撮影装置、撮影方法、およびコンピュータプログラム
【課題】簡単にかつ高精度で撮影を行うことができる非接触式の撮影装置を提供する。
【解決手段】
撮影装置1に、物体で反射した光をイメージセンサ212で結像させることによって、その物体の撮影を行う撮影装置1に、物体と撮影装置1との距離を計測する測距センサ27と、所定の時間ごとに得られる測距センサ27による計測結果に基づいて、その物体が静止しているか否かを判別する、静止判別部204と、その物体が静止していると判別された場合にその物体の撮影を行うように制御するシャッタ制御部201と、を設ける。
【解決手段】
撮影装置1に、物体で反射した光をイメージセンサ212で結像させることによって、その物体の撮影を行う撮影装置1に、物体と撮影装置1との距離を計測する測距センサ27と、所定の時間ごとに得られる測距センサ27による計測結果に基づいて、その物体が静止しているか否かを判別する、静止判別部204と、その物体が静止していると判別された場合にその物体の撮影を行うように制御するシャッタ制御部201と、を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触式の撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人間の身体的特徴に基づいて個人を識別し本人であるか否かを判別する技術が提案されている。撮影装置によって獲得される身体的特徴とあらかじめ登録された身体的特徴とを照合することにより、個人の識別や本人かどうかの判断が行われる。
【0003】
撮影装置は、装置と身体とが接触する接触式のものと、装置と身体とが接触しない非接触式のものと、に大別される。不特定多数の人間が利用する場所では、汚れにくさ、衛生面、心理的抵抗感などから非接触式のものが望まれている。
【0004】
例えば、接触式の装置を施設のセキュリティ対策のために用いる場合は、その施設に人が出入りするたびに、その人が入場許可のある者か否かの判別を行う必要がある。つまり、その装置は頻繁に人に触られる。よって、人の皮膚が当たるガラス面が汚れてしまうおそれがあり、その場合には撮影を上手く行うことができず、正しい判別結果が得られないことがある。このような理由より、判別を頻繁に行うところでは、非接触式の装置が望まれている。
【0005】
例えば、施設の入退出管理に用いる場合も同様に、その施設に人が出入りするたびに撮影を行う必要がある。この場合もやはり、接触式の装置は頻繁に人に触られる。よって、手などを当てるガラス面が汚れてしまうおそれがあり、撮影が上手くできないことがある。さらに、汚れた面に接触することで衛生上の問題や心理的抵抗感を招くおそれもある。このような理由より、非接触式の装置が望まれている。
【0006】
医療機関または研究機関などのように、衛生について厳しい場所で用いる場合も、接触式の装置よりも、非接触式の装置が望まれている。また、近年、種々の抗菌グッズや衛生グッズがヒット商品になっていることから分かるように、世間では、衛生上の問題や心理的抵抗感から、非接触式の製品のニーズが高まっている。動いている物体を撮影する場合は、接触式の装置を用いることはできない。
【0007】
ところが、非接触式の装置では被写体の位置を撮影ごとに同じにすることが難しい。よって、撮影ごとに得られる画像の明るさに差異が生じるおそれがある。そうすると、撮影した画像のパターンと予め撮影しておいた画像のパターンとが一致せず、個人の判別を正しく行うことができないことがある。
【0008】
また、非接触式の装置では、被写体以外の部分つまり背景が画像に含まれてしまうことがある。そうすると、撮影した画像のパターンと予め撮影しておいた画像のパターンとが一致せず、正しい判別ができないことがある。
【0009】
背景の部分を除去する方法は幾つか提案されているが、いずれの方法にも問題点がある。例えば、下記の特許文献1に記載の方法は、フレーム間差分により画像の変動情報を獲得して蓄積し、過去一定時間内に全く変動の無かった画素を背景領域に所属すると判断し、背景画像を得る。しかし、係る方法によると、一様な色を持つ物体、例えば白い紙がカメラの前を移動した場合は、物体と背景とを区別することが難しい。特許文献2に記載の方法も同様である。
【0010】
特許文献3に記載の方法は、画像の深度を検知し、これに基づいて前景と背景とを分離する。しかし、係る方法によると、深度を検知するための装置が必要となり、大掛かりなものになってしまうし、コストが高くつく。特許文献4に記載の方法も同様である。
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑み、簡単にかつ高精度で撮影を行うことができる非接触式の撮影装置を提供することを目的とする。
【特許文献1】特開平7−284086号公報
【特許文献2】特開2002−150294号公報
【特許文献3】特開平5−95509号公報
【特許文献4】特開2001−137241号公報
【発明の開示】
【0012】
本発明に係る撮影装置は、物体で反射した光を受光手段で結像させることによって当該物体の撮影を行う撮影装置であって、前記物体と当該撮影装置との距離を計測する計測手段と、前記計測手段による計測結果に応じて、撮影の際の前記受光手段の露出時間を制御する露出制御手段と、を有してなる。
【0013】
または、受光手段を電気的信号に変換する手段としてCMOSまたはCCDなどのイメージセンサを用いる。前記露出制御手段の代わりに、前記計測手段による計測結果に応じて、前記イメージセンサの出力ゲインを制御するゲイン制御手段、を有してなる。
【0014】
または、前記物体の被撮影面が当該撮影装置の撮影方向の軸に対して垂直に交わっているか否かを判別する姿勢判別手段と、前記姿勢判別手段によって前記物体の被撮影面が当該撮影装置の撮影方向の軸に対して垂直に交わっていると判別された場合に当該物体の撮影を行うように制御する撮影制御手段と、を有し、前記計測手段は、前記距離として、前記物体の被撮影面の少なくとも2点と当該撮影装置との距離を計測し、前記姿勢判別手段は、前記各点についての前記計測手段による計測結果に基づいて前記物体の被撮影面が当該撮影装置の撮影方向の軸に対して垂直に交わっているか否かを判別する。
【0015】
または、前記物体の被撮影面が当該撮影装置の撮影方向の軸に対して垂直に交わっていると判別された場合および垂直に交わっていないと判別された場合にそれぞれ異なるサインを出力することによって、当該被撮影面が当該撮影装置の撮影方向の軸に対して垂直に交わるように案内する案内手段を有してなる。
【0016】
または、所定の時間ごとに得られる前記計測手段による計測結果に基づいて前記物体が静止しているか否かを判別する静止判別手段と、前記静止判別手段によって前記物体が静止していると判別された場合に当該物体の撮影を行うように制御する撮影制御手段と、を有してなる。
【0017】
または、前記物体が写っていない背景画像を記憶する背景記憶手段と、前記背景画像と前記物体の撮影を行うことによって得られた画像とを比較することによって、当該物体だけの画像を抽出する抽出手段と、を有し、前記撮影制御手段は、前記背景画像を取得するために、前記計測手段によって前記距離が計測されていないときに撮影を行うように制御する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
添付の図面に従って、本発明をより詳細に説明する。
【0019】
図1は撮影装置1の全体の構成を示す斜視図、図2は撮影装置1の中央付近の側断面図、図3は左頬の撮影の状況の例を示す図、図4は撮影装置1とパーソナルコンピュータ6との接続の例を示す図、図5は撮影装置の機能的構成の例を示すブロック図、図6は測距センサ27の出力値と実際の距離との関係を示す図である。
【0020】
本発明に係る撮影装置1は、図1および図2に示すように、撮影装置本体2および本体カバー3によって構成される。この撮影装置1では、照明手段として赤外線を照射するものが用いられ、受光手段として赤外線の反射光を受光するものが用いられる。これにより、撮影装置1は、人間または動物の血管などの撮影を行う装置として最適になる。照射手段および受光手段は、撮影の対象に合わせて適宜変更することが可能であり、赤外線を照射しまたは受光するものに限定されない。以下、撮影装置1を、人間または動物の血管などの撮影を行うための装置として説明する。
【0021】
撮影を行う際には、予め本体カバー3を撮影装置本体2の正面20aに取り付けておく。そして、例えば、人間の顔の左頬を撮影する場合は、図3に示すように、左頬を撮影装置1の正面に向け、左頬と撮影装置1の正面とが平行になる(つまり、対象物体の被撮影面である左頬が撮影方向の軸に対して垂直に交わる)ようにし、シャッタを切る。以下、人間の頬の血管のパターンを撮影する場合を例に説明する。
【0022】
撮影装置本体2は、ケーシング(筐体)20、撮像部21、回路基板22、照射部23、インタフェース24、シャッタボタン25、測距センサ(距離センサ)27、およびランプ28などによって構成される。撮影装置本体2は、インタフェース24を介して、図4に示すようにパーソナルコンピュータ6に接続することができる。
【0023】
ケーシング20は、箱のような形状をしており、正面20aは開放されている。
【0024】
撮像部21は、レンズ211およびイメージセンサ212などによって構成される。イメージセンサ212として、例えば、CCDタイプのイメージセンサやCMOSタイプのイメージセンサが用いられる。
【0025】
回路基板22には、後に説明する撮影装置1の各部の制御およびD/A変換などを行うための制御回路、コンピュータプログラム(ファームウェア)およびデータなどが格納されたROM、およびCPUなどが設けられている。CPUは、パーソナルコンピュータ6またはシャッタボタン25からの指令、コンピュータプログラム、またはデータなどに基づいて演算処理を行う。このような構成によって、撮影装置1には、図5に示すようなシャッタ制御部201、画像処理部202、位置判別部203、静止判別部204、距離算出部205、背景画像記憶部206、および姿勢判別部207などの機能が実現される。
【0026】
照射部23は、光源としてLEDを有する。これらのLEDとして、撮影対象が血管であれば、赤外線を発光するものが用いられる。LEDに供給する電流は、インタフェース24を介してパーソナルコンピュータ6より得られる。インタフェース24としてUSBを用いると、パーソナルコンピュータ6との間で通信を行うことができる上に、パーソナルコンピュータ6より電流を得ることもできる。
【0027】
図1および図2に戻って、本体カバー3は、合成樹脂板またはガラス板などからなるフィルタ板31および合成樹脂板などからなるレンズカバー32によって構成される。本体カバー3は、図示しないねじなどによってケーシング20の正面20aに取り付けられる。フィルタ板31として、例えば、可視光線およびそれよりも波長の短い光(すなわち、およそ800nm以下の光)をカットし、かつ、赤外線を透過させる性質の材料が用いられる。
【0028】
測距センサ27は、撮影方向に向けて取り付けられており、測距センサ27自身と撮影の対象つまり被写体との距離を計測するために用いられる。測距センサ27として、光学式または超音波式などの測距センサ(距離センサ)が用いられる。
【0029】
また、本実施形態では、被写体の姿勢を求めるために、被写体の表面(被撮影面)の3点についての計測を行うことができる測距センサ27が用いられる。以下、単に「(撮影装置1から)被写体までの距離」または「(撮影装置1と)被写体との距離」という場合は、撮影装置1から3点までの各距離の平均値を指すものとする。
【0030】
測距センサ27と撮影装置1の各部との位置関係は予め分かっているので、測距センサ27によって求められた距離に基づいて、撮影装置1の各部から被写体までの距離も求められる。本実施形態では、被写体までの距離の基準を本体カバー3の正面3cと定めている。つまり、撮影装置1から被写体までの距離とは、本体カバー3の正面3cから被写体までの距離であると定義している。
【0031】
測距センサ27は、被写体である頬が撮影装置1から数cm離れた位置にある場合において(図3参照)、耳の付け根付近、頬骨の先端付近(目尻の下の付近)、および口尻付近の3点についての距離が計測可能なように設定されている。
【0032】
撮影装置1から被写体の1点までの距離は、具体的には、次のような方法によって最終的に求められる。測距センサ27は、被写体の表面(被撮影面)の1点または複数の点との距離の計測結果として、8ビットつまり256階調の計測値を出力する。
【0033】
計測値(出力値)と実際の距離との対応関係は被写体の種類によってそれぞれ若干異なるが、計測値が大きいほど被写体までの実際の距離は短くなる傾向がある。例えば、人間の身体の表面を計測した場合の計測値と実際の距離との関係は、図6に示す関数「D=F(x)」のようになる。係る関数は、頬の位置を少しずつ変えながら実際に計測を行って得られたものである。そして、計測値を被写体の種類に応じた関数に代入することによって、撮影装置1から被写体の1点までの距離が求められる。
【0034】
図5の距離算出部205は、上に述べた方法により、つまり、図6に示す関数および頬の3点についての計測値(出力値)に基づいて、撮影装置1から頬の3点までの距離を算出する。算出結果は、被写体距離情報70としてシャッタ制御部201、位置判別部203、および姿勢判別部207に与えられる。
【0035】
シャッタ制御部201は、シャッタボタン25が押されシャッタが切られた瞬間に、LED51a〜51d、52a〜52dへの電流の供給を開始するようにLED駆動部261、262に対して指令する。そして、露出時間に併せて電流の供給を止めるように指令する。これにより、各LEDは、シャッタおよびシャッタ速度(露出時間)と同期して発光する。なお、シャッタを切る指令は、シャッタボタン25の代わりにパーソナルコンピュータ6によって行われるようにしてもよい。
【0036】
シャッタが切られて各LEDが発光すると、その光は、被写体である頬に照射される。ただし、可視光線などはフィルタ板31によってカットされるので、赤外線のみが被写体に照射される。一般に、人間または動物の血管は、赤外線を吸収する性質がある。よって、頬の表面のうち、皮下に血管のある部分は照射された赤外線をあまり反射しないが、血管のない部分はよく反射する。
【0037】
被写体からの反射光は、フィルタ板31を透過してケーシング20の中に入り、レンズ211によってイメージセンサ212上に結像する。イメージセンサ212は、これを信号化することによって撮像データを生成する。
【0038】
画像処理部202は、この撮像データに画像処理を施すことによって、頬の血管のパターンの画像を生成する。なお、画像処理は、パーソナルコンピュータ6で行うように構成してもよい。
【0039】
シャッタは、レンズシャッタまたはスクリーンシャッタのようなメカ的なシャッタ、液晶シャッタのような光学的なシャッタなどを用いることが可能である。また、例えば、撮影の指令に同期してイメージセンサ212による電荷の蓄積を開始し、露出時間経過後に蓄積を終了しまたは蓄積した電荷を読み出すように構成してもよい。つまり、このように構成した場合の露出時間とは、電荷の蓄積時間を意味する。または、これらのメカ的、光学的、または電気的なシャッタを組み合わせてもよい。
【0040】
撮影装置1には、露出(露光)およびシャッタを自動制御し、被写体の位置および姿勢を案内し、および被写体領域抽出を行うための機能が設けられている。これらの機能によると、より簡単にかつ高精度で撮影を行うことができる。次に、これらの機能について説明する。
〔自動露出調整機能〕
図7は距離露出テーブルTL1の例を示す図である。撮影装置1には、図5に示すように、距離露出テーブルTL1が設けられている。距離露出テーブルTL1には、図7に示すように、撮影装置1と被写体との距離に応じた露出時間が定められている。図7を見て分かるように、撮影装置1から被写体(頬)までの距離が長いほど、露出時間が長くなるように設定される。例えば、撮影装置1までの距離が2.5cmである場合は露出時間は80ms(ミリ秒)に設定され、8.5cmである場合は95msに設定される。
【0041】
なお、距離露出テーブルTL1の「ゲイン」とは、イメージセンサ212から画像処理部202に出力される出力信号S10の出力ゲインのことである。図5において、出力ゲインを調整するための調整信号S11は、距離露出テーブルTL1に基づいてシャッタ制御部201などから送られてくる。また、出力ゲインは手動により調整することも可能である。増幅器208は、出力信号S10を増幅する。増幅器208を省略することも可能である。増幅器208の増幅率を可変とし、調整信号S11によって増幅率を調整し、出力信号S10の出力ゲインを調整してもよい。その場合に、増幅器208をイメージセンサ212の内部に一体的に構成してもよい。なお、出力信号S10がディジタルデータである場合には、増幅器208に代えてデータ変換器などを用いてもよい。ここでは、出力ゲインは、距離に関わらず同じに設定されている。
【0042】
図5のシャッタ制御部201は、撮影の際に、距離算出部205によって算出された被写体までの距離と距離露出テーブルTL1とに基づいて露出時間を設定する。
〔自動シャッタ制御機能〕
シャッタ制御部201は、被写体の位置および姿勢が撮影に適した状態になった場合に自動的に撮影の指令を行う。具体的には、被写体(頬)が撮影良好範囲に位置し、頬が撮影装置1の正面に対して平行に向き合った姿勢(撮影方向の軸が頬の面にほぼ垂直に交わる状態)であり、かつ、頬が静止している、という3つの条件を満たした場合に撮影の指令を行う。なお、「撮影良好範囲」とは、所定の水準以上の鮮明さの画像を得ることができる撮影範囲を意味する。これらの条件を満たしているか否かの判別は、位置判別部203、静止判別部204、および姿勢判別部207によって次のように行われる。
【0043】
位置判別部203は、被写体距離情報70または測距センサ27の出力値に基づいて被写体(頬)が撮影装置1の撮影良好範囲内に位置するか否かを判別する。頬の撮影良好範囲は、撮影装置1から撮影方向への距離が例えば2〜9cmの範囲とする。なお、頬の3点すべてが撮影良好範囲にあれば撮影良好範囲にあると判別するようにしてもよいし、いずれかの1点が撮影良好範囲にあれば撮影良好範囲にあると判別するようにしてもよい。係る判別は、所定の時間(例えば50ms)ごとに行われる。
【0044】
姿勢判別部207は、被写体距離情報70または測距センサ27の出力値に基づいて被写体の3点の座標を求める。そして、撮影装置1の撮影方向の軸が被写体の3点を含む平面に垂直に交わるか否かを判別する。つまり、その平面と撮影装置1の正面20aとが平行になり、被写体の被撮影面が撮影装置1に対して真っ直ぐに向いているか否かを判別する。ただし、上記の「垂直に交わる」とは、約90度で交わるという意味であって、厳密に90度で交わるという意味に限定するわけではない。例えば、角度が所定の範囲内、90度±10度程度、ある場合は、撮影方向の軸が被撮影面に垂直に交わっており、被写体が撮影装置1に対して真っ直ぐに向いていると判別する。そうでない場合は、垂直に交わっておらず、真っ直ぐに向いていないと判別する。
【0045】
静止判別部204は、撮影良好範囲内に入った被写体が静止したか否かを判別する。すなわち、所定の時間(例えば100ms)ごとに、測距センサ27より被写体の3点についての8ビットの計測値を取得する。一定の期間(例えば数百ms〜数秒間)、各点の計測値の変化量を観察する。そして、その期間ずっと、変化量が所定の値よりも小さかった場合は、被写体が静止していると判別する。その期間内に所定の値を超えた場合は、静止していないと判別する。または、距離算出部205より取得した被写体の被写体距離情報70に基づいて、上記と同様に変化量を観察して静止の判別を行ってもよい。
【0046】
このようにして判別を行った結果、すべての条件を満たしていると認められた場合に、シャッタ制御部201は自動シャッタ制御機能を実行する。この場合の露出時間は、最新の測距センサ27の測定値(出力値)などに基づいて求められる露出時間が用いられる。
〔被写体の位置および姿勢の案内機能〕
自動シャッタ制御機能による撮影は、上に述べたように、被写体(頬)が撮影良好範囲に位置し、撮影装置1と平行な姿勢(撮影方向の軸が被撮影面に垂直に交わる姿勢)になり、かつ静止しなければ実行されない。係る3つの条件を簡単に満たせるようにするために、ランプ28は、被写体を正しい位置および姿勢に案内するためのサインを発する。
【0047】
例えば、測距センサ27によって被写体が検出されていない間は、ランプ28を消灯しておく。被写体が検出され、位置判別部203によって被写体が撮影良好範囲内に入ったと判別されると、ランプ28を、ゆっくりと(例えば1秒ごとに)点滅させる。姿勢判別部207によって被写体の姿勢が撮影装置1に対して真っ直ぐになったと判別されると、ランプ28の点滅を速く(例えば0.5秒ごとに)する。そして、静止判別部204によって被写体が静止したと判別されると、ランプ28の点滅を止めて点灯したままにする。または、上記の条件ごとに合計3つのランプを用意しておく。そして、条件を満たした場合にそれに対応するランプを点灯するようにしてもよい。
【0048】
ランプ28の代わりに撮影装置1にスピーカを設け、「静止してください」または「もう少し顔を左に向けてください」というような音声を出力し、被写体の位置および姿勢を案内するようにしてもよい。または、液晶パネルを設け、メッセージ、図形、写真、または映像を表示して案内するようにしてもよい。パーソナルコンピュータ6のスピーカまたはディスプレイ装置によって案内するようにしてもよい。
〔被写体領域抽出(背景の除去処理)〕
撮影装置1と被写体とがかなり近い場合は、被写体以外の物体つまり背景が写り込まず、被写体だけの画像が得られる。しかし、両者の距離がある程度離れていたり、被写体のサイズが小さかったりすると、得られた画像に背景が含まれてしまう場合がある。そこで、被写体の領域のみを抽出するために、撮影装置1の各部は、次のような処理を行う。
【0049】
測距センサ27によって被写体が検出されていない間、シャッタ制御部201、画像処理部202、および撮像部21などは、背景のみの画像を取得するための撮影を行う。係る撮影は、定期的に(例えば数分〜数十分ごとに)行う。撮影によって得られた画像は背景画像記憶部206に背景画像データ80として記憶され蓄積される。なお、既に背景画像データ80が蓄積されている場合は、古い背景画像データ80は削除され、新しい背景画像データ80が蓄積される。
【0050】
自動シャッタ制御機能などによって被写体の撮影が行われ、画像が得られると、この画像に含まれる血管の領域だけを背景画像データ80に基づいて抽出する。すなわち、得られた画像と背景の画像との対応する画素同士を比較し、その差が予め設定しておいた閾値以上となる画素については被写体の画像であると判別する。そうでない画素については背景であると判別する。このようにして、被写体である頬の領域が抽出される。
【0051】
図8は撮影装置1による撮影時の処理の流れの例を説明するフローチャートである。次に、上に述べた自動露出調整、自動シャッタ制御、位置および姿勢の案内、および被写体領域抽出の各機能を用いた場合の撮影装置1の処理の流れを、図8に示すフローチャートを参照して説明する。
【0052】
オペレータは、撮影装置1の操作ボタンまたはパーソナルコンピュータ6のキーボードなどを操作して、撮影装置1を自動撮影モードに切り替える(#1)。すると、測距センサ27が起動し(#2)、撮影装置1とその正面にある物体との距離の計測(測定)を開始する(#3)。なお、計測は、露出時間の算出(#7)または処理の終了までの間、所定の時間間隔で(例えば100msごとに)繰り返し行う。
【0053】
計測結果に変化があった場合は、撮影装置1の正面に撮影の対象者が現れたと判別する(#4でYes)。その対象者は、自分の頬を撮影装置1の正面に近づける。撮影装置1は、頬の位置および姿勢が撮影に適した位置および姿勢になったか否かを判別する(#5)。
【0054】
撮影に適した位置および姿勢になっていない場合は(#5でNo)、ランプ28またはスピーカなどによって、頬の位置および姿勢を正しい位置に案内する(#6)。そして、頬の位置および姿勢が撮影に適するようになるまで、判別を繰り返し行う。
【0055】
これらの条件をすべて満たした場合は(#4でYes、#5でYes)、距離露出テーブルTL1を参照して露出時間を求める(#7)。そして、測距センサ27を停止するとともに(#8)、算出された露出時間に基づいて頬の撮影を行い、頬を含む画像を取得する(#9)。
【0056】
撮影装置1の正面に頬が現れず、かつ、撮影の中断の指示があった場合は(#4でNo、#11でYes)、測距センサ27を停止し(#12)、自動撮影の処理を中止する。撮影装置1の正面に頬が現れていないが、撮影の中断の指示がない場合は(#4でNo、#11でNo)、必要に応じて(例えば前回の背景の撮影時から数分が経過した場合に)背景の画像を撮影しておく(#13)。
【0057】
ステップ#9で頬を含む画像を取得した後、この画像から頬の部分だけの画像を抽出する(#10)。
〔個人認識処理〕
図9は磁気記憶装置6dに記憶されているプログラムおよびデータの例を示す図、図10は特徴情報データベース6DBの例を示す図、図11は個人判別の処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【0058】
次に、撮影装置1を個人認識の処理のために用いた場合について説明する。例えば、図4に示すパーソナルコンピュータ6のログオンを行う場合を例に説明する。
【0059】
パーソナルコンピュータ6の磁気記憶装置6dには、図9に示すように、特徴情報データベース6DBが記憶されている。この特徴情報データベース6DBには、図10に示すように、ユーザごとの特徴情報71(71a、71b、…)がそのユーザを識別するユーザIDと対応付けられて格納されている。
【0060】
特徴情報71は、ユーザの特徴に関する情報である。本実施形態では、特徴情報71として、左頬の血管に関する情報が用いられる。特徴情報71は、ユーザの左頬を撮影装置1によって予め撮影して取得しておいたものである。特徴情報71を、血管のパターンの画像として格納しておいてもよいし、その画像を解析することによって得られる血管の太さ、長さ、本数、または配置などの特徴を示す情報として格納しておいてもよい。
【0061】
また、磁気記憶装置6dには、個人判別プログラム6PGがインストールされている。このプログラムを実行することによって、ログオンしようとしているユーザが誰であるかを判別するための処理が図11に示すフローチャートのような手順で実現される。
【0062】
パーソナルコンピュータ6を使用しようとするユーザは、パーソナルコンピュータ6のスイッチをオンにする。すると、パーソナルコンピュータ6には、ログオン画面が表示される。ここで、ユーザは、自分のユーザIDを入力し(#21)、撮影装置1によって自分の左頬の撮影を行う(#22)。入力されたユーザIDおよび撮影によって得られた撮像データは、パーソナルコンピュータ6へ送信される。
【0063】
パーソナルコンピュータ6は、特徴情報データベース6DBの中から、ユーザIDに対応する特徴情報71を検索する(#23)。そして、その特徴情報71が示す血管の特徴と撮影によって得られた撮像データが示す血管の特徴とが一致するか否かを判別することによって、そのユーザが正しいユーザであるか否かを判別する(#24)。
【0064】
正しいユーザであると判別された場合は(#25でYes)、ログオンすることができ、パーソナルコンピュータ6の使用が可能となる(#26)。正しいユーザであると判別されなかった場合は(#25でNo)、ログオンすることができない旨および操作をやり直す旨のメッセージを表示する(#27)。
【0065】
または、特徴情報データベース6DBに格納されている特徴情報71a、71b、…について順にステップ#24の処理を行ってユーザが誰であるのかを判別(識別)し、ログオンの可否を決定するようにしてもよい。この場合は、ログオン画面においてユーザIDの入力は不要である。
【0066】
個人の識別は、上記のようなログオン時のユーザ確認に限らず、例えば、電子決済システムにおける決済または出退勤の際の本人確認(タイムカード)などのために行うことができる。
【0067】
本実施形態によると、撮影装置と被写体との距離に応じて露光を調整することによって、非接触式であっても高精度な撮影を行うことができる。被写体を撮影に適した位置および姿勢に導くことによって、さらに高精度な撮影を行うことができる。また、背景を除いた被写体のみの画像を従来よりも正確にかつ低コストで抽出することができる。
【0068】
本実施形態では、図7に示すように、被写体との距離が長いほど露出時間を長くし、距離に関わらずイメージセンサ212の出力のゲイン(増幅)を一定としたが、距離が長いほどゲインを大きくし、露出時間を一定としてもよい。または、両方を変えるようにしてもよい。
【0069】
背景の撮影は、被写体の撮影を行った直後に行ってもよい。つまり、被写体の撮影後、測距センサ27がその被写体を検知しなくなってから行ってもよい。被写体が撮影に適した位置および姿勢になっていない場合に、撮影装置1を動かすことによって被写体と撮影装置1との位置関係を調整するようにしてもよい。イメージセンサ212として、CMOSの代わりにCCDを用いてもよい。
【0070】
本実施形態では、撮影装置1によって人間の頬の血管のパターンを撮影したが、もちろん、人間または動物の身体の他の部位を撮影することが可能である。例えば、額、頭部、腹、背中、尻、首、手足、腕、および脚などのあらゆる面を撮影することができる。この場合は、撮影対象となる部位に応じてLEDの配置、LEDの光度、自動露出の調整、位置または姿勢の条件などを変更し、撮影装置1を構成すればよい。
【0071】
人間または動物以外の物体を撮影することも可能である。例えば、自動車の通行量調査のために、撮影装置1を用いることができる。この場合は、次のようにシステムを構成すればよい。
【0072】
撮影装置1を道路の脇(歩道)に設置する。撮影方向は、道路の他方の脇に向くようにする。撮影良好範囲は、道路の一方の脇から他方の脇までに設定する。データベースには、自動車の車種ごとの画像を予め用意しておく。
【0073】
照射部23に用いられる光源には、例えば一般のカメラ用のストロボが用いられる。この場合は、フィルタ板31を透明の板にする。自動露光を求めるためのテーブル(図7参照)を道路の幅および撮影環境などに応じて変更する。照明のタイミングを自動車が近接していると判断された直後としてもよい。自動車までの距離に反比例して照明の強さを変えてもよい。その他、道路の幅および撮影環境などに応じて、撮影装置1の構成を変更しておく。
【0074】
測距センサ27が自動車を検知しないときは、定期的に背景の画像を取得する。測距センサ27が自動車を検知し、自動車が近接していると判断されると、自動車までの距離を求め、これに応じて露光時間を決定する。その露光時間により自動車の撮影を行い、画像を取得する。取得した画像から自動車の領域のみを抽出する。
【0075】
抽出された自動車の画像およびデータベースに用意されている画像のそれぞれの色情報成分、エッジ成分、または面成分などの特徴情報を比較することにより、検知された自動車の車種を特定する。そして、通行量のデータを更新する。または、3次元撮影を行い、3次元構成情報から復元した見かけの映像情報、または色情報成分、エッジ成分、または面成分などの特徴情報を比較することにより自動車の車種を特定してもよい。
【0076】
自動車の通行量調査と同様に、廊下や歩道などを通過する人の数を調査することもできる。この場合は、廊下の両壁の範囲または道幅の範囲を撮影良好範囲とし、撮影装置1を壁などに設置し、測距センサ27を足元辺りに設ければよい。また、これらの条件に合わせて撮影装置1の構成などを変更すればよい。または、自動ドアなどでドアの前の人を認識したい場合は、例えばドアから壁までの範囲を撮影良好範囲とし、撮影装置1をドアの上方に設置し、これらの条件に合わせて撮影装置1の構成などを変更すればよい。
【0077】
撮影の対象物が近接していることを検知したものの、撮影を行ったときにはその対象物が通り過ぎてしまっている場合がある。つまり、撮影のエラーが生じる場合がある。係る場合は、後の処理エラーを低減するために、次のような処理を行ってもよい。対象物の撮影を行った際に、測距センサ27により対象物の位置(距離)を再度取得する。その結果、対象物の位置が撮影良好範囲に入っていない場合は、撮影を行った際には既に対象物が通り過ぎた後である可能性が高い。そこで、この場合は、取得した画像と背景画像とを比較し、対象物が写っているか否かを判別する。対象物が写っていない場合は、その対象物が近接していなかったものとして取り扱う。
【0078】
本実施形態では、撮影装置1と被写体の3点との距離を計測したが、1点または2点との距離を計測するようにしてもよい。例えば、スーツケースなどのように、撮影の際、真っ直ぐに立てて置くものであれば、撮影装置1と被写体の2点との距離を計測すればよい。なぜなら、被写体の表面(被撮影面)のある1点までの距離と他の1点までの距離とが等しければ、撮影装置1と被写体とが平行であることが分かるからである。または、道路を通行する自動車を撮影する場合は、1点について計測を行えば十分である。自動車は、撮影装置1に対してほぼ平行に走るからである。
【0079】
個人または物体の種類(例えば自動車の車種)などの認識結果を、ディスプレイ装置やプリンタ装置などによって出力してもよい。他の電子システムまたは装置にネットワークを介して送信し、または記録媒体に記録してもよい。本体カバー3の表面に、撮影方向を知らせるためのイラストを描いておいてもよい。例えば、足裏を撮影する撮影装置1の場合は、本体カバー3の表面に足のイラストを描いておく。
【0080】
その他、撮影装置1の全体または各部の構成、撮影の対象、LEDの配置および光度、レンズなどの光学系の配置、処理内容、処理順序、データベースの内容、画面の構成などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上のように、本発明は、撮影装置と被写体との距離に応じて露光を調整することによって、非接触式であっても高精度な撮影を行うことができる、という点で有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】撮影装置の全体の構成を示す斜視図である。
【図2】撮影装置の中央付近の側断面図である。
【図3】左頬の撮影の状況の例を示す図である。
【図4】撮影装置とパーソナルコンピュータとの接続の例を示す図である。
【図5】撮影装置の機能的構成の例を示すブロック図である。
【図6】測距センサの出力値と実際の距離との関係を示す図である。
【図7】距離露出テーブルの例を示す図である。
【図8】撮影装置による撮影時の処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図9】磁気記憶装置に記憶されているプログラムおよびデータの例を示す図である。
【図10】特徴情報データベースの例を示す図である。
【図11】個人判別の処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触式の撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人間の身体的特徴に基づいて個人を識別し本人であるか否かを判別する技術が提案されている。撮影装置によって獲得される身体的特徴とあらかじめ登録された身体的特徴とを照合することにより、個人の識別や本人かどうかの判断が行われる。
【0003】
撮影装置は、装置と身体とが接触する接触式のものと、装置と身体とが接触しない非接触式のものと、に大別される。不特定多数の人間が利用する場所では、汚れにくさ、衛生面、心理的抵抗感などから非接触式のものが望まれている。
【0004】
例えば、接触式の装置を施設のセキュリティ対策のために用いる場合は、その施設に人が出入りするたびに、その人が入場許可のある者か否かの判別を行う必要がある。つまり、その装置は頻繁に人に触られる。よって、人の皮膚が当たるガラス面が汚れてしまうおそれがあり、その場合には撮影を上手く行うことができず、正しい判別結果が得られないことがある。このような理由より、判別を頻繁に行うところでは、非接触式の装置が望まれている。
【0005】
例えば、施設の入退出管理に用いる場合も同様に、その施設に人が出入りするたびに撮影を行う必要がある。この場合もやはり、接触式の装置は頻繁に人に触られる。よって、手などを当てるガラス面が汚れてしまうおそれがあり、撮影が上手くできないことがある。さらに、汚れた面に接触することで衛生上の問題や心理的抵抗感を招くおそれもある。このような理由より、非接触式の装置が望まれている。
【0006】
医療機関または研究機関などのように、衛生について厳しい場所で用いる場合も、接触式の装置よりも、非接触式の装置が望まれている。また、近年、種々の抗菌グッズや衛生グッズがヒット商品になっていることから分かるように、世間では、衛生上の問題や心理的抵抗感から、非接触式の製品のニーズが高まっている。動いている物体を撮影する場合は、接触式の装置を用いることはできない。
【0007】
ところが、非接触式の装置では被写体の位置を撮影ごとに同じにすることが難しい。よって、撮影ごとに得られる画像の明るさに差異が生じるおそれがある。そうすると、撮影した画像のパターンと予め撮影しておいた画像のパターンとが一致せず、個人の判別を正しく行うことができないことがある。
【0008】
また、非接触式の装置では、被写体以外の部分つまり背景が画像に含まれてしまうことがある。そうすると、撮影した画像のパターンと予め撮影しておいた画像のパターンとが一致せず、正しい判別ができないことがある。
【0009】
背景の部分を除去する方法は幾つか提案されているが、いずれの方法にも問題点がある。例えば、下記の特許文献1に記載の方法は、フレーム間差分により画像の変動情報を獲得して蓄積し、過去一定時間内に全く変動の無かった画素を背景領域に所属すると判断し、背景画像を得る。しかし、係る方法によると、一様な色を持つ物体、例えば白い紙がカメラの前を移動した場合は、物体と背景とを区別することが難しい。特許文献2に記載の方法も同様である。
【0010】
特許文献3に記載の方法は、画像の深度を検知し、これに基づいて前景と背景とを分離する。しかし、係る方法によると、深度を検知するための装置が必要となり、大掛かりなものになってしまうし、コストが高くつく。特許文献4に記載の方法も同様である。
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑み、簡単にかつ高精度で撮影を行うことができる非接触式の撮影装置を提供することを目的とする。
【特許文献1】特開平7−284086号公報
【特許文献2】特開2002−150294号公報
【特許文献3】特開平5−95509号公報
【特許文献4】特開2001−137241号公報
【発明の開示】
【0012】
本発明に係る撮影装置は、物体で反射した光を受光手段で結像させることによって当該物体の撮影を行う撮影装置であって、前記物体と当該撮影装置との距離を計測する計測手段と、前記計測手段による計測結果に応じて、撮影の際の前記受光手段の露出時間を制御する露出制御手段と、を有してなる。
【0013】
または、受光手段を電気的信号に変換する手段としてCMOSまたはCCDなどのイメージセンサを用いる。前記露出制御手段の代わりに、前記計測手段による計測結果に応じて、前記イメージセンサの出力ゲインを制御するゲイン制御手段、を有してなる。
【0014】
または、前記物体の被撮影面が当該撮影装置の撮影方向の軸に対して垂直に交わっているか否かを判別する姿勢判別手段と、前記姿勢判別手段によって前記物体の被撮影面が当該撮影装置の撮影方向の軸に対して垂直に交わっていると判別された場合に当該物体の撮影を行うように制御する撮影制御手段と、を有し、前記計測手段は、前記距離として、前記物体の被撮影面の少なくとも2点と当該撮影装置との距離を計測し、前記姿勢判別手段は、前記各点についての前記計測手段による計測結果に基づいて前記物体の被撮影面が当該撮影装置の撮影方向の軸に対して垂直に交わっているか否かを判別する。
【0015】
または、前記物体の被撮影面が当該撮影装置の撮影方向の軸に対して垂直に交わっていると判別された場合および垂直に交わっていないと判別された場合にそれぞれ異なるサインを出力することによって、当該被撮影面が当該撮影装置の撮影方向の軸に対して垂直に交わるように案内する案内手段を有してなる。
【0016】
または、所定の時間ごとに得られる前記計測手段による計測結果に基づいて前記物体が静止しているか否かを判別する静止判別手段と、前記静止判別手段によって前記物体が静止していると判別された場合に当該物体の撮影を行うように制御する撮影制御手段と、を有してなる。
【0017】
または、前記物体が写っていない背景画像を記憶する背景記憶手段と、前記背景画像と前記物体の撮影を行うことによって得られた画像とを比較することによって、当該物体だけの画像を抽出する抽出手段と、を有し、前記撮影制御手段は、前記背景画像を取得するために、前記計測手段によって前記距離が計測されていないときに撮影を行うように制御する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
添付の図面に従って、本発明をより詳細に説明する。
【0019】
図1は撮影装置1の全体の構成を示す斜視図、図2は撮影装置1の中央付近の側断面図、図3は左頬の撮影の状況の例を示す図、図4は撮影装置1とパーソナルコンピュータ6との接続の例を示す図、図5は撮影装置の機能的構成の例を示すブロック図、図6は測距センサ27の出力値と実際の距離との関係を示す図である。
【0020】
本発明に係る撮影装置1は、図1および図2に示すように、撮影装置本体2および本体カバー3によって構成される。この撮影装置1では、照明手段として赤外線を照射するものが用いられ、受光手段として赤外線の反射光を受光するものが用いられる。これにより、撮影装置1は、人間または動物の血管などの撮影を行う装置として最適になる。照射手段および受光手段は、撮影の対象に合わせて適宜変更することが可能であり、赤外線を照射しまたは受光するものに限定されない。以下、撮影装置1を、人間または動物の血管などの撮影を行うための装置として説明する。
【0021】
撮影を行う際には、予め本体カバー3を撮影装置本体2の正面20aに取り付けておく。そして、例えば、人間の顔の左頬を撮影する場合は、図3に示すように、左頬を撮影装置1の正面に向け、左頬と撮影装置1の正面とが平行になる(つまり、対象物体の被撮影面である左頬が撮影方向の軸に対して垂直に交わる)ようにし、シャッタを切る。以下、人間の頬の血管のパターンを撮影する場合を例に説明する。
【0022】
撮影装置本体2は、ケーシング(筐体)20、撮像部21、回路基板22、照射部23、インタフェース24、シャッタボタン25、測距センサ(距離センサ)27、およびランプ28などによって構成される。撮影装置本体2は、インタフェース24を介して、図4に示すようにパーソナルコンピュータ6に接続することができる。
【0023】
ケーシング20は、箱のような形状をしており、正面20aは開放されている。
【0024】
撮像部21は、レンズ211およびイメージセンサ212などによって構成される。イメージセンサ212として、例えば、CCDタイプのイメージセンサやCMOSタイプのイメージセンサが用いられる。
【0025】
回路基板22には、後に説明する撮影装置1の各部の制御およびD/A変換などを行うための制御回路、コンピュータプログラム(ファームウェア)およびデータなどが格納されたROM、およびCPUなどが設けられている。CPUは、パーソナルコンピュータ6またはシャッタボタン25からの指令、コンピュータプログラム、またはデータなどに基づいて演算処理を行う。このような構成によって、撮影装置1には、図5に示すようなシャッタ制御部201、画像処理部202、位置判別部203、静止判別部204、距離算出部205、背景画像記憶部206、および姿勢判別部207などの機能が実現される。
【0026】
照射部23は、光源としてLEDを有する。これらのLEDとして、撮影対象が血管であれば、赤外線を発光するものが用いられる。LEDに供給する電流は、インタフェース24を介してパーソナルコンピュータ6より得られる。インタフェース24としてUSBを用いると、パーソナルコンピュータ6との間で通信を行うことができる上に、パーソナルコンピュータ6より電流を得ることもできる。
【0027】
図1および図2に戻って、本体カバー3は、合成樹脂板またはガラス板などからなるフィルタ板31および合成樹脂板などからなるレンズカバー32によって構成される。本体カバー3は、図示しないねじなどによってケーシング20の正面20aに取り付けられる。フィルタ板31として、例えば、可視光線およびそれよりも波長の短い光(すなわち、およそ800nm以下の光)をカットし、かつ、赤外線を透過させる性質の材料が用いられる。
【0028】
測距センサ27は、撮影方向に向けて取り付けられており、測距センサ27自身と撮影の対象つまり被写体との距離を計測するために用いられる。測距センサ27として、光学式または超音波式などの測距センサ(距離センサ)が用いられる。
【0029】
また、本実施形態では、被写体の姿勢を求めるために、被写体の表面(被撮影面)の3点についての計測を行うことができる測距センサ27が用いられる。以下、単に「(撮影装置1から)被写体までの距離」または「(撮影装置1と)被写体との距離」という場合は、撮影装置1から3点までの各距離の平均値を指すものとする。
【0030】
測距センサ27と撮影装置1の各部との位置関係は予め分かっているので、測距センサ27によって求められた距離に基づいて、撮影装置1の各部から被写体までの距離も求められる。本実施形態では、被写体までの距離の基準を本体カバー3の正面3cと定めている。つまり、撮影装置1から被写体までの距離とは、本体カバー3の正面3cから被写体までの距離であると定義している。
【0031】
測距センサ27は、被写体である頬が撮影装置1から数cm離れた位置にある場合において(図3参照)、耳の付け根付近、頬骨の先端付近(目尻の下の付近)、および口尻付近の3点についての距離が計測可能なように設定されている。
【0032】
撮影装置1から被写体の1点までの距離は、具体的には、次のような方法によって最終的に求められる。測距センサ27は、被写体の表面(被撮影面)の1点または複数の点との距離の計測結果として、8ビットつまり256階調の計測値を出力する。
【0033】
計測値(出力値)と実際の距離との対応関係は被写体の種類によってそれぞれ若干異なるが、計測値が大きいほど被写体までの実際の距離は短くなる傾向がある。例えば、人間の身体の表面を計測した場合の計測値と実際の距離との関係は、図6に示す関数「D=F(x)」のようになる。係る関数は、頬の位置を少しずつ変えながら実際に計測を行って得られたものである。そして、計測値を被写体の種類に応じた関数に代入することによって、撮影装置1から被写体の1点までの距離が求められる。
【0034】
図5の距離算出部205は、上に述べた方法により、つまり、図6に示す関数および頬の3点についての計測値(出力値)に基づいて、撮影装置1から頬の3点までの距離を算出する。算出結果は、被写体距離情報70としてシャッタ制御部201、位置判別部203、および姿勢判別部207に与えられる。
【0035】
シャッタ制御部201は、シャッタボタン25が押されシャッタが切られた瞬間に、LED51a〜51d、52a〜52dへの電流の供給を開始するようにLED駆動部261、262に対して指令する。そして、露出時間に併せて電流の供給を止めるように指令する。これにより、各LEDは、シャッタおよびシャッタ速度(露出時間)と同期して発光する。なお、シャッタを切る指令は、シャッタボタン25の代わりにパーソナルコンピュータ6によって行われるようにしてもよい。
【0036】
シャッタが切られて各LEDが発光すると、その光は、被写体である頬に照射される。ただし、可視光線などはフィルタ板31によってカットされるので、赤外線のみが被写体に照射される。一般に、人間または動物の血管は、赤外線を吸収する性質がある。よって、頬の表面のうち、皮下に血管のある部分は照射された赤外線をあまり反射しないが、血管のない部分はよく反射する。
【0037】
被写体からの反射光は、フィルタ板31を透過してケーシング20の中に入り、レンズ211によってイメージセンサ212上に結像する。イメージセンサ212は、これを信号化することによって撮像データを生成する。
【0038】
画像処理部202は、この撮像データに画像処理を施すことによって、頬の血管のパターンの画像を生成する。なお、画像処理は、パーソナルコンピュータ6で行うように構成してもよい。
【0039】
シャッタは、レンズシャッタまたはスクリーンシャッタのようなメカ的なシャッタ、液晶シャッタのような光学的なシャッタなどを用いることが可能である。また、例えば、撮影の指令に同期してイメージセンサ212による電荷の蓄積を開始し、露出時間経過後に蓄積を終了しまたは蓄積した電荷を読み出すように構成してもよい。つまり、このように構成した場合の露出時間とは、電荷の蓄積時間を意味する。または、これらのメカ的、光学的、または電気的なシャッタを組み合わせてもよい。
【0040】
撮影装置1には、露出(露光)およびシャッタを自動制御し、被写体の位置および姿勢を案内し、および被写体領域抽出を行うための機能が設けられている。これらの機能によると、より簡単にかつ高精度で撮影を行うことができる。次に、これらの機能について説明する。
〔自動露出調整機能〕
図7は距離露出テーブルTL1の例を示す図である。撮影装置1には、図5に示すように、距離露出テーブルTL1が設けられている。距離露出テーブルTL1には、図7に示すように、撮影装置1と被写体との距離に応じた露出時間が定められている。図7を見て分かるように、撮影装置1から被写体(頬)までの距離が長いほど、露出時間が長くなるように設定される。例えば、撮影装置1までの距離が2.5cmである場合は露出時間は80ms(ミリ秒)に設定され、8.5cmである場合は95msに設定される。
【0041】
なお、距離露出テーブルTL1の「ゲイン」とは、イメージセンサ212から画像処理部202に出力される出力信号S10の出力ゲインのことである。図5において、出力ゲインを調整するための調整信号S11は、距離露出テーブルTL1に基づいてシャッタ制御部201などから送られてくる。また、出力ゲインは手動により調整することも可能である。増幅器208は、出力信号S10を増幅する。増幅器208を省略することも可能である。増幅器208の増幅率を可変とし、調整信号S11によって増幅率を調整し、出力信号S10の出力ゲインを調整してもよい。その場合に、増幅器208をイメージセンサ212の内部に一体的に構成してもよい。なお、出力信号S10がディジタルデータである場合には、増幅器208に代えてデータ変換器などを用いてもよい。ここでは、出力ゲインは、距離に関わらず同じに設定されている。
【0042】
図5のシャッタ制御部201は、撮影の際に、距離算出部205によって算出された被写体までの距離と距離露出テーブルTL1とに基づいて露出時間を設定する。
〔自動シャッタ制御機能〕
シャッタ制御部201は、被写体の位置および姿勢が撮影に適した状態になった場合に自動的に撮影の指令を行う。具体的には、被写体(頬)が撮影良好範囲に位置し、頬が撮影装置1の正面に対して平行に向き合った姿勢(撮影方向の軸が頬の面にほぼ垂直に交わる状態)であり、かつ、頬が静止している、という3つの条件を満たした場合に撮影の指令を行う。なお、「撮影良好範囲」とは、所定の水準以上の鮮明さの画像を得ることができる撮影範囲を意味する。これらの条件を満たしているか否かの判別は、位置判別部203、静止判別部204、および姿勢判別部207によって次のように行われる。
【0043】
位置判別部203は、被写体距離情報70または測距センサ27の出力値に基づいて被写体(頬)が撮影装置1の撮影良好範囲内に位置するか否かを判別する。頬の撮影良好範囲は、撮影装置1から撮影方向への距離が例えば2〜9cmの範囲とする。なお、頬の3点すべてが撮影良好範囲にあれば撮影良好範囲にあると判別するようにしてもよいし、いずれかの1点が撮影良好範囲にあれば撮影良好範囲にあると判別するようにしてもよい。係る判別は、所定の時間(例えば50ms)ごとに行われる。
【0044】
姿勢判別部207は、被写体距離情報70または測距センサ27の出力値に基づいて被写体の3点の座標を求める。そして、撮影装置1の撮影方向の軸が被写体の3点を含む平面に垂直に交わるか否かを判別する。つまり、その平面と撮影装置1の正面20aとが平行になり、被写体の被撮影面が撮影装置1に対して真っ直ぐに向いているか否かを判別する。ただし、上記の「垂直に交わる」とは、約90度で交わるという意味であって、厳密に90度で交わるという意味に限定するわけではない。例えば、角度が所定の範囲内、90度±10度程度、ある場合は、撮影方向の軸が被撮影面に垂直に交わっており、被写体が撮影装置1に対して真っ直ぐに向いていると判別する。そうでない場合は、垂直に交わっておらず、真っ直ぐに向いていないと判別する。
【0045】
静止判別部204は、撮影良好範囲内に入った被写体が静止したか否かを判別する。すなわち、所定の時間(例えば100ms)ごとに、測距センサ27より被写体の3点についての8ビットの計測値を取得する。一定の期間(例えば数百ms〜数秒間)、各点の計測値の変化量を観察する。そして、その期間ずっと、変化量が所定の値よりも小さかった場合は、被写体が静止していると判別する。その期間内に所定の値を超えた場合は、静止していないと判別する。または、距離算出部205より取得した被写体の被写体距離情報70に基づいて、上記と同様に変化量を観察して静止の判別を行ってもよい。
【0046】
このようにして判別を行った結果、すべての条件を満たしていると認められた場合に、シャッタ制御部201は自動シャッタ制御機能を実行する。この場合の露出時間は、最新の測距センサ27の測定値(出力値)などに基づいて求められる露出時間が用いられる。
〔被写体の位置および姿勢の案内機能〕
自動シャッタ制御機能による撮影は、上に述べたように、被写体(頬)が撮影良好範囲に位置し、撮影装置1と平行な姿勢(撮影方向の軸が被撮影面に垂直に交わる姿勢)になり、かつ静止しなければ実行されない。係る3つの条件を簡単に満たせるようにするために、ランプ28は、被写体を正しい位置および姿勢に案内するためのサインを発する。
【0047】
例えば、測距センサ27によって被写体が検出されていない間は、ランプ28を消灯しておく。被写体が検出され、位置判別部203によって被写体が撮影良好範囲内に入ったと判別されると、ランプ28を、ゆっくりと(例えば1秒ごとに)点滅させる。姿勢判別部207によって被写体の姿勢が撮影装置1に対して真っ直ぐになったと判別されると、ランプ28の点滅を速く(例えば0.5秒ごとに)する。そして、静止判別部204によって被写体が静止したと判別されると、ランプ28の点滅を止めて点灯したままにする。または、上記の条件ごとに合計3つのランプを用意しておく。そして、条件を満たした場合にそれに対応するランプを点灯するようにしてもよい。
【0048】
ランプ28の代わりに撮影装置1にスピーカを設け、「静止してください」または「もう少し顔を左に向けてください」というような音声を出力し、被写体の位置および姿勢を案内するようにしてもよい。または、液晶パネルを設け、メッセージ、図形、写真、または映像を表示して案内するようにしてもよい。パーソナルコンピュータ6のスピーカまたはディスプレイ装置によって案内するようにしてもよい。
〔被写体領域抽出(背景の除去処理)〕
撮影装置1と被写体とがかなり近い場合は、被写体以外の物体つまり背景が写り込まず、被写体だけの画像が得られる。しかし、両者の距離がある程度離れていたり、被写体のサイズが小さかったりすると、得られた画像に背景が含まれてしまう場合がある。そこで、被写体の領域のみを抽出するために、撮影装置1の各部は、次のような処理を行う。
【0049】
測距センサ27によって被写体が検出されていない間、シャッタ制御部201、画像処理部202、および撮像部21などは、背景のみの画像を取得するための撮影を行う。係る撮影は、定期的に(例えば数分〜数十分ごとに)行う。撮影によって得られた画像は背景画像記憶部206に背景画像データ80として記憶され蓄積される。なお、既に背景画像データ80が蓄積されている場合は、古い背景画像データ80は削除され、新しい背景画像データ80が蓄積される。
【0050】
自動シャッタ制御機能などによって被写体の撮影が行われ、画像が得られると、この画像に含まれる血管の領域だけを背景画像データ80に基づいて抽出する。すなわち、得られた画像と背景の画像との対応する画素同士を比較し、その差が予め設定しておいた閾値以上となる画素については被写体の画像であると判別する。そうでない画素については背景であると判別する。このようにして、被写体である頬の領域が抽出される。
【0051】
図8は撮影装置1による撮影時の処理の流れの例を説明するフローチャートである。次に、上に述べた自動露出調整、自動シャッタ制御、位置および姿勢の案内、および被写体領域抽出の各機能を用いた場合の撮影装置1の処理の流れを、図8に示すフローチャートを参照して説明する。
【0052】
オペレータは、撮影装置1の操作ボタンまたはパーソナルコンピュータ6のキーボードなどを操作して、撮影装置1を自動撮影モードに切り替える(#1)。すると、測距センサ27が起動し(#2)、撮影装置1とその正面にある物体との距離の計測(測定)を開始する(#3)。なお、計測は、露出時間の算出(#7)または処理の終了までの間、所定の時間間隔で(例えば100msごとに)繰り返し行う。
【0053】
計測結果に変化があった場合は、撮影装置1の正面に撮影の対象者が現れたと判別する(#4でYes)。その対象者は、自分の頬を撮影装置1の正面に近づける。撮影装置1は、頬の位置および姿勢が撮影に適した位置および姿勢になったか否かを判別する(#5)。
【0054】
撮影に適した位置および姿勢になっていない場合は(#5でNo)、ランプ28またはスピーカなどによって、頬の位置および姿勢を正しい位置に案内する(#6)。そして、頬の位置および姿勢が撮影に適するようになるまで、判別を繰り返し行う。
【0055】
これらの条件をすべて満たした場合は(#4でYes、#5でYes)、距離露出テーブルTL1を参照して露出時間を求める(#7)。そして、測距センサ27を停止するとともに(#8)、算出された露出時間に基づいて頬の撮影を行い、頬を含む画像を取得する(#9)。
【0056】
撮影装置1の正面に頬が現れず、かつ、撮影の中断の指示があった場合は(#4でNo、#11でYes)、測距センサ27を停止し(#12)、自動撮影の処理を中止する。撮影装置1の正面に頬が現れていないが、撮影の中断の指示がない場合は(#4でNo、#11でNo)、必要に応じて(例えば前回の背景の撮影時から数分が経過した場合に)背景の画像を撮影しておく(#13)。
【0057】
ステップ#9で頬を含む画像を取得した後、この画像から頬の部分だけの画像を抽出する(#10)。
〔個人認識処理〕
図9は磁気記憶装置6dに記憶されているプログラムおよびデータの例を示す図、図10は特徴情報データベース6DBの例を示す図、図11は個人判別の処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【0058】
次に、撮影装置1を個人認識の処理のために用いた場合について説明する。例えば、図4に示すパーソナルコンピュータ6のログオンを行う場合を例に説明する。
【0059】
パーソナルコンピュータ6の磁気記憶装置6dには、図9に示すように、特徴情報データベース6DBが記憶されている。この特徴情報データベース6DBには、図10に示すように、ユーザごとの特徴情報71(71a、71b、…)がそのユーザを識別するユーザIDと対応付けられて格納されている。
【0060】
特徴情報71は、ユーザの特徴に関する情報である。本実施形態では、特徴情報71として、左頬の血管に関する情報が用いられる。特徴情報71は、ユーザの左頬を撮影装置1によって予め撮影して取得しておいたものである。特徴情報71を、血管のパターンの画像として格納しておいてもよいし、その画像を解析することによって得られる血管の太さ、長さ、本数、または配置などの特徴を示す情報として格納しておいてもよい。
【0061】
また、磁気記憶装置6dには、個人判別プログラム6PGがインストールされている。このプログラムを実行することによって、ログオンしようとしているユーザが誰であるかを判別するための処理が図11に示すフローチャートのような手順で実現される。
【0062】
パーソナルコンピュータ6を使用しようとするユーザは、パーソナルコンピュータ6のスイッチをオンにする。すると、パーソナルコンピュータ6には、ログオン画面が表示される。ここで、ユーザは、自分のユーザIDを入力し(#21)、撮影装置1によって自分の左頬の撮影を行う(#22)。入力されたユーザIDおよび撮影によって得られた撮像データは、パーソナルコンピュータ6へ送信される。
【0063】
パーソナルコンピュータ6は、特徴情報データベース6DBの中から、ユーザIDに対応する特徴情報71を検索する(#23)。そして、その特徴情報71が示す血管の特徴と撮影によって得られた撮像データが示す血管の特徴とが一致するか否かを判別することによって、そのユーザが正しいユーザであるか否かを判別する(#24)。
【0064】
正しいユーザであると判別された場合は(#25でYes)、ログオンすることができ、パーソナルコンピュータ6の使用が可能となる(#26)。正しいユーザであると判別されなかった場合は(#25でNo)、ログオンすることができない旨および操作をやり直す旨のメッセージを表示する(#27)。
【0065】
または、特徴情報データベース6DBに格納されている特徴情報71a、71b、…について順にステップ#24の処理を行ってユーザが誰であるのかを判別(識別)し、ログオンの可否を決定するようにしてもよい。この場合は、ログオン画面においてユーザIDの入力は不要である。
【0066】
個人の識別は、上記のようなログオン時のユーザ確認に限らず、例えば、電子決済システムにおける決済または出退勤の際の本人確認(タイムカード)などのために行うことができる。
【0067】
本実施形態によると、撮影装置と被写体との距離に応じて露光を調整することによって、非接触式であっても高精度な撮影を行うことができる。被写体を撮影に適した位置および姿勢に導くことによって、さらに高精度な撮影を行うことができる。また、背景を除いた被写体のみの画像を従来よりも正確にかつ低コストで抽出することができる。
【0068】
本実施形態では、図7に示すように、被写体との距離が長いほど露出時間を長くし、距離に関わらずイメージセンサ212の出力のゲイン(増幅)を一定としたが、距離が長いほどゲインを大きくし、露出時間を一定としてもよい。または、両方を変えるようにしてもよい。
【0069】
背景の撮影は、被写体の撮影を行った直後に行ってもよい。つまり、被写体の撮影後、測距センサ27がその被写体を検知しなくなってから行ってもよい。被写体が撮影に適した位置および姿勢になっていない場合に、撮影装置1を動かすことによって被写体と撮影装置1との位置関係を調整するようにしてもよい。イメージセンサ212として、CMOSの代わりにCCDを用いてもよい。
【0070】
本実施形態では、撮影装置1によって人間の頬の血管のパターンを撮影したが、もちろん、人間または動物の身体の他の部位を撮影することが可能である。例えば、額、頭部、腹、背中、尻、首、手足、腕、および脚などのあらゆる面を撮影することができる。この場合は、撮影対象となる部位に応じてLEDの配置、LEDの光度、自動露出の調整、位置または姿勢の条件などを変更し、撮影装置1を構成すればよい。
【0071】
人間または動物以外の物体を撮影することも可能である。例えば、自動車の通行量調査のために、撮影装置1を用いることができる。この場合は、次のようにシステムを構成すればよい。
【0072】
撮影装置1を道路の脇(歩道)に設置する。撮影方向は、道路の他方の脇に向くようにする。撮影良好範囲は、道路の一方の脇から他方の脇までに設定する。データベースには、自動車の車種ごとの画像を予め用意しておく。
【0073】
照射部23に用いられる光源には、例えば一般のカメラ用のストロボが用いられる。この場合は、フィルタ板31を透明の板にする。自動露光を求めるためのテーブル(図7参照)を道路の幅および撮影環境などに応じて変更する。照明のタイミングを自動車が近接していると判断された直後としてもよい。自動車までの距離に反比例して照明の強さを変えてもよい。その他、道路の幅および撮影環境などに応じて、撮影装置1の構成を変更しておく。
【0074】
測距センサ27が自動車を検知しないときは、定期的に背景の画像を取得する。測距センサ27が自動車を検知し、自動車が近接していると判断されると、自動車までの距離を求め、これに応じて露光時間を決定する。その露光時間により自動車の撮影を行い、画像を取得する。取得した画像から自動車の領域のみを抽出する。
【0075】
抽出された自動車の画像およびデータベースに用意されている画像のそれぞれの色情報成分、エッジ成分、または面成分などの特徴情報を比較することにより、検知された自動車の車種を特定する。そして、通行量のデータを更新する。または、3次元撮影を行い、3次元構成情報から復元した見かけの映像情報、または色情報成分、エッジ成分、または面成分などの特徴情報を比較することにより自動車の車種を特定してもよい。
【0076】
自動車の通行量調査と同様に、廊下や歩道などを通過する人の数を調査することもできる。この場合は、廊下の両壁の範囲または道幅の範囲を撮影良好範囲とし、撮影装置1を壁などに設置し、測距センサ27を足元辺りに設ければよい。また、これらの条件に合わせて撮影装置1の構成などを変更すればよい。または、自動ドアなどでドアの前の人を認識したい場合は、例えばドアから壁までの範囲を撮影良好範囲とし、撮影装置1をドアの上方に設置し、これらの条件に合わせて撮影装置1の構成などを変更すればよい。
【0077】
撮影の対象物が近接していることを検知したものの、撮影を行ったときにはその対象物が通り過ぎてしまっている場合がある。つまり、撮影のエラーが生じる場合がある。係る場合は、後の処理エラーを低減するために、次のような処理を行ってもよい。対象物の撮影を行った際に、測距センサ27により対象物の位置(距離)を再度取得する。その結果、対象物の位置が撮影良好範囲に入っていない場合は、撮影を行った際には既に対象物が通り過ぎた後である可能性が高い。そこで、この場合は、取得した画像と背景画像とを比較し、対象物が写っているか否かを判別する。対象物が写っていない場合は、その対象物が近接していなかったものとして取り扱う。
【0078】
本実施形態では、撮影装置1と被写体の3点との距離を計測したが、1点または2点との距離を計測するようにしてもよい。例えば、スーツケースなどのように、撮影の際、真っ直ぐに立てて置くものであれば、撮影装置1と被写体の2点との距離を計測すればよい。なぜなら、被写体の表面(被撮影面)のある1点までの距離と他の1点までの距離とが等しければ、撮影装置1と被写体とが平行であることが分かるからである。または、道路を通行する自動車を撮影する場合は、1点について計測を行えば十分である。自動車は、撮影装置1に対してほぼ平行に走るからである。
【0079】
個人または物体の種類(例えば自動車の車種)などの認識結果を、ディスプレイ装置やプリンタ装置などによって出力してもよい。他の電子システムまたは装置にネットワークを介して送信し、または記録媒体に記録してもよい。本体カバー3の表面に、撮影方向を知らせるためのイラストを描いておいてもよい。例えば、足裏を撮影する撮影装置1の場合は、本体カバー3の表面に足のイラストを描いておく。
【0080】
その他、撮影装置1の全体または各部の構成、撮影の対象、LEDの配置および光度、レンズなどの光学系の配置、処理内容、処理順序、データベースの内容、画面の構成などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上のように、本発明は、撮影装置と被写体との距離に応じて露光を調整することによって、非接触式であっても高精度な撮影を行うことができる、という点で有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】撮影装置の全体の構成を示す斜視図である。
【図2】撮影装置の中央付近の側断面図である。
【図3】左頬の撮影の状況の例を示す図である。
【図4】撮影装置とパーソナルコンピュータとの接続の例を示す図である。
【図5】撮影装置の機能的構成の例を示すブロック図である。
【図6】測距センサの出力値と実際の距離との関係を示す図である。
【図7】距離露出テーブルの例を示す図である。
【図8】撮影装置による撮影時の処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図9】磁気記憶装置に記憶されているプログラムおよびデータの例を示す図である。
【図10】特徴情報データベースの例を示す図である。
【図11】個人判別の処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体で反射した光を受光手段で結像させることによって当該物体の撮影を行う撮影装置であって、
前記物体と当該撮影装置との距離を計測する計測手段と、
所定の時間ごとに得られる前記計測手段による計測結果に基づいて、前記物体が静止しているか否かを判別する、静止判別手段と、
前記静止判別手段によって前記物体が静止していると判別された場合に当該物体の撮影を行うように制御する撮影制御手段と、
を有してなることを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
前記計測手段による計測結果に応じて、撮影の際の前記受光手段の露出時間を制御する露出制御手段、を有する、
請求項1記載の撮影装置。
【請求項3】
前記受光手段で結像した光を電気的信号に変換する変換手段と、
前記計測手段による計測結果に応じて、前記電気的信号の出力ゲインを制御するゲイン制御手段と、を有する、
請求項1記載の撮影装置。
【請求項4】
前記物体の被撮影面が当該撮影装置の撮影方向の軸に対して垂直に交わっているか否かを判別する姿勢判別手段、を有し、
前記撮影制御手段は、前記姿勢判別手段によって前記物体の被撮影面が当該撮影装置の撮影方向の軸に対して垂直に交わっていると判別された場合に当該物体の撮影を行うように制御し、
前記計測手段は、前記距離として、前記物体の被撮影面の少なくとも2点と当該撮影装置との距離を計測し、
前記姿勢判別手段は、前記各点についての前記計測手段による計測結果に基づいて前記物体の被撮影面が当該撮影装置の撮影方向の軸に対して垂直に交わっているか否かを判別する、
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の撮影装置。
【請求項5】
前記物体の被撮影面が当該撮影装置の撮影方向の軸に対して垂直に交わっていると判別された場合および垂直に交わっていないと判別された場合にそれぞれ異なるサインを出力することによって、当該被撮影面が当該撮影装置の撮影方向の軸に対して垂直に交わるように案内する案内手段、を有する、
請求項4記載の撮影装置。
【請求項6】
前記物体が写っていない背景画像を記憶する背景記憶手段と、
前記背景画像と前記物体の撮影を行うことによって得られた画像とを比較することによって、当該物体だけの画像を抽出する抽出手段と、を有し、
前記撮影制御手段は、定期的に、前記背景画像を取得するために、前記計測手段によって前記距離が計測されていないときに撮影を行うように制御する、
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の撮影装置。
【請求項7】
物体で反射した光を受光手段で結像させることによって当該物体の撮影を行う撮影装置において、
前記物体と当該撮影装置との距離を所定の時間ごとに計測し、
前記物体と当該撮影装置との距離の計測結果に基づいて当該物体が静止しているか否かを判別し、
前記物体が静止していると判別した場合に当該物体の撮影を行うように制御する、
ことを特徴とする撮影方法。
【請求項8】
物体で反射した光を結像する受光手段と測距センサとを有する撮影装置を制御するためのコンピュータプログラムであって、
当該撮影装置に、
前記物体と当該撮影装置との距離を所定の時間ごとに前記測距センサに計測させる処理と、
前記物体と当該撮影装置との距離の計測結果に基づいて当該物体が静止しているか否かを判別する処理と、
前記物体が静止していると判別した場合に当該物体の撮影を行うように制御する処理と、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項1】
物体で反射した光を受光手段で結像させることによって当該物体の撮影を行う撮影装置であって、
前記物体と当該撮影装置との距離を計測する計測手段と、
所定の時間ごとに得られる前記計測手段による計測結果に基づいて、前記物体が静止しているか否かを判別する、静止判別手段と、
前記静止判別手段によって前記物体が静止していると判別された場合に当該物体の撮影を行うように制御する撮影制御手段と、
を有してなることを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
前記計測手段による計測結果に応じて、撮影の際の前記受光手段の露出時間を制御する露出制御手段、を有する、
請求項1記載の撮影装置。
【請求項3】
前記受光手段で結像した光を電気的信号に変換する変換手段と、
前記計測手段による計測結果に応じて、前記電気的信号の出力ゲインを制御するゲイン制御手段と、を有する、
請求項1記載の撮影装置。
【請求項4】
前記物体の被撮影面が当該撮影装置の撮影方向の軸に対して垂直に交わっているか否かを判別する姿勢判別手段、を有し、
前記撮影制御手段は、前記姿勢判別手段によって前記物体の被撮影面が当該撮影装置の撮影方向の軸に対して垂直に交わっていると判別された場合に当該物体の撮影を行うように制御し、
前記計測手段は、前記距離として、前記物体の被撮影面の少なくとも2点と当該撮影装置との距離を計測し、
前記姿勢判別手段は、前記各点についての前記計測手段による計測結果に基づいて前記物体の被撮影面が当該撮影装置の撮影方向の軸に対して垂直に交わっているか否かを判別する、
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の撮影装置。
【請求項5】
前記物体の被撮影面が当該撮影装置の撮影方向の軸に対して垂直に交わっていると判別された場合および垂直に交わっていないと判別された場合にそれぞれ異なるサインを出力することによって、当該被撮影面が当該撮影装置の撮影方向の軸に対して垂直に交わるように案内する案内手段、を有する、
請求項4記載の撮影装置。
【請求項6】
前記物体が写っていない背景画像を記憶する背景記憶手段と、
前記背景画像と前記物体の撮影を行うことによって得られた画像とを比較することによって、当該物体だけの画像を抽出する抽出手段と、を有し、
前記撮影制御手段は、定期的に、前記背景画像を取得するために、前記計測手段によって前記距離が計測されていないときに撮影を行うように制御する、
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の撮影装置。
【請求項7】
物体で反射した光を受光手段で結像させることによって当該物体の撮影を行う撮影装置において、
前記物体と当該撮影装置との距離を所定の時間ごとに計測し、
前記物体と当該撮影装置との距離の計測結果に基づいて当該物体が静止しているか否かを判別し、
前記物体が静止していると判別した場合に当該物体の撮影を行うように制御する、
ことを特徴とする撮影方法。
【請求項8】
物体で反射した光を結像する受光手段と測距センサとを有する撮影装置を制御するためのコンピュータプログラムであって、
当該撮影装置に、
前記物体と当該撮影装置との距離を所定の時間ごとに前記測距センサに計測させる処理と、
前記物体と当該撮影装置との距離の計測結果に基づいて当該物体が静止しているか否かを判別する処理と、
前記物体が静止していると判別した場合に当該物体の撮影を行うように制御する処理と、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−319989(P2006−319989A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−141963(P2006−141963)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【分割の表示】特願2004−570131(P2004−570131)の分割
【原出願日】平成15年3月28日(2003.3.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【分割の表示】特願2004−570131(P2004−570131)の分割
【原出願日】平成15年3月28日(2003.3.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】
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