説明

有機EL装置及び電子機器

【課題】表示基板と中継基板との圧着条件を固着部全体に亘って同一にすることにより、固着部における電気的抵抗の不均一性を解消することができるとともに、コントラストの低下等の表示上の不具合を生ずることがない電気光学装置、及び当該電気光学装置を備える電子機器を提供する。
【解決手段】複数の発光素子と、走査線駆動回路用制御信号配線24a等の信号線を介して供給される信号に応じて発光用電源配線23R等の電源線を介して供給される電流を発光素子に供給するスイッチング素子とが形成された表示基板を備える電気光学装置であって、発光用電源配線23R等の電源線は走査線駆動回路用制御信号配線24a等の信号線より幅広に形成されており、発光用電源配線23R等の電源線には、外部接続端子66a,66b,66c等の複数の外部接続端子が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置及び電子機器に係り、特に有機エレクトロルミネッセンス材料を備えた電気光学装置及び当該電気光学装置を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画素電極(陽極)及び陰極の間に、有機蛍光材料等の発光材料からなる発光素子が挟持された構造のカラー電気光学装置、特に発光材料として有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)材料を用いた有機EL表示装置の開発が行われている。以下、従来の電気光学装置(有機EL表示装置)について簡単に説明する。
【0003】
図11は、従来の電気光学装置の配線構造を示す図である。図11に示すように、従来の電気光学装置は、複数の走査線901と、走査線901に対して交差する方向に延びる複数の信号線902と、信号線902に並行して延びる複数の発光用電源配線903とがそれぞれ配線され、走査線901と信号線902との各交点毎に、画素領域Aが設けられている。各信号線902は、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン、及びアナログスイッチを備えるデータ側駆動回路904に接続されており、各走査線901は、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査側駆動回路905に接続されている。
【0004】
また、画素領域Aの各々には、走査線901を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング薄膜トランジスタ913と、このスイッチング薄膜トランジスタ913を介して信号線902から供給される画像信号を保持する保持容量Capと、保持容量Capによって保持された画像信号がゲート電極に供給されるカレント薄膜トランジスタ914と、このカレント薄膜トランジスタ914を介して発光用電源配線903に電気的に接続されたときに発光用電源配線903から駆動電流が流れ込む画素電極911と、この画素電極911と陰極912との間に挟み込まれる発光層910とが設けられている。陰極912は、陰極用電源回路931に接続されている。
【0005】
上記の発光層910には、赤色に発光する発光層910R、緑色に発光する発光層910G、青色に発光する発光層910Bの3種の発光素子が含まれ、各発光層910R,910G,910Bがストライプ配置されている。そして、カレント薄膜トランジスタ914を介して各発光層910R,910G,910Bに接続される発光用電源配線903R,903G,903Bは、それぞれ発光用電源回路932に接続されている。各色毎に発光用電源配線が配線されているのは、発光層910の駆動電位が各色毎に異なるためである。
【0006】
以上の構成において、走査線901に走査信号が供給されてスイッチング薄膜トランジスタ913がオン状態になると、そのときに信号線902に供給されている画像信号に応じた電荷が保持容量Capに保持される。この保持容量Capに保持された電荷の量に応じて、カレント薄膜トランジスタ914のオン・オフ状態が決まる。そして、カレント薄膜トランジスタ914を介して発光用電源配線903R,903G,903Bから画素電極911に電流が流れ、更に発光層910を介して陰極912に駆動電流が流れる。このとき、発光層910を流れた電流量に応じた量の発光が発光層910から得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図11に示した電気光学装置は、走査線901、信号線902、陰極912、発光用電源配線903(903R,903G,903B)、走査側駆動回路905、及び画素領域Aがガラス等の透明基板(表示基板)上に形成され、陰極用電源回路931、発光用電源回路932、及びデータ側駆動回路904等の回路が可撓性のあるフレキシブル基板(中継基板)上に配置された構成とされることがある。
【0008】
かかる構成の場合には、基板に対してフレキシブル基板を固着させ、走査線901、信号線902、陰極912、及び発光用電源配線903とフレキシブル基板上に形成された回路とを電気的に導通させる必要がある。基板とフレキシブル基板との固着及び電気的な接続は、基板とフレキシブル基板との間に導電粒子を含む異方性導電膜を配置し、フレキシブル基板を基板に対して圧着させることにより行われる。
【0009】
上述した電気光学装置に設けられる発光層910を安定して発光させるためには、発光用電源配線903から画素電極911に印加する駆動電流の電位変動をできるだけ少なくすることが要求される。特に、図11に示した電気光学装置は電流駆動型の電気光学装置であり、表示ムラ及びコントラスト低下等の表示上の不具合を防止するためには、陰極912及び発光用電源配線903の配線抵抗等による電圧降下を極力抑える必要がある。このため、陰極912及び発光用電源配線903は、走査線901及び信号線902よりも幅広に形成されている。
【0010】
基板とフレキシブル基板と固着させる際には、主として圧着部において生ずる電気的抵抗の均一化を図るために、固着部の全面に亘って圧着条件を同一にしたいという要求がある。この要求を満たすためには、固着部に設けられ、上述した種々の配線が接続される端子の形状を同一にする必要がある。
【0011】
しかしながら、上述したように、図11に示した電気光学装置は電流駆動型の電気光学装置であるため、陰極912及び発光用電源配線903の配線幅を狭くすることは配線抵抗等による電圧降下を考慮すると困難である。また、走査線901及び信号線902は数が多く、これら全てを配置するためには細線化及び狭ピッチ化する必要があるため、走査線901及び信号線902の線幅を陰極912及び発光用電源配線903の線幅と同程度にすることも困難である。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、表示基板と中継基板との圧着条件を固着部全体に亘って同一にすることにより、固着部における電気的抵抗の不均一性を解消することができるとともに、コントラストの低下等の表示上の不具合を生ずることがない電気光学装置、及び当該電気光学装置を備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の電気光学装置は、複数の画素領域が設けられた実表示領域と、複数の信号線と、前記複数の信号線との交点に応じて前記複数の画素領域が設けられるように形成された複数の走査線と、前記画素領域に駆動電流を供給する、前記複数の信号線の各々の幅よりも広い電源線と、前記複数の走査線に走査信号を供給する走査線駆動回路と、前記走査線駆動回路に走査線駆動回路用制御信号を供給する走査線駆動回路用制御信号配線と、前記実表示領域の外側に配置され、前記走査線駆動回路用制御信号配線に接続される第1外部接続端子と、を有し、前記第1外部接続端子の幅は、前記走査線駆動回路用制御信号配線の幅と同じであることを特徴とする。
また、本発明の電気光学装置は、上記の電気光学装置であって、前記実表示領域の外側に配置され、前記電源線に接続される複数の第2外部接続端子を備え、前記複数の第2外部接続端子の各々の幅は、前記電源線の幅よりも狭いことを特徴とする。
また、本発明の電気光学装置は、上記の電気光学装置であって、前記実表示領域の外側に配置され、前記複数の信号線の各々に接続される複数の第3外部接続端子を備え、前記複数の第3外部接続端子の各々の幅は、前記複数の信号線の各々の幅と同じであることを特徴とする。
また、本発明の電気光学装置は、上記の電気光学装置であって、前記第1外部接続端子、前記第2外部接続端子、及び前記第3外部接続端子には、それぞれ凸部が形成されていることを特徴とする。
また、本発明の電気光学装置は、上記の電気光学装置であって、前記第1外部接続端子、前記第2外部接続端子、及び前記第3外部接続端子の表面には、それぞれ複数の凹部が形成されていることを特徴とする。
本発明の電子機器は、上記の何れかに記載の電気光学装置を備えることを特徴としている。
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点による電気光学装置は、第1外部接続端子に接続してなる第1配線と、当該第1配線の幅より広い第2配線とが少なくとも形成された電気光学装置において、前記第2配線に対して複数の第2外部接続端子が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、第1配線よりも幅広の第2配線に対しては、外部接続端子が複数設けられているため、配線が施された基板を表示基板に固着させるとともに導通を取るときの圧力の掛かり具合等の圧着条件を固着部全体に亘って均一化することができる。このため、固着部における電気的抵抗の不均一性を解消することができ、その結果として、固着部における電気的抵抗の不均一性に起因する表示ムラ及びコントラストの低下等の表示上の不具合を生ずることがない。
また、本発明の第1の観点による電気光学装置は、前記第1外部接続端子及び前記第2外部接続端子には、凸部が形成されていることを特徴としている。
この発明によれば、第1配線及び第2配線に対して設けられる第1外部接続端子及び第2外部接続端子の何れにも凸部が形成されており、例えば異方性導電膜で配線が施された基板を表示基板に固着させるときには、異方性導電膜に含まれる導電粒子が、第1外部接続端子及び第2外部接続端子の両端からはみ出す割合が少なくなり、逆に外部接続端子上に留まる割合が上昇するため、固着部における電気的抵抗を低減する上で極めて好適である。
また、本発明の第1の観点による電気光学装置は、前記第1外部接続端子及び前記第2外部接続端子の表面には複数の凹部が形成されていることを特徴としている。
この発明によれば、第1外部接続端子及び第2外部接続端子の表面に形成された複数の凹部により、第1外部接続端子及び第2外部接続端子がいわば複数の電極として分割した構成となっているため、配線が施された基板を表示基板に固着させるとともに導通を取るときの圧力の掛かり具合等の圧着条件をより均一化することができる。
また、本発明の第1の観点による電気光学装置は、前記第2外部接続端子の幅がほぼ等しいことを特徴としている。
この発明によれば、第2外部接続端子の幅がほぼ等しく設定されているため、配線が施された基板を表示基板に固着させるとともに導通を取るときの圧力の掛かり具合等の圧着条件をより好ましい状態に設定することができる。
また、本発明の第1の観点による電気光学装置は、前記第1配線と同程度の幅を有する第1中継配線と、前記第2配線と同程度の幅を有する第2中継配線とが形成され、前記第1外部接続端子を介して前記第1配線と前記第1中継配線とが電気的に接続され、前記第2外部接続端子を介して前記第2配線と前記第2中継配線とが電気的に接続された中継基板を有することを特徴としている。
上記課題を解決するために、本発明の第2の観点による電気光学装置は、複数の発光素子と、信号線を介して供給される信号に応じて電源線を介して供給される電流を各前記発光素子に供給するスイッチング素子とが形成された電気光学装置において、前記電源線の幅は前記信号線の幅より広く形成されており、前記電源線に対して複数の第1外部接続端子が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、発光素子からの発光を得るため大電流を供給する必要から幅広に形成された電源線と、数多くの信号を供給するために細線化及び狭ピッチかされた信号線とが混在する場合においても、幅広に形成された電源線に対しては外部接続端子が複数設けられているため、配線が施された基板を表示基板に固着させるとともに導通を取るときの圧力の掛かり具合等の圧着条件を固着部全体に亘って均一化することができる。このため、固着部における電気的抵抗の不均一性を解消することができ、その結果として、固着部における電気的抵抗の不均一性に起因する表示ムラ及びコントラストの低下等の表示上の不具合を生ずることがない。
また、本発明の第2の観点による電気光学装置は、前記第1外部接続端子及び前記信号線に対して設けられる第2外部接続端子には、凸部が形成されていることを特徴としている。
この発明によれば、電源線及び信号線に対して設けられる第1外部接続端子及び第2外部接続端子の何れにも凸部が形成されており、例えば異方性導電膜で配線が施された基板を表示基板に固着させるときには、異方性導電膜に含まれる導電粒子が、第1外部接続端子及び第2外部接続端子の両端からはみ出す割合が少なくなり、逆に外部接続端子上に留まる割合が上昇するため、固着部における電気的抵抗を低減する上で極めて好適である。
また、本発明の第2の観点による電気光学装置は、前記第1外部接続端子及び前記第2外部接続端子の表面には複数の凹部が形成されていることを特徴とする請求項6又は請求項7記載の電気光学装置。
この発明によれば、第1外部接続端子及び第2外部接続端子の表面に形成された複数の凹部により、外部接続端子がいわば複数の電極として分割した構成となっているため、配線が施された基板を表示基板に固着させるとともに導通を取るときの圧力の掛かり具合等の圧着条件をより均一化することができる。
また、本発明の第2の観点による電気光学装置は、前記第2外部接続端子の幅がほぼ等しいことを特徴としている。
また、本発明の第2の観点による電気光学装置は、前記信号線と同程度の幅を有する第1中継配線と、前記電源線と同程度の幅を有する第2中継配線とが形成され、前記第1外部接続端子を介して前記信号線と前記第1中継配線とが電気的に接続され、前記第2外部接続端子を介して前記電源線と前記第2中継配線とが電気的に接続された中継基板を有することを特徴としている。
また、本発明の第2の観点による電気光学装置は、前記第1外部接続端子及び前記第1中継配線、並びに、前記第2外部接続端子及び前記第2中継配線が異方性導電膜により固着されていることが好ましい。
本発明の電子機器は、上記の何れかに記載の電気光学装置を備えることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態による電気光学装置を模式的に示す分解斜視図である。
【図2】異方性導電膜40により中継基板30と表示基板20とが固着される様子を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による電気光学装置の配線構造を模式的に示す図である。
【図4】本実施形態の電気光学装置の平面模式図である。
【図5】図4のA−A'線に沿う断面図である。
【図6】図4に示した固着部65付近の上面図である。
【図7】図6中のB−B'線に沿う第2外部接続端子66c及び第2外部接続端子70の断面図である。
【図8】図7中の外部接続端子70の拡大図である。
【図9】本発明の一実施形態による電気光学装置を備える電子機器の一例を示す図である。
【図10】他の電子機器としての携帯電話機を示す斜視図である。
【図11】従来の電気光学装置の配線構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による電気光学装置及び電子機器について詳細に説明する。尚、以下の説明で参照する各図は、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態による電気光学装置を模式的に示す分解斜視図である。図1に示すように、本実施形態の電気光学装置10は、大別すると表示基板20と、表示基板20に接続される中継基板30とから構成される。表示基板20は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor)を用いたアクティブマトリクス方式の有機EL装置である。
【0017】
この表示基板20には、複数の走査線21が形成されており、この走査線21に交差する方向に延びる複数の信号線22が形成されている。また、表示基板20には、発光素子が複数形成された表示素子20aが設けられている。更に、図1においては図示を省略しているが、表示基板20には電源線及び陰極が形成されている。また、表示基板20の一端には、走査線21、信号線22、並びに不図示の電源線及び陰極各々に対する外部接続端子27が形成されている。
【0018】
尚、図1に示した電気光学装置10は、あくまでも主要な構成を模式的に示したものであり、実際の走査線21、信号線22、及び外部接続端子27は、極めて狭い間隔をもって多数が表示基板20上にそれぞれ形成されている点に注意されたい。また、外部接続端子27と走査線21との接続状態との接続状態も図1においては図示を省略している。
【0019】
中継基板30は、可撓性を有するベース基板31上に複数の配線32が形成されており、更に中継基板30の所定位置に半導体チップ33を搭載した構成である。配線32の一端には、表示基板20に形成された走査線21及び信号線22等の配線と電気的に接続するための外部接続端子34が形成されている。尚、図1では、中継基板30上に半導体チップ33のみが実装された構成であるが、半導体チップ33が実装される部位以外の部位の所定位置に抵抗、コンデンサ、その他のチップ部品を実装しても良い。また、中継基板30に形成される配線32及び外部接続端子34も、その構造の理解を容易にするために、間隔を拡大して模式的に示すとともに、構造を簡略化して図示してある。
【0020】
図1に示すように、中継基板30は、異方性導電膜40を介して表示基板20に固着される。このとき、中継基板30の外部接続端子34は異方性導電膜40を介して表示基板20の外部接続端子27と電気的に接続される。この異方性導電膜40は、一対の端子間を異方性を持たせて電気的に一括接続するために用いられる導電性のある高分子フィルムであって、例えば、図2に示すように、熱可塑性又は熱硬化性の接着用樹脂41aの中に多数の導電粒子41bを分散させることによって形成される。
【0021】
図2は、異方性導電膜40により中継基板30と表示基板20とが固着される様子を示す断面図である。図2に示すように、表示基板20に形成された外部接続端子27と中継基板30に形成された外部接続端子34との間に導電粒子41bが挟持されるため、外部接続端子27と中継配線である外部接続端子34との間が電気的に接続されることになる。一方、外部接続端子27及び外部接続端子34が形成されている部位以外の部位においては、導電粒子41bが挟持されていても、接続端子が存在しないため、導通は取れていない。このようにして、外部接続端子27及び外部接続端子34との間のみで導通をとることができる。
【0022】
異方性導電膜40を用いて表示基板20と中継基板30とを固着させるには、表示基板20を表面が粗面とされた案内板を有する載置台(何れも図示省略)上に配置し、表示基板20を真空吸着する。このとき、少なくとも表示基板20に対して中継基板30が固着される部位が案内板の上方に位置するように表示基板20を載置台上に載置する。ここで、表面が粗面とされた案内板を用いるのは、案内板と表示基板20の接触面積を低減して案内板からの熱放散を抑えることで、表示基板20に加える温度を低下させるためである。
【0023】
表示基板20の載置台上への載置が完了すると、中継基板30が固着される表示基板20の部位に異方性導電膜40を貼付し、更に、半導体チップ33が搭載された面を下側にして、外部接続端子34が異方性導電膜40の上方に位置するように中継基板30の位置合わせを行う。以上の工程が終了すると、図示しない加熱加圧ヘッドを用いて外部接続端子34が形成されている面の裏面を加熱・加圧して、外部接続端子34と表示基板20に形成されている外部接続端子27との導通をとるとともに、中継基板30を表示基板20に固着させる。このとき、加熱加圧ヘッドから中継基板30及び表示基板20に加える温度は百数十〜数百℃程度であり、加える圧力は数メガパスカルである。以上の工程を経ることにより、中継基板30を表示基板20に固着させることができる。
【0024】
次に、本実施形態の電気光学装置10の配線構造の詳細について説明する。図3は、本発明の一実施形態による電気光学装置の配線構造を模式的に示す図である。図3に示したように電気光学装置10は、複数の走査線21と、走査線21に対して交差する方向に延びる複数の信号線22と、信号線22に並行して延びる複数の発光用電源配線23とがそれぞれ配線されており、走査線21及び信号線22の各交点付近に、画素領域Aが設けられている。
【0025】
各信号線22には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン、及びアナログスイッチを備えるデータ側駆動回路33aが接続されている。また、各信号線22には、薄膜トランジスタを備える検査回路25が接続されている。更に、各走査線21には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路24が接続されている。
【0026】
また、画素領域Aの各々には、スイッチング薄膜トランジスタ52、保持容量Cap、カレント薄膜トランジスタ53、画素電極51、発光層50、及び陰極26が設けられる。スイッチング薄膜トランジスタ52は、そのゲート電極に走査線21が接続されており、走査線21から供給される走査信号に応じて駆動されてオン状態又はオフ状態となる。保持容量Capは、スイッチング薄膜トランジスタ52を介して信号線22から供給される画像信号を保持する。
【0027】
カレント薄膜トランジスタ53は、そのゲート電極がスイッチング薄膜トランジスタ52及び保持容量Capに接続されており、保持容量Capによって保持された画像信号がゲート電極に供給される。画素電極51は、カレント薄膜トランジスタ53に接続されており、カレント薄膜トランジスタ53を介して発光用電源配線23に電気的に接続したときに発光用電源配線23から駆動電流が流れ込む。発光層50は画素電極51と陰極26との間に挟み込まれている。
【0028】
上記、発光層50には、赤色に発光する発光層50R、緑色に発光する発光層50G、及び青色に発光する発光層50Bの3種の発光素子が含まれ、各発光層50R,50G,50Bがストライプ配置されている。そして、カレント薄膜トランジスタ53を介して各発光層50R,50G,50Bに接続される発光用電源配線23R,23G,23Bがそれぞれ、発光用電源回路33cに接続されている。各色毎に発光用電源配線23R,23G,23Bが配線されているのは、発光層50R,50G,50Bの駆動電位が各色毎に異なるためである。
【0029】
また、本実施形態の電気光学装置においては、陰極26と発光用電源配線23R,23G,23Bとの間に静電容量C1が形成されている。電気光学装置10が駆動するとこの静電容量C1に電荷が蓄積される。電気光学装置10の駆動中に各発光用電源配線23を流れる駆動電流の電位が変動した場合には、蓄積された電荷が各発光用電源配線23に放電されて駆動電流の電位変動を抑制する。これにより、電気光学装置10の画像表示を正常に保つことができる。
【0030】
尚、この電気光学装置10においては、走査線21から走査信号が供給されてスイッチング薄膜トランジスタ52がオン状態になると、そのときの信号線22の電位が保持容量Capに保持され、保持容量Capに保持された電位に応じてカレント薄膜トランジスタ53のオン・オフ状態が決まる。そして、カレント薄膜トランジスタ53のチャネルを介して、発光用電源配線23R,23G,23Bから画素電極51に駆動電流が流れ、更に発光層50R,50G,50Bを介して陰極26に電流が流れる。このとき、発光層50を流れた電流量に応じた量の発光が発光層50から得られる。
【0031】
次に、本実施形態の電気光学装置10の具体的な構成について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、本実施形態の電気光学装置の平面模式図であり、図5は、図4のA−A'線に沿う断面図である。図4に示すように、本実施形態の電気光学装置10は、基板60、不図示の画素電極群領域、発光用電源配線23(23R,23G,23B)、及び表示画素部61(図中一点鎖線の枠内)とから概略構成される。
【0032】
基板60は、例えばガラス等からなる透明な基板である。画素電極群領域は、図3に示したカレント薄膜トランジスタ53に接続された画素電極(図示省略)を基板60上にマトリックス状に配置した領域である。発光用電源配線23(23R,23G,23B)は、図4に示したように、画素電極群領域の周囲に配置され、各画素電極に接続されている。表示画素部61は、少なくとも画素電極群領域上に位置し、平面視略矩形形状である。この表示画素部61は、中央部分の実表示領域(又は、有効表示領域ともいう)62(図中二点鎖線の枠内)と、実表示領域62の外側に配置されたダミー領域63(一点鎖線及び二点鎖線の間の領域)とに区画されている。
【0033】
また、実表示領域62の図中両側には、走査線駆動回路24が配置されている。この走査線駆動回路24はダミー領域63の下層側(基板60側)に位置して設けられている。更に、ダミー領域63の下層側には、走査線駆動回路24に接続される走査線駆動回路用制御信号配線24aと走査線駆動回路用電源配線24bとが設けられている。また更に、実表示領域62の図中上側には、前述の検査回路25が配置されている。この検査回路25はダミー領域63の下層側(基板側2)に位置して設けられており、この検査回路25により、製造途中や出荷時の電気光学装置の品質、欠陥の検査を行うことができる。
【0034】
図4に示すように、発光用電源配線23R,23G,23Bは、ダミー領域63の周囲に配設されている。各発光用電源配線23R,23G,23Bは、基板60の図2中下側から走査線駆動回路用制御信号配線24aに沿って図4中上方に延在し、走査線駆動回路用制御信号配線24aが途切れた位置から折曲してダミー領域63の外側に沿って延在し、実表示領域62内にある図示略の画素電極に接続されている。また、基板60には、陰極26に接続される陰極用配線26aが形成されている。この陰極用配線26aは、発光用電源配線23R,23G,23Bを囲むように平面視略コ字状に形成されている。
【0035】
次に、図5に示すように、基板60上には回路部11が形成され、この回路部11上に表示画素部61が形成されている。また、基板60には、表示画素部61を環状に囲む封止材13が形成されており、更に表示画素部61上に封止基板14が備えられている。封止基板14は、封止材13を介して基板60に接合されており、ガラス、金属、又は樹脂等からなるものである。この封止基板14の裏側には、吸着剤15が貼付され、表示画素部61と封止基板14との間の空間に混入した水又は酸素を吸収できるようになっている。尚、吸着剤15に代えてゲッター剤を用いても良い。また、封止材13は、例えば熱硬化樹脂又は紫外線硬化樹脂からなるものであり、特に熱硬化樹脂の一種であるエポキシ樹脂よりなることが好ましい。
【0036】
回路部11の中央部分には、画素電極群領域11aが設けられている。この画素電極群領域11aには、カレント薄膜トランジスタ53と、カレント薄膜トランジスタ53に接続された画素電極51が備えられている。カレント薄膜トランジスタ53は、基板60上に積層された下地保護層281、第2層間絶縁層283、及び第1層間絶縁層284に埋め込まれて形成され、画素電極51は、第1層間絶縁層284上に形成されている。カレント薄膜トランジスタ53に接続され、第2層間絶縁層283上に形成された電極の一方(ソース電極)には、発光用電源配線23(23R,23G,23B)が接続されている。尚、回路部11には、前述した保持容量Cap及びスイッチング薄膜トランジスタ52も形成されているが、図5ではこれらの図示を省略している。更に、図5においては、信号線22の図示を省略している。
【0037】
次に、図5において、画素電極群領域11aの図中両側には、前述の走査線駆動回路24が設けられている。図4に示した走査線駆動回路24には、シフトレジスタに含まれるインバータを構成するNチャネル型又はPチャネル型の薄膜トランジスタ24cが備えられ、この薄膜トランジスタ24cは、画素電極51に接続されていない点を除いて上記のカレント薄膜トランジスタ53と同様の構造とされている。尚、図5においては、検査回路25の図示を省略しているが、この検査回路25にも同様に薄膜トランジスタが備えられている。検査回路25に備えられている薄膜トランジスタは、後述するダミー画素電極51'に接続されていない点を除いてカレント薄膜トランジスタ53と同様の構造とされている。
【0038】
図5に示すように、走査線駆動回路24の図中外側の下地保護層281上には、走査線駆動回路用制御信号配線24aが形成されている。また、走査線駆動回路用制御信号配線24aの外側の第2層間絶縁層283上には、走査線駆動回路用電源配線24bが形成されている。また、走査線駆動回路用電源配線24bの外側には、発光用電源配線23が形成されている。この発光用電源配線23は、2つの配線からなる二重配線構造を採用しており、前述したように表示画素部61の外側に配置されている。二重配線構造を採用することで配線抵抗を軽減できる。
【0039】
例えば、図5中左側にある赤色用の発光用電源配線23Rは、下地保護層281上に形成された第1配線23R1と、第2層間絶縁層283を介して第1配線23R1上に形成された第2配線23R2とから構成されている。第1配線23R1及び第2配線23R2は、図2に示すように第2層間絶縁層283を貫通するコンタクトホール23R3により接続されている。このように、第1配線23R1は、陰極用配線26aと同じ階層位置に形成されており、第1配線23R1と陰極用配線26aとの間は第2層間絶縁層283が配置されている。また、図5に示す通り、陰極用配線26aはコンタクトホールを介して第2層間絶縁層283上に形成された陰極用配線26bと電気的に接続されおり、いわば陰極用配線26aも二重配線構造になっている。よって、第2配線23R2は、陰極用配線26bと同じ階層位置に形成されており、第1配線23R2と陰極用配線26bとの間は第1層間絶縁層284が配置されている。このような構造をとることで、第1配線23R1と陰極用配線26aとの間、及び、第2配線23R2と陰極用配線26bとの間に第2の静電容量C2が形成されている。
【0040】
同様に、図5の右側にある青色及び緑色用の発光用電源配線23G,23Bも二重配線構造を採用しており、それぞれ下地保護層281上に形成された第1配線23G1,23B1と、第2層間絶縁層283上に形成された第2配線23G2,23B2とから構成され、第1配線23G1,23B1及び第2配線23G2,23B2は、図4に示すように第2層間絶縁層283を貫通するコンタクトホール23G3,23B3により接続されている。そして、青色の第1配線23B1と陰極用配線26aの間、及び、青色の第2配線23B2と陰極用配線26bとの間に第2の静電容量C2が形成されている。
【0041】
第1配線23R1と第2配線23R2との間隔は、例えば、0.6〜1.0μmの範囲が好ましい。間隔が0.6μm未満であると、信号線22及び走査線21のような異なる電位を有するソースメタルとゲートメタルとの間の寄生容量が増えるため好ましくない。例えば、実表示領域62内においては、ソースメタルとゲートメタルとが交差する箇所が多く存在し、かかる箇所の寄生容量が多いと画像信号の時間遅延を引き起こす虞がある。その結果として、定められた期間内に画像信号を画素電極51に書き込む事ができないため、コントラストの低下を引き起こす。第1配線23R1及び第2配線23R2に挟まれる第2層間絶縁層283の材質は、例えばSiO2等が好ましいが、1.0μm以上形成するとSiO2の応力により基板60が割れる恐れが生じる。
【0042】
また、各発光用電源配線23Rの上側には、表示画素部61から延出した陰極26が形成されている。これにより、各発光用電源配線23Rの第2配線23R2が、第1層間絶縁層284を挟んで陰極26と対向配置され、これにより第2配線23R2と陰極26との間に前述の第1の静電容量C1が形成される。ここで、第2配線23R2と陰極26との間隔は、例えば、0.6〜1.0μmの範囲が好ましい。間隔が0.6μm未満だと、画素電極及びソースメタルのような異なる電位を有する画素電極とソースメタルとの間の寄生容量が増える為、ソースメタルを用いている信号線の配線遅延が生じる。その結果、定められた期間内に画像信号を書き込む事ができない為、コントラストの低下を引き起こす。第2配線23R2と陰極26に挟まれる第1層間絶縁層284の材質は、例えばSiO2やアクリル樹脂等が好ましい。しかしながら、SiO2を1.0μm以上形成すると応力により基板60が割れる恐れが生じる。また、アクリル樹脂の場合は、2.0μm程度まで形成することができるが、水を含むと膨張する性質があるため、その上に形成する画素電極を割る恐れがある。
【0043】
このように、表示基板20には、発光用電源配線23と陰極26との間に第1の静電容量C1が設けられるので、発光用電源配線23を流れる駆動電流の電位が変動した場合に第1の静電容量C1に蓄積された電荷が発光用電源配線23に供給され、駆動電流の電位不足分がこの電荷により補われて電位変動を抑制することができ、発光装置1の画像表示を正常に保つことができる。特に、発光用電源配線23と陰極26とが表示画素部61の外側で対向しているので、発光用電源配線23と陰極26との間隔を小さくして第1の静電容量C1に蓄積される電荷量を増大させることができ、駆動電流の電位変動をより小さくして画像表示を安定に行うことができる。更に、発光用電源配線23が第1配線及び第2配線からなる二重配線構造を有し、第1配線と陰極用配線との間に第2の静電容量C2が設けられているので、第2の静電容量C2に蓄積された電荷も発光用電源配線23に供給されるため、電位変動をより抑制することができ、発光装置1の画像表示をより正常に保つことができる。
【0044】
次に、表示画素部61の実画素領域62には、発光層50及びバンク部(絶縁部)122が形成されている。発光層50は図5に示すように、画素電極51上の各々に積層されている。また、バンク部122は、各画素電極51及び各発光層50の間に備えられており、各発光層50を区画している。バンク部122は、基板60側に位置する無機物バンク層122aと基板60から離れて位置する有機物バンク層122bとが積層されて構成されている。尚、無機物バンク層122aと有機物バンク層122bとの間に遮光層を配置してもよい。
【0045】
無機物、有機物バンク層122a,122bは、画素電極51の周縁部上に乗上げるまで延出形成されており、また無機物バンク層122aは、有機物バンク層122bよりも画素電極51の中央側に延出形成されている。また、無機物バンク層122aは、例えば、SiO2、TiO2、SiN等の無機材料からなることが好ましい。また無機物バンク層122aの膜厚は、50〜200nmの範囲が好ましく、特に150nmがよい。膜厚が50nm未満では、無機物バンク層122aが後述する正孔注入/輸送層より薄くなり、正孔注入/輸送層の平坦性を確保できなくなるので好ましくない。また膜厚が200nmを越えると、無機物バンク層122aによる段差が大きくなって、正孔注入/輸送層上に積層する後述の発光層の平坦性を確保できなくなるので好ましくない。
【0046】
更に、有機物バンク層122bは、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の通常のレジストから形成されている。この有機物バンク層122bの厚さは、0.1〜3.5μmの範囲が好ましく、特に2μm程度がよい。厚さが0.1μm未満では、後述する正孔注入/輸送層及び発光層の合計厚より有機物バンク層122bが薄くなり、発光層が上部開口部から溢れるおそれがあるので好ましくない。また、厚さが3.5μmを越えると、上部開口部による段差が大きくなり、有機物バンク層122b上に形成する陰極26のステップカバレッジを確保できなくなるので好ましくない。また、有機物バンク層122bの厚さを2μm以上にすれば、陰極26と画素電極51との絶縁を高めることができる点でより好ましい。このようにして、発光層50は、バンク部122より薄く形成されている。
【0047】
また、バンク部122の周辺には、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域が形成されている。親液性を示す領域は、無機物バンク層122a及び画素電極51であり、これらの領域には、酸素を反応ガスとするプラズマ処理によって水酸基等の親液基が導入されている。また、撥液性を示す領域は、有機物バンク層122bであり、4フッ化メタンを反応ガスとするプラズマ処理によってフッ素等の撥液基が導入されている。
【0048】
発光層50は、画素電極51上に積層された図示せぬ正孔注入/輸送層上に積層されている。尚、本明細書では、発光層50及び正孔注入/輸送層を含む構成を機能層といい、画素電極51、機能層、及び陰極26含む構成を発光素子という。正孔注入/輸送層は、正孔を発光層50に注入する機能を有するとともに、正孔を正孔注入/輸送層内部において輸送する機能を有する。このような正孔注入/輸送層を画素電極51と発光層50の間に設けることにより、発光層50の発光効率、寿命等の素子特性が向上する。また、発光層50では、正孔注入/輸送層から注入された正孔と、陰極26からの電子とが結合して蛍光を発生させる。発光層50は、赤色(R)に発光する赤色発光層、緑色(G)に発光する緑色発光層、及び青色(B)に発光する青色発光層の3種類を有し、図3及び図4に示すように、各発光層がストライプ配置されている。
【0049】
次に、図5に示したように、表示画素部61のダミー領域63には、ダミー発光層210及びダミーバンク部212が形成されている。ダミーバンク部212は、基板60側に位置するダミー無機物バンク層212aと基板60から離れて位置するダミー有機物バンク層212bとが積層されて構成されている。ダミー無機物バンク層212aは、ダミー画素電極51'の全面に形成されている。またダミー有機物バンク層212bは、有機物バンク層122bと同様に画素電極51の間に形成されている。そして、ダミー発光層210は、ダミー無機物バンク212aを介してダミー画素電極51'上に形成されている。
【0050】
ダミー無機物バンク層212a及びダミー有機物バンク層211bは、先に説明した無機物、有機物バンク層122a,122bと同様の材質、同様の膜厚を有するものである。また、ダミー発光層210は、図示略のダミー正孔注入/輸送層上に積層されており、ダミー正孔注入/輸送層及びダミー発光層の材質や膜厚は、前述の正孔注入/輸送層及び発光層50と同様である。従って、上記の発光層50と同様に、ダミー発光層210はダミーバンク部212より薄く形成されている。
【0051】
ダミー領域63を実表示領域62の周囲に配置することにより、実表示領域62の発光層50の厚さを均一にすることができ、表示ムラを抑制することができる。即ち、ダミー領域63を配置することで、表示素子をインクジェット法によって形成する場合における吐出した組成物インクの乾燥条件を実表示領域62内で一定にすることができ、実表示領域62の周縁部で発光層50の厚さに偏りが生じる虞がない。
【0052】
次に、陰極26は、実表示領域62とダミー領域63の全面に形成されるとともにダミー領域63の外側にある基板60上まで延出され、ダミー領域63の外側、即ち表示画素部61の外側で発光用電源配線23と対向配置されている。また陰極26の端部が、回路部11に形成された陰極用配線26aに接続されている。陰極26は、画素電極51の対向電極として発光層50に電流を流す役割を果たす。この陰極26は、例えば、フッ化リチウムとカルシウムの積層体からなる陰極層26bと反射層26cとが積層されて構成されている。陰極26のうち、反射層26cのみが表示画素部61の外側まで延出されている。反射層26cは、発光層50から発した光を基板60側に反射させるもので、例えば、Al、Ag、Mg/Ag積層体等からなることが好ましい。更に、反射層26c上にSiO2、SiN等からなる酸化防止用の保護層を設けても良い。
【0053】
また、図4に示すように、基板60の一端には前述した異方性導電膜40を用いて中継基板30が固着されている。尚、中継基板30上に搭載された半導体チップ33には、図3に示したデータ側駆動回路33a、陰極用電源回路33b、及び発光用電源回路33cが内蔵されている。図4中の破線で囲った部分は、表示基板20と中継基板30との固着部を示している。図6は、図4に示した固着部65付近の上面図である。尚、図6においては、異方性導電膜40及び中継基板30の図示を省略している。
【0054】
図6に示したように、固着部65においては、線幅の細い配線各々に対して配線の幅と同程度の幅を有する第1外部接続端子が設けられ、幅広の配線に対しては線幅よりも幅の狭い複数の第2外部接続端子が設けられる。例えば、線幅の細い走査線駆動回路用制御信号配線24aの各々に対しては、走査線駆動回路用制御信号配線24aの線幅と同程度の幅を有する第1外部接続端子67,68,69が設けられる。一方、幅が広い発光用電源配線23Rに対しては、発光用電源配線23Rの線幅よりも幅の狭い第2外部接続端子66a,66b,66cが設けられる。また、走査線駆動回路用制御信号配線24aよりも幅が狭い信号線22に対しては、信号線22と同程度の線幅を有する第2外部接続端子70がそれぞれ設けられる。尚、第1外部接続端子及び第2外部接続端子の数は、基板60に形成される配線の線幅に応じて適宜設定される。
【0055】
このように、基板60に形成された配線の線幅に応じて第1外部接続端子及び第2外部接続端子の数を変えるのは、固着部65の全面に亘って圧着条件を極力同一にするためである。つまり、図1及び図2を用いて説明したように、表示基板10と中継基板20とは異方性導電膜40により固着されるが、固着条件(例えば、端子の幅、接着面積、圧力の掛かり具合等)が異なると固着部65内部における電気的抵抗がその位置に応じて異なる。固着部65における電気的抵抗が位置に応じて異なると、表示ムラ及びコントラスト低下等の表示上の不具合を生ずる。このために、固着部65において、基板60に形成された配線の線幅に応じて外部接続端子の数を変えることにより圧着条件を極力同一にしている。更に、複数の外部接続端子を設けることにより、接着面積を増大させることができる。即ち、複数の外部接続端子n間に異方性導電膜を配置することができるので、強固な接着が可能となる。
【0056】
次に、固着部65に形成される外部接続端子の構造について詳細に説明する。図7は、図6中のB−B'線に沿う第2外部接続端子66c及び第2外部接続端子70の断面図であり、図8は、図7中の外部接続端子70の拡大図である。図7及び図8に示すように、基板60上には下地保護層281が形成されており、この下地保護層281上にSiO2及び/又はSiNを主体とするゲート絶縁層71が形成されている。このゲート絶縁層71は、図示しない薄膜トランジスタのチャネル領域とゲート電極とを電気的に絶縁するために形成されるものである。尚、本明細書において、「主体」とする成分とは最も含有率の高い成分のことをいうものとする。
【0057】
ゲート絶縁層71上には信号線22及び発光用電源配線23Rが形成されており、更に信号線22及び発光用電源配線23R上に第2層間絶縁層283が形成されている。また、発光用電源配線23、走査線駆動回路用制御信号配線24aは、図3に記載の走査線21と同時に形成される。
【0058】
上記第2層間絶縁層283には、信号線22及び発光用電源配線23Rの上部位置にコンタクトホールHが複数形成されている。また、発光用電源配線23Rの上方の第2層間絶縁層283上には電極73が形成され、信号線22の上方の第2層間絶縁層283上には電極74,75が形成されている。
【0059】
これらの電極73,74,75は、コンタクトホールHを形成した後でスパッタリング法等により形成されるため、コンタクトホールHの上部にはコンタクトホールH内に堆積した金属材料の分だけ表面に凹部Bが形成される。このようにして、コンタクトホールHを介して、第2層間絶縁層283に覆われた発光用電源配線23Rと第2層間絶縁層283上に形成された電極74との導通、及び、第2層間絶縁層283に覆われた信号線22と第2層間絶縁層283上に形成された電極74,75の導通がとられる。
【0060】
また、第2層間絶縁層283上に形成された電極73,74,75の端部、側部、及びこれらの電極73,74,75間には、電気的な絶縁を目的としたSiN等の無機材料からなる第1層間絶縁層284が形成されている。電極73,74,75の上部、側部、及び周辺部には、ITO等からなる透明電極77が形成され、更に電極73,74,75の周辺部に形成された透明電極77及び第2外部接続端子66c,70,70間にはSiO2からなる保護層78が形成されている。尚、電極73,74,75は、図3に記載されているゲート線と同時に形成され、又、透明電極77は、ITOにより形成され、画素電極(陽極)と同時に形成される。
【0061】
図7及び図8に示すように、本実施形態の電気光学装置に設けられる第2外部接続端子66c,70,70の表面には複数の凹部Bが形成されされており、この凹部Bにより、第2外部接続端子66c,70,70をいわば複数の電極として分割した構成となっている。図6に示したように、発光用電源配線23R及び信号線22の線幅に応じて外部接続端子の数を変えることにより、固着部65における固着条件の均一化を図っているが、第2外部接続端子66c,70,70の表面に複数の凹部Bが形成されているため、第2外部接続端子66c,70,70は更に複数の電極に分割されたものとなり、固着条件の均一化を図る上で極めて好適である。
【0062】
また、電極73,74,75の端部に第1層間絶縁層284を形成することにより、第2外部接続端子66c,70,70の端部に凸部79が形成される。この凸部79は、異方性導電膜40を用いて表示基板10と中継基板20とを固着する際に、異方性導電膜40に含まれる導電粒子41bが第2外部接続端子66c,70,70の側部にはみ出るのを防止するように作用する。その結果、より多くの導電粒子41bが第2外部接続端子66c,70,70上に配置されることになるため、固着部65における電気的抵抗を低減する極めて優れた構造である。
【0063】
以上説明した本実施形態の表示基板20は、固着部65において圧着条件を均一化するための構成が設けられているため、固着部65に固着される中継基板30に形成される外部接続端子34は、図6に示す発光用電源配線23R及び走査線駆動回路用制御信号配線24a等と同様の線幅で形成されていても良い。しかしながら、より均一な圧着条件下で中継基板30と表示基板20とを固着するには、固着部65に形成された第2外部接続端子66c,70,70等と同様のパターンであることが好適である。
【0064】
以上、本発明の一実施形態による電気光学装置について説明したが、以上説明した電気光学装置、CPU(中央処理装置)等を備えたマザーボード、キーボード、ハードディスク等の電子部品を筐体内に組み込むことで、例えば図9に示すノート型のパーソナルコンピュータ600(電子機器)が製造される。図9は、本発明の一実施形態による電気光学装置を備える電子機器の一例を示す図である。尚、図9において601は筐体であり、602は液晶表示装置であり、603はキーボードである。図10は、他の電子機器としての携帯電話機を示す斜視図である。図10に示した携帯電話機700は、アンテナ701、受話器702、送話器703、液晶表示装置704、及び操作釦部705等を備えて構成されている。
【0065】
また、上記実施形態では、電子機器としてノート型コンピュータ及び携帯電話機を例に挙げて説明したが、これらに限らず、液晶プロジェクタ、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータ(PC)及びエンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルを備えた装置等の電子機器に適用することが可能である。
【0066】
以上説明したように、本発明によれば、第1配線よりも幅広の第2配線に対しては、第2外部接続端子が複数設けられているため、配線が施された基板を表示基板に固着させるとともに導通を取るときの圧力の掛かり具合等の圧着条件を固着部全体に亘って均一化することができるという効果がある。このため、固着部における電気的抵抗の不均一性を解消することができ、その結果として、固着部における電気的抵抗の不均一性に起因する表示ムラ及びコントラストの低下等の表示上の不具合を生ずることがないという効果がある。
【符号の説明】
【0067】
10…電気光学装置、20…表示基板、22…信号線(第1配線)、23,23R…発光用電源配線(第2配線、電源線)、24a…走査線駆動回路用制御信号配線(第1配線)、30…中継基板、40…異方性導電膜、50…発光素子、53…スイッチング素子、66a,66b,66c…第2外部接続端子、67,68,69,70…第1外部接続端子、79…凸部、B…凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素領域が設けられた実表示領域と、
複数の信号線と、
前記複数の信号線との交点に応じて前記複数の画素領域が設けられるように形成された複数の走査線と、
前記画素領域に駆動電流を供給する、前記複数の信号線の各々の幅よりも広い電源線と、
前記複数の走査線に走査信号を供給する走査線駆動回路と、
前記走査線駆動回路に走査線駆動回路用制御信号を供給する走査線駆動回路用制御信号配線と、
前記実表示領域の外側に配置され、前記走査線駆動回路用制御信号配線に接続される第1外部接続端子と、
有し、
前記第1外部接続端子の幅は、前記走査線駆動回路用制御信号配線の幅と同じであることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気光学装置であって、
前記実表示領域の外側に配置され、前記電源線に接続される複数の第2外部接続端子を備え、
前記複数の第2外部接続端子の各々の幅は、前記電源線の幅よりも狭いことを特徴とする電気光学装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気光学装置であって、
前記実表示領域の外側に配置され、前記複数の信号線の各々に接続される複数の第3外部接続端子を備え、
前記複数の第3外部接続端子の各々の幅は、前記複数の信号線の各々の幅と同じであることを特徴とする電気光学装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電気光学装置であって、
前記第1外部接続端子、前記第2外部接続端子、及び前記第3外部接続端子には、それぞれ凸部が形成されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項5】
請求項3に記載の電気光学装置であって、
前記第1外部接続端子、前記第2外部接続端子、及び前記第3外部接続端子の表面には、それぞれ複数の凹部が形成されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−3272(P2012−3272A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165139(P2011−165139)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【分割の表示】特願2006−230220(P2006−230220)の分割
【原出願日】平成14年1月24日(2002.1.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】