説明

搬送車システムのシミュレーションシステムとシミュレーション方法

【課題】
半導体等の生産計画に沿って搬送車システムを動作させた際の状況をシミュレーションする。
【構成】
処理装置での仮想的な生産計画を管理し、生産計画に従って、仮想的な搬送車への走行計画を作成し、作成した走行計画に従って、仮想的な搬送車の位置と速度を時間の関数として表す走行スケジュールを作成し、走行スケジュールに従って仮想的な搬送車を、実在の搬送車システムの制約に従って、かつ搬送車間の干渉を回避するように走行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は搬送車システムのシミュレーションに関する。
【背景技術】
【0002】
搬送車システムでは、天井走行車(OHT)、地上走行の無人搬送車(AGV)、スタッカークレーン等を用いて、ロードポート間で物品を搬送する。自動倉庫の場合、ロードポートはステーションと呼ばれることが多く、搬送物品は半導体ウェハー、レチクル、ガラス基板、一般部品等である。
【0003】
搬送車システムを半導体工場、フラットパネルディスプレイの工場等に設置する場合、半導体あるいはフラットパネルディスプレイ等の処理装置に対し、ワークをタイムリーに供給及び搬出することが搬送車システムのジョブとなる。従って搬送車システムが半導体工場等での生産計画に従って、ワークを搬送ができるか否かをシミュレーションする必要がある。しかしこのシミュレーションは難しい。単に搬送車に仮想的な搬送指令を与えて、実行結果をシミュレーションすると、適切な運用を行った場合とは異なる結果となり、例えば渋滞が発生しやすい。また仮想的な搬送車は干渉を回避するため頻繁に加減速することになり、シミュレーションの計算量も増加する。
【0004】
特許文献1(JP2003-264216A)は半導体工場での生産をシミュレーションすることを開示し、特許文献2(JPH10-254545A)と特許文献3(JP4306723B)は搬送車システムでの搬送結果をシミュレーションすることを開示している。特に特許文献3は、搬送車の現在位置と速度及び割付済みの搬送指令とから、搬送車システムの今後の状況をシミュレーションすることを開示している。しかし特許文献3は処理装置での生産計画を基にシミュレーションすることを検討していない。このためシミュレーションが可能な範囲は、割付済みの搬送指令を完了するまでである。また特許文献3では仮想的な搬送車を走行指令に基づいてダイレクトに走行させるので計算量が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】JP2003-264216A
【特許文献2】JPH10-254545A
【特許文献3】JP4306723B
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の課題は、半導体等の生産計画に沿って搬送車システムを動作させた際の状況をシミュレーションできるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、処理装置間でワークを搬送する搬送車システムをシミュレーションするシステムであって、
処理装置での仮想的な生産計画を管理するための生産計画管理部と、
前記の生産計画に従って、仮想的な搬送車への走行計画を作成する走行計画作成部と、 作成した走行計画に従って、仮想的な搬送車の位置と速度を時間の関数として表す走行スケジュールを作成する走行スケジュール作成部と、
前記の走行スケジュールに従って、仮想的な搬送車を、実在の搬送車システムの制約に従って、かつ搬送車間の干渉を回避するように走行させる走行シミュレーションを行うシミュレーション部、
とを備えていることを特徴とする。
【0008】
この発明はまた、処理装置間でワークを搬送する搬送車システムをシミュレーションする方法であって、
生産計画管理部により、処理装置での仮想的な生産計画を管理するステップと、
走行計画作成部により、前記の生産計画に従って、仮想的な搬送車への走行計画を作成するステップと、
走行スケジュール作成部により、前記の走行計画に従って、仮想的な搬送車の位置と速度を時間の関数として表す走行スケジュールを作成するステップと、
シミュレーション部により、前記の走行スケジュールに従って、仮想的な搬送車を、実在の搬送車システムの制約に従って、かつ搬送車間の干渉を回避するように走行させる走行シミュレーションを行うステップとを、
実行することを特徴とする。
【0009】
この発明では、仮想的な生産計画に従って搬送車システムを動作させた際の結果をシミュレーションする。搬送車システムの初期値は任意で、搬送車が停止している状態からでも、実在の搬送車システムの現在あるいは過去の状態からでも、もしくはシミュレーションにより得られた仮想的な状態からでも、シミュレーションを開始できる。そして搬送車の走行ルートと目的地のみを与えて、ダイレクトにシミュレーションを開始するのではなく、搬送車の位置と速度を時間の関数として表す走行スケジュールに従って走行するように、シミュレーションを実行する。このため走行スケジュールが現実的なものであれば、走行スケジュールとシミュレーション結果との差も小さく、計算量が少なくなる。なおシミュレーションの対象となる搬送車システムは、実在の搬送車システムでも、設計中の搬送車システムでも良い。
【0010】
これらのため、
1) 搬送車システムの現状と実際の生産計画とからシミュレーションをスタートすると、数分〜数時間程度の時間でのワーク等の過不足をシミュレーションして事前に対処でき、
2) 搬送車システムのレイアウト、設備、運用のロジック等を変えてシミュレーションすることにより、搬送車システムを最適化でき、
3) 生産計画を変更する際等にシミュレーションすると、生産計画が適正な余裕を持ったものか、無理なものか等を判断できる。
【0011】
好ましくは、走行スケジュール作成部は、搬送車が加速または減速する位置と時刻とを表す速度制御点の列からなる走行スケジュールを個々の搬送車に対し作成する。このようにすると、比較的簡単に信頼性のある走行スケジュールを作成できる。
【0012】
より好ましくは、走行スケジュール作成部は、
前記の走行計画に従い、前記の走行スケジュールを他の搬送車との干渉を無視して作成する手段と、
新たに作成した走行スケジュールと干渉を排除済みの走行スケジュールの双方を対象として、走行スケジュール中の速度制御点での搬送車間の相対位置から搬送車間の干渉を検出すると共に、検出した干渉を排除するように、後行の搬送車の走行スケジュールを修正する手段と、
走行スケジュールの作成と、走行スケジュールの修正による干渉の排除、及び干渉を排除済みの走行スケジュールの記憶とを繰り返すように構成されている。このようにすると、搬送車間の干渉を排除済みの走行スケジュールが得られるので、走行スケジュールの信頼性が増す。また生産計画に従って走行スケジュールを追加できるので、より現実的な走行スケジュールが得られる。
【0013】
また好ましくは、シミュレーション対象の実在の搬送車システムは、複数台の搬送車が現在の位置と速度とをコントローラへ報告するように構成され、
実在の搬送車システムでの搬送車の位置と速度及び搬送車へ指令済みの走行スケジュールを初期値として、
生産計画管理部へ入力された処理装置での今後の生産計画に従って走行計画を作成すると共に、走行スケジュールの作成と走行シミュレーションとを行う。このようにすると、生産計画が適切なものかどうかをワークの搬送の面からシミュレーションでき、生産計画を変更する際等の判断の根拠となる。
【0014】
好ましくは、仮想的な搬送車システムの運用ロジックを変えてシミュレーションを実行できるようにする。このようにすると、実在の搬送車システムでの運用ロジックを最適化できる。特に好ましくは、同じ仮想的な生産計画に対し、搬送車システムの運用ロジックを変えてシミュレーションを繰り返すことができるようにする。このようにすると、シミュレーション結果の比較から容易に運用ロジックを最適化できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例の搬送車システムのレイアウトを示す図
【図2】実施例での地上コントローラのブロック図
【図3】実施例での所要時間の算出モデルを示す図
【図4】実施例で退避位置までの走行スケジュールを作成することの意味を示す図
【図5】実施例での搬送車の走行スケジュールを生成するアルゴリズムを示すフローチャート
【図6】実施例でのVCP(速度制御点)の意味を示す図で、1)は速度パターンを示し、2)は、1)の速度パターンを2個のVCPで表現した走行スケジュールを示し、3)は、2)の各VCPを2個のVCPで表現する例を示す。
【図7】実施例での走行スケジュールの例を示す図
【図8】図7の走行スケジュールを、搬送車の位置と時刻として示す図
【図9】実施例での走行スケジュール間の干渉の排除を示す図
【図10】実施例での搬送車の状態を管理するアルゴリズムを示すフローチャート
【図11】実施例のシミュレーション装置とその周辺とを示す図
【図12】シミュレーション装置の要部ブロック図
【図13】クライアント端末のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。この発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づき、明細書の記載とこの分野での周知技術とを参酌し、当業者の理解に従って定められるべきである。
【実施例】
【0017】
シミュレーション対象の搬送車システム
図1〜図10に、シミュレーション対象である実在の搬送車システム2を示す。図1に示すように、搬送車システム2はインターベイルート4とイントラベイルート6とで構成され、ルート4,6に沿って複数の搬送車8がワークを搬送する。ルート4,6に沿ってロードポート10とバッファ12があり、ロードポート10は図示しない処理装置と搬送車8との間でワークを受け渡しする場所で、バッファ12は搬送車8がワークを仮置きする場所である。ルート4,6には排他制御が必要な個所があり、例えばルートの合流部14で排他制御が必要である。ここで排他制御は、走行ルート上のある位置に対し、複数の搬送車が同時に進入することを、確実に排除する制御である。搬送車8は地上コントローラ20の制御により走行し、地上コントローラ20は搬送車8を直接制御しても良く、あるいは中間にゾーンコントローラを設けて、地上コントローラがゾーンコントローラを経由して搬送車8を制御しても良い。
【0018】
図2は地上コントローラ20の構成を示し、MES(Manufacturing Execution System)21などの上位コントローラから、通信インターフェース22が搬送要求を受け付ける。搬送要求では、ワークを荷積みするロードポートとワークを荷下ろしするロードポートとが指定される。搬送要求では、荷積みが可能になる時刻と荷積みを完了すべき時刻、及び荷下ろしが可能になる時刻と荷下ろしを完了しているべき時刻が指定されていることもある。荷積みと荷下ろしの遅延の影響はロードポート内のバッファ等により小さくできるが、荷下ろしが極端に遅延すると、処理すべきワークがないため処理装置が停止することがある。そのため、荷下ろしが可能になる時刻と荷下ろしを完了しているべき時刻との間に、搬送車が荷下ろし先のロードポートに到着することが重要である。割付部24は、搬送要求を搬送車への指令である搬送指令に変換し、通信インターフェース33等を介し、搬送車に搬送指令を割り付ける。なお搬送指令は、後述の走行スケジュールと共に搬送車8へ送信しても良く、あるいは搬送指令のみを送信しても良い。
【0019】
スケジュール作成部25は、各搬送車に対する走行スケジュールを生成する。走行スケジュールは搬送指令、配車、追い出しなどを実行する際の、搬送車の走行のスケジュールである。またこの明細書では、搬送車が加速または減速のために速度制御を行う走行ルート上の位置と、その時刻との組み合わせをVCP(速度制御点)と呼ぶ。なお合流部等の排他制御が必要な個所を速度制御点VCPに含め、荷下ろし位置と荷積み位置も速度の変更を伴うのでVCPに含める。そして走行スケジュールはVCPの列で構成されている。スケジューラ26は、搬送車の現在位置から目的地(退避位置)までの走行スケジュールを、他の搬送車との干渉を無視して作成する。目的地は例えば荷下ろし位置、もしくは荷下ろし位置よりも遠い位置である退避位置である。荷下ろし完了後に周回走行により待機する場合、例えば荷下ろし位置から出発することにより周回走行を開始するまでの走行スケジュールを作成する。搬送指令中で、荷積みが可能になる時刻と荷積みを完了すべき時刻、あるいは荷下ろしが可能になる時刻と荷下ろしを完了しているべき時刻が指定されている場合、これらの時刻に従って搬送車がロードポートに到着するように走行スケジュールを作成する。これらの時刻に従った走行スケジュールを作成できない場合、通信インターフェース22を介し、MES21へその旨を報告する。
【0020】
複数の搬送車8がルート4,6を走行するので、搬送車8間の干渉が生じることが考えられる。干渉排除部28は、スケジューラ26で新たに作成した走行スケジュール、及び記憶部31に記憶済みの走行スケジュールに対し、搬送車8間の干渉を排除するように、走行スケジュールを修正する。干渉の検出では、速度制御点VCPにおいて、搬送車が前後いずれかの搬送車と干渉するか否かを検出し、このためには例えば搬送車8の車体長などで定まる距離以上の車間距離が、前後の搬送車間に存在するか否かを評価する。そして干渉は前方(下流側)の搬送車と後方(上流側)の搬送車の間で生じ、干渉を検出すると後方の搬送車の走行スケジュールを修正する。干渉の検出を、走行スケジュールで定まる走行ルート上の全ての位置に対して行う必要はなく、速度制御点VCPにおいて前後の搬送車と干渉するか否かを検出すればよい。このためVCP間の距離あるいは時間等を短くし、VCP間で後方の搬送車が前方の搬送車を追い越すことがないようにする、あるいはVCPで干渉の有無を評価する際に、直前のVCPとの間で搬送車間の順序が変化していないかを評価する。なお複数の搬送車の走行スケジュールに対して、速度制御点VCPを時間が古い側から新しい側へと順次検索し、古い側の速度制御点から順番に干渉の有無を検出する。
【0021】
干渉を検出すると、後方の搬送車に対し、減速のための速度制御点とその後の再加速のための速度制御点とを追加することにより、干渉を回避する。複数の搬送車に対し、速度制御点を時刻順にソートして干渉の有無を検出し、走行スケジュールを修正していくと、各速度制御点VCPに対し、1回ずつ干渉の有無を検出することにより、干渉を排除できる。拘束条件チェック部30は、消費電力の最大値などの拘束条件が充たされるか否かをチェックし、充たされない場合、走行スケジュールを修正する。搬送車8は地上側の配線から非接触給電などにより給電を受け、給電を行う範囲の単位となる給電エリア毎の最大消費電力が定まっている。多数台の搬送車が同時に加速すると、最大消費電力の制限を超えることがある。そこで同じ給電エリア内で多数の搬送車が同時に加速を実行することにより、非接触給電の条件が充たされなくなることがないように、走行スケジュールを修正する。なお拘束条件チェック部30は設けなくても良い。
【0022】
記憶部31は、干渉を排除し拘束条件を満たすように修正した走行スケジュールを記憶する。搬送車8は例えば数100台あり、例えば1回の搬送に数分の時間を要すると、毎分100台程度の搬送車に対し、新たに走行スケジュールが作成され、かつ走行スケジュールが完了することになる。そこで干渉排除部28及び拘束条件チェック部30での処理は、例えば1秒〜30秒程度の所定の時間間隔で周期的に行い、この時間毎に記憶部31に記憶した走行スケジュールと、新たに作成した走行スケジュールとに対し、干渉の排除と拘束条件のチェックとを行い、修正後の走行スケジュールを記憶部31に記憶する。
【0023】
速度制御点VCPの列から成る走行スケジュールでは、搬送車の加速度は不連続に変化する。そこで速度制御点VCPの周辺で速度を平滑化し、加速度が所定の条件を満たすようにする。この処理を平滑化部32で行うが、搬送車8で平滑化を行っても良い。通信インターフェース33は、平滑化済みの走行スケジュール(速度パターン)を搬送車8へ送信する。スケジューラ26では、荷下ろし位置を越えて退避位置までの走行スケジュールを作成するので、搬送車に対し例えば数分以上のスケジュールを作成している。この一方で1〜30秒程度の周期で、走行スケジュールの修正を行う。そこで通信インターフェース33は、例えば次に走行スケジュールが修正される時刻までの走行スケジュールあるいは速度パターンを搬送車8へ送信し、搬送車で受信済みの走行スケジュール等が無駄にならないようにする。
【0024】
搬送車8は位置と時刻、速度及び状態と、荷積み、荷下ろし、合流部の通過を要求等のイベントを通信インターフェース33へ報告し、搬送車8の状態を状態管理部34で記憶すると共に管理する。スケジュール修正部36は、状態管理部34が記憶している搬送車8の実際の状態と、記憶部31が記憶している走行スケジュールとを比較し、許容値以上の偏差がある場合、記憶部31の走行スケジュールを例えば偏差の時間分シフトするように修正する。この修正は、次回に走行スケジュール間の干渉を評価する際に利用される。偏差の有無に係わらず、搬送車の状態を受信する都度、走行スケジュールを修正しても良い。
【0025】
合流部などでの排他制御は、走行スケジュールに含まれていると考えることができる。各搬送車の走行スケジュールからの逸脱が小さいことが保証されている場合、走行スケジュールに沿って走行すれば、排他制御が実現される。しかしながら合流部などへの到着順序が、走行スケジュールで想定しているものから狂う可能性がある場合、排他制御を個別的に実行するため、アービトレイタ38を設ける。例えば搬送車8から合流部等の排他制御個所の通過をアービトレイタ38へ要求させ、アービトレイタ38により排他制御を実行する。あるいはまた、搬送車8から排他制御個所の通過を要求する代わりに、アービトレイタ38が状態管理部34のデータから搬送車の実際の位置と速度を求め、排他制御個所の通過順序を決定して、搬送車8に指令しても良い。
【0026】
配車部40は、例えば空きの、即ち搬送指令を割り付けられていない搬送車に対し、ルート4,6に沿って指定された位置まで移動することを指令する。これは空の搬送車が不足するエリアに、空の搬送車に余裕のあるエリアから搬送車を移動させることである。なお走行が指令されていない搬送車、即ち搬送指令も割り付けられず、配車も割り付けられず、メンテナンスその他の理由での走行も行っていない搬送車は、退避位置で停止している。また退避位置は例えばイントラベイルート6の指定された位置である。
【0027】
退避位置に停止中の搬送車は、他の搬送車の走行を妨害することがある。退避位置で停止中の搬送車を状態管理部34で管理し、他の搬送車の走行を妨げる搬送車を検出して、追い出しを指令する。追い出しの内容は、指定された位置まで走行して待機することである。配車あるいは追い出しの対象となる搬送車に対し、スケジューラ26で走行スケジュールを作成し、搬送指令を実行中の搬送車などと同様に走行を制御する。なお追い出し部42を設ける代わりに、退避位置の搬送車に対しては、速度が0の走行スケジュールが作成されているものとして取り扱っても良い。また退避位置で停止する代わりに、搬送車8がルート4,6に沿って周回走行するようにしてもよい。
【0028】
ログファイル記憶部44は完了した走行スケジュールを記憶し、走行時間解析部46は過去の走行スケジュールから、走行の所要時間を算出するためのパラメータを求める。また記憶部31の走行スケジュールは、荷積み位置及び荷下ろし位置へ搬送車が到着する予測時刻を与える。そこでMES21の要求等に応じて、搬送車が荷積み位置及び荷下ろし位置へ到着する予測時刻を、通信インターフェース22を介してMES21へ出力する。
【0029】
図3に走行の所要時間の予測を示す。ログファイル記憶部44のデータ中から、走行の出発地と目的地とを含むように走行した過去の走行スケジュールを検索する。出発地とは例えば搬送指令を割り付ける時点での搬送車の現在位置で、目的地とは例えば退避位置である。走行スケジュールから出発地と目的地間の実際の所要時間を求める。また先行する走行スケジュールから、出発地と目的地との間で、先行の搬送車が停止してワークを移載した回数(停止移載回数)を求め、走行ルートのマップから出発地と目的地との間の合流部の個数を求める。そして停止移載回数nと合流部の個数mとを説明変数として、所要走行時間Tを統計的に処理する。例えば T=an+bm+c と近似して、係数a,b,cの値を求める。ここでの定数項cが標準所要時間で、aは1回の停止移載による所要時間増の期待値、bは1個の合流部による所要時間増の期待値である。そしてa,b,cの値を例えば出発地と目的地との組み合わせ毎に記憶し、先行する搬送車の停止移載回数と合流部の数とから所要走行時間を求める。求めた所要走行時間がスケジューラ26で走行スケジュールを作成する際の、所要時間である。なお停止移載により走行ルートが塞がれる時間は、合流部の通過待時間よりも一般に長いので、T=an+c と近似して、合流部の通過回数を無視しても良い。
【0030】
図4は、走行スケジュールをTo位置よりも遠方の、退避位置まで作成する意味を示す。先行の搬送車Aが時刻T1にTo位置に到着する走行スケジュールで、その後方を搬送車Bが走行するものとする。先行の搬送車AはTo位置で停止してワークを移載し、さらに退避位置まで走行する。ここで走行スケジュールがTo位置までしかないと、搬送車Bに対し信頼性のある走行スケジュールを作成することが難しい。
【0031】
図5〜図9に、スケジュール作成部25での処理を示す。図5のステップ1で通信インターフェース22がMES21などから搬送指令を受信すると、割付部24は搬送指令を割り付け可能な搬送車をサーチし、搬送指令を割り付ける(ステップ2,3)。ここで搬送指令は、現在位置から荷積みするロードポートと荷下ろしするロードポートとを経由し、退避位置まで走行する指令である。スケジューラ26は、新たに搬送指令を割り付けた搬送車に対し、他の搬送車との干渉を無視した単独走行での走行スケジュールを作成する(ステップ4)。以下走行スケジュールを単にスケジュールと呼び、スケジュールは速度制御点VCPと次の目標速度等のレコードからなり、速度制御点VCPのデータには位置と時刻とが含まれている。また2つのVCP間の位置の差と時間差とから、次の目標速度が判明するので、走行スケジュールに目標速度を指定しなくても良い。
【0032】
図6に速度制御点VCPの考え方を示す。図6の1)は搬送車の速度パターンを示し、時間の関数として速度が指定されている。図6の1)の速度パターンを時間の関数として走行ルート上の位置に変換すると、2)の実線のようになる。速度パターンは加速と定速走行及び減速の繰り返しで構成される。そこで速度パターンを単純化し、図6の2)の破線のように、速度が急変するものとする。この場合に速度を急変させる位置と時刻とが速度制御点VCPである。2)では加速,定速走行,減速を2個の制御点で表現している。1回の加速あるいは減速を2個以上の速度制御点VCPで表現しても良く、例えば加速と減速とをそれぞれ2個の速度制御点VCPで表示すると、図6の3)のようになる。
【0033】
図7に干渉の排除前の走行スケジュールの例を示し、走行スケジュールの各レコードはVCPの位置とその時刻及び次の目標速度である。そしてこれ以外に荷積み、合流、荷下ろしなどのイベントを伴う場合、イベントが記載される。なおイベントは走行スケジュールとは別途に指定しても良い。例えば図7の場合、VCPは7個所指定され、そのうち2個所が荷積みと荷下ろしで目標速度は0である。図7の走行スケジュール70を、走行ルート上の位置と時刻として示すと図8のようになる。
【0034】
図5に戻り、ステップ5で搬送車間の干渉を回避するように走行スケジュールを修正する。この処理は記憶部31で記憶している走行スケジュールと、スケジューラ26で新たに作成した走行スケジュールとに対して実行し、例えば1秒〜30秒程度の時間間隔で実行する。そして先行の搬送車と干渉しないように、後行の搬送車のスケジュールを修正し、複数のスケジュール中のVCPを時間順に検索して、時間が古いVCPから時間が後のVCPへの順に処理する。
【0035】
干渉の検出と走行スケジュールの修正の例を図9に示す。1点鎖線の走行スケジュール,実線の走行スケジュール,破線の走行スケジュールの3つがあるとする。VCPを時間順に検索すると、時刻T1〜T6となる。ここで今、時刻T5での実線の走行スケジュールに対する干渉の有無をチェックするものとすると、1点鎖線の走行スケジュールとは充分な間隔があり、破線の走行スケジュールとは干渉する。ここで破線の走行スケジュールは後方の搬送車のスケジュールなので、破線の走行スケジュールの時刻T6のVCPを減速のVCPに変更し、その後に再加速のVCP(時刻T7)を追加する。これらのVCPでは、加速度が不連続に変化するので、加速度を許容範囲内とするように平滑化したものが、搬送車の速度パターンとなる。
【0036】
ステップ6で最大電力等の拘束条件を満たすようにスケジュールを修正し、記憶部31にスケジュールを記憶する。スケジュールは指令の終了により消滅し、新たな割付により発生するので、1秒〜30秒程度の時間毎に、定期的にあるいは不定期に、ステップ5〜ステップ7の処理を繰り返し、干渉の排除と拘束条件を満たすための修正とを繰り返す。そしてステップ8で、例えば次の1秒〜30秒分の走行スケジュールを平滑化したものを、搬送車へ送信する。
【0037】
走行スケジュールの作成以外の処理を図10に示し、ステップ11で通信インターフェース33を介し搬送車の状態を受信して、状態管理部34に記憶する。状態には位置と速度、時刻、及びイベントが含まれ、アービトレイタを設ける場合、排他制御の要求も含まれる。ステップ12で走行スケジュールと搬送車の実際の状態との偏差を求め、偏差が許容値以上であれば走行スケジュールを修正するように、記憶部31のデータを上書きする。また排他制御要求があれば、アービトレイタにより排他制御を実行する(ステップ13)。さらに搬送車の位置から、追い出す必要がある搬送車を検出し、追い出し部42で追い出しを割り付ける。また空きの搬送車が不足するエリアと、空きの搬送車に余裕のあるエリア等を、状態管理部34のデータにより配車部40で検出し、空きの搬送車を配車する(ステップ15)。さらにMES21の要求に応じるなどにより、荷積み位置あるいは荷下ろし位置への到着予測時刻を、状態管理部34あるいは記憶部31のデータから求めて、報告する(ステップ16)。
【0038】
シミュレーション装置
図11〜図13に実施例のシミュレーション装置80を示し、図1〜図10と同じ符号は同じものを表す。またシミュレーション装置80に関する記載はそのままシミュレーション方法にも当てはまり、逆にシミュレーション方法に関する記載はそのままシミュレーション装置80にも当てはまる。さらにシミュレーション装置80は、複数のコンピュータにより実現しても良い。72はMES21のオペレータ端末で、シミュレーション装置80はシミュレーション対象の搬送車システム2、及びMES21と通信インターフェース81を介して通信し、また管理者端末96及び複数のクライアント端末98と通信インターフェース82を介して通信する。管理者端末96はシミュレーション装置80にシステム構成の変更等の任意の指示ができるが、クライアント端末98からシミュレーション装置80へ入力可能な指示は制限されている。他の点では、管理者端末96とクライアント端末98は同様である。
【0039】
生産計画管理部83はMES21から入力された生産計画を記憶すると共に、仮想的な搬送車によりシミュレーション装置80内の仮想的な処理装置へ搬入されたワークを、処理の種類で定まる時間の間処理中とし、処理が終わると搬出を要求する。このように生産計画管理部83は、MES21から入力された生産計画に従ってワークの搬送を要求し、ワークの搬送に基づいて仮想的な生産を行う。走行計画作成部84は生産計画に従ってワークを搬送するように仮想的な走行計画を作成し、走行計画では荷積みの位置と荷下ろしの位置の他に、仮想的な搬送車が走行する走行経路を指定する。
【0040】
走行スケジュール作成部86は走行計画を実行するための走行スケジュールを作成する。走行スケジュールの意味と作成方法は実在の搬送車システム2と同じで、走行スケジュール作成部86はスケジュール作成部25と同様の構成を持ち、相違点は記憶部31及び平滑化部32も走行スケジュール作成部86に含めた点である。即ちスケジューラ26で干渉を無視して走行スケジュールを作成し、干渉排除部28で搬送車間の干渉を排除し、拘束条件チェック部30で搬送車システム2の拘束条件を充たすように、走行スケジュールを修正する。
【0041】
シミュレータ87は、走行スケジュールに従って仮想的な搬送車を複数走行させるようにシミュレーションする。搬送車モデル88は、実際の搬送車をモデルとして走行スケジュールに従った仮想的な走行を行わせ、ここで複数の搬送車に対し同時に仮想的な走行を行わせる。そして搬送車間の干渉を回避するための減速、ロードポートでの停止と移載等を含めて走行をシミュレーションする。シミュレータ87の出力は、搬送車の位置と速度、及び走行計画の達成状況、並びに消費電力等の搬送車システムの状況である。
【0042】
状態管理部34は仮想的な搬送車システムの状態を記憶すると共に管理し、配車部40へ配車を要求し、追い出し部42へ搬送車の追い出しを依頼する。状態管理部34は、シミュレーション中の搬送車の位置と速度等に応じて走行スケジュールの修正を要求し、また走行計画作成部84に対し搬送車の位置と速度等を入力する。走行計画作成部84はこれに基づいて渋滞が生成しないように搬送車への走行経路を指定する。
【0043】
ログファイル記憶部89は、生産計画と走行スケジュール等の、シミュレーションの前提となるデータと、シミュレーション結果を記憶する。シミュレーション結果には、搬送車の位置と速度、ワークの荷積みと荷下ろしの時刻、各時刻での搬送車の位置と状態の分布、消費電力等がある。システム構成記憶部90は、仮想的な搬送車システムの構成を記憶し、これには走行ルート、搬送車の台数、ロードポートとバッファの位置、合流部、分岐部の位置、使用可能な電力等がある。またこれ以外に、配車、追い出し、走行経路の選択、搬送車への走行計画の割り当て順序等の、搬送車システムの運用ロジックをシステム構成記憶部90が記憶する。最適化部92は、シミュレーション結果を解析することにより、搬送車システム2を最適化するためのツールである。搬送時間の分布等に基づいて、スループット解析部93により搬送のスループットを解析し、特に生産計画を遅らせる程度の搬送の遅れがあると検出する。また渋滞検出部94は、シミュレーション過程での搬送車の渋滞を検出する。システム構成は、例えば管理者端末96から変更可能であるが、最適化部92により自律的に変更可能にしても良い。背景画像記憶部95は、仮想的な搬送車システムのシステム構成に対応する3Dもしくは擬似3Dの背景画像を記憶する。
【0044】
図13にクライアント端末98の構成を示し、管理者端末96も同様である。通信インターフェース100は端末96,98間及び通信インターフェース82との間で通信する。背景画像記憶部102はシミュレーション装置80から送信された背景画像を記憶し、ログファイル記憶部104はシミュレーション装置80のログファイル記憶部89のデータの全部または一部を記憶する。画像合成部106は、入力手段114からの指示に従い、ログファイル記憶部104のデータに基づく搬送車とワークの画像を背景画像と合成して、モニタ108に表示させる。
【0045】
ログファイル記憶部104にはシミュレーション結果が時間の順で記憶されているので、例えばシミュレーションの始めからモニタ108に搬送車システムの全体像を動画で表示する。端末96,98を操作するユーザがマウス、キーボード等の入力手段114により、搬送車システム中の表示対象となるエリアを指定すると、指定されたエリアを拡大して詳細に表示し、この時、鳥瞰図と平面図等のように表示のモードを変更でき、さらに動画表示と静止画表示、及びデータ表示のように、表示を切り替えることができる。さらに表示する項目を、空きの搬送車、搬送を実行中の搬送車、生産計画で搬送が要求されてから完了するまでの時間の分布等のように、端末毎に変更できる。またどの時間帯のデータを表示するかも、入力手段114から端末96,98毎に指定できる。
【0046】
解析サポート部110は最適化部92と同様に、シミュレーション結果を解析するが、どのような解析を行うかは端末98毎に適宜に定める。図13では、スループット解析部93と渋滞検出部94の他に、搬送車毎の延べ走行時間、走行距離等からメンテナンスが必要な設備がどのように発生するかを予測するメンテナンス解析部111と、走行ルートの各部での消費電力を解析し、非接触給電等の設備が対応できるかを解析する電力解析部112とを示す。
【0047】
クライアント端末98はどのようなシミュレーションを行うかと、どのようにシステム構成を最適化するかを管理者端末96へ通知し、管理者端末96からシミュレーション装置80へシミュレーションの実行とシステム構成の変更とを指示する。またシミュレーションはオペレータ端末72から指定した条件に基づいても実行される。
【0048】
シミュレーション装置80は、実在の搬送車システム2での搬送結果をほぼ正確にシミュレーションできる。走行スケジュール作成部86は搬送車間の干渉の回避等を織り込んだ走行スケジュールを作成し、これは搬送車システム2で作成するものと同様のスケジュールである。また走行スケジュールは現実的なスケジュールなので、シミュレーション結果が走行スケジュールから大きく外れることは希である。従ってシミュレータ87の負担が小さく、比較的短時間に正確なシミュレーションができる。走行スケジュールには渋滞の回避等が織り込まれているので、ほぼ最適な運用に対する結果を短時間でシミュレーションできる。さらにシミュレーションには生産計画が加味され、搬送結果に基づいて生産計画が仮想的に実行されて、生産計画の次のステップへと進んで行く。このため原理的には、遠い未来までシミュレーションができる。
【0049】
搬送結果を正確にシミュレーションでき、しかも現在の搬送車システム2の現状を初期値としてシミュレーションできる。従ってMES21が生産計画を実行に移す前に、生産計画を遅らせないようにワークを搬送できるかどうかをシミュレーションできる。シミュレーションする範囲は例えば数分後から数時間後までの生産計画で、より長い時間に渡るシミュレーションも可能である。シミュレーションでワークの搬送に遅れがあると最適化部92で検出し、生産計画を変更する、あるいは予備の搬送車を投入する、配車等のロジックを変更する等により対処できる。
【0050】
新たな生産計画を作成する場合、あるいは生産計画を変更する場合に、生産計画がワークの搬送の面で現実的なものかどうか、シミュレーションにより検証できる。生産計画の無理が検出された場合、生産計画を変更する、あるいは運用ロジックを変更することにより対応できる。また同じ生産計画に対して、システム構成を変更して複数回シミュレーションできる。するとシステム構成の変更により、搬送車システムを最適化でできる。
【0051】
搬送車システムの設計、運用には複数の人が係わり合う。そこで複数の視点からシミュレーションを行い、結果を解析することが必要になる。シミュレーションの実行は管理者端末96から指令し、実行結果を複数の端末96,98で共有し、各端末96,98では異なる視点から解析する。なおオペレータ端末72は、管理者端末96とは独立してシミュレーションを指令できる端末として良い。またシミュレーション結果を送信する際に、ログファイルのデータと背景画像の送信のみが必要で、ログファイルは一部のみを送信することもでき、背景画像は以前の画像からの変化分のみを送信することも可能である。このため通信量を少なくできる。各端末96,98では、シミュレーション結果での、異なるシーンを異なる解像度と異なる画面仕様で表示でき、また独立して画面操作ができる。即ち1つの端末での解析は、他の端末での解析に制約を加えない。また端末96,98は共通のシミュレーション結果を基に、解析を行うことができる。
【0052】
各端末96,98での解析に基づいて、搬送車の数を増す、バイパスルートを追加する、バッファを追加する等のハードウェア面でのシステム構成の変更と、運用ロジックを変更するようにソフトウェア面でシステム構成を変更することが提案できる。提案に基づいてシステム構成を変更し、例えば同じ生産計画に対してシミュレーションを再実行し、提案の有効性を確認する。シミュレーション結果は複数の端末96,98で共有されるので、偏りのない評価が可能である。以上のようにして、搬送車システム2の構成を最適化できる。
【0053】
実施例では、天井走行車による半導体の搬送を説明したが、地上走行の無人搬送車でワーク等を搬送する場合も同様である。ワークは半導体に限らず、レチクル、フラットパネルディスプレイの基板、医薬品、食料品、機械部品あるいは原材料等でも良い。
【符号の説明】
【0054】
2 搬送車システム
4 インターベイルート
6 イントラベイルート
8 搬送車
10 ロードポート
12 バッファ
14 合流部
20 地上コントローラ
21 MES
22,33 通信インターフェース
24 割付部
25 スケジュール作成部
26 スケジューラ
28 干渉排除部
30 拘束条件チェック部
31 記憶部
32 平滑化部
34 状態管理部
36 スケジュール修正部
38 アービトレイタ
40 配車部
42 追い出し部
44 ログファイル記憶部
46 走行時間解析部
70 走行スケジュール
72 オペレータ端末
80 シミュレーション装置
81,82 通信インターフェース
83 生産計画管理部
84 走行計画作成部
86 走行スケジュール作成部
87 シミュレータ
88 搬送車モデル
89 ログファイル記憶部
90 システム構成記憶部
92 最適化部
93 スループット解析部
94 渋滞検出部
95 背景画像記憶部
96 管理者端末
98 クライアント端末
100 通信インターフェース
102 背景画像記憶部
104 ログファイル記憶部
106 画像合成部
108 モニタ
110 解析サポート部
111 メンテナンス解析部
112 電力解析部
114 入力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理装置間でワークを搬送する搬送車システムをシミュレーションするシステムであって、
処理装置での仮想的な生産計画を管理するための生産計画管理部と、
前記の生産計画に従って、仮想的な搬送車への走行計画を作成する走行計画作成部と、 作成した走行計画に従って、仮想的な搬送車の位置と速度を時間の関数として表す走行スケジュールを作成する走行スケジュール作成部と、
前記の走行スケジュールに従って、仮想的な搬送車を、実在の搬送車システムの制約に従って、かつ搬送車間の干渉を回避するように走行させる走行シミュレーションを行うシミュレーション部、
とを備えていることを特徴とする、搬送車システムのシミュレーションシステム。
【請求項2】
走行スケジュール作成部は、搬送車が加速または減速する位置と時刻とを表す速度制御点の列からなる走行スケジュールを個々の搬送車に対し作成することを特徴とする、請求項1の搬送車システムのシミュレーションシステム。
【請求項3】
走行スケジュール作成部は、
前記の走行計画に従い、前記の走行スケジュールを他の搬送車との干渉を無視して作成する手段と、
新たに作成した走行スケジュールと干渉を排除済みの走行スケジュールの双方を対象として、走行スケジュール中の速度制御点での搬送車間の相対位置から搬送車間の干渉を検出すると共に、検出した干渉を排除するように、後行の搬送車の走行スケジュールを修正する手段と、
走行スケジュールの作成と、走行スケジュールの修正による干渉の排除、及び干渉を排除済みの走行スケジュールの記憶とを繰り返すように構成されていることを特徴とする、
請求項2の搬送車システムのシミュレーションシステム。
【請求項4】
シミュレーション対象の実在の搬送車システムは、複数台の搬送車が現在の位置と速度とをコントローラへ報告するように構成され、
実在の搬送車システムでの搬送車の位置と速度及び搬送車へ指令済みの走行スケジュールを初期値として、
生産計画管理部へ入力された処理装置での今後の生産計画に従って走行計画を作成すると共に、走行スケジュールの作成と走行シミュレーションとを行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかの搬送車システムのシミュレーションシステム。
【請求項5】
仮想的な搬送車システムの運用ロジックを変えてシミュレーションを実行できるようにされていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかの搬送車システムのシミュレーションシステム。
【請求項6】
処理装置間でワークを搬送する搬送車システムをシミュレーションする方法であって、
生産計画管理部により、処理装置での仮想的な生産計画を管理するステップと、
走行計画作成部により、前記の生産計画に従って、仮想的な搬送車への走行計画を作成するステップと、
走行スケジュール作成部により、前記の走行計画に従って、仮想的な搬送車の位置と速度を時間の関数として表す走行スケジュールを作成するステップと、
シミュレーション部により、前記の走行スケジュールに従って、仮想的な搬送車を、実在の搬送車システムの制約に従って、かつ搬送車間の干渉を回避するように走行させる走行シミュレーションを行うステップとを、
実行することを特徴とする、搬送車システムのシミュレーション方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−49500(P2013−49500A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187121(P2011−187121)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】