説明

放熱部材、それを用いた電子部品、モーター、バッテリー、物品

【課題】発熱する電子部品自体および樹脂成形品にも使用でき、放熱効果の高い放熱部材を得ること。
【解決手段】放熱部材10は、斜方晶系のケイ酸塩鉱物からなるフィラー11と光硬化性樹脂13とを含有する樹脂組成物を硬化させて得られる硬化膜14と;硬化膜14により被膜された金属板15とを備える。放熱部材10は、金属板15と硬化膜14との組み合わせにより、効率のよい優れた放熱効果を有する。なお、「ケイ酸塩鉱物」とは、天然、人工のいずれであってもよく、アルミノケイ酸塩鉱物や、さらには鉱物以外のケイ酸塩化合物をも含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱部材に関し、特に電子デバイス用のヒートシンクに適し、効率のよい放熱が可能な放熱部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子回路の集積化に伴い、電子機器の高性能化、小型化が進んでいる。電子回路の集積化により、電子回路の熱暴走を防ぐために以前にも増して電子機器の熱設計が重要になっている。電子機器の熱設計において、ヒートシンクは重要な放熱部材の1つである。アルミニウム製のヒートシンクでは、放熱効果をより高める方法として、陽極酸化処理をして表面をアルマイト加工する方法が知られている。しかし、アルマイト加工は脱脂処理、水洗および陽極酸化処理とそれぞれの工程毎に浴槽を変える必要がある。また陽極酸化処理で得られる皮膜には微細孔が多数存在し、この微細孔がクラックや腐食の原因となるため、さらに後工程として封孔処理が必要となる。このようにアルマイト加工は、多くの工程を必要として生産性が悪いという問題点がある。
【0003】
またヒートシンクの放熱効果をさらに高めるために、遠赤外線を放射するセラミックスフィラーを含む放熱塗料が知られている(例えば特許文献1参照)。この放熱塗料は、アルコキシド/シラノールのゾル−ゲル反応により製膜するので、180度での焼成が必要である。このように放熱塗料を塗布する際に高温(100度以上)での加熱/乾燥処理が必要な場合、発熱する電子部品自体または樹脂成形品には塗布できない、および、乾燥時間が長く生産性が悪い、という問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−212043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放熱部材、例えばヒートシンクとして使用される金属板(上記のアルマイト加工したアルミニウム等)は、より放熱効果が高いことが要求される。さらに放熱部材は、発熱する電子部品自体および樹脂成形品にも使用できることが要求される。
そこで本発明は、発熱する電子部品自体および樹脂成形品にも使用できる、放熱効果の高い放熱部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行なった。その結果、光硬化性樹脂と斜方晶系のケイ酸塩鉱物のフィラーとを含む樹脂組成物を見出し、この樹脂組成物を金属板に塗布し、光照射により形成する硬化膜に覆われて得られる樹脂被膜金属板(放熱部材)が優れた放熱効果を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明の第1の態様に係る放熱部材10は、例えば図1に示すように、斜方晶系のケイ酸塩鉱物からなるフィラー11と光硬化性樹脂13とを含有する樹脂組成物を硬化させて得られる硬化膜14と;硬化膜14により被膜された金属板15とを備える。
なお、硬化膜は金属板の両面または片面のどちらかを覆っていればよい。また、「ケイ酸塩鉱物」とは、天然、人工のいずれであってもよく、アルミノケイ酸塩鉱物や、さらには鉱物以外のケイ酸塩化合物をも含む。
【0008】
このように構成すると、熱伝導性の高い金属板が発生した熱を吸い上げる役割を果たし、吸い上げられた熱は金属板の内部全体に広がり、硬化膜に伝達される。光硬化性樹脂単体で形成された膜は金属に比べて熱伝導性が劣るが、本願発明の樹脂組成物で形成された硬化膜は、斜方晶系のケイ酸塩鉱物を含有しているため、硬化膜の熱伝導性が高められている。斜方晶系のケイ酸塩鉱物は遠赤外線放射セラミックスとして知られており、効率よく熱エネルギーを遠赤外線に変換し、遠赤外線を外部に放射することで温度を下げる(特許第3085182号公報)。このように、金属板により吸い上げられ、金属板から硬化膜に伝達された熱が硬化膜中に含まれる斜方晶系のケイ酸塩鉱物により効率よく放熱されるため、本願の放熱部材は、優れた放熱効果を有する。この放熱効果は、実施例で示すように、アルマイト加工したアルミニウムよりも高い。また、金属板を備えているため、樹脂組成物のみを塗布して硬化させた場合よりも全体として効率よく放熱することができる。このように、本願の放熱部材は、光硬化性樹脂とケイ酸塩鉱物を含有する樹脂組成物で形成された硬化膜と、金属板との組み合わせにより、高い放熱効果を有する。したがって、樹脂被膜金属板である本願の放熱部材をヒートシンク(放熱のために使われる金属製の板)として使用した場合、従来のヒートシンクよりも高い放熱効果を得ることができる。
また、アルマイト加工では、アルミニウムを酸性溶液中に浸漬させる必要があるが、本願の放熱部材は、樹脂組成物をスピンコート法、グラビアコート、スクリーン印刷またはスプレー等で金属板に塗布して製造できるため、製造が容易であり、アルマイト加工よりも生産性を向上させることができる。さらに、発熱する電子部品自体や樹脂成形品にも使用が可能である。
【0009】
本発明の第2の態様に係る放熱部材は、上記本発明の第1の態様に係る放熱部材10において、前記斜方晶系のケイ酸塩鉱物は、コーディエライトまたはムライトである。
【0010】
このように構成すると、これらのフィラーは、軽量で熱伝導性に優れ、化学的に安定で樹脂との親和性も高く、人体に害が少ないので、これらの特徴を活かした放熱部材とすることができる。さらに、これらのフィラーは、遠赤外線放射セラミックスとして使用されており、遠赤外線放射に特に優れるといった特性を放熱部材に与えることができる。
【0011】
本発明の第3の態様に係る放熱部材は、上記本発明の第1〜第2のいずれかの態様に係る放熱部材10において、前記樹脂組成物は、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛および黒鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の追加フィラー12をさらに含む。
【0012】
このように構成すると、追加フィラーにより硬化膜の熱伝導性をさらに高めることができる。また、硬化膜を、窒化ホウ素を用いて白色に、または黒鉛を用いて黒色に着色できるため、放熱部材の意匠性を向上させることができる。
【0013】
本発明の第4の態様に係る放熱部材は、上記本発明の第1〜第3のいずれか1の態様に係る放熱部材10において、光硬化性樹脂13は、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物、および(メタ)アクリル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、樹脂組成物は、重合開始剤として光カチオン重合開始剤または光ラジカル重合開始剤を含む。なお、「(メタ)アクリル化合物」とは、アクリル化合物または(メタ)アクリル化合物(=メタクリル化合物)を指す。
【0014】
このように構成すると、アクリル化合物は、重合反応の反応速度が速いため好ましい。さらに、対応するアルコール類から容易にアクリル化合物を製造することができるため、アクリレートモノマーやアクリレートオリゴマーの種類が豊富であり、目的に合わせて材料を選択して、硬化膜の物性を変更しやすいため好ましい。
メタクリル化合物は、アクリル化合物に比べて反応速度は遅いが、皮膚刺激性が小さいため好ましい。
エポキシ化合物は、カチオン重合のため、酸素による硬化阻害を受けない。また重合の形式が開環重合のため、硬化時の収縮が少なく基板との密着性に優れているため好ましい。
オキセタン化合物は、エポキシ化合物の重合反応に比べて、オキセタン化合物の重合物の成長が速いので、分子量が数万程度のポリマーを生成する。その結果、硬化膜の靭性等の力学特性が向上するため好ましい。また、エポキシ化合物には変異原性等を有するなど毒性が強いものが多いが、オキセタン化合物はエポキシ化合物に比べて毒性が低いため好ましい。
ビニルエーテル化合物は、エポキシ化合物に比べて、カチオン重合の反応性が良い。また粘度が低いので、エポキシ化合物と混ぜて粘度を調整する反応性希釈剤として利用できるため好ましい。
【0015】
本発明の第5の態様に係る放熱部材は、上記本発明の第1〜第4のいずれか1の態様に係る放熱部材10において、光硬化性樹脂13は、脂環式エポキシ化合物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビフェノールのジグリシジルエーテル、多官能性(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0016】
このような構成にすると、光硬化性樹脂は光照射によって効率よく硬化させることができる。また、硬化膜を厚くすることができ、さらに、金属板との密着性が良好となる。特にエポキシは、金属板との密着性にすぐれ、脂環式エポキシは、硬化速度および銅との密着性に優れる。
【0017】
本発明の第6の態様に係る放熱部材は、上記本発明の第1〜第5のいずれか1の態様に係る放熱部材10において、金属板15は、銅およびアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0018】
このように構成すると、熱伝導性に特に優れた金属板を用いて、本願の放熱部材を構成することができる。
【0019】
本発明の第7の態様に係る放熱部材は、上記本発明の第6の態様に係る放熱部材10において、金属板15は、銅である。
【0020】
従来、アルミニウムはアルマイト加工により放熱効果を高めヒートシンクとして利用可能であったが、銅については同様の加工は行なえなかった。このように構成すると、銅についてもより放熱効果を高めたヒートシンクまたはヒートスプレッダーとしての利用が可能になる。
【0021】
本発明の第8の態様に係る電子部品30は、例えば図3に示すように、発熱部を有する電子デバイス20と;金属板15が前記発熱部に接触するように、電子デバイス20に取り付けられた、上記本発明の第1〜第7のいずれか1の態様に係る放熱部材10とを備える。
【0022】
このように構成すると、電子部品の上部から効果的に放熱させることができる。
【0023】
本発明の第9の態様に係るモーター50は、例えば図5に示すように、電気エネルギーを運動エネルギーに変換するモーター本体40と;金属板がモーター本体40の外表面41に接触するように、モーター本体40に取り付けられた、上記本発明の第1〜第7のいずれか1の態様に係る放熱部材10とを備える。
【0024】
このように構成すると、モーターを効果的に放熱させることができる。
【0025】
本発明の第10の態様に係るバッテリー70は、例えば図6に示すように、充電時または放電時に自己発熱するバッテリー本体60と;金属板がバッテリー本体60の外面に接触するように、バッテリー本体60に取り付けられた、上記本発明の第1〜第7のいずれか1の態様に係る放熱部材10とを備える。
なお、「バッテリー本体」とは、バッテリーセルまたはその集合体を指す。
【0026】
このように構成すると、自己発熱するバッテリーを効果的に放熱させることができる。
【0027】
本発明の第11の態様に係る物品は、自己発熱する物品本体と;金属板が前記物品の外表面に接触するように、前記物品に取り付けられた、上記本発明の第1〜第7のいずれか1の態様に係る放熱部材とを備える。
【0028】
このように構成すると、自己発熱する物品を効果的に放熱させることができる。このように本発明の放熱部材は、自己発熱する物品に対して広く使用することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の放熱部材は、ヒートシンク等の放熱部材として用いることができ、金属板の熱伝導性と、硬化膜中に含有する斜方晶系のケイ酸塩鉱物による遠赤外線の放射との組み合わせにより高い放熱効果を示す。さらに、本発明の放熱部材は、発熱する電子部品自体および樹脂成形品にも使用できる。また、光照射により金属板上に硬化膜を形成することができるため、生産効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】放熱部材10の構成を示す図である。
【図2】放熱部材10の製造方法を示すフロー図である。
【図3】電子部品30の概略断面図である。
【図4】金属板15の形状を例示する図である。
【図5】モーター本体40の外表面41に放熱部材10の金属板が接触するように放熱部材10を配置したモーター50の略図である。
【図6】バッテリー本体60の外表面に放熱部材10の金属板が接触するように放熱部材10を配置したバッテリー70の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一または相当する部分には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。また、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
【0032】
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る放熱部材10について説明する。なお、図1は放熱部材10の構成を説明するものであり、各層の厚みは誇張されている。放熱部材10は、斜方晶系のケイ酸塩鉱物のフィラー11と光硬化性樹脂13を含有する樹脂組成物を金属板15に塗布した後に、光を照射することで硬化膜14を形成させて製造される。なお、樹脂組成物には、斜方晶系のケイ酸塩鉱物のフィラー11に加えて、さらに、追加のフィラーとして、熱伝導性が優れた追加フィラー12を加えてもよい。
【0033】
斜方晶系のケイ酸塩鉱物のフィラー11としては、ムライト、コーディエライト、エンスタタイト、ヘミモルファイト、ゾイサイト、シリマナイト、紅柱石を挙げることができる。特に熱伝導率が高く、樹脂との混合に適している点でコーディエライト、ムライトが好ましい。なお、斜方晶系のケイ酸塩鉱物は天然、人工のいずれであってもよい。放熱部材10は、これらのフィラー11の少なくとも1種を含有する。これらのフィラーは、特に遠赤外線の放射効果に優れ、硬化膜14の熱伝導性を向上させ、放熱部材10の放熱効果を高める。
【0034】
追加フィラー12としては、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛および黒鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種である。これらの追加フィラーは、熱伝導率が高く、特に窒化ホウ素、酸化亜鉛は熱伝導率が高く、放熱部材10の放熱効果をさらに向上させることができるため好ましい。
【0035】
フィラー11および追加フィラー12の形状は、粉末、ペースト、ワイヤ状等が好ましい。特に、均一な状態が得られることから、粉末、またはペーストとして光硬化性樹脂13に混合することが好ましい。粉末の場合は、その平均粒径は、0.01〜100μmであることが好ましく、特に、0.1〜50μmであることが好ましい。0.01μm以上であると、樹脂組成物の粘度が高くなりすぎることがなく、塗布工程の作業性が良い。また熱伝導率が悪くなることもない。100μm以下であると、硬化膜14の表面に凹凸ができることがなく、またフィラーの沈降が速くて樹脂組成物の保存安定性が悪くなるということがない。なお、平均粒径は、一次粒子径に限られず、凝集状態の粒子径であってもよい。平均粒径(メジアン径)は、堀場製作所製レーザー回折散乱式粒度分布測定装置LA−950V2を用いて測定した値である。すなわち、フランホーファー回折理論およびミーの散乱理論による解析を利用して、湿式法にて測定を行い、粉体をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量(体積基準)となる径をメジアン径とした。測定は湿式法、純水中に測定試料少量(耳かき一杯程度)を加えた後、超音波バス中で3分間処理し、試料が分散した溶液を用いた。測定時のスラリーの濃度はレーザーの透過率が80%になるように調製した。
【0036】
フィラー11および追加フィラー12の総量は、光硬化性樹脂13に対して1重量%以上、70重量%未満を混合させることにより、良好な放熱効果が得られる。樹脂組成物を塗布する工程の作業効率を考慮すると、フィラー11および追加フィラー12の総量は、光硬化性樹脂13に対して15〜60重量%が好ましい。フィラー11および追加フィラー12の総量が15重量%以上であると、フィラーおよび追加フィラーの放熱特性を十分に得ることができる。また、60重量%以下であると、フィラーおよび追加フィラーが、硬化性樹脂中で凝集する等の問題が生じない。さらに、十分な硬化膜14の硬度を得ることができる。なお、追加フィラー12の量は、フィラー11に対して0〜60重量%混合させることが好ましい。
【0037】
光硬化性樹脂13には、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物、および(メタ)アクリル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。特にエポキシ化合物は、金属板との密着性がよいため好ましい。
【0038】
エポキシ化合物としては、ビフェノール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラクロロビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類のジグリシジルエーテル類、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ブロム化フェノールノボラック、オルトクレゾールノボラック等のノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル類、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等のアルキレングリコール類のジグリシジルエーテル類、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ヘキサヒドロフタル酸のグリシジルエステルやダイマー酸のジグリシジルエステル等のグリシジルエステル類、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル社製の商品名 セロキサイド2021P)、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、3,4−エポキシ−4−メチルシクロヘキシル−2−プロピレンオキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ジシクロペンタジエンジエポキシド、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)エーテル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、テトラ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)−4,5−エポキシテトラヒドロフタレート、1,2:8,9−ジエポキシリモネン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)ジエチルシロキサン等の脂環式エポキシ化合物などが挙げられる。これらのエポキシ化合物を単独で用いてもよいし、複数のエポキシ化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
オキセタン化合物としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亞合成社製の商品名 OXT−101)、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(東亞合成社製の商品名 OXT−211)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(東亞合成社製の商品名 OXT−212)、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン(東亞合成社製の商品名 OXT−121)、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成社製の商品名 OXT−221)、脂肪族カルボン酸系オキセタン化合物(例えばアジペートビスオキセタン等)、芳香族カルボン酸系オキセタン化合物(例えばテレフタレートビスオキセタン等)、脂環式カルボン酸系オキセタン化合物(例えばシクロヘキサンジカルボン酸ビスオキセタン等)、芳香族イソシアネート系オキセタン化合物(例えばMDIビスオキセタン等)等が挙げられる。これらのオキセタン化合物を単独で用いてもよいし、複数のオキセタン化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
(メタ)アクリル化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオール(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、1,3−ビス(ヒドロキシエチル)−5、5−ジメチルヒダントイン、3−メチルペンタンジオール(メタ)アクリレート、α,ω−ジアクリルビスジエチレングリコールフタレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリット(メタ)アクリレート、ペンタエリトリットヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリットモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリヒドロキシエチルイソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート(東亞合成社製の商品名 M−315)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、および上記の水酸基を有する(メタ)アクリレートのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物等を挙げることができる。これらの(メタ)アクリル化合物を単独で用いてもよいし、複数の(メタ)アクリル化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
ビニルエーテル化合物としては、エチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジまたはトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等を挙げることができる。これらのビニルエーテル化合物を単独で用いてもよいし、複数のビニルエーテル化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、多塩基酸またはその無水物と多価アルコールとから合成されるポリエステルに、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。前記多塩基酸としては、フタル酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、セバチン酸、イソセバチン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ダイマー酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ピメリン酸、アゼライン酸などが挙げられる。前記多価アルコールとしては、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。これらのポリエステル(メタ)アクリレートを単独で用いてもよいし、複数のポリエステル(メタ)アクリレートを組み合わせて用いてもよい。
エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシ化合物に、(メタ)アクリル酸を付加させて得られる(メタ)アクリル酸変性エポキシ化合物が挙げられる。変性に供される前記エポキシ化合物は、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSまたはフェノールボラック、シクロペンタジエンオキシドまたはシクロヘキセンオキシドと、エピクロルヒドリンとを反応させて得られる。これらのエポキシ(メタ)アクリレートを単独で用いてもよいし、複数のエポキシ(メタ)アクリレートを組み合わせて用いてもよい。
ポリエーテル(メタ)アクリレートとしては、ポリエーテルとエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステルとのエステル交換反応によって得られるポリエーテル(メタ)アクリレートが挙げられる。前記ポリエーテルとしては、例えば、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールなどのエトキシ化・プロポキシ化、1,4−ブタンジオールなどのポリエーテル化、により得られたポリエーテルが挙げられる。これらのポリエーテル(メタ)アクリレートを単独で用いてもよいし、複数のポリエーテル(メタ)アクリレートを組み合わせて用いてもよい。
ポリウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソシアネート化合物とポリオール化合物とヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート化合物とを反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。前記イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。前記ポリオール化合物としては、ビスフェノールAとエチレンオキサイドとの付加物、ビスフェノールA、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。前記ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸の水酸基含有アルキルエステルが挙げられる。これらのポリウレタン(メタ)アクリレートを単独で用いてもよいし、複数のポリウレタン(メタ)アクリレートを組み合わせて用いてもよい。
【0043】
上記化合物の中でも、脂環式エポキシ化合物、ビスフェノールAのグリシジルエーテル、ビフェノールのジグリシジルエーテル、多官能性(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。エポキシ樹脂は、金属との密着性に優れ、脂環式エポキシ化合物は、銅板との密着性に優れかつ硬化速度が速く、特に好ましい。
【0044】
なお、本明細書において、光硬化性樹脂を硬化させる光とは、活性種を発生する化合物を分解して活性種を発生させることのできる活性エネルギー線をいう。このような光としては、可視光、紫外線などの光エネルギー線を挙げることができる。
【0045】
樹脂組成物は、重合開始剤を含む。重合開始剤としては、光カチオン重合開始剤、または、光ラジカル重合開始剤が好ましい。重合開始剤としては、例えば、各種のベンゾイン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、フェニルケトン誘導体、オニウム塩光開始剤、有機金属光開始剤、金属塩カチオン光開始剤、光分解性オルガノシラン、潜在性スルホン酸、酸化ホスフィンなどを挙げることができる。光カチオン重合開始剤は、オニウム塩系の開始剤が好ましい。重合反応の形式に応じて適切な重合開始剤を用いる。また必要に応じて重合開始剤は複数種を用いてもよい。
光硬化性樹脂にエポキシ化合物、オキセタン化合物またはビニルエーテル化合物を用いる場合には、光カチオン重合開始剤を使用する。(メタ)アクリル化合物を用いる場合には、光ラジカル重合開始剤を使用する。
重合開始剤の添加量は、光硬化性樹脂の重量に対して、0.1〜10重量%が好ましく、0.5〜5重量%がより好ましい。
【0046】
光カチオン重合開始剤としては、紫外線や可視光線などのエネルギー線の照射によりカチオンを発生する化合物であれば特に限定しない。
光カチオン重合開始剤としては、トリアリールスルホニウム塩タイプとして、SI−100(三新化学社製)、CPI−210S(サンアプロ社製)サイラキュアーUVI−6992、UVI−6976(ダウ・ケミカル社製)、アデカオプトマーSP−150、SP−152、SP−170、SP−172(ADEKA社製)等が挙げられる。ジアリールヨードニウム塩タイプとして、Photoinitiator2074(ローディア社製)、IRGACURE250(BASF社製)、CI−5102(日本曹達社製)、WPI−113、WPI−116(和光純薬社製)等が挙げられる。好ましいのはCPI−210S(サンアプロ社製)である。
【0047】
光ラジカル重合開始剤としては、紫外線や可視光線などのエネルギー線の照射によりラジカルを発生する化合物であれば特に限定しない。
光ラジカル重合開始剤として用いられる化合物としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−4′−イソプロピルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(BASF社製の商品名 IRGACURE907)、1,4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4′−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4′−トリ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製の商品名 IRGACURE819)、2−(4′−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3′,4′−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2′,4′−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2′−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4′−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)]−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2′−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4′−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、3,3′−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、2−(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール、3−(2−メチル−2−ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−ドデシルカルバゾール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムなどが挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用することも有効である。特に2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製の商品名 IRGACURE819)、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(BASF社製の商品名 IRGACURE907)、ヨードニウム,(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロフォスフェート(1−)(BASF社製の商品名 IRGACURE250)が好ましい。
【0048】
さらに硬化前の樹脂組成物には添加剤として、増感剤/分散剤/着色顔料/シランカップリング剤を加えてもよい。
増感剤には、アントラセン、アントラセン誘導体(光硬化性樹脂に対して0.5〜3重量%添加)を用いる。重合速度を上げることができる。
分散剤には、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート(フィラーに対して1〜15重量%添加)を用いる。フィラーの凝集を防ぎ、樹脂組成物の保存安定性を向上させることができる。
着色顔料には、有機系顔料と無機顔料が使用できる。無機系顔料が好ましい。
シランカップリング剤には、JNC(株)社製のシランカップリング剤(商品名 S330、S510、S520、S530)が好ましい。樹脂組成物に対して1〜10重量%添加して使用することで、金属板と硬化膜の密着性を向上させることができる。
【0049】
金属板15としては、アルミニウム、銅を挙げることができる。
金属板の厚さは、0.03〜100mmであり、好ましくは0.1から10mm、さらに好ましくは0.2から2mmである。熱源が小さく放熱板の面積が充分大きい場合には、厚いほど放熱効果が高い。0.03mm以上であれば放熱効果に優れる。また、100mm以下であると、軽量である点で好ましい。
【0050】
図2を参照して、放熱部材10の製造方法について説明する。
S01:光硬化性樹脂とフィラーの粉末と、溶媒に溶解させた重合開始剤とをミキサー等を用いて混合させる。このとき、必要に応じて、追加フィラー、増感剤、分散剤、着色顔料、シランカップリング剤の少なくとも1種を加えて混合させてもよい。
【0051】
溶媒には、ケトン、エステル系の溶媒が好ましく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、DIBK(ジイソブチルケトン)、シクロヘキサノン、DAA(ジアセトンアルコール)等や、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸セロソルブ、酢酸アミル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等が挙げられる。
樹脂組成物中の光硬化性樹脂成分の濃度は、積層方法に応じた粘度に調整して適切に選択することができる。例えば、ウェットコーティング法には、5〜90重量%が好ましく、より好ましくは、30〜80重量%の範囲である。
【0052】
S02:S01で調製した樹脂組成物(放熱塗料)を金属板に塗布する。
なお、硬化後の膜厚が、0.1〜1000μmとなるように硬化膜を形成するのが好ましい。好ましくは、10〜100μmである。さらに好ましくは20から40μmである。膜厚が大きくなると、放射率が高くなるため放射による放熱効果は大きくなる。膜厚が小さくなると熱伝導率が大きくなる。したがって、用途に応じて適切な膜厚を選択する。
【0053】
塗布方法には、樹脂組成物を均一にコーティングするウェットコーティング法を用いることが好ましい。ウェットコーティング法のうち、少量を作成する場合には簡便で均質な製膜が可能であるスピンコート法が好ましい。生産性を重視する場合には、グラビアコート法、ダイコート法、バーコート法、リバースコート法、ロールコート法、スリットコート法、ディッピング法、スプレーコート法、キスコート法、リバースキスコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ロッドコート法などが好ましい。ウェットコーティング法は、これらの方法から必要とする膜厚、粘度や硬化条件等に応じて適宜選択することができる。
【0054】
S03:光を照射し、樹脂組成物を硬化させる。
一例として、樹脂組成物に紫外線を照射させて硬化させる場合を説明する。樹脂組成物は、重合開始剤の存在下で紫外線を照射して重合させることにより硬化するものが好ましい。硬化方法としては、UVランプ(例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ)から200〜400nmの波長のUVを光硬化性樹脂に短時間(数秒〜数十秒の範囲内で)照射すればよい。
【0055】
図3を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る電子部品30について説明する。なお、図3は、電子デバイス20の封止体26に放熱部材10の金属板15が接触するように放熱部材10を載置した電子部品30の概略断面図である。このように放熱部材10は、電子デバイス20の上面に載置され機能する。すなわち、放熱部材10は、封止体26の表面に載置され、封止体26から伝達される熱を外部へ放出することにより、電子デバイス20を除熱する。放熱部材10を電子デバイス20のような電子機器に用いる場合、放熱部材10の金属板15の厚さは0.01〜100mmである。好ましくは、0.03〜10mmであり、より好ましくは0.1〜2mmである。放熱部材10の硬化膜14の厚さは0.1〜1000μmである。好ましくは、10〜100μmであり、より好ましくは20〜40μmである。放熱部材10を電子デバイス用の放熱板として用いる場合は、ある程度の厚みがあると放熱効果が高くなるため好ましい。
また、放熱部材10を封止体26の表面を覆うように貼り付けてもよい。封止体26全体を被う放熱部材10により、電子デバイスの内部から封止体26に伝達された熱をより効率よく外部へ放出させることができる。
【0056】
なお、放熱部材10は、接着剤を用いて電子デバイス20に接着させる。接着剤は、アクリル系接着剤が好ましい。または、ビス止めや金具等を用いて、放熱部材10を電子デバイス20に固定してもよい。すなわち、放熱部材10の備える金属板15を電子デバイス20に密着させて固定できるものであればよい。
また、図3は、平板状の金属板15上に樹脂組成物で平板状の硬化膜14を形成した放熱部材10の使用例である。しかし、金属板15および硬化膜14の形状は、これに限られるものではなく、より表面積が大きくなるような形状であってもよい。例えば、金属板を図4に示すような形状に形成し、外気に接触する面積を増大させてもよい(硬化膜14は不図示)。また、硬化膜の表面を波状にして表面積を増大させてもよい。
なお、図4に示す金属板に樹脂組成物を塗布する場合は、樹脂組成物を低粘度になるように調製し、スプレー、または金属板を浸すディップ法により塗装する。ただし、ディップ法の場合には、金属板と発熱体の間に膜があるとその膜は熱抵抗になるため、その間に樹脂組成物が付かないようにする必要がある。
【0057】
図5を参照して、本発明の第3の実施の形態に係るモーター50について説明する。なお、図5は、モーター本体40の外表面41に放熱部材10の金属板15が接触するように放熱部材10を配置した電気自動車用モーター50の略図である。
電気エネルギーを機械エネルギーに変換するモーター本体40は、運転に伴い熱が発生し、この熱をモーター外へ排出させる必要がある。放熱部材10は、モーター本体40の外表面41に載置され機能する。すなわち、モーター本体40の外表面41から伝達される熱を放熱部材10の金属板が吸い上げ、当該熱は硬化膜に伝達され、さらに外気に伝達されることにより、モーター本体40内に生じた熱が放熱される。
例えば、モーター本体40は電気自動車用モーターであってもよい。放熱部材10を電気自動車用モーターのような機器に用いる場合、放熱部材10の備える金属板の厚さは通常0.01〜100mmである。好ましくは、0.03〜10mmであり、より好ましくは0.1〜2mmである。放熱部材10の備える硬化膜の厚さは通常0.1〜1000μmである。好ましくは、10〜100μmであり、より好ましくは20〜40μmである。電気自動車のモーターは、出力が大きく走行中は常時回転させるものであるため、発熱量が大きく、本願の放熱部材10により効率よく除熱される。
しかし、本願の放熱部材は、電気自動車用モーターに限らず、一般的なモーターへの使用が可能である。特に、モーターを軽く小型にしたい場合に本願の放熱部材の使用は有効である。
【0058】
図6を参照して、本発明の第4の実施の形態に係るバッテリー70について説明する。なお、図6は、バッテリー本体60の外表面に放熱部材10の金属板が接触するように放熱部材10を配置したバッテリー70の略図である。
充電時または放電時の自己発熱が問題となるバッテリー本体60は、その熱をバッテリー本体外へ排出させる必要がある。放熱部材10は、バッテリー本体60の外表面に載置され機能する。すなわち、バッテリー本体60の表面から伝達される熱を放熱部材10の金属板が吸い上げ、当該熱は硬化膜に伝達され、さらに外気に伝達されることにより、バッテリー本体60内に生じた熱を放熱する。
なお、バッテリー本体60は、バッテリーセルであってもその集合体であってもよい。
また、バッテリー本体60は、例えば、エンジンを始動させ電装品を正常に動作させる電気自動車用バッテリーであってもよい。放熱部材10を電気自動車用バッテリーのような機器に用いる場合、放熱部材10の備える金属板の厚さは通常0.01〜100mmである。好ましくは、0.03〜10mmであり、より好ましくは0.1〜2mmである。放熱部材10の備える硬化膜の厚さは通常0.1〜1000μmである。好ましくは、10〜100μmであり、より好ましくは20〜40μmである。
本願の放熱部材は、電気自動車用バッテリーに限られず、充電時または放電時の自己発熱が問題になるバッテリーに使用してもよい。
【0059】
その他、放熱部材10は、照明器具、工作機械等の自己発熱する器具、機械等の物品にも利用でき、高い放熱効果を提供する。
【0060】
本発明の放熱部材は、フィラーを含有した光硬化性樹脂を硬化することにより得られる硬化膜と、金属板との組み合わせにより、高い放熱効果を有する。また、放熱部材と物品とを分業で製造し、容易に物品に放熱部材を載置できるため、製造がし易く、生産効率を上げることができる。
【実施例】
【0061】
以下に本発明を、実施例を用いて詳細に説明する。しかし本発明は、以下の実施例に記載された内容に限定されるものではない。
【0062】
本発明の実施例および比較例に用いた、放熱部材を構成する成分材料は次のとおりである。
<光硬化性樹脂>
・エポキシ化合物
セロキサイド2021P:(株)ダイセル
jER828:三菱化学(株)
・オキセタン化合物
OXT−101:東亞合成(株)
・(メタ)アクリル化合物
M−315:東亞合成(株)
<光重合開始剤>
・CPI−210S:サンアプロ(株)
・IRGACURE907:BASF
・IRGACURE250:BASF
・SI−100:三新化学工業(株)
・SI−110:三新化学工業(株)
・SI−150:三新化学工業(株)
・WPI−113:和光純薬(株)
<光増感剤>
・Anthracure:川崎化成工業(株)
<フィラー>
・合成コーディエライト:丸ス釉薬合資会社 (商品名)SS−200(平均一次粒径7.5μm)SS−1000(平均一次粒径1.7μm)
・電融ムライト:太平洋ランダム(株) 70M(商品名)325F
・窒化ホウ素:電気化学工業(株) デンカボロンナイトライド(商品名)SGP
・窒化アルミニウム:(株)トクヤマ (商品名)TYPE H
・タルク:林化成(株)(商品名)ミクロンホワイト 5000S
・二酸化ケイ素(シリカ):富士シリシア(株) (商品名)サイリシア
・酸化アルミニウム(アルミナ):昭和電工(株) (商品名)AL−47H
・酸化亜鉛:(株)アムテック (商品名)パナテトラ WZ−0511
・黒鉛:日本黒鉛工業(株) (商品名)鱗状黒鉛粉末 F#2
【0063】
<試料作製>
自転・公転ミキサー((株)シンキー製あわとり錬太郎 ARE250)を使用して、光硬化性樹脂とフィラーの粉末、およびメチルエチルケトン(MEK)に溶解させた光重合開始剤を回転数2000rpmで5分間撹拌した後に、回転数2000rpmで5分間脱泡することにより、樹脂組成物を調製した。
スピンコーターを用いて、樹脂組成物を40×40(mm)四方で厚み0.4mmの銅板またはアルミ板に塗布した。(スピンコーターの回転数は、それぞれの実施例ごとに硬化膜が約30μmになるように調整した。)
紫外線照射器(ウシオ電機(株)製ECS−801G1)として高圧水銀ランプ(M08−L41)を用いて、積算露光量500mJ/cmとなるように紫外線を照射して、塗布した樹脂組成物を硬化させた。
【0064】
<放熱特性の評価>
放熱部材の金属面側とセラミックヒーター(坂口電熱(株)製マイクロセラミックヒーターMS−3)もしくはT0220パッケージのトランジスタ((株)東芝製2SD2013)を両面テープ(住友スリーエム(株)製 熱伝導性接着剤転写テープNo.9885)を用いて貼り合わせた。セラミックヒーターもしくはトランジスタの放熱部材を張り合わせる面の裏面にはK熱電対(理化工業(株)製ST−50)が取り付けられており、データロガー(グラフテック(株)製GL220)を用いてパソコンでセラミックヒーターもしくはトランジスタの放熱部材が張り合わされた面の反対側の温度を記録できる。このヒーターもしくはトランジスタを取り付けた放熱部材を40℃に設定した恒温槽中央に静置し、セラミックヒーターもしくはトランジスタの温度が40℃で一定になったことを確認した後、セラミックヒーターには直流安定化電源を用いて14V、トランジスタには1.4Vを印加し、セラミックヒーターもしくはトランジスタ表面の温度変化を測定した。セラミックヒーターもしくはトランジスタは一定の熱量を発生しているので、取り付けてある放熱部材の放熱効果が高いほど、セラミックヒーターもしくはトランジスタの温度は低下する。すなわち、セラミックヒーターもしくはトランジスタの温度が低くなる放熱部材ほど放熱効果が高いといえる。
<硬化度の評価>
金属板上に30μm厚で塗工した樹脂組成物に、紫外線を500mJ/cm照射したものを、測定サンプルとする。それぞれの評価は、◎は平滑性もよくきれいに硬化している、○問題なく硬化している、△硬化は進むが改良の余地がある、×硬化しない、と定義する。なお評価は、3名の評価者による官能試験法に基づく。意見が分かれた場合は、多い方に従う。
【0065】
≪実施例1≫
セロキサイド2021P、平均粒径7.5μmの合成コーディエライト(SS−200)、メチルエチルケトン(MEK)、およびCPI−210Sを、それぞれ100重量部、100重量部、20重量部、0.5重量部秤量してポリプロピレン製の容器に入れ、自転・公転ミキサーで混合した。調製した樹脂組成物を40×40(mm)四方で厚み0.4mmの銅板にスピンコートで塗布した後に紫外線照射器で硬化させた。この硬化膜で覆われた銅板を実施例1の試料とした。
≪実施例2≫
セロキサイド2021P、ムライト、メチルエチルケトン(MEK)、およびCPI−210Sを、それぞれ100重量部、100重量部、20重量部、0.5重量部秤量してポリプロピレン製の容器に入れ、自転・公転ミキサーで混合した。調製した樹脂組成物を40×40(mm)四方で厚み0.4mmの銅板にスピンコートで塗布した後に紫外線照射器で硬化させた。この硬化膜で覆われた銅板を実施例2の試料とした。
≪比較例1〜3≫
フィラーの種類が異なる以外は、実施例1と同様に硬化膜で覆われた銅板を作製し、比較例1〜3の試料とした。
≪比較例4≫
セロキサイド2021Pのみを銅板に塗布した後に紫外線照射器で硬化させた。この硬化膜で覆われた銅板を比較例4の試料とした。
【0066】
【表1】

【0067】
≪実施例3〜6≫
さらに、色味の調整や放熱効果を高めるために、コーディエライトと追加フィラーを添加した。追加フィラーの添加量の割合を下記に示す。溶媒(MEK)と光重合開始剤(CPI−210S)の割合、および試料の作製手順は実施例1と同様である。
【表2】

【0068】
実施例1〜6および比較例1〜4の試料について、放熱特性の評価結果を下記に示す。セラミックヒーターに印加する直流安定化電源は14Vとした。
【表3】

【0069】
表3中の比較例1および2に示す測定不可とは、硬化膜が剥離して放熱特性の評価ができなかったことを示す。実施例1〜6に示す結果から、本発明の放熱部材は優れた放熱性を有している。
【0070】
≪実施例7≫
セロキサイド2021P、平均粒径7.5μmの合成コーディエライト(SS−200)、メチルエチルケトン(MEK)、およびCPI−210Sを、それぞれ100重量部、100重量部、20重量部、0.5重量部秤量してポリプロピレン製の容器に入れ、自転・公転ミキサーで混合した。調製した樹脂組成物を40×40(mm)四方で厚み0.4mmのアルミ板にスピンコートで塗布した後に紫外線照射器で硬化させた。この硬化膜で覆われたアルミ板を実施例7の試料とした。
≪実施例8≫
セロキサイド2021P、jER828、平均粒径1.7μmの合成コーディエライト(SS−1000)、メチルエチルケトン(MEK)、およびCPI−210Sを、それぞれ50重量部、50重量部、100重量部、20重量部、0.5重量部秤量してポリプロピレン製の容器に入れ、自転・公転ミキサーで混合した。調製した樹脂組成物を40×40(mm)四方で厚み0.4mmのアルミ板にスピンコートで塗布した後に紫外線照射器で硬化させた。この硬化膜で覆われたアルミ板を実施例8の試料とした。
≪実施例9≫
セロキサイド2021P、OXT−101、平均粒径1.7μmの合成コーディエライト(SS−1000)、メチルエチルケトン(MEK)、およびCPI−210Sを、それぞれ80重量部、20重量部、100重量部、10重量部、0.5重量部秤量してポリプロピレン製の容器に入れ、自転・公転ミキサーで混合した。調製した樹脂組成物を40×40(mm)四方で厚み0.4mmのアルミ板にスピンコートで塗布した後に紫外線照射器で硬化させた。この硬化膜で覆われたアルミ板を実施例9の試料とした。
≪実施例10≫
M−315、平均粒径7.5μmの合成コーディエライト(SS−200)、メチルエチルケトン(MEK)、およびIRGACURE907を、それぞれ100重量部、100重量部、50重量部、0.5重量部秤量してポリプロピレン製の容器に入れ、自転・公転ミキサーで混合した。調製した樹脂組成物を40×40(mm)四方で厚み0.4mmのアルミ板にスピンコートで塗布した後に紫外線照射器で硬化させた。この硬化膜で覆われたアルミ板を実施例10の試料とした。
≪比較例5〜7≫
フィラーの種類が異なる以外は、実施例10と同様に硬化膜で覆われたアルミ板を作製し、比較例5〜7の試料とした。
≪比較例8≫
アルミ板の片面を黒色アルマイト処理したものを比較例8の試料とした。
【0071】
実施例7〜10および比較例5〜8の試料について、放熱特性の評価結果を下記に示す。セラミックヒーターに印加する直流安定化電源は14Vとした。
【表4】

【0072】
表4中の比較例5および6に示す測定不可とは、硬化膜が剥離して放熱特性の評価ができなかったことを示す。実施例7〜10に示す結果から、本発明の放熱部材は優れた放熱性を有している。
【0073】
≪実施例11〜12、比較例9≫
放熱特性と作業性や表面の光沢を調整するため、フィラーの添加量を変化させその性能を調べた。セロキサイド2021P、フィラーおよびMEKの添加量が異なる以外は、実施例1と同様に硬化膜で覆われた銅板を作製し、実施例11〜12、比較例9の試料とした。
【表5】

【0074】
実施例11〜12、比較例9の試料について、放熱特性の評価結果を下記に示す。トランジスタに印加する直流安定化電源は1.4Vとした。
【表6】

【0075】
表6中の比較例9に示す測定不可とは、過剰なフィラーにより硬化膜が形成できなかったため、放熱特性の評価ができなかったことを示す。実施例11〜12に示す結果から、本発明の放熱部材はフィラーの添加量を30wt%まで減らしても、優れた放熱特性を有している。
【0076】
硬化前の樹脂組成物の保存安定性や、硬化しやすさを調整するためには、重合開始剤(硬化剤)を変化させる必要がある。重合開始剤を変化させることによる、硬化度もしくは性能の違いを明らかにするため、重合開始剤の種類を変え、硬化膜で覆われた銅板を作製し、実施例13〜18の試料とした。
≪実施例13≫
セロキサイド2021P、jER828、平均粒径1.7μmの合成コーディエライト(SS−1000)、メチルエチルケトン(MEK)、およびCPI−210Sを、それぞれ50重量部、50重量部、30重量部、0.5重量部、0.5重量部秤量してポリプロピレン製の容器に入れ、自転・公転ミキサーで混合した。調製した樹脂組成物を40×40(mm)四方で厚み0.4mmのアルミ板にスピンコートで塗布した後に紫外線照射器で硬化させた。この硬化膜で覆われたアルミ板を実施例13の試料とした。
≪実施例14≫
セロキサイド2021P、jER828、平均粒径1.7μmの合成コーディエライト(SS−1000)、メチルエチルケトン(MEK)、およびSI−100を、それぞれ50重量部、50重量部、30重量部、0.5重量部、2.0重量部秤量してポリプロピレン製の容器に入れ、自転・公転ミキサーで混合した。調製した樹脂組成物を40×40(mm)四方で厚み0.4mmのアルミ板にスピンコートで塗布した後に紫外線照射器で硬化させた。この硬化膜で覆われたアルミ板を実施例14の試料とした。
≪実施例15≫
セロキサイド2021P、jER828、平均粒径1.7μmの合成コーディエライト(SS−1000)、メチルエチルケトン(MEK)、およびSI−110を、それぞれ50重量部、50重量部、30重量部、0.5重量部、2.0重量部秤量してポリプロピレン製の容器に入れ、自転・公転ミキサーで混合した。調製した樹脂組成物を40×40(mm)四方で厚み0.4mmのアルミ板にスピンコートで塗布した後に紫外線照射器で硬化させた。この硬化膜で覆われたアルミ板を実施例15の試料とした。
≪実施例16≫
セロキサイド2021P、jER828、平均粒径1.7μmの合成コーディエライト(SS−1000)、メチルエチルケトン(MEK)、およびSI−150を、それぞれ50重量部、50重量部、30重量部、0.5重量部、1.0重量部秤量してポリプロピレン製の容器に入れ、自転・公転ミキサーで混合した。調製した樹脂組成物を40×40(mm)四方で厚み0.4mmのアルミ板にスピンコートで塗布した後に紫外線照射器で硬化させた。この硬化膜で覆われたアルミ板を実施例16の試料とした。
≪実施例17≫
セロキサイド2021P、jER828、平均粒径1.7μmの合成コーディエライト(SS−1000)、メチルエチルケトン(MEK)、WPI−113、およびAnthracureを、それぞれ50重量部、50重量部、30重量部、0.5重量部、2.0重量部、0.5重量部秤量してポリプロピレン製の容器に入れ、自転・公転ミキサーで混合した。調製した樹脂組成物を40×40(mm)四方で厚み0.4mmのアルミ板にスピンコートで塗布した後に紫外線照射器で硬化させた。この硬化膜で覆われたアルミ板を実施例17の試料とした。
≪実施例18≫
セロキサイド2021P、jER828、平均粒径1.7μmの合成コーディエライト(SS−1000)、メチルエチルケトン(MEK)、IRGACURE250、およびAnthracureを、それぞれ50重量部、50重量部、30重量部、0.5重量部、2.0重量部、0.5重量部秤量してポリプロピレン製の容器に入れ、自転・公転ミキサーで混合した。調製した樹脂組成物を40×40(mm)四方で厚み0.4mmのアルミ板にスピンコートで塗布した後に紫外線照射器で硬化させた。この硬化膜で覆われたアルミ板を実施例18の試料とした。
【表7】

【0077】
実施例14〜19の試料について、硬化度の評価結果を下記に示す。
【表8】

【0078】
実施例15は硬化後に表面にしわが見られた。実施例17では硬化しているが若干の粘着性が残る。しかし、実施例13〜18に示す結果から、いずれの重合開始剤を用いた際でも硬化が進み、製膜が可能である。
【0079】
実施例13、18の試料について、放熱特性の評価結果を下記に示す。トランジスタに印加する直流安定化電源は1.4Vとした。
【表9】

【0080】
実施例13、18に示す結果から、本発明の放熱部材は重合開始剤を変化させても放熱特性に違いは見られず、優れた放熱性を有している。
【符号の説明】
【0081】
10 放熱部材
11 フィラー
12 追加フィラー
13 光硬化性樹脂
14 硬化膜
15 金属板
20 電子デバイス
21 ガラス基板
22 陽極
23 エレクトロルミネセンス層
24 陰極
25 乾燥剤
26 封止体
27 接着剤
30 電子部品
40 モーター本体
41 外表面
50 モーター
60 バッテリー本体
70 バッテリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜方晶系のケイ酸塩鉱物からなるフィラーと光硬化性樹脂とを含有する樹脂組成物を硬化させて得られる硬化膜と;
前記硬化膜により被膜された金属板とを備える;
放熱部材。
【請求項2】
前記斜方晶系のケイ酸塩鉱物は、コーディエライトまたはムライトである、
請求項1に記載の放熱部材。
【請求項3】
前記樹脂組成物は、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛および黒鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の追加フィラーをさらに含む、
請求項1〜2のいずれかに記載の放熱部材。
【請求項4】
前記光硬化性樹脂は、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物、および(メタ)アクリル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記樹脂組成物は、重合開始剤として光カチオン重合開始剤または光ラジカル重合開始剤を含む、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の放熱部材。
【請求項5】
前記光硬化性樹脂は、脂環式エポキシ化合物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビフェノールのジグリシジルエーテル、多官能性(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の放熱部材。
【請求項6】
前記金属板は、銅およびアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の放熱部材。
【請求項7】
前記金属板は、銅である、
請求項6に記載の放熱部材。
【請求項8】
発熱部を有する電子デバイスと;
前記金属板が前記発熱部に接触するように、前記電子デバイスに取り付けられた、請求項1〜7のいずれか1項に記載の放熱部材とを備える;
電子部品。
【請求項9】
電気エネルギーを運動エネルギーに変換するモーター本体と;
金属板が前記モーター本体の外表面に接触するように、前記モーター本体に取り付けられた、請求項1〜7のいずれか1項に記載の放熱部材とを備える;
モーター。
【請求項10】
充電時または放電時に自己発熱するバッテリー本体と;
金属板が前記バッテリー本体の外表面に接触するように、前記バッテリー本体に取り付けられた、請求項1〜7のいずれか1項に記載の放熱部材とを備える;
バッテリー。
【請求項11】
自己発熱する物品本体と;
金属板が前記物品の外表面に接触するように、前記物品に取り付けられた、請求項1〜7のいずれか1項に記載の放熱部材とを備える;
物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−100477(P2013−100477A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−219007(P2012−219007)
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【Fターム(参考)】