説明

放電灯点灯装置、照明装置、照明システム

【課題】放電灯の調光を行なう放電灯点灯装置において、周囲温度が低下した場合においても、放電灯出力の変動を抑制し、ちらつきや立消えなどの不具合を生じることなく、安定した調光を可能とする。
【解決手段】インバータ部4の高周波電圧により共振回路5を介して放電灯DLを点灯させる放電灯点灯装置において、放電灯DLの電気的出力を検出する出力検出手段R1と、入力される調光信号に応じて調光指令値を設定する調光信号生成回路9と、前記出力検出手段R1から出力される検出信号と調光信号生成回路9から出力される調光指令値とを比較演算し、この演算結果に応じてインバータ制御手段Aで生成されるオンオフ信号を可変するフィードバック制御手段Bを有するとともに、放電灯DLにパルス状高電圧を所定の周期で印加するパルス電圧重畳手段Cを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放電灯を調光点灯可能な放電灯点灯装置及びこれを用いた照明装置並びに照明システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、蛍光灯を代表とする放電灯の調光用安定器として、低周波の商用交流電源を高周波に変換するインバータ回路を用いて放電灯を高周波点灯し、入力される調光信号に応じて、放電灯に供給する電力を制御することにより放電灯を調光する調光用電子安定器が一般的となっている。このような調光用電子安定器においては、より低光束まで光出力のばらつきや、ちらつき等の不安定現象の発生しない安定した調光性能を得ることが要求されている。
【0003】
この要求に応えるために、放電灯(例えば蛍光灯)の点灯状態を検出し、入力される調光信号に応じて、放電灯が所定の出力となるようにフィードバック制御を行なう電子安定器が一般的である。このようなフィードバック制御を用いたものとしては、放電灯に流れる電流を検出し、調光信号に応じた所定の電流値となるようにフィードバック制御するものが一般的であり、例えば特許文献1(特開平6−302393号公報)などにも関連技術が開示されている。
【0004】
また、放電灯への出力電力を検出し、フィードバック制御する方式も一般的に用いられており、例えば、特開平6−311753号公報に関連技術が開示されている他、STマイクロエレクトロニクス社の集積回路L6574を用いた調光用電子安定器の構成例が同社のアプリケーションノート(AN993:Electronic Ballast with PFC using L6574 and L6561)などにも記載されている。
【0005】
次に、放電灯への出力電力を検出し、フィードバック制御する電子安定器の具体例を図13を用いて説明する。図13では、入力交流電圧ACをダイオードブリッジDBで全波整流し、インダクタL1、スイッチング素子Q1、ダイオードD1、コンデンサC1よりなるチョッパ回路によって、コンデンサC1の両端に所定の直流電圧Vdcを得ている。スイッチング素子Q2、Q3、コンデンサC3よりなるインバータ回路は、直流電圧Vdcをスイッチング素子Q2、Q3によって高周波でスイッチングすることにより高周波の交流電圧に変換するものである。
【0006】
ここで、抵抗R1は、スイッチング素子Q3に流れる電流を検出し、検出される電流の平均値によってインバータ回路から出力される電力を等価的に検出するものである。また、インダクタL2、コンデンサC2、および放電灯DLからなる負荷回路は、インバータ回路によって変換された高周波交流電圧を、インダクタL2、コンデンサC2の共振によって略正弦波状に変換し、放電灯DLに所定の電力を供給するものである。
【0007】
図13の回路では、抵抗R1によって検出されたインバータ出力電力は、抵抗R2を介してオペアンプOP1の反転入力端子(−)に入力され、指令値電圧VrefはオペアンプOP1の非反転入力端子(+)に入力される。オペアンプOP1は二つの入力信号を比較し、その誤差が小さくなるようにオペアンプOP1の出力電圧を変化させる。オペアンプOP1の出力端子は、電圧制御発振器VCOに接続され、オペアンプOP1の出力電圧に応じてインバータ回路の駆動周波数を可変することによりインバータ回路の出力電力を可変し、抵抗R1によって検出されるインバータ回路の出力電力が、指令値電圧Vrefに応じた目標電力と略同一となるようにフィードバック動作を行なうものである。
【0008】
入力される調光信号に応じて指令値電圧Vrefを可変することにより、調光信号に応じてインバータ回路の出力電力を所望の値に調整することが可能である。このように、フィードバック制御を備えた電子安定器においては、例えば放電灯の特性ばらつきや、周囲温度の変化によって放電灯の特性が変化したような場合においても、略一定の電力を放電灯に供給できるという利点がある。
【0009】
ここで、図14に松下電器産業株式会社製のFHF32蛍光ランプを周囲温度25℃および5℃の環境下において調光したときのランプ電流−ランプ電圧特性のグラフを示す。FHF32蛍光ランプを調光比約25%まで調光するためにはランプ電流を約100mA以下まで下げ、調光比約5%まで調光するにはランプ電流を約20mA以下まで下げる必要がある。しかしながら、図14に示すように、周囲温度が低下するとランプ特性は大きく変わり、特に調光比25%から5%までの領域では低温時のランプ電圧の変化が大きいために蛍光ランプの正常な点灯維持が難しくなる。この結果、安定器がランプを点灯維持するための電圧を供給することができず、出力が急激に変動し、ランプの調光特性が不連続となる現象(以下、ジャンプ現象と呼ぶ)や、ランプが完全に消灯してしまう現象(以下、立消え現象と呼ぶ)が発生する。
【0010】
特に低温時において、このようなジャンプ現象や、立消え現象が発生した場合、フィードバック制御は出力を増加させるように動作するが、再び出力が急激に増加するため、正常なフィードバック動作が行なえず、図15に示すようにランプの出力が周期的に変動する振動現象が発生する。
【0011】
図15は松下電器産業株式会社製のFHF32蛍光灯を周囲温度0℃の環境下において、調光比約20%で調光点灯させたときの波形である。このようなフィードバック制御による出力の振動現象は、フィードバック制御回路の応答速度が速い場合、より具体的には図13に示す抵抗R2の抵抗値とコンデンサC4の容量値との積で決まる時定数が、インバータ回路の動作周期に近い場合には図15(a)に示すように放電灯出力の振動振幅は比較的安定しやすい傾向にある。
【0012】
しかしながら、放電灯を定格電力付近で点灯すると抵抗R1に発生する検出電圧の振幅が大きくなり、オペアンプOP1に過大な信号が入力され、インバータ回路の動作周波数付近でのオペアンプOP1の増幅率が比較的大きいことや、オペアンプOP1の応答の遅れ、出力電流供給能力が足りなくなることなどによってオペアンプOP1の出力電圧が異常発振してしまい、正常なフィードバック制御が行なえないという課題があった。このため、調光時の出力を十分に安定化するためにフィードバック制御回路の応答速度を速くするには限界があった。
【0013】
また、図15(b)、(c)に示すようにフィードバック制御回路の応答速度が比較的遅い場合には定格電力付近でのオペアンプOP1の異常発振は発生しないが、調光時において放電灯出力の周期的な振動振幅が大きくなる。このとき、出力が変動する周期や振幅は、フィードバック制御回路の応答速度の他、インバータ回路や放電灯の過渡応答速度によって決まるため、外乱要因等の影響により出力変動周期、および振幅が微妙に変動し、低温時においてちらつきを生じてしまうという欠点があった。
【0014】
また、特に低温時における放電灯のジャンプ現象や、立消え現象を防止する他の従来例として、特開平6−76979号公報に開示されている技術がある。これは、放電灯に周期的にパルス状の電圧を印加し、ちらつき等の不安定現象を回避し、低光束まで安定した放電が維持できるようにしたものである。
【0015】
具体的には、放電灯に高周波電力を供給する高周波電源回路を備え、入力される調光信号に応じて調光制御部を用いて放電灯に供給する電力を可変することにより放電灯の調光を行うと共に、ランプ動作ポイント切り換え制御部を用いて放電灯に供給する電力の出力状態を周期的に切り替えることにより、パルス状の電圧波形を放電灯に周期的に印加し、放電灯を安定に点灯させるようにしたものである。しかしながら、本従来例では出力のフィードバック制御機能を備えていないため、放電灯の特性ばらつきや、周囲温度の変化によって放電灯の特性が変化し、出力の変動が大きくなるという課題があった。
【特許文献1】特開平6−302393号公報
【特許文献2】特開平6−311753号公報
【特許文献3】特開平6−76979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上述の背景技術に鑑みて発明されたものであり、その課題は、放電灯の調光を行なう放電灯点灯装置において、周囲温度が低下した場合においても、放電灯出力の変動を抑制し、ちらつきや立消えなどの不具合を生じることなく、安定した調光を行なえるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明にあっては、上記の課題を解決するために、図1に示すように、交流電源ACからの入力電圧を整流する整流器DBと、整流器から出力される脈流電圧を平滑する直流電源部(昇圧チョッパ回路6及び平滑コンデンサC1)と、少なくとも一つのスイッチング素子Q2,Q3により構成され、前記直流電源部から出力される直流平滑電圧Vdcを入力し高周波電圧へ変換するインバータ部4と、少なくとも一つのインダクタL2、コンデンサC2を含んで構成され、前記インバータ部4から出力される高周波電圧を入力し、共振作用によって放電灯DLを点灯する共振負荷部5と、前記インバータ部4のスイッチング素子Q2,Q3のオンオフ制御信号を生成し、駆動信号を出力するインバータ制御手段Aと、外部から入力される調光信号に応じて前記インバータ制御手段Aで生成されるオンオフ制御信号を可変する調光制御部と、を備えた放電灯点灯装置において、前記調光制御部は、放電灯DLの電気的出力を検出する出力検出手段(抵抗R1)と、入力される調光信号に応じて調光指令値を設定する調光信号設定手段(調光信号生成回路9)と、前記出力検出手段から出力される検出信号と調光信号設定手段から出力される調光指令値とを比較演算し、この演算結果に応じて前記インバータ制御手段Aで生成されるオンオフ信号を可変するフィードバック制御手段Bを有し、前記放電灯DLにパルス状高電圧を所定の周期で印加するパルス電圧重畳手段Cを設けたことを特徴とするものである。
【0018】
このように、請求項1の発明にあっては、放電灯の点灯状態を検出し、入力される調光信号に応じて、放電灯が所定の出力となるようにフィードバック制御を行なう放電灯点灯装置において、放電灯に周期的にパルス状電圧を印加するパルス電圧重畳手段を設けることにより、特に低温時のちらつきや立消えといった不安定現象を改善したものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、放電灯の出力を略一定に制御するフィードバック制御手段と、特に低温時のちらつきや立消えを防止するパルス電圧重畳手段の双方を備えているので、周囲温度低下に伴う放電灯出力の低下を抑制するとともに、ちちつきや立消えの発生を防止することができる。
【0020】
また、請求項2〜3の発明によれば、特に低温時に発生するフィードバック制御の変動周期と、パルス状電圧の印加周期を同期させることにより、ジャンプ現象時のちらつきや、フィードバック制御応答性等とパルス周期との不整合によるちらつきを改善できる。
【0021】
さらに、請求項4〜5の発明によれば、放電灯に印加するパルス状電圧の印加周期、パルス高さ、パルス幅のより好ましい条件を有するので、より安定した調光を行なえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(実施の形態1)
以下、本発明の第1の実施の形態に係る放電灯点灯装置を図1、図2、図3に基づいて説明する。図1は本実施の形態の回路図を示しており、図2、図3は制御部7の詳細を示している。
【0023】
まず、図1に基づいて、放電灯点灯装置1の構成を説明する。本実施の形態の放電灯点灯装置1は、商用電源ACに接続されるダイオードブリッジDBと昇圧チョッパ回路6と電解コンデンサC1とからなるAC−DCコンバータ3と、ハーフブリッジインバータ4と、共振回路5と、制御部7と、固定抵抗器R1と、放電灯DL(以下、放電ランプDLという)と調光信号生成回路9と、を備えている。
【0024】
点灯回路2はAC−DCコンバータ3と、ハーフブリッジインバータ4と、共振回路5で構成されている。また、制御部7は、昇圧チョッパ回路6のスイッチング素子Q1を制御するチョッパ制御回路8、スイッチング素子Q2,Q3の駆動周波数制御回路であるA回路、フィードバック制御手段であるB回路、および、パルス電圧重畳手段であるC回路を備えている。
【0025】
なお、商用電源ACは、商用の交流電源であり、その電圧は、例えば100Vや200V、その周波数は50Hzや60Hzなどである。
【0026】
AC−DCコンバータ3は、商用電源ACの電源電圧を全波整流するダイオードブリッジDBと、ダイオードブリッジDBの出力を昇圧する昇圧チョッパ回路6とその出力電圧を平滑する電解コンデンサC1とを備えているが、昇圧チョッパ回路6は、その他、降圧チョッパ回路、昇降圧チョッパ回路、あるいは昇圧チョッパ回路と降圧チョッパ回路とを直列に接続した回路などを用いてもよい。要は、ある交流電圧を別の直流電圧に変換するものであれば、どのような回路構成でも構わない。
【0027】
ハーフブリッジインバータ4は、AC−DCコンバータ3の出力端子間に接続されたスイッチング素子Q2、Q3の直列回路を有し、このスイッチング素子Q2、Q3のスイッチング信号を供給するための制御部7が接続され、ハーフブリッジインバータ4のスイッチング素子Q2、Q3の接続点から共振回路5が接続され、スイッチング素子Q3の低電位(ソース)側にハーフブリッジインバータ4に流れる電流を電圧に変換して検出し、制御部7に入力するための固定抵抗器R1が接続されている。
【0028】
すなわち、AC−DCコンバータ3によって得られた直流電圧Vdcは、ハーフブリッジインバータ4の高周波スイッチング動作によって高周波の矩形波交流電圧に変換され、ハーフブリッジインバータ4のスイッチング素子Q2、Q3の接続点に出力される。この矩形波交流電圧が共振回路5に入力されることによって共振作用による略正弦波の電圧が生じ、放電ランプDLの両端に印加され、放電ランプDLが点灯している。このとき、スイッチング素子Q3に流れる電流を固定抵抗器R1によって変換した電圧を制御部7にフィードバックしている。
【0029】
放電ランプDLを点灯させる電力を決めているのは、外部からの調光信号に応じて調光信号生成回路9によって可変される直流電圧Vrefが生成され、この直流電圧Vrefが制御部7に入力されている。
【0030】
つぎに、制御部7は、図1及び図2、図3に示すように、A回路、B回路、C回路を備えている。
A回路はスイッチング素子Q2,Q3の駆動周波数制御回路であり、B回路はフィードバック制御回路であり、図2に示すように固定抵抗器R1によって検出された出力検出信号が入力抵抗R2を介してオペアンプOP1の反転入力端子に入力されるとともに、調光信号生成回路9によって生成された調光信号VrefがオペアンプOP1の非反転入力端子に入力されている。また、オペアンプOP1の出力端子と反転入力端子の間に互いに並列に接続された帰還抵抗R4及びコンデンサC4が接続されており、検出信号と調光信号Vrefの電圧レベルが常に略同一となるように駆動周波数制御回路Aを制御し、スイッチング素子Q1,Q2の駆動周波数を調整する制御(フィードバック制御)を行うものである。
【0031】
C回路はパルス信号をA回路に供給するための制御信号を出力する回路を備えている。A回路に対して、C回路から周期的なパルス状の信号電圧Vpcを供給することでインバータ回路4の駆動周波数を周期的に変動させ、これにより放電ランプDLに印加される高周波電圧(ランプ電圧)を周期的に変動させることにより、パルス状の高電圧(パルス電圧)を放電ランプDLの両端に印加している。
【0032】
C回路の具体構成例を図3に示す。図3に示すように、C回路は、A回路に接続されたオペアンプからなる第1のバッファB1と、第1のバッファB1の入力端(オペアンプの非反転入力端)に互いのカソードが接続されたダイオードD2,D3と、オペアンプからなりその出力端が一方のダイオードD2のアノードに接続された第2のバッファB2と、オペアンプからなりその出力端が他方のダイオードD3のアノードに接続された第3のバッファB3とで構成される。
【0033】
第2のバッファB2の入力端には図4(a)に示すような直流電圧信号Vrefが入力され、第3のバッファB3の入力端には図4(b)に示すような周期T1、パルス幅t1のパルス信号Vplが入力されており、図4(c)に実線で示すようにこれら2種類の信号をダイオードD2,D3によって合成した信号(以下、「パルス電圧指令信号」と呼ぶ)Vpcが第1のバッファB1を介してA回路に与えられる。これにより、入力される調光信号に応じてパルス電圧指令信号Vpcの振幅を可変することにより、調光レベルに応じたパルス電圧振幅の制御が可能となる。
【0034】
駆動周波数制御回路であるA回路は、B回路から入力される出力電圧レベルによりスイッチング素子Q2、Q3の駆動周波数を調光比に応じた値にフィードバック制御するとともに、C回路から入力されるパルス電圧指令信号Vpcのパルス電圧指令信号振幅に応じた周波数分だけ駆動周波数を低い値に周期的に変化させる。その結果、図9に示すように、駆動周波数を周期的にfbからfaへと変化したときに、インバータ回路4から共振回路5を介して放電ランプDLに印加されるランプ電圧Vlaが増大し、放電ランプDLにパルス電圧が印加されることになる。
【0035】
ここで、本構成による、放電ランプDLヘの出力電圧波形を図5に示す。図5は、ランプ電圧Vlaに対して、約1.6msecの周期T1でパルス電圧を印加した場合の例であり、高周波(数10kHz)のランプ電圧の包絡線がT1の周期でパルス的に増大することで実質的にパルス電圧が印加されていることが分かる。このパルス電圧を印加する周期は通常、約10msec以下とすることにより、パルス電圧の印加による出力の変動をちらつきとして目に感じないようにすることができる。
【0036】
本実施形態においては、上述のように出力検出信号と調光信号の電圧レベルが常に等しくなるようにインバータ回路4の駆動周波数を調整するフィードバック制御をB回路で行っているため、低温時においても、放電ランプDLの出力が低下することを抑制することができ、また、パルス電圧の周期的な印加によって、低温時のジャンプ現象や立ち消えといった不具合が発生することを抑制できるという利点がある。
【0037】
(実施の形態2)
以下、本発明の第2の実施の形態を図6、図7を参照して説明する。回路構成については上述の図1と同様である。この実施の形態では、特にパルス状電圧の印加周期を最適化することにより、フィードバック制御とパルス状電圧印加条件との不整合によるちらつきの発生を防止し、より安定した調光性能を得ることができる。
【0038】
図6はフィードバック制御のみ(パルス電圧の重畳なし)で松下電器産業株式会社製のFHF32蛍光灯を周囲温度0℃の環境下において、調光比約20%で調光点灯させたときのランプ電圧波形である。
【0039】
図7はパルス電圧の印加周期T1を変化させた時のランプ電圧波形とオペアンプOP1の出力電圧波形、さらにちらつき発生状況の目視確認をした結果を示している。(ここでは代表例としてパルス電圧の印加周期が3.2msec、2.5msec、1.6msecの測定結果を示す。)
【0040】
図6に示すように、フィードバック制御のみ(パルス電圧の重畳なし)の状態においては、従来例で説明したように、ジャンプ現象の発生によりフィードバック制御が振動し、約3.2msecの周期(以下、T2とする)で出力が周期的に振動し、ちらつきが発生した。
【0041】
本実施の形態においては、図7に示すように、パルス印加周期が3.2msec、1.6msecの場合はちらつきが発生しなかったのに対して2.5msecの時はちらつきが発生した。これは、パルス印加周期T1が3.2msec、1.6msecではフィードバック制御のみによるランプ電圧の振動周期(T2=約3.2msec)に対してパルス印加周期がほぼ同期しており、オペアンプの出力電圧も安定しているためである。つまり、パルス印加周期T1が3.2msecではフィードバック制御のみによるランプ電圧振動の1周期に対してパルス電圧を1回、1.6msecではランプ電圧振動の1周期に対してパルス電圧を2回印加させることでちらつきもなく、オペアンプの出力電圧も安定動作をしている。
【0042】
しかし、パルス電圧の印加周期T1が2.5msecの場合は、フィードバック制御のみによるランプ電圧の振動周期T2に対してパルス電圧の印加周期T1が同期していないため、オペアンプの出力電圧が不安定となり、ちらつきが発生していることがわかる。つまり、フィードバック制御の応答とパルス電圧の印加周期との不整合によって、フィードバック制御が不安定となり、パルスを印加することによって逆にちらつきを発生していることになる。
【0043】
以上のことからフィードバック制御のみによるランプ電圧の振動周期T2に対してパルス電圧の印加周期T1を同期させることにより、フィードバック制御の応答と、パルス電圧の印加周期の不整合によるちらつきの発生を抑制できることがわかる。
【0044】
本実施の形態によると、フィードバック振動周期T2に対して、パルス電圧の印加周期T1を略1/N倍(Nは1以上の整数)とすることにより、低温時においてもちらつきの発生を抑制し、安定な放電ランプの調光を行なうことができる。なお、フィードバック振動周期T2に対して、パルス電圧の印加周期T1を略N倍(Nは1以上の整数)とした場合においても、同様の原理により、フィードバック制御の応答と、パルス電圧の印加周期を整合させることができるから、低温時においてもちらつきの発生を抑制し、安定な放電ランプの調光を行なうことができる。
【0045】
(実施の形態3)
以下、本発明の第3の実施形態を図8を参照して説明する。この実施の形態では、特にパルス状電圧の印加条件(印加周期、パルス高さ、パルス幅、等)を最適化することにより、フィードバック制御とパルス状電圧印加条件との不整合によるちらつきの発生を防止し、より安定した調光性能を得ることができる。
【0046】
図8は松下電器産業株式会社製のFHF32蛍光灯を周囲温度0℃の環境下において、調光比約20%で調光点灯させた状態において、パルス印加周期T1に対するパルス印加区間t1のデューティ比を3%〜50%まで変化させ、パルス印加ピーク電圧値Vo−pをランプ電圧実効値(Vrms)の約4.0倍まで変化させた時のちらつきの発生状況を観測した結果である。
【0047】
ここで、図8(a)はパルス印加周期T1に対するパルス印加区間t1のデューティ比が3%の時の結果をグラフに示したものである。図8(b)はパルス印加周期T1に対するパルス印加区間t1のデューティ比が5%の時の結果をグラフに示したものである。図8(c)はパルス印加周期T1に対するパルス印加区間t1のデューティ比が10%の時の結果をグラフに示したものである。図8(d)はパルス印加周期T1に対するパルス印加区間t1のデューティ比を15%から50%まで変化させた時の結果をグラフに示したものである。なお、デューティ比15%から50%まではほぼ同様の結果が得られたため、図8(d)に示す1つのグラフに結果を示す。
【0048】
図8(a)〜(d)のグラフにおいて、安定領域はランプ電圧波形、オペアンプ出力電圧波形、ちらつき目視評価全てにおいて安定している場合を“OK”の領域で示しており、ランプ電圧波形、オペアンプ出力電圧波形が不安定となり、ちらつきが確認された領域を灰色で示している。
【0049】
図8によると、実施の形態2で説明したように、フィードバック制御のみによるランプ電圧の振動周期(T2=約3.2msec)に対して、パルス印加周期が1/N倍、もしくはN倍(Nは1以上の整数)の近傍で比較的低いパルス電圧でも、ちらつきなく安定に調光できることがわかる。
【0050】
しかしながら、デューティ比が大きいほど、かつパルス印加ピーク電圧が大きいほど、ちらつきなく安定に調光できるパルス印加周期の領域が拡大することがわかる。
【0051】
特に、図8(d)に示すように、パルス印加周期T1に対するパルス印加区間t1のデューティ比を約15%以上とした場合、パルス印加ピーク電圧値(Vo−p)がランプ電圧実効値(Vrms)の約2倍以上の領域では、比較的広いパルス印加周期範囲でちらつきのない安定した調光が可能となり、フィードバック制御のみによるランプ電圧の振動周期T2に対してパルス印加周期T1を、実質上、同期させる必要がなくなることがわかる。
【0052】
より具体的には、図8(d)に示す結果より、パルス印加ピーク電圧値(Vo−p)がランプ電圧実効値(Vrms)の約2倍以上3倍以下の領域において、フィードバック制御のみによるランプ電圧の振動周期(T2)に対してパルス印加周期(T1)がT2≦T1≦N×T2(Nは1以上の整数であり、N×T2≦約10msec)または、1/2×T2≦T1≦3/4×T2の条件を満たす範囲で、安定した調光動作が得られた。
【0053】
また、パルス印加ピーク電圧値(Vo−p)がランプ電圧実効値(Vrms)の約3倍以上の領域においては、パルス印加周期T1に関わらず安定した調光動作が得られた。しかし、回路部品等への電気的ストレスを考慮するとパルス印加ピーク電圧値(Vo−p)は低い方が好ましく、また、点灯装置の部品ばらつきや放電ランプのばらつき、更にはパルス印加周期のばらつき等を考慮すると、実施の形態2で述べたようにフィードバック制御のみによるランプ電圧の振動周期T2に対してパルス印加周期T1を同期させた方がより好ましいことは言うまでもない。
【0054】
本実施の形態によると、パルス印加周期T1に対するパルス印加区間t1のデューティ比を約15%以上とし、パルス印加ピーク電圧値(Vo−p)がランプ電圧実効値(Vrms)の約2倍以上3倍以下、かつ、フィードバック制御のみによるランプ電圧の振動周期T2に対してパルス印加周期T1がT2≦T1≦N×T2(Nは1以上の整数)または、1/2×T2≦T1≦3/4×T2の条件を満たすパルス条件、または、パルス印加周期T1に対するパルス印加区間t1のデューティ比を約15%以上とし、パルス印加ピーク電圧値(Vo−p)がランプ電圧実効値(Vrms)の約3倍以上となるパルス条件とすることにより、点灯装置の部品ばらつきや放電ランプのばらつき、パルス印加周期のばらつきの影響を受けにくく、より安定した放電ランプの調光が行なえる放電灯点灯装置を供給することが可能となる。
【0055】
(実施の形態4)
以下、本発明の第4の実施形態を図10を参照して説明する。フィードバック制御によって発生するランプ電圧の振動は、図2におけるフィードバック制御手段Bを構成するオペアンプOP1およびその周辺部品(コンデンサC4、抵抗R2、R4)によって決まるフィードバック制御回路の周波数応答特性によってその振動周期が変動する。
【0056】
ここで、フィードバック制御によるランプ電圧の振動周期が約10msec以下となるようにフィードバック制御回路の周波数応答特性を設定することにより、ランプ電圧の振動によって発生する光出力の振動が目に感じられにくくなり、ちらつきを抑制することが可能となる。図10は、例えばR2=10kΩ、R4=1000kΩ、C4=18nFとした時のフィードバック制御回路の周波数応答特性を示したものである。図10に示すように、低周波領域でのフィードバックゲインを高くすることにより、ランプ電圧の振動周期を短くし、ちらつきを抑制することができる。
【0057】
より具体的には、図10に示すように、フィードバックゲインの周波数特性が、1kHz以下の周波数帯で0(零)デシベル以上となるようにフィードバック制御手段を構成することにより、ランプ電圧の振動周期が約10msec以下となり、実質的に光出力変動がちらつきとして目に感じられないようにすることができる。また、このとき、放電ランプに印加するパルス電圧の印加周期は、フィードバックによるランプ電圧の振動周期以下とすることにより、パルス電圧の印加周波数に対しては、フィードバックゲインが比較的低い周波数帯となるため、パルス電圧の印加によるフィードバック制御への影響度を小さくすることができる。
【0058】
なお、本実施の形態では、図2に示すフィードバック制御回路での説明をおこなったが、回路構成はこれに限定されるものではなく、他の構成であってもよい。
【0059】
本実施の形態によると、フィードバック制御によって発生するランプ電圧の振動によって発生するちらつきを実質的に目に感じられなくすることができる。また、パルス電圧印加によるフィードバック制御への影響を小さくし、パルス電圧印加によるちらつきの発生を抑制することができる。
【0060】
(実施の形態5)
図11は直管型の照明器具20の一例を示しており、放電ランプLpa、Lpbとして、主に施設・店舗用途に用いられる直管形のランプを使用している。すなわち、上述した実施形態1〜4のいずれかに示す放電灯点灯装置21と、放電灯点灯装置21を装着する本体24と、放電灯点灯装置21から電力が供給される、放電ランプLpa及びLpbとから照明器具20が構成されている。本体24は、いわゆる2灯用の富士型照明器具を示している。22は放電ランプLpaが装着されるソケットであり、23は放電ランプLpa及びLpbと対向する側に配設される白色の反射板である。
【0061】
(実施の形態6)
図12は照明システムの一例を示しており、上述した複数台の照明器具20と、これらの照明器具20を制御する制御装置Sとから照明システムが構成されている。各照明器具20は人体感知センサ(図示しない)を備えており、制御装置Sは、たとえば、12台の照明器具AからLまでの人体感知センサや光束をプログラムによって一括制御している。
【0062】
制御装置Sの特徴として、人体感知センサによって人を感知すると放電ランプが点灯し、人が不在となると調光あるいは消灯する機能や、放電ランプの装着状況の入力、任意の照明器具の点灯、消灯条件の設定が可能であるプログラム制御機能を有しており、設置環境に応じた、非常に効率の高い、省エネルギーの照明システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態1の全体構成を示す回路図である。
【図2】本発明の実施の形態1の要部構成を示す回路図である。
【図3】本発明の実施の形態1の要部構成を示す回路図である。
【図4】本発明の実施の形態1の動作説明のための波形図である。
【図5】本発明の実施の形態1のランプ電圧を示す波形図である。
【図6】本発明の実施の形態2のランプ電圧を示す波形図である。
【図7】本発明の実施の形態2の動作説明のための波形図である。
【図8】本発明の実施の形態3の好ましい動作範囲を示す説明図である。
【図9】本発明の実施の形態1の動作説明図である。
【図10】本発明の実施の形態4の動作説明図である。
【図11】本発明の実施の形態5に係る照明器具の正面図である。
【図12】本発明の実施の形態6に係る照明システムの全体構成図である。
【図13】従来例の構成を示す回路図である。
【図14】従来例の課題を示す説明図である。
【図15】従来例のランプ電圧を示す波形図である。
【符号の説明】
【0064】
1 放電灯点灯装置
2 点灯回路
3 AC−DCコンバータ
4 インバータ回路
5 共振回路
7 制御部
9 調光信号生成回路
DL 放電灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源からの入力電圧を整流する整流器と、
整流器から出力される脈流電圧を平滑する直流電源部と、
少なくとも一つのスイッチング素子により構成され、前記直流電源部から出力される直流平滑電圧を入力し高周波電圧へ変換するインバータ部と、
少なくとも一つのインダクタ、コンデンサを含んで構成され、前記インバータ部から出力される高周波電圧を入力し、共振作用によって放電灯を点灯する共振負荷部と、
前記インバータ部のスイッチング素子のオンオフ制御信号を生成し、駆動信号を出力するインバータ制御部と、
外部から入力される調光信号に応じて前記インバータ制御部で生成されるオンオフ制御信号を可変する調光制御部と、を備えた放電灯点灯装置において、
前記調光制御部は、
放電灯の電気的出力を検出する出力検出手段と、
入力される調光信号に応じて調光指令値を設定する調光信号設定手段と、
前記出力検出手段から出力される検出信号と調光信号設定手段から出力される調光指令値とを比較演算し、この演算結果に応じて前記インバータ制御部で生成されるオンオフ信号を可変するフィードバック制御手段を有し、
前記放電灯にパルス状高電圧を所定の周期で印加するパルス電圧重畳手段を設けたことを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
放電灯の調光領域で発生する放電灯の電圧包絡線の振動周期T2に対し前記パルス電圧重畳手段で設定されるパルス状高電圧の印加周期T1はT1≒T2×NまたはT1≒T2/N(Nは1以上の整数)とすることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
放電灯の調光領域で発生する放電灯の電圧包絡線の振動周期T2に対し、前記パルス状高電圧の印加周期T1はT1≒T2/N(Nは1から3までの整数)であり、パルス状高電圧の印加周期T1に対するパルス状高電圧の印加時間幅t1の比率は5%≦t1/T1<15%とすることを特徴とする請求項2記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記パルス電圧重畳手段で設定されるパルス状高電圧の印加周期T1に対する前記パルス状高電圧の印加時間幅t1の比率はt1/T1≧15%とし、パルス状高電圧のピーク値は、放電灯電圧実効値の2倍以上3倍以下とし、放電灯の調光領域で発生する放電灯の電圧包絡線の振動周期T2に対して、前記パルス状高電圧の印加周期T1は、T2≦T1≦N×T2(Nは1以上の整数)または1/2×T2≦T1≦3/4×T2としたことを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
前記パルス電圧重畳手段で設定されるパルス状高電圧の印加周期T1に対する前記パルス状高電圧の印加時間幅t1の比率はt1/T1≧15%とし、パルス状高電圧のピーク値は、放電灯電圧実効値の3倍以上としたことを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
前記フィードバック制御手段は、フィードバック演算をおこなうためのオペアンプを有し、前記オペアンプの増幅率が1kHz以下の周波数帯域において、0デシベル以上となるように構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の放電灯点灯装置。
【請求項7】
前記パルス状高電圧の印加周期T1は、前記電圧包絡線の振動周期T2に対してT1≦T2となることを特徴とする請求項6記載の放電灯点灯装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の放電灯点灯装置と、放電灯点灯装置を装着する本体と、放電灯点灯装置から電力が供給される放電灯と、を備えたことを特徴とする照明装置。
【請求項9】
請求項8に記載の照明装置と、この照明装置に調光信号を与える制御装置とから構成される照明システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−42576(P2007−42576A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−37432(P2006−37432)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】