説明

有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜形成用組成物およびそれを用いた有機薄膜トランジスタ

本発明は、ポリアリレートを含む有機薄膜トランジスタのゲート電極絶縁膜形成用組成物、およびその組成物からなる、有機半導体チャネルと接するゲート絶縁膜を含む有機薄膜トランジスタを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜形成用組成物およびそれを用いた有機薄膜トランジスタに関するものである。具体的には、本発明は、主鎖にエステル基を有するポリアリレートを含む有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜形成用組成物およびそれを用いた有機薄膜トランジスタに関するものである。本出願は2006年5月4日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2006−0040636号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0002】
有機半導体物質とは、電気的に絶縁体の性質を帯びる既に知られている大部分の有機物質とは異なり、電場の印加によって電気伝導度を変化させる半導体の性質を示す有機物質をいう。このような有機半導体物質を応用した様々な電気/電子素子が知られており、その例として有機発光ダイオード(Organic Light−Emitting Diode)、有機太陽電池(Organic Solar Cell)、有機薄膜トランジスタなどが挙げられる。
【0003】
有機薄膜トランジスタとは半導体性質を帯びる有機物質を含むチャネルを利用して製作した薄膜トランジスタをいう。有機薄膜トランジスタは、大きく、ソース(source)、ドレイン(drain)、ゲート(gate)を含む電極、有機半導体チャネル、ゲート絶縁膜、基板からなっている。このような有機薄膜トランジスタは、既存のシリコンなどを用いた無機トランジスタに比べ、真空蒸着工程を行うことなく、溶液工程などを通じて低価で大面積に適用することができ、フレキシブル(flexible)素子にも適用できる長所を有する。
【0004】
有機薄膜トランジスタの性能は、有機半導体界面の電位がゲート電極電圧に対してどれくらい効果的に変化するのか、キャリア(carrier)がソース電極から有機半導体に注入されるのに妨害エネルギーが存在するのか、キャリアが有機半導体界面に沿って伝送されるのに散乱(scattering)要素がどれくらいあるのか、ゲート絶縁膜が、有機半導体から伝送されるキャリアがゲート電極に漏れることを防止できる十分な絶縁性を持っているのかなどによって決められる。したがって、有機薄膜トランジスタの開発において、高性能の有機半導体チャネル物質の開発と共に優れた特性を示すゲート絶縁膜の開発も見過ごせない要素であると言える。
【0005】
既に広く知られている有機薄膜トランジスタ用ゲート絶縁膜材料としては酸化シリコン(silicon oxide)、窒化シリコン(silicon nitride)、酸化アルミニウム(Al)などの無機物と、ポリビニルフェノール(polyvinylphenol)[文献Klauk et al.,Journal of Applied Physics 92,5259 (2002)]、ポリビニルアルコール(polyvinylalcohol)[文献Schroeder et al.,Applied Physics Letters 83,3201 (2003)]、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)[文献Ficker et al.,Journal of Applied Physics 94,2638 (2003)]、ポリイミド(polyimide)(大韓民国特許公開2005−0081824)などの有機物に分けることができる。
【0006】
有機薄膜トランジスタに無機物絶縁膜を用いる場合、この無機物絶縁膜は既存のシリコン半導体と同じように真空蒸着工程を用いて製造しなければならないため、工程/費用上の利点が小さく、大面積基板に適用し難い。また、無機物そのものの特性上、柔軟性が落ち、工程温度が相対的に高くて、プラスチック基板のようなフレキシブル素子への応用が難しいというなどの問題がある。また、前記無機物絶縁膜は、一般的に有機物半導体チャネルとの親和性が相対的に低いため、有機薄膜トランジスタ素子の性能が優れていない短所がある。
【0007】
その反面、有機薄膜トランジスタに有機物絶縁膜を用いる場合、溶液工程を通じて絶縁膜フィルムを製造できるため、低価で大面積に適用することができ、低温工程と有機物の柔軟な性質を利用してフレキシブル素子への応用が容易である長所がある。また、有機物の化学構造を様々に設計および変形して様々な特性を有した絶縁膜を製造できるという点も有機物絶縁膜が制限された種類の無機物絶縁膜に比べてより優れた特徴中の1つである。
【0008】
それにもかかわらず、有機ゲート絶縁膜材料は未だにその化学構造および種類において様々ではない。したがって、新しい有機ゲート絶縁膜材料の開発は有機薄膜トランジスタの実現に非常に重要である。多くの絶縁有機物質が知られているが、依然として有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜形成用として好適な絶縁有機物質は多くない。
【特許文献1】大韓民国特許公開2005−0081824
【非特許文献1】Klauk et al.,Journal of Applied Physics 92,5259 (2002)
【非特許文献2】Schroeder et al.,Applied Physics Letters 83,3201 (2003)
【非特許文献3】Ficker et al.,Journal of Applied Physics 94,2638 (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、ポリアリレートを用いて有機薄膜トランジスタの有機半導体チャネルに接するゲート絶縁膜を形成する場合に優れた効果を達成できるということを明らかにした。
そこで、本発明は、有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜形成用組成物およびそれを用いた有機薄膜トランジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記化学式1のポリアリレートを含む有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜形成用組成物を提供する。
【0011】
【化1】

【0012】
前記化学式1において、Ar1およびAr2は互いに同じであるか異なる置換もしくは非置換の芳香族基である。前記ポリアリレートの分子量は5,000以上1,000,000以下であることが好ましく、10,000以上200,000以下であることがより好ましい。
【0013】
また、本発明は、ゲート電極、ゲート絶縁膜、有機半導体チャネル、ドレイン電極、およびソース電極を含む有機薄膜トランジスタであって、前記ゲート絶縁膜が前記有機半導体チャネルと接し、前記化学式1のポリアリレートを含む有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜形成用組成物で形成された絶縁膜からなることを特徴とする有機薄膜トランジスタを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、主鎖にエステル(ester)基を含むポリアリレートを用いて有機薄膜トランジスタの有機半導体チャネルと接するゲート絶縁膜を形成することによって溶液工程を通じてゲート絶縁膜を形成することができ、それにより、既存の工程に比べて簡便で安価な工程を利用できるだけでなく、性能に優れた有機薄膜トランジスタを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下では本発明についてより詳細に説明する。
【0016】
従来の有機ゲート絶縁膜の研究はビニル(vinyl)系高分子、アクリレート(acrylate)系高分子、イミド(imide)系高分子などを中心に進行したことに対し、本発明は前記化学式1のように主鎖に芳香族エステル(aromatic ester)基が含まれた構造の高分子、すなわちポリアリレート(polyarylate)を用いてゲート絶縁膜を形成することを特徴とする。
【0017】
ポリアリレート(polyarylate)は紫外線安定性、固有の難燃性、優れた電気的性質、高い熱変形温度を有し、高い透明性を有する。このような特性により、太陽光集熱性安全装置、構造体/輸送器の材料、照明および電子レンジのランプケース、カメラ内外装品、光設備の電子電気装置などに外装材としてポリアリレートが用いられてきた。
【0018】
しかし、ポリアリレートを有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜として用いた例は未だに知られていない。しかし、本発明では、ポリアリレートが有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜として用いられる場合、有機薄膜トランジスタの性能を向上できるという事実を明らかにした。
【0019】
有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜材料として用いられるためには、所定の条件を満足しなければならない。すなわち、有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜材料として用いられるためには、誘電定数(dielectric constant)が高すぎるか低すぎない所定範囲内にあるべきであり、高い絶縁破壊電圧(breakdown voltage)を有すべきであり、低い漏れ電流(leakage current)を有すべきであるなど、優れた電気絶縁特性を有しなければならない。具体的には、有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜材料は誘電定数が2以上かつ10以下、好ましくは2以上かつ5以下、より好ましくは2以上かつ3以下であり、絶縁破壊電圧が1MV/cm以上であり、漏れ電流が1×10−7A/cm以下であることが好ましい。また、前記のような優れた電気絶縁特性を満足すると同時に、有機薄膜トランジスタのゲート電極と有機半導体チャネルとの界面特性の向上のために、1nm以下の表面粗さ、40度以上140度以下の蒸留水接触角(water contact angle)などのフィルム表面特性などを満足しないと、有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜として正しく機能することができない。本発明では、ポリアリレートを主成分にして形成した絶縁膜が前記のような条件を満足するということを明らかにし、それを用いて優れた性能の有機薄膜トランジスタを提供することができる。
【0020】
前記化学式1のポリアリレートは下記化学式2の芳香族ジオール化合物と下記化学式3の芳香族ジカルボン酸化合物の縮重合(condensation polymerization)によって製造される芳香族線状ポリエステル樹脂である。
【0021】
【化2】

【0022】
前記化学式2において、Ar1は置換もしくは非置換の芳香族基である。
【0023】
【化3】

【0024】
前記化学式3において、XおよびX’は互いに同じでも異なっていてもよく、独立してOH、F、Cl、Br、およびIからなる群から選択され、Ar2は置換もしくは非置換の芳香族基である。
【0025】
前記化学式2の芳香族ジオール化合物の非制限的な例としてはビス(ヒドロキシアリール)アルカン、ビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン、ジヒドロキシジアリールエーテル、ジヒドロキシジアリールスルフィド、ジヒドロキシジアリールスルホキシド、ジヒドロキシジアリールスルホン、ジヒドロキシジアリールイサチン、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシビフェニルなどが挙げられる。前記化学式2の芳香族ジオール化合物の具体的な例としては下記構造式の化合物が挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。
【0026】
【化4】

【0027】
前記化学式3の芳香族ジカルボン酸化合物の非制限的な例としてはテレフタル酸、イソフタル酸、ジ安息香酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)メタン、1,2−ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパン、ビス(4−カルボキシフェニル)オキシド、ビス(4−カルボキシフェニル)スルフィド、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、前記化合物の芳香族基にC−Cアルキルまたはハロゲン基が置換された化合物またはこれらの混合物が挙げられる。前記化学式3の芳香族ジカルボン酸化合物の具体的な例としては下記構造式の化合物が挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。
【0028】
【化5】

【0029】
前記化学式1のポリアリレートは下記反応式1のように製造することができる。
【0030】
【化6】

【0031】
前記ポリアリレートは芳香族ジオール化合物と芳香族ジカルボン酸化合物を単一溶液に溶解して重合する方法である溶液重合によって製造することができる。また、前記ポリアリレートは芳香族ジオール化合物のアルカリ水溶液と芳香族ジカルボン酸化合物のハロゲン化物溶液を混合して重合する方法である界面重合によって製造することもできる。大韓民国特許出願10−2004−0073870には、後者の方法で、残留塩類が少なく、且つ透明性および耐熱性が改善されたポリアリレートの製造方法が記載されており、前記特許文献はその全体が本明細書に含まれる。
【0032】
前記ポリアリレートは用いる原料物質に応じて色々な分子構造式を有し得るが、その中でも下記化学式4で示される単位を有することが好ましい。
【0033】
【化7】

【0034】
前記化学式4において、mおよびnは独立して0以上かつ1以下の実数であり、m+n=1である。
【0035】
また、当技術分野には、有機絶縁膜の電気容量(capacitance)を高めるために有機物質に高誘電率の無機材料を添加したり有機物層に高誘電率の無機材料層を積層したりする方法が知られている。しかし、有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜の電気容量が高すぎる場合には、絶縁膜の分極(polarization)による履歴現象(hysteresis)などの素子安定性が問題になり、on/off電流比も減少する短所がある。また、ゲート絶縁膜を多層の積層構造に形成する場合には、工程上、追加ステップが発生し、有機薄膜トランジスタの相次ぐ動作における経時安定性にも問題があり得る。特に、ポリアリレートの場合、前述した方式によって無機材料を添加したりポリアリレート層を含む有機物層に無機材料層を積層したりする時に熱が多く発生すると、絶縁膜の不均一と漏れ電流の増加をもたらす。例えば、ゾル−ゲル反応を用いて無機物を製造する方式がある。このようなゾル−ゲル反応によって製造された無機物、特にゾル−ゲル方式によって製造された有機シラン系化合物のようなシリコン系無機物の場合、薄膜形成過程に150℃以上の高温の熱が必要であり、これは良質の絶縁膜形成および低温工程とフレキシブル素子への応用などを期待する有機薄膜トランジスタに適用するのに問題点がある。したがって、本発明に係るゲート絶縁膜形成用組成物はポリアリレートを含むが、ゾル−ゲル反応による無機物は含まない。また、前記組成物を用いて形成された絶縁膜を含む本発明に係る有機薄膜トランジスタは前述したゾル−ゲル反応による無機物を含む層との積層構造は含まない。
【0036】
また、本発明に係る有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜形成用組成物からなる絶縁膜は本発明の有機薄膜トランジスタにおいて有機半導体チャネルと接するように配置されることを特徴とする。すなわち、本発明の有機薄膜トランジスタにおいては、本発明に係る組成物からなる絶縁膜と有機半導体チャネルとの間に他の材料からなる絶縁層のような他の層が介在していないことを特徴とする。本発明では、前述したように薄膜に形成した時、有機半導体チャネルと界面特性に優れた本発明に係る組成物を用いて有機薄膜トランジスタの有機半導体チャネルと接するゲート絶縁膜を形成することによって性能に優れた有機薄膜トランジスタを提供することができる。
【0037】
本発明に係る有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜形成用組成物は前述したポリアリレートの他に溶媒を含むことができる。
【0038】
前記溶媒としてはヘキサンなどの脂肪族炭化水素、アニソール、メシチレン、キシレンなどの芳香族炭化水素、メチレンクロライド、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素、メチルイソブチルケトン、1−メチル−2−ピロリジノン、アセトンなどのケトン系溶媒、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、イソプロピルエーテルなどのエーテル系溶媒、エチルアセテート、ブチルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのアセテート系溶媒、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒;シリコン系溶媒またはこれらの混合物などを用いることができるが、これらだけに限定されるものではない。
【0039】
本発明では、前記ゲート絶縁膜形成用組成物を有機薄膜トランジスタのゲート電極上にスピンコーティング(spin−coating)、ディップコーティング(dip−coating)、プリンティング(printing)、スプレーコーティング(spray−coating)、ロールコーティング(roll−coating)などの方法によってコーティングし、溶媒を乾燥させることによって有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜を形成することができる。
【0040】
本発明では、本発明の目的を害しない範囲内でゲート絶縁膜形成用組成物に他の機能を付与するための添加剤を添加することができる。例えば、前記組成物のコーティング性を改善するためのコーティング改善剤を添加することができる。
【0041】
本発明に係る有機薄膜トランジスタはゲート電極、ゲート絶縁膜、有機半導体チャネル、ソース電極、およびドレイン電極を含む。本発明に係る有機薄膜トランジスタはゲート電極の下部に基板をさらに含むことができる。本発明に係る有機薄膜トランジスタは、ゲート絶縁膜が前述したポリアリレートを含む本発明に係るゲート絶縁膜形成用組成物で形成されることを除いては、当技術分野に知られている構成を有することができる。
【0042】
図1は本発明に係る有機薄膜トランジスタの構造を例示したものである。但し、図1の有機薄膜トランジスタは1つの例示に過ぎず、本発明の目的を害しない範囲内で本発明の有機薄膜トランジスタは様々な構造を有することができる。
【0043】
基板としてはシリコン、ガラス、プラスチック、紙などが用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
有機半導体チャネルとしては一般的に半導体の性質を帯びることが知られている有機物質で形成することができる。具体的には、ペンタセン(pentacene)、チオフェンオリゴマー(thiophene oligomer)、アリールアミン(arylamine)、フタロシアニン(phthalocyanine)、フラーレン(fullerene)、ポリチオフェン(polythiophene)、ポリフルオレン(polyfluorene)、ポリフェニレンビニレン(polyphenylenevinylene)、ポリアリールアミン(polyarylamine)、これらの誘導体またはこれらの混合物などを用いることができるが、これらの例だけに限定されるのではない。
【0045】
ソース、ドレイン、およびゲート電極としては金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)などの一般的に用いられる金属、またはインジウムスズ酸化物(indium tin oxide)、インジウム亜鉛酸化物(indium zinc oxide)、ニッケル酸化物(nickel oxide)などの導電性金属酸化物、またはポリアニリン(polyaniline)、ポリピロール(polypyrrole)、ポリエチレンジオキシチオフェン(polyethylenedioxythiophene)などの導電性高分子などを用いることができるが、これらの例だけに限定されるのではない。
【0046】
本発明に係る有機薄膜トランジスタは他の電子素子、例えば有機発光素子、太陽電池、IDタグ(Tag)、e−ウォーターマーク(e−watermark)、e−バーコード(e−barcode)、e−チケット(e−ticket)などに適用することができる。
【実施例】
【0047】
このような本発明を下記の実施例によってより詳細に説明するが、下記の実施例は本発明の理解を助けるためのものであって、これらによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0048】
〔製造例1:ポリアリレート(1)の製造〕
500mLの攪拌器付き反応器に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン6.962g、フェノール0.038g、蒸留水62g、NaOH 2.57gを入れて攪拌した。その次、反応器の温度を20℃に設定した後、EMULGEN120(登録商標)(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(Hydrophile−Lipophile Balance):15.3)5重量%の水溶液1.2gとメチレンクロライド6.2gを添加し攪拌して前記アルカリ水溶液を製造した。これとは別途に、イソフタロイルクロライドとテレフタロイルクロライドが同じモル数で混合された芳香族ジカルボン酸混合物6.22gをメチレンクロライド55gに溶かした。この溶液を予め製造したアルカリ水溶液に加えた。得られた混合物を2時間常温で重合した後に酢酸を付加して反応を終結させた。その次に、1倍体積のメチレンクロライドと2倍体積の蒸留水を用いて5回洗浄した。濾液の伝導度が50μs/cm以下になるまでに繰り返し洗浄し、この溶液をメタノールに注いで重合体を沈殿させた。この沈殿物を真空オーブンで乾燥して重量平均分子量20万の高分子を得た。
【0049】
〔製造例2:ポリアリレート(2)の製造〕
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの代わりに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンがモル比9:1で混合された単量体混合物を用いたことを除いては、前記製造例1と同じ方法によって重合体を製造し、重量平均分子量11万6千の高分子を得た。
【0050】
〔製造例3:ポリアリレート(3)の製造〕
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの代わりに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンがモル比3:1で混合された単量体混合物を用いたことを除いては、前記製造例1と同じ方法によって重合体を製造し、重量平均分子量2万7千の高分子を得た。
【0051】
[実施例]
〔実施例1〕
前記製造例1で製造されたポリアリレート(1)を用いて図1のような有機薄膜トランジスタを製作した。
具体的には、ガラス基板上にパターニングされたITOをゲート電極として用い、先ずこれをアセトンおよびメタノールで洗浄した。前記ポリアリレート(1)をクロロベンゼン(chlorobenzene)に溶かし、これを前記ゲート電極上にスピンコーティング(spin−coating)して厚さ約3600Åの有機ゲート絶縁膜を形成した。このように形成された有機ゲート絶縁膜上に有機半導体チャネルとしてペンタセンを1x10−7torrの高真空下で約0.3Å/sの速度で500Å厚さに真空蒸着した。ソースおよびドレイン電極としてはシャドウマスク(shadow mask)を用いて金を1x10−6torrの高真空下で2Å/sの速度で1000Å厚さに真空蒸着した。チャネル幅(width)は1000μm、チャネル長さ(length)は100μmであった。
【0052】
〔実施例2〕
製造例1で製造されたポリアリレート(1)の代わりに前記製造例2のポリアリレート(2)を用いたことを除いては、実施例1と同じ方法によって有機薄膜トランジスタを製造した。
【0053】
〔実施例3〕
製造例1で製造されたポリアリレート(1)の代わりに前記製造例3のポリアリレート(3)を用いたことを除いては、実施例1と同じ方法によって有機薄膜トランジスタを製造した。
【0054】
〔有機薄膜トランジスタの電気的特性評価〕
実施例1〜3で製造された有機薄膜トランジスタの電気的特性をHP4155C Semiconductor Parameter Analyzerを用いて常温大気中で測定した。−40Vのドレイン電圧下で、ゲート電圧を+20から−40Vまでスキャンし、電流−電圧曲線(transfer curve)を得た。下記飽和領域(saturation region)における電流−電圧関係式から、製造した有機薄膜トランジスタの移動度(mobility)および閾電圧(threshold voltage)を求めることができた。
【0055】
【数1】

:ドレイン電流、W:チャネル幅、L:チャネル長さ、Cins:絶縁膜の静電容量、μsat:飽和領域移動度、V:ゲート電圧、V:閾電圧
【0056】
実施例1〜3で製造された有機薄膜トランジスタの電流−電圧曲線(transfer curve)は図2〜4に各々示す。また、実施例1〜3で製造された有機薄膜トランジスタ性能は表1に比較して示す。
【0057】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】一般的なトップ−コンタクト(top−contact)構造の有機薄膜トランジスタの構造を例示したものである。
【図2】実施例1で製造された有機薄膜トランジスタの電流−電圧曲線(transfer curve)を示すものである。
【図3】実施例2で製造された有機薄膜トランジスタの電流−電圧曲線(transfer curve)を示すものである。
【図4】実施例3で製造された有機薄膜トランジスタの電流−電圧曲線(transfer curve)を示すものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1のポリアリレートを含む、有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜形成用組成物:
【化1】

前記化学式1において、Ar1およびAr2は互いに同じであるか異なる置換もしくは非置換の芳香族基である。
【請求項2】
前記化学式1のポリアリレートは、下記化学式2の芳香族ジオール化合物と下記化学式3の芳香族ジカルボン酸化合物の縮重合(condensation polymerization)によって製造される、請求項1に記載の有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜形成用組成物:
【化2】

前記化学式2において、Ar1は置換もしくは非置換の芳香族基であり、
【化3】

前記化学式3において、XおよびX’は互いに同じでも異なっていてもよく、独立してOH、F、Cl、Br、およびIからなる群から選択され、Ar2は置換もしくは非置換の芳香族基である。
【請求項3】
前記化学式2の化合物は、ビス(ヒドロキシアリール)アルカン、ビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン、ジヒドロキシジアリールエーテル、ジヒドロキシジアリールスルフィド、ジヒドロキシジアリールスルホキシド、ジヒドロキシジアリールスルホン、ジヒドロキシジアリールイサチン、ジヒドロキシベンゼン、およびジヒドロキシビフェニルからなる群から選択される1種以上のものである、請求項2に記載の有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜形成用組成物。
【請求項4】
前記化学式2の化合物は、下記構造式の化合物から選択される1種以上のものである、請求項2に記載の有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜形成用組成物:
【化4】

【請求項5】
前記化学式3の芳香族ジカルボン酸化合物は、テレフタル酸、イソフタル酸、ジ安息香酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)メタン、1,2−ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパン、ビス(4−カルボキシフェニル)オキシド、ビス(4−カルボキシフェニル)スルフィド、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、および前述した化合物の芳香族基にC−Cアルキルまたはハロゲン基が置換した化合物からなる群から選択される1種以上のものである、請求項2に記載の有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜形成用組成物。
【請求項6】
前記化学式3の芳香族ジカルボン酸化合物は、下記構造式の化合物から選択される1種以上のものである、請求項2に記載の有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜形成用組成物:
【化5】

【請求項7】
前記化学式1のポリアリレートが下記化学式4の単位を含むポリアリレートである、請求項1に記載の有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜形成用組成物:
【化6】

前記化学式4において、mおよびnは独立して0以上1以下の実数であり、m+n=1である。
【請求項8】
溶媒をさらに含む、請求項1に記載の有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜形成用組成物。
【請求項9】
前記溶媒は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、アセテート系溶媒、アルコール系溶媒、アミド系溶媒、シリコン系溶媒、およびこれらの混合物から選択される、請求項8に記載の有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜形成用組成物。
【請求項10】
前記ポリアリレートの分子量は5,000以上1,000,000以下である、請求項1に記載の有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜形成用組成物。
【請求項11】
誘電定数が2以上かつ10以下であり、絶縁破壊電圧が1MV/cm以上であり、漏れ電流が1×10−7A/cm以下である、請求項1に記載の有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜形成用組成物。
【請求項12】
前記誘電定数は2以上かつ3以下である、請求項1に記載の有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜形成用組成物。
【請求項13】
フィルム形成時、1nm以下の表面粗さおよび40度以上140度以下の蒸留水接触角を示す、請求項1に記載の有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜形成用組成物。
【請求項14】
ゲート電極、ゲート絶縁膜、有機半導体チャネル、ドレイン電極、およびソース電極を含む有機薄膜トランジスタであって、前記ゲート絶縁膜が前記有機半導体チャネルと接し、請求項1〜13のうちのいずれか1つのゲート絶縁膜形成用組成物によって形成された絶縁膜からなることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
【請求項15】
前記ゲート絶縁膜は、スピンコーティング(spin−coating)、ディップコーティング(dip−coating)、プリンティング(printing)、スプレーコーティング(spray−coating)、およびロールコーティング(roll−coating)のうちから選択される方法によって形成される、請求項14に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項16】
前記有機半導体チャネルは、ペンタセン(pentacene)、チオフェンオリゴマー(thiophene oligomer)、アリールアミン(arylamine)、フタロシアニン(phthalocyanine)、フラーレン(fullerene)、ポリチオフェン(polythiophene)、ポリフルオレン(polyfluorene)、ポリフェニレンビニレン(polyphenylenevinylene)、ポリアリールアミン(polyarylamine)、およびこれらの混合物のうちから選択される、請求項14に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項17】
前記ゲート電極、ドレイン電極、およびソース電極は、金属、導電性金属酸化物、および導電性高分子のうちから選択される材料からなる、請求項14に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項18】
ゲート電極下部に基板をさらに含む、請求項14に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項19】
請求項14の有機薄膜トランジスタを含む電子素子。
【請求項20】
前記電子素子は、有機発光素子、太陽電池、IDタグ(Tag)、e−ウォーターマーク(e−watermark)、e−バーコード(e−barcode)、およびe−チケット(e−ticket)のうちから選択される、請求項19に記載の電子素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−535838(P2009−535838A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509416(P2009−509416)
【出願日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【国際出願番号】PCT/KR2007/002176
【国際公開番号】WO2007/129832
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】