説明

撮像装置及び駆動モーター

【課題】 駆動モーターのトルクの向上及び小型化等を図る。
【解決手段】 円筒状に形成され周方向において着磁され周方向に回転されるマグネット41と、マグネットと一体となって回動され撮像光学系の光路を開閉する可動部材26、27を移動させる回動アーム42と、マグネットを外側から囲むようにコイルボビン35に配置されたステーターコイル45と、コイルボビンの外側に配置されマグネットの回転方向において閉じた閉磁路を形成するステーターヨーク44とを設け、ステーターヨークに内側へ突出されステーターコイルへの非通電時におけるマグネットとステーターヨークとの間の磁気的な平衡状態を保持する突部47を設け、該突部を内側へ行くに従って近付く連続した第1の部分47aと第2の部分47bとによって構成し、第1の部分を第2の部分よりステーターコイルへの非通電時におけるマグネットの回転方向の先端側に位置させ、第2の部分を第1の部分より回転中心から第1の部分と第2の部分の連続部分47cへ向けて放射方向に延びる線分Lに対する傾斜角度を小さくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置及び駆動モーターについての技術分野に関する。詳しくは、アイリス又はシャッターを構成する可動部材を移動させるための駆動モーターのトルクの向上及び小型化等を図る技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラやスチルカメラ等の撮像装置には、フォーカス制御やズーミングのための各種のレンズを光軸方向へ移動させるレンズ移動機構と、光量調節用のアイリスとを備え、アイリスを構成する可動部材(絞り羽根)を撮像光学系の光軸に対して直交する面内において駆動モーターの駆動力によって移動させることにより光学系の光路を開閉し光量調節を行うようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような撮像装置にあっては、例えば、駆動モーターの駆動力を可動部材に伝達する回動アームを設け、該回動アームの一部を駆動モーターのシャフト(モーター軸)に固定し、回動アームの先端部に設けた係合部を可動部材に形成した係合長孔に摺動自在に係合し、駆動モーターの回転に伴って回動される回動アームの回動力を可動部材の並進移動力に変換して可動部材を移動させるようにしている。
【0004】
特許文献1に記載された駆動モーターにあっては、マグネットがステーターヨークの内部に配置された構成とされており、ステーターヨークに形成された切欠からマグネットに設けられた出力ピン(回動アームに相当する部材)が外方へ突出されている。ステーターヨークの内側には、マグネットの回転方向に離隔して強磁性体材料によって形成された2つのピンが配置され、マグネットの回転に伴って回動された出力ピン(回動アーム)が上記2つのピンの何れかに吸着されることにより、出力ピンが回動方向における各移動端に保持されるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特許第3295415号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載された従来の撮像装置は、回動アームに相当する出力ピンを回動方向における各移動端に保持させるために、強磁性体材料によって形成した2つのピンを用いているため、その分、部品点数が多く、また、2つのピンを配置するための大きなスペースを必要とし、小型化を阻害するという問題がある。
【0007】
一方、駆動モーターにあっては、マグネットの回転動作時において、それぞれリップル状の電圧変化が生じる場合があり、このような電圧変化が生じた場合に駆動モーターのトルクが小さいと、可動部材の円滑な移動が妨げられ、最悪の場合には可動部材の移動が停止してしまうおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、上記した問題点を克服し、駆動モーターのトルクの向上及び小型化等を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明撮像装置及び駆動モーターは、上記した課題を解決するために、回転中心となるシャフトと、円筒状に形成されると共に周方向においてN極とS極に着磁され上記シャフトを中心として周方向に回転されるマグネットと、撮像光学系の光路を開閉する可動部材に係合されると共にマグネットと一体となって回動され可動部材を回動方向に応じた方向へ移動させる回動アームと、マグネットの回転方向と直交する方向に巻回されると共にマグネットを外側から囲むように配置されたステーターコイルと、該ステーターコイルが巻回されたコイルボビンと、該コイルボビンの外側に配置されシャフトの軸方向に貫通された略円筒状の周面部を有するステーターヨークと、該ステーターヨークの周面部によってマグネットの回転方向において閉じた閉磁路を形成し、ステーターヨークに周面部から内側へ突出された突部を設け、該突部をステーターコイルへの非通電時におけるマグネットとステーターヨークとの間の磁気的な平衡状態を保持する磁気平衡保持部とし、該磁気平衡保持部を、周面部からシャフト側へ行くに従って近付く連続した第1の部分と第2の部分とによって構成し、上記第1の部分を第2の部分よりステーターコイルへの非通電時におけるマグネットの回転方向の先端側に位置させ、第2の部分を第1の部分より、シャフトの回転中心から第1の部分と第2の部分の連続部分へ向けて放射方向に延びる線分に対する傾斜角度を小さくしたものである。
【0010】
従って、本発明撮像装置及び駆動モーターにあっては、ステーターヨークに設けられた磁気平衡保持部によって、ステーターコイルへの非通電時におけるマグネットとステーターヨークとの間の磁気的な平衡状態が保持される。
【発明の効果】
【0011】
本発明撮像装置は、内部に撮像光学系が配置されたレンズ鏡筒とアイリス又はシャッターを構成し撮像光学系の光路を開閉する可動部材を有する移動機構と該移動機構の駆動源となる駆動モーターとを備えた撮像装置であって、上記駆動モーターは、回転中心となるシャフトと、円筒状に形成されると共に周方向においてN極とS極に着磁され上記シャフトを中心として周方向に回転されるマグネットと、上記可動部材に係合されると共にマグネットと一体となって回動され可動部材を回動方向に応じた方向へ移動させる回動アームと、マグネットの回転方向と直交する方向に巻回されると共にマグネットを外側から囲むように配置されたステーターコイルと、該ステーターコイルが巻回されたコイルボビンと、該コイルボビンの外側に配置されシャフトの軸方向に貫通された略円筒状の周面部を有するステーターヨークと、該ステーターヨークの周面部によってマグネットの回転方向において閉じた閉磁路を形成し、ステーターヨークに周面部から内側へ突出された突部を設け、該突部をステーターコイルへの非通電時におけるマグネットとステーターヨークとの間の磁気的な平衡状態を保持する磁気平衡保持部とし、該磁気平衡保持部を、周面部からシャフト側へ行くに従って近付く連続した第1の部分と第2の部分とによって構成し、上記第1の部分は第2の部分よりステーターコイルへの非通電時におけるマグネットの回転方向の先端側に位置され、第2の部分は第1の部分より、シャフトの回転中心から第1の部分と第2の部分の連続部分へ向けて放射方向に延びる線分に対する傾斜角度が小さくされたことを特徴とする。
【0012】
従って、磁気平衡保持部として専用の別部材を設ける場合に比し、部品点数の削減を図ることができ、また、磁気平衡保持部の配置スペースが小さいため小型化を図ることができる。
【0013】
また、磁気平衡保持部として機能する突部は、第2の部分が第1の部分より線分に対する傾斜角度が小さくされているため、第2の部分が第1の部分と同様に線分に対して一定の角度で傾斜している場合に比し、周面部の周方向における長さが長くなり、撮像光学系の光路が可動部材によって閉塞される直前においてステーターヨークとマグネットが磁気的に釣り合ってトルクが急激に減少するという不都合を防止することができ、ステーターコイルへの非通電時における所謂戻りトルクが向上し、可動部材の円滑な移動が確保され動作の信頼性の向上を図ることができる。
【0014】
本発明駆動モーターは、アイリス又はシャッターを構成する可動部材を有しレンズ鏡筒の内部に配置された撮像光学系の光路を開閉する移動機構の駆動源となる駆動モーターであって、回転中心となるシャフトと、円筒状に形成されると共に周方向においてN極とS極に着磁され上記シャフトを中心として周方向に回転されるマグネットと、上記可動部材に係合されると共にマグネットと一体となって回動され可動部材を回動方向に応じた方向へ移動させる回動アームと、マグネットの回転方向と直交する方向に巻回されると共にマグネットを外側から囲むように配置されたステーターコイルと、該ステーターコイルが巻回されたコイルボビンと、該コイルボビンの外側に配置されシャフトの軸方向に貫通された略円筒状の周面部を有するステーターヨークと、該ステーターヨークの周面部によってマグネットの回転方向において閉じた閉磁路を形成し、ステーターヨークに周面部から内側へ突出された突部を設け、該突部をステーターコイルへの非通電時におけるマグネットとステーターヨークとの間の磁気的な平衡状態を保持する磁気平衡保持部とし、該磁気平衡保持部を、周面部からシャフト側へ行くに従って近付く連続した第1の部分と第2の部分とによって構成し、上記第1の部分は第2の部分よりステーターコイルへの非通電時におけるマグネットの回転方向の先端側に位置され、第2の部分は第1の部分より、シャフトの回転中心から第1の部分と第2の部分の連続部分へ向けて放射方向に延びる線分に対する傾斜角度が小さくされたことを特徴とする。
【0015】
従って、磁気平衡保持部として専用の別部材を設ける場合に比し、部品点数の削減を図ることができ、また、磁気平衡保持部の配置スペースが小さいため小型化を図ることができる。
【0016】
また、磁気平衡保持部として機能する突部は、第2の部分が第1の部分より線分に対する傾斜角度が小さくされているため、第2の部分が第1の部分と同様に線分に対して一定の角度で傾斜している場合に比し、周面部の周方向における長さが長くなり、撮像光学系の光路が可動部材によって閉塞される直前においてステーターヨークとマグネットが磁気的に釣り合ってトルクが急激に減少するという不都合を防止することができ、ステーターコイルへの非通電時における所謂戻りトルクが向上し、可動部材の円滑な移動が確保され動作の信頼性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明撮像装置及び駆動モーターを実施するための最良の形態を添付図面に従って説明する。以下に示す最良の形態は、本発明撮像装置をビデオカメラに適用し、本発明駆動モーターをビデオカメラにおいて用いられる駆動モーターに適用したものである。尚、本発明の適用範囲はビデオカメラ又はこれに用いられる駆動モーターに限られることはなく、本発明は、スチルカメラの他、動画撮影又は静止画撮影の機能を有する各種の撮像装置又はこれらに用いられる駆動モーターに適用することができる。
【0018】
先ず、撮像装置(ビデオカメラ)の基本構成を説明する(図1参照)。
【0019】
撮像装置1は、外筐として設けられたレンズ鏡筒2に所要の各部が配置されて成り、レンズ鏡筒2には、レンズ又はレンズ群3(図には単レンズとして簡略化して示す。)と、固体撮像素子等の撮像手段4と、アイリス若しくはシャッター又はこれらの双方の機能を兼用する移動機構5とが設けられている。
【0020】
移動機構5を構成する一対の可動部材6、6は駆動モーター7の駆動力によって移動され、可動部材6、6が移動されることにより光学系の光路が開閉される。駆動モーター7としてはローターがステーターの内側に配置された所謂インナーローター型のモーターが用いられ、駆動モーター7の駆動力が可動部材6、6に伝達されて該可動部材6、6が移動される。
【0021】
被写体からレンズ又はレンズ群3を通った光は、一対の可動部材6、6として設けられた絞り羽根やシャッター部材によって形成される開口を通して撮像手段4に入射される。尚、光量調節時には、可動部材6、6が光軸OLに直交する面内で並進移動されるが、本発明の適用においては、可動部材の数や形状等の如何は問わず、1つ又は複数の可動部材を用いた各種形態での実施が可能である。
【0022】
駆動モーター7としては、発生トルクを十分に確保すること及びシャッタースピードの高速化への対応等を考慮した場合に、ボイスコイル型を用いることが好ましいが、必要に応じてリニアモーター等を用いることも可能である。
【0023】
次に、撮像装置の具体的な構成例について説明する(図2乃至図17参照)。
【0024】
撮像装置8のレンズ鏡筒9には、図2に示すように、被写体側から順に、対物レンズ10、変倍レンズ11、レンズ12、移動機構13、駆動モーター14、フォーカスレンズ15及び固体撮像素子16が配置されている。移動機構13はアイリス若しくはシャッター又はこれらの双方の機能を有しているが、以下には移動機構13がアイリスとシャッターの双方の機能を有している場合について説明する。
【0025】
レンズ鏡筒9の内部には、移動機構13を挟んで光軸OL方向における互いに反対側の位置に、それぞれ光軸OLに対して平行なガイドバー17、17とガイドバー18、18が配置されている。
【0026】
変倍レンズ11はホルダー19に保持されており、該ホルダー19がガイドバー17、17に摺動自在に支持されている。ホルダー19に保持された変倍レンズ11は、変倍レンズ用駆動部20の駆動力がホルダー19に伝達されることにより光軸OLに沿う方向へ移動される。
【0027】
フォーカスレンズ15はホルダー21に保持されており、該ホルダー21がガイドバー18、18に摺動自在に支持されている。ホルダー21に保持されたフォーカスレンズ15は、フォーカスレンズ用駆動部22の駆動力がホルダー21に伝達されることにより光軸OLに沿う方向へ移動される。
【0028】
固体撮像素子16によって得られる画像出力は画像処理部23に送出されて所定の処理が行われる。画像処理部23は、制御等に必要な情報を演算処理部24に送出したり、撮影画像をビユーファインダーやモニター等に送って表示させ、あるいはユーザーの操作指示に従って画像情報等を記録媒体に記録させる。マイクロコンピュータ等を有する演算処理部24は、制御部25に制御指令信号を送出し、該制御部25から駆動モーター14、変倍レンズ用駆動部20及びフォーカスレンズ用駆動部22等に制御信号が入力されることによって各部が制御される。
【0029】
移動機構13は、図3に示すように、可動部材26、27として機能する一対の絞り羽根を有しており、可動部材26、27を移動させることにより、入射光量の調節機能及びシャッター機能を兼用している。移動機構13はレンズ鏡筒9の外周面から突出されることなく、レンズ鏡筒9の内部に組み込まれているため、他の部品との干渉の問題に煩わされることがなく、小型化やコンパクト化に好適である。
【0030】
可動部材26は主部28と該主部28の左右両端部からそれぞれ下方へ突出された突部29、29とが一体に形成されて成る。可動部材26には下方に開口された開口用切欠26aが形成されている。
【0031】
主部28には、一方の側縁に上下に長い被案内孔28aが形成され、上端部に左右に長い係合長孔28bが形成されている。
【0032】
突部29、29にはそれぞれ上下に長い被案内孔29a、29aが形成されている。
【0033】
可動部材27は主部30と該主部30の一方の側縁部から上方へ突出された突部31とが一体に形成されて成る。可動部材27には上方に開口された開口用切欠27aが形成されている。主部30には、左右両側縁にそれぞれ上下に長い被案内孔30a、30aが形成されている。
【0034】
突部31には上下に長い被案内孔31aが形成されている。突部31の上端部には左右に長い係合長孔31bが形成されている。
【0035】
可動部材26、27はそれぞれベース体32に上下方向へ移動自在に支持される(図4及び図5参照)。
【0036】
ベース体32は縦長の形状に形成され、左右両側縁にそれぞれ取付溝32a、32aを有している。ベース体32には上下左右に離隔して4つの案内ピン32b、32b、・・・が設けられている。ベース体32の略中央部には透過孔32cが形成され、光学系の光軸OLが透過孔32cの中心を通る位置に設定されている。
【0037】
ベース体32の3つの案内ピン32b、32b、32bは、それぞれ可動部材26の被案内孔28a、29a、29aに挿入されて摺動自在に係合される。また、ベース体32の3つの案内ピン32b、32b、32bは、それぞれ可動部材27の被案内孔30a、30a、31aに挿入されて摺動自在に係合される。即ち、2つの案内ピン32b、32bは可動部材26の被案内孔29a、29aと可動部材27の被案内孔30a、30aとに係合され、別の案内ピン32bは可動部材26の被案内孔28aのみに係合され、また別の案内ピン32bは可動部材27の被案内孔31aのみに係合される。
【0038】
ベース体32に可動部材26、27が支持された状態において、カバー体33が取り付けられる。カバー体33は縦長の形状に形成され、カバー体33の中央部には大きな開口33aが形成されている。カバー体33の左右両側縁にはそれぞれ被取付突部33b、33bが設けられている。カバー体33には4つの被取付孔33c、33c、・・・が形成されている。
【0039】
カバー体33は被取付突部33b、33bがそれぞれ取付溝32a、32aに取り付けられると共に被取付孔33c、33c、・・・にそれぞれ案内ピン32b、32b、・・・が挿入されることにより、可動部材26、27を覆うようにしてベース体32に取り付けられる(図5参照)。カバー体33の開口33aはベース体32の透過孔32cより大きくされており、カバー体33がベース体32に取り付けられた状態において、開口33a内に透過孔32cが位置される。
【0040】
ベース体32の上端部にはモーター取付部材34が取り付けられる(図4及び図5参照)。モーター取付部材34には左右に離隔して挿入孔34a、34aが形成され、該挿入孔34a、34aはそれぞれ外方へ凸の円弧状に形成されている。
【0041】
駆動モーター14はインナーローター型であり、ローターにマグネットを設けステーターにコイルを設けた可動マグネットタイプである(図6乃至図9参照)。
【0042】
駆動モーター14はコイルボビン35を備え、該コイルボビン35は第1の部材36と第2の部材37とが結合されて成る(図7参照)。
【0043】
第1の部材36には、その中央部に軸受孔36aが形成され、該軸受孔36aは後述するシャフトのラジアル軸受けとして機能する。第1の部材36には放射方向に延びる配置用溝36b、36bが形成され、該配置用溝36b、36bは第1の部材36の中央部を挟んで互いに180°反対側に位置されている。第1の部材36には、配置用溝36b、36bが形成された面と反体側の面に、平行に位置された巻回用突条36c、36cが設けられている(図7及び図9参照)。
【0044】
第2の部材37の中央部には配置凹部37aが形成されている(図7参照)。配置凹部37aの内部には軸受部37bが設けられ、該軸受部37bは後述するシャフトのスラスト軸受け及びラジアル軸受けとして機能する。第2の部材37には放射方向に延びる配置用溝37c、37cが形成され、該配置用溝37c、37cは第2の部材37の中央部を挟んで互いに180°反対側に位置されている。第2の部材37には、配置用溝37c、37cが形成された面と反体側の面に、巻回用突部37d、37eが設けられている(図7及び図8参照)。
【0045】
巻回用突部37dは巻回用突部37eより厚みが厚くされており、巻回用突部37dには配置用切欠37fが形成されている(図6参照)。
【0046】
第1の部材36と第2の部材37は配置用溝36b、36bと配置用溝37c、37cとがそれぞれ対向した状態で結合されコイルボビン35が構成される(図7参照)。コイルボビン35が構成された状態において、互いに対向する配置用溝36b、36bと配置用溝37c、37cとによって、コイルボビン35の内外を連通する2つの配置孔38、38が形成される。
【0047】
駆動モーター14のローター39は、シャフト40とマグネット41を有している(図7参照)。
【0048】
シャフト40は軸方向が光軸OLに沿うように配置され、コイルボビン35の内部において両端部がそれぞれ第1の部材36の軸受孔36aと第2の部材37の軸受部37bとに回転自在に支持されている。
【0049】
マグネット41は円筒状に形成され周方向においてN極とS極に着磁されている。マグネット41は第2の部材37の配置凹部37aに配置され、シャフト40の軸方向における両端部を除いた部分に外嵌状に固定されている。
【0050】
回動アーム42はシャフト40に一体に形成されている。回動アーム42はアーム部42a、42aと該アーム部42a、42aの各先端部に設けられた係合軸部42b、42bとから成る。アーム部42a、42aはシャフト40に連続され、該シャフト40の軸方向と直交する方向へ突出されている。アーム部42a、42aはシャフト40から互いに180°反対方向へ突出されている。係合軸部42b、42bはアーム部42a、42aに対して直交する同じ方向へ突出されている。
【0051】
回動アーム42は、アーム部42a、42aの先端部及び係合軸部42b、42bがコイルボビン35の配置孔38、38から外方へ突出される(図7参照)。
【0052】
駆動モーター14のステーター43は、ステーターヨーク44とステーターコイル45を有している。
【0053】
ステーターヨーク44は、例えば、図10に示すように、磁性金属材料によって略円筒状に形成された周面部46と該周面部46から内方へ突出された突部47とが一体に形成されて成る。突部47は、ステーターコイル45への非通電時におけるマグネット41とステーターヨーク44との間の磁気的な平衡状態を保持する磁気平衡保持部として機能する。
【0054】
突部47は周面部46から内側へ行くに従って近付く連続した第1の部分47aと第2の部分47bとによって構成されている。
【0055】
第1の部分47aは第2の部分47bよりステーターコイル45への非通電時におけるローター39の回転方向、即ち、図11及び図12に示すCCW方向の先端側に位置されている。
【0056】
第2の部分47bは第1の部分47aより、ローター39の回転中心から第1の部分47aと第2の部分47bの連続部分47cへ向けて放射方向に延びる線分L(図11及び図12参照)に対する傾斜角度が小さくされている。例えば、第2の部分47bは線分Lに沿って延びるように形成されている。
【0057】
ステーターヨーク44は、マグネット41に対してその軸方向における一端側に稍偏倚して位置されており、マグネット41は、この偏倚した側に引き寄せられる。従って、シャフト40は第2の部材37の軸受部37b側に付勢され、スラスト軸受けとして機能する軸受部37bの底面部に押し付けられる。
【0058】
駆動モーター14にはステーターヨーク44によって周方向において閉じた閉磁路が形成される。
【0059】
ステーターヨーク44はコイルボビン35に外嵌状に取り付けられ、ステーターヨーク44がコイルボビン35に取り付けられた状態においては、突部47がコイルボビン35の第2の部材37の巻回用突部37eと周面部46との間の空間内に位置される(図6参照)。
【0060】
ステーターコイル45はコイルボビン35の外面側において、それぞれ巻回用突条36c、36c間及び巻回用突部37d、37e間に巻回される(図6乃至図9参照)。ステーターコイル45はマグネット41の回転方向と直交する方向に巻回されている。
【0061】
コイルボビン35には配線板48が取り付けられる(図6参照)。配線板48は、例えば、フレキシブルプリント配線板であり、先端部が折り曲げられている。配線板48の図示しない端子電極にはステーターコイル45の両端部がそれぞれ接続され、配線板48を介して図示しない電源回路からステーターコイル45に通電される。配線板48の先端部にはマグネット41の回転方向及び回転位置を検出する位置検出手段として機能するホール素子49が設けられている。ホール素子49が設けられた配線板48の先端部はコイルボビン35の巻回用突部37dに形成された配置用切欠37fに挿入され、ホール素子49がマグネット41の外周面に対向した位置に配置される。
【0062】
駆動モーター14はモーター取付部材34に取り付けられる(図4及び図5参照)。駆動モーター14がモーター取付部材34に取り付けられた状態においては、回動アーム42の係合軸部42b、42bがそれぞれ挿入孔34a、34aに挿入されて可動部材26、27の係合長孔28b、31bに摺動自在に係合される。
【0063】
回動アーム42の係合軸部42b、42bがそれぞれ可動部材26、27の係合長孔28b、31bに係合されることにより、ローター39の回転に伴って回動アーム42が回動されると、可動部材26、27が案内ピン32b、32b、・・・に案内されて互いに離接する方向へ並進移動される。
【0064】
ローター39の回転可能角度θは、例えば、50°とされており(図11乃至図13参照)、コイルボビン35の配置孔38、38の開口縁がローター39の回転を規制するためのストッパーとして機能する。従って、ローター39は回転角0°及び50°の回転角度において、それぞれ回動アーム42のアーム部42a、42aが配置孔38、38の開口縁に接して回転が規制される。
【0065】
ホール素子49は、ローター39の回転可能角度θの2分の1の角度の位置(中央位置)、例えば、25°の位置に配置されている(図13参照)。回転可能角度θはマグネット41の回転によってその磁極間の位置であるニュートラルラインNLが通る範囲であり、中央位置を基準としてマグネット41の回転方向及び回転位置に応じた検出信号をホール素子49が出力する。
【0066】
図14は、ホール素子49の検出レベルを概略的に示したものであり、図中の水平線「V0」は中央位置における検出レベル(基準レベル)を示している。
【0067】
ローター39の回転方向が、例えば、図13に示す第1の方向「CW」である場合には、ホール素子49の検出レベルが「ga」に示すように次第に小さくなり、V0を横切った後さらに検出レベルが小さくなる。一方、ローター39の回転方向が図13に示す第2の方向「CCW」である場合には、ホール素子49の検出レベルが「gb」に示すようにV0未満の状態から次第に大きくなり、V0を横切った後、さらに検出レベルが大きくなる。このように、V0を境とした極性の変化に基いてローター39のマグネット41の回転方向が検出され、また、V0を基準とした検出レベルの大きさからマグネット41の回転位置を検出することができる。尚、ホール素子49の検出信号は、上記制御部25に送出されて処理され、この検出情報に基いて駆動モーター14に送出される信号によってローター39の回転制御が行われる。
【0068】
尚、駆動モーター14にあっては、ローター39の回転方向及び回転位置の検出手段としてホール素子49を用いているため、ローター39の回転方向及び回転位置を容易かつ高精度で行うことができる。
【0069】
上記のように、ローター39は、例えば、回転角度50°の間で回転され、回転角度における一端(回転角度0°)は可動部材26、27が撮像光学系の光路を閉塞する第1の回転位置(図11参照)とされ、回転角度における他端(回転角度50°)は可動部材26、27が撮像光学系の光路を開放する第2の回転位置(図12参照)とされている。
【0070】
駆動モーター14にあっては、図11に示すように、ニュートラルラインNLに直交する線分Hの近傍の位置にステーターヨーク44の突部47が位置されるように設定されている。即ち、マグネット41が第1の回転位置にある状態において、第1の回転位置から反時計回り方向(CCW)90°の位置に対して、これより反時計回り方向へ角度α隔てた位置に突部47が位置されている。この突部47の位置は、図12に示すように、マグネット41が第2の回転位置にある状態において、近傍に位置するニュートラルラインNLより時計回り方向(CW)側の位置である。
【0071】
突部47の位置を上記のような位置に設定することにより、ローター39には、マグネット41の一方の磁極、例えば、S極の周方向における中央部A(図11参照)が突部47に引き寄せられる方向、即ち、ステーターコイル45への非通電時におけるマグネット41とステーターヨーク44との間の磁気的な平衡状態を保持する方向への付勢力が付与されるため、ステーターコイル45への非通電時にシャフト40、マグネット41及び回動アーム42に反時計回り方向(CCW)への回転力が付与される。尚、上記のように、ローター39は、ステーターヨーク44の配置孔38、38の開口縁に回動アーム42のアーム部42a、42aが接する位置までしか回転できないため、中央部Aが突部47に引き寄せられた状態でマグネット41が第1の回転位置において保持される。
【0072】
次に、ローター39の回転に伴う可動部材26、27の動作について説明する(図15及び図16参照)。
【0073】
ステーターコイル45への通電によるローター39の回転に伴って回動アーム42が、図13に示す時計回り方向(CW)へ回転されると、図15に示すように、可動部材26、27が互いに離れる方向へ移動され、可動部材26、27の開口用切欠26a、27aによって形成される開口50の面積が大きくなり透過孔32cが開放されていくことにより入射光量が増加する。逆に、回動アーム42が、図13に示す反時計回り方向(CCW)へ回転されると、図16に示すように、可動部材26、27が互いに近づく方向へ移動され、可動部材26、27の開口用切欠26a、27aによって形成される開口50の面積が小さくなり透過孔32cが閉塞されていくことにより入射光量が減少する。
【0074】
従って、ベース体32の透過孔32cを透過する光については、可動部材26、27による開口50の大きさによって光量調節が行われる。
【0075】
ローター39がCW方向へ回転された状態においてステーターコイル45への通電を停止すると、ローター39はマグネット41が磁気的に平衡状態となるようにCCW方向へ回転され、マグネット41が第1の回転位置に戻り光学系の光路が閉塞される。従って、例えば、駆動モーター14への電力の供給が遮断されたとしても、確実に光学系の光路が閉塞され、固体撮像素子16を保護することができる。
【0076】
尚、マグネット41を第1の回転位置に高速で戻すには、ローター39がCCW方向へ回転される向きでステーターコイル45に通電すればよい。
【0077】
以上に記載した通り、駆動モーター14にあっては、ステーターヨーク44の周面部46に、ステーターコイル45への非通電時におけるマグネット41とステーターヨーク44との間の磁気的な平衡状態を保持する磁気平衡保持部として機能する突部47を設けているため、磁気平衡保持部として専用の別部材を設ける場合に比し、部品点数の削減を図ることができ、また、磁気平衡保持部の配置スペースが小さいため小型化を図ることができる。
【0078】
また、磁気平衡保持部として機能する突部47は、第2の部分47bがステーターコイル45への非通電時におけるローター39の回転方向の先端側に位置された第1の部分47aより線分Lに対する傾斜角度が小さくされているため、第2の部分が第1の部分47aと同様に線分Lに対して一定の角度で緩やかに傾斜している場合に比し、周面部46の周方向における長さが長くなる。
【0079】
従って、その分、第2の部分が周面部46の周方向に長く形成されている場合のように、開口50が可動部材26、27によって閉塞される直前においてステーターヨークとマグネット41が磁気的に釣り合ってトルクが急激に減少するという不都合を防止することができ、ステーターコイル45への非通電時における所謂戻りトルクが向上し、可動部材26、27の円滑な移動が確保され動作の信頼性の向上を図ることができる。
【0080】
図17のグラフ図は、ローターの各回転角度における戻りトルクを、従来の駆動モーターと本発明に係る駆動モーター14とで対比して示すものである。
【0081】
従来の突部の形状は、図17に示すように、周方向における長さが長く形成されており、周面部からの突出量F1は、突部47の周面部46からの突出量F2と同じにされている。
【0082】
図17に示すように、本発明における戻りトルクは、従来における戻りトルクに対して回転端の角度(50°)で大きくされている(図17に示すB参照)。尚、ローター39の回転角度は、周面部46の周方向における長さが従来よりも長くされている分、従来よりも大きな角度とされている。
【0083】
上記には、磁気平衡保持部として機能する部分、即ち、突部47を1つのみ設けた例を示したが、これらの磁気平衡保持部として機能する部分は、それぞれマグネット41の回転中心を挟んだ互いに180°反対側の位置に点対称の状態で2つ設けられていてもよい。
【0084】
上記した最良の形態において示した各部の具体的な形状及び構造は、何れも本発明を実施する際の具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図2乃至図17と共に本発明撮像装置及び駆動モーターの最良の形態を示すものであり、本図は、撮像装置の基本構成を示す概念図である。
【図2】撮像装置の構成例を示す断面図である。
【図3】可動部材の拡大背面図である。
【図4】移動機構と駆動モーターを示す分解斜視図である。
【図5】移動機構と駆動モーターを示す拡大斜視図である。
【図6】駆動モーターの拡大背面図である。
【図7】駆動モーターの拡大断面図である。
【図8】駆動モーターの拡大平面図である。
【図9】駆動モーターの拡大正面図である。
【図10】ステーターヨークの拡大斜視図である。
【図11】マグネットが第1の回転位置にある状態を示す概念図である。
【図12】マグネットが第2の回転位置にある状態を示す概念図である。
【図13】マグネットの回転可能角度を示す概念図である。
【図14】ホール素子の検出状態を示す波形図である。
【図15】図16と共に可動部材の動作を示すものであり、本図は透過孔が開放された状態を示す拡大背面図である。
【図16】透過孔が閉塞された状態を示す拡大背面図である。
【図17】ローターの各回転角度における戻りトルクを、従来の駆動モーターと本発明に係る駆動モーターとで対比して示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0086】
1…撮像装置、2…レンズ鏡筒、5…移動機構、6…可動部材、7…駆動モーター、8…撮像装置、9…レンズ鏡筒、13…移動機構、14…駆動モーター、26…可動部材、27…可動部材、35…コイルボビン、40…シャフト、41…マグネット、42…回動アーム、44…ステーターヨーク、45…ステーターコイル、46…周面部、47…突部(磁気平衡保持部)、47a…第1の部分、47b…第2の部分、47c…連続部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に撮像光学系が配置されたレンズ鏡筒とアイリス又はシャッターを構成し撮像光学系の光路を開閉する可動部材を有する移動機構と該移動機構の駆動源となる駆動モーターとを備えた撮像装置であって、
上記駆動モーターは、
回転中心となるシャフトと、
円筒状に形成されると共に周方向においてN極とS極に着磁され上記シャフトを中心として周方向に回転されるマグネットと、
上記可動部材に係合されると共にマグネットと一体となって回動され可動部材を回動方向に応じた方向へ移動させる回動アームと、
マグネットの回転方向と直交する方向に巻回されると共にマグネットを外側から囲むように配置されたステーターコイルと、
該ステーターコイルが巻回されたコイルボビンと、
該コイルボビンの外側に配置されシャフトの軸方向に貫通された略円筒状の周面部を有するステーターヨークと、
該ステーターヨークの周面部によってマグネットの回転方向において閉じた閉磁路を形成し、
ステーターヨークに周面部から内側へ突出された突部を設け、
該突部をステーターコイルへの非通電時におけるマグネットとステーターヨークとの間の磁気的な平衡状態を保持する磁気平衡保持部とし、
該磁気平衡保持部を、周面部からシャフト側へ行くに従って近付く連続した第1の部分と第2の部分とによって構成し、
上記第1の部分は第2の部分よりステーターコイルへの非通電時におけるマグネットの回転方向の先端側に位置され、
第2の部分は第1の部分より、シャフトの回転中心から第1の部分と第2の部分の連続部分へ向けて放射方向に延びる線分に対する傾斜角度が小さくされた
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
アイリス又はシャッターを構成する可動部材を有しレンズ鏡筒の内部に配置された撮像光学系の光路を開閉する移動機構の駆動源となる駆動モーターであって、
回転中心となるシャフトと、
円筒状に形成されると共に周方向においてN極とS極に着磁され上記シャフトを中心として周方向に回転されるマグネットと、
上記可動部材に係合されると共にマグネットと一体となって回動され可動部材を回動方向に応じた方向へ移動させる回動アームと、
マグネットの回転方向と直交する方向に巻回されると共にマグネットを外側から囲むように配置されたステーターコイルと、
該ステーターコイルが巻回されたコイルボビンと、
該コイルボビンの外側に配置されシャフトの軸方向に貫通された略円筒状の周面部を有するステーターヨークと、
該ステーターヨークの周面部によってマグネットの回転方向において閉じた閉磁路を形成し、
ステーターヨークに周面部から内側へ突出された突部を設け、
該突部をステーターコイルへの非通電時におけるマグネットとステーターヨークとの間の磁気的な平衡状態を保持する磁気平衡保持部とし、
該磁気平衡保持部を、周面部からシャフト側へ行くに従って近付く連続した第1の部分と第2の部分とによって構成し、
上記第1の部分は第2の部分よりステーターコイルへの非通電時におけるマグネットの回転方向の先端側に位置され、
第2の部分は第1の部分より、シャフトの回転中心から第1の部分と第2の部分の連続部分へ向けて放射方向に延びる線分に対する傾斜角度が小さくされた
ことを特徴とする駆動モーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−113119(P2006−113119A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297653(P2004−297653)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】