説明

杭打機

【課題】油圧回路上の圧力損失やリリーフ弁の特性による不具合を解消して、作動速度が異なっても引抜力を正確に制限することができる杭打機を提供する。
【解決手段】ウインチに設けた巻層検出器からの信号と、油圧モータに設けた一対の圧力検出手段で検出した圧力から差圧を計測してワイヤーロープの実負荷を求め、油圧ポンプからの作動油の圧力を制御する電磁比例リリーフ弁の設定値をオーガの引き抜き荷重制限値に対応して調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機に関し、詳しくは、ウインチドラムに巻回されるワイヤーロープを複数のシーブに多本掛けしてオーガなどの作業装置をリーダに沿って昇降させる杭打機におけるウインチ駆動用の油圧回路の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場での杭打ちに用いられる杭打機には、杭打ち孔の掘削を終えたオーガスクリュを土中から引き抜く際の引抜力を測定し、引抜力があらかじめ設定した作業装置引上力制限値を超えたときに警報を発したりする引き抜き荷重計が設けられている。この引き抜き荷重計は、通常、作業装置を吊るワイヤーロープの端末にロードセルを取り付けてワイヤーロープの張力を計測し、シーブの掛け本数を入力することで引抜力を演算している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、オーガによる掘削は、スクリュー先端のビットを回転させながら、オーガを吊るワイヤーロープを徐々に巻き出していくことで地盤を掘削していくが、地盤が固くなって掘削速度が遅くなり、作業装置の下降速度よりワイヤーロープの巻下げ量が多くなってしまうと、ワイヤーロープがたるんでしまうことがあった。たるみを放置したまま巻上げてしまうと、ワイヤーロープの乱巻が発生し、ワイヤーロープの局部的な損傷を起こし、著しく寿命を低下させてしまうこともあった。このワイヤーロープのたるみを防止するため、荷重計でたるむ限界のワイヤーロープ張力を設定し、ロードセルの計測値がこの設定値より小さくなったらウインチドラムの巻下げを停止する、いわゆるたるみ防止機能を備えているものもあった。
【0004】
さらに、ワイヤーロープの直径やウインチドラムの巻層を検出し、油圧回路のリリーフ弁の設定値を調整することにより、ドラムを駆動する油圧モータに供給する作動油の圧力を適正化することも行われている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平9−145499号公報
【特許文献1】特開平9−156885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大型の杭打機では、小型の杭打機に比べて作業装置の自重が大きくなったり、スクリューが長くなったりするため、吊り荷重全体が非常に大きくなることから、複数のシーブにワイヤーロープを6〜12掛程度多本掛けすることが広く行われている。ワイヤーロープの掛本数が多いと非常に大きい引抜力が発生するので、作業装置や杭打機のリーダを保護するために引抜力を制限する必要がある。引抜力の制限は、巻上ドラムを駆動するウインチ用油圧モータの油圧回路に設けられているリリーフ弁の設定値(リリーフ圧)を調整することで行うことができるが、リリーフ弁のリリーフ圧は、油圧回路上の最大流量で調整するので、油圧モータの作動速度を遅くするために流量を減らしていくと、リリーフ弁の特性上、リリーフ圧が低下して制限したい値まで引抜力が上がらないことがあった。
【0006】
また、油圧回路上、必ず圧力損失があり、この圧力損失は流量が大きいほど大きな値となる。圧力損失は、負荷が大きい場合の影響は少ないが、リリーフ圧を低く制限したい場合に、流量が大きいほど大きな値となるので、実際の負荷との誤差が大きくなってしまう。
【0007】
そこで本発明は、油圧回路上の圧力損失やリリーフ弁の特性による不具合を解消して、作動速度が異なっても引抜力を正確に制限することができる杭打機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機は、ウインチを備えたベースマシンと、該ベースマシンの前部に立設されるリーダと、該リーダに沿って昇降可能に設けられた作業装置と、前記リーダの頂部に設けられたトップシーブと、該トップシーブ側に設けられた複数の固定シーブと、前記作業装置側に設けられた複数の可動シーブと、前記ウインチを作動させる油圧回路とを備え、前記ウインチのドラムに巻回されるワイヤーロープを前記トップシーブから前記固定シーブ及び可動シーブに多本掛けして前記作業装置を昇降させる杭打機において、前記ウインチは、ドラムに巻回されたワイヤーロープの巻層を検出する巻層検出器を備え、前記油圧回路は、作動油を送り出す油圧ポンプと、該油圧ポンプから送り出された作動油によって前記ウインチを駆動する油圧モータと、油圧ポンプから油圧モータに供給される作動油の流路を切り換える切換弁と、油圧ポンプから油圧モータに供給される作動油の圧力を制御する電磁比例リリーフ弁と、前記油圧モータに設けられている一対のポートにおける作動油の圧力をそれぞれ検出する一対の圧力検出手段とを備えるとともに、前記巻層検出器で検出した巻層検出信号と、前記一対の圧力検出手段で検出した各圧力検出信号と、あらかじめ設定された作業装置引上力制限値、ワイヤーロープの多本掛け本数及び油圧モータの諸元値とに基づいて前記電磁比例リリーフ弁の設定値を調整する制御手段とを備えていることを特徴としている。
【0009】
さらに、本発明の杭打機は、前記制御手段は、前記油圧ポンプから油圧モータに供給される作動油の流量を検出する流量検出手段が検出した流量信号に基づいて前記電磁比例リリーフ弁の設定値を補正すること、また、前記制御手段は、前記一対の圧力検出手段で検出した各圧力検出信号から算出した差圧と、前記巻層検出器で検出した巻層検出信号とからワイヤーロープの張力を算出し、算出した張力に基づいて前記電磁比例リリーフ弁の設定値を補正することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の杭打機によれば、地盤など逐次変化する負荷状況で掘削するオーガのような作業装置を多本掛けしたワイヤーロープで吊る杭打機のウインチにおける作動中の動的な負荷の変動があっても精度よく実負荷を知ることができ、ワイヤーロープや吊り装置、リーダ、トップシーブなどのフロント装置の強度的な制約に対し、過負荷状態になる前に巻上を停止してこれらの損傷を確実に防止することができる。また、ウインチドラムの巻層が変化しても、引抜力を保ちながら巻上力を規制することができる。さらに、油圧モータの一対のポートにおける差圧を利用することで、油圧回路の圧力損失による誤差を吸収できるので、低負荷時や高速巻上・巻下時でも精度の向上が図れる。また、低負荷時でも実負荷を精度よく検出できるので、たるむ限界のワイヤーロープ張力を設定し、負荷が軽くなったときに、ワイヤーロープがたるむ直前にウインチの巻下動作を止めることがでる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明の一形態例を示す杭打機の正面図、図2はウインチの正面図、図3は巻層検出器の一形態例を示す正面図、図4は巻層検出器の他の形態例を示す正面図、図5はウインチを作動させる油圧回路の一形態例を示す回路図、図6は電磁比例リリーフ弁の設定値を調整する制御手段の一動作例を示すフローチャート、図7は油圧モータの両ポートに設けた一対の圧力検出手段で検出した作動油の圧力の差の絶対値と電磁比例リリーフ弁の設定値との関係(制御データ)の一例を示す図、図8はリリーフ弁における流量と圧力との関係の一例を示す特性図、図9は油圧モータの両ポートに設けた一対の圧力検出手段で検出した作動油の圧力の差の絶対値と電磁比例リリーフ弁の特性を考慮した設定値との関係(制御データ)の一例を示す図である。
【0012】
杭打機は、ベースマシン11の前部にリーダ12がバックステー13を用いて立設されており、このリーダ12に作業装置、例えばオーガ14が昇降可能に設けられ、ワイヤーロープ15によって吊持されている。リーダ12の頂部には、ワイヤーロープ15をガイドするトップシーブ16が設けられ、ワイヤーロープ15は、トップシーブ16側に設けられた複数の固定シーブ17と、オーガ14側に設けられた複数の可動シーブ18とに多本掛けされている。
【0013】
ベースマシン11には、ワイヤーロープ15を巻上げたり、巻下げたりするためのウインチ19が設けられている。このウインチ19は、ワイヤーロープ15を巻回するドラム20を駆動するための油圧モータ21と、ドラム20に巻回されたワイヤーロープ15の巻層を検出する巻層検出器22が設けられている。
【0014】
図3に示す巻層検出器22は、ドラム20と平行な軸線を有する支軸23に回動可能に設けられたL字状のリンクアーム24の一端にロープ押さえ用ローラ25を設けるとともに、リンクアーム24の他端に係合したロッド26と、該ロッド26をガイドするガイド部材27と、該ガイド部材27に設けられてロッド26からリンクアーム24を介して前記ロープ押さえ用ローラ25をドラム中心方向に付勢するスプリング28と、ロッド26の下部に設けられた凹凸部26aの移動数を検出することによってドラム20の巻層を検出するための層検出用リミットスイッチ29と、ドラム20の外周部に設けられて層上がり部を検出するための層上がり検出用リミットスイッチ30とで構成されている。
【0015】
この巻層検出器22は、ドラム20に巻回されたワイヤーロープ15が1層のときには、図3に実線で示すように凹凸部26aの最下端の凹部に層検出用リミットスイッチ29のローラープランジャ29a先端が当接した状態になり、ワイヤーロープ15が2層目になると、凹凸部26aの下端から2番目の凸部にローラープランジャ29a先端が当接した状態になる。以下、巻層が増加するたびに凹凸部26aの凹凸と順次当接し、8層目には凹凸部26aの上端、ロッド26の軸部側面に当接した状態なり、ドラム20の回転方向と連動してローラープランジャ29aの出没回数がカウントされることにより、ドラム20におけるワイヤーロープ15の巻層が検出される。
【0016】
図4に示す巻層検出器22aは、ロッド26の下方に、超音波やLEDを利用した変位センサ31を設け、該変位センサ31とロッド26の下端面26bとの距離を検出することにより、ドラム20におけるワイヤーロープ15の巻層を検出するようにしている。なお、図4では、図3に示した巻層検出器22の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0017】
図5に示すように、前記ウインチ19を作動させる油圧回路51は、前記油圧モータ21に作動油を供給する油圧ポンプ52と、油圧ポンプ52から油圧モータ21に供給される作動油の流路を切り換える切換弁(方向制御弁)53と、油圧ポンプ52から油圧モータ21に供給される作動油の圧力を制御する電磁比例リリーフ弁54と、前記油圧モータ21に設けられている正転側、逆転側の一対のAポート21a及びBポート21bにおける作動油の圧力を油圧回路の圧力損失に関係なくそれぞれ検出する一対の圧力検出手段55a、55bとを備えるとともに、前記電磁比例リリーフ弁54の設定値(リリーフ圧)を調整するための制御手段(コントローラ)56を備えている。
【0018】
コントローラ56は、作業前にあらかじめ設定される作業装置引上力制限値、ワイヤーロープの多本掛け本数及び油圧モータの諸元値と、前記巻層検出器22で検出した巻層検出信号Dsと、前記一対の圧力検出手段55a、55bで検出した各圧力検出信号Pa,Pbとに基づいて電磁比例リリーフ弁54のリリーフ圧を演算し、制御信号Rsを電磁比例リリーフ弁54に出力する。さらに、巻上げ又は巻下げの設定範囲を外れたときに前記方向制御弁53を中立位置に戻して巻上げ又は巻下げを停止させる一対のソレノイド57a,57bが設けられている。なお、油圧モータ21には、一般的なネガブレーキ付きの油圧モータを用いることができ、コントローラ56には、油圧モータの諸元値として、押しのけ容積、最高使用圧力、最高使用回転数、出力トルクなどが入力される。
【0019】
方向制御弁53は、中立、巻上げ及び巻下げの切り換えを行う油圧パイロット3位置弁であって、方向制御弁53のパイロット圧のない状態ではスプリングによって中立位置に保持され、一方のポートにパイロット圧が入力されるとスプールが巻上げ位置に移動し、他方のポートにパイロット圧が入力されるとスプールが巻下げ位置に移動することにより、油圧モータ21を停止状態から巻上げ方向あるいは巻下げ方向に作動させる。
【0020】
エンジン58で油圧ポンプ52を駆動すると、タンク59から作動油が油圧ポンプ52に汲み上げられ、吐出流路61に吐出される。方向制御弁53が中立位置のとき、作動油は、吐出流路61から中立流路62を経て方向制御弁53を通過し、戻り流路63からタンク59に戻る。
【0021】
方向制御弁53が巻上げ位置に切り換えられると、作動油は、吐出流路61から入力流路64に流れ、逆止弁を経て方向制御弁53の巻上げ側供給通路を通り、正転側流路65から油圧モータ21のAポート21aに供給される。Aポート21aに供給された作動油は、油圧モータ21を正転方向である巻上げ方向に回転させる。これにより、ドラム20にワイヤーロープ15が巻き取られてオーガ14がリーダ12に沿って上昇する。油圧モータ21を駆動した作動油は、Bポート21bから逆転側流路66に流出し、方向制御弁53の巻上げ側排出通路を通って戻り流路63からタンク59に戻る。
【0022】
方向制御弁53が巻下げ位置に切り換えられると、作動油は、前記同様に吐出流路61から入力流路64に流れ、逆止弁を経て方向制御弁53の巻き下げ側供給通路を通り、逆転側流路66から油圧モータ21のBポート21bに供給される。Bポート21bに供給された作動油は、油圧モータ21を逆転方向である巻き下げ方向に回転させる。これにより、ドラム20に巻回されているワイヤーロープ15が繰り出されてオーガ14がリーダ12に沿って下降する。油圧モータ21を駆動した作動油は、Aポート21aから正転側流路65に流出し、方向制御弁53の巻き下げ側排出通路を通って戻り流路63からタンク59に戻る。
【0023】
また、通常の掘削では、方向制御弁53が巻下げ位置のときには、オーガ14に装着したオーガスクリュー14aを掘削方向に回転させ、方向制御弁53が巻上げ位置のときには、オーガスクリュー14aを引き抜き方向に回転させる。
【0024】
オーガスクリュー14aを引き抜く際のオーガ14の吊上げ力や、オーガスクリュー14aで掘削する際のオーガ14の吊下げ力は、前記電磁比例リリーフ弁54に設定されるリリーフ圧によって調整される。オーガスクリュー14aを引き抜く際の電磁比例リリーフ弁54のリリーフ圧の設定は、図6に示す手順で行うことができる。
【0025】
まず、オーガスクリュー14aの引抜力(オーガ14の吊上げ力)及びワイヤーロープの多本掛け本数から、オーガスクリュー14aを引き抜く際に制限すべきワイヤーロープ15の張力を演算し、このワイヤーロープ張力とドラム20の巻層、油圧モータの諸元値から電磁比例リリーフ弁54のリリーフ圧が演算され、ステップ101にてコントローラ56に作業装置引上力制限値Kが入力される。これにより、電磁比例リリーフ弁54にリリーフ指令値Kが出力され、この値がリリーフ圧の初期値Kとなる。また、前記巻層検出器22で検出した巻層によってリリーフ圧が補正され、巻層が最小のときにはもっとも小さな値となり、巻層の増加に伴って段階的にリリーフ圧が大きくなり、巻層が最大ではもっとも大きな値のリリーフ圧となる。
【0026】
作動中は、油圧モータ21に設けた前記圧力検出手段55a、55bで検出した油圧をそれぞれ取り込み、Aポート21a、Bポート21bの差圧(両検出値の差の絶対値(|A−B|))を求める。この差圧がウインチ19におけるドラム20の回転トルクとなり、巻層検出器22で検出した巻層によってドラム中心からワイヤーロープ15までの距離が求められ、回転トルクと距離とからワイヤーロープ15の張力(実負荷)が求められる。
【0027】
そして、ステップ102で巻層によって補正された差圧(以下同様)が前記初期値K未満かを判定し、差圧が初期値K以上の場合は(NO)、何らかの原因で設定した初期値Kが実負荷に比べて小さすぎた場合か、オーガスクリュー14aの引抜力が想定以上に大きい場合であるから、ステップ101に戻り、各値を再確認して作業装置引上力制限値Kを再入力する。
【0028】
ステップ102で前記差圧が前記初期値K未満であると判定されると(YES)、ステップ103に進み、油圧モータ21に負荷が掛かっているかの判定を行う。負荷が掛かっていない状態、すなわち前記差圧が0の場合は(YES)、ステップ104に進み、図7に示す計測した前記差圧(|A−B|)とリリーフ参照値Krefとの制御データを参照し、差圧0に対応したリリーフ圧を最大値Kmaxに設定する。また、ステップ103で油圧モータ21に負荷が掛かっていると判定した場合は(NO)、ステップ105に進み、前記図7の制御データを参照し、計測した差圧Ksに対応するリリーフ参照値Kref(Kt)を求め、初期値Kよりも大きな圧力値を電磁比例リリーフ弁54の新たなリリーフ圧Ktとする。
【0029】
図7の制御データに示すように、計測した差圧が初期値Kよりも低いときには、電磁比例リリーフ弁54のリリーフ圧を高く設定し、差圧が初期値Kと同じ圧力のときに、電磁比例リリーフ弁54のリリーフ圧を初期値Kに設定する。これにより、油圧モータ21の差圧が初期値Kに達したときに電磁比例リリーフ弁54が開き、油圧ポンプ52から吐出された作動油が電磁比例リリーフ弁54を通って戻り流路63からタンク59に戻る。したがって、ワイヤーロープ15の張力が過度に大きくなることが防止される。また、計測した差圧が初期値Kより小さい低負荷時には電磁比例リリーフ弁54のリリーフ圧を高く設定することにより、低負荷時に電磁比例リリーフ弁54を通ってタンクに戻る油量を少なくすることができ、作動油の使用効率を向上させることができる。
【0030】
また、リリーフ弁54のリリーフ圧は、最大流量に対応した圧力を設定するが、図8に示すように、一般的にリリーフ弁では、流量の減少に伴って作動圧力が設定したリリーフ圧より低下する特性を有している。したがって、低速でオーガスクリュー14aを引き抜く場合には、油圧モータ21に供給する油量の減少によって設定したリリーフ圧(初期値K)まで油圧が上昇する前に電磁比例リリーフ弁54が開き、油圧モータ21を所定の駆動力で回転させることができなってしまう。このため、前記図7に示した制御データを、リリーフ弁の特性を考慮して、作動油の流量を検出する流量検出手段(図示せず)が検出した流量信号に基づいてリリーフ参照値Krefにおける最大値Kmaxを補正した図9に示すような制御データを用いるようにしてもよい。なお、作動油の流量は、油圧ポンプ52の回転数を検出し、諸元値の押し込み容量から演算することで求めることができる。
【0031】
このように、ワイヤーロープやリーダ、トップシーブなどのフロント装置の強度的な制約に応じて設定されるオーガの引き抜き荷重制限値を、油圧モータ21の回転トルク(差圧)やドラム巻層によるワイヤーロープ15の張力変化を計測して電磁比例リリーフ弁54のリリーフ圧として設定することにより、逐次変化する負荷状況に確実に対応することができる。また、油圧モータ21のA,Bポートの差圧を常時計測することにより、油圧回路の圧力損失に関係なく、掘削時におけるワイヤーロープ15の張力も確実に計測できるので、ワイヤーロープ15がたるむ前にウインチの巻下げ動作を確実に停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一形態例を示す杭打機の正面図である。
【図2】ウインチの正面図である。
【図3】巻層検出器の一形態例を示す正面図である。
【図4】巻層検出器の他の形態例を示す正面図である。
【図5】ウインチを作動させる油圧回路の一形態例を示す回路図である。
【図6】電磁比例リリーフ弁の設定値を調整する制御手段の一動作例を示すフローチャートである。
【図7】油圧モータの両ポートに設けた一対の圧力検出手段で検出した作動油の圧力の差の絶対値と電磁比例リリーフ弁の設定値との関係の一例を示す図である。
【図8】リリーフ弁における流量と圧力との関係の一例を示す特性図である。
【図9】油圧モータの両ポートに設けた一対の圧力検出手段で検出した作動油の圧力の差の絶対値と電磁比例リリーフ弁の特性を考慮した設定値との関係(制御データ)の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
11…ベースマシン、12…リーダ、13…バックステー、14…オーガ、14a…オーガスクリュー、15…ワイヤーロープ、16…トップシーブ、17…固定シーブ、18…可動シーブ、19…ウインチ、20…ドラム、21…油圧モータ、21a…Aポート、21b…Bポート、22,22a…巻層検出器、23…支軸、24…リンクアーム、25…ロープ押さえ用ローラ、26…ロッド、26a…凹凸部、26b…下端面、27…ガイド部材、28…スプリング、29…層検出用リミットスイッチ、29a…ローラープランジャ、30…層上がり検出用リミットスイッチ、31…変位センサ、51…油圧回路、52…油圧ポンプ、53…方向制御弁、54…電磁比例リリーフ弁、55a、55b…圧力検出手段、56…コントローラ、57a,57b…ソレノイド、58…エンジン、59…タンク、61…吐出流路、62…中立流路、63…戻り流路、64…入力流路、65…正転側流路、66…逆転側流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインチを備えたベースマシンと、該ベースマシンの前部に立設されるリーダと、該リーダに沿って昇降可能に設けられた作業装置と、前記リーダの頂部に設けられたトップシーブと、該トップシーブ側に設けられた複数の固定シーブと、前記作業装置側に設けられた複数の可動シーブと、前記ウインチを作動させる油圧回路とを備え、前記ウインチのドラムに巻回されるワイヤーロープを前記トップシーブから前記固定シーブ及び可動シーブに多本掛けして前記作業装置を昇降させる杭打機において、前記ウインチは、ドラムに巻回されたワイヤーロープの巻層を検出する巻層検出器を備え、前記油圧回路は、作動油を送り出す油圧ポンプと、該油圧ポンプから送り出された作動油によって前記ウインチを駆動する油圧モータと、油圧ポンプから油圧モータに供給される作動油の流路を切り換える切換弁と、油圧ポンプから油圧モータに供給される作動油の圧力を制御する電磁比例リリーフ弁と、前記油圧モータに設けられている一対のポートにおける作動油の圧力をそれぞれ検出する一対の圧力検出手段とを備えるとともに、前記巻層検出器で検出した巻層検出信号と、前記一対の圧力検出手段で検出した各圧力検出信号と、あらかじめ設定された作業装置引上力制限値、ワイヤーロープの多本掛け本数及び油圧モータの諸元値とに基づいて前記電磁比例リリーフ弁の設定値を調整する制御手段とを備えていることを特徴とする杭打機。
【請求項2】
前記制御手段は、前記油圧ポンプから油圧モータに供給される作動油の流量を検出する流量検出手段が検出した流量信号に基づいて前記電磁比例リリーフ弁の設定値を補正することを特徴とする請求項1記載の杭打機。
【請求項3】
前記制御手段は、前記一対の圧力検出手段で検出した各圧力検出信号から算出した差圧と、前記巻層検出器で検出した巻層検出信号とからワイヤーロープの張力を算出し、算出した張力に基づいて前記電磁比例リリーフ弁の設定値を補正することを特徴とする請求項1又は2記載の杭打機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−126613(P2009−126613A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301199(P2007−301199)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】