杭穴掘削方法及び基礎杭の施工方法
【課題】土質強度に応じて、適切な量の掘削液・セメントミルク等を自動制御して使用するので、効率的に杭穴掘削ができると共に、その土質に適合した合理的な基礎杭構造の構築を達成できる。泥水の排出量、排土量を低減させる。
【解決手段】掘削ロッド1の掘削ヘッド2により杭穴6を掘削しながら、練付けドラム5、5aで掘削土を穴壁に練付ける。1つの杭穴の掘削に際し、支持力を期待しない地層は、水等の掘削液を使用することなく掘削し、支持力を期待する地層は、水等の掘削液を掘削補助手段として使用して掘削する(a、b)。掘削時の積算電流値を測定し、掘削中の土質強度に対応して、掘削液を使用するか否か使用する場合の使用量を自動制御する。拡底部16内へのセメントミルクの吐出量・吐出位置も自動制御され、撹拌混合して適切なソイルセメント11を形成する(c)。
【解決手段】掘削ロッド1の掘削ヘッド2により杭穴6を掘削しながら、練付けドラム5、5aで掘削土を穴壁に練付ける。1つの杭穴の掘削に際し、支持力を期待しない地層は、水等の掘削液を使用することなく掘削し、支持力を期待する地層は、水等の掘削液を掘削補助手段として使用して掘削する(a、b)。掘削時の積算電流値を測定し、掘削中の土質強度に対応して、掘削液を使用するか否か使用する場合の使用量を自動制御する。拡底部16内へのセメントミルクの吐出量・吐出位置も自動制御され、撹拌混合して適切なソイルセメント11を形成する(c)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地層即ち土質強度に対応した杭穴掘削工法を採用すると共に、発生した泥土を可及的多く、かつ効率的に練付け、廃棄泥土の低減と、杭穴強化を目的とした基礎杭の杭穴掘削方法及び基礎杭の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、杭穴の掘削については、杭穴を掘削した後に掘削ロッドを杭穴から取り出して、その後に既製杭を埋設する方法(先掘り工法)、杭穴を掘削しながら、中空の既製杭を埋設し、杭穴掘削完了に中空部を通って掘削ロッドを引き上げ、杭を沈設する方法(中掘工法)が、行われていた。
【0003】
この場合、杭穴の掘削にあたり、水等の掘削液を使用する場合も、使用しない場合もあった。また、掘削土を練付けドラムによって、杭穴壁に練付けることも行われていた。
【0004】
杭穴掘削にあたり、掘削液を使用するか否かは、一般的には1つの構築現場の全体で判断され、その構築現場の全部の杭を一様に決めていた。また、例えば、個々の従来の杭穴掘削においても、どのような場合に水等の掘削液を使用するかの簡便な判断基準がなかった。
【特許文献1】特開2001−32274号公報
【特許文献2】特開2000−120364号公報
【特許文献3】特開2000−291004号公報
【特許文献4】特公平06−004994号公報
【特許文献5】実公平04−026555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
適切に掘削液を使用しなかった場合の第一の問題点として、泥水等の処理があった。
【0006】
即ち、そこで掘削液を使用した場合には、掘削液が掘削土と混合し、大量の泥水となって地上に溢れ出す為に、施工の障害となり、泥水処理が必須要件となっていた。
【0007】
一般的には泥水にセメント系の固化材を添加して固化し、トラックで搬送可能な程度の粘度として産業廃棄物として処分しているが、環境上好ましくない。また泥水を脱水してこれと土を再利用する方法もあるが、再利用を有効化する為には大掛かりな装置を必要とし、各現場に設けることは困難であるなどの問題点があった。また掘削土とセメントミルクとを混合して、ソイルセメント化し、これを使用する方法も多様化されているが、杭の挿入によって、地上に大量のソイルセメントが流出した場合に、このソイルセメントは同様に産業廃棄物として処分することが一般的となっている。
【0008】
また、第二の問題点として、杭の高止まりの一因となる点があった。つまり、杭穴を所定の深さまで掘削したにも拘わらず、杭穴壁から砂、礫等が落下して杭穴底部に溜まり、杭の下端が所定の深さまで沈下せず、杭の上端部が余る問題点である。
【0009】
即ち、掘削液が必要量より多く注入された場合には、杭穴内にある泥土の比重が低下し、礫等が杭穴側に落下することが考えられる。また、掘削液の注入が少なすぎる場合には、杭穴壁の練付けが不完全となり、やはり杭穴壁の一部が崩壊することが考えられる。更に、練付けドラムの形状が不適切で、練り付けられるべき掘削土が杭穴壁に押し付けられず、杭穴内に残ることが考えられる。
【0010】
また、このような問題は、先掘工法の場合に顕著であったが、中掘工法でも同様の問題点としてあった。
【0011】
従って、土質強度等に見合った適切な掘削液を選択して使用することと、効率的な練付けが可能なドラム構造を明らかにすることが求められていた。
【0012】
また、従来練付けドラム等の練付手段を使用する方法は多大の効果をあげていたが、ドラムの形状について更に研究開発し、掘削液を使用しない時においても、杭穴壁に練付けることができ、また練付け量を多くすると共に、杭穴壁の強度を一層増強することが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、杭穴掘削に際し、掘削液を必要としない掘削と、必要とする掘削とに分けて掘削し、発生泥水を可及的に少なくすると共に、掘削土を効率よく練付けることにより、前記従来の問題点を著しく改善することに成功したのである。またソイルセメントを作る場合においても、必要場所に必要強度のソイルセメント層を生成すると共に、コンクリート杭挿入時に、ソイルセメントが杭穴外に流出しないようにあるいは流出を極力収えるように総てを管理し、施工が自動的に進行できるようにした画期的な工法を完成したのである。
【0014】
即ち方法の発明は、現場敷地内で標準貫入試験を行い、N値を算出し、先端に掘削刃を有する掘削ロッドの回転駆動装置が負担する消費電力を計測しながら杭穴を掘削する方法であって、
(1) 前記N値は、異常N値を排除して、N値の平均値とする。
(2) 前記N値の平均値が予め設定した値以上であって、前記消費電力が予め設定した値より大きな場合を「支持力を期待する地層」として予め設定すると共に、前記消費電力の大小に応じ「前記消費電力が前記予め設定した消費電力より大きい場合に前記掘削液を多く吐出するように」前記消費電力に対応して、補助手段としての掘削液の吐出量を予め設定する。
(3) 1つの杭穴において、支持力を期待しない地層は、水等の掘削液を使用することなく掘削し、「支持力を期待する地層」は、前記設定した吐出量に基づき水等の掘削液を使用して掘削し、前記掘削中に生成した掘削土は、ロッドに取り付けした練付け手段により穴壁へ練付ける。
ことを特徴とした杭穴掘削方法。
【0015】
また、他の発明は、1つの杭穴において、先端に掘削刃を有する掘削手段を回転させて、補助手段としての掘削液を吐出しながら杭穴を掘削する方法であって、
(1) 予め定めた積算電流値の大小により「前記予め定めた積算電流値が相対的に大きい場合に前記掘削液を多く吐出するように」前記積算電流値に対応させた掘削液の吐出量を予め設定し、
(2) 前記杭穴を掘削しながら、その掘削中の深度毎に、前記掘削手段を回転下降するための積算電流値を計測処理し、
(3) 前記積算電流値の大小に対応させて、前記掘削液の吐出量の大小を制御した。
ことを特徴とする杭穴掘削方法である。
【0016】
また、他の発明は、現場敷地内で標準貫入試験を行い、N値を算出し、先端に掘削刃を有する掘削ロッドの回転駆動装置が負担する消費電力を計測しながら杭穴を掘削する方法であって、
(1) 前記N値は、異常N値を排除して、N値の平均値とする。
(2) 前記N値の平均値が予め設定した値以上であって、前記消費電力が予め設定した消費電力値より大きな場合を「支持力を期待する地層」として予め設定すると共に、前記消費電力の大小に応じ「前記消費電力が大きい場合に前記掘削液を多く吐出するように」前記消費電力に対応して、補助手段としての掘削液の吐出量を予め設定する。
(3) 1つの杭穴において、支持力を期待しない地層は、水等の掘削液を使用することなく掘削し、「支持力を期待する地層」は、前記設定した吐出量に基づき水等の掘削液を使用して掘削し、前記掘削中に生成した掘削土は、ロッドに取り付けした練付け手段により穴壁へ練付けると共に、杭穴内の残存する掘削土中へセメントミルクを注入し、撹拌してソイルセメントとし、前記杭穴内へコンクリート杭を挿入して、コンクリート杭の内部及び外部へソイルセメントを充填する。
ことを特徴とした基礎杭の施工方法である。また、前記において、ソイルセメントにおけるセメント量は、掘削泥土量と、添加すべきセメントミルク量を算定し、予め定めた割合に調整することを特徴とした基礎杭の施工方法である。
【0017】
前記において、積算電流値とは、これと同値の積算トルク値も含む。
【0018】
また、前記において、掘削液を使用する場合としない場合とに分ける掘削は、ある建造物構築現場で1本の杭穴毎に適用される場合はもちろんのこと、1本の杭穴で、深さに応じて部分毎に適用することも可能である。
【0019】
この発明において、支持力を期待するか否かは土質強度(例えばN値)と密接な関係があり、支持力を期待しない地層とは、例えば砂質土層でN値15未満、粘性土層でN値10未満の地層であって、掘削時の掘削ロッドの回転駆動装置が負担する消費電力の比較的少ない地層をいう。元来標準貫入試験におけるN値は、同一質の地層でも大差がある場合があって、一概に決め難いが、転石などによる異常N値を排除して平均値を出し、そのN値の平均値が概ね砂質土層でN値15未満、粘性土層でN値10未満であれば、土質の掘削の難易とほぼ一致することが判明している。またN値は、掘削時の使用電力とほぼ比例するので、深さ別のN値グラフに平行して使用電力あるいは、電力と比例関係のある積算電流値を表示すれば、N値と電力との対応関係が掘削につれて明らかになり、土質を推定することができる。従って土質強度が小さい場合には、掘削液を使用することなく掘削を進行させることができる。
【0020】
前記杭穴の掘削は、同一掘削ヘッドを用いて掘削液の使用の有無を容易に使い分けることができるので、例えば、1つの杭穴において、地表から3mまでは掘削液なしで掘削し、次の3m〜5mまでは掘削液を用い、更に5m〜8mまでは掘削液を使用しないで掘削するなど掘削方法の変更を容易に実施することができる。
【0021】
また掘削液の吐出量又はセメントミルクの吐出量等を掘削状態と対応させて予めコンピュータに設定しておき、掘削状態及びその進行状態に合わせて最良の掘削液量を定め、又はセメントミルクの吐出量を制御して各深度におけるソイルセメントの固化強度を調整することができる。従って基礎杭は、杭穴掘削からソイルセメント層形成までコンピュータ管理され、各地層の土質強度に応じた最良の基礎杭構造を実現させることができる。
【0022】
前記のように杭穴の掘削を合理化することにより泥水の排出量を最少に止めるのみならず、杭穴壁の強度の増強及び基礎杭の支持力を向上させ、工事現場における施工方法の選択により、理想的な基礎杭構造を構築することができる。
【0023】
この発明において、練付け抵抗が大きい地層(例えば粘性度層)場合にも、掘削液を掘削補助手段に使用すると、比較的小さい電力で効率よく容易に杭穴を掘削することができる。
【0024】
また支持力を期待する地層とは、例えば砂質土層でN値15以上、粘性土層でN値10以上の地層であって、掘削ロッドの回転駆動装置が負担する消費電力が比較的大きく、掘削に要する時間が長い地層をいう。
【0025】
また、ここでいう支持力とは、杭周面支持力、杭先端支持力を含む。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、支持力を期待するか否かによって掘削液の使用又は不使用を決めて掘削するので、比較的小さい電力で容易かつ迅速に杭穴を掘削し得ると共に、泥水の排出量を著しく低減させることができる効果がある。従って、工事環境の改善と、泥水処理等関連費用、時間、労力を著しく節減し得る効果がある。
【0027】
この発明の装置によれば、掘削土を可及的多量に、かつ効率的に杭穴壁へ練付けることができるので、排出泥水量を低減できることは勿論、杭穴壁を一層強化し、これにより支持力の向上、全基礎構造の質的向上を達成し得る効果がある。
【0028】
更にセメントミルクの注入量の自動制御及び掘削液の自動制御によって、よりその土質に適合した合理的な基礎杭構造の構築を達成できるなどの諸効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
この発明は、1つの杭穴において、支持力を期待しない地層は、水等の掘削液を使用することなく掘削し、支持力を期待する地層は水等の掘削液を掘削補助手段として使用し、前記掘削により生成した掘削土はロッドに固定した練付けドラムにより穴壁へ加圧練付けを行って、杭穴を掘削する。
【0030】
前記杭穴内の残存する掘削土中へセメントミルクを注入し、撹拌してソイルセメントとし、前記杭穴内へコンクリート杭を挿入して、コンクリート杭の内部及び外部へソイルセメントを充填するようにした基礎杭の施工方法である。
【0031】
前記掘削液又はセメントミルクの吐出量はコンピュータによって制御し、掘削液は使用又は不使用のみならず、前記のように吐出量を制御し(例えばN値の大小にも関連させて制御)最小の掘削液で最良の効果をあげるようにする。またセメントミルクは、掘削土の性状(地質)及び杭穴の深度によりソイルセメントの強弱を想定し、これに合致するようにセメントミルクの吐出量を制御することにより、最良の基礎杭構造が得られるような施工方法である。また、セメントミルクの吐出量の制御だけでなく、必要に応じて、セメントミルクの濃度や、掘削液の種類等を切り替えられるようにし、それらを自動的に制御することもできる。
【0032】
また掘削ロッドに所定間隔毎に撹拌手段を取り付けると共に、所定間隔毎に練付けドラムを固定し、該練付けドラムの少なくとも1つは、その構造として、練付ける掘削土が進入する側の杭穴壁との間隙を広くし、さらに所定杭穴径に練付ける他側へ向けて該間隙を小さくし、所望の練付けの仕上がり状況に合わせる形状とする技術思想の下、具体的には前記掘削ロッドの長手方向に対し、下端面から上端面に向けて徐々に断面積が大きくなり、左側面から右側面に向けて徐々に断面積が大きくなるように外壁面を形成した練付けドラムとした基礎杭の練付け装置である。前記装置によれば、掘削土を効率よく練付けることができると共に、撹拌手段により掘削土を撹拌して、ソイルセメントを混合させ、ソイルセメントを均質にすることができる。
【0033】
また、ドラムの練付け面が広く取れる場合には、前記のように掘削土が進入する側において、ドラム径を小さくして杭穴壁との間隙を広くして掘削土の進入を容易にすると共に、その他側(出口側)に向けて徐々にドラム径を大きくし、その間隙を小さくして掘削径と略同一径で錬り付けする技術を付加することができる。更に、そのドラムの略中間部(進入側とその他側との中間)で、掘削径と略同径とし、その中間部から他側(出口側)に向けては逆にドラム径を徐々に小さくしてその杭穴壁との間隙を大きくし、ドラムの練付け抵抗を軽減し、ドラムの回転速度を上昇させることができる形状・寸法とすることがきる。また、ロッド逆回転時にも正回転時と同様の練付けができ、杭穴壁を傷つけることもない。即ち、練付け面積(杭穴壁に接触して練り付ける面積)を多少減らして練付け速度を上げることができるので、所望の練付け量と練付け速度とを適宜調節することができる効率的な練付け、及び杭穴の造成ができる。また、更に、練付け抵抗の大きい土質を含む地盤で掘削液の使用量を制御する練付け工法の場合には、ドラム練付け面積を加減できる本形状が特に有効となる。
【実施例1】
【0034】
この発明の実施例を図1、2、3について説明する。この発明においては、支持力を期待するか否かによって、掘削液の使用、不使用を決めるので、杭穴掘削時に掘削すべき杭穴の深度方向における土質強度(例えばN値)を掘削時に確認する必要がある。杭穴の深度方向の土質強度は、標準貫入試験による土質柱状図で判るが、該標準貫入試験は、建物の敷地面積にもよるが、例えば敷地毎に1箇所又は2箇所位求めるだけである。そこで当該工事現場において、基礎杭を50本〜100本貫入する(同数の杭穴を掘削する)としても、前記標準貫入試験は例えば1箇所だけのこともあるが、土質強度の深度別変化は、50の杭穴を掘削すれば、50通りある。但し地層であるから、層の厚さと地表からの深さは異なっても、N値の大小の傾向はほぼ等しくなるので、N値に比例する積算電流値か、又は積算トルク値を測定し、該数値によるグラフと、前記N値のグラフとを比較することができる。このN値は、積算電流値と比例するので、この実施例では、1つの杭穴において、深度別地層間の積算電流値を測定して、N値との関係を求め、これにより土質強度の判断をした。例えば、砂質土層でN値10の時の50cm毎の積算電流値が1000A・Sとすれば、1000A・S以下の数値を示す深さでは液なし掘削を行い、1000A・Sをこえる場合には、掘削液を掘削補助手段にした掘削を行うと共に、前記数値の大小に応じ、予め定めた掘削液の吐出量をコンピュータで制御すれば、当該現場における最良の杭穴掘削ができる。前記におけるN値は掘削電力に比例するが、掘削機の電源の電圧が一定であるから、積算電流値に比例する。
【0035】
前記において掘削液の使用、不使用は、一定深度毎の積算電流値によって制御しているので、地層の土質強度が頻繁(例えば50cm毎)に変化しても即時対応することができることは勿論、積算電流値の大小による掘削液の吐出量も制御することができる(例えば、積算電流値が大きいと、掘削液を比較的多く吐出させる)。
【0036】
即ち、1つの杭穴を掘削中に、その深さにおいて、その深さの上方50cmからその深さまでの、50cmの掘削に要した積算電流値を、連続的に測定することになる。従って、その範囲(50cmの深さ範囲。標準貫入試験において、土質強度の測定値を積算して表示させるN値の深さ範囲に対応させる。)での土質強度を掘削条件に反映することができ、その範囲に連続して続く直下の地盤を、土質強度に応じた掘削液の量の制御等を行い、地盤強度をリアルタイムに反映した掘削の制御が可能である。
【0037】
従って、経験等に基づく個人的な判断による掘削ではなく、地盤強度に対して標準化された判断基準である積算電流値により、掘削施工されるので、過度の掘削液を抑制し、排土の軽減と共に安定した確かな杭穴造成が可能となる。
【0038】
前記のようにして掘削を終了したならば、掘削ロッドを上方へ移動し乍ら、掘削土内へセメントミルクを注入しつつ、撹拌してソイルセメントを生成する。この場合に、セメントミルクの注入最終高さを規制し(上限は、コンクリート杭を杭穴へ挿入した場合にソイルセメントが溢れ出ない高さ)、コンクリート杭挿入時に、ソイルセメントの杭穴外への流出を未然に阻止するようにする。
【0039】
即ちコンクリート杭の中空部と、コンクリート杭の外壁と、杭穴の内壁との間隙部へソイルセメントが充填されることになるが、この場合に、コンクリート杭の中空部の容積と、杭穴内壁とコンクリート杭の外壁の間隙の合計容積は容易に算出できるので、この合計容積を杭穴の断面で割算すれば、杭穴底からソイルセメントの上限液面までの距離を容易に算出することがきできる。
【0040】
前記実施例において、事前に積算電流値に対応して、一定の掘削液の吐出量と、セメントミルクの吐出量を設定し、掘削中には、掘削時の積算電流値すなわち土質強度(N値)に対応して掘削液の吐出時期及び吐出量と、セメントミルクの吐出時期及び吐出量は総て掘削しながらリアルタイムでコンピュータによって制御するので、最良の条件により掘削できると共に、適量のソイルセメントを生成することができる(図1)。
【実施例2】
【0041】
この発明の実施例を図2、3、4に基づいて説明する。この発明は、先端に掘削ヘッド2を固定した中空のロッド3の中間部に、所定間隔毎に撹拌バー4及び練付けドラム5を固定した掘削ロッド1を回転しつつ下降させて、杭穴6を掘削する。この場合に、掘削ロッド1が一定深さ(例えば50cm)下降する毎に、その間に要した積算電流値をN値グラフと並列してプロットし、砂質土層でN値15付近、粘性土層でN値10付近の積算電流の相当数値の位置までは掘削液なしで掘削し、砂質土層でN値15相当、粘性土層でN値10相当を越えた積算電流値付近から掘削液を吐出して掘削する。
【0042】
前記において、標準貫入試験の位置の地層と、杭穴掘削位置の地層とがほぼ並行の場合には、N値のグラフと、積算電流値のグラフとは深度別に水平方向へ対応しているので、砂質土層でN値15未満と、N値15以上、粘性土層でN値10未満と、N値10以上とに分け、掘削液の吐出の有無を決めて杭穴を掘削する(図8(a))。
【0043】
次に標準貫入試験の位置の地層と杭穴掘削位置の地層とが、上下方向にずれている場合には(図8(b))、砂質土層でN値15未満、粘性土層でN値10未満に相当する深さの間だけを掘削液なしで掘削し、その他の深さの間については、掘削液を使用して掘削する(図8(b))。
【0044】
前記において、図8(a)の場合は、地表から11mまでは掘削液なしで掘削し、11m以上は掘削液を掘削補助として掘削する。前記に対し、図8(b)の場合は、地表から深さ5mまでは掘削液なしで掘削し、深さ5m〜8mまでは掘削液を使用して掘削し、深さ8m〜12mまでは掘削液なしで掘削し、深さ12m以上は掘削液を用いて掘削する。前記のように、地層が水平方向へ平行の場合には、N値と同一深度変化で積算電流値が増減するので、N値の数値と対応し、同等深さの制御を行うが、N値と上下方向へ若干ずれた深度で積算電流値が変化する場合には、N値15又はN値10に相当する積算電流値に対応して掘削液の吐出又は中止を決める。従って、現場においては、N値15又はN値10とほぼ対応する積算電流値を掘削液の使用、不使用を決める目安とし、又はコンピュータに予め記憶させておけば、自動的に運転することができる。
【0045】
この実施例において、N値が15又はN値10を越えた場合に掘削液を使用しなければ掘削不能になるということではないので、掘削現場における積算電流値を見て掘削液の使用又は不使用を定めれば、合理的な杭穴掘削ができる。また崩壊性土質の場合は、標準貫入試験の土質柱状図の深さ別N値との関係から、深さ別積算電流値をプロットすれば(グラフ化する)、崩壊地層か否かを正確に判断することができるので、前記の要領により掘削液の吐出又は中止を決める。
【0046】
前記のようにして、図2(a)のように掘削液なしで掘削し(多くは空穴6a)、ついで図2(b)のように掘削液を用いて掘削し、所定の掘削液入り杭穴6bを掘削し、拡底穴6cの掘削も完了したならば、掘削ロッド1の下端から、セメントミルクを矢示7のように吐出しつつ、掘削ロッド1を矢示8のように引き上げる(図2(c))。この場合に、掘削ロッド1は回転させているので、撹拌バー4により掘削土9と、前記セメントミルクとを混合し、ソイルセメント11を生成する。この場合にソイルセメント11の強度は、水セメント比を一定とした場合(例えばW/C60%)、単位容積当たりのセメントミルク量により決まるが、例えば拡底穴6c内はセメントミルク量を多くし(例えば拡底穴径1.1m×高さ2.5mの場合2.38m3)、その上部はセメントミルク量を少なくする(例えば掘削径0.78mの場合1m当たり0.0478m3)。又はセメントミルクの固化強度の異なるものを使い分けることもできる。
【0047】
前記におけるセメントミルクの吐出終了の最高位は、図3(a)のA面とする。このA面の高さは、コンクリート杭10を挿入した場合に、ソイルセメント11の最高位置Bが地表と同一面になるように算定する。前記コンクリート杭10は、上から円筒杭10aと同径の節杭10b(下部軸部と上部軸部とからなり、両軸部に節部を設けたもの)との継杭とする(図3(b))。
【0048】
また図4によれば、上部に大径の円筒杭10aを配し、その下部に小径の円筒杭10bを接続し、その下部に、同径の節杭(環状の突起付きの根固め杭として)10cを接続して用いる。前記杭種の選定は、専ら必要とする支持力の大小と、必要とする曲げモーメントの大小によって決定する。従って杭種の組み合わせも、支持すべき荷重と、所望の曲げモーメントの大小により選定する。
【0049】
前記は、杭穴掘削とN値(積算電流値)との関係及びソイルセメントの関係等について説明したが、以下掘削の実施例について説明する。前記実施例で使用する練付けドラム5は掘削ロッド1の長手方向に対し、下端面から上端面に向けて徐々に断面積が大きくなるように形成され、また左側面から右側面に向けて徐々に断面積が大きくなるように曲線状に形成されている。従って、練付けドラム5の下方から上方へと上昇してくる掘削土の通過範囲を狭めると共に、掘削ロッド1を正回転させたときに練付けドラム5の左側面から進入する掘削土が右側面に向かうにつれて、その通過範囲を狭めるように構成されている。前記により、練付けドラム5の左側面は杭穴6の円周状の掘削内壁に接しておらず、少なくとも右側面が杭穴6の掘削内壁に接することになる。このように形成された練付けドラム5aを少なくとも1つ以上掘削ロッド1に取付ける。練付けドラム5aの取付位置は掘削土の粉砕、撹拌が比較的良くない状態である掘削ヘッドの直上部、すなわち掘削ロッドの下端部に溶着あるいは取り外し自在に位置させるのが最も効果的である。掘削ロッド1の長手方向に対し、最下端部の練付けドラム5aを上記の変断面を有する練付けドラム5aとして、それより上部の練付けドラム5を変断面を有しない従来の練付けドラム5とすることもできる。
【0050】
即ち、練付けドラム5aの練付け面を広く取れる場合(練付け面の垂直方向の長さを大きくできる場合)には、その練付け面の最大外径部分(即ち杭穴6の掘削径と略同一寸法の部分)の水平方向の幅を狭くし、掘削土の進入側及びその他の側のドラム径寸法を小さくする形状等に形成することができる。この場合、練付けドラム5aの練付け時の押し圧抵抗を加減すると共に、逆回転時も同様の働きをする偏断面形状を採用することができ、効率的な練付けが可能となる。また、更に、練付け抵抗の大きい土質を含む地盤で掘削液の使用量を制御する工法の場合には特に有効である。
【0051】
前記練付けドラム5aは正回転時の掘削ロッド1の回転方向が時計周りを基準としているが、反時計周りを正回転とするならば、練付けドラム5aの右側面と左側面の形状は逆になる。このようにして形成された先端に掘削ヘッド2を有する掘削ロッド1を杭埋設位置の地盤にセットする。この実施例では、杭穴6に拡底穴6cを設けたが、ストレート状の杭穴であっても適用できる。
【0052】
次に、掘削ロッド1を正回転させて、掘削ヘッド2の先端より水等の掘削液を吐出せずにそのまま地盤を掘削する。ここで、使用する掘削ヘッド2は様々な構造を適用できるが、この実施例では2本の掘削アーム12と本体部2aを有する掘削ヘッド2を用い、掘削ロッド1の正回転時には通常掘削状態に掘削アーム12が拡開して杭穴軸部の掘削を行い、掘削ロッド1の逆回転時には拡大掘削状態に掘削アーム12が拡開して拡底穴6cの掘削を行う。
【0053】
施工地盤は、一般的に地盤上層部が比較的軟らかい地層が多くみられるため、砂質土層についてはN値15未満、粘性土層についてはN値10未満の地層については掘削液を吐出せずに掘削し、掘削ヘッドによって掘削された掘削土は、練付けドラムの左側面の杭穴壁との間隙部から進入し、正回転方向に沿って練付けドラムの右側面方向の練付け面に押しつぶされながら杭穴壁に練付けられる。これによって、杭穴内に掘削土が僅かしか残存しない空洞の杭穴が形成される(図2(a))。
【0054】
また砂質土層でN値15以上、粘性土層でN値10以上の地層に対しては、前記のように掘削液を用いて掘削して、引続き掘削を進めて、支持層に到達後、掘削ロッドを逆回転させて掘削ヘッドを拡大掘削状態として杭穴拡底部を形成する。所定形状の拡底部(例えば直径1.1m、高さ2.5m)を形成した後、掘削ロッドを逆回転させたまま根固液としてのセメントミルク(固化強度20N/mm2)を拡底部内に注入して拡底部内に残置する掘削土と撹拌・混合してソイルセメント(固化強度20N/mm2以上)を形成する。
【0055】
拡底部内のソイルセメント層形成後、掘削ロッドを正回転に戻し、掘削ヘッドを通常掘削状態にして引続き杭穴軸部内の掘削土(泥土、泥水も含む)が残置する区間内に杭周固定液としてのセメントミルク(固化強度20N/mm2)を注入し、掘削土と撹拌・混合してソイルセメント(固化強度1N/mm2程度)を形成する。
【0056】
前記セメントミルクの注入においては、深度ごとに注入量をコンピュータ等によって表示しながら施工することによって、各深度に規定量のセメントミルクの注入結果が判別できるので、ソイルセメント形成区間内において均質な所望のソイルセメントを形成することができる。
【0057】
前記実施例においては、コンクリート杭10を使用したが、支持力、杭の曲げ耐力、周面支持力等の必要性により従来公知の既製杭(PHC杭、PRC杭、SC杭、鋼管杭、節杭等)を使い分けることができる。
【0058】
前記既製杭の他、杭下端部に袋体を有し、袋体の内部にセメントミルクを注入して該袋体を膨張させる杭、又は杭下端部に鉄筋カゴを取付け、拡底部内で拡開させるものを適用することもできる。また、突起付き根固め杭として、例えば、節杭の上に下部軸部と該下部軸部より大径に形成された上部軸部を有する円筒杭を連結して埋設し、主として地上付近に大きく作用する水平力に耐え得る構造とすることもできる(図4)。
【0059】
前記のようにして既製杭を杭穴に挿入していくにつれ、杭周部及び拡底部のソイルセメントが上昇し、既製杭の外壁と杭穴内壁との間隙を埋めていく。このとき、杭中空部の先端が開放されていれば、該杭中空部も上昇してくるソイルセメントで満たされる。杭中空部の先端を閉塞していれば、杭中空部内にソイルセメントが充填されなくて済むため、注入するセメントミルクの量をさらに減少させることができる。前記何れを採用するかは、現場における支持力等に関連して決める。
【0060】
このようにして引続き杭の挿入を進め、杭穴拡底部内に少なくとも1以上の突起部と下杭の下部軸部と上部軸部の変形部分が位置するように埋設する。このとき、杭穴拡底部の底面と、下杭下端面との間に所定間隔(例えば50cm)を設け、また杭穴拡底部の上面と該拡底部内に位置する最上の突起との間に所定間隔(例えば50cm)を設ければ、荷重伝達範囲を確保できるため、高鉛直支持力及び高引抜き耐力を発揮できる。
【0061】
杭穴6の拡底根固め部16の施工には、湿式工法で、その地層での土質強度に応じて、掘削液の量を制御すると共に、計測した積算電流値に従ってその土質地盤強度に応じたセメントミルクを供給できるので、より高い固化強度のソイルセメント層を確実に造成できる。
【0062】
とりわけ、図3(b)、図4のように、杭穴6の拡底部16内に、下杭10bの2つの節部18a、18b(少なくとも1つ)を位置させ、他の節部18cを拡底部16の直上に位置させた場合には、諸条件にもよるが、従来のストレート杭の場合に比して、約2倍の高い鉛直支持力を発現できる。
【0063】
従って、杭穴拡底部根固め部16での構造で、高い鉛直支持力を発現できるので、コンクリート杭10の軸部及び杭穴6の軸部は支持力に対する与える影響が少ないので、支持力以外の条件を加味して、その目的に応じて種々の構造を採用することができる。
【0064】
例えば、杭穴6の軸部においては、杭10の外径と杭穴の内径との間隙が大きくとれ、その間隙に掘削土を貯め置きすることもできるので、大幅に排土量の軽減ができる。また、地層の土質強度に応じて、湿式又は乾式(掘削液を使用する又はしない)を使い分けて掘削ができるので、掘削液の使用量を軽減でき、ひいては排土の一層の軽減効果がある。また、杭穴壁の練付けと相まって、更に杭穴品質の安定化も確保できる効果もある。
【実施例3】
【0065】
この発明の装置の実施例を、図5、6、7について説明する。この発明は、中空のロッド3に所定間隔(例えば1m)に撹拌バー4、4を放射状に植設すると共に、所定間隔に練付けドラム5、5aを固定し、前記中空のロッド3の下端へ掘削ヘッド2を連結してこの発明の掘削ロッド1(掘削装置)を構成する。
【0066】
前記練付けドラム5aは、平面弧状で、側面方形の二枚の練付け羽根15、15を、ブラケット14、14によりロッド3へ固定して構成してある。前記練付け羽根15、15は図7(a)の如く、左側面15aは上を広く、下を狭くした台形で、練付け面15bはほぼ矩形であって、右側面15cは縦長の矩形である。
【0067】
また、図6に示すように、前記練付け羽根15は、練付ける掘削土が進入する側(即ち左側面15a)で杭穴6壁との間隙を広くし、所定杭穴径に練付ける他側(即ち右側面15c)での杭穴6壁との間隙を小さく形成してある。
【0068】
また他の実施例は、図7(b)の如く左側面は上を広く、下を狭くした台形で、練付け面15bは菱形で(上辺、下辺共に傾斜)、右側面15cは縦長の矩形である。更に他の実施例は、図7(c)の如く左側面は上を広く、下を狭くした台形で、練付け面15bは上を傾斜させた台形で、右側面15cは縦長の矩形である。
【0069】
前記練付けドラム5は、掘削ロッド1の長手方向に対し、下端面から上端面に向けて徐々に断面積が大きくなるように形成され、また左側面から右側面に向けて徐々に断面積が大きくなるように形成されている。
【0070】
前記練付けドラム5の練付け面が練付けドラム5の下端面から上端面に向けて杭穴壁との間隙が小さくなるように形成されていると共に、左側面から右側面に向けて該練付け面と杭穴壁との間隙が小さくなるように形成されている。前記練付けドラム5aの練付け面の形状は、正面図が長方形、平行四辺形、台形等種々のものを選択できる(図7(a)、(b)、(c))。すなわち掘削土の進入が容易でかつ、所望の杭穴径を形成できる形状であればよい。また練付けドラムは強度上鋼板で形成されているが、所定強度をもったものであれば他の素材としてもよい。こうして形成された練付けドラムを少なくとも1つ以上、掘削ロッドの下端部の掘削ヘッドよりも上部に取付ける。
【0071】
なお、本実施例は正回転時の掘削ロッドの回転方向が時計周りを基準としているが、反時計周りを正回転とするならば左側面と右側面の形状は逆になる。
【0072】
前記掘削ロッドを使用して杭穴を掘削するには、掘削ロッドを正回転(時計周り)させて掘削ヘッド2で地盤を掘削する。このとき生じる掘削土が練付けドラム5aの左側面から進入する。練付け面は左側面から右側面に向けて徐々に所望の杭穴径に近づくように形成されているため、侵入した掘削土は押しつぶされるように杭穴壁に練付けられる。これによって、掘削液を使用しなくとも直接掘削土を杭穴壁に練付けることができ、杭穴軸部の杭穴壁を強固に形成することができる。また、掘削液を使用した場合であっても、掘削により生じる泥土を前記と同様に杭穴壁に練付けることができる。
【0073】
前記実施例によれば、練付けドラム5aを使用したので、掘削土をより有効に杭穴に練付けることができる。従って、掘削土の排出量を著しく低減し、かつ杭穴壁を強化することができる。
【0074】
また、前記実施例で、図6に示す練付け羽根15を広くして効率的な練付けを行いたい場合には、例えば、図6(c)において、練付け面15bの外径を杭穴の掘削径の寸法と略一致させ、更に右側面15cの外径を左側面15aの外径と略同一の小径の寸法とし、左側面15aと練付け面15b間及び練付け面15bと右側面15c間の練付け面を緩やかな傾斜面とした形状に変更することも可能となる。ここで、練付け羽根15において、練付け面15bの掘削寸法幅部分とその他の部分(練付け面15b以外の部分)の幅との比率を増減することにより、効率的かつ経済的な練付け掘削工事ができる。
【実施例4】
【0075】
図9〜図12により他の発明の実施例を説明する。前記各実施例では、杭穴掘削した後に既製杭を埋設する工法(先掘工法)について説明したが、この実施例いわゆる中掘工法について説明する。
【0076】
1.掘削ロッドの構成
【0077】
掘削ロッド1は、外周にスパイラル30を設けたロッド3の下端部に掘削ヘッド2を連結した構成である(図11)。
【0078】
掘削ヘッド2は、ロッド3に連結するヘッド本体2aとヘッド本体2aに揺動可能に2本の掘削アーム12、12を取付けて構成する。掘削アーム12は、先端に掘削刃を有し、3段階に外径を可変できる構造となっている。即ち、第1段階として、杭中空部内に挿通時のニュートラル状態(図9(a))、第2段階として、ロッド3を正回転して杭穴6の軸部17を掘削する通常掘削状態(図9(b))、第3段階として、ロッド3を逆回転して杭穴6の拡底部16を掘削する拡底掘削状態(図9(c))、と可変できるように形成されている。前記における「ニュートラル状態」とは、掘削アーム12が下方に垂れた状態をいう。
【0079】
また、掘削アーム12には、第2段階で、杭穴6の軸部17を掘削しながら、掘削した杭穴壁を均すことができるように、練付棒19が連結されている。練付棒19は、第2段階で、練付部20が杭穴壁に沿って、縦に配置され、練付部20の全長で杭穴壁を均すことができる(図9(b))。即ち、杭穴壁の均しは、単なるロッド3の回転により制御し、ロッド3の作動と一体化している。
【0080】
この状態で、練付棒19の練付部20は、実施例3と同様に、練付部20の横断面で、練付ける掘削土が進入する側(即ち左側面20a)の杭穴壁との間隙を広くし、所定の杭穴径に練付ける他側(即ち右側面20c)に向けて杭穴壁との間隙を小さく形成してある(図10)。また、練付面20bを掘削径と同形にして練付けし、他側20cを小径として杭穴壁との間隙を広くし、練付抵抗を調節すれば、各種土質・強度に対応して効率的な練付けが可能となる。
【0081】
また、前記ヘッド本体2aには、セメントミルクなどの吐出口(ヘッド本体の側面部分)21、吐出口(ヘッド本体の下端部分)22等が形成され、該吐出口21、22はロッド内の送水パイプ(図示していない)に連通している。またヘッド本体2aの下端には固定掘削刃23、23が下方に向けて突設されている。
【0082】
2.コンクリート杭10の構成
【0083】
この実施例に使用するコンクリート杭10は、節部(環状リブ)を下端部に形成した下杭10bと、下杭10bの上方に連結されるストレート状の上杭10aとから構成される(図12(a))。
【0084】
下杭10bは、所定外径D1の下部軸部24の外周に2つの節部(外径D3)18b、18cが形成され、上側の節部18bに連続して、外径D2の上部軸部25が連設された構造である。上部軸部25にも節部18aが形成されている。節部18a、18b、18cは、上下でほぼ等間隔(100cm)に配置されている。
【0085】
また、「節部18の外径D3」>「上部軸部25の外径D2」>「下部軸部24の外径D1」となっている(図12(a))。また、上杭8は、前記下杭2の上部軸部5の外径と同じ外径D2で形成され、下杭2と連結可能となっている(図12(a))。例えば、D1、D2、D3は夫々60cm、70cm、75cmの寸法で形成される。
【0086】
3.コンクリート杭10の埋設方法
【0087】
(1) ロッド3の先端に掘削ヘッド2を取付け、ロッド3を下杭(突起付き杭)10bの中空部に挿通する。次に、クレーン等でロッド3が挿通された下杭10bを杭埋設地点まで運び、杭打機に取付ける。取りつけ作業は、杭打ち機に取り付けられているアースオーガーにロッド3を接続し、排土ホッパー下部の杭支持装置に突起付き杭の上部杭端板に取付けられた杭頭治具を把持させる(図示していない)。
【0088】
(2) 次に、ロッド3を正回転(時計回り)させ、掘削ヘッド2の吐出口(先端)22から空気を吐出しつつ、掘削土に空気を混ぜた状態で、掘削土をロッドを介して排土ホッパー内へ揚土しつつ、杭穴軸部を掘削する。
【0089】
ここで、吐出口22から空気を吐出するか、あるいは掘削液を吐出するかの選択は、前記実施例1と同様に、掘削中に測定する積算電流値が予め設定した数値より行われる。即ち積算電流値が予め設定した数値より小さい場合には、空気を吐出し、大きい場合には、掘削液を吐出する。
【0090】
また、掘削ヘッド2で、所定区間を掘削する度に、掘削土あるいは掘削液等が混合した掘削土を掘削ヘッド2で、混合撹拌及び練付け等を充分に行った後、その杭を押し込み、更に下の層で同様に順次撹拌混合及び練付け等を行う。
【0091】
また、このとき、掘削径は下杭10bの突起部径D3と同等又は若干大きめの径D11で掘削する。こうして、掘削を進めながら下杭(突起付き杭)10bを挿入する(図11(a))。
【0092】
(3) 下杭10bを所定深さ(上端部が地上に突出した状態)まで下降した段階で、下杭10bを保持し、下杭10bの上端に、下杭10bと同様にロッド3が挿通された上杭10aを連結する。
【0093】
(4) 次に、所定深度掘削後、下杭10b(突起付き杭)をその高さで保持した状態で、吐出口22から掘削液を吐出し、掘削ヘッド2の掘削アーム12に取付けられた練付棒19、19によって掘削土を杭穴壁に練り付けながら杭穴壁を均しながらロッド(掘削ヘッド2)3の昇降を繰り返し、さらに杭穴6の軸部17を掘削する(図11(b))。
【0094】
この際、、練付棒19の練付部20が、練付部20の横断面で、練付ける掘削土が進入する側(即ち左側面20a)の杭穴壁との間隙を広くし、所定の杭穴径に練付ける他側(即ち右側面20c)へ向けて杭穴壁との間隙を小さく形成してある(図10)ので、効率的な練付けができる。
【0095】
また、前記における所定深度とは、杭穴拡底部16a上端から杭周固定液を注入する区間の最上位置である。
【0096】
(5) 次に、支持層付近まで杭穴6の軸部17を形成した後(図11鎖線図示17a)、ロッド3を逆回転(反時計回り)させて、掘削ヘッド2を拡底掘削状態にし、杭穴軸部17の下端部(17a)を拡大すると共に掘削した軸部17aの下方を杭穴底16aまで拡大して、杭穴拡底部16を形成する(図11(b)鎖線図示16、16a)。尚、このとき、支持層の所定位置(形成予定の杭穴の穴底16a付近)まで杭穴軸部17の径で掘削を行い、その後ロッド3を逆回転させて、杭穴軸部17の下端部を拡大して、杭穴拡底部16を形成することもできる(図示していない)。
【0097】
(6) 所定の杭穴拡底部(長さ:250cm、外径:110cm)16の掘削を完了後、掘削ヘッド2の吐出口22より杭穴拡底部16内に所定固化強度の根固め液(セメントミルク)を注入し、杭穴拡底部16内に残存する礫等と撹拌混合し、杭穴拡底部16内にソイルセメント層(根固め部)を形成する(図11(c))。この際、セメントミルクの注入量も、掘削時に計測した積算電流値により地盤強度に対応した最適のセメントミルク量を設定できる。
【0098】
また、このとき、ソイルセメント層の形成方法としては、品質のバラツキが少ない良質のソイルセメント層を形成するために、以下のようにすることが望ましい。
【0099】
即ち、杭穴掘削完了後、掘削ヘッド2を杭穴拡底部16の最下部(穴底16a付近)に保持した状態で掘削ヘッド2で撹拌しながら、掘削ヘッド2下端の吐出口22から全セメントミルク量の約3分の1のセメントミルクを吐出する。続いて、掘削ヘッド2で撹拌しながら、ロッド3を杭穴拡底部16の上端16b付近まで上昇させながら全セメントミルク量の3分の1を吐出する。次に、掘削ヘッド2を杭穴拡底部16内で複数回昇降させながら、残りのセメントミルクの3分の1を吐出して、撹拌及び混合を行いロッド3を引上げて杭穴拡底部16内にソイルセメント層を形成する(第1の方法)。
【0100】
また、他の望ましいセメントミルクの注入方法(第2の方法)は、先ず、掘削ヘッド2の吐出口22を杭穴拡底部16の最下位置(穴底16a付近)のほぼ中央に設置し、撹拌しつつ吐出口22からセメントミルクを吐出しながら、杭穴拡底部16内を上下2往復させて、杭穴拡底部16の上端16baで注入を完了させる。
【0101】
また、他の望ましいセメントミルクの注入方法(第3の方法)として、杭穴拡底部16の最下位置(穴底16a付近)で掘削ヘッド2の吐出口22からセメントミルクを注入して、杭穴拡底部16内の掘削泥土を押し上げて、注入したセメントミルクと置換してセメントミルク層を形成することもできる。
【0102】
(7) 杭穴拡底部16内にソイルセメント層(又はセメントミルク層)を形成後、ロッド3を正回転させて掘削ヘッド2を通常掘削状態に戻し、杭穴軸部17の杭周固定液注入区間に、掘削ヘッド2の吐出口22から所定固化強度の杭周固定液(セメントミルク)を吐出注入し、掘削泥土と撹拌・混合し、杭周固定液層(ソイルセメント)を形成する。
【0103】
このとき充填する杭周固定液は、コンクリート杭10(上杭10a、下杭10b)を杭穴6内に沈設完了した際に、杭穴充填物(ソイルセメントなど)がコンクリート杭11により押し上げられた状態で、杭周固定液が沈設後の杭頭付近まで満たされる量を注入する。
【0104】
ここで、杭穴軸部17に位置する部分(下杭2上部軸部5及び上杭8)は節部外径D3よりも小さい外径D2の円筒杭としているため、杭穴壁とコンクリート杭10との間の間隙内を杭周固定液が上昇し易い。
【0105】
また、杭穴軸部17に位置するコンクリート杭10と杭穴壁との間の間隙を利用して杭周固定液が上昇し易いように、下杭10bの軸部径及び上杭10aの外径を適宜選択して、この間隙を調整することができる。
【0106】
また、杭穴軸部17において、杭周固定液が上昇し易い形状・寸法、あるいはコンクリート杭10埋設後にトレミー管等を使用する場合には、杭穴軸部17に位置するコンクリート杭10の形状・寸法は問わない(図示していない)。
【0107】
(8) その後、掘削ヘッド2をニュートラル状態にして、ロッド3に回転を与えず、所定深度に保持していたコンクリート杭10の中空部26、26内に、ロッド3、掘削ヘッド2を収納する。コンクリート杭10を加圧し、杭穴拡底部16内に下杭10bの節部18b、18cが2つ納まる深さまで、沈設する(図11(e))。尚、ここで、節部18の2つを杭穴拡底部16内に収容したが、通常、少なくとも1つの節部18を杭穴拡底部16内に位置させる。
【0108】
また、コンクリート杭10の沈設により、ソイルセメント層及び杭周固定液層から押し上げられたソイルセメントがコンクリート杭10の上杭10aの中空部27上端から溢れ、コンクリート杭10外壁と杭穴壁との間隙からもセメントミルクが上昇してくる。これにより、コンクリート杭10の外壁と杭穴壁の外壁との間の間隙にセメントミルクが充填されることが確認できる。
【0109】
(9) コンクリート杭10の埋設が完了した後に、掘削ロッド1(掘削ヘッド2)を引き上げ、施工完了とする。セメントミルクが固化した後、基礎杭構造が完了する(図12(b))。この際、下杭10bの下端28と杭穴底16a都の間にセメントミルクが固化した層29が形成される(図12(b))。
【0110】
(10)前記実施例1〜3のようないわゆる先掘工法に比べて、本実施例のような中掘工法では、杭構造全体に占める練付けの比重はそう高くはないが、本実施例のように、練付けを確実に行うことによりより品質の高い基礎杭構造を構築できる。一般に中掘工法での掘削条件を地質に対して余裕を持って設定する必要があったが、本発明により、各深度毎の土質強度に対応した効率的で、きめ細かい掘削練付けができる。
【0111】
従って、掘削時には、深度毎の地質即ち土質強度に応じて、リアルタイムで対応した杭穴掘削工事ができるので、全体的に崩落し易い地層で、かつ支持力のあまり期待できない地層が混在している地盤であっても、乾式又は湿式を併用して、安定した確かな施工条件で、中掘工法の施工ができる。
【0112】
特に、下端部に節を設けたコンクリート杭のその節部を、高固化強度のソイルセメントを充填した杭穴拡大根固め部内に埋設した場合には、その節部の上下面で、せん断力の伝搬が認められ、せん断支持力を発現させることができる。よって、高支持力を期待する基礎杭を、中掘工法で実施させることができる。また、コンクリート杭の下端と拡底部底との間にソイルセメント層を形成すれば、コンクリート杭の下端面からのせん断力の伝搬も得られ、より高支持力の基礎杭を実現できる。
【0113】
即ち、コンクリート杭を押入ながら、各地層を順次掘削しながらその深度に対応した積算電流値を測定し、その積算電流値の大小に応じて、掘削液、セメントミルク等の注入量を制御するので、所望の品質及び固化強度のソイルセメントが充填された杭穴及び基礎杭構造を構成できる。また、支持力を期待できない地層でも、下端部に節部を有するコンクリート杭を押し込みながら杭穴掘削をするので、その地層の杭穴壁の土砂が杭穴下部へ崩落する前に、コンクリート杭の節部等で押さえることができる。また深度毎の土質強度に応じて、乾式又は湿式更に、掘削液の量も制御できるので、排土量の低減を図り、高品質で安定した基礎杭構造を提供できる中掘工法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】この発明の実施例のブロック図である。
【図2】(a)は同じく掘削液を使用しない掘削例の概念図で、(b)は同じく掘削液を使用する掘削例の概念図で、(c)は同じくソイルセメントを作る際の概念図である。
【図3】(a)は同じくソイルセメント出来上がりの概念図で、(b)は同じく杭を挿入した実施例の概念図である。
【図4】同じく杭を挿入した他の実施例の概念図である。
【図5】同じく杭穴掘削完了時の実施例の掘削ロッド取り出し前の概念図である。
【図6】(a)は同じくこの発明の練付けドラムの実施例の一部を切断した拡大上面図で、(b)は同じく一部を省略した取付け状態の拡大正面図で、(c)は同じく一部を切断した拡大下面図である。
【図7】(a)は同じく練付けドラムを構成する一方の羽根の拡大端面図で、(b)は同じく他の実施例の拡大端面図で、(c)は同じく他の実施例の拡大端面図である。
【図8】(a)は同じくN値及び電力値と深さのグラフで、(b)は同じく他の実施例のグラフである。
【図9】(a)〜(c)はこの発明の実施例4に使用する掘削ヘッドの3状態を表す正面図である。
【図10】同じく実施例4で、練付部の拡大横断面図である。
【図11】(a)〜(e)は、実施例4の施工過程を表す縦断面図である。
【図12】(a)は実施例4で使用するコンクリート杭の縦断面図、(b)は実施例4で構築した基礎杭構造である。
【符号の説明】
【0115】
1 掘削ロッド
2 掘削ヘッド
3 ロッド
4 撹拌バー
5 練付けドラム
6 杭穴
9 掘削土
10 コンクリート杭
11 ソイルセメント
12 掘削アーム
16 杭穴の拡底部
17 杭穴の軸部
18 杭の節部
19 練付棒
20 練付部
【技術分野】
【0001】
この発明は、地層即ち土質強度に対応した杭穴掘削工法を採用すると共に、発生した泥土を可及的多く、かつ効率的に練付け、廃棄泥土の低減と、杭穴強化を目的とした基礎杭の杭穴掘削方法及び基礎杭の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、杭穴の掘削については、杭穴を掘削した後に掘削ロッドを杭穴から取り出して、その後に既製杭を埋設する方法(先掘り工法)、杭穴を掘削しながら、中空の既製杭を埋設し、杭穴掘削完了に中空部を通って掘削ロッドを引き上げ、杭を沈設する方法(中掘工法)が、行われていた。
【0003】
この場合、杭穴の掘削にあたり、水等の掘削液を使用する場合も、使用しない場合もあった。また、掘削土を練付けドラムによって、杭穴壁に練付けることも行われていた。
【0004】
杭穴掘削にあたり、掘削液を使用するか否かは、一般的には1つの構築現場の全体で判断され、その構築現場の全部の杭を一様に決めていた。また、例えば、個々の従来の杭穴掘削においても、どのような場合に水等の掘削液を使用するかの簡便な判断基準がなかった。
【特許文献1】特開2001−32274号公報
【特許文献2】特開2000−120364号公報
【特許文献3】特開2000−291004号公報
【特許文献4】特公平06−004994号公報
【特許文献5】実公平04−026555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
適切に掘削液を使用しなかった場合の第一の問題点として、泥水等の処理があった。
【0006】
即ち、そこで掘削液を使用した場合には、掘削液が掘削土と混合し、大量の泥水となって地上に溢れ出す為に、施工の障害となり、泥水処理が必須要件となっていた。
【0007】
一般的には泥水にセメント系の固化材を添加して固化し、トラックで搬送可能な程度の粘度として産業廃棄物として処分しているが、環境上好ましくない。また泥水を脱水してこれと土を再利用する方法もあるが、再利用を有効化する為には大掛かりな装置を必要とし、各現場に設けることは困難であるなどの問題点があった。また掘削土とセメントミルクとを混合して、ソイルセメント化し、これを使用する方法も多様化されているが、杭の挿入によって、地上に大量のソイルセメントが流出した場合に、このソイルセメントは同様に産業廃棄物として処分することが一般的となっている。
【0008】
また、第二の問題点として、杭の高止まりの一因となる点があった。つまり、杭穴を所定の深さまで掘削したにも拘わらず、杭穴壁から砂、礫等が落下して杭穴底部に溜まり、杭の下端が所定の深さまで沈下せず、杭の上端部が余る問題点である。
【0009】
即ち、掘削液が必要量より多く注入された場合には、杭穴内にある泥土の比重が低下し、礫等が杭穴側に落下することが考えられる。また、掘削液の注入が少なすぎる場合には、杭穴壁の練付けが不完全となり、やはり杭穴壁の一部が崩壊することが考えられる。更に、練付けドラムの形状が不適切で、練り付けられるべき掘削土が杭穴壁に押し付けられず、杭穴内に残ることが考えられる。
【0010】
また、このような問題は、先掘工法の場合に顕著であったが、中掘工法でも同様の問題点としてあった。
【0011】
従って、土質強度等に見合った適切な掘削液を選択して使用することと、効率的な練付けが可能なドラム構造を明らかにすることが求められていた。
【0012】
また、従来練付けドラム等の練付手段を使用する方法は多大の効果をあげていたが、ドラムの形状について更に研究開発し、掘削液を使用しない時においても、杭穴壁に練付けることができ、また練付け量を多くすると共に、杭穴壁の強度を一層増強することが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、杭穴掘削に際し、掘削液を必要としない掘削と、必要とする掘削とに分けて掘削し、発生泥水を可及的に少なくすると共に、掘削土を効率よく練付けることにより、前記従来の問題点を著しく改善することに成功したのである。またソイルセメントを作る場合においても、必要場所に必要強度のソイルセメント層を生成すると共に、コンクリート杭挿入時に、ソイルセメントが杭穴外に流出しないようにあるいは流出を極力収えるように総てを管理し、施工が自動的に進行できるようにした画期的な工法を完成したのである。
【0014】
即ち方法の発明は、現場敷地内で標準貫入試験を行い、N値を算出し、先端に掘削刃を有する掘削ロッドの回転駆動装置が負担する消費電力を計測しながら杭穴を掘削する方法であって、
(1) 前記N値は、異常N値を排除して、N値の平均値とする。
(2) 前記N値の平均値が予め設定した値以上であって、前記消費電力が予め設定した値より大きな場合を「支持力を期待する地層」として予め設定すると共に、前記消費電力の大小に応じ「前記消費電力が前記予め設定した消費電力より大きい場合に前記掘削液を多く吐出するように」前記消費電力に対応して、補助手段としての掘削液の吐出量を予め設定する。
(3) 1つの杭穴において、支持力を期待しない地層は、水等の掘削液を使用することなく掘削し、「支持力を期待する地層」は、前記設定した吐出量に基づき水等の掘削液を使用して掘削し、前記掘削中に生成した掘削土は、ロッドに取り付けした練付け手段により穴壁へ練付ける。
ことを特徴とした杭穴掘削方法。
【0015】
また、他の発明は、1つの杭穴において、先端に掘削刃を有する掘削手段を回転させて、補助手段としての掘削液を吐出しながら杭穴を掘削する方法であって、
(1) 予め定めた積算電流値の大小により「前記予め定めた積算電流値が相対的に大きい場合に前記掘削液を多く吐出するように」前記積算電流値に対応させた掘削液の吐出量を予め設定し、
(2) 前記杭穴を掘削しながら、その掘削中の深度毎に、前記掘削手段を回転下降するための積算電流値を計測処理し、
(3) 前記積算電流値の大小に対応させて、前記掘削液の吐出量の大小を制御した。
ことを特徴とする杭穴掘削方法である。
【0016】
また、他の発明は、現場敷地内で標準貫入試験を行い、N値を算出し、先端に掘削刃を有する掘削ロッドの回転駆動装置が負担する消費電力を計測しながら杭穴を掘削する方法であって、
(1) 前記N値は、異常N値を排除して、N値の平均値とする。
(2) 前記N値の平均値が予め設定した値以上であって、前記消費電力が予め設定した消費電力値より大きな場合を「支持力を期待する地層」として予め設定すると共に、前記消費電力の大小に応じ「前記消費電力が大きい場合に前記掘削液を多く吐出するように」前記消費電力に対応して、補助手段としての掘削液の吐出量を予め設定する。
(3) 1つの杭穴において、支持力を期待しない地層は、水等の掘削液を使用することなく掘削し、「支持力を期待する地層」は、前記設定した吐出量に基づき水等の掘削液を使用して掘削し、前記掘削中に生成した掘削土は、ロッドに取り付けした練付け手段により穴壁へ練付けると共に、杭穴内の残存する掘削土中へセメントミルクを注入し、撹拌してソイルセメントとし、前記杭穴内へコンクリート杭を挿入して、コンクリート杭の内部及び外部へソイルセメントを充填する。
ことを特徴とした基礎杭の施工方法である。また、前記において、ソイルセメントにおけるセメント量は、掘削泥土量と、添加すべきセメントミルク量を算定し、予め定めた割合に調整することを特徴とした基礎杭の施工方法である。
【0017】
前記において、積算電流値とは、これと同値の積算トルク値も含む。
【0018】
また、前記において、掘削液を使用する場合としない場合とに分ける掘削は、ある建造物構築現場で1本の杭穴毎に適用される場合はもちろんのこと、1本の杭穴で、深さに応じて部分毎に適用することも可能である。
【0019】
この発明において、支持力を期待するか否かは土質強度(例えばN値)と密接な関係があり、支持力を期待しない地層とは、例えば砂質土層でN値15未満、粘性土層でN値10未満の地層であって、掘削時の掘削ロッドの回転駆動装置が負担する消費電力の比較的少ない地層をいう。元来標準貫入試験におけるN値は、同一質の地層でも大差がある場合があって、一概に決め難いが、転石などによる異常N値を排除して平均値を出し、そのN値の平均値が概ね砂質土層でN値15未満、粘性土層でN値10未満であれば、土質の掘削の難易とほぼ一致することが判明している。またN値は、掘削時の使用電力とほぼ比例するので、深さ別のN値グラフに平行して使用電力あるいは、電力と比例関係のある積算電流値を表示すれば、N値と電力との対応関係が掘削につれて明らかになり、土質を推定することができる。従って土質強度が小さい場合には、掘削液を使用することなく掘削を進行させることができる。
【0020】
前記杭穴の掘削は、同一掘削ヘッドを用いて掘削液の使用の有無を容易に使い分けることができるので、例えば、1つの杭穴において、地表から3mまでは掘削液なしで掘削し、次の3m〜5mまでは掘削液を用い、更に5m〜8mまでは掘削液を使用しないで掘削するなど掘削方法の変更を容易に実施することができる。
【0021】
また掘削液の吐出量又はセメントミルクの吐出量等を掘削状態と対応させて予めコンピュータに設定しておき、掘削状態及びその進行状態に合わせて最良の掘削液量を定め、又はセメントミルクの吐出量を制御して各深度におけるソイルセメントの固化強度を調整することができる。従って基礎杭は、杭穴掘削からソイルセメント層形成までコンピュータ管理され、各地層の土質強度に応じた最良の基礎杭構造を実現させることができる。
【0022】
前記のように杭穴の掘削を合理化することにより泥水の排出量を最少に止めるのみならず、杭穴壁の強度の増強及び基礎杭の支持力を向上させ、工事現場における施工方法の選択により、理想的な基礎杭構造を構築することができる。
【0023】
この発明において、練付け抵抗が大きい地層(例えば粘性度層)場合にも、掘削液を掘削補助手段に使用すると、比較的小さい電力で効率よく容易に杭穴を掘削することができる。
【0024】
また支持力を期待する地層とは、例えば砂質土層でN値15以上、粘性土層でN値10以上の地層であって、掘削ロッドの回転駆動装置が負担する消費電力が比較的大きく、掘削に要する時間が長い地層をいう。
【0025】
また、ここでいう支持力とは、杭周面支持力、杭先端支持力を含む。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、支持力を期待するか否かによって掘削液の使用又は不使用を決めて掘削するので、比較的小さい電力で容易かつ迅速に杭穴を掘削し得ると共に、泥水の排出量を著しく低減させることができる効果がある。従って、工事環境の改善と、泥水処理等関連費用、時間、労力を著しく節減し得る効果がある。
【0027】
この発明の装置によれば、掘削土を可及的多量に、かつ効率的に杭穴壁へ練付けることができるので、排出泥水量を低減できることは勿論、杭穴壁を一層強化し、これにより支持力の向上、全基礎構造の質的向上を達成し得る効果がある。
【0028】
更にセメントミルクの注入量の自動制御及び掘削液の自動制御によって、よりその土質に適合した合理的な基礎杭構造の構築を達成できるなどの諸効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
この発明は、1つの杭穴において、支持力を期待しない地層は、水等の掘削液を使用することなく掘削し、支持力を期待する地層は水等の掘削液を掘削補助手段として使用し、前記掘削により生成した掘削土はロッドに固定した練付けドラムにより穴壁へ加圧練付けを行って、杭穴を掘削する。
【0030】
前記杭穴内の残存する掘削土中へセメントミルクを注入し、撹拌してソイルセメントとし、前記杭穴内へコンクリート杭を挿入して、コンクリート杭の内部及び外部へソイルセメントを充填するようにした基礎杭の施工方法である。
【0031】
前記掘削液又はセメントミルクの吐出量はコンピュータによって制御し、掘削液は使用又は不使用のみならず、前記のように吐出量を制御し(例えばN値の大小にも関連させて制御)最小の掘削液で最良の効果をあげるようにする。またセメントミルクは、掘削土の性状(地質)及び杭穴の深度によりソイルセメントの強弱を想定し、これに合致するようにセメントミルクの吐出量を制御することにより、最良の基礎杭構造が得られるような施工方法である。また、セメントミルクの吐出量の制御だけでなく、必要に応じて、セメントミルクの濃度や、掘削液の種類等を切り替えられるようにし、それらを自動的に制御することもできる。
【0032】
また掘削ロッドに所定間隔毎に撹拌手段を取り付けると共に、所定間隔毎に練付けドラムを固定し、該練付けドラムの少なくとも1つは、その構造として、練付ける掘削土が進入する側の杭穴壁との間隙を広くし、さらに所定杭穴径に練付ける他側へ向けて該間隙を小さくし、所望の練付けの仕上がり状況に合わせる形状とする技術思想の下、具体的には前記掘削ロッドの長手方向に対し、下端面から上端面に向けて徐々に断面積が大きくなり、左側面から右側面に向けて徐々に断面積が大きくなるように外壁面を形成した練付けドラムとした基礎杭の練付け装置である。前記装置によれば、掘削土を効率よく練付けることができると共に、撹拌手段により掘削土を撹拌して、ソイルセメントを混合させ、ソイルセメントを均質にすることができる。
【0033】
また、ドラムの練付け面が広く取れる場合には、前記のように掘削土が進入する側において、ドラム径を小さくして杭穴壁との間隙を広くして掘削土の進入を容易にすると共に、その他側(出口側)に向けて徐々にドラム径を大きくし、その間隙を小さくして掘削径と略同一径で錬り付けする技術を付加することができる。更に、そのドラムの略中間部(進入側とその他側との中間)で、掘削径と略同径とし、その中間部から他側(出口側)に向けては逆にドラム径を徐々に小さくしてその杭穴壁との間隙を大きくし、ドラムの練付け抵抗を軽減し、ドラムの回転速度を上昇させることができる形状・寸法とすることがきる。また、ロッド逆回転時にも正回転時と同様の練付けができ、杭穴壁を傷つけることもない。即ち、練付け面積(杭穴壁に接触して練り付ける面積)を多少減らして練付け速度を上げることができるので、所望の練付け量と練付け速度とを適宜調節することができる効率的な練付け、及び杭穴の造成ができる。また、更に、練付け抵抗の大きい土質を含む地盤で掘削液の使用量を制御する練付け工法の場合には、ドラム練付け面積を加減できる本形状が特に有効となる。
【実施例1】
【0034】
この発明の実施例を図1、2、3について説明する。この発明においては、支持力を期待するか否かによって、掘削液の使用、不使用を決めるので、杭穴掘削時に掘削すべき杭穴の深度方向における土質強度(例えばN値)を掘削時に確認する必要がある。杭穴の深度方向の土質強度は、標準貫入試験による土質柱状図で判るが、該標準貫入試験は、建物の敷地面積にもよるが、例えば敷地毎に1箇所又は2箇所位求めるだけである。そこで当該工事現場において、基礎杭を50本〜100本貫入する(同数の杭穴を掘削する)としても、前記標準貫入試験は例えば1箇所だけのこともあるが、土質強度の深度別変化は、50の杭穴を掘削すれば、50通りある。但し地層であるから、層の厚さと地表からの深さは異なっても、N値の大小の傾向はほぼ等しくなるので、N値に比例する積算電流値か、又は積算トルク値を測定し、該数値によるグラフと、前記N値のグラフとを比較することができる。このN値は、積算電流値と比例するので、この実施例では、1つの杭穴において、深度別地層間の積算電流値を測定して、N値との関係を求め、これにより土質強度の判断をした。例えば、砂質土層でN値10の時の50cm毎の積算電流値が1000A・Sとすれば、1000A・S以下の数値を示す深さでは液なし掘削を行い、1000A・Sをこえる場合には、掘削液を掘削補助手段にした掘削を行うと共に、前記数値の大小に応じ、予め定めた掘削液の吐出量をコンピュータで制御すれば、当該現場における最良の杭穴掘削ができる。前記におけるN値は掘削電力に比例するが、掘削機の電源の電圧が一定であるから、積算電流値に比例する。
【0035】
前記において掘削液の使用、不使用は、一定深度毎の積算電流値によって制御しているので、地層の土質強度が頻繁(例えば50cm毎)に変化しても即時対応することができることは勿論、積算電流値の大小による掘削液の吐出量も制御することができる(例えば、積算電流値が大きいと、掘削液を比較的多く吐出させる)。
【0036】
即ち、1つの杭穴を掘削中に、その深さにおいて、その深さの上方50cmからその深さまでの、50cmの掘削に要した積算電流値を、連続的に測定することになる。従って、その範囲(50cmの深さ範囲。標準貫入試験において、土質強度の測定値を積算して表示させるN値の深さ範囲に対応させる。)での土質強度を掘削条件に反映することができ、その範囲に連続して続く直下の地盤を、土質強度に応じた掘削液の量の制御等を行い、地盤強度をリアルタイムに反映した掘削の制御が可能である。
【0037】
従って、経験等に基づく個人的な判断による掘削ではなく、地盤強度に対して標準化された判断基準である積算電流値により、掘削施工されるので、過度の掘削液を抑制し、排土の軽減と共に安定した確かな杭穴造成が可能となる。
【0038】
前記のようにして掘削を終了したならば、掘削ロッドを上方へ移動し乍ら、掘削土内へセメントミルクを注入しつつ、撹拌してソイルセメントを生成する。この場合に、セメントミルクの注入最終高さを規制し(上限は、コンクリート杭を杭穴へ挿入した場合にソイルセメントが溢れ出ない高さ)、コンクリート杭挿入時に、ソイルセメントの杭穴外への流出を未然に阻止するようにする。
【0039】
即ちコンクリート杭の中空部と、コンクリート杭の外壁と、杭穴の内壁との間隙部へソイルセメントが充填されることになるが、この場合に、コンクリート杭の中空部の容積と、杭穴内壁とコンクリート杭の外壁の間隙の合計容積は容易に算出できるので、この合計容積を杭穴の断面で割算すれば、杭穴底からソイルセメントの上限液面までの距離を容易に算出することがきできる。
【0040】
前記実施例において、事前に積算電流値に対応して、一定の掘削液の吐出量と、セメントミルクの吐出量を設定し、掘削中には、掘削時の積算電流値すなわち土質強度(N値)に対応して掘削液の吐出時期及び吐出量と、セメントミルクの吐出時期及び吐出量は総て掘削しながらリアルタイムでコンピュータによって制御するので、最良の条件により掘削できると共に、適量のソイルセメントを生成することができる(図1)。
【実施例2】
【0041】
この発明の実施例を図2、3、4に基づいて説明する。この発明は、先端に掘削ヘッド2を固定した中空のロッド3の中間部に、所定間隔毎に撹拌バー4及び練付けドラム5を固定した掘削ロッド1を回転しつつ下降させて、杭穴6を掘削する。この場合に、掘削ロッド1が一定深さ(例えば50cm)下降する毎に、その間に要した積算電流値をN値グラフと並列してプロットし、砂質土層でN値15付近、粘性土層でN値10付近の積算電流の相当数値の位置までは掘削液なしで掘削し、砂質土層でN値15相当、粘性土層でN値10相当を越えた積算電流値付近から掘削液を吐出して掘削する。
【0042】
前記において、標準貫入試験の位置の地層と、杭穴掘削位置の地層とがほぼ並行の場合には、N値のグラフと、積算電流値のグラフとは深度別に水平方向へ対応しているので、砂質土層でN値15未満と、N値15以上、粘性土層でN値10未満と、N値10以上とに分け、掘削液の吐出の有無を決めて杭穴を掘削する(図8(a))。
【0043】
次に標準貫入試験の位置の地層と杭穴掘削位置の地層とが、上下方向にずれている場合には(図8(b))、砂質土層でN値15未満、粘性土層でN値10未満に相当する深さの間だけを掘削液なしで掘削し、その他の深さの間については、掘削液を使用して掘削する(図8(b))。
【0044】
前記において、図8(a)の場合は、地表から11mまでは掘削液なしで掘削し、11m以上は掘削液を掘削補助として掘削する。前記に対し、図8(b)の場合は、地表から深さ5mまでは掘削液なしで掘削し、深さ5m〜8mまでは掘削液を使用して掘削し、深さ8m〜12mまでは掘削液なしで掘削し、深さ12m以上は掘削液を用いて掘削する。前記のように、地層が水平方向へ平行の場合には、N値と同一深度変化で積算電流値が増減するので、N値の数値と対応し、同等深さの制御を行うが、N値と上下方向へ若干ずれた深度で積算電流値が変化する場合には、N値15又はN値10に相当する積算電流値に対応して掘削液の吐出又は中止を決める。従って、現場においては、N値15又はN値10とほぼ対応する積算電流値を掘削液の使用、不使用を決める目安とし、又はコンピュータに予め記憶させておけば、自動的に運転することができる。
【0045】
この実施例において、N値が15又はN値10を越えた場合に掘削液を使用しなければ掘削不能になるということではないので、掘削現場における積算電流値を見て掘削液の使用又は不使用を定めれば、合理的な杭穴掘削ができる。また崩壊性土質の場合は、標準貫入試験の土質柱状図の深さ別N値との関係から、深さ別積算電流値をプロットすれば(グラフ化する)、崩壊地層か否かを正確に判断することができるので、前記の要領により掘削液の吐出又は中止を決める。
【0046】
前記のようにして、図2(a)のように掘削液なしで掘削し(多くは空穴6a)、ついで図2(b)のように掘削液を用いて掘削し、所定の掘削液入り杭穴6bを掘削し、拡底穴6cの掘削も完了したならば、掘削ロッド1の下端から、セメントミルクを矢示7のように吐出しつつ、掘削ロッド1を矢示8のように引き上げる(図2(c))。この場合に、掘削ロッド1は回転させているので、撹拌バー4により掘削土9と、前記セメントミルクとを混合し、ソイルセメント11を生成する。この場合にソイルセメント11の強度は、水セメント比を一定とした場合(例えばW/C60%)、単位容積当たりのセメントミルク量により決まるが、例えば拡底穴6c内はセメントミルク量を多くし(例えば拡底穴径1.1m×高さ2.5mの場合2.38m3)、その上部はセメントミルク量を少なくする(例えば掘削径0.78mの場合1m当たり0.0478m3)。又はセメントミルクの固化強度の異なるものを使い分けることもできる。
【0047】
前記におけるセメントミルクの吐出終了の最高位は、図3(a)のA面とする。このA面の高さは、コンクリート杭10を挿入した場合に、ソイルセメント11の最高位置Bが地表と同一面になるように算定する。前記コンクリート杭10は、上から円筒杭10aと同径の節杭10b(下部軸部と上部軸部とからなり、両軸部に節部を設けたもの)との継杭とする(図3(b))。
【0048】
また図4によれば、上部に大径の円筒杭10aを配し、その下部に小径の円筒杭10bを接続し、その下部に、同径の節杭(環状の突起付きの根固め杭として)10cを接続して用いる。前記杭種の選定は、専ら必要とする支持力の大小と、必要とする曲げモーメントの大小によって決定する。従って杭種の組み合わせも、支持すべき荷重と、所望の曲げモーメントの大小により選定する。
【0049】
前記は、杭穴掘削とN値(積算電流値)との関係及びソイルセメントの関係等について説明したが、以下掘削の実施例について説明する。前記実施例で使用する練付けドラム5は掘削ロッド1の長手方向に対し、下端面から上端面に向けて徐々に断面積が大きくなるように形成され、また左側面から右側面に向けて徐々に断面積が大きくなるように曲線状に形成されている。従って、練付けドラム5の下方から上方へと上昇してくる掘削土の通過範囲を狭めると共に、掘削ロッド1を正回転させたときに練付けドラム5の左側面から進入する掘削土が右側面に向かうにつれて、その通過範囲を狭めるように構成されている。前記により、練付けドラム5の左側面は杭穴6の円周状の掘削内壁に接しておらず、少なくとも右側面が杭穴6の掘削内壁に接することになる。このように形成された練付けドラム5aを少なくとも1つ以上掘削ロッド1に取付ける。練付けドラム5aの取付位置は掘削土の粉砕、撹拌が比較的良くない状態である掘削ヘッドの直上部、すなわち掘削ロッドの下端部に溶着あるいは取り外し自在に位置させるのが最も効果的である。掘削ロッド1の長手方向に対し、最下端部の練付けドラム5aを上記の変断面を有する練付けドラム5aとして、それより上部の練付けドラム5を変断面を有しない従来の練付けドラム5とすることもできる。
【0050】
即ち、練付けドラム5aの練付け面を広く取れる場合(練付け面の垂直方向の長さを大きくできる場合)には、その練付け面の最大外径部分(即ち杭穴6の掘削径と略同一寸法の部分)の水平方向の幅を狭くし、掘削土の進入側及びその他の側のドラム径寸法を小さくする形状等に形成することができる。この場合、練付けドラム5aの練付け時の押し圧抵抗を加減すると共に、逆回転時も同様の働きをする偏断面形状を採用することができ、効率的な練付けが可能となる。また、更に、練付け抵抗の大きい土質を含む地盤で掘削液の使用量を制御する工法の場合には特に有効である。
【0051】
前記練付けドラム5aは正回転時の掘削ロッド1の回転方向が時計周りを基準としているが、反時計周りを正回転とするならば、練付けドラム5aの右側面と左側面の形状は逆になる。このようにして形成された先端に掘削ヘッド2を有する掘削ロッド1を杭埋設位置の地盤にセットする。この実施例では、杭穴6に拡底穴6cを設けたが、ストレート状の杭穴であっても適用できる。
【0052】
次に、掘削ロッド1を正回転させて、掘削ヘッド2の先端より水等の掘削液を吐出せずにそのまま地盤を掘削する。ここで、使用する掘削ヘッド2は様々な構造を適用できるが、この実施例では2本の掘削アーム12と本体部2aを有する掘削ヘッド2を用い、掘削ロッド1の正回転時には通常掘削状態に掘削アーム12が拡開して杭穴軸部の掘削を行い、掘削ロッド1の逆回転時には拡大掘削状態に掘削アーム12が拡開して拡底穴6cの掘削を行う。
【0053】
施工地盤は、一般的に地盤上層部が比較的軟らかい地層が多くみられるため、砂質土層についてはN値15未満、粘性土層についてはN値10未満の地層については掘削液を吐出せずに掘削し、掘削ヘッドによって掘削された掘削土は、練付けドラムの左側面の杭穴壁との間隙部から進入し、正回転方向に沿って練付けドラムの右側面方向の練付け面に押しつぶされながら杭穴壁に練付けられる。これによって、杭穴内に掘削土が僅かしか残存しない空洞の杭穴が形成される(図2(a))。
【0054】
また砂質土層でN値15以上、粘性土層でN値10以上の地層に対しては、前記のように掘削液を用いて掘削して、引続き掘削を進めて、支持層に到達後、掘削ロッドを逆回転させて掘削ヘッドを拡大掘削状態として杭穴拡底部を形成する。所定形状の拡底部(例えば直径1.1m、高さ2.5m)を形成した後、掘削ロッドを逆回転させたまま根固液としてのセメントミルク(固化強度20N/mm2)を拡底部内に注入して拡底部内に残置する掘削土と撹拌・混合してソイルセメント(固化強度20N/mm2以上)を形成する。
【0055】
拡底部内のソイルセメント層形成後、掘削ロッドを正回転に戻し、掘削ヘッドを通常掘削状態にして引続き杭穴軸部内の掘削土(泥土、泥水も含む)が残置する区間内に杭周固定液としてのセメントミルク(固化強度20N/mm2)を注入し、掘削土と撹拌・混合してソイルセメント(固化強度1N/mm2程度)を形成する。
【0056】
前記セメントミルクの注入においては、深度ごとに注入量をコンピュータ等によって表示しながら施工することによって、各深度に規定量のセメントミルクの注入結果が判別できるので、ソイルセメント形成区間内において均質な所望のソイルセメントを形成することができる。
【0057】
前記実施例においては、コンクリート杭10を使用したが、支持力、杭の曲げ耐力、周面支持力等の必要性により従来公知の既製杭(PHC杭、PRC杭、SC杭、鋼管杭、節杭等)を使い分けることができる。
【0058】
前記既製杭の他、杭下端部に袋体を有し、袋体の内部にセメントミルクを注入して該袋体を膨張させる杭、又は杭下端部に鉄筋カゴを取付け、拡底部内で拡開させるものを適用することもできる。また、突起付き根固め杭として、例えば、節杭の上に下部軸部と該下部軸部より大径に形成された上部軸部を有する円筒杭を連結して埋設し、主として地上付近に大きく作用する水平力に耐え得る構造とすることもできる(図4)。
【0059】
前記のようにして既製杭を杭穴に挿入していくにつれ、杭周部及び拡底部のソイルセメントが上昇し、既製杭の外壁と杭穴内壁との間隙を埋めていく。このとき、杭中空部の先端が開放されていれば、該杭中空部も上昇してくるソイルセメントで満たされる。杭中空部の先端を閉塞していれば、杭中空部内にソイルセメントが充填されなくて済むため、注入するセメントミルクの量をさらに減少させることができる。前記何れを採用するかは、現場における支持力等に関連して決める。
【0060】
このようにして引続き杭の挿入を進め、杭穴拡底部内に少なくとも1以上の突起部と下杭の下部軸部と上部軸部の変形部分が位置するように埋設する。このとき、杭穴拡底部の底面と、下杭下端面との間に所定間隔(例えば50cm)を設け、また杭穴拡底部の上面と該拡底部内に位置する最上の突起との間に所定間隔(例えば50cm)を設ければ、荷重伝達範囲を確保できるため、高鉛直支持力及び高引抜き耐力を発揮できる。
【0061】
杭穴6の拡底根固め部16の施工には、湿式工法で、その地層での土質強度に応じて、掘削液の量を制御すると共に、計測した積算電流値に従ってその土質地盤強度に応じたセメントミルクを供給できるので、より高い固化強度のソイルセメント層を確実に造成できる。
【0062】
とりわけ、図3(b)、図4のように、杭穴6の拡底部16内に、下杭10bの2つの節部18a、18b(少なくとも1つ)を位置させ、他の節部18cを拡底部16の直上に位置させた場合には、諸条件にもよるが、従来のストレート杭の場合に比して、約2倍の高い鉛直支持力を発現できる。
【0063】
従って、杭穴拡底部根固め部16での構造で、高い鉛直支持力を発現できるので、コンクリート杭10の軸部及び杭穴6の軸部は支持力に対する与える影響が少ないので、支持力以外の条件を加味して、その目的に応じて種々の構造を採用することができる。
【0064】
例えば、杭穴6の軸部においては、杭10の外径と杭穴の内径との間隙が大きくとれ、その間隙に掘削土を貯め置きすることもできるので、大幅に排土量の軽減ができる。また、地層の土質強度に応じて、湿式又は乾式(掘削液を使用する又はしない)を使い分けて掘削ができるので、掘削液の使用量を軽減でき、ひいては排土の一層の軽減効果がある。また、杭穴壁の練付けと相まって、更に杭穴品質の安定化も確保できる効果もある。
【実施例3】
【0065】
この発明の装置の実施例を、図5、6、7について説明する。この発明は、中空のロッド3に所定間隔(例えば1m)に撹拌バー4、4を放射状に植設すると共に、所定間隔に練付けドラム5、5aを固定し、前記中空のロッド3の下端へ掘削ヘッド2を連結してこの発明の掘削ロッド1(掘削装置)を構成する。
【0066】
前記練付けドラム5aは、平面弧状で、側面方形の二枚の練付け羽根15、15を、ブラケット14、14によりロッド3へ固定して構成してある。前記練付け羽根15、15は図7(a)の如く、左側面15aは上を広く、下を狭くした台形で、練付け面15bはほぼ矩形であって、右側面15cは縦長の矩形である。
【0067】
また、図6に示すように、前記練付け羽根15は、練付ける掘削土が進入する側(即ち左側面15a)で杭穴6壁との間隙を広くし、所定杭穴径に練付ける他側(即ち右側面15c)での杭穴6壁との間隙を小さく形成してある。
【0068】
また他の実施例は、図7(b)の如く左側面は上を広く、下を狭くした台形で、練付け面15bは菱形で(上辺、下辺共に傾斜)、右側面15cは縦長の矩形である。更に他の実施例は、図7(c)の如く左側面は上を広く、下を狭くした台形で、練付け面15bは上を傾斜させた台形で、右側面15cは縦長の矩形である。
【0069】
前記練付けドラム5は、掘削ロッド1の長手方向に対し、下端面から上端面に向けて徐々に断面積が大きくなるように形成され、また左側面から右側面に向けて徐々に断面積が大きくなるように形成されている。
【0070】
前記練付けドラム5の練付け面が練付けドラム5の下端面から上端面に向けて杭穴壁との間隙が小さくなるように形成されていると共に、左側面から右側面に向けて該練付け面と杭穴壁との間隙が小さくなるように形成されている。前記練付けドラム5aの練付け面の形状は、正面図が長方形、平行四辺形、台形等種々のものを選択できる(図7(a)、(b)、(c))。すなわち掘削土の進入が容易でかつ、所望の杭穴径を形成できる形状であればよい。また練付けドラムは強度上鋼板で形成されているが、所定強度をもったものであれば他の素材としてもよい。こうして形成された練付けドラムを少なくとも1つ以上、掘削ロッドの下端部の掘削ヘッドよりも上部に取付ける。
【0071】
なお、本実施例は正回転時の掘削ロッドの回転方向が時計周りを基準としているが、反時計周りを正回転とするならば左側面と右側面の形状は逆になる。
【0072】
前記掘削ロッドを使用して杭穴を掘削するには、掘削ロッドを正回転(時計周り)させて掘削ヘッド2で地盤を掘削する。このとき生じる掘削土が練付けドラム5aの左側面から進入する。練付け面は左側面から右側面に向けて徐々に所望の杭穴径に近づくように形成されているため、侵入した掘削土は押しつぶされるように杭穴壁に練付けられる。これによって、掘削液を使用しなくとも直接掘削土を杭穴壁に練付けることができ、杭穴軸部の杭穴壁を強固に形成することができる。また、掘削液を使用した場合であっても、掘削により生じる泥土を前記と同様に杭穴壁に練付けることができる。
【0073】
前記実施例によれば、練付けドラム5aを使用したので、掘削土をより有効に杭穴に練付けることができる。従って、掘削土の排出量を著しく低減し、かつ杭穴壁を強化することができる。
【0074】
また、前記実施例で、図6に示す練付け羽根15を広くして効率的な練付けを行いたい場合には、例えば、図6(c)において、練付け面15bの外径を杭穴の掘削径の寸法と略一致させ、更に右側面15cの外径を左側面15aの外径と略同一の小径の寸法とし、左側面15aと練付け面15b間及び練付け面15bと右側面15c間の練付け面を緩やかな傾斜面とした形状に変更することも可能となる。ここで、練付け羽根15において、練付け面15bの掘削寸法幅部分とその他の部分(練付け面15b以外の部分)の幅との比率を増減することにより、効率的かつ経済的な練付け掘削工事ができる。
【実施例4】
【0075】
図9〜図12により他の発明の実施例を説明する。前記各実施例では、杭穴掘削した後に既製杭を埋設する工法(先掘工法)について説明したが、この実施例いわゆる中掘工法について説明する。
【0076】
1.掘削ロッドの構成
【0077】
掘削ロッド1は、外周にスパイラル30を設けたロッド3の下端部に掘削ヘッド2を連結した構成である(図11)。
【0078】
掘削ヘッド2は、ロッド3に連結するヘッド本体2aとヘッド本体2aに揺動可能に2本の掘削アーム12、12を取付けて構成する。掘削アーム12は、先端に掘削刃を有し、3段階に外径を可変できる構造となっている。即ち、第1段階として、杭中空部内に挿通時のニュートラル状態(図9(a))、第2段階として、ロッド3を正回転して杭穴6の軸部17を掘削する通常掘削状態(図9(b))、第3段階として、ロッド3を逆回転して杭穴6の拡底部16を掘削する拡底掘削状態(図9(c))、と可変できるように形成されている。前記における「ニュートラル状態」とは、掘削アーム12が下方に垂れた状態をいう。
【0079】
また、掘削アーム12には、第2段階で、杭穴6の軸部17を掘削しながら、掘削した杭穴壁を均すことができるように、練付棒19が連結されている。練付棒19は、第2段階で、練付部20が杭穴壁に沿って、縦に配置され、練付部20の全長で杭穴壁を均すことができる(図9(b))。即ち、杭穴壁の均しは、単なるロッド3の回転により制御し、ロッド3の作動と一体化している。
【0080】
この状態で、練付棒19の練付部20は、実施例3と同様に、練付部20の横断面で、練付ける掘削土が進入する側(即ち左側面20a)の杭穴壁との間隙を広くし、所定の杭穴径に練付ける他側(即ち右側面20c)に向けて杭穴壁との間隙を小さく形成してある(図10)。また、練付面20bを掘削径と同形にして練付けし、他側20cを小径として杭穴壁との間隙を広くし、練付抵抗を調節すれば、各種土質・強度に対応して効率的な練付けが可能となる。
【0081】
また、前記ヘッド本体2aには、セメントミルクなどの吐出口(ヘッド本体の側面部分)21、吐出口(ヘッド本体の下端部分)22等が形成され、該吐出口21、22はロッド内の送水パイプ(図示していない)に連通している。またヘッド本体2aの下端には固定掘削刃23、23が下方に向けて突設されている。
【0082】
2.コンクリート杭10の構成
【0083】
この実施例に使用するコンクリート杭10は、節部(環状リブ)を下端部に形成した下杭10bと、下杭10bの上方に連結されるストレート状の上杭10aとから構成される(図12(a))。
【0084】
下杭10bは、所定外径D1の下部軸部24の外周に2つの節部(外径D3)18b、18cが形成され、上側の節部18bに連続して、外径D2の上部軸部25が連設された構造である。上部軸部25にも節部18aが形成されている。節部18a、18b、18cは、上下でほぼ等間隔(100cm)に配置されている。
【0085】
また、「節部18の外径D3」>「上部軸部25の外径D2」>「下部軸部24の外径D1」となっている(図12(a))。また、上杭8は、前記下杭2の上部軸部5の外径と同じ外径D2で形成され、下杭2と連結可能となっている(図12(a))。例えば、D1、D2、D3は夫々60cm、70cm、75cmの寸法で形成される。
【0086】
3.コンクリート杭10の埋設方法
【0087】
(1) ロッド3の先端に掘削ヘッド2を取付け、ロッド3を下杭(突起付き杭)10bの中空部に挿通する。次に、クレーン等でロッド3が挿通された下杭10bを杭埋設地点まで運び、杭打機に取付ける。取りつけ作業は、杭打ち機に取り付けられているアースオーガーにロッド3を接続し、排土ホッパー下部の杭支持装置に突起付き杭の上部杭端板に取付けられた杭頭治具を把持させる(図示していない)。
【0088】
(2) 次に、ロッド3を正回転(時計回り)させ、掘削ヘッド2の吐出口(先端)22から空気を吐出しつつ、掘削土に空気を混ぜた状態で、掘削土をロッドを介して排土ホッパー内へ揚土しつつ、杭穴軸部を掘削する。
【0089】
ここで、吐出口22から空気を吐出するか、あるいは掘削液を吐出するかの選択は、前記実施例1と同様に、掘削中に測定する積算電流値が予め設定した数値より行われる。即ち積算電流値が予め設定した数値より小さい場合には、空気を吐出し、大きい場合には、掘削液を吐出する。
【0090】
また、掘削ヘッド2で、所定区間を掘削する度に、掘削土あるいは掘削液等が混合した掘削土を掘削ヘッド2で、混合撹拌及び練付け等を充分に行った後、その杭を押し込み、更に下の層で同様に順次撹拌混合及び練付け等を行う。
【0091】
また、このとき、掘削径は下杭10bの突起部径D3と同等又は若干大きめの径D11で掘削する。こうして、掘削を進めながら下杭(突起付き杭)10bを挿入する(図11(a))。
【0092】
(3) 下杭10bを所定深さ(上端部が地上に突出した状態)まで下降した段階で、下杭10bを保持し、下杭10bの上端に、下杭10bと同様にロッド3が挿通された上杭10aを連結する。
【0093】
(4) 次に、所定深度掘削後、下杭10b(突起付き杭)をその高さで保持した状態で、吐出口22から掘削液を吐出し、掘削ヘッド2の掘削アーム12に取付けられた練付棒19、19によって掘削土を杭穴壁に練り付けながら杭穴壁を均しながらロッド(掘削ヘッド2)3の昇降を繰り返し、さらに杭穴6の軸部17を掘削する(図11(b))。
【0094】
この際、、練付棒19の練付部20が、練付部20の横断面で、練付ける掘削土が進入する側(即ち左側面20a)の杭穴壁との間隙を広くし、所定の杭穴径に練付ける他側(即ち右側面20c)へ向けて杭穴壁との間隙を小さく形成してある(図10)ので、効率的な練付けができる。
【0095】
また、前記における所定深度とは、杭穴拡底部16a上端から杭周固定液を注入する区間の最上位置である。
【0096】
(5) 次に、支持層付近まで杭穴6の軸部17を形成した後(図11鎖線図示17a)、ロッド3を逆回転(反時計回り)させて、掘削ヘッド2を拡底掘削状態にし、杭穴軸部17の下端部(17a)を拡大すると共に掘削した軸部17aの下方を杭穴底16aまで拡大して、杭穴拡底部16を形成する(図11(b)鎖線図示16、16a)。尚、このとき、支持層の所定位置(形成予定の杭穴の穴底16a付近)まで杭穴軸部17の径で掘削を行い、その後ロッド3を逆回転させて、杭穴軸部17の下端部を拡大して、杭穴拡底部16を形成することもできる(図示していない)。
【0097】
(6) 所定の杭穴拡底部(長さ:250cm、外径:110cm)16の掘削を完了後、掘削ヘッド2の吐出口22より杭穴拡底部16内に所定固化強度の根固め液(セメントミルク)を注入し、杭穴拡底部16内に残存する礫等と撹拌混合し、杭穴拡底部16内にソイルセメント層(根固め部)を形成する(図11(c))。この際、セメントミルクの注入量も、掘削時に計測した積算電流値により地盤強度に対応した最適のセメントミルク量を設定できる。
【0098】
また、このとき、ソイルセメント層の形成方法としては、品質のバラツキが少ない良質のソイルセメント層を形成するために、以下のようにすることが望ましい。
【0099】
即ち、杭穴掘削完了後、掘削ヘッド2を杭穴拡底部16の最下部(穴底16a付近)に保持した状態で掘削ヘッド2で撹拌しながら、掘削ヘッド2下端の吐出口22から全セメントミルク量の約3分の1のセメントミルクを吐出する。続いて、掘削ヘッド2で撹拌しながら、ロッド3を杭穴拡底部16の上端16b付近まで上昇させながら全セメントミルク量の3分の1を吐出する。次に、掘削ヘッド2を杭穴拡底部16内で複数回昇降させながら、残りのセメントミルクの3分の1を吐出して、撹拌及び混合を行いロッド3を引上げて杭穴拡底部16内にソイルセメント層を形成する(第1の方法)。
【0100】
また、他の望ましいセメントミルクの注入方法(第2の方法)は、先ず、掘削ヘッド2の吐出口22を杭穴拡底部16の最下位置(穴底16a付近)のほぼ中央に設置し、撹拌しつつ吐出口22からセメントミルクを吐出しながら、杭穴拡底部16内を上下2往復させて、杭穴拡底部16の上端16baで注入を完了させる。
【0101】
また、他の望ましいセメントミルクの注入方法(第3の方法)として、杭穴拡底部16の最下位置(穴底16a付近)で掘削ヘッド2の吐出口22からセメントミルクを注入して、杭穴拡底部16内の掘削泥土を押し上げて、注入したセメントミルクと置換してセメントミルク層を形成することもできる。
【0102】
(7) 杭穴拡底部16内にソイルセメント層(又はセメントミルク層)を形成後、ロッド3を正回転させて掘削ヘッド2を通常掘削状態に戻し、杭穴軸部17の杭周固定液注入区間に、掘削ヘッド2の吐出口22から所定固化強度の杭周固定液(セメントミルク)を吐出注入し、掘削泥土と撹拌・混合し、杭周固定液層(ソイルセメント)を形成する。
【0103】
このとき充填する杭周固定液は、コンクリート杭10(上杭10a、下杭10b)を杭穴6内に沈設完了した際に、杭穴充填物(ソイルセメントなど)がコンクリート杭11により押し上げられた状態で、杭周固定液が沈設後の杭頭付近まで満たされる量を注入する。
【0104】
ここで、杭穴軸部17に位置する部分(下杭2上部軸部5及び上杭8)は節部外径D3よりも小さい外径D2の円筒杭としているため、杭穴壁とコンクリート杭10との間の間隙内を杭周固定液が上昇し易い。
【0105】
また、杭穴軸部17に位置するコンクリート杭10と杭穴壁との間の間隙を利用して杭周固定液が上昇し易いように、下杭10bの軸部径及び上杭10aの外径を適宜選択して、この間隙を調整することができる。
【0106】
また、杭穴軸部17において、杭周固定液が上昇し易い形状・寸法、あるいはコンクリート杭10埋設後にトレミー管等を使用する場合には、杭穴軸部17に位置するコンクリート杭10の形状・寸法は問わない(図示していない)。
【0107】
(8) その後、掘削ヘッド2をニュートラル状態にして、ロッド3に回転を与えず、所定深度に保持していたコンクリート杭10の中空部26、26内に、ロッド3、掘削ヘッド2を収納する。コンクリート杭10を加圧し、杭穴拡底部16内に下杭10bの節部18b、18cが2つ納まる深さまで、沈設する(図11(e))。尚、ここで、節部18の2つを杭穴拡底部16内に収容したが、通常、少なくとも1つの節部18を杭穴拡底部16内に位置させる。
【0108】
また、コンクリート杭10の沈設により、ソイルセメント層及び杭周固定液層から押し上げられたソイルセメントがコンクリート杭10の上杭10aの中空部27上端から溢れ、コンクリート杭10外壁と杭穴壁との間隙からもセメントミルクが上昇してくる。これにより、コンクリート杭10の外壁と杭穴壁の外壁との間の間隙にセメントミルクが充填されることが確認できる。
【0109】
(9) コンクリート杭10の埋設が完了した後に、掘削ロッド1(掘削ヘッド2)を引き上げ、施工完了とする。セメントミルクが固化した後、基礎杭構造が完了する(図12(b))。この際、下杭10bの下端28と杭穴底16a都の間にセメントミルクが固化した層29が形成される(図12(b))。
【0110】
(10)前記実施例1〜3のようないわゆる先掘工法に比べて、本実施例のような中掘工法では、杭構造全体に占める練付けの比重はそう高くはないが、本実施例のように、練付けを確実に行うことによりより品質の高い基礎杭構造を構築できる。一般に中掘工法での掘削条件を地質に対して余裕を持って設定する必要があったが、本発明により、各深度毎の土質強度に対応した効率的で、きめ細かい掘削練付けができる。
【0111】
従って、掘削時には、深度毎の地質即ち土質強度に応じて、リアルタイムで対応した杭穴掘削工事ができるので、全体的に崩落し易い地層で、かつ支持力のあまり期待できない地層が混在している地盤であっても、乾式又は湿式を併用して、安定した確かな施工条件で、中掘工法の施工ができる。
【0112】
特に、下端部に節を設けたコンクリート杭のその節部を、高固化強度のソイルセメントを充填した杭穴拡大根固め部内に埋設した場合には、その節部の上下面で、せん断力の伝搬が認められ、せん断支持力を発現させることができる。よって、高支持力を期待する基礎杭を、中掘工法で実施させることができる。また、コンクリート杭の下端と拡底部底との間にソイルセメント層を形成すれば、コンクリート杭の下端面からのせん断力の伝搬も得られ、より高支持力の基礎杭を実現できる。
【0113】
即ち、コンクリート杭を押入ながら、各地層を順次掘削しながらその深度に対応した積算電流値を測定し、その積算電流値の大小に応じて、掘削液、セメントミルク等の注入量を制御するので、所望の品質及び固化強度のソイルセメントが充填された杭穴及び基礎杭構造を構成できる。また、支持力を期待できない地層でも、下端部に節部を有するコンクリート杭を押し込みながら杭穴掘削をするので、その地層の杭穴壁の土砂が杭穴下部へ崩落する前に、コンクリート杭の節部等で押さえることができる。また深度毎の土質強度に応じて、乾式又は湿式更に、掘削液の量も制御できるので、排土量の低減を図り、高品質で安定した基礎杭構造を提供できる中掘工法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】この発明の実施例のブロック図である。
【図2】(a)は同じく掘削液を使用しない掘削例の概念図で、(b)は同じく掘削液を使用する掘削例の概念図で、(c)は同じくソイルセメントを作る際の概念図である。
【図3】(a)は同じくソイルセメント出来上がりの概念図で、(b)は同じく杭を挿入した実施例の概念図である。
【図4】同じく杭を挿入した他の実施例の概念図である。
【図5】同じく杭穴掘削完了時の実施例の掘削ロッド取り出し前の概念図である。
【図6】(a)は同じくこの発明の練付けドラムの実施例の一部を切断した拡大上面図で、(b)は同じく一部を省略した取付け状態の拡大正面図で、(c)は同じく一部を切断した拡大下面図である。
【図7】(a)は同じく練付けドラムを構成する一方の羽根の拡大端面図で、(b)は同じく他の実施例の拡大端面図で、(c)は同じく他の実施例の拡大端面図である。
【図8】(a)は同じくN値及び電力値と深さのグラフで、(b)は同じく他の実施例のグラフである。
【図9】(a)〜(c)はこの発明の実施例4に使用する掘削ヘッドの3状態を表す正面図である。
【図10】同じく実施例4で、練付部の拡大横断面図である。
【図11】(a)〜(e)は、実施例4の施工過程を表す縦断面図である。
【図12】(a)は実施例4で使用するコンクリート杭の縦断面図、(b)は実施例4で構築した基礎杭構造である。
【符号の説明】
【0115】
1 掘削ロッド
2 掘削ヘッド
3 ロッド
4 撹拌バー
5 練付けドラム
6 杭穴
9 掘削土
10 コンクリート杭
11 ソイルセメント
12 掘削アーム
16 杭穴の拡底部
17 杭穴の軸部
18 杭の節部
19 練付棒
20 練付部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現場敷地内で標準貫入試験を行い、N値を算出し、先端に掘削刃を有する掘削ロッドの回転駆動装置が負担する消費電力を計測しながら杭穴を掘削する方法であって、
(1) 前記N値は、異常N値を排除して、N値の平均値とする。
(2) 前記N値の平均値が予め設定した値以上であって、前記消費電力が予め設定した値より大きな場合を「支持力を期待する地層」として予め設定すると共に、前記消費電力の大小に応じ「前記消費電力が前記予め設定した消費電力より大きい場合に前記掘削液を多く吐出するように」前記消費電力に対応して、補助手段としての掘削液の吐出量を予め設定する。
(3) 1つの杭穴において、支持力を期待しない地層は、水等の掘削液を使用することなく掘削し、「支持力を期待する地層」は、前記設定した吐出量に基づき水等の掘削液を使用して掘削し、前記掘削中に生成した掘削土は、ロッドに取り付けした練付け手段により穴壁へ練付ける。
ことを特徴とした杭穴掘削方法。
【請求項2】
1つの杭穴において、先端に掘削刃を有する掘削手段を回転させて、補助手段としての掘削液を吐出しながら杭穴を掘削する方法であって、
(1) 予め定めた積算電流値の大小により「前記予め定めた積算電流値が相対的に大きい場合に前記掘削液を多く吐出するように」前記積算電流値に対応させた掘削液の吐出量を予め設定し、
(2) 前記杭穴を掘削しながら、その掘削中の深度毎に、前記掘削手段を回転下降するための積算電流値を計測処理し、
(3) 前記積算電流値の大小に対応させて、前記掘削液の吐出量の大小を制御した。
ことを特徴とする杭穴掘削方法。
【請求項3】
現場敷地内で標準貫入試験を行い、N値を算出し、先端に掘削刃を有する掘削ロッドの回転駆動装置が負担する消費電力を計測しながら杭穴を掘削する方法であって、
(1) 前記N値は、異常N値を排除して、N値の平均値とする。
(2) 前記N値の平均値が予め設定した値以上であって、前記消費電力が予め設定した消費電力値より大きな場合を「支持力を期待する地層」として予め設定すると共に、前記消費電力の大小に応じ「前記消費電力が大きい場合に前記掘削液を多く吐出するように」前記消費電力に対応して、補助手段としての掘削液の吐出量を予め設定する。
(3) 1つの杭穴において、支持力を期待しない地層は、水等の掘削液を使用することなく掘削し、「支持力を期待する地層」は、前記設定した吐出量に基づき水等の掘削液を使用して掘削し、前記掘削中に生成した掘削土は、ロッドに取り付けした練付け手段により穴壁へ練付けると共に、杭穴内の残存する掘削土中へセメントミルクを注入し、撹拌してソイルセメントとし、前記杭穴内へコンクリート杭を挿入して、コンクリート杭の内部及び外部へソイルセメントを充填する。
ことを特徴とした基礎杭の施工方法。
【請求項4】
ソイルセメントにおけるセメント量は、掘削泥土量と、添加すべきセメントミルク量を算定し、予め定めた割合に調整することを特徴とした請求項3記載の基礎杭の施工方法。
【請求項1】
現場敷地内で標準貫入試験を行い、N値を算出し、先端に掘削刃を有する掘削ロッドの回転駆動装置が負担する消費電力を計測しながら杭穴を掘削する方法であって、
(1) 前記N値は、異常N値を排除して、N値の平均値とする。
(2) 前記N値の平均値が予め設定した値以上であって、前記消費電力が予め設定した値より大きな場合を「支持力を期待する地層」として予め設定すると共に、前記消費電力の大小に応じ「前記消費電力が前記予め設定した消費電力より大きい場合に前記掘削液を多く吐出するように」前記消費電力に対応して、補助手段としての掘削液の吐出量を予め設定する。
(3) 1つの杭穴において、支持力を期待しない地層は、水等の掘削液を使用することなく掘削し、「支持力を期待する地層」は、前記設定した吐出量に基づき水等の掘削液を使用して掘削し、前記掘削中に生成した掘削土は、ロッドに取り付けした練付け手段により穴壁へ練付ける。
ことを特徴とした杭穴掘削方法。
【請求項2】
1つの杭穴において、先端に掘削刃を有する掘削手段を回転させて、補助手段としての掘削液を吐出しながら杭穴を掘削する方法であって、
(1) 予め定めた積算電流値の大小により「前記予め定めた積算電流値が相対的に大きい場合に前記掘削液を多く吐出するように」前記積算電流値に対応させた掘削液の吐出量を予め設定し、
(2) 前記杭穴を掘削しながら、その掘削中の深度毎に、前記掘削手段を回転下降するための積算電流値を計測処理し、
(3) 前記積算電流値の大小に対応させて、前記掘削液の吐出量の大小を制御した。
ことを特徴とする杭穴掘削方法。
【請求項3】
現場敷地内で標準貫入試験を行い、N値を算出し、先端に掘削刃を有する掘削ロッドの回転駆動装置が負担する消費電力を計測しながら杭穴を掘削する方法であって、
(1) 前記N値は、異常N値を排除して、N値の平均値とする。
(2) 前記N値の平均値が予め設定した値以上であって、前記消費電力が予め設定した消費電力値より大きな場合を「支持力を期待する地層」として予め設定すると共に、前記消費電力の大小に応じ「前記消費電力が大きい場合に前記掘削液を多く吐出するように」前記消費電力に対応して、補助手段としての掘削液の吐出量を予め設定する。
(3) 1つの杭穴において、支持力を期待しない地層は、水等の掘削液を使用することなく掘削し、「支持力を期待する地層」は、前記設定した吐出量に基づき水等の掘削液を使用して掘削し、前記掘削中に生成した掘削土は、ロッドに取り付けした練付け手段により穴壁へ練付けると共に、杭穴内の残存する掘削土中へセメントミルクを注入し、撹拌してソイルセメントとし、前記杭穴内へコンクリート杭を挿入して、コンクリート杭の内部及び外部へソイルセメントを充填する。
ことを特徴とした基礎杭の施工方法。
【請求項4】
ソイルセメントにおけるセメント量は、掘削泥土量と、添加すべきセメントミルク量を算定し、予め定めた割合に調整することを特徴とした請求項3記載の基礎杭の施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−95502(P2008−95502A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1828(P2008−1828)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【分割の表示】特願2002−36310(P2002−36310)の分割
【原出願日】平成14年2月14日(2002.2.14)
【出願人】(000176512)三谷セキサン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【分割の表示】特願2002−36310(P2002−36310)の分割
【原出願日】平成14年2月14日(2002.2.14)
【出願人】(000176512)三谷セキサン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】
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