説明

板状物搬送装置および板状物搬送方法

【課題】半導体ウエーハの如く薄い板状物にダメージを与えることなく搬送することができるようにする。
【解決手段】板状物Wと保持パッド22の保持面22aとの間の空間に融解状態の媒体23を供給し、この媒体23を冷却して凝固させることで板状物Wを保持させて搬送し、搬送後には、媒体23を融解して保持パッド22を板状物Wから離脱させるようにしたので、媒体23が介在することで保持パッド22が非接触状態で板状物Wを保持することとなり、薄い板状物Wであってもダメージを与えることなく保持して搬送できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば研削装置においてチャックテーブルに保持された研削済みの板状の被加工物をスピンナテーブル上に搬送する如き、板状物搬送装置および板状物搬送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、IC,LSI等の回路が複数個形成された半導体ウエーハの裏面を研削装置によって研削し、半導体ウエーハを薄く加工している。半導体ウエーハは、個々の回路毎のチップに分割されて、携帯電話機、パソコン、スマートカード等の電子機器に広く利用される。ここで、近年では、より軽量・小型化の要求に応えるために、半導体ウエーハは、100μm以下、好ましくは50μm以下の厚さに薄く加工される。
【0003】
このように半導体ウエーハの裏面を研削する研削装置は、半導体ウエーハを吸引保持するチャックテーブルと、このチャックテーブル上に吸引保持された半導体ウエーハを研削する研削手段と、チャックテーブル上で研削済みの半導体ウエーハを吸引保持して洗浄装置のスピンナテーブル上に搬送する搬送機構を備えている。ここで、切削済みの半導体ウエーハを搬送する従来の搬送機構は、セラミックポーラスや樹脂製のバキューム方式搬送パッドを用い、半導体ウエーハの研削面に接触させてバキュームで吸引する構造が採られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−059872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のバキューム方式搬送パッドの搬送機構では、バキュームすることにより薄いウエーハが搬送パッドの吸着保持面の形状(ポーラスな微小孔や溝形状)に倣ってしまい、局所的な変形が起こることで、薄いウエーハにダメージを与えてしまうおそれがある。また、搬送パッドの吸着保持面あるいはウエーハの吸着面上に残留した異物により、バキューム時に、その異物によって薄いウエーハにダメージを与えてしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、半導体ウエーハの如く薄い板状物にダメージを与えることなく搬送することができる板状物搬送装置および板状物搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる板状物搬送装置は、板状物を第1の位置から第2の位置へ搬送する板状物搬送装置であって、前記第1の位置と前記第2の位置との間で変位可能に設けられ、媒体を介して板状物を保持する保持パッドと、該保持パッドの保持面と前記第1の位置に保持された板状物との空間に融解状態の前記媒体を供給する媒体供給手段と、供給された前記媒体を冷却し凝固させる冷却手段と、凝固した前記媒体を融解する融解手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる板状物搬送装置は、上記発明において、前記媒体供給手段は、計量して所定量の前記媒体を前記保持パッド側へ送出する計量送出手段を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる板状物搬送装置は、上記発明において、前記冷却手段および前記融解手段は、前記保持パッド内に配設されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる板状物搬送装置は、上記発明において、前記冷却手段および前記融解手段は、前記保持パッドの前記保持面とは反対の面側に配設されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる板状物搬送方法は、第1の位置と第2の位置との間で変位可能に設けられた保持パッドを用いて、前記第1の位置に保持された板状物を第2の位置へ搬送する板状物搬送方法であって、前記第1の位置に保持された板状物の表面真上に対して前記保持パッドの保持面を僅かな空間を保って平行に位置付ける保持パッド位置付け工程と、前記保持パッドの前記保持面と前記板状物との空間に融解状態の媒体を供給する媒体供給工程と、供給された前記媒体を冷却手段によって冷却し凝固させる媒体凝固工程と、凝固した前記媒体を介して前記保持パッドの前記保持面に保持された板状物を該保持パッドの変位によって前記第2の位置へ搬送する搬送工程と、凝固した前記媒体を前記第2の位置で融解手段によって融解させる媒体融解工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる板状物搬送装置および板状物搬送方法によれば、板状物と保持パッドの保持面との間の空間に融解状態の媒体を供給し、この媒体を冷却して凝固させることで板状物を保持させて搬送し、搬送後には、媒体を融解して保持パッドを板状物から離脱させるようにしたので、媒体が介在することで保持パッドが非接触状態で板状物を保持することとなり、薄い板状物であってもダメージを与えることなく保持して搬送させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態である板状物搬送装置および板状物搬送方法について図面を参照して説明する。本発明は、実施の形態や変形例に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変形が可能である。
【0014】
(実施の形態)
図1は、本実施の形態の板状物搬送装置を備える研削装置を示す外観斜視図である。研削装置1は、半導体ウエーハ等の薄い板状物Wを吸引保持する3つのチャックテーブル2と、これらのチャックテーブル2をそれぞれ回転自在に支持して回転するターンテーブル3と、板状物Wを収容するカセット4,5と、カセット4からの板状物Wの搬出またはカセット5への板状物Wの搬入を行う搬出入手段6と、板状物Wの中心位置合わせを行う位置合わせ手段7と、チャックテーブル2に板状物Wを搬入する搬入手段8と、チャックテーブル2に保持された板状物Wに研削処理を施す研削手段9,10と、板状物Wを吸引保持して回転するスピンナーテーブル11を備え研削後の板状物Wの研削面を洗浄する洗浄手段12と、チャックテーブル2上から板状物Wをスピンナーテーブル11上に搬送する板状物搬送装置20と、研削後のチャックテーブル2を洗浄する洗浄手段13とを備えている。ここで、ターンテーブル3に配設された3個のチャックテーブル2は、ターンテーブル3が回転することにより順次移動し、搬入・搬出領域E1、粗研削加工領域E2、および仕上げ研削加工領域E3に順次位置付けられる。
【0015】
このような研削装置1においては、カセット4に収納された板状物Wが搬出入手段6によって位置合わせ手段7に搬送され、ここで中心位置合わせがされた後、搬入手段8によって搬入・搬出領域E1のチャックテーブル2上に搬送され載置される。本実施の形態の研削装置1で用いる板状物Wは、例えば厚さ100μm程度以下の比較的薄いウエーハである。
【0016】
また、粗研削加工領域E2に位置付けられたチャックテーブル2に保持された板状物Wに粗研削加工を施す研削手段9は、研削ホイール9aの下面に円環状に固着されて板状物Wの裏面(上面)を粗研削する研削砥石9bを有し、研削送り手段14によってZ軸方向に上下動するように構成されている。そこで、研削手段9が研削送り手段14によってZ軸方向の下方に研削送りされて、回転する研削ホイール9aの研削砥石9bが板状物Wの裏面に接触することにより、粗研削加工領域E2に位置付けられたチャックテーブル2に保持されている板状物Wの裏面が粗研削される。
【0017】
また、仕上げ研削加工領域E3に位置付けられたチャックテーブル2に保持された板状物Wに仕上げ研削加工を施す研削手段10は、研削ホイール10aの下面に円環状に固着されて板状物Wの裏面(上面)を仕上げ研削する研削砥石10bを有し、研削送り手段15によってZ軸方向に上下動するように構成されている。すなわち、研削手段10は、研削手段9とは研削砥石の種類のみが異なる構成とされている。そこで、研削手段10が研削送り手段15によってZ軸方向の下方に研削送りされて、回転する研削ホイール10aの研削砥石10bが板状物Wの裏面に接触することにより、仕上げ研削加工領域E3に位置付けられたチャックテーブル2に保持されている板状物Wの裏面が仕上げ研削される。
【0018】
裏面(上面)が仕上げ研削された板状物Wを吸引保持しているチャックテーブル2は、搬入・搬出領域E1に戻される。裏面が仕上げ研削された板状物Wは、この位置で、板状物搬送装置20によって保持されて洗浄手段12のスピンナーテーブル11上に搬送され、洗浄手段12による洗浄により研削屑が除去された後に、搬出入手段6によってカセット5に収容される。また、洗浄手段13は、搬入・搬出領域E1に戻されたチャックテーブル2上の仕上げ研削済みの板状物Wの裏面(上面)を洗浄するとともに、仕上げ研削された板状物Wが板状物搬送装置20によって取り上げられて空き状態となった搬入・搬出領域E1のチャックテーブル2の洗浄を行う。
【0019】
すなわち、本実施の形態の板状物搬送装置20は、搬入・搬出領域E1に位置付けられたチャックテーブル2の位置を第1の位置とし、洗浄手段12におけるスピンナーテーブル11の位置を第2の位置とし、第1の位置であるチャックテーブル2上に保持された仕上げ研削済みの板状物Wを第2の位置であるスピンナーテーブル11上に搬送させるためのものである。
【0020】
ここで、本実施の形態の板状物搬送装置20は、支点部21aを中心に水平面内で旋回駆動自在に設けられたアーム21と、このアーム21の先端に設けられて板状物Wを保持するための保持パッド22とを備える。保持パッド22は、アーム21の旋回により少なくとも搬入・搬出領域E1に位置付けられたチャックテーブル2の位置(第1の位置)と、スピンナーテーブル11の位置(第2の位置)との間で往復変位可能とされている。
【0021】
図2は、保持パッド付近の構成例を示す斜視図であり、図3は、保持パッドの内部構造を模式的に示す概略断面図であり、図4は、温水層の構成例を示す水平断面図であり、図5は、冷却層の構成例を示す水平断面図である。保持パッド22は、概略的には、保持対象となる板状物W相当の大きさで円盤状に形成されて、下面側に保持面22aを有する。本実施の形態の板状物搬送装置20は、媒体23を介して保持パッド22の保持面22aに板状物Wを保持するものであり、保持面22aと搬入・搬出領域E1に位置付けられたチャックテーブル2上の板状物Wとの空間に融解状態の媒体23を供給する媒体供給手段24を備える。ここで、本実施の形態では、媒体23として、例えば融点36℃で常温(20℃前後)より若干高いエチレンカーボナイトが用いられている。媒体供給手段24は、図示しない媒体タンクと、この媒体タンクと保持パッド22との間の連結する媒体供給管24aと、媒体供給管24aに連結されて保持パッド22を厚み方向に貫通して保持面22a側に露出する媒体用配管24bと、媒体供給管24aの配管経路上に設けられて供給する媒体23を例えばヒータや温水を用いて融解状態に維持するために加温する加温ユニット24cとを備える。媒体供給管24aの一部は、例えばアーム21内を利用して保持パッド22まで配管されている。
【0022】
また、保持パッド22は、冷却層25と温水層26との2層構造からなる。下部側に位置して下面側が保持面22aとされた冷却層25は、例えば5mm程度の厚さに形成され、内部には、図5に示すように、十字状および複数の同心円状の通路25aが互いに連通するように形成され、十字状の通路25aの外周端は外気に連通するよう開口25bとして形成されている。また、十字状の通路25aの中心交差部は、温水層26の中心に貫通形成された冷却用配管26a、およびこの冷却用配管26aに例えばアーム21内を配管されて連結された図示しない吸気管を介して図示しないエアー吸引源に連結されている。これら冷却層25やエアー吸引源等により、保持面22aと板状物Wとの間に供給された融解状態の媒体23を冷却し凝固させる冷却手段27が構成されている。なお、冷却層25の中心部付近には、前述の媒体用配管24bが貫通形成されている。
【0023】
冷却層25の上部側に積層される温水層26は、冷却層25に比して厚めに形成され、内部には、図4に示すように、複数個、例えば4つの温水室26bが十字状の仕切壁26cにより仕切られつつ連通部26dで互いに連通するように形成されている。また、温水層26の上部には、温水室26bに温水28を供給するための供給口26eと、温水室26bの温水28を排出して循環させるための排出口26fとが、中心を挟んで半径方向の異なる位置に形成されている。供給口26eには温水供給管26gが連結され、排出口26fには温水排出管26hが連結されている。これら温水供給管26gと温水排出管26hは、図示しない温水供給源に連結され、必要に応じて温水28を循環供給させ得る構造とされている。これら温水層26や温水供給源等により、保持面22a下で凝固した媒体23を溶解する溶解手段29が構成されている。なお、温水層26の中心には前述の冷却用配管26aが形成され、その周囲には前述の媒体用配管24bが貫通形成されている。
【0024】
さらに、前述の媒体供給手段24は、例えば加温ユニット24c中の媒体供給管24a上に位置させた計量送出手段30を備える。この計量送出手段30は、供給経路上で計量することで所定量の媒体23を保持パッド22側へ送出させるためのものであり、媒体供給管24a上に配設した入口弁30aと出口弁30bとの間に設けられたピストン構造体からなる。すなわち、出口弁30bを閉じた状態で、所定量となるまで媒体23を入口弁30a側からピストン構造体内に吸入し、所定量に達した時点で、入口弁30aを閉じ、供給タイミングに達したら、出口弁30bを開放させてピストン構造体による送出圧力で所定量の媒体23を保持パッド22側に圧送させるものである。
【0025】
このような板状物搬送装置20を用いた、本実施の形態の板状物搬送方法について図6を参照して説明する。図6は、板状物搬送工程を順に示す概略構成図である。まず、図6(a)に示すように、搬入・搬出領域E1(第1の位置)に位置付けられたチャックテーブル2に保持された板状物Wの表面真上に対して保持パッド22の保持面22aを僅かな寸法dの空間を保って平行に位置付ける(保持パッド位置付け工程)。この場合の寸法dは、例えば0.1mm程度である。
【0026】
この状態で、保持パッド22の保持面22aと板状物Wとの空間に融解状態の媒体23を媒体供給手段24によって供給する(媒体供給工程)。ここで、エチレンカーボナイトなる媒体23は、常温状態では凝固状態にあるため、媒体タンクから保持パッド22間の媒体供給管24a上では、加温ユニット24cによって加温することで融解状態に保つ。また、必要な量の媒体23を供給するために、媒体23の供給経路上で、計量送出手段30によって媒体23が所定量となるように計量して保持パッド22側に送出させる。この場合の必要量は、保持面22aと板状物Wのとの間の寸法dの空間内に収まる程度の量であり、無用な媒体23をターンテーブル3上にオーバーフローさせないためである。このような媒体23の供給動作中は、エアー吸引源および温水供給源は停止状態にあり、温水層26の温水室26b中には温水28が滞留状態にある。これにより、温水室26b中の温水28により媒体用配管24bが温まり、媒体23は融解状態でスムーズに媒体用配管24b内を通って保持面22a下に供給され、保持面22aと板状物Wのとの間の空間内が媒体23で満たされる。
【0027】
つづいて、媒体供給手段24による媒体23の供給を停止させた状態で(温水供給源は停止状態のまま)、図6(b)に示すように、冷却手段27のエアー吸引源を駆動させて開口25bから通路25a、冷却用配管26aを通る空気流を発生させ、ボイルシャルルの法則に従い空気の圧力変化を生じさせることで、保持面22a下で融解状態にある媒体23を冷却し凝固させる(媒体凝固工程)。すなわち、本実施の形態で用いている媒体23は、エチレンカーボナイトであり、常温より融点が若干高い程度であり、凝固させるために大きく温度を下げる必要がないため、冷却層25における気体差で媒体23を十分に冷却して凝固させることができる。また、媒体23の冷却には、チャックテーブル2上の切削水の蒸発等による気化熱も関与する。このようにして、保持面22aと板状物Wとの間の空間に充填された媒体23が凝固することにより、板状物Wは、保持パッド22の保持面22aに媒体23を介して保持されることとなる。このように、凝固させた媒体23が介在することで保持パッド22が非接触状態で板状物Wを保持することとなり、薄い板状物Wであっても局所的な変形や残留異物によるダメージを与えることなく保持して搬送させることが可能となる。
【0028】
そこで、アーム21を旋回させることで、凝固した媒体23を介して保持パッド22の保持面22aに保持された板状物Wを保持パッド22の回動変位によって洗浄手段12のスピンナーテーブル11(第2の位置)へ搬送する(搬送工程)。そして、エアー吸引源による吸引動作を停止させ、図6(c)に示すように、温水供給源を駆動させて温水層26の温水室26b内に温水28を循環させることで、凝固状態の媒体23を冷却層25を介して温めることで、融解させる(媒体融解工程)。すなわち、本実施の形態で用いている媒体23は、エチレンカーボナイトであり、常温より融点が若干高い程度であり、融解させるために大きく温度を上げる必要がないため、温水層26の温水室26bの温水28を循環させるだけで十分に加温して融解させることができる。融解した媒体23は、洗浄手段12内においてスピンナーテーブル11周りに流れ落ちる。これにより、保持面22aによる媒体23を介した板状物Wの保持が解除される。よって、保持パッド22をアーム21の旋回動作により復帰変位させることにより、保持パッド22は板状物Wを保持しない単体状態で復帰することとなる。この復帰動作に際しては、洗浄手段12内で保持パッド22の保持面22aを洗浄し、媒体23が保持面22aに残留しないようにすることが望ましい。
【0029】
このように、本実施の形態によれば、板状物Wと保持パッド22の保持面22aとの間の空間に融解状態の媒体23を供給し、この媒体23を冷却して凝固させることで板状物Wを保持させて搬送し、搬送後には、媒体23を融解して保持パッド22を板状物Wから離脱させるようにしたので、媒体23が介在することで保持パッド22が非接触状態で板状物Wを保持することとなり、薄い板状物Wであってもダメージを与えることなく保持して搬送させることができる。また、本実施の形態では、媒体23として、融点が常温に近いエチレンカーボナイトを使用しているので、凝固時の膨張収縮等のダメージも低減可能であり、より一層低ダメージにて板状物Wを搬送させることができる。
【0030】
なお、本実施の形態では、冷却手段27に空気の圧力変化を利用するようにしたが、エアー吸引源によるエアー吸引に代えて、冷却層25に冷水を供給させて冷却させるようにしてもよい。
【0031】
(変形例1)
図7は、変形例1を示す冷却凝固時の概略構成図である。変形例1は、媒体23に代えて、融点が常温(20℃前後)よりも若干低く、例えば17℃程度の媒体31を用いる場合の例を示す。この場合、媒体凝固工程では、大きく温度を下げる必要がないため、冷却層25の開口25bを閉じた構造とし、通路25aに対して冷水32を循環供給させることで、保持面22a下の媒体31を冷却し凝固させるようにしたものである。なお、保持パッド位置付け工程、媒体供給工程、搬送工程並びに媒体融解工程は、図6で説明した場合と同様に行わせればよい。
【0032】
(変形例2)
図8は、変形例2による板状物搬送工程を順に示す概略構成図である。変形例2は、媒体23に代えて、融点が例えば0℃近くの水などを媒体41として用いる場合の例を示す。変形例2では、使用する媒体41に対応させて、保持パッド42は、熱伝導性の良好なる部材により単純な円盤形状に形成されて、下面側が保持面42aとされている。このような保持パッド42には、媒体用配管24bが貫通形成され、媒体供給手段24の媒体供給管24aが連結されている。また、保持パッド42の上面側(すなわち、保持面42aとは反対の面側)には、冷却手段43と融解手段44とが搭載されている。冷却手段43は、例えば通電することにより保持パッド42側を冷却するペルチェ素子等の電熱変換素子が用いられている。また、融解手段44は、例えば通電することにより発熱して保持パッド42を加熱するヒータ等が用いられている。
【0033】
まず、図8(a)に示すように、搬入・搬出領域E1(第1の位置)に位置付けられたチャックテーブル2に保持された板状物Wの表面真上に対して保持パッド42の保持面42aを僅かな寸法dの空間を保って平行に位置付ける(保持パッド位置付け工程)。この場合の寸法dは、例えば0.1mm程度である。
【0034】
この状態で、保持パッド42の保持面42aと板状物Wとの空間に融解状態の媒体41を媒体供給手段24によって供給する(媒体供給工程)。ここで、水などの媒体41は、常温状態では融解状態にあるため、加温ユニット24cによる加温は必須ではない。また、必要な量の媒体41を供給するために、媒体41の供給経路上で、計量送出手段30によって媒体41が所定量となるように計量して保持パッド42側に送出させる。この場合の必要量は、保持面42aと板状物Wのとの間の寸法dの空間内に収まる程度の量であり、無用な媒体41をターンテーブル3上にオーバーフローさせないためである。このような媒体41の供給動作中は、冷却手段43と融解手段44は停止状態にある。媒体41は融解状態で媒体用配管24b内を通って保持面42a下に供給され、保持面42aと板状物Wのとの間の空間内が媒体41で満たされる。
【0035】
つづいて、媒体供給手段24による媒体41の供給を停止させた状態で、図8(b)に示すように、冷却手段43を駆動させて保持パッド42を冷却させることで、保持面22a下で融解状態にある媒体41を冷却し凝固させる(媒体凝固工程)。このようにして、保持面42aと板状物Wとの間の空間に充填された媒体41が凝固することにより、板状物Wは、保持パッド42の保持面42aに媒体41を介して保持されることとなる。このように、凝固させた媒体41が介在することで保持パッド42が非接触状態で板状物Wを保持することとなり、薄い板状物Wであっても局所的な変形や残留異物によるダメージを与えることなく保持して搬送させることが可能となる。
【0036】
そこで、アーム21を旋回させることで、凝固した媒体41を介して保持パッド42の保持面42aに保持された板状物Wを保持パッド42の回動変位によって洗浄手段12のスピンナーテーブル11(第2の位置)へ搬送する(搬送工程)。そして、冷却手段43による冷却動作を停止させ、図8(c)に示すように、融解手段44を駆動させて保持パッド42を加熱し、凝固状態の媒体23を温めることで、融解させる(媒体融解工程)。融解した媒体41は、洗浄手段12内においてスピンナーテーブル11周りに流れ落ちる。これにより、保持面42aによる媒体41を介した板状物Wの保持が解除される。よって、保持パッド42をアーム21の旋回動作により復帰変位させることにより、保持パッド42は板状物Wを保持しない単体状態で復帰することとなる。この復帰動作に際しては、洗浄手段12内で保持パッド42の保持面42aを洗浄し、媒体41が保持面42aに残留しないようにすることが望ましい。
【0037】
なお、変形例2では、簡略化するため、冷却手段43と融解手段44とを保持パッド42上で二分させて配設させた例で示すが、保持パッド42の全面が均等に冷却されたり加熱されるよう、適宜均等に分散配設させることが望ましい。また、保持パッド42の上面側に全面的にペルチェ素子を配設し、このペルチェ素子に対する通電方向を切換えることで、保持パッド42に対する冷却手段と融解手段とを共用させるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態の板状物搬送装置を備える研削装置を示す外観斜視図である。
【図2】保持パッド付近の構成例を示す斜視図である。
【図3】保持パッドの内部構造を模式的に示す概略断面図である。
【図4】温水層の構成例を示す水平断面図である。
【図5】冷却層の構成例を示す水平断面図である。
【図6】板状物搬送工程を順に示す概略構成図である。
【図7】変形例1を示す冷却凝固時の概略構成図である。
【図8】変形例2による板状物搬送工程を順に示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0039】
2 チャックテーブル
11 スピンナーテーブル
20 板状物搬送装置
22 保持パッド
22a 保持面
23 媒体
24 媒体供給手段
27 冷却手段
29 融解手段
30 計量送出手段
31 媒体
41 媒体
42 保持パッド
42a 保持面
43 冷却手段
44 融解手段
W 板状物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状物を第1の位置から第2の位置へ搬送する板状物搬送装置であって、
前記第1の位置と前記第2の位置との間で変位可能に設けられ、媒体を介して板状物を保持する保持パッドと、
該保持パッドの保持面と前記第1の位置に保持された板状物との空間に融解状態の前記媒体を供給する媒体供給手段と、
供給された前記媒体を冷却し凝固させる冷却手段と、
凝固した前記媒体を融解する融解手段と、
を備えることを特徴とする板状物搬送装置。
【請求項2】
前記媒体供給手段は、計量して所定量の前記媒体を前記保持パッド側へ送出する計量送出手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の板状物搬送装置。
【請求項3】
前記冷却手段および前記融解手段は、前記保持パッド内に配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の板状物搬送装置。
【請求項4】
前記冷却手段および前記融解手段は、前記保持パッドの前記保持面とは反対の面側に配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の板状物搬送装置。
【請求項5】
第1の位置と第2の位置との間で変位可能に設けられた保持パッドを用いて、前記第1の位置に保持された板状物を第2の位置へ搬送する板状物搬送方法であって、
前記第1の位置に保持された板状物の表面真上に対して前記保持パッドの保持面を僅かな空間を保って平行に位置付ける保持パッド位置付け工程と、
前記保持パッドの前記保持面と前記板状物との空間に融解状態の媒体を供給する媒体供給工程と、
供給された前記媒体を冷却手段によって冷却し凝固させる媒体凝固工程と、
凝固した前記媒体を介して前記保持パッドの前記保持面に保持された板状物を該保持パッドの変位によって前記第2の位置へ搬送する搬送工程と、
凝固した前記媒体を前記第2の位置で融解手段によって融解させる媒体融解工程と、
を備えることを特徴とする板状物搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−206207(P2009−206207A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45142(P2008−45142)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】