説明

検体中粒子分析方法、分析装置及び分析用試薬

【課題】酵母様真菌が出現している検体でも、より効率よく、また精度よく検体中の赤血球を判別する。
【解決手段】本発明は、検体中の赤血球を溶血させずに酵母様真菌の細胞膜に損傷を与え、更に蛍光色素により蛍光染色処理を施して試料液を調製する試料調製ステップ、試料液中の粒子から、粒子の大きさを反映する第一の情報と、粒子の蛍光染色度合いを反映する第二の情報を検出する検出ステップ、検出した第一、第二の情報に基づき、赤血球を判別する判別ステップ、を含む検体中粒子分析方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿、或いは脳脊髄液、関節液等の検体中の粒子を分析する方法、装置及び試薬に関し、更に詳しくは、検体中に出現した赤血球と、酵母様真菌等の特定の細菌との判別精度をより向上させた検体中粒子の分析方法、装置及び試薬に関するものである。
【背景技術】
【0002】
尿中に出現する赤血球、白血球、上皮細胞、円柱、細菌等の粒子を分析することは、腎・尿路系の疾患を判別する上で重要である。例えば赤血球は腎臓の糸球体から尿道に至る経路における出血の有無を判定する上で重要である。また白血球の増加は、炎症、感染症の疑いを示す。また赤血球や円柱の形態を調べることにより、その由来部位を推定することもできる。
【0003】
従来、尿中に出現する粒子を分析する方法としては、染色を施した尿検体をスライドガラスや計算盤上に乗せて顕微鏡で観察し、視野内の粒子を種類毎に計数するという方法が用いられていた。しかしこの方法はいわゆる用手法であり、実施する者に負担となるばかりでなく、実施する者の熟練度合によって計数結果にばらつきが生じやすい。
【0004】
近年、フローサイトメトリ法を利用して尿中に含まれている粒子を自動的に分類して計数する技術が開発されている。この方法では、尿検体に蛍光染色を施して調製した試料液をフローセルに流し、前記フローセルにレーザ光を照射する。そしてレーザ光を照射された試料液中の粒子が発する前方散乱光や蛍光の強度を検出する。前方散乱光の強度はその粒子の大きさを反映し、粒子が大きいほど前方散乱光の強度が大きくなる。また蛍光の強度は、その粒子の蛍光染色度合いを反映する。粒子の種類によって前方散乱光強度や蛍光強度が異なるので、これらの光学的情報を組み合わせて解析することにより、その粒子の種類を判別して計数することができる(特許文献1参照のこと)。
【0005】
しかし特許文献1の方法において、比較的大型の細菌である酵母様真菌が含まれる尿検体では、それらの粒子から検出される前方散乱光や蛍光の強度が、赤血球から検出されるものと同程度となり、赤血球との判別が困難となる場合があった。
【0006】
そのような問題に対しては、例えば、赤血球と酵母様真菌が出現した検体に対し、赤血球を溶血させるための細胞膜損傷剤を添加して試料液を調製してフローサイトメータで測定した結果と、細胞膜損傷剤を添加せずに試料液を調製してフローサイトメータで測定した結果を得て、両結果を比較することにより、赤血球と酵母様真菌を区別して計数する技術がある(特許文献2参照のこと)。
【0007】
【特許文献1】米国特許5325169号明細書
【特許文献2】特開平9−329569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし特許文献2に記載の方法では、赤血球を溶血させた試料と、赤血球を溶血させていない試料をそれぞれ測定するため、測定に必要な検体や試薬の量が増えると共に、測定に必要な時間も増えてしまう。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑み、より効率よく検体中の赤血球を判別出来る検体中粒子の分析方法、分析装置及び分析用試薬を提供する。また本発明は、より精度よく検体中の赤血球を判別出来る検体中粒子の分析方法、分析装置及び分析用試薬を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、検体中の赤血球を溶血させずに酵母様真菌の細胞膜に損傷を与え、更に蛍光色素により蛍光染色処理を施して試料液を調製する試料調製ステップ、試料液中の粒子から、粒子の大きさを反映する第一の情報と、粒子の蛍光染色度合いを反映する第二の情報を検出する検出ステップ、検出した第一、第二の情報に基づき、赤血球を判別する判別ステップ、を含む検体中粒子分析方法を提供する。
【0011】
また本発明は、ベンゼン環を有する非イオン性有機化合物及び蛍光色素を含む試薬と、検体と、を混合して試料液を調製するステップ、試料液中の粒子から、粒子の大きさを反映する第一の情報と、粒子の蛍光染色度合いを反映する第二の情報を検出するステップ、検出した第一、第二の情報に基づき、赤血球を判別するステップ、を含む検体中粒子分析方法を提供する。
【0012】
また本発明は、検体中の赤血球を溶血させずに酵母様真菌の細胞膜に損傷を与える物質を含む第一の試薬と、蛍光色素を含む第二の試薬と、検体と、を混合して試料液を調製する試料調製部、試料液中の粒子から、粒子の大きさを反映する第一の情報と、粒子の蛍光染色度合いを反映する第二の情報を検出する検出部、検出した第一、第二の情報に基づき、赤血球を判別する制御部、を有する検体中粒子分析装置を提供する。
【0013】
また本発明は、検体中の赤血球を溶血させずに酵母様真菌の細胞膜に損傷を与える物質を含む第一の試薬と、蛍光色素を含む第二の試薬とを含む、検体中粒子分析用試薬を提供する。
【0014】
また本発明は、検体中の赤血球を溶血させずに酵母様真菌の細胞膜に損傷を与える物質及び蛍光色素を含む、検体中粒子分析用試薬を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、酵母様真菌が出現している検体でも、赤血球を溶血させず、かつ酵母様真菌の蛍光染色性を向上させることによって、従来と比べより効率よく赤血球を判別することが可能となる。また本発明によれば、より精度よく赤血球を判別することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。しかし本発明がこの実施形態に限定されるわけではない。この実施形態においては、尿検体と所定の試薬を混合して尿中の粒子を蛍光染色することにより試料液を調製する。そして試料液中に含まれる各粒子から、その粒子の大きさを反映する情報、及び粒子の染色度合いを反映する情報を検出する。そしてそれらの情報を解析することにより、赤血球を他の粒子と判別して計数する。
【0017】
粒子の大きさを反映する情報、及び粒子の染色度合いを反映する情報を検出する方法としては、例えばフローサイトメトリ法を用いることが出来る。これを自動的に行う装置としては、フローサイトメータがある。フローサイトメータは、試料液を流すためのフローセル、フローセル中を流れる試料液にレーザ光を照射するためのレーザ光源、レーザ光を照射された試料液中の粒子から発せられる散乱光や蛍光を受光して光の強度に応じた電気信号へ変換する光電変換素子、光電変換素子が出力する粒子毎の電気信号の信号強度を抽出する信号処理回路を有する。粒子が発する散乱光の強度は粒子の大きさを反映する情報であり、粒子が発する蛍光の強度は粒子の蛍光染色度合いを反映する情報である。散乱光としては、粒子に対して入射するレーザ光の光軸の延長方向若しくはその周辺の方向へ散乱するもの(前方散乱光)や、粒子に対して入射するレーザ光の光軸と直行する方向若しくはその周辺の方向へ散乱するもの(側方散乱光)、或いはその他の角度に散乱するものが挙げられる。これらは粒子の大きさを反映する情報として使用できるが、特に前方散乱光が好適に用いられる。
【0018】
なお、粒子の大きさを反映する情報の検出には、いわゆる電気抵抗式の検出器を用いてもよい。電気抵抗式の検出器では、電圧を印加した細孔に粒子を通過させ、その際の電気抵抗の変化を電気信号として捉える。その信号強度が粒子の大きさ(体積)に応じて異なるので、これを粒子の大きさを反映する情報として用いることが出来る。
【0019】
赤血球が有する蛍光強度、及び散乱光強度(又は電気抵抗式の検出器により検出される粒子毎の電気信号の強度)の範囲を予め定めておけば、各粒子から検出した信号がその範囲に入るか否かによってその粒子が赤血球か否か判別できる。
【0020】
検体と混合して試料液を調製するための試薬としては、尿検体中の粒子を染色するための蛍光色素を含有する染色液、及び検体に蛍光染色処理を施すための環境を整える物質を含む希釈液を用いることができる。検体と希釈液及び染色液を混合することにより、分析用の試料液が調製される。
【0021】
尿検体中に酵母様真菌が出現していると、酵母様真菌から検出される前方散乱光及び蛍光の強度が赤血球から検出される強度と重なり、判別が困難な場合があることは前述の通りである。そこで、希釈液に酵母様真菌と赤血球との間に蛍光色素の染色性に差を生じさせる物質を含有させることにより、酵母様真菌と赤血球から検出される蛍光強度に差が生じ、赤血球の判別精度を向上させることができる。そのような物質としては、酵母様真菌の細胞膜に損傷を与えて細胞内部への色素透過性を亢進させる物質が挙げられる。酵母様真菌の細胞膜に損傷がない場合、蛍光色素は細胞膜表面と結合するのみであるが、細胞膜に損傷があると、蛍光色素が細胞膜表面のみならず、細胞内部にも入り込んで核酸等の細胞内物質と結合し、蛍光染色性が向上する。なお、酵母様真菌の細胞膜に損傷を与えて細胞内部への色素透過性を亢進させる物質は、赤血球の細胞膜には損傷を与えないものである必要がある。赤血球の細胞膜が損傷すると溶血を生じてしまい、赤血球の計数が困難となるからである。上記の条件を満たす物質としては、ベンゼン環を有する非イオン性有機化合物が挙げられる。例えば、ベンジルアルコール、βフェネチルアルコール、フェノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、2−フェノキシエタノール等の芳香族アルコールや、酢酸フェニル、また2−アミノベンゾチアゾールやベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール化合物を用いることが出来る。これらのうち特に2−フェノキシエタノールが好適に用いられる。
【0022】
なお、上記各物質の溶解性を向上させるため、希釈液中にMTAB、DTAB、OTAB等の界面活性剤を含有させてもよい。なお上記界面活性剤の濃度が高いと赤血球を溶血させてしまう恐れがあるので、赤血球を溶血させない程度の濃度で用いることが好ましい。
【0023】
希釈液は、赤血球が溶血しない浸透圧及びpHの範囲に緩衝能を保つために緩衝剤や浸透圧補償剤を含むことが好ましい。希釈液のpHは7.0〜9.0、好ましくは7.1〜8.6、より好ましくは7.1〜7.8、更に好ましくは7.3〜7.8の範囲で用いることが望ましい。これは、希釈液のpHが9.0を超えて強アルカリ性となると赤血球が溶血する恐れがあり、また酸性領域では、尿検体におけるpH変化が大きく赤血球がダメージを受けたり、尿中の粒子の染色性が全体的に低下する恐れがあるからである。
【0024】
希釈液に含有させる緩衝剤としては、従来公知のものを使用することができる。例えば、トリス及びMES、Bis-Tris、ADA、PIPES、ACES、MOPSO、BES、MOPS、TES、HEPES、DIPSO、TAPSO、POPSO、HEPPSO、EPPS、Tricine、Bicine、TAPSのようなグッド緩衝剤等を挙げることができる。中でも、HEPESが好ましい。濃度は、用いる緩衝剤の緩衝能に応じて、尿検体を希釈したときにpHがある一定の範囲内になる濃度で用いられる。通常、20〜500mM、好ましくは50〜200mMである。
【0025】
希釈液に含有させる浸透圧補償剤としては、無機塩類やプロピオン酸塩等の有機塩類、糖類などが用いられる。無機塩類としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム等が用いられる。有機塩類のうちプロピオン酸塩としては、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、プロピオン酸アンモニウム等が用いられる。他の有機塩類としてはシュウ酸塩、酢酸塩等が用いられる。糖類としては、ソルビトール、グルコース、マンニトール等が用いられる。浸透圧補償剤は、赤血球の溶血防止と安定した蛍光強度を得ることを目的として添加する。尿の浸透圧は、50〜1300mOsm/kgと広範囲にわたって分布している。分析用試薬の浸透圧が低すぎると赤血球の溶血が早期に進行してしまい、逆に高すぎると尿中の粒子の損傷が大きくなるので浸透圧は、100〜600mOsm/kgが好ましく、150〜500mOsm/kgがより好ましい。
【0026】
また尿中に出現する無晶性塩類(例えば、リン酸アンモニウム、リン酸マグネシウム、炭酸カルシウム)の影響を低減するために、それらを溶解するためのキレート剤を希釈液に含有させてもよい。キレート剤は、脱カルシウム剤、脱マグネシウム剤であればとくに種類の限定はない。例えば、EDTA塩、CyDTA、DHEG、DPTA-OH、EDDA、EDDP、GEDTA、HDTA、HIDA、Methyl-EDTA、NTA、NTP、NTPO、EDDPO等が挙げられる。好適には、EDTA塩、CyDTA、GEDTAが用いられる。濃度は、0.05〜5W/W%の範囲で使用することができ、好適には0.1〜1W/W%である。なお、ここでいう脱カルシウム剤、脱マグネシウム剤とは、カルシウムイオン、マグネシウムイオンと結合して、水溶性の化合物を形成するものを意味する。
【0027】
尿中に含まれる粒子を染色するための蛍光色素としては、例えば以下の化学式で表される縮合ベンゼン誘導体を用いることが出来る。
【0028】
【化1】

【0029】
〔式中、Aは−O−,−S−又は−C(CH32 −、Rは低級アルキル基、Xはハロゲン、Yは−CH=又は−NH−、nは0又は1、Bは、
【0030】
【化2】

【0031】
(式中AとRは上記と同義である)又は2つの低級アルコキシ基もしくは1つのジ低級アルキルアミノ基(この低級アルキルはシアノ基で置換されていてもよい)で置換されたフェニル基である。〕。上記低級アルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基を意味し、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。Xのハロゲン原子としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。また、Bにおける2つの低級アルコキシ基で置換されたフェニル基とは、2つのC1-3 アルコキシ基、好ましくはC1-2 アルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基で置換されたフェニル基をいう。具体的には、2,6−ジメトキシフェニル基、2,6−ジエトキシフェニル基が挙げられる。また、Bにおけるジ低級アルキルアミノ基(該低級アルキル基はシアノ基で置換されていてもよい)で置換されたフェニル基とは、C1-3 アルキルアミノ基、好ましくはC1-2 アルキルアミノ基で置換されたフェニル基をいう。ここで、該アルキル基はシアノ基で置換されていてもよく、例えばメチル、エチル、シアノメチル、シアノエチル等を含む。好ましいジ低級アルキルアミノ基(該低級アルキルはシアノ基で置換されていてもよい)で置換されたフェニル基としては、4−ジメチルアミノフェニル基、4−ジエチルアミノフェニル基、4−(シアノエチルメチルアミノ)フェニル基などが挙げられる。このような縮合ベンゼン誘導体の具体例としては、
【0032】
【化3】

【0033】
が挙げられる。この色素は、日本感光色素研究所(株)から入手できる。
【0034】
上記色素はポリメチン系の蛍光色素であり、波長633nmの赤色レーザ光を照射することにより蛍光が励起される。なお染色液に含有させる蛍光色素は上記以外にも、蛍光を励起させるためのレーザ光の波長に応じて適当なものを適宜選択して用いることができる。
【0035】
蛍光色素は水溶液中で不安定なものが多いため、蛍光色素を水溶性有機溶媒に溶解させたものを染色液として用いることで、蛍光色素の保存安定性を高めることができる。水溶性有機溶媒としては、低級アルカノール、低級アルキレングリコールまたは低級アルキレングリコールモノ低級アルキルエーテルが好ましい。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどを使用することができる。中でもエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが好ましく、尿中の粒子への影響や粘性などを考慮するとエチレングリコールがより好ましい。蛍光色素は、分析用試料液の終濃度として1〜20ppm、好ましくは3〜12ppm、より好ましくは3〜9ppmの範囲で用いることが望ましい。
【0036】
なお染色液と希釈液を別液として用いるのではなく、蛍光色素を希釈液に含有させることによって一液の試薬として用いてもよい。
【0037】
図1及び図2は、赤血球及び酵母様真菌を含む尿試料液からフローサイトメータによって得られる粒子毎の前方散乱光強度及び蛍光強度を軸にとった二次元スキャッタグラムを示す模式図である。いずれも縦軸に前方散乱光強度を、横軸に蛍光強度をとっており、この座標空間において上へ行くほど前方散乱光強度が大きくなり、左へ行くほど蛍光強度が大きくなる。赤血球計数領域Rは、その範囲内の前方散乱光強度及び蛍光強度を有する粒子を赤血球とみなして計数するためのものであり、各図において赤血球に対応するドットの集団が赤血球計数領域R内に出現している。また酵母様真菌に対応するドットの集団も各図に示されている。
【0038】
図1は、従来方法により調製した尿試料液から得られる二次元スキャッタグラムを示したものであり、酵母様真菌に対応するドットの一部が、赤血球計数領域Rに入っている。このような場合、赤血球の計数結果は実際よりも多くなってしまい、正確な赤血球数を求めることは困難となる。
【0039】
一方図2は、本発明の方法により調製した尿試料液から得られる二次元スキャッタグラムを示したものである。酵母様真菌に対応するドットの出現する位置が図1と比較して左方へ移動し(図1における位置は破線で示されている)、赤血球計数領域Rとは重なっていないことがわかる。これは、酵母様真菌の染色性を向上させる物質の作用により、酵母様真菌から検出される蛍光の強度が大きくなるためである。この物質は、赤血球の細胞膜には損傷を与えないので、赤血球の検出・計数に不都合は生じない。
【0040】
実施例1
以下、本発明の実施例につき説明する。この実施例は、ヒトの尿を検体とし、フローサイトメトリ法を応用した尿中粒子分析装置により尿中赤血球の検出を行うものである。
【0041】
検体
本実施例では、赤血球を含むヒトの尿に、純培養した酵母様真菌(C. glabrata)を100個/μl程度の濃度で添加したものを検体として用いた。
【0042】
試薬
尿中粒子分析装置で用いる試薬としては、以下の組成の染色液及び希釈液を用いた。
染色液
以下の式で表される蛍光色素を分析用試料の終濃度6ppmとなるようエチレングリコールに溶解させたものを染色液とした。
【0043】
【化4】

【0044】
希釈液
以下の各物質を精製水に溶解させたものを希釈液とした。
HEPES・・・・・・・・・・・11.9g/l
プロピオン酸ナトリウム・・・・・5.98g/l
EDTA−3K・・・・・・・・・4.0g/l
2−フェノキシエタノール・・・・7.5g/l
水酸化ナトリウム・・・・・・・・pHが7.0となる量
【0045】
尿中粒子分析装置
図3は、本実施例で用いる尿中粒子分析装置100の外観を示したものである。装置の前面には、各種設定入力を行ったり、また分析結果を表示出力するための液晶タッチパネル101、後述する試料調製部200を覆うカバー102、スタートスイッチ103を備えている。図4は尿中粒子分析装置100の内部構成を示したものである。装置の右側のスペースには、装置の動作や解析処理を司る制御部400が備えられている。装置の左下のスペースには、試料液から信号を検出するための検出部300が備えられている。また残りのスペースに、試料液を調製するための試料調製部200が備えられている。
【0046】
以下、試料調製部200、検出部300、制御部400の各部について説明する。
【0047】
試料調製部200の構成
図5は試料調製部200を示す説明図である。試料調製部200は、手前右側に検体セット部221、手前左側に試薬セット部222、奥側にインキュベータ223を備えている。また分注装置224を備えている。操作者が前記図3のカバー102を開けることにより、図5に示した試料調製部200が現れる。試料調製部200において、検体セット部221には、検体の入った検体容器225をセットするよう構成されている。インキュベータ223には、反応容器226をセットするよう構成されている。また試薬セット部222には、染色液の入った試薬容器227、希釈液が入った試薬容器231をセットするよう構成されている。インキュベータ223は、セットされた反応容器226の中の液体を、所定の温度に保ちながら振盪撹拌するよう構成されている。分注装置224は、その先端から所定量の液体を吸引・吐出するようになっており、また図示しない駆動装置によって前後・上下・左右に移動可能に構成されている。試料容器233は、後述する検出部300のフローセル301と接続されている。
【0048】
検出部300の構成
図6は検出部300の構成を示す説明図である。検出部300は、試料液を流すためのフローセル301を有する。フローセル301は、レーザ光が照射される部分であり内部流路が細く絞られているオリフィス部302、試料液をオリフィス部に向かって上方へ噴射するノズル303、シース液供給口304、排液口305を有する。また検出部300は、レーザ光を照射するためのレーザ光源306を有する。レーザ光源306は、波長633nmのレーザ光を出射する赤色半導体レーザ光源である。半導体レーザ光源は、アルゴンイオンレーザ光源に代表される従来の気体レーザ光源に比べ小型であり、また発振寿命も長いという利点を有する。検出部300はさらに、レーザ光源306から照射されたレーザ光をフローセル301へ集光するコンデンサレンズ307、レーザ光を照射された試料液中の粒子から発せられた前方散乱光を受光して電気信号に変換するフォトダイオード308、フォトダイオード308へ前方散乱光を集光するためのコレクタレンズ309とピンホール310、レーザ光を照射された試料液中の粒子から発せられた蛍光を受光して電気信号に変換するフォトマルチプライヤチューブ311、フォトマルチプライヤチューブ311へ蛍光を集光するためのコレクタレンズ312、フィルタ313、ピンホール314、フォトダイオード308やフォトマルチプライヤチューブ311から出力された電気信号を増幅し、前方散乱光信号及び蛍光信号として制御部400へ出力するアンプ315、316を有する。
【0049】
制御部400の構成
図7は制御部400の構成、及び制御部400と装置各部との関係を示すブロック図である。制御部400は、メモリ401、中央演算処理装置(CPU)402、検出部300から送られた信号を処理する信号処理回路403、尿中粒子分析装置100の装置各部の動作を制御するための動作制御回路404を有する。メモリ401は、試料液中に含まれる赤血球や細菌等の粒子から得た信号の解析に関する解析プログラムや、装置各部の動作を制御する制御プログラムを記憶している。また、信号処理回路403により処理されたデータや、解析プログラムによる処理結果を記憶する。CPU402は、メモリ401から読み出された解析プログラムや制御プログラムを実行し、検出部300において試料液から検出された信号を処理・解析したり、装置各部の動作を制御するための信号を動作制御回路404に送ったりする。解析プログラムによる解析結果は、液晶タッチパネル101に出力される。
【0050】
以下、尿中粒子分析装置100の動作の詳細につき説明する。図8は、制御プログラムによる尿中粒子分析装置100の全体制御を示すフローチャートである。操作者がスタートスイッチ103を押すと、制御プログラムが起動し、ステップS1(分析用試料液の調製)、ステップS2(粒子信号の検出)、ステップS3(粒子信号の解析)が順次実行される。これにより、試料調製部200、検出部300、制御部400の各部が制御され、尿中粒子分析装置100の一連の動作が自動的に実行される。上記ステップS1、S2、S3における装置各部の動作を以下に説明する。
【0051】
ステップS1(分析用試料液の調製)
ステップS1では、試料調製部200が制御され、分析用試料の調製が実行される。ステップS1における試料調製部200の動作を、図5を用いて説明する。まず分注装置224が、試薬セット部222の試薬容器231から希釈液を522μL吸引し、次に検体セット部221にセットされている検体容器225から検体(ヒトの尿)を180μL吸引する。そして吸引した希釈液と検体を、インキュベータ223にセットされている反応容器226に分注する。次に分注装置224は、試薬セット部222の試薬容器227から18μLの染色液を吸引し、反応容器226に分注する。この後インキュベータ223が、検体・希釈液・染色液が入った反応容器226内の液温を35℃に保ったまま10秒間撹拌し、希釈された検体に染色を施す。このようにして調製した分析用試料液を分注装置224が吸引し、試料容器233に供給する。試料容器233に供給された分析用試料液は、検出部300のフローセル301に流される。
【0052】
ステップS2(粒子信号の検出)
ステップS2では、検出部300が制御され、分析用試料液中の粒子から、各粒子の特徴を反映する信号が検出される。ステップS2における検出部300の動作を、図6を用いて説明する。前記の通り試料容器233に試料液が供給されると、図示しないポンプやバルブの動作により試料液がノズル303へ導かれる。そして試料液がノズル303からフローセル301に吐出される。それと同時にシース液が、図示しないシース液容器からシース液供給口304を介してフローセル301に供給される。これによって試料液は、フローセル301内でシース液に包まれ、更にオリフィス部302で細く絞られて流れる。試料液の流れを細く絞り込むことにより、試料液に含まれる赤血球や細菌等の粒子を一列に整列させてオリフィス部302に流すことができる。オリフィス部302を流れる試料液に対し、レーザ光源306から出射されたレーザ光がコンデンサレンズ307で絞られて照射される。レーザ光を受けた試料液中の粒子から発せられた前方散乱光はコレクタレンズ309により集光される。そしてピンホール310を通過した前方散乱光は、フォトダイオード308で受光、光電変換されてパルス状の前方散乱光信号となる。レーザ光を受けた試料液中の粒子から発せられた蛍光は、コレクタレンズ312により集光される。そしてフィルタ313、ピンホール314を通過した蛍光は、フォトマルチプライヤチューブ311で受光、光電変換されてパルス状の蛍光信号となる。前方散乱光信号及び蛍光信号は、それぞれアンプ315・316で増幅され、制御部400へ送られる。
【0053】
ステップS3(粒子信号の解析)
ステップS2で検出部300により検出された前方散乱光信号及び蛍光信号は、制御部400において図9に示すフロー(ステップS31〜S34)に従って解析される。
【0054】
ステップS31:まず検出部300により検出された前方散乱光信号及び蛍光信号を信号処理回路403に入力する。この信号処理回路403は、前方散乱光信号及び蛍光信号それぞれにつき、一連の信号波形において所定の信号強度を超える部分を、粒子を検出した信号とみなす。そして粒子毎に信号強度のピーク値を抽出する。前方散乱光信号のピーク値を前方散乱光強度、蛍光信号のピーク値を蛍光強度とする。
【0055】
ステップS32:前記ステップS31で得られた前方散乱光強度と蛍光強度は、粒子毎のデータとしてメモリ401に記憶される。
【0056】
ステップS33:メモリ401に記憶された粒子毎の前方散乱光強度及び蛍光強度のデータを、メモリ401に予め記憶されている解析プログラムにより解析する。CPU402に読み出されて実行される解析プログラムの各ステップにつき、図10のフローチャートを用いて説明する。
【0057】
ステップS331:メモリ401から、分析用試料中の各粒子に対応した前方散乱光強度及び蛍光強度のデータを取得する。
【0058】
ステップS332:前方散乱光強度及び蛍光強度のデータを二次元座標空間に展開し、前方散乱光強度及び蛍光強度をパラメータとした二次元スキャッタグラムを作成する。
【0059】
ステップS333:ステップS332で作成した二次元スキャッタグラム上に、赤血球計数領域Rを設定する。赤血球計数領域Rは、その範囲内の前方散乱光強度及び蛍光強度を有する粒子を赤血球とみなして計数するために設定する領域である。赤血球計数領域Rの座標データはメモリ401に予め記憶されており、本ステップにおいて解析プログラムによって読み出され、二次元スキャッタグラム上に適用される。なお赤血球計数領域Rの位置は、予め顕微鏡検査等により赤血球であると確認された尿中の粒子から得た前方散乱光強度及び蛍光強度に基づき定めたものである。
【0060】
上記ステップS333で作成された二次元スキャッタグラムの一例を、図11に示す。この二次元スキャッタグラムは、縦軸に前方散乱光強度を、横軸に蛍光強度をとっている。この座標空間において上へ行くほど前方散乱光強度が大きくなり、左へ行くほど蛍光強度が大きくなる。赤血球計数領域Rが設定されている。また試料液中の各粒子に対応するドットが二次元スキャッタグラム上に出現している。
【0061】
ステップS334:赤血球計数領域R内に出現しているドット数を計数する。そしてこのドット数と、分析用試料調製における検体の希釈倍率、並びにフローセルに流された試料液の体積に基づき、検体の単位量あたりに含まれていた赤血球数が算出される。
【0062】
ステップS335:前記作成した二次元スキャッタグラムと、赤血球の計数結果を、解析結果として液晶タッチパネル101に出力するためのデータを作成し、作成したデータをメモリ401に記憶する。以上がステップS33において解析プログラムにより実行されるステップである。続いて、図9に示したフローのステップS34へ進む。
【0063】
ステップS34:
前記ステップS335でメモリ401に記憶された解析結果のデータを液晶タッチパネル101に出力する。図12は、前記データが液晶タッチパネル101に出力された様子を示す模式図である。液晶タッチパネル101に、二次元スキャッタグラム、赤血球数が、解析結果として表示される。
【0064】
分析結果の例
図11は、前記検体を尿中粒子分析装置100で分析して得られた二次元スキャッタグラムである。縦軸に前方散乱光強度を、横軸に蛍光強度をとっており、この座標空間において上へ行くほど前方散乱光強度が大きくなり、左へ行くほど蛍光強度が大きくなる。赤血球計数領域Rは、その範囲内の前方散乱光強度及び蛍光強度を有する粒子を赤血球とみなして計数するために設定された領域であり、その領域内に、赤血球に対応するドットの集団が出現している。一方、酵母様真菌に対応するドットの集団が、赤血球計数領域Rには入っていないことがわかる。
【0065】
実施例2
実施例1への対照として、尿中粒子分析装置100において以下の組成の希釈液を用いて尿検体を分析した。この希釈液は、実施例1で用いたものと比べ、2−フェノキシエタノールを含有しない点で異なる。用いた検体、染色液、尿中粒子分析装置は実施例1と同様である。
希釈液
以下の各物質を精製水に溶解させたものを希釈液とした。
HEPES・・・・・・・・・・・11.9g/l
プロピオン酸ナトリウム・・・・・5.98g/l
EDTA−3K・・・・・・・・・4.0g/l
水酸化ナトリウム・・・・・・・・pHが7.0となる量
【0066】
図13に、本実施例で得られた二次元スキャッタグラムを示す。本図においては、酵母様真菌に対応するドットの集団の一部が、赤血球計数領域Rに入っていることがわかる。この実施例2と、前記実施例1とを比較すると、前記実施例1において2−フェノキシエタノールが検体中の酵母様真菌に作用して色素の透過性を亢進させ、酵母様真菌が赤血球よりも大きな蛍光強度を有するようになったことが窺える。
【0067】
実施例3
実施例1で用いた希釈液における水酸化ナトリウムの含有量を変化させ、pHが異なる4種類の希釈液を調製した。それらを、実施例1で用いた希釈液を含めpHが5段階に異なる希釈液1〜5とした(希釈液1:pH7.0、希釈液2:pH7.1、希釈液3:pH7.3、希釈液4:pH7.8、希釈液5:pH8.6)。これらの希釈液を用いて尿検体を分析した。検体としては、赤血球を含まないヒトの尿に、純培養した酵母様真菌(C. glabrata)を100個/μl程度の濃度で添加したものを用いた。用いた染色液、尿中粒子分析装置は実施例1と同様である。そして、各希釈液を用いた分析において、酵母様真菌から得られた蛍光信号強度の平均値を算出した。その結果を下記の表1に示す。なお蛍光強度の値は、図11や図13に示した尿中粒子分析装置100により得られる二次元スキャッタグラムにおける横軸の最小値を0、最大値を255とした場合の相対的な値である。
【0068】
【表1】

【0069】
表1中、希釈液のpHが7.0〜8.6といった中性から弱アルカリ性の範囲にかけては、アルカリ性が強くなるほど、酵母様真菌の蛍光染色性が向上している。このことから、酵母様真菌の蛍光染色性が向上して赤血球との蛍光強度の差が大きくなるpHを選択することにより、両者の判別がより確実なものとなる。
【0070】
実施例4
実施例1で用いた希釈液において、酵母様真菌に作用して色素の透過性を亢進させる物質として含有させていた2−フェノキシエタノールに替えて他の物質を用いた希釈液を調製した。それらの希釈液を用いて尿検体を分析した。用いた検体、染色液、尿中粒子分析装置は実施例3と同様である。そして、各希釈液を用いた分析において、酵母様真菌から得られた蛍光信号強度の平均値を算出した。2−フェノキシエタノールに替えて希釈液に含有させた物質名及び酵母様真菌から得られた蛍光信号強度の平均値を下記の表2に示す。なお、各物質の希釈液中の濃度はいずれも1.0wt%である。蛍光強度の値は、実施例3と同様、図11や図13に示した尿中粒子分析装置100により得られる二次元スキャッタグラムにおける横軸の最小値を0、最大値を255とした場合の相対的な値である。
【0071】
【表2】

【0072】
なお、本発明者らの実験によれば、表2に挙げたような酵母様真菌の蛍光染色性を向上させる物質を含有しない希釈液を用いた場合は、酵母様真菌から得られる蛍光信号強度の平均値は20〜50程度であった。よって、表2に挙げた各物質を希釈液中に含有させることにより、酵母様真菌の蛍光染色性が大きく向上することがわかる。蛍光染色に用いる蛍光色素や、その他試薬中の各物質との組合わせの中で、上記各物質から適当なものを選択して用いることで、酵母様真菌と赤血球の蛍光強度差が大きくなり、両者の判別がより確実なものとなる。
【0073】
上記各実施例においては、酵母様真菌の蛍光染色性を向上させて赤血球の判別精度を向上させることについて言及してきたが、この技術は、連鎖したブドウ球菌が検体中に存在して赤血球の判別を阻害する場合にも応用可能である。ブドウ球菌の細胞一つ一つは赤血球と比べて小さいため、通常は赤血球の判別に影響を与えないが、ブドウ球菌が連鎖すると、見かけの大きさが大きくなり、赤血球の大きさと重なり、正確な判別を困難にすることがある。このような場合に、上記に説明してきた試薬を用いてブドウ球菌の蛍光染色性を向上させることで、赤血球を精度よく判別することが出来る。
【0074】
また上記実施例においては、検体として尿を用いているが、本発明は必ずしもこれに限られない。例えば、脳脊髄液、関節液、リンパ液、胸水、腹水、喀痰、咽頭粘液や鼻腔粘液等の粘液、気管洗浄液等の洗浄液、尿道分泌物や膣分泌物等の分泌物、創部浸出液や膿浸出液等の浸出液、といったものを検体としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】従来方法において得られる二次元スキャッタグラムを模式的に説明する図である。
【図2】本発明の一実施形態において得られる二次元スキャッタグラムを模式的に説明する図である。
【図3】本発明の一実施形態である尿中粒子分析装置の外観を説明する図である。
【図4】本発明の一実施形態である尿中粒子分析装置の内部構成を説明する図である。
【図5】本発明の一実施形態である尿中粒子分析装置の試料調製部を説明する図である。
【図6】本発明の一実施形態である尿中粒子分析装置の検出部を説明する図である。
【図7】本発明の一実施形態である尿中粒子分析装置の制御部を説明する図である。
【図8】本発明の一実施形態である尿中粒子分析装置の全体制御を説明するフローチャートである。
【図9】本発明の一実施形態である尿中粒子分析装置の粒子信号解析の動作を説明するフローチャートである
【図10】本発明の一実施形態である尿中粒子分析装置により実行される解析プログラムの各ステップを説明するフローチャートである。
【図11】本発明の一実施形態である尿中粒子分析装置により作成された二次元スキャッタグラムの一例を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態である尿中粒子分析装置の液晶タッチパネルに、解析の結果が表示された様子を示す図である。
【図13】本発明の一実施形態である尿中粒子分析装置により作成された二次元スキャッタグラムの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
100 尿中粒子分析装置
200 試料調製部
221 検体セット部
222 試薬セット部
223 インキュベータ
224 分注装置
225 検体容器
226 反応容器
227 試薬容器
231 試薬容器
300 検出部
301 フローセル
306 レーザ光源
308 フォトダイオード
311 フォトマルチプライヤチューブ
400 制御部
401 メモリ
402 CPU
403 信号処理回路
404 動作制御回路
























【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体中の赤血球を溶血させずに酵母様真菌の細胞膜に損傷を与え、更に蛍光色素により蛍光染色処理を施して試料液を調製する試料調製ステップ、
試料液中の粒子から、粒子の大きさを反映する第一の情報と、粒子の蛍光染色度合いを反映する第二の情報を検出する検出ステップ、
検出した第一、第二の情報に基づき、赤血球を判別する判別ステップ、
を含む検体中粒子分析方法。
【請求項2】
前記試料調製ステップにおいて、ベンゼン環を有する非イオン性有機化合物を含有する試薬を用いる、請求項1に記載の検体中粒子分析方法。
【請求項3】
前記ベンゼン環を有する非イオン性有機化合物は、芳香族アルコールである、請求項2に記載の検体中粒子分析方法。
【請求項4】
前記芳香族アルコールは、2−フェノキシエタノールである、請求項3に記載の検体中粒子分析方法。
【請求項5】
前記ベンゼン環を有する非イオン性有機化合物は、ベンゾチアゾール化合物である、請求項2に記載の検体中粒子分析方法。
【請求項6】
前記蛍光染色処理はpHが7.0〜9.0の環境下で行われる、請求項1に記載の検体中粒子分析方法。
【請求項7】
前記第一の情報は、光を照射された粒子から発せられる散乱光の強度である、請求項1に記載の検体中粒子分析方法。
【請求項8】
前記第二の情報は、光を照射された粒子から発せられる蛍光の強度である、請求項1に記載の検体中粒子分析方法。
【請求項9】
前記蛍光色素は、以下の式
【化1】

〔式中、Aは−O−,−S−又は−C(CH32 −、Rは低級アルキル基、Xはハロゲン、Yは−CH=又は−NH−、nは0又は1、Bは、
【化2】

(式中AとRは上記と同義である)又は2つの低級アルコキシ基もしくは1つのジ低級アルキルアミノ基(この低級アルキルはシアノ基で置換されていてもよい)で置換されたフェニル基である。〕から選ばれる請求項1に記載の検体中粒子分析方法。
【請求項10】
前記蛍光色素は、以下の式
【化3】

により表される、請求項9に記載の検体中粒子分析方法。
【請求項11】
前記検体は尿である、請求項1に記載の検体中粒子分析方法。
【請求項12】
ベンゼン環を有する非イオン性有機化合物及び蛍光色素を含む試薬と、検体と、を混合して試料液を調製するステップ、
試料液中の粒子から、粒子の大きさを反映する第一の情報と、粒子の蛍光染色度合いを反映する第二の情報を検出するステップ、
検出した第一、第二の情報に基づき、赤血球を判別するステップ、
を含む検体中粒子分析方法。
【請求項13】
前記試薬は、ベンゼン環を有する非イオン性有機化合物を含む第一液と、蛍光色素を含む第二液とを含む、請求項12に記載の検体中粒子分析方法。
【請求項14】
検体中の赤血球を溶血させずに酵母様真菌の細胞膜に損傷を与える物質を含む第一の試薬と、蛍光色素を含む第二の試薬と、検体と、を混合して試料液を調製する試料調製部、
試料液中の粒子から、粒子の大きさを反映する第一の情報と、粒子の蛍光染色度合いを反映する第二の情報を検出する検出部、
検出した第一、第二の情報に基づき、赤血球を判別する制御部、
を有する検体中粒子分析装置。
【請求項15】
前記試料調製部は、
第一の試薬を収容する第一試薬収容部、
第二の試薬を収容する第二試薬収容部、
検体を収容する検体収容部、
検体と第一、第二の試薬を混合する混合部、
検体収容部に収容された検体と、第一試薬収容部に収容された第一の試薬と、第二試薬収容部に収容された第二の試薬と、を混合部へ供給する供給機構、
を有する、請求項14に記載の検体中粒子分析装置。
【請求項16】
前記検出部は、
試料液を流すためのフローセル、
フローセル中を流れる試料液に光を照射するための光源、
光を照射された試料液中の粒子から発せられた散乱光を前記第一の情報として検出する散乱光受光部、
光を照射された試料液中の粒子から発せられた蛍光を前記第二の情報として検出する蛍光受光部、
を有する、請求項14に記載の検体中粒子分析装置。
【請求項17】
前記散乱光は前方散乱光である、請求項16に記載の検体中粒子分析装置。
【請求項18】
前記検体は尿である、請求項14に記載の検体中粒子分析装置。
【請求項19】
ベンゼン環を有する非イオン性有機化合物を含む第一の試薬と、蛍光色素を含む第二の試薬と、検体と、を混合して試料液を調製する試料調製部、
試料液中の粒子から、粒子の大きさを反映する第一の情報と、粒子の蛍光染色度合いを反映する第二の情報を検出する検出部、
検出した第一、第二の情報に基づき、赤血球を判別する制御部、
を有する検体中粒子分析装置。
【請求項20】
検体中の赤血球を溶血させずに酵母様真菌の細胞膜に損傷を与える物質を含む第一の試薬と、蛍光色素を含む第二の試薬とを含む、検体中粒子分析用試薬。
【請求項21】
前記第一の試薬は、ベンゼン環を有する非イオン性有機化合物を含む、請求項20に記載の検体中粒子分析用試薬。
【請求項22】
前記ベンゼン環を有する非イオン性有機化合物は芳香族アルコールである、請求項21に記載の検体中粒子分析用試薬。
【請求項23】
前記芳香族アルコールは2−フェノキシエタノールである、請求項22に記載の検体中粒子分析用試薬。
【請求項24】
前記ベンゼン環を有する非イオン性有機化合物は、ベンゾチアゾール化合物である、請求項21に記載の検体中粒子分析用試薬。
【請求項25】
前記蛍光色素は、以下の式
【化4】

〔式中、Aは−O−,−S−又は−C(CH32 −、Rは低級アルキル基、Xはハロゲン、Yは−CH=又は−NH−、nは0又は1、Bは、
【化5】

(式中AとRは上記と同義である)又は2つの低級アルコキシ基もしくは1つのジ低級アルキルアミノ基(この低級アルキルはシアノ基で置換されていてもよい)で置換されたフェニル基である。〕から選ばれる、請求項20に記載の検体中粒子分析用試薬。
【請求項26】
前記蛍光色素は、以下の式
【化6】

により表される、請求項25に記載の検体中粒子分析用試薬。
【請求項27】
前記第一の試薬は、pHが7.0〜9.0の範囲にあることを特徴とする、請求項20に記載の検体中粒子分析用試薬。
【請求項28】
前記検体は尿である、請求項20に記載の検体中粒子分析試薬。
【請求項29】
検体中の赤血球を溶血させずに酵母様真菌の細胞膜に損傷を与える物質及び蛍光色素を含む、検体中粒子分析用試薬。











【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−105625(P2006−105625A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289097(P2004−289097)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】