説明

映像表示装置、およびヘッドマウントディスプレイ

【課題】重量増加を有効に避けつつも使用者の眼精疲労や視力低下が従来に比べて軽減された映像表示装置を提供すること。
【解決手段】複数種類の波長の光を順次射出するバックライト部と、バックライト部から射出された各波長の光に映像信号に応じた変調をかけるフィールドシーケンシャル方式の透過型液晶表示素子と、変調された各波長の光が入射され、該入射された各波長の光を所定位置に導く導光部とを有する映像表示装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの頭部に装着される映像表示機器であるヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display、以下、「HMD」と記す。)および該ヘッドマウントディスプレイに適した構成の映像表示装置に関連し、詳しくは、使用者の眼精疲労や視力低下等が少ないHMDおよび映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザの頭部に装着される映像表示機器であるHMDが一般に知られている。HMDは、液晶表示パネル等の表示素子上に表示された映像を光学的に拡大し、拡大された虚像として使用者に観察させるように構成されている。このようなHMDの一例が特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2008−216852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されたHMDをはじめとする一般的なHMDでは、使用者が表示素子の拡大映像を長時間見続けることによる眼精疲労や視力低下などが懸念される。HMDを長時間使用し続けたときにおいても眼精疲労や視力低下を生じ難くさせるためには、例えば表示素子を高解像度化や高輝度化して映像を鮮明にするなどの対応が必要である。表示素子を高解像度化や高輝度化するためには、例えば表示素子のサイズを大型化させて画素数を増やしたり一画素当たりの面積を大きくしたりすることが考えられる。
【0005】
しかし、表示素子のサイズを大型化させた場合には表示素子の重量が増加するため、HMDの総重量も増加することとなる。HMDの総重量が重い場合には、HMDを長時間使用するほど使用者に身体的疲労を与えるという別の問題が発生する。また、表示素子を大型化させた場合には、表示画像が人間の視野角(通常±16deg程度)を超えて視野に収まらない虞が生じる。そのため、虚像位置を遠ざける必要がある。かかる場合には、画像を写し出す位置を離すためHMDを大型化させる必要があるため、フレームが掛かる耳や鼻を支点とした前廻りのモーメントが増加して使用者に更なる身体的疲労を与えかねない。或いは、使用者は、視野に収まり切らない画像全体を把握するため、終始眼球を動かす必要があり、更なる眼精疲労を引き起こす問題が生じる。
【0006】
そこで、本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、重量増加を有効に避けつつも使用者の眼精疲労や視力低下が従来に比べて軽減されたHMDおよび該ヘッドマウントディスプレイに適した構成の映像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る映像表示装置は、複数種類の波長の光を順次射出するバックライト部と、バックライト部から射出された各波長の光に映像信号に応じた変調をかけるフィールドシーケンシャル方式の透過型液晶表示素子と、変調された各波長の光が入射され、該入射された各波長の光を所定位置に導く導光部とを有する映像表示装置を備えたことを特徴としている。
【0008】
このようにフィールドシーケンシャル方式駆動の透過型液晶表示素子を映像表示装置に搭載することにより、映像表示装置の総重量を増加させることなく表示映像を高解像度化や高輝度化させて鮮明することができる。そのため、重量増加による使用者の身体的疲労が無いと同時に使用者の眼精疲労や視力低下が従来に比べて少ない。そのため、使用者は、映像表示装置を長時間快適に使用し続けることができる。
【0009】
特に、眼前の光学ユニットが外界光を透過して外界視界に映像を重畳して表示するように構成された透過型HMDに適した構成の映像表示装置においては、外界光の影響により表示映像のコントラストが低下する問題があった。しかし、本発明に係る映像表示装置によれば、表示映像が高解像度化し且つ高輝度化するため、かかる問題が好適に改善される。
【0010】
上記導光部は、変調された各波長の光をそれぞれ二分割する光分割素子を有し、該二分割された各波長の分割光をそれぞれ、透過型液晶表示素子に表示された画像の該透過型液晶表示素子内における画素位置関係が第一の所定位置、第二の所定位置で再現されるように該第一の所定位置、該第二の所定位置に導くように構成されてもよい。
【0011】
別の側面によれば、本発明に係る映像表示装置は、バックライト部と透過型液晶表示素子とを有する表示素子ユニットを一対有する構成であってもよい。かかる場合に導光部は、一方の表示素子ユニットにより変調された各波長の光を第一の所定位置に導くと共に、他方の表示素子ユニットにより変調された各波長の光を第二の所定位置に導くように構成されている。
【0012】
ここで、透過型液晶表示素子が有する透明基板は、例えばSOI(Silicon on Insulator)基板である。ここで使用されるSOI基板としては、例えばSOS(Silicon on Sapphire)基板、SOQ(Silicon on Quartz)基板、SOG(Silicon on Glass)基板の何れかが挙げられる。このなかでもSOS基板は、サファイアの特徴として可視領域を含む赤外線領域から紫外線領域までの光透過性が極めて高いと共に表面硬度が高いため、透過型液晶パネルの透明基板として利用するには最適である。また、SOS基板は、雑音カップリングが少ない低電圧で高速かつ低消費電力の電子回路の形成に有利であると共に耐放射線・耐高温特性に優れている。
【0013】
また、上記の課題を解決する本発明の一形態に係るHMDは、各波長の光を透過型液晶表示素子による表示映像の虚像として使用者に観察させるように、各波長の光を所定位置に導く導光部を持つ映像表示装置を該使用者の眼前で支持する支持手段を有した構成を持つ。
【0014】
また、上記の課題を解決する本発明の別の形態に係るHMDは、各波長の光を透過型液晶表示素子による表示映像の虚像として使用者の右眼、左眼で観察させるように、各波長の光を第一の所定位置、第二の所定位置に導く導光部を持つ映像表示装置を該使用者の眼前で支持する支持手段を有した構成を持つ。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る映像表示装置およびHMDによれば、表示素子のサイズを大型化することなく鮮明な映像を表示することができる。そのため、重量増加による使用者の身体的疲労が無いと同時に使用者の眼精疲労や視力低下が従来に比べて少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
図1は、本実施形態のHMD1の外観図である。図1に示されるように、HMD1のフレーム2には光学部材(例えばSF11)からなる導光板10が嵌め込まれている。フレーム2は、導光板10を使用者の眼前に位置するように支持する。導光板10の第一面10aの略中央には表示素子ユニット20が、使用者の眼前に位置する箇所にはホログラフィック光学素子(Holographic Optical Element、以下、「HOE」と記す。)30R(または31R、32R)、30L(または31L、32L)が、それぞれ接着等により第一面10a上に密着固定されている。
【0018】
表示素子ユニット20は、例えばフィールドシーケンシャル(Field Sequential)方式で駆動する画像生成ユニットである。表示素子ユニット20には、レーザ光源21、拡散光学系22、マイクロレンズアレイ23、および表示素子24が内蔵されている(後述の図2等参照)。レーザ光源21は、R(HeNeレーザ)、G(Hd:YAGレーザ)、B(He−Cdレーザ)の各波長に対応したレーザ光源を有し、各波長の光を高速(例えば180Hz)で順次照射する。各波長の光は、拡散光学系22、マイクロレンズアレイ23に入射されて光量ムラのない均一な平行光に変換されて表示素子24に入射される。
【0019】
表示素子24は、フィールドシーケンシャル方式で駆動する透過型液晶(LCD T-LCOS)パネルである。表示素子24の透明基板には、応答速度が速くフィールドシーケンシャル方式に適したSOS基板が使用されている。SOS基板を使用した透過型液晶パネルの詳細は、例えば国際公開 WO 2006/083298公報に開示されている。なお、表示素子24の透明基板には、SOS基板の代替として他のSOI基板(例えばSOQ基板やSOG基板)を使用することもできる。但し、各種SOI基板のなかでもSOS基板は、サファイアの特徴として可視領域を含む赤外線領域から紫外線領域までの光透過性が極めて高いと共に表面硬度が高いため、透過型液晶パネルの透明基板として利用するには最適である。また、SOS基板は、雑音カップリングが少ない低電圧で高速かつ低消費電力の電子回路の形成に有利であると共に耐放射線・耐高温特性に優れている。
【0020】
表示素子24は、各波長の光に画像エンジン(不図示)が生成する画像信号に応じた変調をかける。表示素子24の有効領域の画素で変調された各波長の光は、所定の光束断面(該有効領域と略同じ形状)をもって導光板10に入射される。なお、表示素子24は、例えばDMD(Digital Mirror Device)や反射型液晶(LCOS)パネル、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等の他の形態の表示素子としてもよい。
【0021】
なお、光利用効率を向上させるため、拡散光学系22とマイクロレンズアレイ23との間に拡散光学系22からの入射光を特定の偏光状態にする偏光板を配置してもよい。
【0022】
図2〜図4はそれぞれ、第一から第三実施形態のHMD1の構成を模式的に示す側面図である。図2〜図4の各図においては、図面を明瞭化するためフレーム2を図示省略している。以下、図2〜図4の各図を使用して各実施形態のHMD1の構成について順に説明する。なお、図2〜図4の各図に示されるように、HMD1は、表示素子24と導光板10の中心を結ぶ中心線Xを挟み左右対称構造を有する。また、表示素子24から導光板10に入射される各波長の光は、後述するように二分割されて使用者の右眼、左眼のそれぞれに導光される。各眼に導光される各波長の光の光路も中心線Xを挟み左右対称である。各実施形態において説明の重複を避けるため、右眼に導光される光を詳細に説明する一方、左眼に導光される光の説明は省略する。
【0023】
まず、図2を使用して第一実施形態のHMD1の構成を説明する。図2に示されるように、第一実施形態のHMD1は、表示素子24と導光板10との間の光路であって、導光板10の第一面10a上に埋設された回折光学素子(Diffractive Optical Element、以下、「DOE」と記す。)40を有する。DOE40は、例えば矩形状を有する。DOE40には、表示素子24により変調された各波長の光が略垂直に順次入射される。DOE40は、表示素子24から入射された光を右眼、左眼のそれぞれに導くため左右同一角度に回折して二分割する。DOE40は、波長が長い光ほど大きい回折角で回折する。すなわち、DOE40による各波長の光に対する回折角は、R、G、Bの順に大きい。
【0024】
導光板10の第二面10b上には、HOE50Rと50Lが中心線Xを挟み左右対称に隙間無く配列され接着等により密着固定されている。HOE50Rおよび50Lは、例えば矩形状を有する反射型の体積位相型HOEであって、R、G、Bの各波長の光に対応する干渉縞が各々に記憶されたフォトポリマーを三枚積層した構成を有する。すなわち、HOE50Rおよび50Lは、R、G、Bの各波長の光を反射しそれ以外の波長の光を透過する波長選択機能を有するように構成されている。
【0025】
また、HOE50Rおよび50Lは、R、G、Bの各波長の光に対応する干渉縞が記録された一層のフォトポリマーとしてもよい。説明を加えると、使用波長がn(nは自然数)種類ある場合には、HOE50Rおよび50Lの層構造は、各波長の光に対応する干渉縞が各々に記憶されたフォトポリマーをn枚積層したもの、或いは、各波長の光に対応する干渉縞が記憶された一層のフォトポリマーとなる。
【0026】
また、二層のフォトポリマーによりHOE50Rおよび50Lを構成し、R、G、Bの各波長の光に対応する波長選択機能を付与することも可能である。例として、R、Gの各波長の光に対応する干渉縞が記憶された一層のフォトポリマーと、Bの波長の光に対応する干渉縞が記憶された一層のフォトポリマーの計二層によりHOE50Rおよび50Lを構成することが考えられる。なお、HOE30Rおよび30Lも反射型の体積位相型HOEであり、HOE50Rおよび50Lと干渉縞パターンが相違するものの、HOE50Rおよび50Lと同一の層構造を有する。HOE30Rおよび30Lと50Rおよび50Lは、例えば干渉縞パターンのピッチが略同一であってもよい。
【0027】
HOE50Rは、順次入射される各波長の光をそれぞれ異なる角度を付与して回折する。HOE50Rによる回折作用により各波長の光は、導光板10と空気との界面で全反射を繰り返して導光板10内部を伝搬しHOE30Rに入射される。このように回折作用により付与される回折角は波長に依存して相違するため、従来からの指摘されている不都合、つまり、導光板外部に射出される光の射出位置が波長毎にずれて色むらが生じることが懸念される。
【0028】
そこで、本実施形態の特徴的構成要素であるHOE50Rは、DOE40とは逆にB、G、Rの順に大きい回折角を付与しつつ、導光板10(より正確にはDOE40)に対する入射位置が略同一の(あるいは別の表現によれば、表示素子24の有効領域内の略同一座標から射出された)全ての波長の光をHOE30R上の略同位置に入射させるように回折する。すなわち、導光板10の略同位置に入射される各波長の光は、波長に依存した回折角差により導光板10内部で異なる光路を進行するものの、HOE30R上で再び重ね合わせられる。別の観点によれば、HOE50Rは、表示素子24の有効領域に表示された画像の該有効領域内における画素位置関係がHOE30R上で忠実に再現されるようにRGBの各波長の光を回折する。
【0029】
このように本実施形態においてHOE50Rは、表示素子24の有効領域内の略同一座標から射出された全ての波長の光をHOE30R上の略同位置に入射させるように回折する。一方、別の実施形態においては、HOE50Rは、表示素子24の有効領域内で相対的にずらされた本来同一画素をなす全ての波長の光をHOE30R上の略同位置に入射させるように回折するように構成されてもよい。
【0030】
HOE30R上で重ね合わせられた各波長の光は、HOE30Rにより回折されて導光板10の第二面10bから外部に略垂直に順次射出される。このように平行光として射出された各波長の光は、表示素子24により生成された画像の虚像として使用者の網膜に結像する。また、使用者が拡大画像の虚像を観察できるように、HOE30Rにコンデンサ作用を付与してもよい。すなわち、HOE30Rの周辺領域に入射された光ほど瞳の中心に寄るように角度をもって射出され使用者の網膜に結像するようにしてもよい。あるいは、使用者に拡大画像の虚像を観察させるために、HOE50Rは、HOE30R上での画素位置関係が表示素子24の有効領域に表示された画像の該有効領域内における画素位置関係に対して拡大された相似形状をなすようにRGBの各波長の光を回折するようにしてもよい。
【0031】
各波長の光は使用者の網膜上に高速で順次結像されるため、使用者は、表示素子24による生成画像をカラー画像として認識することとなる。なお、使用者の眼と表示素子24との実際の距離は数十mm程度に過ぎない。しかし、各波長の光は平行光として眼球に入射されるため、使用者は、無限遠視したときに表示素子24による生成画像を明瞭に視認することができる。
【0032】
別の観点によれば、HOE50Rは、導光板10から射出される光束の断面が、表示素子24からDOE40に入射される光束の断面と略同一形状かつ等倍となるように各光線をHOE30R上に入射させる。したがって、使用者は、表示素子24による生成画像を略等倍で視認することができる。
【0033】
このようにHOE50Rによる回折作用により導光板10内部で異なる光路を辿った各波長の光は、再び重ね合わせられるようにして導光板10から射出されて使用者の眼に導光される。よって、各波長の光を伝搬する媒体が単一の導光板10によって構成されているにも拘わらず、波長に依存した回折角差に起因する色むらの発生が良好に抑えられる。
【0034】
また、各波長の光を伝搬する媒体を単層構造としたため、各波長の光を伝搬する光伝搬光学素子(導光板10、DOE40、HOE30R、30L、50R、50L)が単純な構成となる。かかる構成は、HMD1の軽量化、製造コスト、リードタイム、歩留まり等の面で極めて有利である。なお、HMD1を軽量化させることにより、例えば使用者の負担を軽減する効果が期待される。その結果、使用者は、HMD1を長時間着用できるようになる。
【0035】
また、HMD1には、上述したように、フィールドシーケンシャル方式で駆動する表示素子ユニット20が実装されている。そのため、HMD1は、同時式の表示素子(射出面前面に例えばベイヤ配列等の所定の配列のRGBカラーフィルタを有する表示素子)を持つ表示素子ユニットが実装された従来型HMDと比べて有利な効果を有している。
【0036】
具体的には、従来型HMDでは1画素を構成するために複数のサブピクセルが必要であることから、表示素子自体を大型化しなければ高解像度化できない問題がある。一方、HMD1では各セルが1画素を構成する(つまりサブピクセルが不要な構成である)ため、表示素子が小型でありつつも高い解像度(例えばVGA(Video Graphics Array))が実現される。HMD1は、表示素子のサイズが従来型HMDと同一であるとき、従来型HMDと比べて解像度が例えば3〜4倍になる。HMD1によれば、総重量が増加することなく表示映像が高精細化するため、重量増加による使用者の身体的疲労が無いと同時に使用者の眼精疲労や視力低下が従来に比べて少ない。そのため、使用者は、HMD1を長時間快適に使用し続けることができる。
【0037】
また、HMD1は、従来型HMDと異なりサブピクセルのシーム部(配線部)が不要である。そのため、HMD1は、表示素子自体を大型化させるまでもなく、従来型HMDと比べて開口率を高くして表示映像を高輝度化させることが容易である。さらに、HMD1は、従来型HMDと異なりカラーフィルタを使用しないため、光源から射出された光の透過率が高い。かかる点からも、HMD1は、表示映像の高輝度化に適した構成となっている。よって、HMD1は、使用者の眼精疲労や視力低下が従来型HMDに比べて少ない。別の側面によれば、HMD1は高開口率、高透過率であるため、従来型HMDと同じ輝度の映像を低消費電力で表示することができる。
【0038】
ここで、眼前の光学ユニットが外界光を透過して外界視界に映像を重畳して表示するように構成された透過型HMDにおいては、外界光の影響により表示映像のコントラストが低下する。しかし、HMD1は、表示映像が高解像度化、高輝度化されているため、表示映像のコントラスト低下が良好に抑えられている。
【0039】
また、従来型HMDでは、光源の種類、使用波長等によっては、導光板10内部を複数種類の波長の光が同時に伝搬する場合に干渉が生じてフリッカ等が発生する虞がある。しかし、HMD1においてはフィールドシーケンシャル方式の表示システムが採用されているため、上記干渉は有効に避けられる。また、HMD1ではリフレッシュレートが180Hz程度であり、従来型HMD(60Hz)と比べて高いため、フリッカが極めて少ない。かかる点からも、HMD1は、使用者の眼精疲労や視力低下が従来型HMDに比べて少ない。フリッカの更なる低減をすべく、リフレッシュレートを270Hz(1.5倍速)〜540Hz(3倍速)に上げてもよい。
【0040】
従来型HMDでは、表示映像の色、カラーバランスがカラーフィルタの特性で決まる。そのため、表示素子完成後に表示素子単体では色調整や色補正をすることができない。従来型HMDにおいて色調整や色補正を行うためには、画像エンジンによる電気的な色調整や色補正が必要である。しかし、電気的な色調整や色補正を行うほどノイズが発生して表示映像が劣化するため、電気的な色調整や色補正の程度は少ない方が望ましい。この点、HMD1はカラーフィルタを有しないため、表示映像の色、カラーバランスが光源に依存する。すなわち、HMD1によれば、光源の各波長の光の点灯輝度や点灯時間を調整することにより、表示映像の色、カラーバランスを光学的に調整又は補正することができる。HMD1では表示映像に対する電気的な色調整や色補正の程度を少なく抑えられるため、ノイズの少ない鮮明な映像が表示されることとなる。
【0041】
従来型HMDではカラーフィルタが使用されているため、カラーフィルタの経時変化や、光源の発熱又は温湿度等の使用環境によるカラーフィルタの退色が生じる問題がある。一方、HMD1はカラーフィルタの経時変化や退色の問題が無く、耐環境性に優れているといえる。また、HMD1では光源から射出された波長の光がカラーフィルタを介さない構成であるため、従来型HMDと比べて色再現性が高く、また、カラーフィルタの個体差による色のバラツキ(同一表示素子内でのピクセル毎のバラツキや表示素子毎のバラツキ)を考慮する必要がないといったメリットもある。
【0042】
従来型HMDはHMD1と比べて画素構造や駆動方式等が複雑であり、また、製造工程数が多い(例えばカラーフィルタの取付工程が必要である)ため、歩留まりが悪い。一例として、従来型HMDでは、一つのサブピクセルに欠陥があればそのサブピクセルが属するピクセル全体、つまり3〜4のセルが不良とみなされるため、要求される品質がHMD1と比べて必然的に高くなるといった不利な点がある。別の表現によれば、HMD1は、従来型HMDと比べて画素構造や駆動方式等が単純であり、また、製造工程が少ないため、歩留まりが良い。
【0043】
次に、図3を使用して第二実施形態のHMD1の構成を説明する。なお、以降の実施形態において第一実施形態の構成と同一または同様の構成には同一または同様の符号を付して説明を省略する。
【0044】
図3(a)に示されるように、第二実施形態のHMD1においては、表示素子24と導光板10との間の光路にDOE41が配置されている。すなわち、第二実施形態のHMD1は、第一実施形態のHMD1と異なり導光板10とDOE41との間にエアギャップを有する。DOE41には、表示素子24により変調された各波長の光が略垂直に順次入射される。DOE41は、表示素子24から入射された光を右眼、左眼のそれぞれに導くため左右同一角度に回折して二分割する。分割された各光は、導光板10の第一面10aに入射される。
【0045】
第二実施形態のHMD1は、同一の干渉縞パターンを持つHOE51Rと51Lを有する。HOE51Rと51Lは、互いの中心が一致し、かつ干渉縞パターンが180°反転された状態で積層されている。そして、積層された状態でその中心が中心線Xと一致するように導光板10の第二面10b上に接着等により密着固定されている。なお、HOE51Rと51Lは、それぞれが1〜3層のフォトポリマーからなる別個独立した要素であるが、別の実施形態では単一の要素、つまり一層のフォトポリマーより構成されてもよい。
【0046】
導光板10内部を伝搬されるB、G、Rの各波長の光の光路を図3(b)、(c)、(d)の各図に示す。図3(b)〜(d)の各図に示されるように、HOE51R(または51L)は、DOE41により右眼(または左眼)に導光されるように分割された各波長の光をそれぞれ異なる角度を付与して回折する。詳細には、HOE51Rは、各波長の光を導光板10内部で全反射させつつ、導光板10に対する入射位置が略同一の(あるいは別の表現によれば、表示素子24の有効領域内の略同一座標から射出された)全ての波長の光をHOE31R上の略同位置に入射させるように回折する。
【0047】
このように第二実施形態においても第一実施形態と同様に、導光板10の略同位置に入射される各波長の光は、波長に依存した回折角差により導光板10内部で異なる光路を辿るものの、HOE31R上で再び重ね合わせられる。この結果、各波長の光は、導光板10の第二面10bから平行光として(またはHOE30Rの周辺領域に入射された光ほど瞳の中心に寄るように角度をもって)射出され、表示素子24により生成された画像の虚像として使用者の網膜に結像することとなる。
【0048】
このように第二実施形態においても第一実施形態と同様に光伝搬光学素子(導光板10、DOE41、HOE31R、31L、51R、51L)を単純な構成とすることができ、HMD1の軽量化、製造コスト、リードタイム、歩留まり等の面で極めて有利である。
【0049】
ところで、第一実施形態においては、HOE50Rや50Lによる回折光は、導光板10aとDOE40との界面に入射された場合にその一部がDOE40に戻る虞がある。これは、光量損失の原因となるため望ましくない。このため、第一実施形態においては、最小の回折角と導光板10の厚みとを思料し、導光板10aとDOE40との界面に回折光が入射しないよう導光板10にある程度の厚みを持たせる必要があった。一方、第二実施形態においては、導光板10とDOE41との間にエアギャップを与えている。したがって、HOE51Rや51Lによる回折光は、たとえ第一実施形態において導光板10aとDOE40との界面であった領域に入射されたとしても導光板10と空気との屈折率差により全反射することとなる。すなわち、第二実施形態においては、導光板10の厚みを決定する際にDOE41への戻り光を考慮する必要がない。このため、導光板10の厚みを薄く設計することができ、HMD1のさらなる軽量化に好適である。
【0050】
続いて、図4を使用して第三実施形態のHMD1の構成を説明する。図4(a)に示されるように、第三実施形態のHMD1においては、表示素子24と導光板10との間の光路に何れの光学素子も配置されていない。すなわち、表示素子24により変調された各波長の平行光は、第一面10aから導光板10に直接入射される。
【0051】
第三実施形態のHMD1は、同一の干渉縞パターンを持つHOE52Rと52Lを有する。HOE52Rと52Lは、互いの中心が一致し、かつ干渉縞パターンが180°反転された状態で積層されている。そして、積層された状態でその中心が中心線Xと一致するように導光板10の第二面10b上に接着等により密着固定されている。また、HOE52Rおよび52Lは、HOE50Rや50L等と同様の回折機能とともにDOE40等と同様の回折機能、つまり表示素子24からの入射光を左右に二分割する機能も併せ持つ。HOE52Rおよび52Lは、DOEとHOEを一体形成した構成とも云える。なお、HOE52Rと52Lは、第二実施形態と同様に単一の要素、つまり一層のフォトポリマーより構成されてもよい。
【0052】
導光板10内部を伝搬されるB、G、Rの各波長の光の光路を図4(b)、(c)、(d)の各図に示す。図4(b)〜(d)の各図に示されるように、HOE52R(または52L)は、各波長の光を右眼(または左眼)に導光されるように分割するとともにそれぞれ異なる角度を付与して回折する。より詳細には、HOE52Rは、各波長の光を二分割して導光板10内部で全反射させ、かつ導光板10に対する入射位置が略同一の(あるいは別の表現によれば、表示素子24の有効領域内の略同一座標から射出された)全ての波長の光をHOE32R上の略同位置に入射させるように回折する。
【0053】
このように第三実施形態においても第一、第二実施形態と同様に、導光板10の略同位置に入射される各波長の光は、波長に依存した回折角差により導光板10内部で異なる光路を辿るものの、HOE32R上で再び重ね合わせられる。この結果、各波長の光は、導光板10の第二面10bから平行光として(またはHOE30Rの周辺領域に入射された光ほど瞳の中心に寄るように角度をもって)射出され、表示素子24により生成された画像の虚像として使用者の網膜に結像することとなる。
【0054】
第三実施形態においても第一、第二実施形態と同様に光伝搬光学素子(導光板10、HOE32R、32L、52R、52L)を単純な構成とすることができ、HMD1の軽量化、製造コスト、リードタイム、歩留まり等の面で極めて有利である。また、第三実施形態においては、DOEを削減できるため、HMD1のさらなる軽量化、製造コストダウン、リードタイム短縮、歩留まり向上等が達成される。また、DOEによる光量損失も無くなるため、HMD1全体としての光利用効率が向上する効果も得られる。
【0055】
なお、第一から第三の各実施形態においては、右眼用、左眼用の表示素子を別個に備えること無く単板の表示素子24を備える構成が採用されている。このため、製造コストダウン等の効果が得られる。また、共通の物点からの光(すなわち単板の表示素子24の画像)を同一の光路長を経て使用者の各眼に導光している。このため、使用者の各眼に対して同期した画像を入射させることができる。
【0056】
次に、これまで説明された各実施形態のHMD1の具体例を説明する。以下は、各具体例におけるHMD1の共通の仕様である。
λ:457.9
λ:532.0
λ:632.8
:1.8160
:1.7940
:1.7786
:23.5
:23.5
「λ」、「λ」、「λ」はレーザ光源21から発光されて使用者の眼に導光されるB、G、Rの各光の波長(単位:nm)、「n」、「n」、「n」はB、G、Rの各波長の光に対する導光板10の屈折率、「L」はHOE30R(または31R、32R)の中心を通る法線Xと中心線Xとの距離(単位:mm)、「L」はHOE30L(または31L、32L)の中心を通る法線Xと中心線Xとの距離(単位:mm)、をそれぞれ示す。
【0057】
まず、第一実施形態の具体例を説明する。第一実施形態のHMD1の個別的な具体的数値構成は次の通りである。
t :5.0
d :0.504
θIB :0
θIG :0
θIR :0
θDB、θ’IB :30.000
θDG、θ’IG :36.000
θDR、θ’IR :44.870
θ’DB、θ”IB:39.506
θ’DG、θ”IG:38.474
θ’DR、θ”IR:36.535
θ”DB :0
θ”DG :0
θ”DR :0
「t」は導光板10の厚み(単位:mm)、「d」はDOE40(またはDOE41)の回折ピッチ(単位:μm)、「θIB」、「θIG」、「θIR」はDOE40(またはDOE41)へのB、G、Rの各波長の光の入射角(単位:deg)、「θDB」、「θDG」、「θDR」はDOE40(またはDOE41)によるB、G、Rの各波長の光の回折角(単位:deg)、「θ’IB」、「θ’IG」、「θ’IR」はHOE50R(またはHOE50L〜52L、51R、52R)へのB、G、Rの各波長の光の入射角(単位:deg)、「θ’DB」、「θ’DG」、「θ’DR」はHOE50R(またはHOE50L〜52L、51R、52R)によるB、G、Rの各波長の光の回折角(単位:deg)、「θ”IB」、「θ”IG」、「θ”IR」はHOE30R(またはHOE30L〜32L、31R、32R)へのB、G、Rの各波長の光の入射角(単位:deg)、「θ”DB」、「θ”DG」、「θ”DR」はHOE30R(またはHOE30L〜32L、31R、32R)によるB、G、Rの各波長の光の回折角(単位:deg)を、それぞれ示す。
【0058】
また、DOE40は5.2mm幅、HOE30R、30Lは5.5mm幅HOE50R、50Lは8.0mm幅を有する。なお、奥行き寸法(上記の幅(図2〜4の各図の紙面)に直交する方向の寸法)は、表示素子24の有効領域や表示される画面サイズ等に応じて適宜決められる。
【0059】
第一実施形態の具体例においてHMD1は、次の3つの条件を最低限満足するように設計されている。一つの条件は、DOE40に対する入射位置が略同一の全ての波長の光をHOE30R(またはHOE30L)上の略同位置に入射させることである。もう一つの条件は、導光板10と空気との界面における反射角度を適切にコントロールするため、図2中、DOE40の左端(または右端)に入射、回折されたB光の第二面10bへの最初の入射位置が中心線Xより右側(または左側)になるように回折角等を決定することである。残りの一つの条件は、HOE50Rまたは50Lによる最小の回折角の光(すなわちB光)がDOE40に再入射しないよう該最小の回折角の光および導光板10の厚みtを適切に選択することである。
【0060】
次に、第二実施形態の具体例を説明する。第二実施形態のHMD1の個別的な具体的数値構成は次の通りである。
t :2.0
d :0.712
θIB :0
θIG :0
θIR :0
θDB :40.054
θDG :48.387
θDR :62.785
θ’IB :20.754
θ’IG :24.629
θ’IR :30.000
θ’DB、θ”IB:58.384
θ’DG、θ”IG:58.204
θ’DR、θ”IR:57.932
θ”DB :0
θ”DG :0
θ”DR :0
【0061】
また、DOE41は5.2mm幅、HOE31R、31Lは5.5mm幅、HOE51R、51Lは7.2mm幅を有する。
【0062】
第二実施形態の具体例においてHMD1は、次の2つの条件を最低限満足するように設計されている。一つの条件は、DOE41に対する入射位置が略同一の全ての波長の光をHOE31R(またはHOE31L)上の略同位置に入射させることである。もう一つの条件は、導光板10と空気との界面における反射角度を適切にコントロールするため、図3中、DOE41の左端(または右端)に入射、回折されたB光の第二面10bへの二回目の入射位置が、HOE51Rの右端(またはHOE51Lの左端)より右側(または左側)になるように回折角等を決定することである。
【0063】
第二実施形態においては、HOE51Rまたは51Lによる回折光のDOE41への入射を考慮する必要がないため、導光板10の厚みtを薄くしてHMD1を軽量化させることができる。また、厚みtを薄型化させることにより各波長の光の全反射回数が増加する。かかる全反射回数の増加に伴い、DOE41に対する入射位置が略同一の全ての波長の光が第一面10a上の略同位置に入射する頻度も高くなる。このため、第二面10bから各波長の光が射出される位置(すなわちHOE31R(またはHOE31L)が配置される位置)を使用者の眼幅に合わせてより精細に設定できるようになる。
【0064】
続いて、第三実施形態の具体例を説明する。第三実施形態のHMD1の個別的な具体的数値構成は次の通りである。
t :2.0
θ’IB :0
θ’IG :0
θ’IR :0
θ’DB、θ”IB:52.549
θ’DG、θ”IG:59.216
θ’DR、θ”IR:66.949
θ”DB :0
θ”DG :0
θ”DR :0
【0065】
また、HOE32R、32Lは5.5mm幅、HOE52R、52Lは5.2mm幅を有する。
【0066】
第三実施形態の具体例においてHMD1は、次の2つの条件を最低限満足するように設計されている。一つの条件は、導光板10に対する入射位置が略同一の全ての波長の光をHOE32R(またはHOE32L)上の略同位置に入射させることである。もう一つの条件は、導光板10と空気との界面における反射角度を適切にコントロールするため、図4中、HOE52Rの左端(またはHOE52Lの右端)に入射、回折されたB光の第二面10bへの二回目の入射位置がHOE52Rの右端(またはHOE52Lの左端)より右側(または左側)になるように回折角等を決定することである。なお、図4においては、図面縮尺の関係上二つ目の条件が満足されていないように見えるが、実際には当該条件が満足されていることを言い添えておく。
【0067】
第三実施形態においては、HOE52Rまたは52Lによる回折光のDOEへの入射を考慮する必要がないため、導光板10の厚みtを薄くしてHMD1を軽量化させることができる。また、DOEを削減したことによるHMD1全体としての光利用効率向上、およびHMD1のさらなる軽量化、製造コストダウン、リードタイム短縮、歩留まり向上等が達成される。
【0068】
第三実施形態においては、導光板10の厚みtをさらに薄型化させた設計もあり得る。導光板10の厚みtを1.8mmまたは1.5mmとした場合を例に考える。厚みtが1.8mm、1.5mmの場合はそれぞれ、次の具体的数値構成を満足することにより既に説明された第三実施形態と同様の効果が得られる。なお、ここで挙げられていない具体的数値構成は、既に説明された第三実施形態の具体的数値構成と同一である。
(厚みtが1.8mmの場合)
θ’DB、θ”IB:55.419
θ’DG、θ”IG:61.801
θ’DR、θ”IR:69.045
(厚みtが1.5mmの場合)
θ’DB、θ”IB:60.124
θ’DG、θ”IG:65.925
θ’DR、θ”IR:72.300
このように導光板10の厚みtをさらに薄型化させることにより、HMD1のさらなる軽量化が達成される。
【0069】
以上が本発明の実施形態の説明である。本発明は、各実施形態の構成および具体的数値構成等に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えばLとLの合計距離が使用者の眼幅に高精度に一致するように各実施形態の具体的数値構成を適宜選択する。これにより、使用者の眼幅に最適な位置から各波長の光が射出されるようにHMD1を構成することができる。
【0070】
各実施形態のHMD1が有するHOEは何れも反射型HOEであるが、HOE30R、31R、32R、30L、31L、および32Lを透過型HOEに置き換えてHMD1を構成してもよい。図2〜4に示される第一から第三の各実施形態の変形例として、HOE30R、31R、32R、30L、31L、32Lを透過型HOEであるHOE30’R、31’R、32’R、30’L、31’L、32’Lに置き換えた構成が考えられる。図5〜7のそれぞれに、第一から第三実施形態の変形例である第一から第三変形例のHMD1の構成を模式的な側断面図で示す。
【0071】
第一から第三変形例においては、HOE30’R、31’R、32’R、30’L、31’L、および32’Lは、図5〜7に示されるように、図2〜4の各実施形態のHOE30R、31R、32R、30L、31L、32Lの取付位置と正対する導光板10の第二面10b上に取り付けられている。第一から第三変形例のHMD1は、透過型HOEを採用しているものの、性能的には第一から第三実施形態のHMD1と実質的に同じである。
【0072】
また、第一から第三実施形態(または第一から第三変形例)のさらなる変形例としては、例えばHOE30Rにより回折されて第二面10bから射出された光束(または第二面10bから射出されてHOE30Rにより回折された光束)が入射される位置(つまり使用者の眼前にくる位置)に配置された接眼レンズをさらに有する構成も考えられる。
【0073】
また、表示素子ユニット20が有する光源21は、例えばR、G、Bの各波長の光を高速で順次照射するLED又はLD(半導体レーザ)バックライトとしてもよい。
【0074】
また、第一実施形態等のHMD1においては、左眼用、右眼用それぞれについて同一構成のHOEが干渉縞パターンを180°反転された状態で配置されている。しかし、HOEは、左眼用と右眼用とで同一構成である必要はない。第一実施形態等のHMD1と実質的に同一の性能が担保される限り、左眼用、右眼用のHOEは互いに相違する構成であってもよい。
【0075】
図2〜図7に示された各HMD1は単一の表示素子ユニット20を有する構成であるが、別の実施形態のHMD1’は、左眼、右眼のそれぞれに対応する一対の表示素子ユニット20を有する構成としてもよい。図8は、かかる実施形態のHMD1’の外観図である。図8に示されるように、HMD1’が有する2つの表示素子ユニット20はそれぞれ、導光板10の第一面10a上の、使用者の右眼前、左眼前にくる位置に配置されている。導光板10の第二面10b上には、使用者の右眼前、左眼前にくる位置に、図5〜図7の変形例と同様の透過型HOE(又は接眼レンズ)が配置されている。そのため、各表示素子ユニット20から射出された各波長の光は、導光板10の第一面10aに略垂直に入射されて第二面10bから射出された後、透過型HOE(又は接眼レンズ)を介して、表示素子24により生成された画像の虚像として使用者の網膜に結像される。各表示素子ユニット20の表示素子24が生成する画像は、同期の取れた同一画像であってもよく、或いは両眼視差による立体視を実現するため、左右で異なる画像であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施形態のHMDの外観図である。
【図2】本発明の第一実施形態のHMDの構成を模式的に示す側面図である。
【図3】本発明の第二実施形態のHMDの構成を模式的に示す側面図である。
【図4】本発明の第三実施形態のHMDの構成を模式的に示す側面図である。
【図5】本発明の第一変形例のHMDの構成を模式的に示す側面図である。
【図6】本発明の第二変形のHMDの構成を模式的に示す側面図である。
【図7】本発明の第三変形例のHMDの構成を模式的に示す側面図である。
【図8】本発明の別の実施形態のHMDの外観図である。
【符号の説明】
【0077】
1 HMD
2 フレーム
10 導光板
20 表示素子ユニット
30R〜32R、30L〜32L、50R〜52R、50L〜52L HOE
40、41 DOE

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の波長の光を順次射出するバックライト部と、
前記バックライト部から射出された各波長の光に映像信号に応じた変調をかけるフィールドシーケンシャル方式の透過型液晶表示素子と、
前記変調された各波長の光が入射され、該入射された各波長の光を所定位置に導く導光部と、
を有したことを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
前記導光部は、前記変調された各波長の光をそれぞれ二分割する光分割素子を有し、該二分割された各波長の分割光をそれぞれ、前記透過型液晶表示素子に表示された画像の該透過型液晶表示素子内における画素位置関係が第一の所定位置、第二の所定位置で再現されるように該第一の所定位置、該第二の所定位置に導くことを特徴とする、請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
前記バックライト部と前記透過型液晶表示素子とを有する表示素子ユニットを一対有し、
前記導光部は、一方の前記表示素子ユニットにより変調された各波長の光を第一の所定位置に導くと共に、他方の前記表示素子ユニットにより変調された各波長の光を第二の所定位置に導くことを特徴とする、請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項4】
前記透過型液晶表示素子が有する透明基板は、SOI(Silicon on Insulator)基板であることを特徴とする、請求項1から請求項3の何れかに記載の映像表示装置。
【請求項5】
前記SOI基板は、SOS(Silicon on Sapphire)基板、SOQ(Silicon on Quartz)基板、SOG(Silicon on Glass)基板の何れかであることを特徴とする、請求項4に記載の映像表示装置。
【請求項6】
前記導光部により前記所定位置に導かれた各波長の光を前記透過型液晶表示素子による表示映像の虚像として使用者に観察させるように、請求項1、請求項4、請求項5の何れかに記載の映像表示装置を該使用者の眼前で支持する支持手段を有したことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項7】
前記導光部により前記第一の所定位置、前記第二の所定位置に導かれた各波長の光をそれぞれ、前記透過型液晶表示素子による表示映像の虚像として使用者の右眼、左眼で観察させるように、請求項2又は請求項3を引用する請求項4又は請求項5の何れかに記載の映像表示装置を該使用者の眼前で支持する支持手段を有したことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−32997(P2010−32997A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320875(P2008−320875)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】