説明

携帯端末

【課題】画像読取り方式と非接触通信方式の両方に対応できるリーダ装置に対して、画像読取り方式と非接触通信方式のうち目的とする通信方式で容易に通信することができる携帯端末を提供する。
【解決手段】携帯端末に、データ読取りに用いられる画像を表示面に表示できる表示手段と、アンテナにより非接触でデータを送信する非接触データ送信手段と、自己の姿勢を検知する姿勢検知手段と、前記姿勢検知手段が所定の姿勢を検知したときに前記非接触データ送信手段によるデータ送信を禁止する非接触データ送信禁止手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistants)のような携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機やPDAといった携帯端末が提供されており、これらの携帯端末は、例えば携帯電話機であれば非接触IC機能が搭載される、PDAであれば無線通信機能が搭載されるなど、年々多機能化している。
【0003】
このような携帯端末として、接触通信と非接触通信の両機能を有し、外部機器との意図しない通信を防止するために、非接触通信禁止手段としてスイッチを設けた携帯端末が開示されている(特許文献1参照)。前記スイッチには、機械的操作スイッチの他、各種リレーやバリキャップダイオード等が使用されている。これにより、意図しない取引や決済処理を防止できるとされている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−222097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した公知例は、非接触通信を利用する際にスイッチを操作して禁止解除する煩わしさを伴うものであり、また、バーコード等の画像を読取る画像読取り方式と非接触通信方式の両方に対応する装置に適したものではなかった。
詳述すると、画像読取り方式と非接触通信方式の両方に対応する携帯端末を使用し、画像読取り方式と非接触通信方式の両方に対応するリーダ装置にデータを読取らせるとき、環境としてはどちらの方式であってもデータを読取らせることができる。ここで、リーダ装置に携帯端末からバーコード等の画像を読取らせるためには、携帯端末の表示画面とリーダ装置の読取り面とを近接させて正面対向させる必要が生じる。一方、非接触通信方式は、画像読み取り方式よりも広範囲で通信可能で、しかも正面対向させずとも様々な角度で通信可能である。このため、携帯端末から画像をリーダ装置に読取らせようとしても、非接触通信方式での通信が先に実行されてしまうことがある。そうすると、画像から読取るべきデータと異なるデータをリーダ装置が非接触通信方式で読取ることになり、必要なデータが得られずにエラーになってしまうことになる。
【0006】
この発明は、上述の問題に鑑み、画像読取り方式と非接触通信方式の両方に対応できるリーダ装置に対して、画像読取り方式と非接触通信方式のうち目的とする通信方式で容易に通信することができる携帯端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、データ読取りに用いられる画像を表示面に表示できる表示手段と、アンテナにより非接触でデータを送信する非接触データ送信手段と、自己の姿勢を検知する姿勢検知手段と、前記姿勢検知手段が所定の姿勢を検知したときに前記非接触データ送信手段によるデータ送信を禁止する非接触データ送信禁止手段とを備えた携帯端末であることを特徴とする。
【0008】
前記データ読取りに用いられる画像は、二次元バーコードや一次元バーコード等、スキャニングによってデータ化できる画像で構成することができる。
前記非接触データ送信手段は、アンテナによりデータを非接触で送信する非接触ICなど、非接触でデータ送信できる手段で構成することができる。
【0009】
前記非接触データ送信禁止手段は、前記非接触ICの有効/無効を切り替える切り替えスイッチなど、前記非接触データ送信手段でデータ送信できない状態にする手段で構成することができる。
【0010】
この発明により、リーダ装置に画像を読取らせたいときに、先に非接触データ送信手段による送信データがリーダ装置に読取られてしまうことを防止できる。
【0011】
この発明の態様として、前記所定の姿勢を、前記表示面が下方または斜め下方を向いた姿勢とすることができる。
これにより、画像を読取らせようとして表示面を下方または斜め下方に向けたときに非接触データ送信手段によるデータ送信が禁止される。従って、利用者は、特別な操作をせずとも、画像をリーダ装置に読取らせようとする通常の動作をするだけで、非接触データ送信手段の送信データがリーダ装置に先に読取られてしまうことを防止できる。
【0012】
またこの発明の態様として、開状態のときに前記表示面が露出し、閉状態のときに前記表示面が内側にたたまれる折りたたみ開閉部を備え、前記所定の姿勢を、前記開状態となって前記表示面が露出した姿勢とすることができる。
【0013】
これにより、画像を読取らせようとして表示面を露出させたときに非接触データ送信手段によるデータ送信が禁止される。従って、利用者は、特別な操作をせずとも、画像をリーダ装置に読取らせようとする通常の動作をするだけで、非接触データ送信手段の送信データがリーダ装置に先に読取られてしまうことを防止できる。
【発明の効果】
【0014】
この発明により、画像読取り方式と非接触通信方式の両方に対応することができる携帯端末を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1(A)はリーダ装置30と開状態で下向けた携帯電話機1を上から見た平面図であり、図1(B)はリーダ装置30と閉状態の携帯電話機1を側面から見た側面図であり、図1(C)は開状態の携帯電話機1を側面から見た側面図である。
【0017】
リーダ装置30は、上面に略水平なバーコード読取り面31が設けられ、その下方にアンテナ32が設けられている。このリーダ装置は、バーコード読取り面31にバーコードがかざされるとバーコードデータを読取ることができる。また、非接触通信範囲に非接触ICのアンテナが入ると非接触ICデータを読取ることができる。
【0018】
携帯電話機1は、入力キーなどが配置されている入力側筐体3と、LCD15が設けられている表示側筐体2とがヒンジ5により折りたたみ開閉可能に枢着されている。LCD15は、図1(B)に示す閉状態では視認できないように、表示側筐体2の折りたたみ内面側に設けられている。入力側筐体3の内部には、非接触IC23が埋設されている。この非接触IC23は、データを記憶するメモリー部、および非接触通信するアンテナ部を有している。
【0019】
図2は、携帯電話機1のブロック図を示す。
携帯電話機1は、CPU11、インターフェース12,13、メモリー14、LCD15、マイク16、スピーカ17、操作ボタン18、アンテナ19、電池20、振動モータ21、カメラ22、非接触IC23、および姿勢検知スイッチ24が備えられている。
【0020】
CPU11は、インターフェース12,13を介して各制御を行い、携帯電話機1全体を制御する。また、メモリー14を一次記憶領域として利用する。このCPU11は、姿勢検知スイッチ24から受信した検知信号に基づいて、携帯電話機1が所定の姿勢となったときに非接触IC23の有効/無効を切り替える切替処理も実行する。この切替処理では、例えばLCD15の表示面の向きが鉛直下方の向きから縦横いずれでも45°程度傾斜した向きまでの範囲にある姿勢のときに無効に切り替え、それ以外の姿勢のときに有効に切り替えるとよい。
【0021】
ここで45°程度の傾斜としているのは、リーダ装置30がバーコードを読取り可能な傾斜角度(例えば30°程度)になるよりも前に非接触IC23を無効とすることで、リーダ装置30にバーコードを読ませる確実性を高めるためである。
【0022】
インターフェース12,13は、CPU11と他の装置とを接続している。また、インターフェース13は、非接触IC23の有効/無効を切り替える切替スイッチも有しており、CPU11の制御信号によって非接触IC23の有効/無効を切り替える。
【0023】
LCD15は、バーコードデータなどのデータを画像表示し、バーコード表示などを行う。
マイク16は、利用者が音声通話等に利用するマイクであり、周囲の音を集音してCPU11に送信する。
【0024】
スピーカ17は、利用者が音声通話等に利用するスピーカであり、CPU11から受け取った音声信号にしたがって音声を鳴らす。
操作ボタン18は、入力側筐体3に設けられており、数字入力や文字入力のために押下された押下信号をCPU11に送信する。
【0025】
アンテナ19は、携帯電話会社の基地局と無線通信し、遠隔地との通話やインターネットとの通信を可能にする。従って、携帯電話機1は、通話だけでなく、インターネットで提供されるコンテンツの表示や電子メールの送受信を行うことができる。例えばある店のホームページで二次元バーコードなどのバーコードを表示するページがあるとすると、利用者は、携帯電話機1で当該ページにアクセスし、そのバーコードをLCD15に表示するといったことができる。
【0026】
電池20は、充電可能な二次電池で構成されており、各部に動作電力を供給する。
【0027】
振動モータ21は、着信時などに振動するモータであり、CPU11の制御信号によって駆動する。
【0028】
カメラ22は、静止画と動画を撮影できるデジタルカメラであり、撮影した画像と映像をCPU11に送信する。
【0029】
非接触IC23は、データを記憶するチップ部と非接触通信用のアンテナ部とで構成されている。この非接触IC23は、CPU11およびインターフェース13によって有効/無効が切り替えられる。この非接触IC23は、有効となっているときにリーダ装置30から応答要求を受けると非接触通信を実行するが、無効となっているときにリーダ装置30から応答要求を受けても応答しない。
【0030】
姿勢検知スイッチ24は、例えばGセンサで構成されており、携帯電話機1の傾きを検知して検知信号をCPU11に送信する。
【0031】
図3は、携帯電話機1の動作を示すフローチャートである。
携帯電話機1のCPU11は、電源がONされると、非接触IC23を有効にする(ステップS1)。
【0032】
姿勢検知スイッチ24が所定の姿勢(この実施例ではLCD15の表示面が鉛直下方から45°程度傾斜した姿勢)を検知してONになると(ステップS2:YES)、CPU11は非接触IC23を無効に切り替える(ステップS3)。そして、CPU11は、姿勢検知スイッチ24がONか否か判定し、ONでなければ(つまり所定の姿勢でなければ)ステップS1に処理を戻す(ステップS4:NO)。
【0033】
姿勢検知スイッチ24がONであるか(ステップS4:YES)、前記ステップS2で姿勢検知スイッチ24がOFFであれば(ステップS2:NO)、CPU11は、電源OFFとなるまでステップS2に処理を戻す(ステップS5:NO)。電源ボタンが押下されると(ステップS5:YES)、CPU11は処理を終了して電源をOFFする。
【0034】
以上の構成および動作により、利用者は、携帯電話機1にてバーコードを表示してリーダ装置30に読取らせることができ、また非接触IC23でリーダ装置30に非接触でデータを読取らせることができる。
【0035】
LCD15に表示したバーコードをリーダ装置30に読取らせるときは、図4に示すようにLCD15が下方を向くように携帯電話機1を傾けると、その途中のポジションP2あるいはP3の段階で非接触IC23が無効になる。そして、非接触通信範囲Eの中に携帯電話機1が入るときには既に非接触IC23が無効となって反応せず、さらにLCD15をリーダ装置30のバーコード読取り面31に正面対向させると、バーコードがリーダ装置30に読取られる。従って、利用者はバーコードを読取らせる際に、非接触IC23を無効にするなどの特別な操作をせずとも、リーダ装置30にバーコードを確実に読取らせることができる。また、リーダ装置30も、バーコードを読取る前に読取り可能範囲(非接触通信範囲E)がバーコードよりも広範囲である非接触IC23と非接触通信してしまってエラーとなる心配がなく、スムーズな利用を行うことができる。
【0036】
また、非接触IC23からリーダ装置30にデータを読取らせるときは、LCD15が下方に向いていない状態で携帯電話機1を移動させて非接触通信範囲Eの内側に位置させるだけで良い。これにより、非接触IC23を利用するときも、利用者はスムーズに利用することができる。
【0037】
このようにして、例えばA店ではリーダ装置30にバーコードを読取らせる必要があり、同機種のリーダ装置30を導入しているB店では非接触IC23を読取らせる必要がある場合にも、利用者は1つの携帯電話機1で便利に利用することができる。
【0038】
また、リーダ装置30に特に改良を行う必要がないため、利用者は、バーコードと非接触ICを共用できる携帯電話機1を取得すれば、この携帯電話機1を既存のリーダ装置30にすぐに使用することができる。
【0039】
なお、以上の実施形態では、リーダ装置30におけるバーコード読取り面31を略水平としたが、例えば10°〜20°程度傾斜させてもよい。この場合、非接触IC23の有効/無効の切り替えは、上述したようにLCD15の表示面の向きが鉛直下方より45°程度傾斜した姿勢で実行する、あるいはさらに強く傾斜した姿勢で実行するなど、適宜の姿勢で実行する設定にするとよい。
【0040】
また、この実施例では折りたたみ開閉タイプの携帯電話機1を用いたが、開閉しないタイプの携帯電話機や、スライド開閉するタイプの携帯電話機を用いてもよい。この場合でも、LCD15の表示面が所定の角度となったときに非接触IC23を無効にでき、上述した効果を得ることができる。
【実施例2】
【0041】
次に、実施例2として、フリップ(表示側筐体2)の開閉によって非接触IC23の有効/無効を切り替える場合について説明する。
図5は、実施例2の携帯電話機1aのブロック図を示し、図6は携帯電話機1aの動作のフローチャートを示す。
【0042】
この携帯電話機1aは、実施例1の携帯電話機1の姿勢検知スイッチ24の変わりにフリップ開検知スイッチ25が設けられている。このフリップ開検知スイッチ25は、フリップとなる表示側筐体2(実施例1の図1参照)が開となっているか否かを検知し、この検知信号をCPU11に送信する。
その他の構成は、実施例1と同一であるので、同一要素に同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0043】
図6のフローチャートに示すように、携帯電話機1aのCPU11は、電源がONされると、非接触IC23を有効にする(ステップS11)。
【0044】
フリップ開検知スイッチ25が表示側筐体2の開を検知してONになると(ステップS12:YES)、CPU11は非接触IC23を無効に切り替える(ステップS13)。そして、CPU11は、フリップ開検知スイッチ25がONか否か判定し、ONでなければ(つまり表示側筐体2が閉であれば)ステップS11に処理を戻す(ステップS14:NO)。
【0045】
フリップ開検知スイッチ25がONであるか(ステップS14:YES)、前記ステップS12でフリップ開検知スイッチ25がOFFであれば(ステップS12:NO)、CPU11は、電源OFFとなるまでステップS12に処理を戻す(ステップS15:NO)。電源ボタンが押下されると(ステップS15:YES)、CPU11は処理を終了して電源をOFFする。
【0046】
以上の構成および動作により、利用者は携帯電話機1aを用いてリーダ装置30にバーコードを読取らせる、あるいは非接触IC23と非接触通信させることができる。そして、バーコードを読取らせる際には、表示側筐体2を開く必要があるため、この開く動作によって非接触IC23が無効となり、リーダ装置30にバーコードを確実に読取らせることができる。つまり、バーコードを読ませたいにもかかわらず非接触IC23と非接触通信してしまってエラーになるという事態を回避できる。
【0047】
なお、上述した実施例1と実施例2を組み合わせ、フリップ開検知スイッチ25がONとなり、かつLCD15の表示面が所定の角度となったときに非接触IC23を無効に切り替える構成としてもよい。この場合、LCD15の表示面が下方に向いていても、LCD15が内側に折りたたまれた状態であれば非接触IC23を有効とすることができ、また開状態でLCD15が露出していても、LCD15の表示面が所定の角度に傾けられていなければ非接触IC23を有効とできる。従って、非接触IC23を無効とする機会を必要最小限に減らすことができる。
【0048】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の携帯端末は、実施形態の携帯電話機1,1aに対応し、
以下同様に、
折りたたみ開閉部は、ヒンジ5に対応し、
非接触データ送信禁止手段は、ステップS3,S13を実行するCPU11に対応し、
表示手段は、LCD15に対応し、
非接触データ送信手段は、非接触IC23に対応し、
姿勢検知手段は、姿勢検知スイッチ24またはフリップ開検知スイッチ25に対応し、
データ読取りに用いられる画像は、バーコードに対応し、
所定の姿勢は、LCD15の表示面が鉛直下向きから45°傾斜した姿勢、あるいは携帯電話機1aが開状態の姿勢に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】携帯電話機とリーダ装置の説明図。
【図2】携帯電話機のブロック図。
【図3】携帯電話機の動作のフローチャート。
【図4】携帯電話機とリーダ装置の説明図。
【図5】実施例2の携帯電話機のブロック図。
【図6】実施例2の携帯電話機の動作のフローチャート。
【符号の説明】
【0050】
1,1a…携帯電話機、5…ヒンジ、11…CPU、15…LCD、23…非接触IC、24…姿勢検知スイッチ、25…フリップ開検知スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ読取りに用いられる画像を表示面に表示できる表示手段と、
アンテナにより非接触でデータを送信する非接触データ送信手段と、
自己の姿勢を検知する姿勢検知手段と、
前記姿勢検知手段が所定の姿勢を検知したときに前記非接触データ送信手段によるデータ送信を禁止する非接触データ送信禁止手段とを備えた
携帯端末。
【請求項2】
前記所定の姿勢を、前記表示面が下方または斜め下方を向いた姿勢とした
請求項1記載の携帯端末。
【請求項3】
開状態のときに前記表示面が露出し、閉状態のときに前記表示面が内側にたたまれる折りたたみ開閉部を備え、
前記所定の姿勢を、前記開状態となって前記表示面が露出した姿勢とした
請求項1記載の携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−199331(P2008−199331A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32904(P2007−32904)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】