説明

曲面反射鏡アンテナ及びそれを用いた位置計測システム

【課題】ある平面内における所望の指向性又は無指向性を有しながら、その平面方向の利得を高めたアンテナを提供すること。同時に無指向性のアンテナにより測位精度を高めた位置測定システムを提供すること。
【解決手段】 本発明の曲面反射鏡アンテナは、放物線の焦点を通り該放物線の中心軸に直交する直線を回転軸として該放物線の頂点から遠い側の曲線の一部を回転して形成される曲面の全部又は一部を反射鏡とし、該焦点の位置に給電部を設けたことを特徴とする。また、このような等方性をもつ複数の曲面反射鏡アンテナにおける受信電波の干渉結果に基づいて電波送信源の位置を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲面反射鏡アンテナと、それを用いた位置計測システムに関し、特に反射鏡の曲面の形状に特徴を有するアンテナ構造に係る技術である。
【背景技術】
【0002】
従来、水平方向に利得を持ちながら、水平面内における方位に対しては無指向性を持つ広帯域アンテナとして、バイコニカルアンテナやモノコーンアンテナ、ディスコーンアンテナ、涙滴型モノポールアンテナ(特許文献1)などが知られている。
これらのアンテナは、広帯域な受信特性を持つと同時に、水平面内における無指向性を兼ね備えているが、水平方向からの上下角に対する放射特性は比較的広く、水平方向への利得を一定以上高くすることが困難であった。また、いずれも垂直偏波の電波の受信には適しているが、水平偏波の受信には適していなかった。
【0003】
そのため、比較的遠方との無線通信のためには、ダイポールアンテナを複数組み合わせたダイポール水平アレイアンテナ(特許文献2)などが多く用いられているが、この場合は水平面内の無指向性は損なわれるため、360度全方位をカバーするためには3基もしくは4基以上のアンテナを組み合わせる必要があり、送受信装置もアンテナの数だけ必要となり、システムを簡易に構成することができなかった。
【0004】
一方、衛星放送受信用や衛星通信用に、反射鏡の表面を放物曲面としたパラボラアンテナが広く使用されている。パラボラアンテナでは公知のように放物線の焦点位置に給電部を設けて、放物線の中心軸方向に平行に入射・放射する電波を送受信している。
具体的には、放物線の一部分を、放物線の中心軸に直交する直線を回転軸として回転させたときにできる二次曲面を反射鏡とし、放物線の焦点にあたるところに給電部を設置することにより、アンテナを構成する。これは、放物線には固有の焦点があり、放物線の中心軸に平行な任意の直線に対し、放物線との交点を通る放物線の接線に線対称な直線は常に焦点を通るという性質を利用したものである。この性質により、放物線を、その中心軸を中心にして回転させたときにできる放物面を反射材で形成すれば、高利得な指向性アンテナが実現できることがよく知られている。
【0005】
パラボラアンテナについては多数の技術が提案されているが、一例として給電部に用いる導波管の構造や材料に係る特許文献3、反射鏡を展開収納可能な構成とする他、副反射鏡を用いる構成として特許文献4に開示される技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3814684号
【特許文献2】特開2007‐135038号公報
【特許文献3】特開2007‐274420号公報
【特許文献4】特開2008‐187628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する問題点に鑑みて創出されたものであり、ある平面内における所望の指向性又は無指向性を有しながら、その平面方向の利得を高めたアンテナを提供することを目的とする。同時に無指向性のアンテナにより測位精度を高めた位置測定システムを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は次のような曲面反射鏡アンテナを提供する。
すなわち、放物線の焦点を通り放物線の中心軸に直交する直線を回転軸として放物線の頂点から遠い側の曲線の一部を回転して形成される曲面の全部又は一部を反射鏡とし、放物線の焦点の位置に給電部を設ける。もちろん、このときの放物線、中心軸、回転軸はいずれも反射鏡を設計するための仮想線であって、曲面反射鏡アンテナは反射鏡及び給電部とからなり、必要に応じて給電部や反射鏡を支持する支持部材や、配線材などを含む。
【0009】
本発明の上記給電部に、キャビティバック型スパイラルアンテナ、又は導波管の断面が円形のホーンアンテナのいずれかを給電フィードとして用いて電波を受信する構成でもよい。
本発明の上記給電部に、キャビティバック型スパイラルアンテナ、又は導波管の断面が円形のホーンアンテナのいずれかを放射器として用いて電波を送信する構成でもよい。
送受信共に可能な曲面反射鏡アンテナとして提供してもよい。
【0010】
上記放物線の回転軸上に、反射鏡の方向に電波を反射する副反射鏡を備える構成であって、その副反射鏡によって焦点を結ぶ位置に給電フィード又は放射器の少なくともいずれかを備える構成でもよい。
【0011】
上記の給電部に対して反射鏡を上方に配置し、放物線の回転軸を略鉛直にして直立させる設置手段を備え、給電部が上空を仰ぐ向きで設置できるようにしてもよい。
【0012】
曲面反射鏡アンテナにおいて、所望の指向角度に応じた中心角を有する部位を反射鏡として構成することもできる。すなわち、本発明の曲面反射鏡アンテナでは反射鏡の曲面が形成されている方角だけに指向性を有するため、反射鏡を全周ではなく、指向角度の範囲だけにすることで指向性をもたせることができる。
【0013】
上記本発明に係る曲面反射鏡アンテナを複数配置し、各曲面反射鏡アンテナにおける受信電波の干渉結果に基づいて、電波送信源の位置を特定する電波送信源位置計測システムを提供することもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以上の構成を備えることにより、次の効果を奏する。
すなわち、放物線の焦点を通り中心軸と直交する直線を回転軸として放物線を回転させることで、放物線の中心軸を含む平面に平行に入射する電波はすべて放物線の焦点に集束する。このような構造にすると、平面に平行な電波は効率よく焦点で受信可能であり利得を高められる一方、平面と平行でない電波は受信しないので、平面から上下方向には強い指向性をもたせることができる。
また、単一の反射鏡を備えるだけでよいので、構造が簡単で故障しにくく、製造コストも抑制できる。
このような特性は、本発明を送信用のアンテナとして用いる場合も同様である。
【0015】
給電部には、キャビティバック型スパイラルアンテナや導波管の断面が円形のホーンアンテナを用いることにより、本発明の反射鏡で反射される電波を無指向性で送受信することができるので、上記反射鏡との組み合わせにおいて特に有効である。また、これらの円偏波受信用の給電部を用いれば、受信する電波が垂直偏波であるか水平偏波であるかに関わらず、任意の方向の直線偏波の電波を同じ利得で受信することができ、また送信の場合には受信アンテナの偏波の方向に関わらず同じ利得での送信を行うことができるという優れた特性を実現する。
【0016】
本発明において主反射鏡と副反射鏡を用いることにより、曲面反射鏡アンテナの設計の自由度が高まり、小型化や給電部の自由な選択に寄与する。
給電部が上空を仰ぐ向きに設置すれば、反射鏡以外から直接給電部に入射する電波を抑制することができ、ノイズの低減に寄与する。
【0017】
本発明の曲面反射鏡アンテナを用いた位置計測システムによれば、アンテナが無指向性であるため電波送信源の位置にかかわらず正確な電波強度の測定が可能であり、位置計測精度の向上に寄与する。また、位置計測システムの低コスト化を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1における曲面反射鏡アンテナの斜視図である。
【図2】本発明における反射鏡の曲面の設計に関する説明図である。
【図3】本発明の実施例1における曲面反射鏡アンテナの断面図である。
【図4】本発明の実施例2における曲面反射鏡アンテナの正面図である。
【図5】本発明の実施例3における電波送信源位置計測システムの説明図である。
【図6】本発明の実施例4における指向性を有する曲面反射鏡アンテナの平面図である。
【図7】本発明の実施例5における曲面反射鏡アンテナの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面に示す実施例を基に説明する。なお、実施形態は下記に限定されるものではない。
(実施例1)
まず、本発明に係る曲面反射鏡アンテナ(以下、本アンテナ)(1)の斜視図を図1に示す。上部には本発明の特徴である曲面を側面に有する略円錐形の反射鏡(10)と、該反射鏡で反射する電波が焦点を結ぶ位置に設けられる給電部(11)を備える。その他、給電部(11)を支える設置台(12)と、設置台(12)から延設されて反射鏡(10)を支持する支持部材(13)を有する。
【0020】
本発明の反射鏡(10)は、放物線の焦点を通り放物線の中心軸に直交する直線を回転軸として放物線の頂点から遠い側の曲線の一部を回転して形成される曲面を利用する。図2にはこの曲面に係る説明図を示す。
x−y座標系(2)において、
(数1)
x = y/60
で表される放物線(20)において、その焦点(21)の座標(15,0)を通り、中心軸(x軸上)(22)に直交する直線(23)を考える。
この直線(23)を回転軸として放物線の一部(x=15〜60の範囲)を360度回転させたときにできる凸型の立体曲面を実施例1の反射鏡(10)とする。
このようにして形成した反射鏡(10)は、直径が90cm、高さが30cmの略円錐形の側面となる。
【0021】
図3は反射鏡(10)を回転軸(23)で切断したときの断面図である。
本発明のような放物曲面を用いると回転軸(23)に直交する、すなわち元の放物線の中心軸に平行に入射する電波(30)は反射鏡(10)に反射して、いずれも焦点(21)に到達する。
そこで、焦点(21)の位置に給電部を設ければ、略円錐形の全周方向からの電波を均等な感度により受信することのできるアンテナ(1)を構成することができる。
【0022】
本アンテナ(1)の特徴として、上記のような無指向性と共に、アンテナ(1)に入射する電波(30)を効率良く受信するため高い利得を得ることができる。
同時に、アンテナ(1)の高さ分に相当する平行に入射する電波(30)だけが焦点(21)に反射するため、それ以外の向きから入射する電波は受信せず、水平方向には強い指向性を有するものである。これによりノイズや反射波などを除去する性能に優れる。
【0023】
次に、給電部(11)について説明する。
本アンテナ(1)を受信アンテナとして用いる場合、焦点(21)位置には、キャビティバック型スパイラルアンテナのように、広角のビームを有して、かつ広帯域な特性を持つ給電フィードを用いる。導波管の断面が円形の円錐形のホーンアンテナを給電フィードとして用いることも可能である。
いずれの場合でも、給電フィードのビーム幅に合わせて、反射鏡(10)の見込み角を合わせるようにすれば、反射された電波だけを受信する効率の良い受信アンテナを実現することができる。
【0024】
上述したように、水平面内の方位に関しては、どの方向から電波が入射しても同等の利得で受信されるため、水平面内における無指向性を実現できる。給電フィードとしてキャビティバック型スパイラルアンテナや円錐型ホーンアンテナを用いる場合には、対応する円偏波に対して最大の利得を得ることができる。
また、直線偏波の電波に対しては、偏波面がどの方向に向いていても同じ利得で受信できるという特性も持つ。利得は、反射鏡(10)の高さの見込み長を長くすることで大きくなるため、必要な利得に応じて反射鏡(10)の大きさ、放物線曲線のパラメータを適宜設計することが可能である。
【0025】
給電フィードにはその他公知の任意のアンテナを用いることができる。例えばダイポールアンテナのように指向性のあるアンテナでもよい。この場合、反射鏡(10)は無指向性のため、給電部(11)に用いるアンテナの指向特性に応じた指向性を有するアンテナ(1)となる。周知のようにダイポールアンテナではエレメントに垂直な方向の利得が最大となり、エレメントと平行な方向の利得は0であるから、給電部(11)におけるダイポールアンテナの向きに従い、ダイポールアンテナのエレメントに垂直な向きの利得に優れたアンテナ(1)が構成される。
【0026】
本発明のアンテナ(1)を受信アンテナとして用いた場合、送信機が遠方にあった場合にも高い利得で効率よく電波を受信することが可能となる。また、送信機の位置がどこにあっても、距離が同じであれば同じ振幅で電波を受信することができる。
【0027】
一方、本アンテナ(1)を送信アンテナとして用いる場合にも、キャビティバック型スパイラルアンテナや円錐型ホーンアンテナを放射器として用いればよい。放射された電波は、反射鏡(10)で反射し、水平方向へと伝播する。
本発明のアンテナ(1)を受信用としても、送信用としても、あるいは両方兼用としても、本質的な特徴は変わらないので、以下の実施例でも特に断ることなく送受信いずれの場合にも用いることができるものとする。
【0028】
図1に示すように本アンテナ(1)は、回転軸に一致する設置台(12)の支柱を略鉛直に直立させて、給電部(11)を下方に、反射鏡(10)を上方に配置している。このような配置によれば、給電部(11)が上方を仰ぐことにより、反射波等の影響を抑制することができる。すなわち、給電部(11)を下方に向けると地面からの反射波が直接給電部(11)に入射しやすくなるため、ノイズとなりやすいのに対し、本実施例のように構成すれば、特に屋外への設置時には給電部(11)から見て反射鏡(10)以外には反射材が近くにないためノイズの影響を抑制することができる。
【0029】
なお、反射鏡(10)を上方に配置するために本実施例では3本の支持部材(13)により支持している。支持部材(13)も電波障害の原因となることは避けられないため、支持部材はなるべく細く、伝搬の障害にならず、かつ強度のある部材が好ましい。
例えば、回転軸から放射方向に平行な平板とすれば、強度を保ちつつ、電波を遮断するのは平板の厚みだけに抑えることができる。素材は樹脂、金属など任意であり、アルミニウムなど軽量の金属も好ましい。
【0030】
(実施例2)
図4には本発明の第2の実施形態に係るアンテナ(4)を示す。
本実施例では実施例1と異なり、反射鏡(10)を下方に、給電部(11)を上方に配置している。本構成では、より軽量な給電部(11)を上方にすることで全体の支持がしやすい利点がある。一方、上記のように地面からの反射波を受信する問題があるが、給電部(11)のビーム幅を反射鏡(10)に合わせて絞ることで反射波の影響を低減することもできる。
【0031】
反射鏡(10)はステンレス製の絞り加工によって形成され、略円錐形の底面部分にはタップネジ部(44)が形成されている。ここに、設置台(42)から上方に突出したネジ部(45)を歯合させることで反射鏡(10)の回転軸が略鉛直に立直するように設置される。言うまでもなく反射鏡(10)は電波を反射するいかなる素材でもよい。
反射鏡(10)の円周部両側から支持部材(43)が上方に延び、給電部(11)を支持している。反射鏡(10)の頂点(10a)から給電部(11)までの長さは上述したように焦点距離(L)に等しい。
なお、給電部(11)の位置を微調整できるようにネジ部(41)で給電部(11)を固定し、ネジを回すことで給電部(11)の高さを調整できるようにしている。
【0032】
反射鏡(10)の外周に地面からの反射波を吸収する電波吸収体を設けてもよい。すなわち、図4に示すように反射鏡(10)の外周部に円盤形の電波吸収板(46)を配設し、本アンテナ(4)の平面方向の指向角度以外からの電波が給電部(11)に入射することを防ぐこともできる。
電波吸収体としては、電波吸収作用を有するものであれば、特に制限はない。単層、多層、ピラミッド形、グリッド形及びタイル形などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
電波吸収体の材料としては、電波吸収作用を有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、誘電損失材、磁性損失材などが挙げられるが、吸収特性の点で焼結フェライト、塩化ビニリデン系合成繊維などの誘電損失材が好ましい。
【0033】
本実施例のように反射鏡を下方に配置する構成では、支持部材(43)を軽量化できるのでアンテナ(4)全体を軽量化することができ、持ち運びにも簡便である。
【0034】
(実施例3)
本発明に係る曲面反射形アンテナを異なる複数の位置に配置して電波送信源の位置計測システムを提供することもできる。本システムについて図5に示す図を用いて説明する。
本実施例では、図5(a)に示すように4基のアンテナ(5)を各地点A,B,C,Dに設置する。そして、各地点における電波源からの受信電波を測定する。電波源1(51)から発信される電波は距離の違いによって異なる位相で各アンテナ(5)に到達する。同様に、電波源2(52)から発信された電波も異なる位相で到達する。
【0035】
公知の電波干渉計によれば、受信した各電波を合成することで、図5(b)のような干渉計画像(53)を得ることができる。なお、干渉計画像の生成時に電波強度の較正が行われることも公知である。
干渉計画像において、電波強度が高い2地点(54)(55)が電波源の位置と推定することができる。本発明における電波送信源位置計測システムは以上の構成により実現される。
【0036】
電波干渉計を用いた位置計測システムに本発明のアンテナを用いることは次のような利点がある。
すなわち、本発明のアンテナ(5)は上述したように無指向性で全方向に均等な利得が得られる特徴があるため、電波強度に基づいて位置計測を行う際に、電波送信源の位置に関わらず正確な測定を行うことができる。特に、電波送信源が動く場合にも本発明アンテナの無指向性により誤差が生じない利点がある。また、水平方向の指向性が強いため、不要な電波により測定結果が乱されることも防止できる。
さらに、従来のダイポールアンテナは周波数に対する依存が大きく、広い周波数帯域に対応することが困難であったが、本発明のアンテナでは周波数帯域が広い。そのため、違法電波の発見など様々な周波数帯域の電波発信源の特定に汎用的に利用することができる。
【0037】
実施例3の変形例として、本発明のアンテナ(5)から同期信号を発射し、受信端末における各信号の受信信号を比較し、到達時の遅延時間から受信端末の位置を計測することも可能である。このような測位方法も公知であるが、本発明のアンテナでは等方的に電波の発射を行うことができるので、受信端末における測位精度の向上が図られる。
【0038】
本発明のアンテナは、上記の他、携帯電話基地局等の無線通信用アンテナとして用いることも好適である。従来の基地局では、ダイポールを水平に複数配列したダイポール水平アレイアンテナを用いられているが、この場合各アンテナからの信号の位相を調整するなど、装置構成が複雑になる問題があった。
本発明によれば、1つのアンテナで全方位をカバーできるため、装置構成を単純化することができる。
【0039】
本発明のアンテナを用いて、車輌や船舶に設置するレーダアンテナを構成することも好適である。従来のレーダではアンテナの指向性からアンテナを回転駆動させる構成が知られているが、本発明のアンテナは無指向性であるため、このような駆動が不要である。
簡便な構成で、ある一定の距離より内側に物体が近づいたときに警告をするような衝突防止レーダを提供することが可能である。
【0040】
(実施例4)
上記実施例では無指向性であることを特徴として挙げてきたが、本実施例では正確な指向性を持つアンテナも提供できることを説明する。
図6は本アンテナ(6)の反射鏡(60)上方から見たときの電波の入射を説明する図である。アンテナ(6)には様々な方角からの電波(61)〜(66)が入射する。
【0041】
ここで、上記のように放物線を回転軸を中心に360度回転させるのではなく、90度だけ回転させた時の曲面を有する反射鏡(60)を用いる。この反射鏡(60)は上方から見れば図示のように中心角90度の扇形となる。
これに入射した電波のうち、反射鏡(60)がある部位に入射した電波(61)(62)(63)はいずれも反射鏡上の各点(61a)(62a)(63a)で反射し、給電部(11)で受信できる。しかし、それ以外の方角から入射した電波(64)(65)(66)は反射鏡(60)がないことから受信しない。
【0042】
このように、反射鏡(60)を所望の指向角度に応じた中心角を有する部位だけに設けることで、正確な指向特性を有するアンテナを実現することができる。
本実施例では、反射鏡(60)を中心角90度の扇形に形成する構成を示したが、中心角を任意に設定できることはもちろん、例えば0度〜90度の他に120度〜150度の範囲にも反射鏡(60)を備えるなど、複数の範囲に指向性をもつアンテナを提供することもできる。
【0043】
さらに、アンテナの基材は360度回転して略円錐形として電波吸収性の素材で構成し、指向性を持たせたい角度の範囲だけに電波反射材料を塗布又は貼付する構成でもよい。電波反射材料としては軽量で加工の容易なアルミ板等を用いるのが好適である。
逆にアンテナ全体を電波反射性の素材で構成して、送受信を避けたい方角の範囲だけ電波吸収体を形成してもよい。
【0044】
この応用例として、指向性を自在に変更できるアンテナを提供することもできる。すなわち、反射鏡(60)の頂点から反射鏡表面を覆うように扇形に拡縮可能な電波反射素材のカバーを用いて、指向性をもたせたい方角の範囲だけ該カバーを広げることにより、指向角度を随時に変更することができる。
また、中心角度の小さい上記電波反射素材のカバーを1周させることで、電波強度の高くなった方角が電波の到来方向として電波方向の測定方法として利用することもできる。
【0045】
本発明のアンテナの携行性を向上させるために、反射鏡面を傘状に収納展開する構成でもよい。パラボラアンテナではこのような構成は公知であるが、本発明の曲面においても同様に実施することができる。
【0046】
(実施例5)
本発明では放物線の焦点位置に給電フィードや放射器を設置する構成の他、放物線の回転軸上に副反射鏡を設ける構成でもよい。図7には本構成の一例を示す。
本アンテナ(7)の反射鏡(70)は頂点部に反射鏡内方に孔部(71)を設けると共に、回転軸(72)上の焦点(73)より反射鏡側に凸型の副反射鏡(74)を設置する。
図示に明らかなように、アンテナ(7)に入射した水平方向の電波は、焦点(73)に向けて反射した後、副反射鏡(74)に再度反射して孔部(71)から給電フィード(75)に伝播する。
【0047】
副反射鏡(74)を用いることで給電フィードや放射器を空間に余裕のある反射鏡内に格納することができる。また、反射鏡は焦点よりも内側に設けることができるので高さ方向の寸法も小さくすることができる。さらに、副反射鏡は軽量化が用意であるため、簡易な支柱でも十分に支持でき、アンテナ全体の軽量化にも寄与する。
【符号の説明】
【0048】
1 曲面反射鏡アンテナ
10 反射鏡
11 給電部
12 設置台
13 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放物線の焦点を通り該放物線の中心軸に直交する直線を回転軸として該放物線の頂点から遠い側の曲線の一部を回転して形成される曲面の全部又は一部を反射鏡とし、該焦点の位置に給電部を設けたことを特徴とする曲面反射鏡アンテナ。
【請求項2】
前記給電部に、キャビティバック型スパイラルアンテナ、又は導波管の断面が円形のホーンアンテナのいずれかを給電フィードとして用いて電波を受信する
請求項1に記載の曲面反射鏡アンテナ。
【請求項3】
前記給電部に、キャビティバック型スパイラルアンテナ、又は導波管の断面が円形のホーンアンテナのいずれかを放射器として用いて電波を送信する
請求項1又は2に記載の曲面反射鏡アンテナ。
【請求項4】
前記放物線の前記回転軸上に、前記反射鏡の方向に電波を反射する副反射鏡を備える構成であって、
該副反射鏡によって焦点を結ぶ位置に給電フィード又は放射器を備える
請求項1ないし3のいずれかに記載の曲面反射鏡アンテナ。
【請求項5】
前記給電部に対して前記反射鏡を上方に配置し、前記回転軸を略鉛直にして直立させる設置手段を備えた
請求項1ないし4のいずれかに記載の曲面反射鏡アンテナ。
【請求項6】
前記曲面反射鏡アンテナにおいて、所望の指向角度に応じた中心角を有する部位を反射鏡として構成する
請求項1ないし5のいずれかに記載の曲面反射鏡アンテナ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の曲面反射鏡アンテナを複数配置し、各曲面反射鏡アンテナにおける受信電波の干渉結果に基づいて電波送信源の位置を特定する
ことを特徴とする曲面反射鏡アンテナを用いた電波送信源位置計測システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−15203(P2011−15203A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157798(P2009−157798)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)総務省委託「広域電波強度分布測定技術の研究開発」の一環、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】