説明

放射化学のためのデジタル微小流体プラットフォーム

本明細書には、微小化学反応を行う方法と、それらの反応を行うのに使用される誘電体上の電気湿潤装置(EWOD装置)とが開示されている。これらの装置および方法は、放射化学的化合物、特に18Fを含有する化合物を調製するのに特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
2009年10月15日出願の米国仮出願第61/252095号の利益が主張される。本発明は、米国国立衛生研究所(NIH)により授与された助成金番号CA119347および助成金番号RR020070の下で米国政府の支援によりなされたものである。連邦政府は、本発明において特定の権利を有し得る。
【0002】
化学反応、特に放射化学反応、より具体的には陽電子放射型断層撮影法(PET)に用いられるトレーサの生成を行うための、微小流体装置の使用は、参照によりその全ての全体が本明細書に組み込まれているA.M.Elizarov、「Microreactors for Radiopharmaceutical Synthesis」、Lab on a Chip、vol.9、no.10、pp.1326乃至1333、2009年5月;C.−C.Lee、G.Sui、A.Elizarovら、「Multistep Synthesis of a Radiolabeled Imaging Probe Using Integrated Microfluidics」、Science、vol.310、no.5755、pp.1793乃至1796、2005年12月16日、2005、およびA.Helene、「Positron Emission Tomography(PET)and Microfluidic Devices:A Breakthrough on the Microscale?」、Angewandte Chemie International Edition、vol.46、no.11、pp.1772乃至1775(2007)に記載されている。微小流体装置は、試薬の使用の低減、反応の制御の増大(例えば、加熱および混合)、全体的なシステムサイズの縮小、放射化学合成で使用する時期、放射線遮蔽の必要性の低減の選択肢を提供し、これらの装置は、要求に応じて様々な異なる放射標識プローブを合成することができる一般的な装置への実用的な経路を提供する。本明細書には、液滴の形をした流体の取扱いに基づく、新規な放射合成プラットフォームが記述されている。独自のプラットフォームは、液体を扱うための電圧ベースの作動方法である、誘電体上の電気湿潤(EWOD:electro‐wetting−on‐dielectric)と呼ばれる技法の使用を通して、実証される。
【0003】
放射化学合成のためのEWOD装置の特定の利点には、下記の事項が含まれるが、それらに限定するものではない:
− 不活性材料。湿潤材料は、典型的にはフルオロポリマーのみである(例えば、Cytop(商標)またはTeflon AF(商標))。これらの材料は、高度な化学的および熱的安定性を有し、広範な反応条件に適合することが予測される。
− 開口チャネル。開口チャネルは、溶媒の迅速な蒸発を可能にする。蒸発は、18F−放射合成中に頻繁に行われる動作であり、ここで、溶媒交換操作の前の溶媒除去と同様に[18F]フッ化物イオンの乾燥も通常のステップである。開口チャネルは、閉鎖チャネルを含むその他のタイプの微小流体作用では制限される混合も、強化する。そのような操作の高速化は、短寿命放射性同位体を用いて作用する場合に重要である
− 柔軟な流体経路。原則として、電極の「アレイ」を備えた単一チップの設計によれば、異なる合成に合わせて単に液滴の移動を再プログラミングすることにより、広く様々な合成を行うことができる。単一チップは、製造コストを押し下げると考えられ、ソフトウェアの変更だけで新しいプローブに拡張性をもたたらすと考えられる。この柔軟性は、反応の最適化、反応速度論の研究などを行うのに使用することもできる。
− 液体の多様性。水溶液および有機溶媒を含む、多くの異なるタイプの液体が小量で、同じEWOD装置内で扱うことができる(異なる電気信号は、いくつかの液体の組合せで必要と考えられる。)。チャネル微小流体では、小量で扱う場合、大きな損失を回避するために液体とチャネル表面特性との適正なマッチングが必要であり;したがって、同じ装置で異なる溶媒を扱うには(放射化学反応で典型的であるように)、多数の材料と局所的に処理されたチャネル表面とをベースにしたハイブリッド装置を含む、特殊化した製作方法を必要とする。
− 直接的な製作。EWODチップは、公知の集積回路処理ステップを使用して製作される。例えば、電極は、インジウムスズ酸化物(ITO)、または窒化ケイ素などの絶縁層上に金が配されたものなどの電気伝導性材料を使用してパターニングされ、その構造は、疎水性被膜によって覆われるものである。チップは、工業規格の標準的なプリント回路基板製造(および疎水性コーティング)を使用して、作製することもできる。装置の単純さにより、ある範囲の種々のコストおよび性能に関し、多くのその他の製作の選択肢、例えばスクリーン印刷、インクジェット印刷、およびロールツーロール印刷の選択肢が可能になる。EWODチップは、使い捨ての用途に向けて1チップ当たりさらに低いコストで大量生産することができる。
− 簡単なシステム。EWOD装置は、典型的には100Vよりも低い電圧信号を使用するだけで、動作する。圧力源(例えば、ポンプ)、流量調整弁(例えば、弁)、複雑な配管、可動部品、高電圧(例えば、動電学的駆動のためのkV)、または高電力(例えば、熱、電磁気)は、必要ではない。小さなプリント回路基板のみからなるので、完成したシステムは小さく、ホットセル、ミニセル、または小型の放射線遮断筐体に嵌め込むのが容易である。
− 小さな流体体積。EWOD装置は、数百マイクロリットルからピコリットルの流体体積を、確実に扱うことができる。ミリリットル体積よりも少ない体積規模で従来のマクロスケールの手法で作動させると、より速いプロセス(加熱、蒸発、および冷却など)、より高い放射性同位体濃度、望ましくない不純物の重要な供給源である試薬のより少ない量などが可能になる。
【0004】
その他の利点には、EWODチップ上に、「乾燥した」試薬を直接印刷できる能力が含まれる。真新しい溶媒の液滴を使用してこれらの試薬を再溶解し、それらを化学合成プロセスで使用する。チップ上で乾燥させた試薬を使用することによって、特定のプローブを合成するための「キット」の構成が可能になり−これは、制御された品質の標準的な試薬の使用によって、非常に信頼性のある再現可能な手法でプローブ合成を単純化するという、膨大な可能性がある。
【0005】
本明細書に記述されるように、EWOD上での液体の作動は、液滴の移送、液滴の合流、液滴の混合、または液滴の分割を使用して実現できることを、次に示すことができる。液滴は、固定されたまたは制御された体積で定量吐出することができる(キャパシタンスまたはその他のフィードバックを介して)。さらに、センサおよび作動器を、例えば液体検出(監視プロセス)、体積測定、および温度制御(加熱および抵抗のフィードバック)のために、チップに集積化することができる。
【背景技術】
【0006】
微小流体装置は、約2004年以来、放射化学で使用されてきた。Elizarov(同上)による最近の調査は、採用されてきた様々な手法についてまとめている。微小流体の使用には、PETトレーサを生成するための主流の巨視的方法(手動および自動化システム)にも勝る多くの利点があることは、当技術分野での一般的な認識である。
【0007】
微小流体に関し、ほとんどの研究者は、シリンジポンプ、F−18乾燥サブシステムなど、実質的に補助的な設備を依然として必要とする連続フローマイクロリアクタを使用してきた(Elizarov(同上))。その結果、これらのシステムは嵩高く、複雑で、高価である。試みられてきたいくつかの「統合」型手法(C.−C.Lee、G.Sui、A.Elizarovら、「Multistep Synthesis of a Radiolabeled Imaging Probe Using Integrated Microfluidics」、Science、vol.310、no.5755、pp.1793乃至1796、2005年12月16日)は、材料の適合性に関する問題に悩まされている。例えば、PDMSは、プローブ合成で使用される多くの有機溶媒およびその他の反応条件に適合していない。さらに、動作の非常に低い信頼性が観察されてきた。統合型手法は全て、十分に画定されたチャネルパターンを備える微小流体装置を使用する。これは柔軟性に制約を与え、ほとんどの場合、異なるプローブは異なるチップ設計を使用することが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書には、改善された独自のEWOD装置、反応物送達システム、これらの装置および送達システムを使用して放射性化合物を調製するためのプロセスが示されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書には、微小化学反応を行う方法と、それらの反応を行うのに使用される誘電体上の電気湿潤装置(EWOD装置)とが開示されている。
この装置は:
その第1の表面に1つまたは複数の流体経路を有する第1の基板であって、各流体経路は、この流体経路から間隔を空けて配置されかつ絶縁された多数の個別の電気伝導性電極パッドを含み、前記流体経路の隣接した導電性パッドは、非導電性スペースによって互いに切り離されており、これら多数の導電性パッドのそれぞれは、そこに取り付けられた電気伝導性の線を有し、各導電性の線は、導電性パッドに電気信号を送出するために設けられ、前記導電性の線は導電性パッドに取り付けられて、前記流体経路に沿って流体液滴の電気的に指向された移動をもたらす、第1の基板と、
1つまたは複数の流体経路上にまたは流体経路に隣接して位置付けられた、1つまたは複数の流体送達部位と、
前記第1の基板上で、流体経路に沿って位置付けられた、1つまたは複数の反応部位または加熱器部位と
を含み、
前記流体経路は、1つまたは複数の流体送達点から、1つまたは複数の反応部位または加熱器部位に至る。
【0010】
装置は、第1の基板上に位置決めされた第2の基板を含むこともでき、この第2の基板は、第1の基板と第2の基板との間に画定されたスペースを有する状態で、第1の基板に平行に位置決めされている。第2の基板は、電気伝導性であることができ、または、画定されたスペースに面する第2の基板の表面上に電気伝導性被膜コーティングを有することができ、前記導電性基板または電気伝導性被膜コーティングは、電気接地を提供する。一実施形態では、第1の基板の1つまたは複数の部分は、第2の基板の1つまたは複数の縁部を超えて延びて、1つまたは複数の流体送達部位を提供し、この流体送達部位は、第2の基板の1つまたは複数の縁部で導電性流体経路上にまたは導電性流体経路に隣接して位置付けられている。
【0011】
加熱器部位は、個別の電気伝導性パッドを含むことができ、個別の電気伝導性パッドのそれぞれは、加熱器パッドのそれぞれの温度を独立して制御するために独立して接続されている。さらに、1つまたは複数の加熱器部位は、同心状の個別の電気伝導性パッドを含むことができる。
【0012】
誘電体層および疎水性被膜コーティングは、好ましくは、少なくとも導電性パッドおよび導電性の線を覆う。
液体担体中に化学物質を含む送達用液体を保持するための密閉容器であって、送達用液体の上方にある容器のヘッドスペースに、加圧された気体を連続的にまたは周期的に送達するための手段を有する密閉容器と、
液体担体中の化学物質を、密閉容器からこの密閉容器の上方に位置決めされた送達場所に移すために、密閉容器の最上部から上方に延びるチューブと、
加圧された気体の供給源、および前記加圧された気体を、フラッディングを防止するのに十分制御された連続的または周期的様式で密閉容器に送達するための手段と
を含む、反応物の液滴を流体送達部位に提供するための流体送達装置も開示されている。
【0013】
液体担体の液滴が送達場所または意図された第2の場所に到達したことを検出するための感知手段を提供することができ、前記感知手段または第2の感知手段は、所望量以下の液体担体が意図された第2の場所に到達したことも検出する。
【0014】
上述の誘電体上の電気湿潤装置(EWOD)を使用するための手順は:
液体担体中、好ましくは揮発性液体担体中に第1の化学反応物を含む液滴を、流体送達部位の1つに配置するステップであって、前記送達部位は、1つまたは複数の加熱器部位にまたはその部位から間隔を空けて配置されているステップと、
液滴が、加熱器部位から間隔を空けて配置された送達部位に配置される場合、前記流体経路から間隔を空けて配置された隣接する導電性パッドに順次電界を提供して、液滴を流体送達点から加熱器部位に移動させるステップと、
液体担体中、好ましくは揮発性液体担体中の第2の化学反応物の液滴を、流体送達部位の1つに配置するステップと、
前記流体経路から間隔を空けて配置された隣接導電性ブロックに順次電界を提供して、第2の反応物の液滴を流体送達点から加熱器部位に移動させるステップと、
組み合わせた第1および第2の反応物を加熱して、前記第1および第2の反応物の間で化学反応させることにより、所望の中間体または最終生成物を形成するステップと、
所望の中間体または最終生成物をさらに反応させまたは回収するステップと
を含む。
【0015】
第1の反応物の液滴を、加熱器部位で加熱して、第2の化学反応物の液滴を添加する前に蒸発によって液体担体を部分的にまたは完全に除去する。次いで第1の反応物または液体担体の追加の液滴を、第2の化学反応物の液滴を添加する前に加熱器部位に移送し、第1の反応物の前記追加の液滴を、先に送達された第1の反応物の液滴の蒸発前、部分的な蒸発後、または蒸発完了後のいずれかで加熱器に移送する。次いで液体担体中の第2の化学反応物の液滴を、先に送達された第1の反応物の液滴の蒸発前、部分的な蒸発の後、または蒸発完了後のいずれかで加熱器部位上で第1の反応物と組み合わせる。次いで第2の反応物の1つまたは複数の液滴と組み合わせた第1の反応物を、反応するのに十分な時間加熱して、所望の中間体または最終生成物が得る。
【0016】
追加の揮発性液体担体を、液体環境で第1および第2の反応物を維持するために、反応中に加熱器部位に移送することができ、所望の反応が完了するのに十分な時間が経過した後に、部分的なまたは全体的な蒸発を行う。代替例として、3種以上の反応物を、最終生成物の調製のために加熱器部位に送達することができる。
【0017】
ある代替の実施形態では、液体担体中の化学反応物の混合物の液滴を、流体送達部位の1つに配置する。次いで液滴を加熱器部位に移動させ、加熱して所望の反応を引き起こすことにより、意図された中間体または最終生成物を生成し、揮発性液体担体を除去する。
【発明の効果】
【0018】
上述の装置および方法は、放射化学的化合物、特に18Fを含有する化合物を調製するのに特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】積層された構成要素を有するEWODチップの実施形態を示す、概略図である。
【図2】本発明の特徴を組み込んだEWODチップの制御電極パターンを示す、概略図である。
【図3】3つの異なる加熱器の実施形態の、概略図である。
【図4】3つの異なる加熱器の実施形態の、概略図である。
【図5】3つの異なる加熱器の実施形態の、概略図である。
【図6】2つの液体フィードを有するEWODチップの実施形態を示す、概略図である。
【図7】導線および接続部位も示す、図6に類似した概略図である。
【図8】本発明の特徴を組み込んだEWODチップの使用における、9つの連続したステップの概略図である。
【図9】本発明の特徴を組み込んだEWODチップの使用における、9つの連続したステップの概略図である。
【図10】本発明の特徴を組み込んだEWODチップの使用における、9つの連続したステップの概略図である。
【図11】本発明の特徴を組み込んだEWODチップの使用における、9つの連続したステップの概略図である。
【図12】本発明の特徴を組み込んだEWODチップの使用における、9つの連続したステップの概略図である。
【図13】本発明の特徴を組み込んだEWODチップの使用における、9つの連続したステップの概略図である。
【図14】本発明の特徴を組み込んだEWODチップの使用における、9つの連続したステップの概略図である。
【図15】本発明の特徴を組み込んだEWODチップの使用における、9つの連続したステップの概略図である。
【図16】本発明の特徴を組み込んだEWODチップの使用における、9つの連続したステップの概略図である。
【図17】図3乃至図5の加熱器の電極設計を較正するのに使用される、温度較正システムを示す図である。
【図18】図17の温度較正システムを使用して作成された、特定の加熱器の設計に関する較正曲線である。
【図19】図19Aは、液滴の蒸発における一連の段階を示す図である。図19Bは、液滴の蒸発における一連の段階を示す図である。図19Cは、液滴の蒸発における一連の段階を示す図である。図19Dは、液滴の蒸発における一連の段階を示す図である。
【図20】コールドランの実施例で使用される化学反応である。
【図21】[18F]FNBを調製するためにホットランの実施例で使用される化学反応を示す図である。
【図22】ホットランからの生成物([18F]FNB生成)のTLCグラフである。
【図23】[18F]FDG生成の結果を示す、TLCグラフである。
【図24】[18F]TAG生成の結果を示す、TLCグラフである。
【図25】第2のEWODの設計を示す、概略図である。
【図26】図25の同心状加熱器の拡大図である。
【図27】空気圧式送達システムの概略図である。
【図28】図27のシステムを使用する送達チューブ内の流体の位置決めを示す、概略図である。
【図29】小型カートリッジを使用して精製された、前臨床用量の[18F]FDCの生成の結果を示すTLCグラフである。
【図30】1−(4−ブロモブトキシ)ナフタレンを調製するための化学反応を示す図である。
【図31】1−(4−ブロモブトキシ)ナフタレンのTLC分離を示す図である。
【図32】液滴体積を感知するためのEWOD制御システムの概略図である。
【図33】電圧とキャパシタンス(インピーダンス)との間の関係を理論的に予測するのに使用される回路の、概略図である。
【図34】EWOD上の投入位置への液滴のピペット送達を示す、概略図である。
【図35】[18F]FDGを調製するためにホットランの実施例で使用される化学反応を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
EWODチップ10の構造を、図1に示す。EWOD装置の動作およびこれらの装置の表面を横断する流体の推進状態は、Shih−Kang Fan、Peter Patrick deGuzman、Chang−Jin Kim、「EWOD Driving of Droplet on NxM Grid Using Single Layer Electrode Patterns」、Solid−State Sensor、Actuator and Microsystems Workshop、Hilton Head Island、SC、2002年6月2日乃至6日に記載されており、前記論文は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。好ましい実施形態では、2枚のガラス基板12、14(上板および底板)が、100μmのスペーサ16(すなわち、両面テープ)により間隔を空けて配置された向きで一緒に保持されて、液滴20(液体の小さなしずく)を配置するための隙間18を形成する。底板基板14は、その上面に形成されまたは位置決めされた、通常はITOまたは金を含む制御電極22を有する。制御電極22上に位置付けられた絶縁誘電体層(窒化ケイ素など)24は、Cytop(登録商標)またはTeflon(登録商標)被膜などの疎水性被膜層26により覆われている。上板基板12の底面は、接地電極として機能するITOなどの導電性被膜28により覆われている。しかし、代替の実施形態では第2の基板を除外することができ、第1の基板の上面に液滴が載置された開放構造が提供される。そのような場合、接地電極は、異なる場所、例えば第1の基板の下または内部に位置付けることができる。2枚基板構造において、好ましくは底板上の絶縁誘電体24よりも薄い、好ましくは下板絶縁誘電体24の面積の10分の1である絶縁誘電体の層30(窒化ケイ素など)が、接地電極28を覆う。疎水性層32は、上方誘電体30の下面を覆う。EWODチップは、プリント回路基板製作技法またはフレキシブルエレクトロニクスを使用した標準的なチップ形成技術を含むがこれらに限定されない様々な公知の技法を使用して、形成することができる。
【0021】
優先的に、EWODチップ10は、チップの2つの縁部に沿った電気接続パッド41と、加熱器44に繋がる制御電極経路42に接続されたいくつかの導電性(好ましくは、金)接続線52とを除いて、透明である。水、DMSO、MeCN、またはその他の液体担体の液滴20は、接続パッド41にかつ導電性接続線52を通して与えられた電圧信号により、経路42に沿って2枚の基板12、14の間の隙間18の中にかつ隙間18に沿って移送される。
【0022】
本発明の特徴を組み込んだEWODチップの設計38の電極パターンを、図2に示す。このパターン内には、反応に関与する溶液を受容し得る2つのリザーバ40が位置付けられている。電気接続パッド41は、導電性接続線52によって、導電性経路42に接続されている(図1の制御電極22としても示される。)。導電性経路42は、チップの表面の下に、図6および図8乃至図16に最も良く示される非導電性スペース43によって切り離された一連の個別の電気伝導性パッドを含む。これらの図に示された実施例では、1mm×1mm平方のITO。中央に位置付けられた四角形は、加熱器44である。図3、図4、および図5は、3つの代替の加熱器44の設計を示す。図3は、電極44上に配置された溶液の液滴を加熱するように設けられた、簡単な加熱器電極の設計46である。図4および図5は、加熱器の中心にある液滴20を加熱する、セルフセンタリング加熱電極48、50の第1および第2のタイプである。加熱器領域の底部の角には、電源(図示せず。)に接続されたアース線54および電圧リード56が図示されている。
【0023】
図6は、カバー板58がEWODチップ38の一部のみを覆う実施形態を示す、概略図である。図7は、やはり接続パッド41および導電性接続線52を示す、図6に示されるチップの別の図である。カバー板58がチップ38を不完全に覆うことにより、好ましくは少なくとも1つのリザーバ40に近い縁部が生成され、その結果、EWODチップ上でピペットまたは注射針146を使用して、隙間18内に試薬を投入することができるようになる(図34参照)。図6および図7の実施形態は、チップ上の異なる経路を使用することにより無水溶液(前駆体溶液)から水性試薬(例えば、F−18溶液)を分離させることができる、2つの可能性ある縁部投入位置60を示し、したがって、液滴が動いた後に潜在的に残される残渣に起因した相互汚染が回避される。あるいは、投入位置60は、図27および図28に示されるように、基板12、14の1つを貫通して形成された穴を含むことができる。
【0024】
EWODチップの各接続パッド41には、DCまたはAC信号が供給される(例えば、周波数(約10KHz)および電圧(約100V))。チップの縁部に沿って、順に様々な異なる接続パッド41に電圧を印加することにより、投入位置60に堆積された液滴36は、チップ表面に沿う経路42に沿って移動することができるようになる。液滴を移動させるのに使用される機器には、信号発生器、高電圧増幅器、デジタルI/O制御ボックス、継電アレイ、および加熱電極48、50に電力を供給し温度を測定するためのソースメータが含まれる。これらの市販されているまたは特注の機器は、手動によってまたはLab Viewソフトウェアなどのソフトウェアによって制御することができる。当業者なら、異なる経路42を通して3種以上の反応物の送達を行うために3つ以上のリザーバ40および投入位置60をチップ上に設けることができることを、理解するであろう。
【0025】
出願人によって構築され試験がなされた本発明の特徴を組み込んだEWOD装置の実施形態および特徴は、下記の事項を含んでいた:
18F−放射化学に関する溶媒の可動性
− 水またはアセトニトリル(KCOおよびK.2.2.2を含有する混合物も)の液滴を蒸発させる能力
− 溶媒蒸発後に加熱器上に残された残渣の再溶解
− 揮発性溶媒中の、高温での反応の実施
− フルオロニトロベンゼンのコールド合成(TLCで評価)
− [18F]フルオロニトロベンゼンのホット合成(放射性TLCで評価)
− [18F]フルオロデオキシグルコースのホット合成(放射性TLCで評価)
− 1−(4−ブロモブトキシ)ノフタレンの合成
周波数および電圧は、装置の構成に応じて変化させてもよいが、特定の構成に合わせてEWODチップ上で関連ある溶液の液滴を扱うための電源の、好ましい最小限の周波数および電圧を、表1に示す。KCO溶液(陰イオン交換樹脂から溶出した後の、[18F]フッ化物からなる組成物に類似する。)MeCN、DMF、およびDMSO(多くの反応の前駆体が溶解している。)は、好ましい担体液体である。
【0026】
【表1】

【0027】
加熱器44に関するいくつかの設計を製作し、試験をした。第1のステップとして、各電極の設計を、油浴に浸漬することによって較正した。図17は、容器76に入れられたシリコーン油74を加熱するホットプレート72を含む、較正システム70を示す。加熱器44の抵抗をオーム計78で測定し、油の温度(浸漬されたEWOD装置の温度と同じであると想定される。)を、熱電対80を使用して測定する。抵抗は、式R=R[1+α(T−T)に従う温度の関数であり、式中、Rは温度Tでの抵抗であり、Rは温度Tでの抵抗であり、αは抵抗の温度係数である。EWODチップ上のITOに関する抵抗の温度係数はT対Rをプロットしその線形当て嵌めの勾配を見出すことによって決定される(図18)。
【0028】
堆積されたITOに関する抵抗の、公知の温度係数によれば、加熱器44の温度は、EWODチップ38上で制御することができる。ACまたはDC電流を、その抵抗の測定中に抵抗器(加熱器44)を加熱するためにそこに取り付けられた正および負のリード線を通して流すことができる。所望の温度に関して計算された抵抗と一致したときに、その温度に到達したと推定する。温度は、制御回路のソフトウェアPID制御によって、所望の設定点で維持される。
【0029】
EWODチップの好ましい実施形態上の、加熱器44、導電性経路42を含むEWOD制御電極22、およびEWOD接続線52は、ITOで作製される。しかし、制御回路(図示せず)から加熱電極44への接続線は、電流が流れたときにこの接続線が加熱されないように金で作製されているが、それは金が、ITOよりもさらに良好な導体だからである。加熱器44は、損傷することなく200℃よりも高い温度に到達することができるが、疎水性層は、約190℃よりも高く加熱されるべきではない。
【0030】
上述の実施形態を使用して蒸発を試験するために、1M KCO溶液約400nLを、本明細書に記述される技法を使用して加熱器44の場所に移送し、温度を105℃まで上昇させた。溶媒の大部分は2分以内で蒸発した。より低い沸点の溶液の場合(例えば、より低い塩濃度の溶液、または低沸点有機溶媒を含有する溶液)、蒸発時間は実質的により短くなる。
【実施例1】
【0031】
非放射性(「コールド」)合成の実証:
合成のための基本的な能力を実証するために、非放射性フルオロニトロベンゼンをEWODチップ上で合成した。EWODチップ上でのこの合成プロセスは、図8乃至図16に概略的に示されており、化学反応は図20に示されている。フッ化物と1,4−ジニトロベンゼンの前駆体との反応は、水に対して感受性があるので、このコールドラン手順は、水の蒸発の完全性を効果的に試験する。次いで生成物溶液をTLCにより分離し、UV光で検出することができる。以下の記述において、「SM」は「出発材料」(未反応の前駆体)を意味し、「P」は生成物のサンプルを意味する。
【0032】
この反応を行うのに、2種の溶液を調製した。
・溶液1(フッ化物溶液)は、115mM KF+234mM Kryptofix K.2.2.2を、アセトニトリル(MeCN)および水(88:12v/v比)の溶液に溶かしたものであり、
・溶液2(前駆体溶液)は、119mM 1,4−ジニトロベンゼンをDMSOに溶かした溶液であった。
【0033】
図8乃至図16および図34を参照すると、試薬の液滴36は、ピペットを使用して、カバー板58の縁部に沿った投入位置60でEWODチップ38上に導入された(図8)。次いでEWODチップ電極は、この液滴を経路42に沿って加熱器44に移送し(図8及び図9)、そこで液滴は加熱され、液体が蒸発した。より具体的には、EWODチップを使用した手順は下記の通りである:
1.第1の溶液500nLを、縁部入口60に配置し、加熱器44に移送した。
2.加熱器44を、105℃に3分間加熱して(図10)、乾燥した残渣82を加熱器の場所に残した。
3.MeCN 600nLを縁部入口60に投入し(図11)、加熱電極44に移送した(図12)。
4.次いでMeCNを、加熱器を使用して105℃で3分間加熱して(図13)、MeCNを蒸発させることにより、残留水を残渣82から除去するのを助けた。図19Aは、加熱器44の位置に位置付けられた液滴を概略的に示し、矢印は、気化した液体担体の放出を表す。図19Bは、上板12の底部にある蒸気の部分凝縮62を示す。図19Cは、加熱器からの熱の結果、下面がより温かくなったときの、凝縮した液滴の消散を示す。図19dは、液滴からの液体の完全なまたは実質的に全体的な蒸発を示し、[18F]化合物の乾燥した溶質残渣82が残されている。
5.ステップ3およびステップ4を数回繰り返した(このプロセスを共沸蒸留と呼び、その目的は、フッ素化反応の水に対する感受性により可能な限り多くの残留水を除去することである。)。正相関が、ステップ3乃至ステップ4を繰り返す回数と最終生成物の収率との間で観察された。
6.次いで第2の溶液(前駆体)500nLを、第2の縁部入口60に投入し(図14)、加熱電極44に移送した(図15)。
7.次いで乾燥した、水を含まない第1の溶液の残渣と、前駆体との組合せを、加熱器を使用して120℃に3分間加熱して、これら2種の材料を反応させ、所望の反応最終生成物84を発生させた(図16)。
【0034】
蒸発および反応の後、EWODチップの上部基板と底部基板とを分離した。生成物を、毛管を使用して除去し、次いでTLC分離およびUV光検出を、緩衝ジクロロメタンおよびヘキサン(1:1v/v)により行った。オンチップ反応の生成物サンプルの、「標準物質」(わかっている最終生成物の前駆体および「コールド標準物質」)との比較を通して、所望の生成物と未反応の前駆体との割合を評価することにより、反応収率の評価を行った。
【実施例2】
【0035】
放射合成(「ホット」ラン)
対応するホットラン、すなわち[18F]フルオロニトロベンゼン([18F]FNB)の放射合成も、実施した。ホットラン反応手順は、KF溶液ではなくアサイクロトロンで生成された[18F]フッ化物を使用すること以外、コールドランと同様であった。担体が付加されない[18F]フッ化物イオンを、RDS−112サイクロトロンを使用して、銀標的本体への98%の濃縮[18O]水の11MeVプロトン衝撃によって生成した。2種の試薬溶液を調製した:
溶液1(F−18溶液)は、84:16(v/v)の比にあるMeCNおよび水の混合物中に、55mM KCO、112mM Kryptofix K.2.2.2、および58nM F−18を含有する;
溶液2(前駆体溶液)は、DMSO中に119mM 1,4−ジニトロベンゼンを含有する。
【0036】
18F]フッ化物を使用する18F−放射合成に典型的であるように、重要なステップは、F−18を、イオン交換カートリッジから溶出した後に乾燥し活性化するステップであった。次いでK18F/K2.2.2と前駆体(1,4−ジニトロベンゼン、典型的にはDMSO中にある。)との反応は、生成物1−[18F]フルオロ,4−ニトロベンゼンをもたらす。化学反応を、図21に示す。ホットランの詳細なステップは、コールドランの場合のものと同一であった。
【0037】
溶液1を、チップ上の投入位置に堆積し、加熱器の場所に移送し、蒸発させ、次いで溶液2を同じ場所に運んだ。合成の後、生成物をシリカゲルTLC(緩衝MeCN/H2O 95:5v/v)により分離し、放射性TLCスキャナで可視化して、放射性種の相対的な量、したがって反応収率を決定した。
【0038】
TLCプロファイルに関しては図22を参照されたい。
放射性TLCプロファイルを使用して、各ピークの面積を積分する。「標準物質」の研究から、分離に使用される条件下、異なる化学物質がどの位置に残されることになるのかがわかる。図22の実施例において、第1(左)のピークは未反応の[18F]フッ化物に該当する。第2(右)のピークは、所望の生成物に該当する。図22に示されるTLCの結果は、変換効率(F−18から所望の生成物[18F]フルオロニトロベンゼンへの)が約96%であったことを示す。変換は数回のランで一貫して高く、その平均変換効率は78%±12%(n=8ラン)であり、この化合物の従来の合成と矛盾がなかった。サンプル回収率は、上記にて論じたように約29%であった。したがって、EWODチップにおける[18F]フッ化物からの[18F]フルロニトロベンゼンの放射化学収率(RCY)は、96%×29%(すなわち、28%)であることが計算される。したがって様々な動作条件および材料の取扱いの結果、80%乃至100%の範囲の回収率ではるかに少ない損失をもたらした。
【0039】
ホットランは、18F−標識フルオロデオキシグルコース([18F]FDG)を生成するようにも行った。図35に示される反応スキームによれば。[18F]FDGに関するホットランの手順は、少しの相違はあるが[18F]フルオロニトロベンゼンの場合のものと同様である。主な相違は、フッ素化中間体からアセチル保護基を除去するために、[18F]FDGが第2の反応を、すなわち加水分解ステップを必要とすることである。また、前駆体上への18Fの求核置換も、DMSOの代わりに溶媒MeCN中で生じる。
【0040】
18F/K2.2.2活性化錯体と前駆体マンノーストリフレート(典型的には、MeCN中)との反応は、中間体[18F]FTAGをもたらす。次いでMeCNを蒸発させ、加水分解のためHClにより置換して、最終生成物[18F]FDGを形成する。
【0041】
3種の溶液を調製した:
・溶液1(F−18溶液)は、MeCNおよび水(84:16v/v)の混合物中に、55mM KCO、113mM Kryptofix K.2.2.2、および約26nM[18F]フッ化物を含有する。
・溶液2(前駆体溶液)は、MeCN中に、114mMマンノーストリフレートを含有する。
・溶液3(脱保護溶液)は、1N HClを含有する。
【0042】
18F]FDGの放射合成の場合、溶液1の500nLの液滴をEWODチップ上に投入し、加熱器部位に移動させ、そこで液滴を110℃で3分間加熱することにより、残渣が残った。次いで共沸乾燥ステップを数回繰り返した(一般に、3回乃至5回;しかし10回程度の多くの繰返しを使用した。)。共沸乾燥ステップは、チップ上にMeCNの600nLの液滴を投入すること、それを加熱器に移動させて、先のステップから残った残渣を溶解すること、および110℃で3分間乾燥することからなるものであった。フッ化物の乾燥が完了したら、溶液2の900nLの液滴をチップ上に投入し、加熱器部位に移動させた。85℃で5分間加熱することにより、[18F]FTAG中間体が形成された。MeCNは、低い蒸気圧を有しかつ反応中に素早く蒸発するので、MeCNの600nLの液滴を、30秒ごとに添加し、加熱器に移動させることによって、液体状態での反応を確実なものにした。[18F]FTAG液滴を、95℃に1分間加熱することによって乾燥した(MeCNが蒸発)。HCl(1M) 1μLを投入し、[18F]FTAG部位に移動させ、95℃で3分間加熱することにより、加水分解を行って保護アセチル基を除去し、[18F]FDGを形成した。
【0043】
サンプルをEWODチップから回収し、シリカTLC、MeCNおよび水(95:5v/v)によって分離した。結果的に分離された材料を、放射性TLC読取り器で測定した(図23)。
【0044】
図23は、EWODチップ上で合成された[18F]FDGの水溶液に溶解することによって回収された、サンプルの組成物を示す。放射化学的に、これは主にFDGである。図24は、EWODチップ上で合成された[18F]FTAGのMeOH溶液中に溶解することにより回収された、サンプルの組成物を示す。
【0045】
18F]フルオロニトロベンゼンの合成および[18F]FDGの合成の数回の繰返しを、高い再現性で行った。追加の関連あるプローブの合成は、[18F]フルオロ−3’−デオキシ−3’−L−フルオロチミジン[18F]FLT、9−[4−[18F]フルオロ−3−(ヒドロキシメチル)ブチル]グアニン[18F]FHBG、および3,4−ジヒドロキシ−6−[18F]フルオロ−L−フェニルアラニン[18F]FDOPAを含む。
【0046】
本発明の範囲内にある代替の手法には、下記の事項が含まれる:
− 少量の試薬体積を送達するための微小流体チップ(例えば、PDMS)
− ロボット式ピペット分取システム
− 試薬を送達するためのチュービングとEWOD界面の接続
− 最終生成物を回収するための自動化方法
− 投入位置として使用されるチップカバー板を貫通する穴
− 液体を回収するためのチュービング、ピペット、または真空の使用
− 試薬投入システム、生成物収集システム、監視システム、制御システム、および放射線遮蔽を備えた、EWODチップをベースにした独立型「放射合成器」。
− 簡単な反応の最適化/探索のためのコンピュータ制御システムの設計(様々に変化する温度、濃度、混合比、反応時間などを含む。)
− 表面吸着を研究しかつチップ上の全ての放射能の行く末を追跡するための(最適化することができる収率および損失を決定するための)、EWODチップと放射能カメラとの一体化
− 選択場所におけるEWODチップ内の追加されたチャネル。
− チップ上のリザーバに化学物質を貯蔵させるための、蒸発の制限または防止。
− チップ上の乾燥有機溶媒からの水蒸気の単離
− 汚れた電極の溶出(例えば、気体または液体による)に役立つチップ上の壁
− 空気または水に感受性のある試薬を保護するための、アルゴンまたはヘリウムが充填されたチャンバの包含
− 乾燥した試薬のオンチップ貯蔵。これは、液体試薬の堆積、それらの乾燥(蒸発)、または純粋な溶媒の液滴を添加することによる合成時の再構成を含んでいてもよい。試薬を予め投入しておくことによって、チップは、放射化学の教育を受けていない個人による使用がはるかに容易になる。
【0047】
上記設計において、1mm×1mm平方の抵抗素子は、蒸発および反応温度まで液滴を加熱するのに使用した。カバー板とチップとの間の100μm(約0.2mm)の隙間により、約100nLの名目上の液滴体積は、数百ナノリットルまでの液滴の処理を可能にする。この長さおよび体積の規模で、全抵抗素子に関する平均温度での簡単な測定を使用したフィードバック制御は、小さな面積の抵抗器にわたる、制御された温度分布を維持することができる。しかし、この小さな面積は、反応体積および処理できた出発材料の量を制限した。
【0048】
上述の実施例は、2種の反応物の第1および第2の液滴の送達について述べているが、第1および第2の反応物は、送達前に一緒に混合することができ、次いで組み合わされた反応物の液滴を、加熱器に移動させるための送達部位に配置することができ、または反応が行われる加熱器上に直接配置できることも考えられる。さらなる代替例として、追加の反応物の液滴を、化学反応で使用される同じ加熱器部位に配置することができ、またこの加熱器部位に移動させることができる。
【0049】
図25に示される別のチップの実施形態に示されるような、また図25(図26)の円26に囲まれた加熱器100の拡大図に示されるような、12mmの全径を有する、より大きな円形加熱器100を組み込んだEWODチップ98の使用では、より大量の生成物を、各加熱器100により発生させることができる(約23μL)。広い加熱面積全体に関する平均温度だけが制御されたままである場合、本質的に異なるホットおよびコールド領域を避けるために、加熱器を、4つの同心状抵抗素子102、104、106、108に分割し、それぞれは、各自の温度のフィードバック制御を備える(図示せず。)。上述のような、最初に記述された加熱器設計44と比較すると、このマルチ素子加熱器は、液滴を中心に置くことができ、液滴が蒸発中に収縮するときにその温度をより均一に維持することができる。
【0050】
より大きなサイズの加熱器100は、より大量のトレーサを生成する処理を可能にする。また、揮発性溶媒を使用する場合、より大きな体積であると液滴の寿命が所与の温度で僅かに延び、それによって、より長く持続する反応が可能になり、または蒸発した溶媒の補充回数が少なくてすむ。
【0051】
マルチチャネル加熱器の制御器/駆動器(図示せず)は、精密な温度で多数の独立したEWOD反応部位を実現し維持するための拡張可能なプラットフォームを提供する。この機器は、EWODチップ上にパターニングされた抵抗マイクロ加熱器に合わせて、特別に設計された。この機器は、低ノイズ、実時間でのゼロ抵抗電流測定および増幅の機能を組み込んでいると共に、自家発電式の増幅型加熱器駆動器に専用ソフトウェアにより制御できるパラメータを与えている。プラットフォームは、同心状加熱器100または空間的に近接してパターニングされた抵抗素子と併せて使用する場合、同じまたは別々のEWODチップ上で、独立した温度での併発反応を可能にし、それと共に、単一反応部位での精密な、空間的に変化する温度プロファイルも可能にする。
【0052】
上記にて論じられた第1の実施形態は、フィードバック制御の測定を行うために、高価なソースメータを使用した。第2のEWODの実施形態98における温度制御回路の利点には、下記の事項が含まれる:
− EWODチップ上での加熱器電極の測定妨害がない。このシステムは、測定を行いながら、無視できるほどの抵抗および電流しか導入しない
− このシステムは、独立して測定を行うことができかつ多数の加熱された反応部位を制御することができる
− このシステムは、高速の測定および制御を可能にする
− このシステムは、精密な温度制御および測定のために、容易に入手可能なデータ収集システムと整合のとれた増幅を行う
− ソフトウェアは、室温での抵抗など、自動的な初期測定を行うことによって、またオフセット電流の調節を行うことによって、新しいチップを較正するように設計される
− ソフトウェアは、デジタルローパスフィルタを組み込んでおり、準実時間測定および制御を実現して平均化によるさらなる安定性が得られるように、それぞれ独立した加熱器から20,000サンプル/秒までの測定を行うことができる
− 回路サイズおよびコストが小さい
EWODベースの放射化学システム用のチップ上に、サンプル、試薬、触媒などを含有する流体溶液を投入するための好ましい動作条件は、下記の通りである:
− 小さな液滴体積(典型的には、0.1から2μL)の送達
− EWODチップへの素早く頻繁な試薬の送達(例えば、蒸発した溶媒の補充のために)
− 長時間にわたる(例えば、試薬を「キット」に入れることができるような)、広く様々な試薬(溶媒、腐食剤など)との適合性
− 相互汚染をなくすための洗浄の必要性を回避するための、また使い易さを目的とした試薬キットの素早い除去および設定を可能にするための、使い捨ての可能性
図27を参照すると、空気圧式駆動流体投入システム120が示されている。このシステムは、試薬と接触している安価な/使い捨て可能な構成要素を利用し、その一方で弁や圧力調節器などのより高価な作動構成要素は、試薬に接触していない。この空気圧式駆動流体作動は、液体を微小流体システム内に投入するために使用される。一実施形態では、流体(液体試薬)122が、密閉チャンバ(例えば、バイアル)などの供給容器124から送達される。2つのチューブがバイアル内に挿入されている。第1のチューブ126は、不活性ガス128を液体上方のスペースに送達するために使用され;一端部が液体試薬122中に浸漬された状態の第2のチューブ130は、試薬を送達するために使用される。加圧された不活性ガス128が容器124に送達されると、この不活性ガスにより密閉容器124内のヘッドスペース132が加圧され、したがって液体が第2のチューブ(送達チューブ)130から押し出される。
【0053】
空気圧式送達システムにより引き起こすことができる、流体の過剰送達を制御する方法として、以下に記述される追加の特徴を使用して、小体積の流体をフラッディングなしで送達することができる。図27に示されるように、EWOD装置は送達チューブ130の上方に位置決めされ(垂直に)、このチューブは、その一方の端部にあるEWOD投入位置60に挿入されており、かつその他方の端部が試薬バイアルに接続されている。全投入システム120はその好ましい向きで図示されているが、その全てが必ずしもEWODの下方に垂直に配置される必要はない。試薬バイアルからEWOD装置に到達するには、流体は、少なくともいくらかは垂直距離を上方に移動しなければならない。そのような配置構成の理由は、EWOD入口ポートの直下の液体カラムに対する下向きの重力によって、装置にフラッディングをもたらす傾向のある表面張力とは反対の対抗する力がもたらされるからである。気体推進圧力は、弁および圧力調節器(図示せず。)を介して試薬バイアル124に供給される。作動したEWOD電極上の容量式感知器134を使用して、流体が装置に到達した時を検出する。追加の液体センサ136は、流体メニスカス138の上昇を確認するために設けることができる。図27は、EWODからある距離だけ離れて位置決めされたセンサ136を示し;このセンサは、EWODにさらに近づけて位置決めすることができ、または送達システムは、センサ136なしで動作することができる。
【0054】
送達システムの別の特徴は、定常圧を試薬バイアル124に加える代わりに、圧力のパルスを加えることである。圧力のパルスは、ポンプ、弁、圧力調節器、流動制御器、またはこれらの組合せなどの1つまたは複数の空気圧式制御構成要素のいずれかを使用して、加えることができる。十分高い圧力のパルスを加えると、チュービング内の液体は上昇し、より高い圧力が下向きの重力に対抗して、正味の上向きの力を生成する。圧力を止めると(ベントし、またはより低い圧力まで下げる。)、重力は正味の下向きの力を生成し、この力によりチュービング内のメニスカス138の上昇を減速させ、最終的には降下させる(毛管力は力のバランスにも関与する可能性があるが、均一な断面のチュービングではメニスカス138の上昇中または降下中は一定のままであり、したがって単に重力の別の相殺作用であると考えられることに留意されたい。)。圧力の揺動によって、メニスカス138をチップの近くに保つことができるが、流体の運動量がどちらの方向(チップに向かう方向またはチップから離れる方向)でも常に低いままになるように揺動位置にある。この動作を図28に示す。
【0055】
この技法の別の重要な特徴は、EWOD 98に到達する前にまたは加熱器100上に位置決めされる前に、EWOD装置で液滴を感知することである。いくつかのメカニズム、例えば電気的、化学的、電気化学的、熱的、光学的なメカニズムなど、またはこれらの組合せを、感知のために使用することができる。十分な量の液体がEWOD装置上に位置決めされたことが感知されるや否や、圧力は降下して、重力によって液体は元の位置に引き戻される。上昇する液体の運動量は、1パルス幅を超えて蓄積されないので、体積の行過ぎ量がある場合にはこの行過ぎ量は限定され、フラッディングが回避される。EWODの作動は、EWOD装置上に試薬流体の一部を保持するために、装置上の一部のまたは全ての湿潤領域にわたって開始することができ、一方、流体の残りは元の位置に引き戻される。定量吐出される液滴体積の精度を改善するために、2次的なオンチップ液滴定量吐出器を使用して、投入体積から液滴を生成することができる。
【0056】
この手法には、空気圧式制御の変動に耐え得る固有の堅牢性があり、ならびに送達される液体の湿潤特性などの性質、およびEWODの製作に使用される材料の表面特性がある。まず、空気圧式制御に純粋に依拠しているシステムは、定量吐出される液体の体積に対して限られた精度を有する。システム内の不活性ガス128の圧縮性により、圧力制御弁が作動する時間と圧力が流体の表面で実際に変化する時間との間に著しい遅延がある可能性がある。空気圧式弁の閉鎖の前の(流れを「止める」よう試みているとき)、流体が移動している間の運動量の蓄積は、この遅延時間中の「行過ぎ量」をもたらす可能性がある。この作用は、流体の流れをゆっくりと前方に押し遣るようにゆっくりとした流速を使用することによって回避することができるが、これはしばしば、必要な時間および圧力調節の精度などの因子に関して、ならびに接触角ヒステリシスおよび前縁での接触線ピンニングなどの現象に関して、実用的ではない。さらに、制御されていない流体の流れの可能性は、化学合成でしばしば必要とされる非水性溶液に関してさらに増幅されるが、それはこれらの材料が、水よりも、EWOD装置をさらに湿潤させることができるからである。EWOD装置への液滴の導入の後、液滴体積が増大するにつれ、湿潤液滴は、より大きな表面張力を経験し(界面の長さに比例する。)、その結果、液体はチップ内に引っ張られ、したがってチップに送達される流体の逸脱をもたらす可能性のある正のフィードバックがもたらされる(フラッディングと呼ばれるプロセス)。その結果、多くの既に利用可能な微小流体システムは、液体の流れの開始および停止に関するさらに高い精度を実現するために、オンチップまたはオフチップ液体弁を用いる。しかし、オンチップ弁は、EWODシステムでは利用可能でなく、オフチップ液体弁は、高価であると共に使い捨てできず、使用するたびに清浄化する必要があると考えられる。
【0057】
したがって、使い易さを高めかつ操作者が放射線に曝されないようにするために、EWODチップへの試薬の送達を自動化することが望ましい。多くの方法は、液体を試薬リザーバからチップにポンプ送出するために存在する。課題は、当初の気体が送達システムから除去された時、および液体が所望の場所に到達する時を決定することである。精確な計量ポンプおよびシステム幾何形状の知識は、送達制御を改善するのに有益にすることができるが、揮発性溶媒の使用は、液体メニスカスの正確な位置と、加熱器位置に到達する液滴サイズとに、不確定性も導入する。蒸発は、針/チュービング/などの端部からEWODチップの開放スペース内に生じ;単位液滴体積のかなりの割合が、何分以内に蒸発する可能性がある。したがって、液体の実時間感知が望ましい。
【0058】
液体感知は、キャパシタンスを測定することによってEWODチップで実現できることが、他者により提案されているが、これらの技法は、高解像度CCDカメラまたは高価なキャパシタンスメータを使用した光学的観察も必要とする。本明細書には、大幅に単純化されたハードウェアおよびソフトウェアを使用する容量式感知技法が開示されている。この実時間液体感知システムは、単一抵抗器以外の追加のハードウェアを、既に使用されているEWODチップまたは制御システムに付加する必要なく、EWODチップ上の液体を感知し、定量し、同定するように設計されている。測定は、高い信号対雑音比およびピコリットル程度の細かい体積精度で測定信号が抽出されるように、AC信号および位相ロックループ技法を使用して行われる。
【0059】
図32および図33に示されるようなEWOD制御システム140では、信号発生器142および増幅器144が高電圧(100V乃至200V)信号(1kHz乃至20kHz)を発生させる。個々にアドレス可能な継電器は、この電圧を、所望の電極に選択的に印加して流体を移動させる。フィードバックシステムで感知を行うために、1つの小さな抵抗器146(約1kΩ)が制御回路のアース線に付加され、キャパシタンスを直接測定する代わりに抵抗器の両端間の電圧が測定される(図32)。この抵抗器は、液体の端から端までかかる電圧を、目に見えるほどに変化させない。キャパシタンスの測定を行うには、測定が望まれる部位でEWOD電極を活性化させる(AC信号で)。外部抵抗器の両端間の位相外れ電圧信号は、活性EWOD電極の部位で液体の体積が決定されるように、アナログ−デジタル変換器を介して測定される。位相ロックループ(参照として非増幅正弦波形信号を使用する。)は、所望の信号を抽出する。平行板キャパシタとしてこのシステムを近似させると(図33参照)、信号は、定数に、液体で覆われた電極面積の何分の1に線形比例する項を加えたものであり、そこから体積は、電極サイズおよび隙間空間がわかっている場合、誘電率から1を引いた値(液体に依存する。)に線形比例するとして決定することができると示すことができる。異なる体積の水およびDMSOの液滴に関して収集されたデータ(CCD撮像を介して測定された。)は、線形関係を確認する。電極が液体で完全に覆われると、信号が飽和し、液滴体積のさらなる増加を検出することができない。
【0060】
アース線上に単一抵抗を挿入する代わりに、2つ以上の部位で同時にキャパシタンスを測定することが望まれる場合、代わりとして所望の個々の高電圧電極線上に抵抗器を挿入することができる。
【0061】
まとめると、EWODチップへの試薬投入を監視するためのこの手法の利点には、下記の事項が含まれるが、それらに限定するものではない:
− EWODシステムへの、最小のハードウェアの付加(単一の精密抵抗器)
− 電圧の測定は、全ての電極に関し回路の1点で行われるが、液体感知選択性空間精度は、一度に単一電極を活性化するEWODの通常の動作条件によりもたらされる。
− システムは、通常のEWOD動作で使用される印加AC電位によって周波数特定測定が行われるので、測定用に追加の信号発生を必要としない。
− 測定は、問題となっている狭い周波数帯外の全てのノイズを本質的にフィルタリング除去するロックイン増幅技法に基づく。したがってこのシステムは、ドリフト、60Hzノイズ、および接地ループなどの主に関係するノイズ要因の影響を受けない。
− 低ノイズ設計により、容易に入手可能な16ビットデジタイザを使用してかつ低ノイズ増幅を組み込むことなく、ピコリットル程度に少ないEWODチップ上への液体体積の精確な測定が可能になる。
− システムの応答性(10nlに関して1ms程度に速い精確度)および精確度(100msの応答時間に関して1ピコリットルまで少ない)は、ソフトウェアを使用して、容易に調節することができる。
− ソフトウェアは、液体の存在を非常に素早く示すことができ、EWOD上で行われる化学反応に関して多くの実用的用途があり、次いでこのソフトウェアは、必要に応じてかつ利用可能な時間に応じて体積測定および液体同定のその精確度を上げることができる。
【0062】
上述の内容は、[18F]FNBおよび[18F]FDGを合成するための方法である。どちらの場合も、次のステップに進む前に、液滴を完全に乾燥し、すなわち溶媒を蒸発させるいくつかのステップがある。しかし、全ての液体を蒸発させる場合、加熱器が位置付けられているチップアセンブリの底部からチップアセンブリの上面(すなわち、カバー板58)までの熱伝導経路は、破壊される。その面結果、上面は、制御された温度よりも実質的に低い。したがって最上部にある任意の固体または液体残渣は、底部にあるものとは異なる温度プロファイルを経験することになる。これは、[18F]フッ化物乾燥などを、いくらか信頼性のないものにする可能性がある。
【0063】
より均一で制御可能な温度を確実にするために、完全な蒸発が決して生じないよう合成プロセスを修正した。例えば、[18F]フッ化物を乾燥するプロセス中、MeCNの新しい液滴を連続的に添加して(次いで加熱器部位に移送した。)、蒸発した分を補充した。一実施例では、新鮮な液滴を5分間にわたり10秒乃至20秒ごとに投入した。[18F]FDGおよび[18F]FTAGの放射合成は首尾良く行われ、その収率は従来の合成手法に匹敵するものであり、この修正された乾燥プロセスは、微量の水の除去および反応性[18F]フッ化物錯体を確実にするのに成功したことが提案されている。
【実施例3】
【0064】
材料および特徴付け:無水アセトニトリル(MeCN、99.8%)、無水ジメチルスルホキシド(DMSO、99.9%)、炭酸カリウム(99%)、PET撮像用マンノーストリフレート、および4,7,13,16,21,24,−ヘキサオキサ−1,10,ジアザビシクロ(8.8.8)ヘキサコサン98%(K2.2.2)を、Sigma−Aldrichから得て、さらに精製することなく受け取ったままの状態で使用した。1N HCl(保証済み、Fisher Chemicals)を、Fisher Scientificから購入し、受け取ったままの状態で使用した。合成は、4つの同心状円形加熱器電極102、104、106、108を有するEWODチップ98で行った(図25、図26)。
【0065】
合成:担体が付加されない[18F]フッ化物イオンを、RDS−112サイクロトロン(Siemens)を使用して97%の18O濃縮水に11MeVのプロトンビームを照射することにより発生させた。水性[18F]フッ化物イオン50μL(20mCi)を、MeCN:HO(98:2v/v)中にK2.2.2(26mM)およびKCO(7mM)を混合した40μLの混合物に添加した。マンノーストリフレート(5mg;0.01ミリモル)を、無水DMSO(100μL)に溶解して、104mMの濃度を得た。[18F]フッ化物の混合物(2μL)を、カバー板58の縁部にある専用の投入位置60を通してEWODチップ98上にピペット分取し、電気湿潤力を介して加熱器100に移送した。この投入プロセスを、さらに3回繰り返した。8μLの[18F]フッ化物混合物を、専用のEWOD加熱器100上で、105℃で徐々に蒸発させ、次いでさらに3分間加熱した。さらに8μLの[18F]フッ化物混合物を投入し、前述と同じ様式で蒸発させた。[18F]フッ化物混合物を、5滴のMeCN(3μL)を第1の投入位置60に通して加熱器100の部位内に移送することにより、共沸蒸留を介して乾燥させ、105℃で3分間加熱した。この乾燥ステップを、さらに2回繰り返した。マンノーストリフレートをDMSO(2μL;10mM)に溶かしたもの2滴を、第2の投入位置60に通してEWODチップ98上にピペット分取することにより、相互汚染を回避した。次いで6滴のMeCN(3μL)を投入し、加熱器100に移送して、フッ素化反応を開始させた。反応液滴を、15分間にわたり室温から120℃に徐々に加熱した。4滴のHCl(2.5μL;1N)を粗製[18F]FTAGの液滴に添加し、この組合せを加熱器100の領域に移送して、加水分解反応を行った。反応液滴を、90℃で10分間加熱した。合成後、カバー板58を除去し、粗製[18F]FDG生成物を、HO 30μLを使用して抽出して放射性TLC分析およびカートリッジ精製に供した。粗製[18F]FDGを、TLCシリカプレート上にスポットし、95:5のMeCN/HO溶媒混合物で展開した。[18F]FDGおよび未反応の[18F]フッ化物の組成パーセントを、放射性TLC(MiniGITA star、Raytest)を使用して分析した。放射標識の変換効率は46%であることが分析され、加水分解効率は100%であった。
【0066】
カートリッジ精製:EWOD微小流体チップ98上で合成された、粗製[18F]FDGの微小液滴20を、マイクロPET撮像で使用される最終生成物の希釈が回避されるように修正が加えられた、精製カートリッジを使用して精製した。市販の精製カートリッジは、マクロスケール合成に適した樹脂280mgから数グラムと、サンプル体積数ミリリットルとからなり、したがって、上記手順で発生する微小体積用には設計されていない。EWODチップ上で合成された単回用量分のPETプローブは、粗製サンプルの数マイクロリットルからなり、標準カートリッジ内の大量の樹脂中で失われる可能性があった。したがって、特注の精製カートリッジを、50乃至100メッシュサイズのAG−50W−X4(4mg)およびAG11 A8(4mg)樹脂(BioRad Laboratories)と、粒度50μm乃至300μmの中性アルミナ(10mg)(Waters)とを、3.175mmのIDポリウレタンチュービングに充填することによって調製した。樹脂は、バーブ・ツー・ルアー・アダプタを備えた2つのポリエチレンフリット(20μmの孔径)の間に挟んだ。カートリッジを、まず、重力滴下により水(1mL;18MΩ)で調整した。水に溶かした粗製生成物30μLをピペット分取し、1mLの注射器を使用して圧力を加えることによりカートリッジ内を通過させた。次いで水30μLを使用してカートリッジをフラッシュした。最初のカートリッジ精製の後に収集されたサンプル溶離剤を、TLCプレート上にスポットし、その放射化学純度は、放射性TLCによって85%であることがわかった。したがって、[18F]FDG混合物を、上述と同様の様式で、中性アルミナ(50g)のみ充填された第2の小型化カートリッジ内に通過させた。第2のカートリッジ精製後の化学純度を、放射性TLCを使用して分析し、99%であることがわかった(図29)。
【0067】
次いで精製された生成物を、マウスに注射してマイクロPET撮像を行い、得られた画像は、従来の手段により生成された[18F]FDGが注射されたマウスで撮影された画像に一致していた。
【実施例4】
【0068】
DMSOは、DMSOの低い蒸気圧および除去の難しさが原因で、[18F]FDGのマクロスケールの放射合成で一般に使用されていない。高い温度(トレーサに損傷を与える可能性がある。)および長い時間(かなりの放射能減衰をもたらす。)は、蒸発による除去を用いる場合に必要である。カートリッジを使用することもできるが、前臨床撮像において特に問題となる可能性のある、最終体積のかなりの増加をもたらす。一方、DMSOは、広範な有機化合物の高い溶解度、高い分極可能性、およびより高い温度で化学反応を行う能力(その高い沸点により)をもたらす。本明細書に記述される本発明の特徴を組み込んだEWODチップ98を使用して、DMSO中の担体が付加されない添加[18F]フッ化物によるマンノーストリフレートの信頼性ある放射性フッ素化およびその後の酸加水分解は、[18F]FDGの生成に関して首尾良く行われることを実証した。典型的な放射性フッ素化反応中にDMSO 2μL乃至15μLが使用される微小液滴放射合成では、大部分のDMSOが、反応の10分後に120℃で蒸発する。その後、酸を粗製中間体に添加して加水分解反応を行うことにより、定量的加水分解効率を有する[18F]FDGをもたらした。この結果は、反応液滴中の残留DMSOが、加水分解反応にもマウスのマイクロPET撮像にも影響を及ぼさないことを示した。
【実施例5】
【0069】
放射化学以外の化学反応に関するプロセスおよびEWODチップ98の有用性を実証するために、揮発性有機溶媒中での簡単な化学合成(放射性同位元素を用いない。)を、EWODチップを使用して行った。EWODチップの「開放」構造に起因して、有機溶媒のマイクロリットルの液滴は、特に高温で非常に素早く蒸発し、その後、化学反応を引き起こすことができる。溶媒が蒸発する前に反応を進行させるのに利用される手法は、マイクロリットル体積の溶媒が投入部位60から反応部位100に移送されるように、電気湿潤メカニズムを使用して、反応部位に新しい溶媒液滴を連続的に補充することであった。修正が加えられたエーテル化反応は、アセトニトリル(MeCN;bp.82°C)中1−ナフトールとジブロモブタンとの間で行われ、その結果、1−(4−ブロモブトキシ)ナフタレンが得られた。反応を図30に概略的に示す。この化学合成では、60℃で3分間、MeCN中で、1−ナプトール(74mM;2μL)を最初にKCO(250mM;1μL)と反応させた。MeCNを反応液滴に連続的に添加して、液相反応を維持した。その後、ジブロモブタンをMeCN(3.7M;1μL)に溶かした溶液を反応部位に添加し、置換反応を60℃で5分間行った。
【0070】
5分後、カバー板を除去し、粗製生成物を、MeCNを使用して抽出した。Pと標識した粗製生成物を、出発材料(Sと標識された;1−ナプトール)と共にTLCプレート上にスポットした(図31)。TLCプレートを、ジクロロメタン/ヘキサン(2:1v/v)溶媒混合物を含有する溶媒チャンバ内で展開した。反応の進行を、UV光を使用したTLC染色の追跡を介して決定した。TLC分析に基づいて、EWODチップ上の置換反応は1−(4−ブロモブトキシ)ナフタレンをもたらし、これは、R値が0.9の新しいスポットとして現れたものであるが、未反応の1−ナフトールは、R値が0.2であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小化学反応を行う方法において、
誘電体上の電気湿潤装置(EWOD)を提供するステップであって、第1の基板の第1の表面に沿って1つまたは複数の電気的に画定された流体経路を有する第1の基板であって、各流体経路は多数の個別の電極パッドを含み、隣接する電極パッドは非導電性スペースによって互いに切り離されており、前記多数の導電性パッドのそれぞれは、そこに取り付けられた電気伝導性の線を有し、各導電性の線は、前記線が取り付けられている導電性パッドに電気信号を送出するために設けられて、前記流体経路に沿って流体液滴の電気的に指向された移動をもたらすようになされており、非導電性障壁によって電極パッドから離されている、第1の基板、
前記1つまたは複数の電気的に画定された流体経路上にまたは前記流体経路に隣接して位置付けられた、1つまたは複数の流体送達部位、および、
前記第1の基板上で、前記電気的に画定された流体経路に沿って位置付けられた、1つまたは複数の反応部位または加熱器部位を含み、
前記電気的に画定された流体経路は、1つまたは複数の流体送達点から前記1つまたは複数の反応部位または加熱器部位に至る、ステップと、
前記流体送達部位の1つに、液体担体中に第1の化学反応物の液滴を配置するステップであって、前記送達部位は、前記1つまたは複数の加熱器部位にありまたは前記加熱器部位とは間隔を空けて配置されている、ステップと、
前記液滴が、前記加熱器部位から間隔を空けて配置された送達部位に配置された場合、前記流体経路に隣接する前記隣接導電性パッドに順次電界を提供して、前記液滴を前記流体送達点から前記加熱気部位に移動させるステップと、
前記流体送達部位の1つに、液体担体中に第2の化学反応物の液滴を配置するステップと、
前記流体経路に隣接する前記隣接導電性ブロックに順次電界を提供して、前記第2の反応物の前記液滴を前記流体送達点から前記加熱器部位に移動させるステップと、
前記組み合わせた第1および第2の反応物を加熱して、前記第1および第2の反応物の間で化学反応させることにより、所望の中間体または最終生成物を形成するステップと、
前記所望の中間体または最終生成物をさらに反応させまたは回収するステップとを含む、方法。
【請求項2】
第2の基板は前記第1の基板上に位置決めされており、前記第2の基板は、前記第1の基板と前記第2の基板との間に画定されたスペースを有する状態で前記第1の基板に平行に位置決めされており、前記第2の基板は、導電性であり、または前記画定されたスペースに面し前記第2の基板の表面をコーティングする電気伝導性被膜を有し、前記電気伝導性被膜コーティングは電位を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の反応物の前記液滴を前記加熱器部位で加熱して、前記第2の化学反応物の前記液滴を添加する前に蒸発によって前記液体担体を部分的にまたは完全に除去する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の反応物または前記液体担体の追加の液滴を、前記第2の化学反応物の前記液滴の添加前に前記加熱器部位に移送し、前記第1の反応物の前記追加の液滴を、先に送達した前記第1の反応物の液滴の蒸発前、部分的な蒸発後、または蒸発完了後のいずれかで前記加熱器に移送する、請求項1乃至3に記載の方法。
【請求項5】
液体担体中の第2の化学反応物の前記液滴を、先に送達した前記第1の反応物の液滴の蒸発前、部分的な蒸発後、または蒸発完了後のいずれかで前記加熱器部位上で前記第1の反応物と組み合わせる、請求項1乃至4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の反応物の前記1つまたは複数の液滴と組み合わせた前記第1の反応物を、反応するのに十分な時間加熱して、前記所望の中間体または最終生成物を得る、請求項1乃至5に記載の方法。
【請求項7】
追加の揮発性液体担体を、前記第1および第2の反応物を液体環境で維持するために前記反応中に前記加熱器部位に移送し、部分的なまたは全体的な蒸発を、所望の反応が完了するのに十分な時間が過ぎた後に行う、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
3種以上の反応物を、最終生成物を調製するためにまたは中間体生成物と反応させるために前記加熱器部位に送達する、請求項1乃至7に記載の方法。
【請求項9】
前記1つまたは複数の加熱器部位は、同心状の個別の電気伝導性パッドを含み、個別の電気伝導性パッドのそれぞれには、個別の電気伝導性パッドのそれぞれの温度を独立して制御するために独立して電力が供給される、請求項1乃至8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1種の反応物が放射化学物質である、請求項1乃至9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1種の反応物が18Fを含有する、請求項1乃至10に記載の方法。
【請求項12】
微小化学反応を行う方法において、
誘電体上の電気湿潤装置(EWOD)を提供するステップであって、第1の基板の第1の表面に沿って1つまたは複数の電気的に画定された流体経路を有する第1の基板であって、各流体経路は多数の個別の電気伝導性電極パッドを含み、前記流体経路内の隣接する導電性パッドは非導電性スペースによって互いに切り離されており、前記多数の導電性パッドのそれぞれは、そこに取り付けられた電気伝導性の線を有し、各導電性の線は、前記導電性パッドに電気信号を送出するために設けられ、前記線は前記導電性パッドに取り付けられて、前記電気的に画定された流体経路に沿って流体液滴の電気的に指向された移動をもたらす、第1の基板、
前記1つまたは複数の電気伝導性流体経路上にまたは前記流体経路に隣接して位置付けられた、1つまたは複数の流体送達部位、および、
前記第1の基板上で、前記電気的に画定された流体経路に沿って位置付けられた、1つまたは複数の反応部位または加熱器部位を含み、
前記電気的に画定された流体経路は、1つまたは複数の流体送達点から前記1つまたは複数の反応部位または加熱器部位に至る、ステップと、
前記流体送達部位の1つに、液体担体中に反応物の液滴または化学反応物の混合物を配置するステップであって、前記送達部位は、前記1つまたは複数の加熱器部位にありまたは前記加熱器部位とは間隔を空けて配置されているステップと、
前記液滴が、前記加熱器部位から間隔を空けて配置された送達部位に配置された場合、前記流体経路に隣接する前記隣接導電性パッドに順次電界を提供して、前記液滴を前記流体送達点から前記加熱気部位に移動させるステップと、
前記液滴を加熱して化学反応させることにより、所望の中間体または最終生成物を形成するステップと、
前記所望の中間体または最終生成物をさらに反応させまたは回収するステップとを含む、方法。
【請求項13】
微小化学反応を行うのに使用される装置において、
第1の基板の第1の表面に沿って1つまたは複数の電気的に画定された流体経路を有する第1の基板であって、各流体経路は、前記流体経路から間隔を空けて配置されかつ前記流体経路から電気的に絶縁された多数の導電性電極パッドを含み、隣接する導電性パッドは、非導電性スペースによって互いに切り離されており、前記多数の導電性パッドのそれぞれは、そこに取り付けられた電気伝導性の線を有し、各導電性の線は、前記導電性パッドに電気信号を送出するために設けられ、前記導電性の線は前記導電性パッドに取り付けられて、前記電気的に画定された流体経路に沿って流体液滴の電気的に指向された移動をもたらす、第1の基板と、
前記1つまたは複数の電気伝導性流体経路上にまたは前記流体経路に隣接して位置付けられた、1つまたは複数の流体送達部位と、
前記第1の基板上で、前記電気的に画定された流体経路に沿って位置付けられた、1つまたは複数の反応部位または加熱器部位とを含み、
前記電気的に画定された流体経路は、1つまたは複数の流体送達点から前記1つまたは複数の反応部位または加熱器部位に至る、装置。
【請求項14】
前記第1の基板上に位置決めされた第2の基板をさらに含み、前記第2の基板は、前記第1の基板と前記第2の基板との間に画定されたスペースを有する状態で前記第1の基板に平行に位置決めされており、前記第2の基板は、電気伝導性であり、または前記画定されたスペースに面しその表面をコーティングする電気伝導性被膜を有し、前記電気伝導性の第2の基板は電気接地をもたらす、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記第1の基板の1つまたは複数の部分は、前記第2の基板の1つまたは複数の縁部を超えて延びて、前記1つまたは複数の流体送達部位を提供し、前記流体送達部位は、前記第2の基板の前記1つまたは複数の縁部で導電性流体経路上にまたは前記流体経路に隣接して位置付けられている、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記1つまたは複数の加熱器部位は、個別の電気伝導性パッドを含み、個別の電気伝導性パッドのそれぞれは、個別の電気伝導性パッドのそれぞれの温度を独立して制御するために独立して接続されている、請求項13に記載の装置。
【請求項17】
前記1つまたは複数の加熱器部位は、同心状の個別の電気伝導性パッドを含む、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
少なくとも前記電気伝導性流体経路を覆う疎水性被膜コーティングをさらに含む、請求項13乃至17に記載の装置。
【請求項19】
化学物質を液体担体中に含む送達用液体を保持するための密閉容器であって、加圧された気体を、前記送達用液体の上方にある容器内のヘッドスペースに連続的にまたは周期的に送達するための手段を有する、密閉容器、
前記液体担体中の前記化学物質を、前記密閉容器から、前記密閉容器の上方に位置決めされた送達場所に移送するための、前記密閉容器の最上部から上方に延びるチューブ、および
加圧された気体の供給源、および前記加圧された気体を制御された連続的または周期的様式で前記密閉容器に送達するための手段、
前記液体担体の液滴が前記送達場所または意図された第2の場所に到達したことを検出するための感知手段であって、前記感知手段または第2の感知手段は、任意選択で、所望量以下の前記液体担体が前記意図された第2の場所に到達したことも検出する、感知手段
を含む、前記化学物質の液滴を前記流体送達部位に提供するための流体送達装置をさらに含む、請求項13乃至18に記載の装置。
【請求項20】
化学物質の液滴を化学反応器内の送達場所に提供するための装置において、
化学物質を液体担体中に含む送達用液体を保持するための密閉容器であって、加圧された気体を、前記送達用液体の上方にある容器内のヘッドスペースに連続的にまたは周期的に送達するための手段を有する、密閉容器、
前記液体担体中の前記化学物質を、前記密閉容器から、前記密閉容器の上方に位置決めされた送達場所に移送するための、前記密閉容器の最上部から上方に延びるチューブ、および、
加圧された気体の供給源、および前記加圧された気体を、フラッディングを防止するのに十分に制御された連続的または周期的様式で前記密閉容器に送達するための手段、
前記液体担体の液滴が前記送達場所または意図された第2の場所に到達したことを検出するための感知手段であって、前記感知手段または第2の感知手段は、所望量以下の前記液体担体が前記意図された第2の場所に到達したことも検出する、感知手段を含む、装置。
【請求項21】
前記感知手段は、チュービング内の、前記液体担体のカラムの上部にあるメニスカスを検出するためのセンサを含む、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記感知手段は、前記化学反応器内の感知側の電気インピーダンスの変化を検出し、インピーダンスの前記変化は、前記化学反応器のセンサ部位に存在する前記液体担体または前記液体担体中の前記化学物質の定められた量に相関している、請求項20に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図19D】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公表番号】特表2013−508129(P2013−508129A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534166(P2012−534166)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/002756
【国際公開番号】WO2011/046615
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(506115514)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (87)
【Fターム(参考)】