説明

搬送台車および編成搬送用台車設備ならびに編成搬送方法

【課題】搬送台車における支持モードの選択の自由度が高く、編成搬送にも適した搬送台車を提供する。
【解決手段】左右前の支持ブロックFL,FRのサスペンションシリンダ24FL,24FRを接続する前部バイパス管41と、左右後の支持ブロックRL,RRのサスペンションシリンダ24RL,24RRを接続する後部バイパス管43と、前後左の支持ブロックFL,RLのサスペンションシリンダ24FL,24RLを接続する左部バイパス管45と、前後右の支持ブロックFR,RRのサスペンションシリンダ24FR,24RRを接続する右部バイパス管47と、これらすべてのバイパス管をそれぞれ連通、遮断可能な2方向制御弁42,44,46,48とを設け、2方向制御弁42,44,46,48を操作することにより、4点支持、前左右分割の3点支持、後左右分割の3点支持、前後の2点支持、左右の2点支持、1点支持の各モードで荷を支持可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷を複数の支持モードで選択的に支持可能な搬送台車、および複数の搬送台車を所定位置に配置して大型の荷を積み搬送する編成搬送用台車設備ならびに編成搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、重量物搬送台車において、サスペンション用の油圧シリンダを連通した支持ブロックを車体の前後で左右両側に独立して配置することで4点支持モードとし、後で左右の支持ブロックの油圧シリンダを連通させることにより3点支持モードが選択可能なものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−255242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成では、一旦大型の荷を積載すると、4点支持モード、3点支持モードとも、それぞれの支持位置が決定されており、路面状態や搬送経路が変化しても、支持位置を変更することができない。
【0005】
2台の搬送台車を左右に並べて編成搬送する並列編成搬送時は、左右の搬送台車をそれぞれ前後で2点支持モードとすることで、大型の荷を4点支持することができる。しかし、2台の搬送台車を前後に並べて縦列編成搬送する場合には、2台の搬送台車の荷台の高い支持ブロックの荷台で荷が支持されることから、2点支持となってしまい、搬送時の安定性に欠ける。また4台の搬送台車を前後、左右に並べた複合編成搬送の場合には、少なくとも8点支持モードとなり、荷の搬送が不安定になるという問題があった。
本発明は上記問題点を解決して、支持モードの選択の自由度が高く、また編成搬送時の支持モードを容易に選択して搬送中でも支持モードの変更が可能な搬送台車および編成搬送用台車設備ならびに編成搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の搬送台車は、
単数または複数の車輪装置を具備した支持ブロックを、車体の前部と後部で左右両側にそれぞれ配置するとともに、これら各支持ブロックの車輪装置に設けられたサスペンションシリンダを、油圧給排管を介して互いに連通した搬送台車において、
左前の支持ブロックの油圧給排管と右前の支持ブロックの油圧給排管とを連通する前部バイパス管と、左後の支持ブロックの油圧給排管と右後の支持ブロックの油圧給排管とを連通する後部バイパス管と、左前の支持ブロックの油圧給排管と左後の支持ブロックの油圧給排管とを連通する左部バイパス管と、右前の支持ブロックの油圧給排管と右後の支持ブロックの油圧給排管とを接続する左部バイパス管を設けるとともに、これら各バイパス管に、それぞれのバイパス管を連通、遮断可能な弁装置をそれぞれ設け、
前記車体に、各バイパス管の弁装置を操作可能なサスペンション制御部と、当該サスペンション制御部を操作する操作盤とを設け、
当該操作盤により前記サスペンション制御部を操作して、
前記各弁装置によりすべてのバイパス管を遮断した4点支持モードと、前記弁装置により前部バイパス管を連通し、かつ残りのバイパス管を遮断した前部左右分離の3点支持モードと、前記弁装置により後部バイパス管を連通し、かつ残りのバイパス管を遮断した後部左右分離の3点支持モードと、前記弁装置により前部バイパス管および後部バイパス管をそれぞれ連通し、かつ残りのバイパス管を遮断した前後の2点支持モードと、前記弁装置により左部バイパス管および右部バイパス管をそれぞれ連通し、かつ残りのバイパス管を遮断した左右の2点支持モードと、前記弁装置によりすべてのバイパス管を連通した1点支持モードと、を選択可能に構成したものである。
【0007】
請求項2記載の編成搬送用台車設備は、
請求項1記載の複数の搬送台車を所定位置に配置して大型の荷を積載し搬送する編成搬送用台車設備であって、
搬送台車の1台をマスタ台車とするとともに、残りの搬送台車をスレイブ台車とし、
マスタ台車のサスペンション制御部とすべてのスレイブ台車のサスペンション制御部とを通信手段を介して接続するとともに、マスタ台車の操作盤からマスタ台車のサスペンション制御部を介して各スレイブ台車のサスペンション制御部を操作し、大型の荷の支持モードを選択可能に構成したものである。
【0008】
請求項3記載の編成搬送用台車設備は、請求項2記載の編成搬送用台車設備における編成搬送方法であって、
マスタ台車とスレイブ台車とを左右に配置した並列編成搬送時に、
マスタ台車とスレイブ台車を、前部バイパス管と後部バイパス管とをそれぞれの弁装置により連通して前後の2点支持モードとすることにより、4点支持で荷を支持させるか、
またはマスタ台車とスレイブ台車の一方の搬送台車を、前部バイパス管と後部バイパス管とをそれぞれの弁装置により連通して前後の2点支持モードとし、他方の搬送台車を、すべてのバイパス管をそれぞれの弁装置により連通して1点支持モードとすることにより、3点支持で荷を支持させるものである。
【0009】
請求項4記載の編成搬送用台車設備は、請求項2記載の編成搬送用台車設備における編成搬送方法であって、
マスタ台車とスレイブ台車とを前後に配置した縦列編成搬送時に、
マスタ台車とスレイブ台車を、左部バイパス管と右部バイパス管とをそれぞれの弁装置により連通して左右の2点支持モードとすることにより、4点支持で荷を支持させるか、
またはマスタ台車およびスレイブ台車の一方の搬送台車を、左部バイパス管と右部バイパス管とをそれぞれ弁装置により連通して左右の2点支持モードとし、他方の搬送台車を、すべてのバイパス管をそれぞれの弁装置により連通して1点支持モードとすることにより、3点支持で荷を支持させるものである。
【0010】
請求項5記載の編成搬送用台車設備は、請求項2記載の編成搬送用台車設備における編成搬送方法であって、1台のマスタ台車と3台のスレイブ台車とを前後左右に配置した複合編成搬送時に、マスタ台車およびスレイブ台車を、すべてのバイパス管をそれぞれの弁装置により連通して1点支持モードとすることにより、4点支持で荷を支持させるものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、荷を搬送する途中であっても、操作盤によりサスペンション制御部を介して各方向制御弁をそれぞれ操作し、バイパス管を選択的に連通、遮断することにより、4点支持モード、前部左右分離の3点支持モード、後部左右分離の3点支持モード、前後の2点支持モード、左右の2点支持モードおよび1点支持モードを容易に選択することができ、支持モードの選択の自由度が高く、荷の形態や路面や搬送通路の変化に対応して、安定して荷を搬送することができる。
【0012】
請求項2記載の構成によれば、マスタ台車の操作盤からマスタ台車とスレイブ台車のサスペンション制御部をそれぞれ操作して大型の荷の支持モードを選択することができ、編成搬送を容易かつ迅速に行うことができ、搬送中の支持モードの変更も可能となる。
【0013】
請求項3記載の構成によれば、2台の搬送台車を車幅方向に所定間隔をあけて配置した並列編成搬送を行うに際して、4点支持モードまたは3点支持モードを選択して大型の荷を支持させ搬送することができ、大型の荷を安定して搬送することができる。
【0014】
請求項4記載の構成によれば、2台の搬送台車を前後方向に所定間隔をあけて配置した縦列編成搬送を行うに際して、4点支持モードまたは3点支持モードを選択して大型の荷を支持させ搬送することができ、大型の荷を安定して搬送することができる。
【0015】
請求項5記載の構成によれば、4台の搬送台車を前後方向および車幅方向に所定間隔をあけて配置した複合並列搬送を行うに際して、大型の荷を4点支持モードで支持させて搬送することができ、大型の荷を安定して搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)(b)は本発明に係る搬送台車を示し、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図2】車輪装置を示す側面図である。
【図3】車輪装置のサスペンションシリンダへの油圧配管を示す配管図である。
【図4】複合編成搬送状態のサスペンション制御部を示す構成図である。
【図5】複合編成搬送状態の4点支持を示す平面図である。
【図6】他の複合編成搬送状態の4点支持を示す平面図である。
【図7】並列編成搬送時の4点支持を示す平面図である。
【図8】縦列編成搬送時の4点支持を示す平面図である。
【図9】他の搬送台車の実施例を示す平面図である。
【図10】(a)および(b)はさらに他の搬送台車の実施例を示し、(a)は平面図、(b)は車輪装置のサスペンションシリンダへの油圧配管を示す配管図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0017】
[搬送台車]
図1〜図3を参照して本発明に係る搬送台車Mを説明する。
搬送台車Mは、上面が荷台11aに形成された車体11の下面で前後位置には、前部運転席12Aと後部運転席12Bとが設けられて選択的に使用される。また車体11の下面中央に設置されたユニット部13に、エンジンとこのエンジンにより駆動される発電機および油圧ポンプユニットがそれぞれ配置されている。前後部運転席12A,12Bとユニット部13との間で車体11の底部に、それぞれ独立換向式の複数の車輪装置14FL,14FR,14RL、14RRが配設されており、これらの車輪装置14FL,14FR,14RL、14RRは中央と左右両側とに3列に配置されるとともに、たとえば4個ずつで前後左右の4つの支持ブロックFL,FR,RL,RRに分離されている。
【0018】
これら各車輪装置14FL,14FR,14RL、14RRは同一または対称構造である。図2に示すように、車輪装置14FL,14FR,14RL、14RRは、車体11に舵軸Sを中心に旋回自在に支持された旋回体21と、この旋回体21から斜め下方に伸びる上アーム部22と、この上アーム部22の下端部に水平軸22aを介して上下揺動自在に支持された下アーム部23と、旋回体21と下アーム部23との間にピン連結されたサスペンションシリンダ24FL,24FR,24RL、24RRと、下アーム部23の下端部に設けられた車軸支持部25と、この車軸支持部25に車軸25aを介して回転自在に支持された左右一対の車輪(駆動車輪)26と、減速ギヤ(図示せず)および車軸25aを介して車輪26を回転駆動する走行駆動モータ27と、車体11に設けられて旋回体21を舵軸S周りに転舵する操舵駆動装置28とで構成されている。
【0019】
各サスペンションシリンダ24FL,24FR,24RL、24RRにそれぞれ作動油を給排出する油圧回路を、図3を参照して説明する。
油圧ポンプ(図示せず)およびオイルタンク(図示せず)にそれぞれ接続される油圧配管31A,31Bに接続された4組の分岐配管33A〜33Dが、それぞれ電磁式の4ポート3位置昇降用切換弁32A〜32Dに接続されている。そして各支持ブロックFR,FL,RR,RLのサスペンションシリンダ24FL,24FR,24RL、24RRの油室を互いに連通するサスペンション用の油圧給排管35A〜35Dがそれぞれ昇降用切換弁32A〜32Dに接続されている。そして、これら油圧給排管35A〜35Dにそれぞれサスペンションブロック34A〜34Dが介在されている。これらサスペンションブロック34A〜34Dは、昇降用切換弁32A〜32D側から順に、各油圧給排管35A〜35Dの油の流れ方向が異なるように直列に接続された2台の手動絞り付逆止め弁37,38と、パイロット操作式の逆止め弁39とが配置されてそれぞれ構成されている。さらに、各サスペンションシリンダ14FL,14FR,14RL、14RRの各油圧給排管35A〜35Dに、荷Wの有無などを検出可能な油圧センサ36A〜36Dが設けられている。
【0020】
左右前の支持ブロックFR,FLのサスペンションシリンダ24FL,24FRの油室に接続された油圧給排管35A,35Bが前部バイパス管41により互いに接続され、この前部バイパス管41Aに油圧給排管35A,35Bを連通、遮断可能な弁装置である電磁式の前部2方向制御弁(シャットオフバルブ)42が介在されている。また左右後の支持ブロックRR,RLのサスペンションシリンダ24RL,24RRの油圧給排管35C,35Dが後部バイパス管43により互いに接続され、この後部バイパス管43に油圧給排管35C,35Dを連通、遮断可能な弁装置である電磁式の後部2方向制御弁(シャットオフバルブ)44が介在されている。さらに、前後左の支持ブロックFL,RLのサスペンションシリンダ24FL,24FLの油圧給排管35A,35Cが左部バイパス管45により互いに接続され、この左部バイパス管45に油圧給排管35A,35Cを連通、遮断可能な弁装置である電磁式の左部2方向制御弁(シャットオフバルブ)46が介在されている。さらにまた、前後右の支持ブロックFR,RRのサスペンションシリンダ24FR,24RRの油圧給排管35B,35Dが右部バイパス管47により互いに接続され、この右部バイパス管47に油圧給排管35B,35Dを連通、遮断可能な弁装置である電磁式の右部2方向制御弁(シャットオフバルブ)48が介在されている。
【0021】
したがって、4個の2方向制御弁42,44,46,48を選択的に開閉操作することにより、下記の支持モードを任意に選択することができる。
4点支持モード:4つの2方向制御弁42,44,46,48をそれぞれ閉鎖して前後左右のバイパス管41,43,45、47をそれぞれ遮断することにより、各支持ブロックFR,FL,RR,RLのサスペンションシリンダ24FL,24FR,24RL、24RRを互いに独立して伸縮させる。
【0022】
1.前部左右分離の3点支持モード:2方向制御弁44を開放して後部のバイパス管43を連通させるとともに、残りの2方向制御弁42,46,48を閉鎖して前部および左右部のバイパス管41,45、47をそれぞれ遮断することにより、左右後の支持ブロックRL,RRのサスペンションシリンダ24RL,24RRが連通されて一体に連動伸縮され、左右前の支持ブロックFL,FRのサスペンションシリンダ24FL,24FRが独立して伸縮され、荷を前部左右分離の3点支持モードで支持することができる。
【0023】
2.後部左右分離の3点支持モード:2方向制御弁42を開放して前部のバイパス管41を連通させるとともに、残りの2方向制御弁44,46,48を閉鎖して後部および左右部のバイパス管44,45、47をそれぞれ遮断することにより、左右前の支持ブロックFL,FRのサスペンションシリンダ24FL,24FRが連通されて一体に連動伸縮され、左右後の支持ブロックRL,RRのサスペンションシリンダ24RL,24RRが独立して伸縮され、荷を後部左右分離の3点支持モードで支持することができる。
【0024】
3.前後の2点支持モード:2方向制御弁42,44をそれぞれ開放して前部および後部のバイパス管71,73を連通させ、かつ2方向制御弁46,48を閉鎖して左部および右部のバイパス管75,77を遮断することにより、左右前の支持ブロックFL,FRのサスペンションシリンダ24FL,24FRが互いに連通されて一体に連動伸縮されるとともに、左右後の支持ブロックRL,RRのサスペンションシリンダ24RL,24RRが互いに連通されて一体に連動伸縮され、荷を前後の2点支持モードで支持することができる。
【0025】
4.左右の2点支持モード:2方向制御弁46,48を開放して左部および右部のバイパス管45,47をそれぞれ連通させ、かつ2方向制御弁42,44を閉鎖して前部および後部のバイパス管71,73を遮断することにより、左前後の支持ブロックFL,RLのサスペンションシリンダ24FL,24RLが連通されるとともに、右前後の支持ブロックFR,RRのサスペンションシリンダ24FR,24RRが連通されてそれぞれ一体に連動伸縮され、荷を左右の2点支持モードで支持することができる。
【0026】
5.1点支持モード:すべての2方向制御弁42,44,46,48を開放してすべてのバイパス管41,43,45,47をそれぞれ連通させることにより、各支持ブロックFL,FR,RL,RRの車輪装置14FL,14FR,14RL、14RRのサスペンションシリンダ24FL,24FR,24RL、24RRが互いに連通されて一体に伸縮され、荷を1点支持モードで支持することができる。
【0027】
搬送台車Mには、各2方向制御弁42,44,46,48をそれぞれ制御するサスペンション制御部51が設けられており、運転席12A,12Bに設けられた操作盤(タッチパネル)52からサスペンション制御部51に操作信号が送信されて、各2方向制御弁42,44,46,48がそれぞれ操作され、荷の支持モードを選択することができる。したがって、運転席12A,12Bから操作盤52を操作することにより、積載する荷の形状や重量、路面の種類や走行経路に応じて、前記A〜Fの支持モードを選択することができ、支持モードの選択の自由度が高い。また荷の搬送中であっても支持モードを任意に選択することができ、あらゆる荷や路面の種類や走行経路であっても、荷をスムーズに安定して搬送することができる。
【0028】
上記実施例によれば、荷を搬送する途中であっても、操作盤52によりサスペンション制御部51を介して各方向制御弁42,44,46,48をそれぞれ操作し、各バイパス管41,43,45,47を選択的に連通、遮断することにより、4点支持、前部左右分離の3点支持、後部左右分離の3点支持、前後の2点支持、左右の2点支持および1点支持を容易に選択することができ、荷の形態や路面や搬送通路の変化に対応して、安定して荷を搬送することができる。
【0029】
[編成搬送用台車設備]
次に、複数の搬送台車M1〜M4を配置して大型の荷を荷台11aにそれぞれ積載し搬送する編成搬送用台車設備および編成搬送方法について、図5〜図8を参照して説明する。
【0030】
これら編成搬送に使用する搬送台車M1〜M4には、先で説明した同一構造の搬送台車Mが使用される。そして搬送台車M1〜M4のうち、1台が運転者が運転席12A,12Bの一方に乗車して運転し、編成搬送を主動するマスタ台車M1に設定され、残りがマスタ台車M1に追従して移動するスレイブ台車M2〜M4に設定される。
【0031】
(複合編成搬送)
4台の搬送台車M1〜M4を使用する複合編成搬送における第1の台車配置は、図5(a)に示すように、前後方向および車幅方向(左右方向)にそれぞれ搬送台車M1〜M4を配置するもので、たとえば右前部にマスタ台車M1が配置され、左前部、右後部および左後部にそれぞれスレイブ台車M2〜M4が配置される。
【0032】
また複合編成搬送における第2の台車配置は、図5(b)に示すように、前部、左右中間部、後部にそれぞれ搬送台車M1〜M4を配置するもので、たとえば前部にマスタ台車M1が配置され、左中間部、右中間部および後部にそれぞれスレイブ台車M2〜M4が配置される。
【0033】
なお、ここで4台の搬送台車M1〜M4を図示したとおりに配置しただけでなく、それぞれの搬送台車M1〜M4が位置ずれして配置されたものを含むものとする。
マスタ台車M1のサスペンション制御部51は、スレイブ台車M2〜M4のサスペンション制御部51との間で通信手段である通信ケーブル53によりコネクタを介して直列または並列に接続されている。これにより、マスタ台車M1の運転席12Aまたは12Bの操作盤52を操作して、マスタ台車M1とスレイブ台車M2〜M4の2方向制御弁42,44,46,48をそれぞれ操作することができる。これら複合編成搬送の場合には、マスタ台車M1とスレイブ台車M2〜M4のすべての2方向制御弁42,44,46,48を開放してバイパス管41,43,45,47を連通し、マスタ台車M1とスレイブ台車M2〜M4をそれぞれ一点支持モードとして、大型の荷を4点支持により支持させ搬送する。
【0034】
なお、通信手段として、電波や赤外線などを利用した無線伝送方式を採用することもできる。
(並列編成搬送)
2台の搬送台車M1,M2による並列編成搬送は、図7に示すように、たとえばマスタ台車M1を右側に配置し、スレイブ台車M2を左側に車幅方向に所定間隔をあけて配置する。
【0035】
第1の並列編成支持モードは4点支持であって、図7(a)に示すように、マスタ台車M1の運転席12Aまたは12Bの操作盤52を介してマスタ台車M1とスレイブ台車M2のサスペンション制御部51をそれぞれ操作する。マスタ台車M1とスレイブ台車M2の2方向制御弁42,44をそれぞれ開放して前部および後部のバイパス管41,43を連通させ、2方向制御弁46,48をそれぞれ閉鎖して左部および右部のバイパス管45,47を遮断することにより、マスタ台車M1およびスレイブ台車M2をそれぞれ前後の2点支持モードとし、マスタ台車M1とスレイブ台車M2により大型の荷を4点支持させて搬送することができる。
【0036】
第2の並列編成支持モードは左部前後分離の3点支持であって、図7(b)に示すように、マスタ台車M1の運転席12Aまたは12Bの操作盤52を介してマスタ台車M1とスレイブ台車M2のサスペンション制御部51をそれぞれ操作する。マスタ台車M1のすべての2方向制御弁42,44,46,48をそれぞれ開放してバイパス管41,43,45,47を連通させることにより、マスタ台車M1を1点支持モードする。さらにスレイブ台車M2の2方向制御弁42,44をそれぞれ開放して前部および後部のバイパス管41,43を連通させ、かつ2方向制御弁46,48をそれぞれ閉鎖して左部および右部のバイパス管45,47を遮断することにより、スレイブ台車M2を前後の2点支持モードとし、これにより、マスタ台車M1とスレイブ台車M2とで大型の荷を左部前後分離の3点支持で支持させて搬送することができる。
【0037】
第3の並列編成支持モードは右部前後分離の3点支持であって、図7(c)に示すように、マスタ台車M1の運転席12Aまたは12Bの操作盤52を介してマスタ台車M1とスレイブ台車M2のサスペンション制御部51をそれぞれ操作する。マスタ台車M1の2方向制御弁42,44をそれぞれ開放して前部および後部のバイパス管41,43を連通させ、かつ2方向制御弁46,48をそれぞれ閉鎖して左部および右部のバイパス管45,47を遮断することにより、マスタ台車M1を前後の2点支持モードとし、スレイブ台車M2のすべての2方向制御弁42,44,46,48をそれぞれ開放してバイパス管41,43,45,47を連通させることにより、スレイブ台車M2を1点支持モードとする。これにより、マスタ台車M1とスレイブ台車M2とで大型の荷を右部前後分離の3点支持で支持させて搬送することができる。
【0038】
(縦列編成搬送)
2台の搬送台車M1,M2による縦列編成搬送は、図8に示すように、たとえばマスタ台車M1を前部に配置し、スレイブ台車M2を後部に、前後方向に所定間隔をあけて配置する。
【0039】
第1の縦列編成支持モードは4点支持であって、図8(a)に示すように、マスタ台車M1の運転席12Aまたは12Bの操作盤52を介してマスタ台車M1とスレイブ台車M2のサスペンション制御部51をそれぞれ操作する。マスタ台車M1とスレイブ台車M2の2方向制御弁42,44をそれぞれ開放して前部および後部のバイパス管41,43を連通させ、2方向制御弁46,48をそれぞれ閉鎖して左部および右部のバイパス管45,47を遮断することにより、マスタ台車M1およびスレイブ台車M2をそれぞれ前後の2点支持モードとする。これにより、マスタ台車M1とスレイブ台車M2とで大型の荷を4点支持させて搬送することができる。
【0040】
第2の縦列編成支持モードは前部左右分離の3点支持であって、図8(b)に示すように、マスタ台車M1の運転席12Aまたは12Bの操作盤52を介してマスタ台車M1とスレイブ台車M2のサスペンション制御部51をそれぞれ操作する。マスタ台車M1の2方向制御弁46,48をそれぞれ開放して左部および右部のバイパス管45,47を連通させ、2方向制御弁42,44をそれぞれ閉鎖して前部および後部のバイパス管41,43を遮断することによりマスタ台車M1を左右の2点支持モードとする。スレイブ台車M2のすべての2方向制御弁42,44,46,48をそれぞれ開放してバイパス管41,43,45,47を連通させることにより、スレイブ台車M2を1点支持モードとする。これにより、マスタ台車M1とスレイブ台車M2とで大型の荷を前部左右分離の3点支持で支持させて搬送することができる。
【0041】
第3の並列編成支持モードは後部左右分離の3点支持であって、図7(c)に示すように、マスタ台車M1の運転席12Aまたは12Bの操作盤52を介してマスタ台車M1とスレイブ台車M2のサスペンション制御部51をそれぞれ操作する。マスタ台車M1のすべての2方向制御弁42,44,46,48を開放してバイパス管41,43,45,47を連通させることにより、マスタ台車M1を1点支持モードする。マスタ台車M1の2方向制御弁46,48を開放して左部および右部のバイパス管45,47をそれぞれ連通させ、かつ2方向制御弁42,44をそれぞれ閉鎖して前部および後部のバイパス管41,43を遮断してスレイブ台車M2を左右の2点支持モードとし、マスタ台車M1とスレイブ台車M2により大型の荷を後部左右分離の3点支持で支持させて搬送することができる。
【0042】
上記実施例によれば、マスタ台車M1の操作盤52からマスタ台車M1とスレイブ台車M2〜M4のそれぞれのサスペンション制御部51をそれぞれ操作し、各2方向制御弁42,44,46,48をそれぞれ連通、遮断して荷の支持モードを任意に選択することができ、荷の支持モードの選択の自由度が高く、大型の荷を複数の搬送台車M1〜M4を使用する編成搬送を容易に行うことができる。もちろん3台の搬送台車による編成搬送でも、各搬送台車を1点支持モードとすることにより、大型の荷を3点支持で支持させたり、また1台を2点支持モード、残りを1点支持モードとして3点支持で支持させて搬送することもできる。
【0043】
また並列編成搬送および縦列編成搬送ならびに複合並立搬送に際して、複数の搬送台車により、大型の荷を4点支持または3点支持により支持させて搬送することができ、大型の荷を安定して搬送することができる。またマスタ台車M1の運転席12A,12Bの操作盤52を操作してスレイブ台車M2〜M4の支持モードの操作も可能で、編成搬送時に迅速に支持モードを選択して搬送することができ、また搬送中であっても、搬送経路や路面の状況に応じて、支持モードを変更することができる。
【0044】
なお、上記実施例では、各支持ブロックFR,FL,RR,RLの車輪装置14FL,14FR,14RL,14RRを4個ずつ設けたが、車輪装置4個に限るものではなく、5個以上(実施例では10個以上のものもある)や図9に示すように、前後に配置した2個の車輪装置14FL,14FR,14RL,14RRで構成することもできる。また図10に示すように、各支持ブロックFR,FL,RR,RLの車輪装置14FL,14FR,14RL,14RRを単数としても、同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0045】
M 搬送台車
M1 マスタ台車
M2〜M4 スレイブ台車
FL,FR,RL,RR 支持ブロック
11 車体
12A,12B 運転席
14FL,14FR,14RL,14RR 車輪装置
24FL,24FR,24RL,24RR サスペンションシリンダ
31A,31B 油圧配管
32A〜32D 昇降用切換弁
33A〜33D 分岐配管
34A〜34D サスペンションブロック
35A〜35D 油圧給排管
36A〜36D 油圧センサ
41 前部バイパス管
42 前部2方向制御弁(弁装置)
43 後部バイパス管
44 後部2方向制御弁(弁装置)
45 左部バイパス管
46 左部2方向制御弁(弁装置)
47 右部バイパス管
48 右部2方向制御弁(弁装置)
51 サスペンション制御部
52 操作盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単数または複数の車輪装置を具備した支持ブロックを、車体の前部と後部で左右両側にそれぞれ配置するとともに、これら各支持ブロックの車輪装置に設けられたサスペンションシリンダを、油圧給排管を介して互いに連通した搬送台車において、
左前の支持ブロックの油圧給排管と右前の支持ブロックの油圧給排管とを連通する前部バイパス管と、左後の支持ブロックの油圧給排管と右後の支持ブロックの油圧給排管とを連通する後部バイパス管と、左前の支持ブロックの油圧給排管と左後の支持ブロックの油圧給排管とを連通する左部バイパス管と、右前の支持ブロックの油圧給排管と右後の支持ブロックの油圧給排管とを接続する左部バイパス管を設けるとともに、これら各バイパス管に、それぞれのバイパス管を連通、遮断可能な弁装置をそれぞれ設け、
前記車体に、各バイパス管の弁装置を操作可能なサスペンション制御部と、当該サスペンション制御部を操作する操作盤とを設け、
当該操作盤により前記サスペンション制御部を操作して、前記各弁装置によりすべてのバイパス管を遮断した4点支持モードと、前記弁装置により前部バイパス管を連通し、かつ残りのバイパス管を遮断した前部左右分離の3点支持モードと、前記弁装置により後部バイパス管を連通し、かつ残りのバイパス管を遮断した後部左右分離の3点支持モードと、前記弁装置により前部バイパス管および後部バイパス管をそれぞれ連通し、かつ残りのバイパス管を遮断した前後の2点支持モードと、前記弁装置により左部バイパス管および右部バイパス管をそれぞれ連通し、かつ残りのバイパス管を遮断した左右の2点支持モードと、前記弁装置によりすべてのバイパス管を連通した1点支持モードと、を選択可能に構成した
ことを特徴とする搬送台車。
【請求項2】
請求項1記載の複数の搬送台車を所定位置に配置して大型の荷を積載し搬送する編成搬送用台車設備であって、
搬送台車の1台をマスタ台車とするとともに、残りの搬送台車をスレイブ台車とし、
マスタ台車のサスペンション制御部とすべてのスレイブ台車のサスペンション制御部とを通信手段を介して接続するとともに、マスタ台車の操作盤からマスタ台車のサスペンション制御部を介して各スレイブ台車のサスペンション制御部を操作し、大型の荷の支持モードを選択可能に構成した
ことを特徴とする編成搬送用台車設備。
【請求項3】
請求項2記載の編成搬送用台車設備における編成搬送方法であって、
マスタ台車とスレイブ台車とを左右に配置した並列編成搬送時に、
マスタ台車とスレイブ台車を、前部バイパス管と後部バイパス管とをそれぞれの弁装置により連通して前後の2点支持モードとすることにより、4点支持で荷を支持させるか、
またはマスタ台車とスレイブ台車の一方の搬送台車を、前部バイパス管と後部バイパス管とをそれぞれの弁装置により連通して前後の2点支持モードとし、他方の搬送台車を、すべてのバイパス管をそれぞれの弁装置により連通して1点支持モードとすることにより、3点支持で荷を支持させる
ことを特徴とする編成搬送方法。
【請求項4】
請求項2記載の編成搬送用台車設備における編成搬送方法であって、
マスタ台車とスレイブ台車とを前後に配置した縦列編成搬送時に、
マスタ台車とスレイブ台車を、左部バイパス管と右部バイパス管とをそれぞれの弁装置により連通して左右の2点支持モードとすることにより、4点支持で荷を支持させるか、
またはマスタ台車およびスレイブ台車の一方の搬送台車を、左部バイパス管と右部バイパス管とをそれぞれ弁装置により連通して左右の2点支持モードとし、他方の搬送台車を、すべてのバイパス管をそれぞれの弁装置により連通して1点支持モードとすることにより、3点支持で荷を支持させる
ことを特徴とする編成搬送方法。
【請求項5】
請求項2記載の編成搬送用台車設備における編成搬送方法であって、
1台のマスタ台車と3台のスレイブ台車とを前後左右に配置した複合編成搬送時に、マスタ台車およびスレイブ台車を、すべてのバイパス管をそれぞれの弁装置により連通して1点支持モードとすることにより、4点支持で荷を支持させる
ことを特徴とする編成搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−20563(P2011−20563A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167308(P2009−167308)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】