等の副反応の進行を抑制でき、更に高分子量のポリアミドイミド化合物を得ることが可能となる。
【0106】
かかる塩基性触媒としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリ(2−エチルへキシル)アミン、トリオクチルアミン等のトリアルキルアミンが例示できる。なかでもトリエチルアミンは、上述の反応を促進できる好適な塩基性触媒であり、かつ反応後の系内からの除去が容易であることから特に好ましい。
【0107】
上記反応により得られるポリアミドイミドは、下記一般式(15)で表される構造単位を有している。なお式中、L、Lは、上述のL、Lと同義である。
【化16】

【0108】
上述のようにして得られたポリアミドイミドの重量平均分子量(Mw)は、20000〜300000であると好ましく、30000〜200000であるとより好ましく、40000〜150000であると特に好ましい。なお、ここでいうMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定を行い、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算したものである。
【0109】
本実施形態の接着層付き金属箔において、接着層の構成材料である熱硬化性樹脂組成物は、(A)成分のオキシラン環又はオキセタン環と(B)成分のトリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂及び(C)成分との硬化反応を促進させるような触媒機能を有する硬化促進剤を更に含有していると好ましい。硬化促進剤の具体例としては、第1の実施形態で例示列挙したものが挙げられ、それらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0110】
また、本実施形態に係る接着層の構成材料である熱硬化性樹脂組成物には、(A)成分の不飽和結合基の架橋反応を促進させるためにラジカル重合開始剤を更に含有していると好ましい。ラジカル重合開始剤の具体例としては、第1の実施形態で例示列挙したものが挙げられ、それらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0111】
また、本実施形態に係る接着層の構成成分である熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて難燃剤、充填剤等の各種添加剤を、プリント配線板とした際の耐熱性、接着性、耐吸湿性等の特性を悪化させない範囲の配合量で、更に配合してもよい。それらの添加剤の具体例、形状及び粒径は第1の実施形態において説明したものと同様である。また、好ましい配合割合は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量に対して、第1の実施形態において説明した(A)成分及び(B)成分の合計量に対する配合割合と同様の数値範囲である。
【0112】
本発明の好適な実施形態に係る接着層の構成材料である熱硬化性樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、硬化促進剤、ラジカル重合開始剤及び必要に応じてその他の添加剤を、公知の方法で配合、混合することにより製造することができる。
【0113】
本発明の好適な実施形態に係る接着層付き金属箔において、接着層の膜厚(厚さ)は0.1〜10.0μmであると好ましく、0.5〜5.0μmであるとより好ましい。この膜厚が0.1μm未満では、接着層を備えた金属張積層板において金属箔の引き剥がし強さを向上させ難くなる傾向にあり、10.0μmを超えると、特に金属張積層板の絶縁樹脂層に後述するような樹脂を用いる場合、高周波伝送特性が低下する傾向にある。
【0114】
本発明の好適な実施形態に係る金属箔は特に限定されず、銅箔、ニッケル箔、アルミ箔とが挙げられるが、通常は電界銅箔又は圧延銅箔を用いると好ましい。また、かかる金属箔は、その防錆性、耐薬品性や耐熱性を向上させる観点から、ニッケル、錫、亜鉛、クロム、モリブデン、コバルト等によるバリアー層形成処理、絶縁層との接着性を向上させる観点から、表見粗化処理やシランカップリング剤による処理等の通常の表面処理が施されていると好ましい。
【0115】
これらの表面処理のうち表面粗化処理に関しては、M面における表面粗さ(Rz)が好ましくは4μm以下、より好ましくは2μm以下となるように粗化処理を施していると、高周波伝送特性を更に向上できる。また、シランカップルリング剤処理に用いるシランカップルリング剤としては、エポキシシラン、アミノシラン、カチオニックシラン、ビニルシラン、アクリロキシシラン、メタクロイロキシシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、イソシアネートシラン等が挙げられるが、特に限定されない。
【0116】
金属箔は1種の金属材料からなる単層であってもよく、複数の金属材料からなる単層であってもよく、異なる材質の金属層を複数積層して形成されていてもよく、その厚さは特に限定されない。これらの金属箔のうち、銅箔としてはF2−WS(古河サーキットフォイル社製、Rz=3.0)、F0−WS(古河サーキットフォイル社製、商品名、Rz=1.2μm)、3EC−VLP(三井金属社製、商品名、Rz=3.0)等が商業的に入手可能である。
【0117】
本発明の好適な実施形態に係る接着層付き金属箔は、公知の方法により製造できる。すなわち、上述した本発明の好適な実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物、又はこの樹脂組成物を溶媒に溶解又は分散させたワニスを上記金属箔の片面(M面側)に塗布した後、乾燥させて半硬化(Bステージ化)させ接着層を金属箔上に形成する。これにより、本実施形態の接着層付き金属箔を得ることができる。塗布は、公知の方法により実施可能であり、例えばキスコーター、ロールコーター、コンマコーター等を用いて行うことができる。乾燥は、加熱乾燥炉中等で通常70〜250℃、好ましくは100〜200℃の温度で、1〜30分間、好ましくは3〜15分間乾燥する方法が挙げられる。この際の乾燥温度は、熱硬化性樹脂組成物を溶解等するために溶媒を使用した場合は、溶媒の揮発可能な温度以上であると好ましい。
【0118】
上述の熱硬化性樹脂組成物をワニス化する際に用いられる溶媒は特に限定するものではないが、具体例としては、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、カルビトール、ブチルカルビトール等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル等のエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の含窒素類等の溶媒が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0119】
こうして得られる本発明の好適な実施形態に係る接着層付き金属箔は、図1の部分斜視図に示すように、上述の金属箔10のM面12上に接着層20が積層された構造となっている。
【0120】
これらの溶媒のうち、芳香族炭化水素及びケトン類を用いる場合のそれらの配合割合は、芳香族炭化水素100質量部に対してケトン類を30〜300質量部であると好ましく、30〜250質量部であるとより好ましく、30〜220質量部であると更に好ましい。また、ワニス化する際はニス中の固形分(不揮発分)濃度が通常5〜80質量%となるように溶媒の使用量を調節することが好ましいが、本発明の好適な実施形態に係る接着層付き金属箔を製造する場合、溶媒量を調節することにより、接着層が所望の膜厚、特に上述した好ましい膜厚を有するように固形分濃度やワニス粘度を調整することができる。
【0121】
以上説明した本発明の好適な実施形態に係る接着層付き金属箔を用いると、これから得られる金属張積層板は、絶縁樹脂層の構成材料にポリブタジエン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、官能化ポリフェニレンエーテル等の低誘電率樹脂を採用した際に、高い導体箔引き剥がし強さを発現できるだけでなく、吸湿時にも高い接着力を維持できる。その結果、該金属張積層板は、十分に高い耐熱性と耐湿耐熱性を備えることとなる。
【0122】
さらに、これらの優れた特性は、接着面の表面粗化量が比較的小さい金属箔を備える場合であっても、十分に発現されるため、優れた高周波特性と高い接着性、耐熱性との両立が可能となる。これらのことから、本発明の接着層付き金属箔は、高周波信号を扱う各種電気・電子機器に備えられる印刷配線板を構成する金属張積層板等の部材・部品用途として有効である。
【0123】
次に、本発明の好適な実施形態に係る金属張積層板について説明する。この金属張積層板は、本発明の接着層付き金属箔を用いて形成されていればよく、その形成方法、形状、積層状態等は特に限定されない。したがって、該金属張積層板は、例えば、絶縁性を有する樹脂を含有する絶縁樹脂膜の少なくとも片面に、上述の接着層付き金属箔を、該接着層付き金属箔の接着層が接するように積層して積層体を得、該積層体を加熱及び加圧することにより得られる。より具体的には、まず、プリント配線板用の基材を形成するための絶縁樹脂膜としてプリプレグを準備する。プリプレグとしては、ポリブタジエン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、官能化ポリフェニレンエーテル等の樹脂をガラス繊維、有機繊維等の強化繊維に含浸させて公知の方法により作製されたものを用いることができる。
【0124】
次に準備したプリプレグを、好ましくは複数枚重ねた状態とし、このプリプレグに、上述した本発明に係る接着層付き金属箔をその接着層が接するように被着させ、被着後、所定の条件で加熱及び/又は加圧することにより金属張積層板が形成される。この場合の加熱は、好ましくは150〜250℃の温度で実施することができ、加圧は、好ましくは0.5〜10.0MPaの圧力で実施することができる。加熱及び加圧は真空プレス等を用いて同時に行うことが好ましく、この場合、これらの処理を30分〜10時間実施することで、接着層(硬化層)及び絶縁樹脂層が十分に硬化し、導電層及び絶縁層間の接着性に優れ、耐薬品性、耐熱性及び耐湿耐熱性にも優れた金属張積層板を製造することができる。なお、かかる接着層付き金属箔の被着は、プリプレグの片面にのみ行ってもよく、両面に被着させて両面金属張積層板を製造してもよい。
【0125】
このようにして製造された金属張積層板は、例えば、図2の部分断面図に示すように、プリプレグの硬化物(基材)である複数の絶縁樹脂層40を、接着層の硬化物である硬化層30が挟み、更に導電層としての金属箔10がそれらを挟んで形成されている。また、硬化により絶縁樹脂層40と硬化層30が実質的に一体化された状態となっており、言い換えると、絶縁樹脂層40と硬化層30からなる絶縁層50を導電層10が挟んだ状態で構成されている。かかる金属張積層板は、本発明の接着層付き金属箔を用いて作製されているため、特に高周波帯での伝送損失を十分に低減可能なプリント配線板を形成可能であり、しかも絶縁層50及び導電層10間の接着力が十分に強くなっている。
【0126】
次に、本発明の好適な実施形態に係るプリント配線板について説明する。このプリント配線板は、本発明の接着層付き金属箔を用いて形成されていればよく、その形成方法、形状、積層状態等は特に限定されない。よって、本実施形態に係るプリント配線板は、例えば、上述の本発明に係る金属張積層板を、公知の方法によって、穴開け加工や金属めっきを施した後、金属箔をエッチングにより回路形状に加工して得られる。
【0127】
このようにして得られたプリント配線板は、例えば、図3の部分断面図に示すように、スルーホール70の壁面上及び導電層10上にめっき皮膜60が形成され、導電層10が回路の一部を形成している。
【0128】
また、このプリント配線板を内層コア基板に用い、多層プリント配線板を形成することができる。まず、上記プリント配線板である内層コア基板の片面又は両面上に、上述したプリプレグを1層又は複数の層積層し、更にそのプリプレグの層上に金属箔を配置する。あるいは、プリプレグの層上に本発明に係る接着層付き金属箔を、接着層がプリプレグと接するように配置してもよい。そして、得られた積層体を加熱加圧成形し、穴開け加工や金属めっきを施した後、最外層の金属箔を回路形状に加工等して、多層プリント配線板を得ることができる。
【0129】
さらには、複数枚の内層コア基板と複数枚の上述のプリプレグを用いて、これらを交互に積層し、加熱加圧成形し、上記と同様の工程を経ることにより、更に多層のプリント配線板を得ることができる。この多層プリント配線板の最外層は、プリプレグの層上に通常の金属箔や本発明の接着剤付き金属箔を用いてもよく、コア基板を用いてもよい。
【0130】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0131】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0132】
[ポリアミドイミドの合成]
(合成例1)
まず、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、飽和脂環式炭化水素基を有するジアミン化合物Aとして(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン(ワンダミンHM(WHM)、新日本理化社製、商品名)45mmol、シロキサンジアミン化合物Bとして反応性シリコーンオイル(X−22−161−B、信越化学工業社製、アミン当量:1500、商品名)5mmol、無水トリメリット酸(TMA)105mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)145gを入れ、フラスコ内の温度を80℃に設定して30分間撹拌した。
【0133】
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mLを更に添加し、フラスコ内の温度を160℃に昇温して約2時間還流した。水分定量受器に理論量の水が貯留され、水の留出が見られなくなっていることを確認した後、水分定量受器中の水を除去しながら、フラスコ内の温度を190℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。
【0134】
フラスコ内の溶液を室温まで戻した後、ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)60mmolを添加し、フラスコ内の温度を190℃に上昇させて2時間反応させた後、NMPで希釈して合成例1のポリアミドイミドのNMP溶液(固形分濃度30質量%)を得た。このNMP溶液の重量平均分子量(Mw)をゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定したところ50000であった。
【0135】
(合成例2)
まず、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、飽和脂肪族炭化水素基を有するジアミン化合物CとしてジェファーミンD−2000(サンテクノケミカル社製、商品名)30mmol、芳香族ジアミン化合物Dとして(4,4’−ジアミノ)ジフェニルメタン(DDM)120mmol、無水トリメリット酸(TMA)315mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)442gを入れ、フラスコ内の温度を80℃に設定して30分間撹拌した。
【0136】
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mLを更に添加し、フラスコ内の温度を160℃に昇温して約2時間還流した。水分定量受器に理論量の水が貯留され、水の留出が見られなくなっていることを確認した後、水分定量受器中の水を除去しながら、フラスコ内の温度を190℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。
【0137】
フラスコ内の溶液を室温まで戻した後、ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)180mmolを添加し、フラスコ内の温度を190℃に上昇させて2時間反応させた後、NMPで希釈して合成例4のポリアミドイミドのNMP溶液(固形分濃度30質量%)を得た。このNMP溶液のMwをゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定したところ74000であった。
【0138】
[接着層用樹脂ワニス(硬化性樹脂組成物)の調製]
(調製例1)
(A)成分である第1の変性エポキシ化合物(PB3600、ダイセル化学工業社製、商品名)10gに、(B)成分であるトリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂(EXB−9829、大日本インキ化学工業社製、商品名)3.8gを配合し、更に硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.10g、ラジカル重合開始剤としてα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製、商品名)0.2gを添加した後、メチルエチルケトン56gを配合して、調製例1の接着層用樹脂ワニス(固形分濃度約20質量%)を調製した。
【0139】
(調製例2)
(A)成分である第1の変性エポキシ化合物(A1020、ダイセル化学工業社製、商品名)10gに、(B)成分であるトリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂(EXB−9829、大日本インキ化学工業社製、商品名)2.5g、(C)成分であるカルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子(XER−91SE−15、JSR株式会社製、商品名、固形分濃度15質量%)4.5gを配合し、更に硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.10g、ラジカル重合開始剤としてα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製、商品名)0.2gを添加した後、メチルエチルケトン50gを配合して、調製例2の接着層用樹脂ワニス(固形分濃度約20質量%)を調製した。
【0140】
(調製例3)
(A)成分である第2の変性エポキシ化合物(EPB−13、日本曹達社製、カルボン酸末端ポリブタジエンとビスフェノールA型エポキシ樹脂との反応物、商品名)12gに、(B)成分であるトリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂(EXB−9829、大日本インキ化学工業社製、商品名)1.5g、(C)成分であるカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂(KS−23Z、積水化学工業株式会社製、商品名)3.4gを配合し、更に硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.12g、ラジカル重合開始剤としてα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製、商品名)0.24gを添加した後、メチルエチルケトン68gを配合して、調製例3の接着層用樹脂ワニス(固形分濃度約20質量%)を調製した。
【0141】
(調製例4)
(A)成分である第2の変性エポキシ化合物(EPB−13、日本曹達社製、カルボン酸末端ポリブタジエンとビスフェノールA型エポキシ樹脂との反応物、商品名)12gに、(B)成分であるトリアジン環含有ノボラックフェノール樹脂(LA−1356、大日本インキ化学工業社製、商品名、固形分濃度60質量%)2.4g、(C)成分であるポリビニルアセタール樹脂(KS−5Z、積水化学工業株式会社製、商品名)3.4gを配合し、更に硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.12g、ラジカル重合開始剤としてα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製、商品名)0.24gを添加した後、メチルエチルケトン67gを配合して、調製例4の接着層用樹脂ワニス(固形分濃度約20質量%)を調製した。
【0142】
(調製例5)
(A)成分である第1の変性エポキシ化合物(A1020、ダイセル化学工業社製、商品名)10gに、(B)成分であるトリアジン環含有ノボラックフェノール樹脂(LA−1356、大日本インキ化学工業社製,商品名、固形分濃度60質量%)4g、(C)成分であるアクリロニトリルブタジエンゴム粒子(XER−81SE−15、JSR株式会社製、商品名、固形分濃度15質量%)4.5gを配合し、更に硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.10g、ラジカル重合開始剤としてα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製、商品名)0.2gを添加した後、メチルエチルケトン48gを配合して、調製例5の接着層用樹脂ワニス(固形分濃度約20質量%)を調製した。
【0143】
(調製例6)
(A)成分である第1の変性エポキシ化合物(PB3600、ダイセル化学工業社製、商品名)10gに、(B)成分であるトリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂(EXB−9829、大日本インキ化学工業社製、商品名)4.7g、(C)成分である合成例1で得られたポリアミドイミドNMP溶液21gを配合し、更に硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.10g、ラジカル重合開始剤としてα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製、商品名)0.12gを添加した後、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)70gを配合して、調製例6の接着層用樹脂ワニス(固形分濃度約20質量%)を調製した。
【0144】
(調製例7)
(A)成分である第2の変性エポキシ化合物(EPB−13、日本曹達社製、カルボン酸末端ポリブタジエンとビスフェノールA型エポキシ樹脂との反応物、商品名)12gに、(B)成分であるトリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂(EXB−9829、大日本インキ化学工業社製、商品名)1.3g、(C)成分である合成例2で得られたポリアミドイミドNMP溶液30gを配合し、更に硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.12g、ラジカル重合開始剤としてα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製、商品名)0.24gを添加した後、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)68gを配合して、調製例7の接着層用樹脂ワニス(固形分濃度約20質量%)を調製した。
【0145】
(比較調製例1)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DER−331L、ダウケミカル日本社製、商品名)11gに、(B)成分であるトリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂(EXB−9829、大日本インキ化学工業社製)6.5gを配合し、更に硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.11gを添加した後、メチルエチルケトン70gを配合して、比較調製例1の接着層用樹脂ワニス(固形分濃度約20質量%)を調製した。
【0146】
(比較調製例2)
(A)成分である第2の変性エポキシ化合物(EPB−13、日本曹達社製、カルボン酸末端ポリブタジエンとビスフェノールA型エポキシ樹脂との反応物、商品名)12gに、クレゾールノボラック型フェノール樹脂(KA−1163、大日本インキ化学工業社製、商品名)3.4gを配合し、更に硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.12g、ラジカル重合開始剤としてα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製、商品名)0.24gを添加した後、メチルエチルケトン79gを配合して、比較調製例2の接着層用樹脂ワニス(固形分濃度約20質量%)を調製した。
【0147】
[接着層付き金属箔の作製]
調製例1〜7及び比較調製例1〜2で得られた接着層用樹脂ワニスを、厚さ12μmの電解銅箔(F0−WS−18、ロープロファイル銅箔、古河電気工業社製)のM面(表面粗さ(Rz):0.8μm)にそれぞれ自然流延塗布した後、150℃で5分間乾燥させて、実施例1〜7及び比較例1〜2の接着層付き金属箔を作製した。乾燥後の接着層の厚さは2μmであった。なお、調製例1〜7のワニスを用いた場合がそれぞれ実施例1〜7に該当し、また比較調整例1〜2のワニスを用いた場合がそれぞれ比較例1〜2に該当する。
【0148】
[絶縁樹脂層用プリプレグの作製]
(作製例1)
まず、冷却管、温度計、攪拌器を備えた2Lのセパラブルフラスコ内に、トルエン400gとポリフェニレンエーテル樹脂(変性PPOノリルPKN4752、日本ジーイープラスチックス社製、商品名)120gとを入れ、フラスコ内の温度を90℃に加熱しながら攪拌溶解した。次に、撹拌しながらフラスコ内にトリアリルイソシアヌレート(TAIC、日本化成社製、商品名)80gを添加し、溶解又は均一分散したことを確認後、室温まで冷却した。次いで、ラジカル重合開始剤としてα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製、商品名)2.0gを添加した後、更にトルエン70gを配合して、固形分濃度約30質量%の絶縁樹脂層用ワニスを得た。
【0149】
得られた絶縁樹脂層用ワニスを、厚さ0.1mmのガラス繊維(Eガラス、日東紡績社製)に含浸した後、120℃で5分間加熱乾燥して、樹脂含有割合50質量%の作製例1の絶縁樹脂層用プリプレグを得た。
【0150】
(作製例2)
まず、冷却管、温度計、攪拌器を備えた2Lのセパラブルフラスコ内に、トルエン400gとポリフェニレンエーテル樹脂(変性PPOノリルPKN4752、日本ジーイープラスチックス社製、商品名)120gとを入れ、フラスコ内の温度を90℃に加熱しながら攪拌溶解した。次に、撹拌しながらフラスコ内に1,2−ポリブタジエン(B−1000、日本曹達社製、商品名)80g、架橋助剤としてジビニルベンゼン(DVB)10gを添加し、溶解又は均一分散したことを確認後、室温まで冷却した。次いで、ラジカル重合開始剤としてα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製、商品名)2.0gを添加した後、更にトルエン70gを配合して、固形分濃度約30質量%の絶縁樹脂層用ワニスを得た。
【0151】
得られた絶縁樹脂層用ワニスを、厚さ0.1mmのガラス繊維(Eガラス、日東紡績社製)に含浸した後、120℃で5分間加熱乾燥して、樹脂含有割合50質量%の作製例2の絶縁樹脂層用プリプレグを得た。
【0152】
(作製例3)
まず、冷却管、温度計、攪拌器を備えた10Lのセパラブルフラスコ内に、テトラヒドロフラン(THF)5000mL、ポリフェニレンエーテル樹脂(ノリルPPO646−111、日本ジーイープラスチックス社製、商品名)100gを入れ、フラスコ内の温度を60℃に加熱しながら攪拌溶解した。これを室温に戻した後、窒素気流下でn−ブチルリチウム(1.55mol/L、ヘキサン溶液)540mLを添加し、1時間撹拌した。更に、臭化アリル100gを添加して30分間撹拌した後、適量のメタノールを配合し、沈殿したポリマーを単離してアリル化ポリフェニレンエーテルを得た。
【0153】
次に、冷却管、温度計、攪拌器を備えた2Lのセパラブルフラスコ内に、トルエン400gと上述のアリル化ポリフェニレンエーテル100gとを入れ、フラスコ内の温度を90℃に加熱しながら攪拌溶解した。次に、撹拌しながらフラスコ内にトリアリルイソシアヌレート(TAIC、日本化成社製、商品名)100gを添加し、溶解又は均一分散したことを確認後、室温まで冷却した。次いで、ラジカル重合開始剤としてα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製、商品名)2.5gを添加した後、更にトルエン70gを配合して、固形分濃度約30質量%の絶縁樹脂層用ワニスを得た。
【0154】
得られた絶縁樹脂層用ワニスを、厚さ0.1mmのガラス繊維(Eガラス、日東紡績社製)に含浸した後、120℃で5分間加熱乾燥して、樹脂含有割合50質量%の作製例3の絶縁樹脂層用プリプレグを得た。
【0155】
[両面銅張積層板の作製]
上述の作製例1〜3のいずれかの絶縁樹脂層用プリプレグ4枚を重ねてなる基材の両面に、実施例1〜7及び比較例1、2の接着層付き金属箔を、それぞれの接着層が接するように被着させた後、200℃、2.9MPa、70分のプレス条件で加熱加圧成形して、実施例1〜7、比較例1〜2の接着層付き金属箔を用いた両面銅張積層板(厚さ:0.55mm)をそれぞれ作製した。なお、実施例1〜7及び比較例1〜2の接着層付き金属箔と、作製例1〜3の絶縁樹脂層用プリプレグとの組合せについては、表1に示す。
【0156】
【表1】



【0157】
また、比較のため、作製例1の絶縁樹脂層用プリプレグ4枚を重ねてなる基材の両面に、接着層を設けていない厚さ18μmの電解銅箔(F0−WS−18、古河電気工業社製、商品名)、又は接着層を設けていない厚さ18μmの電解銅箔(GTS−18、一般銅箔、古河電気工業社製、M面表面粗さ(Rz):8μm、商品名)を、M面が接するように被着させた後、200℃、2.9MPa、70分のプレス条件で加熱加圧成形して、両面銅張積層板(厚さ:0.55mm)をそれぞれ作製した。これらのうち、前者の電解銅箔を備えた両面銅張積層板を比較例3に係るもの、後者の電解銅箔を備えた両面銅張積層板を比較例4に係るものとする。
【0158】
[銅張積層板における銅箔引き剥がし強さの測定]
得られた銅張積層板の銅箔が線幅5mmの回路形状を有するように不要な銅箔部分をエッチングにより除去し、2.5cm×10cmの平面形状を有する積層板サンプルを作製した。こうして作製したサンプルを、常態及びプレッシャークッカーテスト(PCT)用装置(条件:121℃、2.2気圧、100%RH)中で5時間保持した後、銅箔引き剥がし強さ(単位:kN/m)を、以下の条件で測定した。
試験方法:90℃方向引張試験
引張速度:50mm/分
測定装置:島津製作所製オートグラフAG−100C
結果を表1に示す。なお、この銅箔引き剥がし強さについて、表中「−−−」で示したものは、PCT中で保持した後に、すでに銅箔が剥離していたため、銅箔引き剥がし強さを測定できなかったことを意味する。
【0159】
[銅張積層板のはんだ耐熱性の評価]
50mm角に切断した上述の銅張積層板の片側の銅箔を所定形状にエッチングし、その常態及びプレッシャークッカーテスト(PCT)用装置(条件:121℃、2.2気圧)中に所定時間(1〜5時間)保持した後のものを、260℃の溶融はんだに20秒間浸漬し、得られた銅張積層板(3枚)の外観を目視で調べた。結果を表1に示す。なお、表中の数字は、はんだ浸漬後の銅張積層板3枚のうち、絶縁層及び銅箔(導電層)間に膨れやミーズリングの発生が認められなかったものの枚数を意味する。
【0160】
[銅張積層板の伝送損失の評価]
銅張積層板の伝送損失(単位:dB/m)は、ベクトル型ネットワークアナライザを用いたトリプレート線路共振器法により測定した。なお、測定条件はライン幅:0.6mm、上下グランド導体間絶縁層距離:約1.04mm、ライン長:200mm、特性インピーダンス:約50Ω、周波数:3GHz、測定温度:25℃とした。結果を表1に示す。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】本発明の好適な実施形態に係る接着層付き金属箔の部分斜視図である。
【図2】本発明の好適な実施形態に係る金属張積層板の部分断面図である。
【図3】本発明の好適な実施形態に係るプリント配線板の部分断面図である。
【符号の説明】
【0162】
10…金属箔(導電層)、20…接着層、30…硬化層、40…絶縁樹脂層(絶縁樹脂膜)、50…絶縁層、60…めっき皮膜、70…スルーホール。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔と、該金属箔上に設けられた接着層と、を備える接着層付き金属箔であって、
前記接着層は、
(A)成分;オキシラン環又はオキセタン環を有し、かつエチレン性不飽和結合を有する化合物と、
(B)成分;トリアジン環を有するノボラック型フェノール樹脂と、
を含有する硬化性樹脂組成物からなるものである、接着層付き金属箔。
【請求項2】
前記(A)成分における前記エチレン性不飽和結合を有する官能基として、ビニル基、アリル基、アクリル基及びメタクリル基からなる群より選ばれる1種以上の基を有する、請求項1記載の接着層付き金属箔。
【請求項3】
前記(A)成分がポリブタジエン構造を有するエポキシ化合物である、請求項1記載の接着層付き金属箔。
【請求項4】
前記エポキシ化合物が、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、イミノ基及び下記式(III)で表される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有する変性ポリブタジエンと、2つ以上のオキシラン環を有する化合物と、を反応させてなる化合物である、請求項3記載の接着層付き金属箔。
【化1】

【請求項5】
前記エポキシ化合物が、その側鎖又は末端にビニル基を有する、請求項3又は4記載の接着層付き金属箔。
【請求項6】
前記エポキシ化合物が、下記一般式(1)、(2)又は(3)で表されるもの、あるいは下記一般式(5)で表される構造単位を有するものである、請求項3記載の接着層付き金属箔。
【化2】


(式中、nは2〜8の整数を示し、n及びmの合計は10〜10000の整数を示す。)
【化3】


(式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は水酸基を示し、Rはアクリル基又はオキシラニル基を示す。)
【化4】


(式中、Rは下記式(4)で表される基を示し、iは0〜100の整数を示し、i及びjの合計は10〜10000の整数を示す。)
【化5】


【化6】


(式中、p及びuはそれぞれ独立に1〜10000の整数を示し、qは1〜100の整数を示し、r及びsはそれぞれ独立に0〜100の整数を示し、tは1〜10000の整数を示す。ただし、r及びsのいずれかは1以上の整数を示す。)
【請求項7】
前記(B)成分の配合割合が、前記(A)成分100質量部に対して0.5〜200質量部である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の接着層付き金属箔。
【請求項8】
金属箔と、該金属箔上に設けられた接着層と、を備える接着層付き金属箔であって、
前記接着層は、
(A)成分;オキシラン環又はオキセタン環を有し,かつエチレン性不飽和結合を有する化合物と、
(B)成分;トリアジン環を有するノボラック型フェノール樹脂と、
(C)成分;高分子成分と、
を含有する硬化性樹脂組成物からなるものである、接着層付き金属箔。
【請求項9】
前記(C)成分が架橋ゴム粒子である、請求項8記載の接着層付き金属箔。
【請求項10】
前記(C)成分が、アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子及びブタジエンゴム−アクリル樹脂のコアシェル粒子からなる群より選ばれる1種以上の粒子からなる、請求項8記載の接着層付き金属箔。
【請求項11】
前記(C)成分がポリビニルアセタール樹脂及び/又はカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂からなる、請求項8記載の接着層付き金属箔。
【請求項12】
前記(C)成分がポリアミドイミドである、請求項8記載の接着層付き金属箔。
【請求項13】
前記ポリアミドイミドが飽和炭化水素からなる構造単位を有する、請求項12記載の接着層付き金属箔。
【請求項14】
前記(C)成分の配合割合が、前記(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して0.5〜800質量部である、請求項8〜13のいずれか一項に記載の接着層付き金属箔。
【請求項15】
前記接着層が、前記硬化性樹脂組成物及び溶媒を含有する樹脂ワニスを前記金属箔の主面上に塗布した後に前記溶媒を揮発させることにより得られるものである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の接着層付き金属箔。
【請求項16】
前記接着層の膜厚が0.1〜5μmである、請求項1〜15のいずれか一項に記載の接着層付き金属箔。
【請求項17】
前記金属箔の前記主面の十点平均粗さ(Rz)が4μm以下である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の接着層付き金属箔。
【請求項18】
絶縁性を有する樹脂を含有する絶縁樹脂膜の少なくとも片面に、請求項1〜17のいずれか一項に記載の接着層付き金属箔を、該接着層付き金属箔の接着層が接するように積層して積層体を得、該積層体を加熱及び加圧することにより得られる、金属張積層板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−21763(P2007−21763A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203087(P2005−203087)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】