説明

放熱スラリー及びそれを用いた電子部品

【課題】電子部品を冷却するための放熱板を不要として、電子機器の大型化を抑制してその電子部品を高効率に冷却することができるとともに安価で容易に作製できる放熱スラリー及びそれを用いた電子部品を提供すること。
【解決手段】膨張黒鉛を主成分とする炭素材、結着材としての熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のエマルション粒子、および分散媒からなる放熱スラリー。前記放熱スラリーを塗布・乾燥してなる放熱層を設けた電子部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品を冷却するための放熱板を不要として、電子機器の大型化を抑制しつつ、その電子部品を高効率に冷却することができる放熱スラリー及びそれを用いた電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トランジスタやIC等の電子部品は通電によって高熱を発するため、電子機器の分野においては、これら電子部品の発熱に対する冷却方法が重要な技術の一つとなっている。電子部品の冷却方法としては、通常、熱伝導性に優れる材料からなる放熱板(ヒートシンク)を電子部品の発熱面に取り付ける方法が一般的である(特許文献1)。更に、放熱フィンを冷却ファンにて空冷する方法もある。
【0003】
しかしながら、近年では電子機器の小形・軽量化を達成するべく、その薄形化および高密度実装化が急速に進められており、そのため、放熱板を実装するための十分なスペースを確保することができないという問題点があった。即ち、電子部品を適切に冷却するためには、放熱板を大きくする必要があり、その分、電子機器全体としての大型化を招く。その一方、放熱板を小さく構成したのでは、放熱効率が低下して、電子部品を効率的に冷却することができない。
【0004】
特許文献2では電子部品の表層にダイヤモンド膜、ダイヤモンド状カーボン膜を形成する方法が示されている。しかしながら、特許文献2の方法では膜を形成するのに特殊な装置が必要なため、電子部品のコストが上昇してしまうとともに形成できる膜厚が薄いために十分な放熱性が得られない欠点があった。
【0005】
特許文献3では絶縁材部の内層に熱伝導性を有するカーボンシートが積層状に設けられた電子部品が示されている。しかしながら、特許文献3の方法では以カーボンシートが高価なため、カーボンシートを使用すると電子部品の価格が上がってしまう問題があった。
【0006】
特許文献4では弾性を有するエマルションゴム中に膨張黒鉛を均一に分散させた黒鉛落ちのない熱伝導シートが示されている。しかしながら、ゴムを結着材とした場合には、可撓性は有するものの、結着性が十分ではないという問題があった。
【特許文献1】特開平7−235781号公報
【特許文献2】特開2007−157835号公報
【特許文献3】特開2007−073654号公報
【特許文献4】特開2006−137860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、電子部品を冷却するための放熱板を不要として、電子機器の大型化を抑制しながら、安価かつ容易で高効率に冷却することができる材料及びそれを用いた電子部品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、特定炭素材と結着材および分散媒からなる放熱スラリーを用い、さらにこの放熱スラリーを塗布、乾燥させた電子部品を用いると上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)膨張黒鉛を主成分とする炭素材、結着材としての熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のエマルション粒子、および分散媒からなる放熱スラリー。
(2)結着材が熱硬化性樹脂のエマルション粒子である(1)記載の放熱スラリー。
(3)分散媒が水性媒体である(1)または(2)に記載の放熱スラリー。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の放熱スラリーを塗布・乾燥してなる放熱層。
(5)(4)記載の放熱層を設けた電子部品。
(6)電子部品が、プリント基板、可変抵抗器、スイッチ、エンコーダ、センサ、コネクタからから選ばれたものである(5)記載の電子部品。
(7)放熱層を電子部品の電気絶縁部表面及び/または内部に設けてなる(5)または(6)に記載の電子部品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の放熱スラリーによれば、電子部品を冷却するための放熱板を不要として、電子機器の大型化を抑制しながら、容易で高効率に冷却することができ、カーボン脱落のない放熱層を形成することができ、それを電子部品に設けることで、安価で効率的に熱を放出する電子部品を提供することができる。
【0011】
結着材として熱硬化性樹脂エマルションを用いると、耐熱性が向上し、電子部品を実装する際のハンダの熱にも耐えることができる。
【0012】
分散媒として水性媒体を用いることで、環境面や安全性に配慮したものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳述する。
【0014】
本発明の放熱スラリーには、炭素材の主成分として膨張黒鉛を用いる。膨張黒鉛は、黒鉛を硝酸、硫酸等の化学薬品で処理し、これを1000℃以上の高温で熱処理することで得られ、黒鉛の結晶格子の層間が膨張してフレーク状の粒子になったものである。平均粒子径が0.5〜300μmのものが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。炭素材中における膨張黒鉛の占める割合は、50〜100質量%とすることが好ましく、さらに好ましくは70〜100質量%である。
【0015】
膨張黒鉛以外の炭素材として、カーボンブラックや炭素繊維などを併用することができる。カーボンブラックを併用する場合には、全炭素材中0〜50質量%とすることが好ましく、さらに好ましくは、0〜30質量%の範囲である。また、炭素繊維を用いる場合、全炭素材中0〜10質量%とすることが好ましく、さらに好ましくは0〜5質量%の範囲である。
【0016】
カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、ケッチェンブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、ガスブラック、サーマルブラック、プラズマブラックなどが挙げられ、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、ケッチェンブラックが好ましく、これらの一次粒子径が1〜100nmのものが好ましい。カーボンブラックの形状は粒子状、粉末状など特に制限はないが、好ましくは粉末状がよい。
【0017】
炭素繊維には、ピッチ系炭素繊維やPAN系炭素繊維が挙げられ、いわゆるカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーも含まれる。カーボンナノチューブとしては、炭素のチューブ構造が単一チューブであるシングル型、チューブ構造が二重のチューブであるダブル型、およびチューブ構造が三重以上となっているマルチ型構造を含み、さらに、チューブの一方の端が閉じて他方の端が開いているナノホーン型、一方の端の開口が他方の端の開口よりも大きいカップ型等の形態も含んでいる。
【0018】
本発明の放熱スラリーには、結着材として熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を用いる必要がある。特に、熱硬化性樹脂を用いた場合、耐熱性が向上し、電子部品を実装する際のハンダ熱の耐えることができるので、熱硬化性樹脂が好ましい。一般に熱可塑性樹脂にも熱硬化性樹脂にも分類されない、例えばゴム成分などでは、結着性に劣るため、カーボンの脱落などが生じやすい。
【0019】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、シクロオレフィンポリマー、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン66、ナイロン9T、ナイロン6T、芳香族系ポリアミド、AS樹脂(アクリロ二トリル/スチレン共重合体)、ABS樹脂(アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、液晶ポリエステル等のポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリベンズイミダゾール及びフッ素樹脂およびこれらの共重合変性体からなる群から選ばれる1種、または2種類以上の組み合わせを用いることができる。なかでも、結着性の点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルが好ましい。
【0020】
熱硬化性樹脂として、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、グアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アリルエステル樹脂、フラン樹脂、イミド樹脂、ウレタン樹脂、ユリア樹脂およびこれらの共重合変性体からなる群より選ばれる1種、または2種類以上の組み合わせを用いることができる。なかでも、結着性と耐熱性の点から、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂は、放熱スラリーとして基材に塗布後に硬化させて使用することが好ましい。
【0021】
結着材は、エマルション粒子とする必要がある。エマルション粒子を用いると同量の溶剤可溶型結着材を用いたときに比べて結着力が強くなる傾向があり、より少量の結着材で炭素材料を結着することができる。したがって、得られる放熱層における炭素材の割合を高くでき、より放熱効率が高まる。
【0022】
結着材と炭素材の配合比率は、質量比で90/10〜5/95の範囲とすることが好ましく、70/30〜7/93の範囲がより好ましく、60/40〜10/90がさらに好ましい。結着材の割合が90質量%を超えると、得られる電子部品においては、放熱性を発揮できず、一方、5質量%を下回ると、炭素材料と絶縁材部の各材料間の十分な結着性が得られないことがある。
【0023】
放熱スラリーの分散媒は、結着材成分をエマルション粒子として均一分散することができる限り、有機溶剤系、水性媒体いずれでもよい。有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルスルホルアミド、テトラメチル尿素、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、イソプロパノール、シクロペンチルメチルエーテル、クロロホルム、塩化メチレンが挙げられる。水性媒体とは、水単独、または水と水溶性有機溶媒との混合溶媒である。環境や安全性の点からは、分散媒は水性媒体とすることが好ましい。
【0024】
放熱スラリーは、結着材と炭素材を分散媒に混合し、分散させることで得ることができる。炭素材と結着材の合計固形分比率は、放熱スラリー中の5〜40質量%とすることが好ましく、より好ましくは10〜30質量%である。混合、分散の手段は特に限定されず、ホモジナイザー等の公知の混合装置を用いることができる。
【0025】
放熱スラリーには、必要に応じて濡れ剤を添加してもよい。濡れ剤としては、カルボシキメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、ガゼイン等を挙げることができ、好ましくはカルボシキメチルセルロースがよい。これらの濡れ剤は、炭素材の各材料間の濡れ性を向上させる。配合量としては、結着材、炭素材の合計100質量部に対して0.01〜50質量部が好ましく、より好ましくは0.01〜30質量部、さらに好ましくは0.01〜15質量部である。濡れ剤の混合時期や方法は特に限定されない。
【0026】
本発明のスラリーは、これを電子部品の電気絶縁部の表面または内部に塗布し、乾燥することにより放熱層を形成させて用いる。
【0027】
塗布方法としては、特に制限はないが、スクリーン印刷やドクターブレードによる塗布が挙げられる。特にパターンを塗布する場合にはスクリーン印刷が好ましい。
【0028】
乾燥方法としては、特に制限はないが、熱風乾燥、減圧乾燥、熱減圧乾燥が挙げられる。電子部品を高温にさらさない理由から、熱減圧乾燥が好ましい。
【0029】
放熱層の厚みは、5〜500μmが好ましく、10〜300μmの範囲がより好ましく、50〜250がさらに好ましい。放熱層が5μmより薄いと放熱性能が発揮できず、500μより厚いと電子部品の厚さが厚くなってしまうため、小型化が困難になってしまうためである。
【0030】
電子部品とは、プリント基板、可変抵抗器、スイッチ、エンコーダ、センサ、コネクタ等が挙げられる
【0031】
本発明の放熱層は、電子部品の電気絶縁部の表面及び/または内部に適宜設けて使用する。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、本発明は下記実施例によって何ら限定されるものではない。なお、各種評価は以下の方法によって行った。
【0033】
〔放熱性の評価〕
作製したプリント基板に1kΩの抵抗を実装し、0〜60Vの電圧を印可したときの抵抗の温度を熱電対を用いて測定した。
【0034】
〔結着性の評価〕
コア材作製時の真空プレス後に、ガラスクロス−エポキシ板とプリプレグ間の放熱層で剥離が発生しないかを目視で観察し、真空プレス後にガラスクロス−エポキシ板とプリプレグ間で200g/cmの引張り剥離試験を行なった。目視で剥離が発生せず、剥離試験でも剥離が発生しなかったものを○、目視での剥離は発生しなかったものの、剥離試験で剥離が発生したものを△、目視で剥離発生したものを×と評価した。
【0035】
〔ハンダ耐熱性の評価〕
コア材作製時の真空プレス後に、280℃のハンダ層に20秒ディップして、コア材に膨れや剥がれがないかを目視で観察し、観察後にガラスクロス−エポキシ板とプリプレグ間で200g/cmの引張り剥離試験を行なった。目視で膨れや剥離が発生せず、剥離試験でも剥離が発生しなかったものを○、目視での膨れや剥離は発生しなかったものの、剥離試験で剥離が発生したものを△、目視で膨れや剥離発生したものを×と評価した。
【0036】
〔放熱スラリーの製造〕
(放熱スラリー「A−1」の製造)
結着材としてエポキシ樹脂水性エマルション(ADEKA社製EM−107−50L 固形分濃度50質量%、以下、「EM−107」と呼ぶ。)12.5g、炭素材として膨張黒鉛(日本黒鉛社製CMX、平均粒子径30μm、以下、「CMX」と呼ぶ。)50gをホモジナイザー型分散機に仕込み、全固形分の濃度が15質量%となるように水を加えて混合し、放熱スラリー「A−1」を得た。
【0037】
(放熱スラリー「A−2」の製造)
結着材として「EM−107」12.5g、炭素材として「CMX」25gおよびカーボンブラック(東海カーボン社製#5500F、一次粒子径50nm、以下、「CB」と呼ぶ。)25gをホモジナイザー型分散機に仕込み、全固形分の濃度が15質量%となるように水を加えて混合し、放熱スラリー「A−2」を得た。
【0038】
(放熱スラリー「A−3」の製造)
結着材として「EM−107」12.5g、炭素材として「CMX」25gおよび「CB」25g、濡れ剤としてカルボキシメチルセルロース(以下、「CMC」と呼ぶ。)の2質量%水溶液62.5gをホモジナイザー型分散機に仕込み、全固形分の濃度が15質量%となるように水を加えて混合し、放熱スラリー「A−3」を得た。
【0039】
(放熱スラリー「A−4」の製造)
結着材として酸変性ポリオレフィン水性エマルション(ユニチカ社製TC4010、固形分濃度25質量%)50gを用いた以外は、「A−3」の製造と同様にして放熱スラリー「A−4」を得た。
【0040】
(放熱スラリー「A−5」の製造)
結着材として共重合ポリエステル水性エマルション(ユニチカ社製KZA−3556、固形分濃度30質量%)41.67gを用いた以外は、「A−3」の製造と同様にして、放熱スラリー「A−5」を得た。
【0041】
(放熱スラリー「A−6」の製造)
結着材としてメラミン樹脂水性エマルション(昭和高分子社製ミルベン、固形分濃度25質量%)50gを用いた以外は、「A−3」の製造と同様にして、放熱スラリー「A−6」を得た。
【0042】
(放熱スラリー「A−7」の製造)
結着材としてアクリル-ウレタン樹脂水性エマルション(大成ファインケミカル社製WEM−3008、固形分濃度25質量%)50gを用いた以外は、「A−3」の製造と同様にして、放熱スラリー「A−6」を得た。
【0043】
(放熱スラリー「A−8」の製造)
結着材としてゴム水性エマルション(日本合成ゴム社製Nipol1571C 樹脂固形分45%)13.89gを用いた以外は、「A−2」の製造と同様にして、放熱スラリー「A−8」を得た。
【0044】
(放熱スラリー「A−9」の製造)
結着材として溶剤溶解エポキシ樹脂(ADEKA社製EP−4900、NMP溶媒、固形分濃度50質量%)12.5gに炭素材として「CMX」25gおよび「CB」25gをホモジナイザー型分散機に仕込み、全固形分の濃度が15質量%となるようにNMPを加えて混合し、放熱スラリー「A−9」を得た。
【0045】
(放熱スラリー「A−10」の製造)
結着材として「EM−107」12.5gを用い、炭素材として燐状黒鉛(日本黒鉛社製F#2、平均粒子径150μm)50gをホモジナイザー型分散機に仕込み、全固形分の濃度が15質量%となるように水を加えて混合し、放熱スラリー「A−10」を得た。
【0046】
(放熱スラリー「A−11」の製造)
結着材として共重合ポリエステルUE3500(ユニチカ社製)10gと共重合ポリエステルUE9800(ユニチカ社製)2.5gをトルエン/MEK=8/2(質量比)の混合溶媒37.5gに溶解し、「CMX」25gおよび「CB」25gをホモジナイザー型分散機に仕込み、全固形分の濃度が15質量%となるように前記トルエン/MEK混合溶媒を加えて混合し、放熱スラリー「A−11」を得た。
【0047】
放熱スラリー「A−1」〜「A−11」の組成を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
(実施例1)
得られた放熱スラリー「A−1」をドクターブレードによりガラスクロス−エポキシ板両面に塗布厚み2000μmで塗布、熱風乾燥した後、真空乾燥によりエポキシ樹脂を硬化させ、ロールプレスでカーボン層を片面200μmに厚さを調整した。調整した板両面にプリプレグと銅箔、離型フィルムの順に重ねて真空熱プレスしてコア材を作製した。コア材に感光性フィルムとパターンフィルムを重ねて紫外線で露光し、未露光部分の感光性フィルムを溶解させ、エッチングを施し、回路パターンを形成して両面プリント基板を作製した。
【0050】
(実施例2)
放熱スラリー「A−2」を用いた以外は実施例1と同様にしてプリント基板を作製した。
【0051】
(実施例3)
放熱スラリー「A−3」を用いた以外は実施例1と同様にしてプリント基板を作製した。
【0052】
(実施例4)
得られた放熱スラリー「A−4」をドクターブレードによりガラスクロス−エポキシ板両面に塗布厚み2000μmで塗布、真空乾燥し、ロールプレスでカーボン層を片面200μmに厚さを調整した。調整した板両面にプリプレグと銅箔、離型フィルムの順に重ねて真空プレスしてコア材を作製した。コア材に感光性フィルムとパターンフィルムを重ねて紫外線で露光し、未露光部分の感光性フィルムを溶解させ、エッチングを施し、回路パターンを形成して両面プリント基板を作製した。
【0053】
(実施例5)
放熱スラリー「A−5」を用いた以外は実施例4と同様にしてプリント基板を作製した。
【0054】
(実施例6)
放熱スラリー「A−6」を用いた以外は実施例1と同様にしてプリント基板を作製した。
【0055】
(実施例7)
放熱スラリー「A−7」を用いた以外は実施例1と同様にしてプリント基板を作製した。
【0056】
(実施例8)
放熱スラリー「A−1」をスクリーン印刷により比較例1のプリント基板表面の絶縁部に塗布厚み2000μmでパターンを塗布、熱風乾燥した後、真空乾燥してエポキシ樹脂を硬化させ、ロールプレスでカーボン層を片面200μmに厚さを調整した。
【0057】
(実施例9)
放熱スラリー「A−2」を用いた以外は実施例8と同様にして放熱層を調整した。
【0058】
(実施例10)
放熱スラリー「A−3」を用いた以外は実施例8と同様にして放熱層を調整した。
【0059】
(比較例1)
ガラスクロス−エポキシ板両面にプリプレグと銅箔、離型フィルムの順に重ねて真空プレスした以外は実施例1と同様にしてプリント基板を作製した。
【0060】
(比較例2)
放熱スラリーをガラスクロス−エポキシ板に塗布する代わりに、ガラスクロス−エポキシ板両面に膨張黒鉛シート(松下電器産業社製PGS 厚さ200μm)を配置する以外は実施例1と同様にプリント基板を作製した。
【0061】
(比較例3)
得られた放熱スラリー「A−8」をドクターブレードによりガラスクロス−エポキシ板両面に塗布厚み2000μmで塗布、真空乾燥し、ロールプレスでカーボン層を片面200μmに厚さを調整した。調整した板両面にプリプレグと銅箔、離型フィルムの順に重ねて真空プレスしてコア材を作製した。コア材に感光性フィルムとパターンフィルムを重ねて紫外線で露光し、未露光部分の感光性フィルムを溶解させ、エッチングを施し、回路パターンを形成して両面プリント基板を作製した。
【0062】
(比較例4)
放熱スラリー「A−9」を用いた以外は実施例1と同様にしてプリント基板を作製した。
【0063】
(比較例5)
放熱スラリー「A−10」を用いた以外は実施例1と同様にしてプリント基板を作製した。
【0064】
(比較例6)
放熱スラリー「A−11」を用いた以外は実施例4と同様にしてプリント基板を作製した。
【0065】
(比較例7)
得られた放熱スラリー「A−8」スクリーン印刷により比較例1のプリント基板表面の絶縁部に塗布厚み2000μmでパターンを塗布、真空乾燥し、ロールプレスでカーボン層を片面200μmに厚さを調整した。
【0066】
(比較例8)
放熱スラリー「A−9」を用いた以外は実施例8と同様にして放熱層を調整した。
【0067】
(比較例9)
放熱スラリー「A−10」を用いた以外は実施例8と同様にして放熱層を調整した。
【0068】
実施例1〜10および比較例1〜9における評価結果を表2に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
表2の結果から、プリント基板から発生する熱を放熱しているため、実施例1〜7ではカーボン層を設けない比較例1に比べて明らかに温度の上昇を抑制しており、プリント基板の絶縁部表面にパターン印刷した実施例8〜10に関しても、カーボン層を設けない比較例1に比べて温度の上昇を抑制していることがわかる。従来のカーボンシートを用いた比較例2と比べても同等以上の放熱性があることがわかる。膨張黒鉛を用いた実施例1〜10の方が鱗状黒鉛を用いた比較例5や比較例9よりも放熱性が高いこともわかる。
【0071】
結着性の評価では熱硬化性エマルションを用いた実施例1〜3と6〜10では結着性や耐熱性が優れており、熱可塑性樹脂エマルションを用いた実施例4〜5では結着性は優れており、熱硬化性樹脂エマルションを用いたときよりも耐熱性はやや劣るが、ゴムエマルションを用いた比較例3や比較例7よりも結着性・耐熱性が優れていた。また実施例1〜10は溶剤に溶解したエポキシ樹脂を用いた比較例4や比較例6、比較例9よりも結着性・耐熱性が優れていた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張黒鉛を主成分とする炭素材、結着材としての熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のエマルション粒子、および分散媒からなる放熱スラリー。
【請求項2】
結着材が熱硬化性樹脂のエマルション粒子である請求項1記載の放熱スラリー。
【請求項3】
分散媒が水性媒体である請求項1または2に記載の放熱スラリー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の放熱スラリーを塗布・乾燥してなる放熱層。
【請求項5】
請求項4記載の放熱層を設けた電子部品。
【請求項6】
電子部品が、プリント基板、可変抵抗器、スイッチ、エンコーダ、センサ、コネクタから選ばれたものである請求項5記載の電子部品。
【請求項7】
放熱層を電子部品の電気絶縁部表面及び/または内部に設けてなる請求項5または6に記載の電子部品。


【公開番号】特開2009−88164(P2009−88164A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254671(P2007−254671)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【出願人】(594007308)ユーアイ電子株式会社 (9)
【Fターム(参考)】