説明

放射線作業管理装置、基地局および放射線作業管理プログラム

【課題】放射線量を計測した位置を正確に計測すること。
【解決手段】本発明にかかる放射線作業管理システムは、基地局200〜270が感度の異なる受信部を有し、安定して受信可能な受信部を選択して、放射線作業管理装置100からのインパルス電波を受信すると共に、監視管理サーバ300が、各基地局200〜270のインパルス電波の受信時間に基づいて、放射線作業管理装置100の位置を算出し、算出した位置と被爆線量の計測結果とを対応付けて記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被爆線量を計測する放射線作業管理装置、基地局および放射線作業管理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、原子力発電所などの安全性を確認・調査するために、作業員は、発電所内の放射線量を定期的に計測している。また、作業者の負担を軽減し、計測結果の人為的ミスを防止するために、放射線量を計測した場合に、PHS(Personal Handyphone System)の位置決め機能を利用して、計測した放射線量と計測した位置とを対応付けて管理する試みもなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
PHSの位置決め機能は、PHSが各基地局(各基地局の位置は既知)とデータ通信を実行して、PHSから最も近い基地局を判定し、判定した基地局の位置をPHSの位置として判定している。
【0004】
【特許文献1】特開2002−365366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術では、放射線量を計測した位置を正確に計測することができないという問題があった。
【0006】
例えば、発電所内で電波を送信して位置を計測する場合に、発電所内のコンクリート厚などによっては、電波が反射されてしまい、放射線量を計測した位置を正確に計測することができない場合があった。また、PHSによる位置決め機能は、各基地局の内、PHSに最も近い基地局の位置を、PHSの位置として判定するので、PHSのおよその位置しか計測することができなかった。
【0007】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、放射線量を計測した位置を正確に計測することができる放射線作業管理装置、基地局および放射線作業管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この放射線作業管理装置は、電波を複数の基地局に送信する電波送信部と、前記基地局に送信をした電波の受信結果を前記基地局から取得し、受信した受信結果に基づいて、前記基地局に送信する電波の強度を調整する電波強度調整部と、被爆線量を計測する放射能計測部と、前記放射能計測部が計測した被爆線量を前記基地局に送信する被爆線量送信部とを有することを要件とする。
【発明の効果】
【0009】
この放射線作業管理装置によれば、電波を利用して電波を基地局に送信し、基地局に送信をした電波の受信結果を取得する。そして、取得した受信結果に基づいて、基地局に送信する電波の強度を調整すると共に、計測した被爆線量の計測結果を送信するので、各基地局は放射線作業管理装置からの電波を正確に受信することができ、各基地局の受信時刻から放射線作業管理装置の位置測定を行う装置は、放射線量を計測した位置を正確に特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る放射線作業管理装置、基地局および放射線作業管理プログラムの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
まず、本実施例1にかかる放射線作業管理システムの構成について説明する。図1は、本実施例1にかかる放射線作業管理システムの構成を示す図である。この放射線作業管理システムは、一例として、放射線作業利用施設(例えば、原子力発電所)1内に構築されており、放射線作業管理装置100と、基地局200〜270と、監視管理サーバ300とを有する。
【0012】
このうち、放射線作業管理装置100は、通信ベースバンド部130と通信RF部140と、アンテナからなる電波送信部を備え、電波送信部からインパルス電波を基地局200〜270に送信することにより、監視管理サーバ300に放射線作業管理装置100の位置(座標)を計測させる装置である。
【0013】
また、放射線作業管理装置100は、周辺の被爆線量(放射能の量)を計測し、計測結果を基地局200〜270に送信する。被爆線量を送信するタイミングは、例えば、電波送信部がインパルス電波を基地局200〜270に送信するタイミングにあわせて送信しても良い。作業者は、放射線作業管理装置100を携帯して放射線利用施設1内を移動することで、放射線利用施設1内の各位置の被爆線量を計測する。
【0014】
基地局200〜270は、受信感度の異なる複数の受信部(受信感度の高い受信部と受信感度の低い受信部)を有し、安定して受信可能な受信部を選択して、放射線作業管理装置100からのインパルス電波を受信し、インパルス電波を受信した時間を監視管理サーバ300に通知する装置である。また、基地局200〜270は、放射線作業管理装置100から被爆線量の計測結果を受信した場合には、受信した計測結果を監視管理サーバ300に送信する。
【0015】
ここで、放射線利用施設1内は、コンクリートに囲まれているので、外部に電波(インパルス電波等)が漏れにくくなり、壁減衰が大きくなる。そのため、他の無線システムに対する干渉が小さいことから、通常の屋内よりも大きな出力による通信を行う可能性が高い(放射線作業管理装置100から出力されるインパルス電波が強い)。
【0016】
したがって、遠くまで電波を飛ばせるため、基地局間隔を広く取ることが出来ると共に、天井高さが高く、壁と壁との間隔も離れているような原子力施設内の空間であっても、電波を端から端へ飛ばすことが可能となる(放射線作業管理装置100が広範囲にわたって移動しても、各基地局がインパルス電波を放射線作業管理装置100から受信することができるので、監視管理サーバ300は、広範囲にわたって放射線作業管理装置100の位置計測を行うことができる)。
【0017】
しかしながら、インパルス電波を送信する放射線作業管理装置100と、基地局との距離が近い場合、電波が大きすぎて基地局の入力アンプが飽和してしまい、基地局は、インパルス電波を受信した時間を正確に判定することが出来ず、各基地局がインパルス信号を受信した受信時刻に基づいて放射線作業管理装置100の位置を算出する手法では、放射線作業管理装置100の位置を正確に測位することができなくなる。受信時刻に基づいて位置を算出する手法は後述する。
【0018】
あるいは、コンクリートから反射する反射波の強度が大きいため、インパルス電波の直接波のみではなく、遅延の大きな反射波も最小受信感度以上にしか減衰されないため、基地局の受信機で本来検出すべきでない反射波を誤検出してしまう。
【0019】
インパルス電波の特徴は、直接波と反射波がパルス分離できるため、最初に届いた直接波のみ検出すればよく、マルチパスに強いというものであったが、遅延の大きな反射波が次の正規のインパルス電波までずれて遅れてしまうと、パルス分離できなくなってしまい問題となる。
【0020】
したがって、本実施例1にかかる基地局200〜270は、受信感度の異なる受信部を有し、放射線作業管理装置100からのインパルス電波を安定して受信できたほうの受信部を選択する。例えば、放射線作業管理装置100と基地局との距離が近い場合には、受信感度の低い受信部を選択し、放射線作業管理装置100と基地局との距離が遠い場合には、受信感度の高い受信部を選択する。
【0021】
なお、基地局200〜270のうち、一部の基地局が基準となるインパルス電波(基準信号)を各基地局に送信することで、各基地局は基準信号を基にして、各基地局の時間が一致するように時間を調整する。以下の説明において、基準信号によって調整された時間を基準時間と表記する。本実施例1にかかる放射線作業管理システムでは、一例として、基地局240が基準信号を各基地局200〜230、250〜270に送信するものとする。
【0022】
監視管理サーバ300は、放射線作業管理装置100の位置を算出すると共に、算出した位置と放射線作業管理装置100が計測した被爆線量とを対応付けて管理する装置である。
【0023】
放射線作業管理装置100の位置を算出する場合に、監視管理サーバ300は、各基地局200〜270からインパルス電波(放射線作業管理装置100から送信されるインパルス電波)を受信した時間情報をそれぞれ取得し、OWR−TDOA(One Way Ranging-Time Difference of Arrival)方式によって、位置を算出する。なお、監視管理サーバ300が、放射線作業管理装置100の位置を算出する手法は、OWR−TDOA方式に限定されるものではなく、例えば、TWR−TDOA(Two Way Ranging-Time Difference of Arrival)方式によって位置を算出しても良い。
【0024】
このように、本実施例1にかかる放射線作業管理システムは、基地局200〜270が感度の異なる受信部を有し、安定して受信可能な受信部を選択して、放射線作業管理装置100からのインパルス電波を受信すると共に、監視管理サーバ300が、各基地局200〜270のインパルス電波の受信時間に基づいて、放射線作業管理装置100の位置を算出し、算出した位置と被爆線量の計測結果とを対応付けて記憶するので、被爆線量を計測した位置を正確に計測することができる。
【0025】
次に、図1に示した放射線作業管理装置100の構成について説明する。図2は、本実施例1にかかる放射線作業管理装置100の構成を示すブロック図である。図2に示すように、この放射線作業管理装置100は、放射能検出部110と、放射能計測部120と、通信ベースバンド部130と、通信RF(Radio Frequency)部140と、警報出力部150と、加速度センサ160とを有する。
【0026】
通信ベースバンド部130と通信RF部140とアンテナからなる電波送信部は、各基地局200〜270に対してインパルス電波を定期的に出力する。電波送信部から出力されたインパルス電波は、基地局200〜270によって受信される。
【0027】
放射能検出部110は、放射線作業管理装置100周辺の放射能を検出し、検出結果を放射能計測部120に出力する処理部である。放射能計測部120は、放射能検出部110から検出結果を取得し、放射能が検出された場合に、被爆線量(放射線量)を計測する処理部である。放射能計測部120は、被爆線量の計測結果を通信ベースバンド部130に出力する。
【0028】
通信ベースバンド部130は、放射能計測部120から被爆線量の計測結果を取得した場合に、取得した計測結果を通信RF部140に出力する処理部である。通信ベースバンド部130は、被爆線量の計測結果を取得する度に、計測結果を通信RF部140に出力する。
【0029】
また、通信ベースバンド部130は、放射能計測部120から被爆線量の計測結果を取得し、取得した計測結果に基づいて、警報音の出力命令を警報出力部150に出力する。例えば、通信ベースバンド部130は、計測結果を取得し、被爆線量の量が閾値を超えていた場合(放射線作業管理装置100を携帯する作業者が危険な場合)に、警報音の出力命令を警報出力部150に出力する。
【0030】
また、通信ベースバンド部130は、加速度センサ160から放射線作業管理装置100の加速度の情報を取得し、取得した加速度の情報に基づいて、作業者の挙動を判定する。例えば、加速度センサ160から加速度の情報を取得し、加速度が閾値を超えていた場合には、作業者が転倒したものと判定し、作業者が転倒した旨の情報を、通信RF部140に出力する。
【0031】
通信RF部140は、通信ベースバンド部130から出力される情報(例えば、被爆線量の計測結果、作業者の挙動の情報)を基地局200〜270に出力する処理部である。また、通信RF部140は、基地局200〜270から送信される各種の情報を受信した場合には、受信した情報を通信ベースバンド部130に出力する。
【0032】
警報出力部150は、ディスプレイまたはスピーカを有し、通信ベースバンド部130から警告音の出力命令を取得した場合に、警報音あるいは警告画像を出力する処理部である。加速度センサ160は、放射線作業管理装置100の加速度を計測するセンサであり、計測した加速度の情報を通信ベースバンド部130に出力する。
【0033】
次に、図1に示した基地局200の構成について説明する。なお、基地局210〜270は、基地局200の構成と同一であるため、ここでは説明を省略する。図3は、本実施例1にかかる基地局200の構成を示すブロック図である。
【0034】
図3に示すように、この基地局200は、送信RF部201と、高感度受信RF部202と、低感度受信RF部203と、通信ベースバンド部204と、タイマ205とを有する。その他の構成は、従来の基地局と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0035】
送信RF部201は、通信ベースバンド部204から出力される各種の情報を放射線作業管理装置100に送信する処理部である。
【0036】
高感度受信RF部202は、低感度受信RF部203の感度よりも高い感度によって放射線作業管理装置100からのインパルス電波を受信する受信部である。高感度受信RF部202は、受信したインパルス電波の情報を通信ベースバンド部204に出力する。
【0037】
低感度受信RF部203は、高感度受信RF部202の感度よりも低い感度によって放射線作業管理装置100からのインパルス電波を受信する受信部である。低感度受信RF部203は、受信したインパルス電波の情報を通信ベースバンド部204に出力する。
【0038】
通信ベースバンド部204は、放射線作業管理装置100からのインパルス電波を安定して受信可能な受信部を選択し(高感度受信RF部202または低感度受信RF部203の一方を選択し)、選択した受信部からインパルス電波を受信して、受信時間を判定する処理部である。通信ベースバンド部204は、受信時間を判定した後に、自装置(基地局200)の識別情報と、受信時間とを対応付けて監視管理サーバ300に出力する。なお受信時間の判定はどのように行っても良いが、例えば、通信ベースバンド部130が通信RF部140から出力されるアンテナの電波受信状態をモニタリングし、インパルス波形の電波が現れた時点の時刻を受信時間と判定する。
【0039】
以下において、通信ベースバンド部204が受信部を切り替える各種の方式について説明する。例えば、通信ベースバンド部204は、はじめに、高感度受信RF部202を選択して、放射線作業管理装置100からインパルス電波を受信し、高感度受信RF部202の入力アンプが飽和した場合に、低感度受信RF部203に切り替えても良い。
【0040】
または、通信ベースバンド部204は、高感度受信RF部202と低感度受信RF部203とを所定の周期で交互に切り替え、各受信部が受信したインパルス電波の波形を比較して、受信部を選択しても良い。
【0041】
例えば、通信ベースバンド部204は、安定時のインパルス電波の波形を記憶しておき、高感度受信RF部202が受信したインパルス電波の波形よりも低感度受信RF部203が受信したインパルス電波の波形の方が、安定時のインパルス電波の波形に類似している場合に、低感度受信RF部203を選択する。
【0042】
一方、通信ベースバンド部204は、低感度受信RF部203が受信したインパルス電波の波形よりも高感度受信RF部202が受信したインパルス電波の波形の方が、安定時のインパルス電波の波形に類似している場合に、高感度受信RF部202を選択する。
【0043】
または、通信ベースバンド部204は、前回選択した受信部を記憶部(図示略)に記憶しておき、記憶部に記憶された情報を基に前回選択した受信部と同じ受信部を選択してもよい。そして、通信ベースバンド部204は、選択した受信部によるインパルス電波の受信が不安定になった場合に、インパルス電波を受信する受信部を他の受信部に切り替えても良い。
【0044】
ところで、通信ベースバンド部204は、放射線作業管理装置100から、被爆線量の計測結果を受信した場合に、受信した計測結果を監視管理サーバ300に出力する。また、通信ベースバンド部204は、放射線作業管理装置100から、作業者の挙動に関する情報を取得した場合には、取得した情報を監視管理サーバ300に出力する。
【0045】
また、通信ベースバンド部204は、基地局240から基準信号を取得した場合に、取得した基準信号に基づいてタイマ205の時間を調整する。タイマ205は、時間情報を通信ベースバンド部204に通知するタイマである。
【0046】
次に、図1に示した監視管理サーバ300の構成について説明する。図4は、本実施例1にかかる監視管理サーバ300の構成を示すブロック図である。図4に示すように、この監視管理サーバ300は、通信処理部310と、記憶部320と、制御部330とを有する。
【0047】
このうち、通信処理部310は、基地局200〜270との間におけるデータ通信を制御する処理部であり、基地局200〜270から受信した情報を制御部330に出力する。
【0048】
記憶部320は、制御部330によって利用される各種の情報を記憶する記憶部であり、例えば、被爆線量管理テーブル320aと、基地局管理テーブル320bとを有する。このうち、被爆線量管理テーブル320aは、放射線作業管理装置100が計測した被爆線量と、放射線作業管理装置100の位置(被爆線量を計測した時点での位置)とを対応付けて記憶するテーブルである。
【0049】
図5は、本実施例1にかかる被爆線量管理テーブル320aのデータ構造の一例を示す図である。図5に示すように、この被爆線量管理テーブル320aは、測定時間と、位置(座標)と、被爆線量とを有する。図5において、測定時間は、放射線作業管理装置100の位置を計測した時間を示し、位置は、放射線作業管理装置100の位置を示し、被爆線量は、被爆線量の計測結果を示す。
【0050】
基地局管理テーブル320bは、各基地局の位置や、インパルス電波を受信した受信時間を管理するテーブルである。図6は、本実施例1にかかる基地局管理テーブル320bのデータ構造の一例を示す図である。図6に示すように、この基地局管理テーブル320bは、基地局識別情報と、位置(座標)と、受信時間とを有する。図6において、基地局識別情報は、各基地局を識別する情報であり、位置は、基地局識別情報に対応する基地局の位置を示し、受信時間は、基地局がインパルス電波を受信した時間を示す。
【0051】
制御部330は、監視管理サーバ300全体を制御する制御部であり、データ管理部330aと、位置算出部330bとを有する。このうち、データ管理部330aは、被爆線量管理テーブル320aと、基地局管理テーブル320bとを管理する処理部である。
【0052】
データ管理部330aは、各基地局200〜270からインパルス電波(放射線作業管理装置100から送信されるインパルス電波)の受信時間を取得した場合には、受信した受信時間を基地局管理テーブル320bに登録する。各基地局200〜270から送信される受信時間には、基地局の識別情報が付加されているので、データ管理部330aは、基地局の識別情報毎に受信時間を登録する。
【0053】
また、データ管理部330aは、各基地局200〜270から、被爆線量の計測結果を取得した場合には、計測結果を測定時間と対応付けて被爆線量管理テーブル320aに登録する。ここで、測定時間は、例えばデータ管理部330aが、被爆線量の計測結果を受信した時間でも良いし、各基地局から送信されるインパルス電波の受信時間を平均した時間でも良いし、位置算出部330bが放射線作業管理装置100の位置を算出した時間でも良い。
【0054】
位置算出部330bは、基地局管理テーブル320bに基づいて、OWR−TDOA方式によって、放射線作業管理装置100の位置を算出し、算出結果を被爆線量管理テーブル320aに登録する(該当する被爆線量と対応付けて登録する)処理部である。図7は、位置算出部330bの処理の一例を説明するための図である。図7に示す例では、2次元の場合の測位を説明するための図であるが、3次元の場合の測位計算は4個以上の基地局から最小2乗法で測位しニュートン法で繰り返し計算すればよい。
【0055】
例えば、位置算出部330bは、時間T1において、基地局A,B,C(基地局A,B,Cは、基地局200〜270のうち、いずれかの基地局)がインパルス電波を受信できた場合、基地局Aと基地局Bとの受信時間の差から双曲線10aが求まる。
【0056】
また、基地局Bと基地局Cとの受信時間の差から双曲線10bが求まる。そして、位置算出部330bは、双曲線10aと双曲線10bとの交点を、時間T1における放射線作業管理装置100の位置(座標)として算出する。
【0057】
次に、本実施例1にかかる基地局200(あるいは、基地局210〜270)の処理手順について説明する。図8は、本実施例1にかかる基地局の処理手順を示すフローチャートである。図8に示すように、基地局200は、インパルス電波を受信し(ステップS101)、入力アンプが飽和したか否かを判定する(ステップS102)。
【0058】
基地局200は、入力アンプが飽和していない場合には(ステップS103,No)、処理を終了する。一方、基地局200は、入力アンプが飽和した場合には(ステップS103,Yes)、高感度受信RF部202を低感度受信RF部203に切り替える(ステップS104)。図8に示した処理は、基地局200が、インパルス電波を放射線作業管理装置100から受信するたびに実行される。
【0059】
上述してきたように、本実施例1にかかる放射線作業管理システムは、基地局200〜270が感度の異なる受信部を有し、安定して受信可能な受信部を選択して、放射線作業管理装置100からのインパルス電波を受信すると共に、監視管理サーバ300が、各基地局200〜270のインパルス電波の受信時間に基づいて、放射線作業管理装置100の位置を算出し、算出した位置と被爆線量の計測結果とを対応付けて記憶するので、被爆線量を計測した位置を正確に計測することができる。
【実施例2】
【0060】
さて、これまで本発明の実施例について説明したが、本発明は上述した実施例1以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。そこで、以下では実施例2として本発明に含まれる他の実施例を説明する。
【0061】
(1)放射線作業管理装置の構成
例えば、上記の実施例1では、各基地局200〜270側が、受信感度の異なる複数の受信部を有し、安定して受信可能な受信部(高感度受信RF部202または低感度受信RF部203)を選択して、放射線作業管理装置100からのインパルス電波を受信していたが、これに限定されるものではない。例えば、各基地局200〜270と、放射線作業管理装置100とがデータ通信を実行して、放射線作業管理装置100側が、送信部から送信するインパルス電波の強さを調整してもよい。
【0062】
ここでは、放射線作業管理装置100と基地局200とを例に説明する。放射線作業管理装置100は、電波送信部が、インパルス電波を基地局200に送信し、基地局200からインパルス電波の受信結果を取得する。
【0063】
放射線作業管理装置100は、電波送信部が、受信結果を取得し、受信した受信結果に安定してインパルス電波を受信できた旨の情報が含まれている場合には、インパルス電波の強度をそのままの状態に保つ。
【0064】
一方、放射線作業管理装置100は受信結果を取得し、受信した受信結果に安定してインパルス電波を受信できなかった旨の情報が含まれている場合には、インパルス電波の強度を調整する。
【0065】
例えば、放射線作業管理装置100は、基地局200の入力アンプが飽和している場合には、インパルス電波の強度を所定強度下げた後に、再度、基地局200にインパルス電波を送信する。一方、放射線作業管理装置100は、インパルス電波が弱い旨の情報を基地局200から取得した場合には、インパルス電波の強度を所定強度上げた後に、再度、基地局200にインパルス電波を送信する。
【0066】
このように、放射線作業管理装置100側が、放射線作業管理装置100から送信するインパルス電波の強さを調整することによって、基地局200〜270は、受信感度の異なる複数の受信部を設ける必要がなくなるので、基地局200〜270のコストを削減することができる。
【0067】
なお、図1に示した放射線作業管理システムでは、一例として、監視管理サーバ300が、各基地局200〜270から送信される受信時間(放射線作業管理装置100から出力されるインパルス電波の受信時間)を基にして、放射線作業管理装置100の位置を算出していたが、放射線作業管理装置100が、測定部(図示略)を有し、かかる測定部が基地局200〜270から受信時間を取得して、放射線作業管理装置100の位置を算出し、算出結果を監視管理サーバ300に送信しても良い。
【0068】
また、放射線作業管理装置100は、測定部を持ち、測定部が測定した放射線作業管理装置100の位置と、放射能計測部120が計測した放射線量とを対応付けて記憶部(図示略)に順次記憶させても良い。
【0069】
(2)基地局の構成
例えば、上記の実施例1では、基地局200〜270は、受信感度の異なる複数の受信部を有し、安定して受信可能な受信部(高感度受信RF部202または低感度受信RF部203)を選択して、放射線作業管理装置100からのインパルス電波を受信していたが、これに限定されるものではない。例えば、基地局200〜270は、受信感度を調整可能な単一の受信部を利用して、インパルス電波を受信してもよい。
【0070】
ここで、実施例2にかかる基地局の構成について説明する。図9は、本実施例2にかかる基地局500の構成を示すブロック図である。図9に示すように、この基地局500は、送信RF部501と、ATT(アッテネータ)502と、受信RF部503と、通信ベースバンド部504と、タイマ505とを有する。
【0071】
このうち、送信RF部501は、通信ベースバンド部504から出力される各種の情報を放射線作業管理装置100に送信する処理部である。ATT502は、通信ベースバンド部504の制御命令に応じて、アンテナから受信するインパルス電波を減衰する処理部である。受信RF部503は、ATT502からインパルス電波を受信し、受信したインパルス電波の情報を通信ベースバンド部504に出力する受信部である。
【0072】
通信ベースバンド部504は、受信RF部503から受信するインパルス電波の情報に応じて、ATT502の減衰率を制御する処理部である。その他の処理内容は、図3に示した通信ベースバンド部204と同様である。
【0073】
例えば、通信ベースバンド部504は、受信RF部503から受信するインパルス電波の情報に基づいて、受信RF部503の入力アンプが飽和していると判定した場合には、ATT502の減衰率を所定値上昇させる。一方、通信ベースバンド部504は、受信RF部503から受信するインパルス電波の情報に基づいて、インパルス電波の強度が所定値未満であると判定した場合には、ATT502の減衰率を所定値下げる。タイマ505は、通信ベースバンド部504に時間情報を出力するタイマである。
【0074】
このように、基地局500が、受信感度を調整可能な単一の受信部を利用して、インパルス電波を受信することで、複数の受信部を用いなくても、インパルス電波を最適に受信することができる。
【0075】
(3)システムの構成等
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0076】
また、図2に示した放射線作業管理装置100、図3に示した基地局200、図4に示した監視管理サーバ300の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。なお、本実施例で説明した各種の処理手順は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。
【0077】
図10は、本実施例にかかる放射線作業管理装置100を構成するコンピュータのハードウェア構成を示す図である。図10に示すように、このコンピュータ(放射線作業管理装置)400は、入力装置401、モニタ402、通信制御装置403、RAM(Random Access Memory)404、ROM(Read Only Memory)405、放射線計測装置406、警報出力装置408、加速度センサ409、CPU(Central Processing Unit)410、HDD(Hard Disk Drive)411をバス412で接続している。
【0078】
ここで、通信制御装置403は、基地局との間におけるインパルス無線通信を行う装置であり、放射線計測装置406は、コンピュータ400周辺の被爆線量を計測する装置である。警報出力装置408は、スピーカなどによって警報を出力する装置であり、加速度センサ409は、コンピュータ400の加速度を計測するセンサである。
【0079】
そして、HDD411には、図10に示した放射能検出部110、放射能計測部120、通信ベースバンド部130に対応した機能を実行する放射線計測プログラム411bが記憶されている。CPU410が、放射線計測プログラム411bを読み出して実行することにより、放射線計測プロセス410aが起動される。
【0080】
ここで、放射線計測プロセス410aは、図2の放射能検出部110、放射能計測部120、通信ベースバンド部130に対応する。また、HDD411は、放射線作業管理装置100に記憶される情報に対応する各種データ411aを記憶する。CPU410は、HDD411に格納された各種データ411aを読み出して、RAM404に格納し、RAM404に格納された各種データ404aを利用して、被爆線量を計測すると共に、インパルス電波を基地局に送信する。
【0081】
ところで、図10に示した放射線計測プログラム411bは、必ずしも最初からHDD411に記憶させておく必要はない。たとえば、コンピュータに挿入されるフレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」、または、コンピュータの内外に備えられるハードディスクドライブ(HDD)などの「固定用の物理媒体」、さらには、公衆回線、インターネット、LAN、WANなどを介してコンピュータに接続される「他のコンピュータ(またはサーバ)」などに放射線計測プログラム411bを記憶しておき、コンピュータがこれらから放射線計測プログラム411bを読み出して実行するようにしてもよい。
【0082】
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0083】
(付記1)電波を複数の基地局に送信する電波送信部と、
前記基地局に送信をした電波の受信結果を前記基地局から取得し、受信した受信結果に基づいて、前記基地局に送信する電波の強度を調整する電波強度調整部と、
被爆線量を計測する放射能計測部と、
前記放射能計測部が計測した被爆線量を前記基地局に送信する被爆線量送信部と
を有する放射線作業管理装置。
【0084】
(付記2)受信感度の異なる複数の受信部と、
付記1に記載の放射線作業管理装置から送信される電波を受信した場合に、受信結果に基づいて前記複数の受信部から前記放射線作業管理装置からの電波を受信する受信部を選択する選択部と
を有する基地局。
【0085】
(付記3)付記1に記載の放射線作業管理装置から送信される電波を受信する受信部と、
前記受信部の受信結果に基づいて、当該受信部の受信感度を調整する調整部と
を有する基地局。
【0086】
(付記4)コンピュータに、
電波を複数の基地局に送信する電波送信手順と、
前記基地局に送信をした電波の受信結果を前記基地局から取得し、取得した受信結果に基づいて、前記基地局に送信する電波の強度を調整する電波強度調整手順と、
放射線計測装置によって計測された被爆線量を取得して記憶装置に記憶する放射線計測手順と、
前記記憶装置に記憶された被爆線量を前記基地局に送信する被爆線量送信手順と
を実行させる放射線作業管理プログラム。
【0087】
(付記5)電波を複数の基地局に送信する電波送信部と、
前記基地局に送信をした電波の受信結果を前記基地局から取得し、取得した受信結果に基づいて、前記基地局に送信する電波の強度を調整する電波強度調整部と、
複数の基地局と放射線作業管理装置との電波の到達時間から放射線作業管理装置の位置を計測する測位部と、
被爆線量を計測する放射能計測部と、
前記測位部が計測した位置と、前記放射能計測部が計測した被爆線量とを監視管理サーバに送信する送信部と
を有する放射線作業管理装置。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本実施例1にかかる放射線作業管理システムの構成を示す図である。
【図2】本実施例1にかかる放射線作業管理装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本実施例1にかかる基地局の構成を示すブロック図である。
【図4】本実施例1にかかる監視管理サーバの構成を示すブロック図である。
【図5】本実施例1にかかる被爆線量管理テーブルのデータ構造の一例を示す図である。
【図6】本実施例1にかかる基地局管理テーブルのデータ構造の一例を示す図である。
【図7】位置算出部の処理の一例を説明するための図である。
【図8】本実施例1にかかる基地局の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】本実施例2にかかる基地局の構成を示すブロック図である。
【図10】本実施例にかかる放射線作業管理装置を構成するコンピュータのハードウェア構成を示す図である。
【符号の説明】
【0089】
1 放射線利用施設
10a,10b 双曲線
100 放射線作業管理装置
110 放射能検出部
120 放射能計測部
130 通信ベースバンド部
140 通信RF部
150 警報出力部
160,409 加速度センサ
200,210,220,230,240,250,260,270,500 基地局
201,501 送信RF部
202 高感度受信RF部
203 低感度受信RF部
204,504 通信ベースバンド部
205,505 タイマ
300 監視管理サーバ
310 通信処理部
320 記憶部
320a 被爆線量管理テーブル
320b 基地局管理テーブル
330 制御部
330a データ管理部
330b 位置算出部
400 コンピュータ(放射線作業管理装置)
401 入力装置
402 モニタ
403 通信制御装置
404 RAM
404a,411a 各種データ
405 ROM
406 放射線計測装置
408 警報出力装置
410 CPU
410a 放射線計測プロセス
411 HDD
411b 放射線計測プログラム
412 バス
502 ATT
503 受信RF部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を複数の基地局に送信する電波送信部と、
前記基地局に送信をした電波の受信結果を前記基地局から取得し、受信した受信結果に基づいて、前記基地局に送信する電波の強度を調整する電波強度調整部と、
被爆線量を計測する放射能計測部と、
前記放射能計測部が計測した被爆線量を前記基地局に送信する被爆線量送信部と
を有する放射線作業管理装置。
【請求項2】
受信感度の異なる複数の受信部と、
請求項1に記載の放射線作業管理装置から送信される電波を受信した場合に、受信結果に基づいて前記複数の受信部から前記放射線作業管理装置からの電波を受信する受信部を選択する選択部と
を有する基地局。
【請求項3】
請求項1に記載の放射線作業管理装置から送信される電波を受信する受信部と、
前記受信部の受信結果に基づいて、当該受信部の受信感度を調整する調整部と
を有する基地局。
【請求項4】
コンピュータに、
電波を複数の基地局に送信する電波送信手順と、
前記基地局に送信をした電波の受信結果を前記基地局から取得し、取得した受信結果に基づいて、前記基地局に送信する電波の強度を調整する電波強度調整手順と、
放射線計測装置によって計測された被爆線量を取得して記憶装置に記憶する放射線計測手順と、
前記記憶装置に記憶された被爆線量を前記基地局に送信する被爆線量送信手順と
を実行させる放射線作業管理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−101861(P2010−101861A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276086(P2008−276086)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(000237156)株式会社富士通アドバンストエンジニアリング (100)
【Fターム(参考)】